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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A47K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A47K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A47K
管理番号 1338172
異議申立番号 異議2017-700839  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-09-05 
確定日 2018-03-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第6109264号発明「タオルおよびタオルの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6109264号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6109264号(以下「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成29年3月17日付けでその特許権の設定登録がされ、特許異議の申立て期間内である平成29年9月5日に特許異議申立人柏木里実(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、平成29年11月22日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成30年1月24日に意見書が提出されたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1及び2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

【請求項1】
英式綿番手が15-30番手で、撚り数(回/2.54cm)が12-15回で、毛羽本数(3mm以上、本/10m)が41-60本である綿糸からなる精紡交撚糸の製織品であることを特徴とするタオル。
【請求項2】
紡績工程において、英式綿番手が15-30番手で、撚り数(回/2.54cm)が12-15回で、毛羽本数(3mm以上、本/10m)が41-60本である綿糸からなる精紡交撚糸を紡ぎ、
製織工程において、糊付けしていない前記精紡交撚糸をタオル生地に織り上げることを特徴とするタオルの製造方法。

第3 取消理由の概要
平成29年11月22日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。
なお、上記取消理由通知において、特許異議申立てされたすべての申立理由を通知した。

理由1
本件発明1及び2は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

理由2
本件特許は、明細書の発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由3
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由4
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

理由1について
本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

<刊行物>
甲第1号証:日比暉,“なぜ木綿? 綿製品の商品知識”,初版,財団法人日本綿業振興会,1994年2月4日,p.35、80、89-90
甲第2号証:特開2004-218092号公報
甲第3号証:繊維ニュース新聞,平成27年5月8日,9面
甲第4号証:繊維ニュース新聞,平成26年5月8日,8面
甲第5号証:繊維ニュース新聞,平成24年9月13日,6面
甲第6号証:繊維ニュース新聞,平成20年8月15日,7面

理由2について
(1) 本件発明1は「タオル」であり、「毛羽本数(3mm以上、本/10m)が41-60本である」とされているが、発明の詳細な説明には、タオルにする前の糸についての手羽本数しか記載しておらず、「タオル」となったものについての毛羽本数は測定されていない。すなわち、タオルを分解して糸を取り出し、その糸の毛羽本数を測定していないし、タオルを構成する糸の「毛羽本数」をどのように測定するのかも不明である。
また、発明の詳細な説明の【表1】に記載された毛羽本数が、図1あるいは図2に記載のどの工程後のものか不明である。

(2) 日本工業規格JIS L1095:2010 9.22.2 B法には、「毛羽試験機の種類及び試験条件を、試験報告書に付記する。」と記載されているところ、発明の詳細な説明には「毛羽本数」の測定法における試験機の種類が記載されていない。図3?6には「毛羽本数:JIS L1095 B法 3mm以上」との記載があるが、どのような毛羽試験機を使用したのか、どのような試験条件で試験したのか記載がない。

(3) 発明の詳細な説明【0024】【表1】のサンプルNO.1の糸は、英式綿番手が「14.7」であると記載され、「本発明のタオルに採用した精紡交撚糸のサンプルをNO.1-NO.5に示し」と記載しているが、本件発明1は「英式綿番手が15-30番手」であるため、英式綿番手が「14.7」の糸は含まれない。

<参考文献>
甲第2号証:特開2004-218092号公報
甲第7号証:田中正躬編,“JIS 一般紡績糸試験方法 JIS L1095:2010 (JTETC/JSA)(2015確認)”,財団法人日本規格協会,平成22年6月21日,p.23
甲第8号証:特開2001-271232号公報

理由3について
本件発明1及び2の糸は「精紡交撚糸」であるところ、一般的な「リング紡績法による精紡交撚糸」を含むものであるが、発明の詳細な説明には「本発明者はこの精紡工程において試行錯誤を繰り返し、従来では困難であると思われていた糸が実現できる知見を得た。」(【0023】)と記載され、図3?6には「Compact Siro」(コンパクト サイロ)と記載されるのみで、一般的な精紡交撚法では、いかなる条件を選択すれば本件発明1及び2の「精紡交撚糸」が得られるのかは記載されていない。

理由4について
本件発明1は「タオル」であり、「毛羽本数(3mm以上、本/10m)が41-60本である」とされているが、これはタオルを製造する前の糸の毛羽本数のことである。糸の段階とタオルの段階では「毛羽本数」は大きく変化するため、タオルを製造する前の糸の毛羽本数により特定されている本件発明1は明確でない。

