• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
管理番号 1338165
異議申立番号 異議2017-701035  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-06 
確定日 2018-03-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第6145110号発明「熱可塑性樹脂組成物およびその成形品」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6145110号の請求項1?17に係る発明についての特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6145110号(請求項の数17。以下,「本件特許」という。)は,2012年(平成24年)12月5日(パリ条約による優先権主張:平成23年12月19日,韓国,平成23年12月23日,韓国)を国際出願日とする特許出願(特願2014-547090号)に係るものであって,平成29年5月19日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は,平成29年6月7日である。)。
その後,平成29年11月6日に,本件特許の請求項1,2,4?10及び13?15に係る発明についての特許に対して,特許異議申立人である鯨田雅信(以下,「申立人鯨田」という。)により特許異議の申立て(申立番号01)がされた。
また,平成29年12月4日に,本件特許の請求項1?17に係る発明についての特許に対して,特許異議申立人である岡本敏夫(以下,「申立人岡本」という。)により特許異議の申立て(申立番号02)がされた。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?17に係る発明は,本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下,それぞれ「本件発明1」等という。また,本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。

【請求項1】
(A)ポリカーボネート樹脂;および
(B)ビフェニル基またはターフェニル基を含有する(メタ)アクリル系共重合体;を含み,前記(B)(メタ)アクリル系共重合体の屈折率は,1.495ないし1.640である,熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)ポリカーボネート樹脂50重量%ないし99重量%,および前記(B)(メタ)アクリル系共重合体1重量%ないし50重量%を含む,請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)ポリカーボネート樹脂1重量%ないし49重量%,および前記(B)(メタ)アクリル系共重合体51重量%ないし99重量%を含む,請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)(メタ)アクリル系共重合体は,(b1)屈折率が1.580ないし1.700であるビフェニル基またはターフェニル基を含有する(メタ)アクリレート1重量%ないし50重量%,(b2)単官能性不飽和単量体0重量%ないし99重量%,および(b3)屈折率が1.490ないし1.579である脂環式または芳香族(メタ)アクリレート0重量%ないし50重量%を含む単量体から誘導された単位を含有する,請求項1?3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(b1)(メタ)アクリレートは,下記式1で表される,請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物:
【化1】

(前記式1中,R_(1)は水素またはメチル基であり,mは0ないし10の整数であり,Xは置換または非置換のビフェニル基および置換または非置換のターフェニル基からなる群から選ばれる)。
【請求項6】
前記(b2)単官能性不飽和単量体は,炭素数1ないし8のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸を含む不飽和カルボン酸;無水マレイン酸を含む酸無水物;ヒドロキシ基を含有する(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;不飽和ニトリル;アリルグリシジルエーテル;グリシジルメタアクリレート;および芳香族ビニル系単量体の1種以上を含む,請求項4または5に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(b3)屈折率が1.490ないし1.579である脂環式または芳香族(メタ)アクリレートは,下記式2で表される化合物,下記式3で表される化合物,またはこれらの混合物を含む,請求項4?6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物:
【化2】

(前記式2中,R_(1)は水素またはメチル基であり,mは0ないし10の整数であり,Yは置換もしくは非置換の炭素数6ないし20のシクロアルキル基,または置換もしくは非置換の炭素数6ないし20のアリール基である);
【化3】

