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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F21S
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F21S
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  F21S
管理番号 1338161
異議申立番号 異議2016-700889  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-19 
確定日 2018-02-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第5888625号発明「照明器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5888625号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5888625号の請求項1に係る特許についての出願は、平成23年1月26日に出願された特願2011-13695号の一部を平成26年6月11日に新たな特許出願である特願2014-120115号とし、さらにその一部を平成26年7月4日に新たな特許出願としたものであって、平成28年2月26日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人 武田英莉(以下、「申立人1」という。)、及び、西村太一(以下、「申立人2」という。)のそれぞれにより特許異議の申立てがなされ、その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年12月21日付け 取消理由通知
平成29年 2月24日 意見書、訂正請求書(訂正明細書及び特許
請求の範囲を添付して)の提出
3月31日 意見書の提出(申立人2)
4月 3日 意見書の提出(申立人1)
5月25日付け 取消理由通知(決定の予告)
7月31日 意見書、訂正請求書(訂正明細書及び特許
請求の範囲を添付して)の提出
10月 3日付け 訂正拒絶理由通知
11月 6日 意見書、補正書の提出

なお、平成29年2月24日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされる。

第2 訂正の適否
特許権者は、平成29年7月31日に訂正請求書を提出し、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを求めた(以下、「本件訂正」という。)。
その後、当審からの訂正拒絶理由通知に対して、特許権者は平成29年11月6日に手続補正書を提出して、訂正請求書、訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲について補正することを求めた(以下、「本件補正」という。)。
以下に本件訂正、本件補正の内容を列挙し、本件補正が訂正請求書の要旨を変更するものか否かを検討した後、訂正の適否について検討する。

1.本件訂正の内容
本件訂正の内容は次のとおりである。
なお、下線は訂正箇所を示す。以下、この項において同様。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「【請求項1】
中央に開口が形成された器具本体と;
外形が略直方体形状をなし、前記外形の短辺側に一対の電極を有している表面実装型の発光色が複数色のLEDパッケージと;
前面側には前記LEDパッケージの一対の電極のうちいずれか一方が前記器具本体の開口側を向くように前記LEDパッケージが複数実装された器具本体に設けられる複数又は一枚の基板であって、
前記基板は、発光色が異なるLEDパッケージ群に分かれ、同一発光色のLEDパッケージがそれぞれ直列に接続され各電極が接続される複数の配線パターンを備えているとともに、前記LEDパッケージは、前記器具本体の開口を囲むように複数の列状に配設され、この列間は各列において隣り合う前記LEDパッケージが実装可能である部分との間よりも離間するように設けられていて、かつ周方向の同一列において異なる発光色が混在して配設されており、
前記基板は、前記複数の配線パターンにおける前記LEDパッケージの一対の電極が接続される部分を少なくとも除いて前記配線パターンを覆うように基板の略全面に形成された反射層を有し;
前記基板を一体で覆うように器具本体に設けられた乳白色の拡散カバーと;
を具備することを特徴とする照明器具。」
とあるのを、
「【請求項1】
中央に開口が形成された器具本体と;
外形が略直方体形状をなし、前記外形の短辺側に一対の電極を有している表面実装型の発光色が複数色のLEDパッケージと;
前面側には前記LEDパッケージの一対の電極のうちいずれか一方が前記器具本体の開口側を向くように前記LEDパッケージが複数実装され、前記器具本体の開口を囲むように前記器具本体に設けられる複数の基板であって、
前記基板は、発光色が異なるLEDパッケージ群に分かれ、同一発光色のLEDパッケージがそれぞれ直列に接続され各電極が接続される複数の配線パターンを備えているとともに、前記LEDパッケージは、前記器具本体の開口を囲むように複数の列状に配設され、この列間は各列において隣り合う前記LEDパッケージが実装可能である部分との間よりも離間するように設けられていて、かつ周方向の同一列において異なる発光色が混在して配設されており、
前記基板は、前記複数の配線パターンにおける前記LEDパッケージの一対の電極が接続される部分を少なくとも除いて前記配線パターンを覆うように基板の略全面に形成された反射層を有し、
前記基板は、前記LEDパッケージの列間に配設された配線接続部により、隣接する他の基板と電気的に接続されており、
前記複数の配線パターンは、前記LEDパッケージの列間を延びるように配設され、かつ、同じ列に配設された複数のLEDパッケージが接続する配線パターンが前記LEDパッケージの列間に複数配設されるように前記基板の略全体に配設されており;
前記基板を一体で覆うように器具本体に設けられた乳白色の拡散性を有するカバー部材と;
を具備することを特徴とする照明器具。」
とする。
(2)訂正事項2
明細書の段落【0008】に、
「【0008】
本発明の実施形態による照明器具は、中央に開口が形成された器具本体と;外形が略直方体形状をなし、前記外形の短辺側に一対の電極を有している表面実装型の発光色が複数色のLEDパッケージと;前面側には前記LEDパッケージの一対の電極のうちいずれか一方が前記器具本体の開口側を向くように前記LEDパッケージが複数実装された器具本体に設けられる複数又は一枚の基板であって、前記基板は、発光色が異なるLEDパッケージ群に分かれ、同一発光色のLEDパッケージがそれぞれ直列に接続され各電極が接続される複数の配線パターンを備えているとともに、前記LEDパッケージは、前記器具本体の開口を囲むように複数の列状に配設され、この列間は各列において隣り合う前記LEDパッケージが実装可能である部分との間よりも離間するように設けられていて、かつ周方向の同一列において異なる発光色が混在して配設されており、前記基板は、前記複数の配線パターンにおける前記LEDパッケージの一対の電極が接続される部分を少なくとも除いて前記配線パターンを覆うように基板の略全面に形成された反射層を有し;前記基板を一体で覆うように器具本体に設けられた乳白色の拡散カバーと;を備えている。」
とあるのを、
「【0008】
本発明の実施形態による照明器具は、中央に開口が形成された器具本体と;外形が略直方体形状をなし、前記外形の短辺側に一対の電極を有している表面実装型の発光色が複数色のLEDパッケージと;前面側には前記LEDパッケージの一対の電極のうちいずれか一方が前記器具本体の開口側を向くように前記LEDパッケージが複数実装され、前記器具本体の開口を囲むように前記器具本体に設けられる複数の基板であって、前記基板は、発光色が異なるLEDパッケージ群に分かれ、同一発光色のLEDパッケージがそれぞれ直列に接続され各電極が接続される複数の配線パターンを備えているとともに、前記LEDパッケージは、前記器具本体の開口を囲むように複数の列状に配設され、この列間は各列において隣り合う前記LEDパッケージが実装可能である部分との間よりも離間するように設けられていて、かつ周方向の同一列において異なる発光色が混在して配設されており、前記基板は、前記複数の配線パターンにおける前記LEDパッケージの一対の電極が接続される部分を少なくとも除いて前記配線パターンを覆うように基板の略全面に形成された反射層を有し、前記基板は、前記LEDパッケージの列間に配設された配線接続部により、隣接する他の基板と電気的に接続されており、前記複数の配線パターンは、前記LEDパッケージの列間を延びるように配設され、かつ、同じ列に配設された複数のLEDパッケージが接続する配線パターンが前記LEDパッケージの列間に複数配設されるように前記基板の略全体に配設されており;前記基板を一体で覆うように器具本体に設けられた乳白色の拡散性を有するカバー部材と;を備えている。」
とする。