第4 取消理由についての判断
1 理由1について
1-1 甲各号証の記載事項
(1) 甲第1号証
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「繊維が長ければ細い糸を作ることができるが、繊維が短くなると、あまり細い糸は引けなくなる。・・・一般的に言って、繊維長とそれによって紡績できる糸の太さ(番手)は、次のとおりである。
中繊維綿 20番手以下の太い糸
中長繊維綿 50番手以下
長繊維綿 80番手以下
超長繊維綿 80番手より細い糸
・・・
20番手といえば、タオルによく使われる太さであり、メリヤス肌着は30番手、40番手が多い。」(35頁上欄4行?下欄2行)
イ 「綿糸の場合は、1ポンド(標準重量)の糸の長さが、単位長(840ヤード)の何倍かで、糸の太さ(番手)を表わす。例えば、1ポンドの綿糸の長さが840ヤード(768メートル)のものは1番手、八、四〇〇ヤードのものは10番手、八四、〇〇〇ヤードのものは100番手という。
これは英国式番手で、日本では、綿糸のほか化合繊紡績糸、綿混紡糸、絹紡糸に使っているが、・・・」(80頁上欄3?11行)
ウ 89頁左上には、[撚り係数=1インチ間の撚り数/√番手]という関係式が記載されている。
エ 89頁右上の表中の「撚り、綿糸の種類、撚り係数」の例として、「甘撚り、タオル用の糸、3.18?3.3」が記載されている。
オ 「○2 精紡交撚糸
双糸のように撚り合わさった構造をしている単糸で、精紡工程で2本の粗糸をそれぞれドラフト・ローラーで細くしたあと、1個のリングにかけて撚り合わせてつくる。アイディアとしては昔からあったが、綿では一九八六年に興和紡績がはじめた。毛ではIWSが開発したサイロスパンが同じ原理である。
精紡交撚糸の強度は、同じ太さの単糸に比べ10%ほど強いので、その分甘撚りにしてソフト感を強めることもできる。バルキー性があり、しかも表面が滑らかで光沢があり、単糸に比べてムラが少なく、通常の撚り糸よりかなり毛羽が少ない。
精紡交撚は、細番手化も可能で、異素材の組み合わせ、強撚、甘撚りなど撚りの変化、粗糸の組み合わせなどによって、いろいろなバリエーションの可能性があり、綿素材の多様化に役立っている。」(90頁上欄1?19行、当審注:丸数字については便宜上「○2」のように表記する。)