(前記式3中,R_(1)は水素またはメチル基であり,mは0ないし10の整数であり,Zは酸素(O)または硫黄(S)であり,Arは置換もしくは非置換の炭素数6ないし20のシクロアルキル基,または置換もしくは非置換の炭素数6ないし20のアリール基である)。
【請求項8】
前記(B)(メタ)アクリル系共重合体は,重量平均分子量が3,000g/molないし300,000g/molである,請求項1?7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(B)(メタ)アクリル系共重合体は,非架橋構造である,請求項1?8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記(B)(メタ)アクリル系共重合体は,ガラス転移温度が90℃ないし150℃で,前記ガラス転移温度以上の温度で押出または射出できる,請求項1?9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂組成物は,(C)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体樹脂をさらに含む,請求項1?10のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
前記(C)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体樹脂は,ゴムコアに不飽和単量体がグラフトされてシェルが形成された構造を有し,前記不飽和単量体は,炭素数1ないし12のアルキル(メタ)アクリレート,酸無水物,および炭素数1ないし12のアルキルまたはフェニル核置換マレイミド中の1種以上を含む,請求項11に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
前記熱可塑性樹脂組成物は,難燃剤,界面活性剤,核剤,カップリング剤,充填剤,可塑剤,衝撃補強剤,滑剤,抗菌剤,離型剤,熱安定剤,酸化防止剤,光安定剤,相溶化剤,無機物添加剤,静電気防止剤,顔料および染料中の1種以上をさらに含む,請求項1?12のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物から形成された成形品。
【請求項15】
請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物から形成され,ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(Ball-type Scratch Profile Test)による幅(width)が180μmないし350μmで,鉛筆硬度が2Bないし3Hの範囲である,成形品。
【請求項16】
請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物から形成され,全透過光が85%以上で,ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(Ball-type Scratch Profile Test)による幅(width)が210μm以下で,ASTM D1525による耐熱度(荷重5Kg,50℃/hr基準)が110℃以上である,成形品。
【請求項17】
請求項11に記載の熱可塑性樹脂組成物から形成され,全透過光が40%以上で,ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(Ball-type Scratch Profile Test)による幅(width)が280μm以下で,ASTM D1525による耐熱度(荷重5Kg,50℃/hr基準)が105℃以上で,ASTM D256による1/8”アイゾッドノッチ衝撃強度が8Kg・cm/cm以上である,成形品。

第3 特許異議の申立ての理由の概要
1 申立人鯨田による特許異議の申立て(申立番号01)について
本件発明1,2,4?10及び13?15は,下記(1)及び(2)のとおりの取消理由があるから,本件特許の請求項1,2,4?10及び13?15に係る発明についての特許は,特許法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。証拠方法として,下記(3)の甲第1号証?甲第4号証(以下,申立番号を付して「甲1(01)」等という。)を提出する。

(1)取消理由1(新規性)
本件発明1,2,4?10及び13?15は,甲1(01)に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないものである。
(2)取消理由2(進歩性)
本件発明1,2,4?10及び13?15は,甲1(01)に記載された発明及び甲1(01)?4(01)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
(3)証拠方法
・甲1(01) 米国特許出願公開第2010/0152357号明細書
・甲2(01) Matynia et al.,Roczniki Chemii Ann.
Soc.Chim.Polonorum,1975,Vol.49,p.1411-1414
・甲3(01) 化学大辞典,第9巻,101頁,共立出版株式会社,2001年発行
・甲4(01) Designed Monomers and Polymers,2007,Vol.10,No.4,p.375-388

2 申立人岡本による特許異議の申立て(申立番号02)について
本件発明1?17は,下記(1)?(7)のとおりの取消理由があるから,本件特許の請求項1?17に係る発明についての特許は,特許法113条2号及び4号に該当し,取り消されるべきものである。証拠方法として,下記(8)の甲第1号証?甲第10号証(以下,申立番号を付して「甲1(02)」等という。)を提出する。

(1)取消理由3-1(進歩性)
本件発明1?10及び13?17は,甲1(02)に記載された発明並びに甲1(02)?3(02)及び5(02)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
(2)取消理由3-2(進歩性)
本件発明1?10及び13?17は,甲4(02)に記載された発明並びに甲2(02)?5(02)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
(3)取消理由3-3(進歩性)
本件発明11及び12は,甲1(02)に記載された発明並びに甲1(02)?3(02),5(02)及び6(02)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
(4)取消理由3-4(進歩性)
本件発明11及び12は,甲4(02)に記載された発明並びに甲2(02)?6(02)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
(5)取消理由4(サポート要件)
本件発明1?17は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではない。
(6)取消理由5(実施可能要件)
本件発明1?17は,発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に適合するものではない。
(7)取消理由6(明確性)
本件発明1?17は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に適合するものではない。
(8)証拠方法
・甲1(02) 特表2011-500914号公報
・甲2(02) 特開2011-213996号公報
・甲3(02) 特開平8-48725号公報
・甲4(02) 欧州特許出願公開第2199336号明細書
・甲5(02) Journal of Applied Polymer Science,1992,Vol.44,p.2233-2237
・甲6(02) 特開2011-137158号公報
・甲7(02) 特表2011-506745号公報
・甲8(02) 「機能性アクリレートの選び方・使い方 事例集」,技術情報協会,2010年1月29日,106?107頁
・甲9(02) 島津製作所のホームページ,「屈折率の波長依存性」
・甲10(02) 島津製作所のホームページ,「屈折率の温度依存性」