2.本件補正の内容
本件補正は、本件訂正の訂正事項1、2を補正するものであり、その内容は次のとおりである。
なお、下線は補正箇所を示す。以下、この項において同様。
(1)補正事項1
訂正事項1による特許請求の範囲の請求項1の訂正を、
「【請求項1】
中央に開口が形成された器具本体と;
外形が略直方体形状をなし、前記外形の短辺側に一対の電極を有している表面実装型の発光色が複数色のLEDパッケージと;
前面側には前記LEDパッケージの一対の電極のうちいずれか一方が前記器具本体の開口側を向くように前記LEDパッケージが複数実装され、前記器具本体の開口を囲むように前記器具本体に設けられる複数の基板であって、
前記基板は、発光色が異なるLEDパッケージ群に分かれ、同一発光色のLEDパッケージがそれぞれ直列に接続され各電極が接続される複数の配線パターンを前記基板のうち前記LEDパッケージよりも前記開口側の領域と前記開口側とは反対の領域とに備え、前記基板の略全体に配設されているとともに、前記LEDパッケージは、前記器具本体の開口を囲むように複数の列状に配設され、この列間は各列において隣り合う前記LEDパッケージが実装可能である部分との間よりも離間するように設けられていて、かつ周方向の同一列において異なる発光色が混在して配設されており、
前記基板は、前記複数の配線パターンにおける前記LEDパッケージの一対の電極が接続される部分を少なくとも除いて前記配線パターンを覆うように基板の略全面に形成された反射層を有し、
前記基板は、前記LEDパッケージの列間に配設された配線接続部により、隣接する他の基板と電気的に接続されており、
前記複数の配線パターンは、前記LEDパッケージの列間を延びるように配設され、かつ、同じ列に配設された複数のLEDパッケージが接続する配線パターンが前記LEDパッケージの列間に複数配設されるように前記基板の略全体に配設されており;
前記基板を一体で覆うように器具本体に設けられた乳白色の拡散性を有するカバー部材と;
を具備することを特徴とする照明器具。」
とする。
(2)補正事項2
訂正事項2による明細書の段落【0008】の訂正を、
「【0008】
本発明の実施形態による照明器具は、中央に開口が形成された器具本体と;外形が略直方体形状をなし、前記外形の短辺側に一対の電極を有している表面実装型の発光色が複数色のLEDパッケージと;前面側には前記LEDパッケージの一対の電極のうちいずれか一方が前記器具本体の開口側を向くように前記LEDパッケージが複数実装され、前記器具本体の開口を囲むように前記器具本体に設けられる複数の基板であって、前記基板は、発光色が異なるLEDパッケージ群に分かれ、同一発光色のLEDパッケージがそれぞれ直列に接続され各電極が接続される複数の配線パターンを前記基板のうち前記LEDパッケージよりも前記開口側の領域と前記開口側とは反対の領域とに備え、前記基板の略全体に配設されているとともに、前記LEDパッケージは、前記器具本体の開口を囲むように複数の列状に配設され、この列間は各列において隣り合う前記LEDパッケージが実装可能である部分との間よりも離間するように設けられていて、かつ周方向の同一列において異なる発光色が混在して配設されており、前記基板は、前記複数の配線パターンにおける前記LEDパッケージの一対の電極が接続される部分を少なくとも除いて前記配線パターンを覆うように基板の略全面に形成された反射層を有し、前記基板は、前記LEDパッケージの列間に配設された配線接続部により、隣接する他の基板と電気的に接続されており、前記複数の配線パターンは、前記LEDパッケージの列間を延びるように配設され、かつ、同じ列に配設された複数のLEDパッケージが接続する配線パターンが前記LEDパッケージの列間に複数配設されるように前記基板の略全体に配設されており;前記基板を一体で覆うように器具本体に設けられた乳白色の拡散性を有するカバー部材と;を備えている。」
とする。