(2) 甲第2号証
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸湿性と抗ピル性とを併せ持ち、かつウォッシュアンドウエア性、イージーケア性に優れたポリエステル系短繊維織編物に関し、更にはグラフト重合加工繊維の欠点である物性低下、湿潤時の寸法不安定性、しわや低乾燥性、ヌメリ風合等を改善する技術に関する。」
イ 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリエステル短繊維系でインナー及びアウター用織編物やタオル、芯地、マット、シーツ等のインテリア、副資材、寝装用等に好適な織編物を提供することを主目的とするものであり、吸湿性を有する2成分複合紡糸繊維を用いることなく、ポリエステル単成分紡糸繊維でグラフト重合加工された繊維を用い、かつエア交絡紡績技術を用いて吸湿性と抗ピル性の両特性を具備するソフトなポリエステル短繊維織編物を得ることを目的とする。更にはグラフト重合加工繊維の欠点である物性低下、湿潤時の寸法不安定性、低乾燥性、ヌメリ風合等が改善された吸湿性と抗ピル性を併せ持ち、かつかつウォッシュアンドウエア性、イージーケア性に優れたポリエステル短繊維織編物を提供しようとするものである。」
ウ 「【0027】
次に、本発明における紡績糸は、リング紡績法を利用して製造するが、本発明においては、特に、2本の粗糸をドラフト後に撚糸ゾーンで引き揃えながら撚糸するサイロスパン方式や、粗糸をドラフトしながらその繊維に他の繊維を捲きつけるラップスピニング(トライスピン)方式による均斉性のよい精紡交撚糸方式とすることが好ましい。また、コンパクトヤーン等に見られるように精紡工程において、ドラフトゾーンを出て、撚糸ゾーンに進んだ直後の糸の表面毛羽をエアで糸の進行方向に吸引しながら繊維毛羽を糸に撚り込み、収束させる方式とすることが好ましい。この場合、通常のリング紡績糸工程でエア吸引する方式より2本の粗糸を用いるサイロスパン方式でエア吸引させる方式の採用がより好ましい。
【0028】
精紡交撚糸は2本の粗糸をドラフトゾーンで別々にドラフトした後、フロントローラから送り出された2本の繊維束を合流させてリング糸と同様に加撚し、1本の紡績糸として紡出する方法であり、撚りの極めて少ない状態で配列度の高い2本の繊維束が相互に巻きついて糸が形成されるため、繊維のマイグレーションが少なく、毛羽の少ないきれいな糸が得られる。
さらに、本発明においては、上記紡績方法とポリエステル短繊維の繊度と繊維形状を特定することによる相乗効果によって、より毛羽の少ない紡績糸を得ることができる。」
エ 「【0031】
本発明における 紡績糸の撚り係数は特に制約はないが、通常の2.8から5.0程度であり、好ましくは、3.0から4.5の範囲である。2.8未満では短繊維の収束性が悪化し、紡績糸強力が得られず、5.0以上では収束性が増し、毛羽脱落性が若干向上するが、嵩性が減少し、風合も硬化する傾向がある。また、紡績糸はビリ止めセットが施されていてもよい。紡績糸を構成する短繊維のカット長は通常の32mmから76mmのものが適用されるが、毛羽長及び毛羽絡み度合の少なさから51mm以下が好ましい。」
オ 「【0039】
得られた原綿及びグラフト重合加工綿を用いて、さらには、ポリエステルマルチフィラメント仮撚り加工糸を用いて、表1に示す構成の、紡績糸揚がりで英式綿番手30番手の糸を得た。
得られた糸を用いて、22ゲージ、ループ長325mm、100Wのスムース組織の編物を得た。次いで該編物を開反し、ウェット処理後、乾燥し、180℃で40秒間の中間セットを施した。次いで70℃でソーダ灰12%omfとトリポリリン酸ナトリウム0.15%omfを3回に分割投入しながらナトリウム塩化処理を行ない、湯洗した。その後、脱水乾燥し、160℃、60秒間の仕上げセットを行ない、生成りのスムース編地を得た。」
カ 「【0040】
紡績糸、生地は以下の条件で測定、評価した。
(1) 糸毛羽数:10m当りの毛羽長さ1mm以上3mm未満、3mm以上5mm未満及び5mm以上の毛羽個数を示す。 測定器は敷島紡績社製F-1インデックステスターを使用した。
(2)公定水分率 : JIS L 1095に準拠した。
(3)耐光堅牢度 : JIS L 0842 紫外線カーボンアーク灯光試験(第3露光法)に準拠した。
(4)寸法変化率 : JIS L 1018 F-1法(スクリーン乾燥)に準拠した。
(5)抗ピリング性 : JIS L 1076 A法(ICI型 5時間)に準拠した。
(6) 風合 : 5人のパネラーによる触感判定に拠った。
○:ソフトでドライ感に優れる、 ○△ :若干ヌメリ感がある、
×:ヌメリ感が強い、又は粗硬感が強い。
(7) 総合評価欄の○は良、○△やや良、 ×は不良を意味する。
紡績糸及び生地の測定、評価結果は、表1に示した。 なお、表中でカード・精紡交撚の表示は、カードで混綿して粗糸を得て、精紡交撚(サイロスパン方式)したことを意味する。」
キ 「【0041】
実施例1は、グラフト重合原綿と未処理原綿をカード混綿して粗糸を得て精紡交撚したものであり、実施例2は実施例1と同じ粗糸とポリエステルマルチフィラメント仮撚り加工糸とをドラフトゾーンで引き揃えて施撚して精紡交撚したものである。実施例4は、該紡績糸に更にポリエステルマルチフィラメント仮撚り加工糸をエア圧4.0kg/cm^(2)、ヘバーライン社製ノズル(P133型)を用い、300m/分でエア混繊し、糸表面をフィラメントで被覆したものである。比較例1は、実施例1と同様の工程で、比較例2は、グラフト重合綿とフィラメント仮撚り加工糸を精紡交撚したもので、比較例3は、グラフト重合原綿100%を精紡交撚したものである。」
ク 「【0042】
【表1】