第4 当審の判断
以下に述べるように,申立人鯨田及び申立人岡本によるいずれの特許異議の申立てについても,特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1?17に係る発明についての特許を取り消すことはできない。

1 取消理由1(新規性)
(1)甲1(01)の記載(クレーム1,3,4)によれば,甲1(01)には,以下の発明が記載されていると認められる。

「(A)ポリカーボネート樹脂10?99重量%と,(B)重量平均分子量3,000?40,000g/molの高屈折率アクリル系共重合体1?90重量%を含む,透明性および耐擦過性を改良したポリカーボネート樹脂組成物であって,
前記高屈折率アクリル系共重合体(B)の屈折率は1.495?1.590であり,
前記高屈折率アクリル系共重合体(B)は,下記式1,式2で表される芳香族または脂肪族メタクリレートまたはこれらの混合物5?100重量%と,0?95重量%の多官能不飽和単量体を含む共重合体またはその混合物である,ポリカーボネート樹脂組成物。

式1
(式1中,mは0?10の整数であり,Xはシクロヘキシル,フェニル,メチルフェニル,メチルエチルフェニル,プロピルフェニル,メトキシフェニル,シクロヘキシルフェニル,クロロフェニル,ブロモフェニル,フェニルフェニルまたはベンジルフェニルである。)

式2
(式2中,mは0?10の整数であり,Yは酸素(O)または硫黄(S)であり,Arは,シクロヘキシル,フェニル,メチルフェニル,メチルエチルフェニル,プロピルフェニル,メトキシフェニル,シクロヘキシルフェニル,クロロフェニル,ブロモフェニル,フェニルフェニルまたはベンジルフェニルである。)」(以下,「甲1(01)発明」という。)

(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1(01)発明とを対比する。
甲1(01)発明における「ポリカーボネート樹脂組成物」は,「ポリカーボネート樹脂」と「高屈折率アクリル系共重合体」を含むものであるから,本件発明1における「ポリカーボネート樹脂」と「(メタ)アクリル系共重合体」を含む「熱可塑性樹脂組成物」に相当する。
そうすると,本件発明1と甲1(01)発明とは,
「(A)ポリカーボネート樹脂;および(B)(メタ)アクリル系共重合体;を含み,前記(B)(メタ)アクリル系共重合体の屈折率は,1.495ないし1.590である,熱可塑性樹脂組成物。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
・相違点1
本件発明1では,(メタ)アクリル系共重合体が,「ビフェニル基またはターフェニル基を含有する」ものであるのに対して,甲1(01)発明では,「下記式1,式2で表される芳香族または脂肪族メタクリレートまたはこれらの混合物・・・を含む共重合体またはその混合物」であり,式1中のXが,「シクロヘキシル,フェニル,メチルフェニル,メチルエチルフェニル,プロピルフェニル,メトキシフェニル,シクロヘキシルフェニル,クロロフェニル,ブロモフェニル,フェニルフェニルまたはベンジルフェニル」であり,式2中のArが,「シクロヘキシル,フェニル,メチルフェニル,メチルエチルフェニル,プロピルフェニル,メトキシフェニル,シクロヘキシルフェニル,クロロフェニル,ブロモフェニル,フェニルフェニルまたはベンジルフェニル」である点(式は省略。以下同様。)。

イ 相違点1の検討
甲1(01)発明は,ポリカーボネート樹脂と高屈折率アクリル系共重合体を含むポリカーボネート樹脂組成物に関するものであるところ,甲1(01)発明においては,高屈折率アクリル系共重合体が含有する官能基(式1中のX及び式2中のAr)として,各種のものが挙げられており,それらの中には,申立人鯨田が主張するように,確かに,本件発明1における「ビフェニル基」に相当する「フェニルフェニル」基も含まれている。
しかしながら,これらは,単なる選択肢として,多数のものが列挙されているにすぎない。甲1(01)発明において,上記官能基の選択肢の一つとして「フェニルフェニル」基が含まれているからといって,直ちに,甲1(01)に「フェニルフェニル」基を含有する高屈折率アクリル系共重合体が記載されているということはできない。実際,甲1(01)には,実施例として,「フェニルフェニル」基を含有する高屈折率アクリル系共重合体を含むものは記載されていない。また,下記2で述べるように,本件発明1において,(メタ)アクリル系共重合体が「ビフェニル基またはターフェニル基」を含有することの技術的意義や効果を踏まえると,相違点1は,実質的な相違点というべきである。
したがって,本件発明1は,甲1(01)に記載された発明とはいえない。

