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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1338173
異議申立番号 異議2017-701006  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-10-24 
確定日 2018-03-13 
異議申立件数
事件の表示 特許第6122538号発明「内服組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6122538号の請求項1?6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6122538号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成28年2月18日(優先権主張 平成27年6月8日、平成27年10月21日)を出願日とする特願2016-28694号の一部を、平成28年9月13日に新たに特許出願したものであって、平成29年4月7日にその特許権の設定登録がされ、平成29年4月26日に特許公報が発行され、その後、その特許に対し、平成29年10月24日付けで特許異議申立人古藤弘一郎により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件特許発明
特許第6122538号の請求項1?6の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される下記のとおりのものである(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明6」という。まとめて「本件特許発明」ということもある。)。

「【請求項1】
オンジエキスとステアリン酸塩とを含有し、生薬としてオンジのみが配合される内服組成物であって、上記ステアリン酸塩がステアリン酸マグネシウムであり、ステアリン酸塩の含有量が、オンジエキス1質量部に対し0.036?100質量部の範囲に設定されることを特徴とする内服組成物。
【請求項2】
オンジエキスを、内服組成物全体に対し1質量%以上含有する請求項1記載の内服組成物。
【請求項3】
原生薬1?10gから抽出されたオンジエキスを一日量として含有する請求項1または2記載の内服組成物。
【請求項4】
オンジエキスとして、原生薬からの収率が3?50質量%のものを用いる請求項1?3のいずれか一項に記載の内服組成物。
【請求項5】
固形組成物として成型された請求項1?4のいずれか一項に記載の内服組成物。
【請求項6】
さらに、結合剤を含有する請求項1?5のいずれか一項に記載の内服組成物。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人古藤弘一郎は、証拠として甲第1号証?甲第18号証(以下、「甲1」?「甲18」という。)を提出し、請求項1?6に係る特許は特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、および特許法第36条第6項第1号にそれぞれ違反してされたものであるから、請求項1?6に係る特許を取り消すべきものである旨、理由1?3として主張している。
理由1:進歩性欠如(特許法第29条第2項、請求項1?6、甲1?3、6 ?14、16)
理由2:進歩性欠如(特許法第29条第2項、請求項1?6、甲3、1、4 ?14、16?18)
理由3:記載要件非充足(特許法第36条第4項第1号、同法第36条第6 項第1号、請求項1?6)

第4 提出された証拠について
甲1?甲18には、それぞれ、次の記載がある。

甲1:国際公開第2005/120533号(原文は英語、翻訳文は当審にて作成。)

1a「本発明は、虚血性心疾患の予防、または処置のためのオンジ抽出物に関し、さらには、虚血性心疾患により機能が低下した心臓を回復するためオンジ抽出物、およびそれを含む医薬組成物および健康食品に関する。」(段落[1])

1b「例1:熱水抽出によるオンジ抽出物の調製
オンジの500gの乾燥粉末を、3回蒸留した水1リットルが入ったフラスコ中に入れ、100℃で1時間の熱水抽出を行った。抽出物はガーゼで濾過した。濾液は真空濾過器(Eyela社、日本)で濃縮し、凍結乾燥して本発明のオンジ抽出物を調製した。結果として115gの乾燥抽出物を得た。」(段落[25]?[26])

1c「本発明のオンジ抽出物は、医療応用において経口及び非経口投与の様々な製剤に処方されることができる。そのような製剤では、希釈剤または賦形剤を使用でき、例えばフィラー、増粘剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤等が例示される。」(段落[62])

1d「調剤例2:錠剤の調製
例1で調製されたオンジ抽出物100.0mg、90.0mgのコーンスターチ、175.0mgのラクトース、15.0mgのL-ヒドロキシプロピルセルロース、5.0mgのポリビニルピロリドン90、および適切な量のエタノールを均一に混合し、湿式造粒を行い、1.8mgのステアリン酸マグネシウムと混合して錠剤400mgを得た。」(段落[78])

1e「調剤例3:カプセル剤の調製
例1で調製されたオンジ抽出物100.0mg、83.2mgのコーンスターチ、175.0mgのラクトース、および1.8mgのステリン酸マグネシウムを均一に混合し、360mgの組成物をカプセルに封入した。」(段落[81])