3.補正の適否
(1)補正事項1について
補正事項1は、補正前の請求項1の「同一発光色のLEDパッケージがそれぞれ直列に接続され各電極が接続される複数の配線パターン」について「前記基板のうち前記LEDパッケージよりも前記開口側の領域と前記開口側とは反対の領域とに備え、前記基板の略全体に配設されている」との事項を追加するものであり、訂正事項を変更するものといえる。
そして、このような補正は、訂正事項の削除には該当しないし、また、軽微な瑕疵の補正にも該当しない。
したがって、補正事項1を含む本件補正は、訂正請求書の要旨を変更するものである。
(2)補正事項2について
補正事項2は、補正事項1に伴う補正であるので、補正事項1が上述のとおりであるので、同様に、訂正事項を変更するものといえる。
したがって、補正事項2を含む本件補正は、訂正請求書の要旨を変更するものである。
(3)特許権者の主張について
特許権者は、平成29年11月6日の意見書の「5 補正の内容 〔2〕補正の概要」において、本件補正による訂正事項1の補正は、補正前の訂正事項1による請求項1の記載から導き出せるものであり、要旨を変更するものでない旨主張している(意見書2頁18行?3頁11行)。
特許法第120条の5第9項において準用する同法第131条の2第1項は、「前条第1項の規定により提出した請求書の補正は、その要旨を変更するものであってはならない。」と規定しており、これによれば、訂正請求書の補正は訂正請求書の要旨を変更しない範囲で許されるものである。すなわち、訂正事項の削除、及び訂正請求書の要旨を変更しない範囲でのごく軽微な瑕疵の修正等は許されるが、新たに訂正事項を加える、あるいは訂正事項を変更することは、訂正請求書の要旨を変更する補正に該当するものとして許されない。
そして、補正事項1による訂正事項1の補正の内容は上記「(1)」で述べたとおりであり、訂正事項を変更するものであるので、本件訂正に係る訂正請求書の要旨を変更するものといえる。
したがって、特許権者の主張は採用できない。
(4)まとめ
以上のとおりであるので、本件補正は、訂正請求書の要旨を変更するものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第131条の2第1項の規定により、認めることができない。

4.訂正の適否
上記「3.」で述べたとおり、本件補正は認められないので、本件訂正の内容は上記「1.」のとおりである。
(1)訂正事項1について

訂正事項1は、訂正前の請求項1に「前記複数の配線パターンは、前記LEDパッケージの列間を延びるように配設され、かつ、同じ列に配設された複数のLEDパッケージが接続する配線パターンが前記LEDパッケージの列間に複数配設されるように前記基板の略全体に配設されており;」との事項を追加する訂正を含んでいる。
前記の訂正は、「複数の配線パターン」の配置に関して、「LEDパッケージの列間を延びるように配設され」及び「LEDパッケージの列間に複数配設される」と特定するものである。

請求項1には、「外形が略直方体形状をなし、前記外形の短辺側に一対の電極を有している表面実装型の発光色が複数色のLEDパッケージ」及び「LEDパッケージの一対の電極のうちいずれか一方が器具本体の開口側を向くようにLEDパッケージが複数実装され」と記載されており、LEDパッケージの一対の電極のうちいずれか一方が器具本体の開口側を向いたときには、他方は開口側とは反対側を向くようになり、LEDパッケージの電極は、LEDパッケージの列間に位置するものと、列間に位置しないものとがあることになる。
また、請求項1には、「前記の複数の配線パターン」に関して、「同一発光色のLEDパッケージがそれぞれ直列に接続され各電極が接続される複数の配線パターン」と前記されている。
そうすると、請求項1の、同じ列に配設された複数のLEDパッケージを同一発光色ごとに直列に接続する配線パターンは、LEDパッケージの列間に位置する電極に至る配線と、LEDパッケージの列間に位置しない電極に至る配線とがあり、「複数の配線パターン」はLEDパッケージの列間に位置する配線と、列間に位置しない配線とを含んでいるといえる。
そして、本件特許の図面にもそのように示されている。