(3)本件発明2,4?10及び13?15について
本件発明2,4?10及び13?15は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(2)で述べたとおり,本件発明1が甲1(01)に記載された発明とはいえない以上,本件発明2,4?10及び13?15についても同様に,甲1(01)に記載された発明とはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり,本件発明1,2,4?10及び13?15は,いずれも,甲1(01)に記載された発明とはいえないから,申立人鯨田が主張する取消理由1は理由がない。
したがって,取消理由1によっては,本件特許の請求項1,2,4?10及び13?15に係る発明についての特許を取り消すことはできない。

2 取消理由2(進歩性)
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1(01)発明とは,上記1(2)アで認定したとおりの一致点で一致し,同相違点1で相違する。

イ 相違点1の検討
上記1(2)イで述べたとおり,甲1(01)発明においては,高屈折率アクリル系共重合体が含有する官能基(式1中のX及び式2中のAr)として,各種のものが挙げられており,それらの中には,本件発明1における「ビフェニル基」に相当する「フェニルフェニル」基も含まれている。
しかしながら,甲1(01)には,上記官能基として,「フェニルフェニル」基が特に好ましいことは記載されておらず,また,実施例として,「フェニルフェニル」基を含有する高屈折率アクリル系共重合体を含むものが記載されているわけでもない。そして,本件発明1は,(メタ)アクリル系共重合体が「ビフェニル基またはターフェニル基」を含有することにより,これら以外の官能基を含有する場合と比べて,耐熱性,難燃性,耐スクラッチ性,機械的物性,透明性の全てが優れるため,電気電子製品の部品に最適に適用することができ,アクリル樹脂の透明性と耐スクラッチ性等の優れた物性を維持し,改善された衝撃性を有する熱可塑性樹脂組成物を提供することができるという,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである(本件明細書【0035】,実施例1?15,比較例1?4,6?12,14?16,表1?6)。
そうすると,甲2(01)や甲3(01)に,「ビフェニル基」を含有する特定の(メタ)アクリル系共重合体が所定の屈折率を有することが記載され,甲4(01)に,メチルメタクリレートと4-ビフェニルメタクリレートの共重合体のガラス転移温度(Tg)について記載されていることを考慮したとしても,甲1(01)発明において,高屈折率アクリル系共重合体が含有する官能基(式1中のX及び式2中のAr)として,選択肢として多数列挙されているものの中から,「フェニルフェニル」基を選択することが,当業者が容易に想到することができたということはできない。
したがって,本件発明1は,甲1(01)に記載された発明及び甲1(01)?4(01)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 申立人鯨田は,本件明細書に記載される実施例1と比較例2を比較すると,フローマーク,透明度,鉛筆硬度,全透過光,アイゾッド衝撃強度,耐熱性,BSP幅のいずれについても,その効果に差が認められず,また,実施例7と比較例6の比較でも同様の傾向が認められるから,本件発明1は,「(B)ビフェニル基またはターフェニル基を含有する(メタ)アクリル系共重合体」を用いることによって,格別な効果を奏するものではないと主張する。
しかしながら,実施例1で用いた「(B1)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体-1」と,比較例2で用いた「(E2)アクリル系樹脂-2」とでは,その単量体の含有割合が異なるものである。一般に,共重合体を形成するために用いる単量体の含有割合が異なれば,得られる共重合体の特性等も異なるのが通常であるから,実施例1と比較例2,あるいは,実施例7と比較例6を単純に比較して,「(B)ビフェニル基またはターフェニル基を含有する(メタ)アクリル系共重合体」を用いる本件発明1の効果が顕著でないということはできない。
よって,申立人鯨田の主張は理由がない。