甲2:Metallic stearate(Baerlocher GmbH, Version 2, December 2005)(原文は英語、翻訳文は当審にて作成。)
2a「ステアリン酸金属塩の疎水性の性質は粉末形態の医薬および化粧料製品が水分を吸収し、固まることを妨げる。
・・・(略)・・・ステアリン酸金属塩は0.05から1%の範囲という比較的低い用量でこれらの品目に添加されるが、欧州でのみ、このような利用においてかなりの量のステアリン酸金属塩が求められる。」(8頁下から6?行)

甲3:「単味生薬のエキス製剤の開発に関するガイドライン」案
なお、甲3は平成26年9月1日から同9月30日まで厚生労働省にて意見募集、同省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp)の「パブリックコメント」欄及び電子政府の総合窓口[e-gov](http://www.e-gov.go.jp/)の「パブリックコメント」に掲載されたものと認める。
3a「5 オンジ
【用法及び用量】
大人(15歳以上)は1日量5gを、水約600mgLをもって煮て約400mLに煮詰め、かすをこして取り去り、食前又は食間3回に分服する。
【効能又は効果】
高齢者の記憶力の改善」(10頁5?10行)

甲4:医薬品添付文書「漢方製剤クラシエ人参養栄湯エキス細粒」(2010年7月改訂(第2版))
4a「1.組成
本薬1日量(7.5g)中
日局ニンジン ・・・・・・・・・・・・3.0g
日局トウキ ・・・・・・・・・・・・・4.0g
・・・(略)・・・
日局オンジ ・・・・・・・・・・・・・2.0g
・・・(略)・・・
上記の混合生薬より抽出したニンジン養栄湯エキス粉末6,700mgを含有する。
添加物として日局ステアリン酸マグネシウム、日局形質無水ケイ酸、日局結晶セルロース、含水二酸化ケイ素を含有する。」(1頁目左欄)

4b「淡かっ色?かっ色の細粒で、特異なにおいがあり、味はわずかに苦くて甘い。」(1頁目左欄「2.製剤の性状」表中、「剤形(色・形状)」の欄)

甲5:特開2011-241148号公報(下線は当審で付与。)
5a「【請求項1】
(2S,3S)-3-[[(1S)-1-イソブトキシメチル-3-メチルブチル]カルバモイル]オキシラン-2-カルボン酸モノナトリウムを有効成分とし、油類を安定化剤として含有する医療用固形製剤。
・・・(略)・・・
【請求項3】
油類がステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、カルナウバロウ、グリセリン脂肪酸エステル、タルク、ポリエチレングリコール類及び安息香酸エステル類から選択されたものである請求項1又は2記載の医療用固形製剤。
・・・(略)・・・
【請求項6】
油類を固形製剤の2?35%含有する請求項1?5記載の医療用固形製剤。」

5b「【0007】
本発明を更に詳細に説明する。・・・(略)・・・
本発明の医療用固形製剤において、油類としては、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、カルナウバロウ、グリセリン脂肪酸エステル、タルク、ポリエチレングリコール類(ポリエチレングリコール等)及び安息香酸エステル類(パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等)が挙げられ、好ましくはステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、カルナウバロウ、グリセリン脂肪酸エステル及びタルクが挙げられ、さらに好ましくはステアリン酸が挙げられる。
油類は2種以上を用いても良い。
・・・(略)・・・
油類の量は、好ましくは固形製剤の2?35%で、更に好ましくは固形製剤の5?25%である。・・・(略)・・・」

5c「【0013】
次に本発明の医療用固形製剤の安定性試験の結果を示す。
後記の表1から明らかなように、油類(ステアリン酸)を含有する実施例1の混合末は、含有しない比較例1の混合末と比較してジオール体の生成量(即ち、含有量。以下同じ。)が少なかった。
同じく、油類(ステアリン酸)を含有する実施例2の調剤末は、含有しない比較例2の調剤末と比較してジオール体の生成量が少なかった。
また後記表3から明らかなように、油類(ステアリン酸)を含有する実施例3,4の錠剤は、油類を含有しない比較例10,11の錠剤と比較して、ジオール体の生成量が少なかった。
従って、油類を含有する本発明の医療用固形製剤は、油類を含有しない固形製剤に比べ化合物Aの分解が抑えられた有用な製剤である。
また、ジオール体の生成量に関し、表1,3から次の結果が得られた。
比較例1/実施例1=0.020/0.003=6.7
比較例11/実施例4=0.289/0.023=12.6
即ち、油類(ステアリン酸)の有無による混合末段階での比較例と実施例とのジオール体の生成量の比に対し、水を用いた造粒した錠剤での比を比較するとその比は拡大しており、水造粒工程で油類を添加することで、水を用いて造粒することによる化合物Aの分解が抑制されることを確認できた。
【0014】
水分に不安定な有効成分を含有する医療用固形製剤において、製剤の混合工程で、油類を配合することで、活性成分に被膜を設けることで、水分による分解が抑えられた安定な医療用固形製剤を得ることができる。
また打錠圧により分解する有効成分を含有する錠剤において、製剤の混合工程で、油類を配合することで、調剤末の製錠において、油類が緩衝材となり有効成分の分解を防ぐことができ、安定な医療用固形製剤を得ることができる。」