訂正事項1の「複数の配線パターンは、LEDパッケージの列間を延びるように配設され」、及び、「同じ列に配設された複数のLEDパッケージが接続する配線パターンがLEDパッケージの列間に複数配設される」とする訂正は、「複数の配線パターン」が「LEDパッケージの列間」に配置すると特定するものの、上記「イ」で述べたとおり、「複数の配線パターン」は、LEDパッケージの列間に位置する配線と、列間に位置しない配線とを含んでおり、訂正事項1の「複数の配線パターン」が、LEDパッケージの列間に位置する配線のみに特定されると解すべき合理的な理由はない。
そうすると、訂正事項1は、LEDパッケージの列間に位置する配線と、列間に位置しない配線とを含んだ「複数の配線パターン」が、LEDパッケージの列間に配置することを特定していると解さざるを得ない。
そうすると、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正とはいえない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1による請求項1の訂正に伴い、対応する明細書の記載を訂正するものである。
そして、訂正事項1については上記「(1)」で述べたとおりであるので、同様の理由により、訂正事項2も、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正とはいえない。
(3)まとめ
以上のとおりであるので、本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合しているとはいえない。
したがって、本件訂正は認められない。

第3 本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正を認めることができないので、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
中央に開口が形成された器具本体と;
外形が略直方体形状をなし、前記外形の短辺側に一対の電極を有している表面実装型の発光色が複数色のLEDパッケージと;
前面側には前記LEDパッケージの一対の電極のうちいずれか一方が前記器具本体の開口側を向くように前記LEDパッケージが複数実装された器具本体に設けられる複数又は一枚の基板であって、
前記基板は、発光色が異なるLEDパッケージ群に分かれ、同一発光色のLEDパッケージがそれぞれ直列に接続され各電極が接続される複数の配線パターンを備えているとともに、前記LEDパッケージは、前記器具本体の開口を囲むように複数の列状に配設され、この列間は各列において隣り合う前記LEDパッケージが実装可能である部分との間よりも離間するように設けられていて、かつ周方向の同一列において異なる発光色が混在して配設されており、
前記基板は、前記複数の配線パターンにおける前記LEDパッケージの一対の電極が接続される部分を少なくとも除いて前記配線パターンを覆うように基板の略全面に形成された反射層を有し;
前記基板を一体で覆うように器具本体に設けられた乳白色の拡散カバーと;
を具備することを特徴とする照明器具。」

第4 取消理由通知の概要
1.平成28年12月21日付けの取消理由通知で通知した取消理由の概要
上記取消理由の概要は、以下の取消理由1、2に示すとおりである。
[取消理由1]本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前日本国内において頒布された下記の引用文献1?5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
引用文献1.特開2006-73767号公報
引用文献2.特開2009-272189号公報
引用文献3.特開2010-135308号公報
引用文献4.特開2010-27514号公報
引用文献5.特開2010-170990号公報
[取消理由2]本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2.平成29年5月25日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要
上記取消理由の概要は、以下の取消理由1に示すとおりである。
[取消理由1]本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前日本国内において頒布された下記の引用文献1?5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
引用文献1?5:上記「1.」の[取消理由1]の引用文献1?5と同じ。

第5 当審の判断
1.取消理由1(特許法第29条第2項)について
(1)引用文献
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付したものである。以下同様。
(ア)
「【0005】
本発明のLED照明装置は、中央の開口部分の周囲に配置され、異なる色の光を発光するLED素子をそれぞれ複数個備えたLED発光手段と、前記LED発光手段のそれぞれの色のLED素子をそれぞれ完全に独立して駆動可能な配線手段と、前記LED発光手段の少なくとも前面に配置された光拡散手段とを備えたことを主要な特徴とする。
また、上記したLED照明装置において、前記光拡散手段は、全体形状がドーナツを中心軸と垂直な平面で切断した半ドーナツ型であってもよい。」
(イ)
「【0012】
図1は、本発明のLED照明装置を使用した照明制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。・・・照明装置10は中央に開口部を有するドーナツ状の形状を有しており、内部に複数の発光色のLEDが配置されている。」
(ウ)
「【0019】
図3は、本発明の照明装置10の構成を示す平面図および断面図である。また、図4は、本発明の照明装置10の構成を示す拡大断面図である。照明装置10は、多数のLED31が装着されたプリント配線基板30、光拡散樹脂板34、ブラケット(基台)32、絶縁シート33からなる。プリント配線基板30は中央に開口部を有する円盤形状(リング状)であり、表面には多数の表面実装型のLED31が装着されており、裏面には図示しない各色ごとのリード線が接続されている。
【0020】
図5は、プリント配線基板30上におけるLED31の実装配置を示す平面図である。図5(a)はプリント配線基板30全体を示しており、図5(b)はプリント配線基板30の一部を拡大したものである。図5(b)において、白いLED30はR(赤色)のLEDであることを示しており、斜線のハッチングはG(緑色)、黒はB(青色)のLEDであることを示している。
【0021】
各LED30は5個の同心円上にそれぞれRGBの順の色配列パターンの繰り返しで配置されており、それぞれの円に配置されているLEDの個数および配置順は同じである。但し、内側から1番目、3番目、5番目の円のLED配置は同じ、即ち同じ角度位置に同じ色のLEDが配置されているが、内側から2番目、4番目の円のLED配置は1番目、3番目、5番目の円のLED配置とは繰り返し中心角度の半分だけずれている。即ち、隣接する円における配置が繰り返し中心角度の半分だけずれている。このような配置とすることにより、任意の発光色においてほぼ均一な照射光が得られる。なお、色配列はRBGでもよい。」
(エ)
「【0026】
光拡散手段である光拡散樹脂板34は例えば乳白色などの光を拡散する素材でできた樹脂板を、全体形状がドーナツを中心軸と垂直な平面で切断した半ドーナツ型に成型あるいは切削したものである。なお、光拡散樹脂板34の断面形状は半円形以外にも考えられる。・・・」
(オ)
「【0028】
図6は、本発明の照明装置10およびLED駆動装置21の回路を示す回路図である。照明装置10において、LED31は同じ発光色のLED31を例えば3個直列接続した直列回路を複数回路並列に接続している。なお、直列接続するLEDの個数は任意である。また、各LEDの輝度を揃えるために、直列回路に更に直列に抵抗を入れてもよい。
【0029】
LED駆動装置21は、3個の可変定電流電源回路40、41、42および、コントローラ23からの制御信号に基づき、3個の可変定電流電源回路40、41、42をそれぞれ所望の電流値に制御する制御回路43からなる。
【0030】
なお、各色のLED駆動電流が他の色のLEDに影響を与えないように、照明装置10の各色のLED回路とLED駆動装置21内の3個の可変定電流電源回路40、41、42の間を接続するリード線は、各色それぞれ完全に独立している。」
(カ)
【図5】(b)から、LED30が配置される各同心円は離間するように設けられていることを看取しうる。