(2)本件発明2,4?10及び13?15について
本件発明2,4?10及び13?15は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(1)で述べたとおり,本件発明1が,甲1(01)に記載された発明及び甲1(01)?4(01)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2,4?10及び13?15についても同様に,甲1(01)に記載された発明及び甲1(01)?4(01)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)まとめ
以上のとおり,本件発明1,2,4?10及び13?15は,いずれも,甲1(01)に記載された発明及び甲1(01)?4(01)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,申立人鯨田が主張する取消理由2は理由がない。
したがって,取消理由2によっては,本件特許の請求項1,2,4?10及び13?15に係る発明についての特許を取り消すことはできない。

3 取消理由3-1(進歩性),3-3(進歩性)
(1)甲1(02)の記載(請求項1,4,11)によれば,甲1(02)には,以下の発明が記載されていると認められる。

「以下のメタクリル系共重合体1?99質量部と,ポリカーボネート樹脂1?99質量部と,を含む,メタクリル系樹脂組成物であって,
上記メタクリル系共重合体が,
(a)下記化学式1または2で表される芳香族または脂肪族メタクリレート20?99.9質量%と,
【化1】

式中,mは0?10の整数であり,Xはシクロへキシル基,フェニル基,メチルフェニル基,メチルエチルフェニル基,メトキシフェニル基,シクロへキシルフェニル基,クロロフェニル基,ブロモフェニル基,フェニルフェニル基,ベンジルフェニル基またはアミノフェニル基である,
【化2】

式中,mは0?10の整数であり,Yは酸素(O)または硫黄(S)であり,Arはシクロへキシル基,フェニル基,メチルフェニル基,メチルエチルフェニル基,メトキシフェニル基,シクロへキシルフェニル基,クロロフェニル基,ブロモフェニル基,フェニルフェニル基またはベンジルフェニル基である,
(b)(メタ)アクリル酸エステル,アクリル酸エステル,不飽和カルボン酸,酸無水物,ヒドロキシ基含有エステル,(メタ)アクリルアミド,不飽和ニトリル,アリルグリシジルエーテル,グリシジルメタクリレート,およびスチレン単量体からなる群から選択される単官能性不飽和単量体0.1?80質量%と,を含む単量体混合物を重合することにより製造されるメタクリル系共重合体であって,
前記メタクリル系共重合体と,重量平均分子量が25,000g/molであるビスフェノール-A型直鎖状ポリカーボネート樹脂とを2:8の比率で混合したブレンドを押出すことにより調製される2.5mmの試験片の,全光線透過率が10%以上であり,ヘイズメータにより測定されるヘイズが98%以下である,メタクリル系共重合体であり,
重量平均分子量が3,000?300,000g/molであり,屈折率が1.495?1.59である,メタクリル系共重合体である,
メタクリル系樹脂組成物。」(以下,「甲1(02)発明」という。)

(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1(02)発明とを対比する。
甲1(02)発明における「メタクリル系樹脂組成物」は,「ポリカーボネート樹脂」と「メタクリル系共重合体」を含むものであるから,本件発明1における「ポリカーボネート樹脂」と「(メタ)アクリル系共重合体」を含む「熱可塑性樹脂組成物」に相当する。
そうすると,本件発明1と甲1(02)発明とは,
「(A)ポリカーボネート樹脂;および(B)(メタ)アクリル系共重合体;を含み,前記(B)(メタ)アクリル系共重合体の屈折率は,1.495ないし1.590である,熱可塑性樹脂組成物。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
・相違点2
本件発明1では,(メタ)アクリル系共重合体が,「ビフェニル基またはターフェニル基を含有する」ものであるのに対して,甲1(02)発明では,「下記化学式1または2で表される芳香族または脂肪族メタクリレート・・・を含む単量体混合物を重合することにより製造される」ものであり,化学式1中のXが,「シクロへキシル基,フェニル基,メチルフェニル基,メチルエチルフェニル基,メトキシフェニル基,シクロへキシルフェニル基,クロロフェニル基,ブロモフェニル基,フェニルフェニル基,ベンジルフェニル基またはアミノフェニル基」であり,化学式2中のArが,「シクロへキシル基,フェニル基,メチルフェニル基,メチルエチルフェニル基,メトキシフェニル基,シクロへキシルフェニル基,クロロフェニル基,ブロモフェニル基,フェニルフェニル基またはベンジルフェニル基」である点(化学式は省略。以下同様。)。