ケ 「【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、吸湿性を有する2成分複合紡糸繊維を用いることなく、グラフト重合加工されたポリエステル繊維を用い、吸湿性が高く、かつ従来のグラフト重合繊維の欠点であった湿潤時の寸法不安定性やヌメリ風合及び耐光堅牢度が改善でき、同時に抗ピル性に優れたポリエステル系短繊維織編物を得ることが可能である。また、特定断面形状のポリエステル繊維を用いることで硬さを改善できる。その結果、ポリエステルの特性を損うことなく十分な吸湿性と抗ピル性と寸法安定性を有するポリエステル短繊維織編物を得ることが可能であり、本発明は、ポリエステル短繊維の用途展開を制約していたインナー及びアウター用織編物の他、タオル、芯地、マット、シーツ等のインテリア、副資材、寝装用等に広範に活用できる。」

(3) 甲第3号証
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
「コンパクトサイロスパン
リング紡績糸の極限まで毛羽を減らし、超甘撚り糸にもかかわらず強力を維持できる。
原綿=ピマ100%、ペルー綿100%など▽主要用途=タオル、ニット▽販売形態=糸」(「旭紡績」の欄)

(4) 甲第4号証
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
「「エンジェル」
超甘撚りで毛羽の少ないコンパクト紡機で生産した、たいへんソフトな風合いが特徴です。
原綿=ピマ100%
販売=糸
主要用途=タオル、ニット」(「旭紡績」の欄)

(5) 甲第5号証
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
「一方、新綿糸は従来のTNS方式に加え、スライバーを2分割する世界初のダブルスライバー方式を開発、応用した。安定した高ドラフトが可能となり、通常の綿糸における双糸、サイロ、コンパクト糸の持つ優れた特性を併せ持つ高品質の単糸を打ち出す。・・・タオル専用糸では、パイル糸20番手単糸、30番手双糸とも無糊製織を可能としている。」(KBツヅキ「天然繊維の弱点克服」の記事欄)

(6) 甲第6号証
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
「販売してきた環境に優しいタオルは「ムコタオル」と「無糊パイル」の2品種。・・・「ムコタオル」はパイル、地経糸に糊付けしない完全無糊(緯糸はもともと糊付けしない)、「無糊パイル」はパイル糸を糊付けしないで生産してきた。」(新田タオル「環境負荷軽減数値で具体化」の記事欄)

1-2 判断
(1) 本件発明1について
ア 甲第1号証の上記1-1(1)ア?オには、木綿製品の商品知識として、(ア)中繊維綿に該当する20番手の太さの綿糸の用途としてタオルがあること、(イ)英国式番手に関する説明、(ウ)「番手」と「撚り係数」の関係、(エ)甘撚りの綿糸の例としてタオル用の糸があり、その撚り係数は3.18?3.3であること、(オ)「精紡交撚糸」に関する一般的な説明が、それぞれ記載されているものの、これら(ア)?(オ)は甲第1号証の独立した項としてそれぞれ別個に記載されたものであって、これら(ア)?(オ)の事項を全て寄せ集めた特定の綿糸を用いたタオルが示されたものとして把握することはできない。
よって、綿糸で製織されたタオルについて甲第1号証から把握できる発明としては、せいぜい「20番手の太さで撚り係数が3.18?3.3の甘撚りの綿糸で製織されたタオル。」(以下「甲1A発明」という。)であって、当該「20番手の太さで撚り係数が3.18?3.3の甘撚りの綿糸」が「精紡交撚糸」として紡がれたものであることまでの記載や示唆があるとはいえない。
イ そうすると、本件発明1は、甲1A発明とは、「英式綿番手が15-30番手で、撚り数(回/2.54cm)が12-15回で、毛羽本数(3mm以上、本/10m)が41-60本である綿糸からなる精紡交撚糸の製織品」である点、すなわち、番手、撚り数、毛羽本数を特定の範囲にした綿糸からなる精紡交撚糸による製織品である点で相違する。
そして、上記相違点については、甲第2?6号証には記載も示唆も見当たらない。
ウ しかも、本件発明1は、上記相違点により、本件特許明細書記載の「本発明のタオルの原糸となる精紡交撚糸は、番手が小さくて太いので単位長さ当たりの繊維量が多くて吸水性に優れ、かつ十分なふくらみを有し、撚り数が少なくてやわらかさを備えているので、タオルとして優れた吸水性および肌触りの感触を実現できる。また、製織において阻害要因となる毛羽数が少ないので糊付け処理が不要であり、糊付け処理を施していない状態の精紡交撚糸を製織することで、糊抜き処理が不要となって、製造工程の簡略化と排水処理の容易化を実現できる。」(【0015】)という効果を奏するものである。
エ よって、本件発明1は、甲1A発明及び甲第2?6号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2) 本件発明2について
ア 上記(1)アを踏まえると、タオルの製造方法について甲第1号証から把握できる発明としては、せいぜい「20番手の太さで撚り係数が3.18?3.3の甘撚りの綿糸で製織するタオルの製造方法。」(以下「甲1B発明」という。)であって、当該「20番手の太さで撚り係数が3.18?3.3の甘撚りの綿糸」が「精紡交撚糸」として紡ぐことまでの記載や示唆があるとはいえない。
イ そうすると、本件発明2は、甲1B発明とは、
「紡績工程において、英式綿番手が15-30番手で、撚り数(回/2.54cm)が12-15回で、毛羽本数(3mm以上、本/10m)が41-60本である綿糸からなる精紡交撚糸を紡」ぐ点、すなわち、番手、撚り数、毛羽本数を特定の範囲にした綿糸からなる精紡交撚糸を紡ぐ点(相違点a)、及び、
「製織工程において、糊付けしていない前記精紡交撚糸をタオル生地に織り上げる」点(相違点b)
で相違する。
そして、少なくとも上記相違点aについては、甲第2?6号証には記載も示唆も見当たらない。
ウ しかも、本件発明2は、上記相違点a及びbにより、上記(1)ウに示したとおりの効果を奏するものである。
エ よって、本件発明2は、甲1B発明及び甲第2?6号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