(キ)
上記「(イ)」の段落【0012】の「照明装置10は中央に開口部を有するドーナツ状の形状を有しており」との記載、上記(ウ)段落【0019】の「プリント配線基板30は中央に開口部を有する円盤形状(リング状)であり、」との記載、及び、【図3】、【図4】の記載からみて、ブラケット32は、中央に開口を有していると認められる。
(ク)
技術常識に照らして、プリント配線基板30はLED31の配線を備えていると認められる。
(ケ)
上記「(エ)」の段落【0026】の「光拡散手段である光拡散樹脂板34は例えば乳白色などの光を拡散する素材でできた樹脂板を、全体形状がドーナツを中心軸と垂直な平面で切断した半ドーナツ型に成型あるいは切削したものである。」との記載、及び、【図3】、【図4】の記載からみて、光拡散樹脂板34は、プリント配線基板30を一体で覆うようにブラケット32に設けられていると認められる。

上記「(ア)?(ケ)」の事項及び【図1】、【図3】?【図6】の記載からみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「中央に開口部を有するブラケット32と、
発光色が複数色の多数の表面実装型のLED31と、
表面に前記多数の表面実装型のLED31が装着され、ブラケット32に設けられる、中央に開口部を有するプリント配線基板30であって、
前記プリント配線基板30は、同じ発光色のLED31を直列接続した直列回路を複数回路並列に接続する配線を備えているとともに、
前記LED31は5個の同心円上にそれぞれRGBの順の色配列パターンの繰り返しで配置されており、各同心円は離間するように設けられていて、
前記プリント配線基板30を一体で覆うようにブラケット32に設けられた乳白色の光拡散樹脂板34と、
を具備する照明装置10。」

イ 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)
「【0001】
本発明は、発光装置に関し、更に具体的には、リング状(ないしフープ状)の透明体を有する発光装置に関するものである。」
(イ)
「【0010】
最初に、図1?図3を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1(A)は本実施例の発光装置の外観斜視図,図1(B)は使用例を示す図である。図2は、本実施例の分解斜視図である。図3(A)は前記図2を#A-#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,図3(B)は回路図である。本実施例の発光装置は、図1(B)に一例を示すように、任意の場所に設置されるリング状(ないしフープ状)の照明器具であって、図1(A)及び図2に示すように、発光する透明体30,該透明体30に光を照射する複数の光源グループL1?L8,これら光源グループが一方の主面に設けられた基板12,前記透明体30を支持する支持部32,該支持部32を前記基板12に対して着脱可能に固定するボルト44及びナット46により構成されている。」
(ウ)
「【0014】
また、前記基板12の一方の主面(前記透明体30を固定する側の主面)には、複数の配線パターンP1?P10と、複数の光源グループL1?L8と、これら光源グループL1?L8に接続するための複数の半田パッド50,52A,52B,54,56と、抵抗R1,R2が適宜位置に設けられている。前記光源グループL1?L8は、図3(B)の回路図に示すように、それぞれ複数(図示の例では3つ)の光源によって構成されており、前記透明体30のリング形状に沿って適宜間隔で配置されている。本実施例では、前記光源として、発光ダイオード(LED)を利用している。
【0015】
より詳細に説明すると、光源グループL1は、配線パターンP1及びP2を跨るように、半田パッド50を介して並列配置された3つの光源L1A?L1Cによって構成されている。これら光源L1A?L1Cは、図示しない二つの端子を備えており、一方の端子が前記透明体30の内周側を向き、他方の端子が前記透明体30の外周側を向くように配置される。前記配線パターンP1は、前記光源L1A?L1Cの内周側の端子に接続されるとともに、半田パッド52B,54を跨るように設けられた抵抗R2を介して、プラス側のリード線20に接続されている。該リード線20は、二つに分かれており、一方は前記抵抗R2に接続され、他方は他の抵抗R1に接続されている。」
(エ)
【図2】及び【図3】(A)から、
・基板12上の光源グループL1?L8における略直方体形状の発光ダイオードにおいて、外形の短辺側に一対の電極を有すること、
・基板12上の光源グループL1?L8における発光ダイオードが、複数の配線パターンP1?P10上に電極を有するように配置され、略直方体形状の発光ダイオードの一対の電極のうちいずれか一方が中心の貫通孔(開口)側を向くように実装されたこと、
が看取できる。