イ 相違点2の検討
甲1(02)発明においては,メタクリル系共重合体が含有する官能基(化学式1中のX及び化学式2中のAr)として,各種のものが挙げられており,それらの中には,本件発明1における「ビフェニル基」に相当する「フェニルフェニル基」も含まれている。
しかしながら,甲1(02)には,上記官能基として,「フェニルフェニル基」が特に好ましいことは記載されておらず,また,実施例として,「フェニルフェニル基」を含有するメタクリル系共重合体を含むものが記載されているわけでもない。そして,本件発明1は,上記2(1)イで述べたとおり,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。
そうすると,甲2(02)や甲3(02)に,ビフェニル基を有する単量体を用いて得られる(メタ)アクリル系共重合体が,耐熱性や耐衝撃性などに優れることが記載され,甲5(02)に,ポリフェニルメタクリレートのガラス転移温度について記載されていることを考慮したとしても,甲1(02)発明において,メタクリル系共重合体が含有する官能基(化学式1中のX及び化学式2中のAr)として,選択肢として多数列挙されているものの中から,「フェニルフェニル基」を選択することが,当業者が容易に想到することができたということはできない。
したがって,本件発明1は,甲1(02)に記載された発明並びに甲1(02)?3(02)及び5(02)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明2?10及び13?17について
本件発明2?10及び13?17は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(2)で述べたとおり,本件発明1が,甲1(02)に記載された発明並びに甲1(02)?3(02)及び5(02)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2?10及び13?17についても同様に,甲1(02)に記載された発明並びに甲1(02)?3(02)及び5(02)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明11及び12について
本件発明11及び12は,本件発明1?10を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(2),(3)で述べたとおり,本件発明1?10は,甲1(02)に記載された発明並びに甲1(02)?3(02)及び5(02)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。そして,甲6(02)には,ポリカーボネート樹脂組成物に,衝撃補強剤を含有させることについて記載されているにすぎないから,本件発明11及び12は,甲1(02)に記載された発明並びに甲1(02)?3(02),5(02)及び6(02)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)まとめ
以上のとおり,本件発明2?10及び13?17は,いずれも,甲1(02)に記載された発明並びに甲1(02)?3(02)及び5(02)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず,また,本件発明11及び12は,いずれも,甲1(02)に記載された発明並びに甲1(02)?3(02),5(02)及び6(02)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,申立人岡本が主張する取消理由3-1,3-3は,いずれも理由がない。
したがって,取消理由3-1,3-3によっては,本件特許の請求項1?17に係る発明についての特許を取り消すことはできない。

4 取消理由3-2(進歩性),3-4(進歩性)
(1)甲4(02)の記載(クレーム1,3,4)によれば,甲4(02)には,以下の発明が記載されていると認められる。

「(A)ポリカーボネート樹脂10?99重量%と,
(B)重量平均分子量3,000?40,000g/molの高屈折率アクリル系共重合体1?90重量%と,を含む,
透明性及び耐擦過性が改良されたポリカーボネート樹脂組成物であって,
前記高屈折率アクリル系共重合体(B)の屈折率が1.495?1.590であり,
前記高屈折率アクリル系共重合体(B)が,下記化学式1または化学式2で表される芳香族または脂肪族メタクリレートまたはそれらの混合物の5?100重量%と,多官能性不飽和単量体の0?95重量%との共重合体または混合物である,ポリカーボネート樹脂組成物。
(化学式1)

式中,mは0?10の整数であり,Xはシクロヘキシル,フェニル,メチルフェニル,メチルエチルフェニル,プロピルフェニル,メトキシフェニル,シクロヘキシルフェニル,クロロフェニル,ブロモフェニル,フェニルフェニルまたはベンジルフェニルである。
(化学式2)

式中,mは0?10の整数であり,Yは酸素(O)または硫黄(S)であり,Arはシクロヘキシル,フェニル,メチルフェニル,メチルエチルフェニル,プロピルフェニル,メトキシフェニル,シクロヘキシルフェニル,クロロフェニル,ブロモフェニル,フェニルフェニルまたはベンジルフェニルである。」(以下,「甲4(02)発明」という。)