1-3 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1A発明及び甲第2?6号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、本件発明2は、甲1B発明及び甲第2?6号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件発明1及び2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものではないから、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。

2 理由2について
(1) 上記理由2(1)について
タオル等の製織品の分野において、当該製織品に係る発明を特定するに際して、製織に用いる「糸」によって、その特徴を表すようにすることは、例えば、特許第5290840号公報(特許権者が提出した乙第2号証)、特許第3040580号公報(同乙第4号証)にみられるように普通に行われていることであるし、また、そのような構成により、発明がどのようなものであるかを特定することができるものと認められる。そして、本件発明1は、上記の例と同様に、製織に用いる「糸」によって、製織品に係る発明を特定するものであり、その請求項1に記載されたとおり、「英式綿番手が15-30番手で、撚り数(回/2.54cm)が12-15回で、毛羽本数(3mm以上、本/10m)が41-60本である綿糸からなる精紡交撚糸」という「糸」を用いた「製織品」の「タオル」であることが発明の特徴であると解するのが相当である。また、「英式綿番手が15-30番手で、撚り数(回/2.54cm)が12-15回で、毛羽本数(3mm以上、本/10m)が41-60本である綿糸からなる精紡交撚糸」の紡績工程や成績試験結果は本件特許明細書の【0017】?【0029】に示されている。
そうすると、本件発明1は、製織された「タオル」自体の番手、撚り数、毛羽本数等を特定する発明でないし、本件発明1の「英式綿番手が15-30番手で、撚り数(回/2.54cm)が12-15回で、毛羽本数(3mm以上、本/10m)が41-60本である綿糸からなる精紡交撚糸」が紡績工程によって得られた精紡交撚糸を定義するものであることも明らかである。
よって、上記理由2(1)によって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえない。

(2) 上記理由2(2)について
本件特許の願書に添付された【図3】?【図5】は、本件発明1及び2に用いられる精紡交撚糸に該当するサンプルを試験した成績表であって、当該成績表は、その記載内容からみて、公的機関である愛知県産業技術研究所繊維産業技術センターが作成したものと認められる。そして、【図3】?【図5】の備考欄の記載からは、サンプルについての毛羽本数の試験方法が、「JIS L1095 B法 3mm以上」で行われたことが理解できる。
ここで、当該【図3】?【図5】には、当該毛羽本数の試験方法が、いかなる試験機を使用したかは明らかにされていないが、試験を行った愛知県産業技術研究所繊維産業技術センターの報告(乙第6及び7号証)を踏まえれば、当該毛羽本数の試験は、敷島テクノ株式会社製の「F-INDEXTESTER」を使用した「JIS L1095 B法」に従ったものであることが推認できる。
よって、上記理由2(2)によって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明1及び2の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとまではいえない。