ウ 引用文献3に記載された事項
引用文献3の【図17】から、LEDモジュール100が略直方体形状をなし、外形の短辺側に一対の電極を有していることが看取できる。

エ 引用文献4に記載された事項
引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)
「【0001】
本発明は、複数個のLEDチップ(発光ダイオードチップ)を利用した発光装置に関するものである。」
(イ)
「【0059】
(実施形態6)
本実施形態の発光装置Aの基本構成は実施形態2と略同じであり、図12に示すように、LEDチップ1の個数が24個であり、内側の仮想円VC1上に8個のLEDチップ1を等間隔で配置し(要するに、正8角形の各頂点にLEDチップ1の中心が位置している)、外側の仮想円VC2上に16個のLEDチップ1を等間隔で配置してある(要するに、正16角形の各頂点にLEDチップ1の中心が位置している)点などが相違する。なお、実施形態2と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0060】
本実施形態では、内側の仮想円VC1の直径を10.45mm、外側の仮想円VC2の直径を20.5mm、内側の仮想円VC1上で隣り合うLEDチップ1の中心間距離P1を4.0mm、外側の仮想円VC2上で隣り合うLEDチップ1の中心間距離P2を4.0mmとしてあるので、内側の仮想円VC1上の8個のLEDチップ1と外側の仮想円VC2上の16個のLEDチップ1との組み合わせにおいて最近接するLEDチップ1の中心間距離Hが5.03mmとなっており、熱負荷指数max値が内側の仮想円VC1上の8個のLEDチップ1の0.53となっており、これら8個のLEDチップ1に関する熱抵抗Rjbが26.7℃/Wとなり、外側の仮想円VC2上の16個のLEDチップ1に関する熱抵抗Rjbが25.7℃/Wとなっている(つまり、熱抵抗Rjbの最大値が30℃/Wよりも小さな26.7℃/Wとなっている)。
【0061】
しかして、本実施形態の発光装置Aにおいても、実施形態2と同様、上記式(1)で規定した熱負荷指数Dの最大値が当該最大値とLEDチップ1の許容ジャンクション温度と金属部材である筐体6の許容温度との関係に基づいて規定した規定値以下となるように複数個のLEDチップ1の群を配置してあるので、LEDチップ1の群を実装する実装領域のコンパクト化を図りながらも所望の放熱性を確保することが可能となる。」

オ 引用文献5に記載された事項
引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)
「【0001】
本発明は、一斉に発光する複数の半導体発光素子を備えた光源モジュール、およびその光源モジュールを備えた照明装置に関する。」
(イ)
「【0040】
図1?図16を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1?図4中の符号1は照明装置を示している。照明装置1は、ベースライトと通称される照明器具として実現されている。照明装置1は、屋内外の天井部に直付け又は埋め込んで例えば全般照明用として設置される。この照明装置1は、装置本体2と、点灯装置10と、一以上例えば複数の光源モジュール11と、透光性の照明カバー27を具備している。
(ウ)
「【0049】
各光源モジュール11は、COB(Chip on board)モジュールである。各光源モジュール11は、モジュール基板14、金属導体15、白色の拡散反射層17、複数の半導体発光素子例えば青色LED(青色発光ダイオード)19、及び透光性の封止部材24を備えている。」
(エ)
「【0060】
電気絶縁性の拡散反射層17は、例えば白色のレジスト層からなり、モジュール基板14の下面14dに印刷により塗布して設けられている。拡散反射層17の厚みは、モジュール基板14よりも遥かに薄いだけではなく、後述する青色LED19の厚みよりも薄い。この拡散反射層17の反射率は、85%以上であることが好ましい。更に、この拡散反射層17には低い濡れ性を付与することが望ましい。」
(オ)
「【0081】
この照明装置1が備えたモジュール基板14は、その下面14dに被着された白色の拡散反射層17を有する。この拡散反射層17の厚みは、前記下面14dに実装された青色LED19の厚みより薄い。そして、照明装置1の点灯中、青色LED19の発光層19bから光が全方向に放射される。」
(カ)
【図5】及び【図8】から、白色の拡散反射層17が発光部18(すなわち、LEDパッケージの一対の電極が接続される部分)を除いて、配線パターンを覆うように基板の略全面に形成されたことを看取できる。