(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲4(02)発明とを対比する。
甲4(02)発明における「ポリカーボネート樹脂組成物」は,「ポリカーボネート樹脂」と「高屈折率アクリル系共重合体」を含むものであるから,本件発明1における「ポリカーボネート樹脂」と「(メタ)アクリル系共重合体」を含む「熱可塑性樹脂組成物」に相当する。
そうすると,本件発明1と甲4(02)発明とは,
「(A)ポリカーボネート樹脂;および(B)(メタ)アクリル系共重合体;を含み,前記(B)(メタ)アクリル系共重合体の屈折率は,1.495ないし1.590である,熱可塑性樹脂組成物。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
・相違点3
本件発明1では,(メタ)アクリル系共重合体が,「ビフェニル基またはターフェニル基を含有する」ものであるのに対して,甲4(02)発明では,「下記化学式1または化学式2で表される芳香族または脂肪族メタクリレートまたはそれらの混合物の5?100重量%と,多官能性不飽和単量体の0?95重量%との共重合体または混合物」であり,化学式1中のXが,「シクロヘキシル,フェニル,メチルフェニル,メチルエチルフェニル,プロピルフェニル,メトキシフェニル,シクロヘキシルフェニル,クロロフェニル,ブロモフェニル,フェニルフェニルまたはベンジルフェニル」であり,化学式2中のArが,「シクロヘキシル,フェニル,メチルフェニル,メチルエチルフェニル,プロピルフェニル,メトキシフェニル,シクロヘキシルフェニル,クロロフェニル,ブロモフェニル,フェニルフェニルまたはベンジルフェニル」である点(化学式は省略。以下同様。)。

イ 相違点3の検討
甲4(02)発明は,上記2で検討した甲1(01)発明と同様のものであり,相違点3も,相違点1と同様のものである。
甲4(02)発明においては,高屈折率アクリル系共重合体が含有する官能基(化学式1中のX及び化学式2中のAr)として,各種のものが挙げられており,それらの中には,本件発明1における「ビフェニル基」に相当する「フェニルフェニル」基も含まれている。
しかしながら,上記2(1)イで述べた相違点1や,上記3(2)イで述べた相違点2と同様の理由により,甲4(02)発明において,高屈折率アクリル系共重合体が含有する官能基(化学式1中のX及び化学式2中のAr)として,選択肢として多数列挙されているものの中から,「フェニルフェニル」基を選択することが,当業者が容易に想到することができたということはできない。
したがって,本件発明1は,甲4(02)に記載された発明並びに甲2(02)?5(02)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明2?10及び13?17について
本件発明2?10及び13?17は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(2)で述べたとおり,本件発明1が,甲4(02)に記載された発明並びに甲2(02)?5(02)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2?10及び13?17についても同様に,甲4(02)に記載された発明並びに甲2(02)?5(02)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明11及び12について
本件発明11及び12は,本件発明1?10を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(2),(3)で述べたとおり,本件発明1?10は,甲4(02)に記載された発明並びに甲2(02)?5(02)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。そして,甲6(02)には,ポリカーボネート樹脂組成物に,衝撃補強剤を含有させることについて記載されているにすぎないから,本件発明11及び12は,甲4(02)に記載された発明並びに甲2(02)?6(02)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)まとめ
以上のとおり,本件発明1?10及び13?17は,いずれも,甲4(02)に記載された発明並びに甲2(02)?5(02)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず,また,本件発明11及び12は,いずれも,甲4(02)に記載された発明並びに甲2(02)?6(02)に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,申立人岡本が主張する取消理由3-2,3-4は,いずれも理由がない。
したがって,取消理由3-2,3-4によっては,本件特許の請求項1?17に係る発明についての特許を取り消すことはできない。

5 取消理由4(サポート要件)
(1)申立人岡本は,本件発明1では,(A)ポリカーボネート樹脂及び(B)屈折率が1.495ないし1.640である(メタ)アクリル系共重合体(高屈折率(メタ)アクリル系重合体)が含まれることのみが規定され,他の成分である低屈折率(メタ)アクリル系重合体の含有量については何ら規定されていないところ,甲7(02)によれば,高屈折率(メタ)アクリル系重合体の含有量が少なく,低屈折率(メタ)アクリル系重合体の含有量が多い場合には,透明性が劣ったり,全光透過率が低くなったりすることが明らかであるから,本件発明1は,発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであると主張する。また,本件発明2?17についても同様に主張する。
しかしながら,本件明細書の記載(【0006】)によれば,本件発明1の課題の一つは,「耐熱性,衝撃性および耐スクラッチ性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供すること」であると認められる。そうすると,申立人岡本が主張するように,熱可塑性樹脂組成物につき,透明性及び全光透過率に優れたものが得られなかったとしても,そのことのみをもって,直ちに,本件発明1の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものということはできない。また,本件発明2?17についても同様である。
よって,申立人岡本の主張は理由がない。