(3) 上記理由2(3)について
本件特許明細書の【0024】及び【図3】?【図5】の「試料名」記載から、サンプルNO.1は「15/1 コンパクト糸」、すなわち15番手の精紡交撚糸であることが理解される。そして、【図3】?【図5】の「依頼項目」の欄に「番手(正量)」とあることから、試験等成績の「番手」欄の「14.7/1」は、15番手のサンプルNO.1が、測定値(正量値)としては14.7番手であって、その値が【0024】【表1】に記載されていることが理解できる。以下同様に、サンプルNO.2は「20/1 CD Compact Siro」、すなわち20番手の精紡交撚糸であって、測定値(正量値)が19.5番手であり、サンプルNO.3は「20/1 CM Compact Siro A」、すなわち20番手の精紡交撚糸であって、測定値(正量値)が20.2番手であり、サンプルNO.4は「20/1 CM Compact Siro B」、すなわち20番手の精紡交撚糸であって、測定値(正量値)が20.4番手であることが理解できる。
このように、試料の表示値と実際の測定値(正量値)には若干の開差がみられるが、一般に、綿糸を含む糸一般について、その原料や紡績などの製造工程を踏まえれば、その太さを全く均一に紡ぐことは困難であって、実際には若干の番手変動が存在することは当業者において明らかであり、一般の商業取引においては、その代表値を製品の番手表示値として使用されていることを考慮すれば、本件発明1及び2における「英式綿番手が15-30番手」とは、製品としての糸の番手表示値を意味するものと解するのが相当である(なお、製品としての糸の番手表示値ではなく、正量値を示すものであるとしても、有効数字を考慮すれば、サンプルNO.1の糸は、本件発明1及び2の「15-30番手」に含まれるということもできる。)。
そうすると、サンプルNO.1の番手測定値(正量)が14.7番手であることをもって、直ちにサンプルNO.1が本件発明1及び2に含まれないものとすることはできない。
よって、上記理由2(3)によって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明1及び2の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとまではいえない。

(4) 小括
以上のとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとすることはできないから、その特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。

3 理由3について
本件発明1及び2の「精紡交撚糸」は、本件特許明細書及び図面の実施例の記載では、「Compact Siro」(コンパクト・サイロ糸)のみが用いられているが、例えば、甲第2号証の【0027】?【0028】(上記「第4 1-1(2)ウ」)にみられるように、サイロスパン方式やラップスピニング(トライスピン)方式のほか、通常のリング紡績糸工程であっても エア吸引させる方式をとることにより、精紡交撚糸の毛羽を少なくすることができることが窺えるところ、コンパクト・サイロ糸以外の一般的な精紡交撚糸の紡績方法によっても、本件発明1及び2に規定する番手・撚り数・毛羽本数の精紡交撚糸を得ることが可能であることは、当業者であれば十分に認識することができるものといえる。
そうすると、本件発明1及び2において、精紡交撚糸の紡績方式が特定されていないことをもって、本件発明1及び2が発明の詳細な説明に記載したものでないとすることはできない。
よって、本件特許の請求項1及び2の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとすることはできないから、その特許は特許法第113条第4号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。

4 理由4について
上記2(1)に示したとおり、タオル等の製織品の分野においては、当該製織品に係る発明を特定するに際して、製織に用いる「糸」によって特徴を表し、それにより、発明がどのようなものであるかを特定することができるものと認められる。
そして、本件発明1及び2は、その請求項1及び2に記載されたとおり、上記のように、製織に用いる「糸」によって、製織品に係る発明を特定する発明であって、「英式綿番手が15-30番手で、撚り数(回/2.54cm)が12-15回で、毛羽本数(3mm以上、本/10m)が41-60本である綿糸からなる精紡交撚糸」という「糸」を用いた「製織品」の「タオル」であると理解することができる。
よって、本件特許の請求項1及び2の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできないから、その特許は特許法第113条第4号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。

第5 むすび
以上のとおり、上記取消理由によっては、本件発明1及び2に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-02-28 
出願番号 特願2015-167304(P2015-167304)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A47K)
P 1 651・ 537- Y (A47K)
P 1 651・ 536- Y (A47K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小石 真弓  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 千壽 哲郎
蓮井 雅之
登録日 2017-03-17 
登録番号 特許第6109264号(P6109264)
権利者 一広株式会社
発明の名称 タオルおよびタオルの製造方法  
代理人 特許業務法人森本国際特許事務所  
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