(2)対比・判断
ア 対比
本件発明と引用発明とを対比する。
(ア)
後者の「中央に開口部を有するブラケット32」は、前者の「中央に開口が形成された器具本体」に相当する。
(イ)
後者の「発光色が複数色の多数の表面実装型のLED31」は、表面実装型であることからそのパッケージに一対の電極を有していることは技術常識といえるので、前者の「外形が略直方体形状をなし、前記外形の短辺側に一対の電極を有している表面実装型の発光色が複数色のLEDパッケージ」と、「一対の電極を有している表面実装型の発光色が複数色のLEDパッケージ」である限りにおいて一致する。
(ウ)
後者の「プリント配線基板30」と前者の「基板」に関して、
・後者の「表面に多数の表面実装型のLED31が装着され」ることは、前者の「前面側にはLEDパッケージの一対の電極のうちいずれか一方が器具本体の開口側を向くようにLEDパッケージが複数実装され」ることと、「前面側にはLEDパッケージが複数実装され」る限りにおいて一致する。
・前者の「複数又は一枚の基板」は、基板の枚数が任意であることに等しいので、後者の「ブラケット32に設けられる」「プリント配線基板30」は、前者の「器具本体に設けられる複数又は一枚の基板」に相当する。
・後者の「同じ発光色のLED31を直列接続した直列回路」は、前者の「発光色が異なるLEDパッケージ群に分かれ、同一発光色のLEDパッケージがそれぞれ直列に接続され各電極が接続される」「配線パターン」に相当し、後者の「プリント配線基板30は、」「直列回路を複数回路並列に接続する配線を備えている」ことは、前者の「基板は、」「複数の配線パターンを備えている」ことに相当する。
(エ)
後者の「LED31は5個の同心円上にそれぞれRGBの順の色配列パターンの繰り返しで配置され」ることは、前者の「LEDパッケージは、器具本体の開口を囲むように複数の列状に配設され、」「かつ周方向の同一列において異なる発光色が混在して配設され」ることに相当する。
(オ)
後者のLED31が配置される「各同心円は離間するように設けられてい」ることは、前者のLEDパッケージが配設される「列間は各列において隣り合うLEDパッケージが実装可能である部分との間よりも離間するように設けられてい」ることと、「列間は離間するように設けられてい」る限りにおいて一致する。
(カ)
前者の「基板を一体で覆うように器具本体に設けられた乳白色の拡散カバー」は、後記「2.」で述べるとおり、明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないが、発明の詳細な説明の記載から「基板を一体で覆うように器具本体に設けられた乳白色の拡散性を有するカバー部材」を意味しているとして検討すると、後者の「プリント配線基板30を一体で覆うようにブラケット32に設けられた乳白色の光拡散樹脂板34」は、前者の「基板を一体で覆うように器具本体に設けられた乳白色の拡散カバー」に相当する。
(コ)
後者の「照明装置10」は、前者の「照明器具」に相当する。
そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点〕
「中央に開口が形成された器具本体と;
一対の電極を有している表面実装型の発光色が複数色のLEDパッケージと;
前面側には前記LEDパッケージが複数実装された器具本体に設けられる複数又は一枚の基板であって、
前記基板は、発光色が異なるLEDパッケージ群に分かれ、同一発光色のLEDパッケージがそれぞれ直列に接続され各電極が接続される複数の配線パターンを備えているとともに、前記LEDパッケージは、前記器具本体の開口を囲むように複数の列状に配設され、この列間は離間するように設けられていて、かつ周方向の同一列において異なる発光色が混在して配設されており、
前記基板を一体で覆うように器具本体に設けられた乳白色の拡散性を有するカバー部材と;
を具備する照明器具。」
〔相違点1〕
本件発明は、「LEDパッケージ」が「外形が略直方体形状をなし、前記外形の短辺側に」一対の電極を有するものであるのに対して、引用発明の「表面実装型のLED31」はそのように特定されていない点。
〔相違点2〕
本件発明は、「LEDパッケージの一対の電極のうちいずれか一方が器具本体の開口側を向くように」実装されているのに対して、引用発明の「LED31」の実装の向きは特定されていない点。
〔相違点3〕
本件発明は、「LEDパッケージ」が実装されている「列間」が、「各列において隣り合う前記LEDパッケージが実装可能である部分との間よりも」離間しているのに対して、引用発明は、LED31が配置される同心円の間の距離がそのように特定されていない点。
〔相違点4〕
本件発明は、「基板は、複数の配線パターンにおけるLEDパッケージの一対の電極が接続される部分を少なくとも除いて配線パターンを覆うように基板の略全面に形成された反射層を有し」ているのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。