5d「【0025】
安定性試験1
・・・(略)・・・
【0027】
表1から明らかなように、油類(ステアリン酸)を含有する実施例1の混合末は、含有しない比較例1の混合末と比較してジオール体の生成量が少なかった。
同じく、油類(ステアリン酸)を含有する実施例2の調剤末は、含有しない比較例2の調剤末と比較してジオール体の生成量が少なかった。
造粒工程の前後に関し、比較例1と2を比較することで化合物Aが造粒することで分解することが判明したが、実施例1,2においては、造粒による化合物Aの分解が効果的に押さえられた。」

甲6:韓国公開特許第10-2010-0070493号公報(原文は韓国語、翻訳文は当審にて作成し、下線を付与。)
6a「【請求項1】
アルコール又はアルコール水溶液を溶媒にして抽出されるオンジ(Polygala tenuifolia)抽出物を有効成分として含有する勃起不全予防及び治療用組成物。」

6b「【請求項4】
アルコール又はアルコール水溶液を溶媒にして抽出されるオンジ(Polygala tenuifolia)抽出物を有効成分として含有する勃起不全予防及び改善用健康機能食品。」

6c「技術分野
【0001】
本発明は、オンジ(Polygala tenuifolia)抽出物を有効成分として含有する勃起不全予防及び治療用組成物に関するものであって、より詳細には、アルコール又はアルコール水溶液を溶媒にして抽出されるオンジ(Polygala tenuifolia)抽出物を有効成分として含有する勃起不全予防及び治療用組成物に関するものである。」

6d「【0054】
<実施例1>オンジ50%エタノール水溶液抽出物の製造
【0055】
オムニハーブ(ソウル市東大門区)で購入したオンジの重量(100g)を測定した後、オンジ重量の10倍の50%エタノール水溶液(1l)に浸漬し、80℃で3時間の間に2回反復抽出した。上記抽出物をろ過したろ過液を減圧濃縮機を用いて60brixまでに減圧濃縮した後、凍結乾燥し粉末状態のオンジ50%エタノール水溶液抽出物(30g)を取得した。」

6e「【0086】
<1-2>錠剤の製造
【0087】
実施例1の抽出物 100mg
【0088】
トウモロコシ澱粉 100mg
【0089】
乳糖 100mg
【0090】
ステアリン酸マグネシウム 2mg
【0091】
上記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法により打錠して錠剤を製造した。」

甲7:韓国公開特許第10-2007-0018571号公報(原文は韓国語、翻訳文は当審にて作成し、下線を付与。)
7a「【請求項1】
オンジ(Polygala tenuifolia Willdenow)抽出物を有効成分として含む認知症疾患の予防及び治療用薬学的組成物。」

7b「【請求項5】
オンジ(Polygala tenuifolia Willdenow)抽出物及び食品学的に許容可能な食品補助添加剤を含む認知症疾患の予防及び改善用健康補助食品。」

7c「発明の属する技術及びその分野の従来技術
本発明は、学習と記憶に関与する神経変性疾患の予防及び治療用組成物に関するものであって、より詳細には、オンジ(Polygala tenuifolia Willdenow)抽出物を含む認知症予防及び治療用組成物に関するものである。」

7d「実施例1.オンジ溶液抽出の準備
小儿葯正直決(伝統中国薬学本)という文献において伝統薬材を探すために調査した。
単一薬材で試験し、オンジ(Polygala tenuifolia Willdenow)の新鮮な根は大邱の東洋医学センターより入手し、オンジ抽出物は大邱韓医大より取得した。
オンジの水抽出物の抽出は、1300ccの水に600gを入れて100℃で3時間沸かした。抽出後ガーゼをフィルターとし、ろ過液を凍結乾燥し、その後4℃で乾燥保管して、抽出物の粉末を得た。
使用する全ての薬草名と科学的命名は、この研究では、韓国薬学情報化財団(http://kdrug.org)に従った。」