(2)申立人岡本は,本件発明5では,(b1)(メタ)アクリレートが,式1で表される化合物であり,mは0ないし10の整数であることが特定されているところ,本件明細書の実施例においてその効果が示されているのは,mが0の場合のみであり,mが1以上の態様,特にmが10の場合など,エチレン鎖の長い態様については把握できず,特に,甲8(02)によれば,m=10の場合は,十分な耐熱性を奏さないことは,当業者であれば容易に理解できるから,本件発明5及びその上位概念である本件発明1は,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合しないと主張する。また,本件発明2?4及び6?17についても同様に主張する。
しかしながら,申立人岡本が示す甲8(02)は,本件発明1とは異なる構造を有するメタクリレートを対象としたものであるから,甲8(02)を根拠として,本件発明1についても,m=10の場合に,十分な耐熱性を奏さないということはできない。また,本件発明2?17についても同様である。
よって,申立人岡本の主張は理由がない。

(3)したがって,取消理由4によっては,本件特許の請求項1?17に係る発明についての特許を取り消すことはできない。

6 取消理由5(実施可能要件)
申立人岡本は,本件発明1では,(メタ)アクリル系共重合体の屈折率が規定されているところ,本件明細書にはその測定方法について何ら記載がなく,また,屈折率の測定方法は1つではなく,測定波長や測定温度によって,その値が異なることは公知であるため(甲9(02),甲10(02)),当業者は,本件発明1において,どのような(メタ)アクリル系共重合体を用いればよいか理解することができないから,本件発明1は,発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するものではないと主張する。また,本件発明2?17についても同様に主張する。
しかしながら,屈折率の測定方法に関し,申立人岡本が示す甲9(02)には,測定波長について,「JIS K 7142 プラスチック-屈折率の求め方」では,「測定波長D線」と定められていることが記載され,同甲10(02)には,測定温度について,「JIS K 7142 プラスチック-屈折率の求め方」では,「試料温度23℃」と定められていることが記載されている。そうすると,本件発明1における(メタ)アクリル系共重合体の屈折率について,本件明細書にその測定方法が記載されていないとしても,当業者は,上記のような通常の方法により測定がなされていると理解するといえる。本件明細書に屈折率の測定方法が記載されていないからといって,直ちに,本件発明1について,発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するものではないということはできない。また,本件発明2?17についても同様である。
よって,申立人岡本の主張は理由がない。
したがって,取消理由5によっては,本件特許の請求項1?17に係る発明についての特許を取り消すことはできない。

7 取消理由6(明確性)
申立人岡本は,上記6と同様に,屈折率は,測定方法によって値が変わるものであるところ,本件明細書には屈折率の測定方法については何ら記載がないから,本件発明1は明確でないと主張する。また,本件発明2?17についても同様に主張する。
しかしながら,上記6で述べたとおり,本件発明1における(メタ)アクリル系共重合体の屈折率について,本件明細書にその測定方法が記載されていないとしても,当業者は,上記のような通常の方法により測定がなされていると理解するといえる。本件明細書に屈折率の測定方法が記載されていないからといって,直ちに,本件発明1が明確でないということはできない。また,本件発明2?17についても同様である。
よって,申立人岡本の主張は理由がない。
したがって,取消理由6によっては,本件特許の請求項1?17に係る発明についての特許を取り消すことはできない。

第5 むすび
以上のとおり,申立人鯨田及び申立人岡本によるいずれの特許異議の申立てについても,特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1?17に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許の請求項1?17に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-03-06 
出願番号 特願2014-547090(P2014-547090)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C08L)
P 1 651・ 537- Y (C08L)
P 1 651・ 536- Y (C08L)
P 1 651・ 113- Y (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 内田 靖恵  
特許庁審判長 岡崎 美穂
特許庁審判官 小野寺 務
井上 猛
登録日 2017-05-19 
登録番号 特許第6145110号(P6145110)
権利者 ロッテ アドバンスト マテリアルズ カンパニー リミテッド
発明の名称 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品  
代理人 八田国際特許業務法人  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