イ 判断
上記各相違点について以下検討する。
(ア)相違点1について
引用文献2には、段落【0015】(上記「(1)イ(ウ)」参照)に「これら光源L1A?L1Cは、図示しない二つの端子を備えており、一方の端子が前記透明体30の内周側を向き、他方の端子が前記透明体30の外周側を向くように配置される。」と記載され、【図2】から、基板12上の光源グループL1?L8における略直方体形状の発光ダイオードにおいて、外形の短辺側に一対の電極を有することが看取できる(上記「(1)イ(エ)」参照)。
また、引用文献3の図17から、LEDモジュール100が略直方体形状をなし、外形の短辺側に一対の電極を有していることが看取できる(上記「(1)ウ」参照)。
略直方体形状をなすLED、LEDモジュールにおいて、外形の短辺側に一対の電極を有する点は、引用文献2、3に記載されたとおり、技術常識であるから、引用発明の「表面実装型のLED31」も、相違点1に係る本件発明の構成を備えているといえる。
仮に、引用発明の「表面実装型の」「LED」が、相違点1に係る本件発明の構成を備えていないとしても、そのような構成とすることは、引用文献2、3に記載された事項から当業者が容易に想到し得たといえる。
(イ)相違点2について
引用文献2には、段落【0015】(上記「(1)イ(ウ)」参照)に「これら光源L1A?L1Cは、図示しない二つの端子を備えており、一方の端子が前記透明体30の内周側を向き、他方の端子が前記透明体30の外周側を向くように配置される。」と記載され、【図2】から、基板12上の光源グループL1?L8における発光ダイオードが、複数の配線パターンP1?P10上に電極を有するように配置され、略直方体形状の発光ダイオードの一対の電極のうちいずれか一方が中心の貫通孔(開口)側を向くように実装されたことが看取できる(上記「(1)イ(エ)」参照)。
引用発明のように「LED」を円周上に配置したときに、その電極の向きを相違点2に係る本件発明の構成のようにすることは、引用文献2に記載の事項に基づいて当業者が容易に想到し得たといえる。
(ウ)相違点3について
引用文献4には、段落【0060】(上記「(1)エ(イ)」参照)に「本実施形態では、内側の仮想円VC1の直径を10.45mm、外側の仮想円VC2の直径を20.5mm、内側の仮想円VC1上で隣り合うLEDチップ1の中心間距離P1を4.0mm、外側の仮想円VC2上で隣り合うLEDチップ1の中心間距離P2を4.0mmとしてあるので、内側の仮想円VC1上の8個のLEDチップ1と外側の仮想円VC2上の16個のLEDチップ1との組み合わせにおいて最近接するLEDチップ1の中心間距離Hが5.03mmとなっており、・・・。」と記載され、段落【0061】(上記「(1)エ(イ)」参照)に「・・・LEDチップ1の群を実装する実装領域のコンパクト化を図りながらも所望の放熱性を確保することが可能となる。」と記載されており、LEDチップ1について、放熱性を考慮して、列間は各列において隣り合うLEDチップ1が実装可能である部分との間よりも離間するように設けられることが記載されている。
引用発明においても「LED31」の放熱性は当然に考慮されるべき事項であり、その「LED31」の配置に、引用文献4に記載の上記事項に基づいて、相違点3に係る本件発明の構成のようにすることは、当業者が適宜になし得たといえる。
(エ)相違点4について
引用文献5には、段落【0060】及び【0081】(上記「(1)オ(エ)(オ)」参照)に、モジュール基板14に白色の拡散反射層17を形成することが記載されており、【図8】には、白色の拡散反射層17が発光部18(すなわち、LEDパッケージの一対の電極が接続される部分)を除いて、配線パターンを覆うように基板の略全面に形成されたことが看取できる。
引用発明を、相違点4に係る本件発明の構成のようにすることは、引用文献5に記載の事項に基づいて当業者が容易に想到し得たといえる。

そして、本件発明の奏する作用効果も、引用発明及び引用文献2?5に記載の事項から、当業者が予測しうる範囲内のものであり、格別のものとはいえない。

よって、本件発明は引用発明及び引用文献2?5に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)特許権者の意見書における主張について
特許権者は、平成29年2月24日付け意見書(3頁下から6行?5頁11行)において、「引用文献1に開示された照明機器と、本件特許の照明器具とは、当業者にとって異なる技術に属する」旨主張している。
しかしながら、本件発明は、その発明特定事項からは何ら用途を特定されるものではなく、特許権者の前記主張を採用することはできない。
また、特許権者は、同意見書(5頁15行?6頁17行)において、引用文献4に記載の事項の適用が容易想到でない旨主張している。
しかしながら、引用文献4に記載の事項の引用発明への適用は、上記「(2)イ(ウ)」で述べたとおりである。そして、本件特許の明細書には、相違点3に係る本件発明の構成について如何なる技術的意義を有しているのか何ら記載されておらず、格別の作用効果を有しているとは認められない。よって、特許権者の前記主張を採用することはできない。

2.取消理由2(特許法第36条第6項第1号)について
請求項1に係る発明の「拡散カバー」について、明細書の発明の詳細な説明には、「カバー部材」と「拡散部材」との用語はあるが、「拡散カバー」との用語はない。
よって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が上記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

3.むすび
以上のとおり、本件発明は引用発明、引用文献2?5に記載された事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
また、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、本件発明に係る特許は、特許法第113条第2号及び第4号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-01-05 
出願番号 特願2014-138244(P2014-138244)
審決分類 P 1 651・ 841- ZB (F21S)
P 1 651・ 537- ZB (F21S)
P 1 651・ 121- ZB (F21S)
最終処分 取消  
前審関与審査官 太田 良隆柿崎 拓  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
平田 信勝
登録日 2016-02-26 
登録番号 特許第5888625号(P5888625)
権利者 東芝ライテック株式会社
発明の名称 照明器具  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
代理人 熊谷 昌俊  

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