7e「製剤例2.錠剤の製造
実施例1のオンジ抽出物......200mg
乳糖...............100mg
澱粉...............100mg
ステアリン酸マグネシウム........適量」

甲8:医薬品添付文書「漢方製剤クラシエ加味帰脾湯エキス錠」(2010年7月改訂(第2版))
8a「1.組成
本薬1日量(7.5g)中
日局ニンジン ・・・・・・・・・・・・3.0g
日局ジャクジュツ ・・・・・・・・・・3.0g
・・・(略)・・・
日局オンジ ・・・・・・・・・・・・・1.5g
・・・(略)・・・
上記の混合生薬より抽出した加味帰脾湯エキス粉末6,000mgを含有する。
添加物として日局ステアリン酸マグネシウム、日局カルメロースカルシウム、日局軽質無水ケイ酸、日局結晶セルロースを含有する。」(1頁目左欄)

8b「淡かっ色?かっ色 素錠」(1頁目左欄「2.製剤の性状」表中、「剤形(色・形状)」の欄)

甲9:医薬品添付文書「漢方製剤ツムラ加味帰脾湯エキス顆粒(医療用)」(2013年3月改訂(第5版))
9a「本品7.5g中、下記の割合の混合生薬の乾燥エキス5.0gを含有する。
日局オウギ ・・・・・・・3.0g
・・・(略)・・・
日局オンジ ・・・・・・・2.0g
・・・(略)・・・
添加物 日局軽質無水ケイ酸、日局ステアリン酸マグネシウム、日局乳糖水和物」(1頁目左欄、【組成・性状】表中、「組成」の欄)

9b「剤形 顆粒剤
色 淡黄褐色
におい 特異なにおい」(1頁目左欄、【組成・性状】表中、「性状」の欄)

甲10:医薬品添付文書「ロート加味帰脾湯錠」(2008年4月1日)http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/otc/PDF/K0803000042_03_B.pdf
10a「【成分・分量】 12錠中 加味帰脾湯エキス粉末2.8g(ニンジン1.5g、・・・(略)・・・オンジ0.75g、・・・(略)・・・より抽出)を含む。
添加物として、ステアリン酸Mg、CMC-Ca、二酸化ケイ素、セルロースを含む。」

甲11:医薬品添付文書「漢方製剤帰脾湯エキス細粒G(コタロー)」(2012年2月(記載要領変更に伴う改訂))
11a「成分・分量 本剤3包(7.5g)中
ニンジン・・・・・・・2.4g
・・・(略)・・・
オンジ ・・・・・・・1.6g
・・・(略)・・・より抽出した水製エキス6.30gを含有しています。
添加物として含水二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウムを含有しています。」(【成分・分量】表中、表外)

甲12:特開2013-032346号公報(下線は当審で付与。)
12a「【0009】
従って、本発明の目的は、ケーキング(固化)および製剤の変色を有効に抑制できる生薬製剤(または漢方製剤)及びその製造方法を提供することにある。」

12b「【0020】
生薬エキスに用いられる生薬の種類は、植物性の生薬のみならず動物性又は鉱物性の生薬であってもよく、特に制限されないが、日本薬局方に記載されている生薬が好ましく、例えば、・・・(略)・・・、オンジ(遠志)、・・・(略)・・・などが例示できる。
【0021】
生薬は、疾患の種類に応じて選択でき、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。より具体的には、かぜ症候群の治療及び/又は予防に用いられる生薬(例えば、総合感冒剤などの成分)としては、例えば、・・・(略)・・・、オンジ、・・・(略)・・・から選択された少なくとも一種を含む場合が多く、これらの全ての生薬を含んでいてもよい。」

12c「【0036】
本発明では、第1及び第2の吸着剤(ケイ酸カルシウム及び軽質無水ケイ酸など)に原料として吸湿性のある複数の生薬エキスを吸着させても、ケーキング又はブロッキングを有効に防止できると共に、外観変化(着色又は変色)をもたらす現象(特に、高湿度下での外観変化)を抑制できる。また、漢方エキスまたは生薬エキス(ナンテンジツエキス、キキョウエキス、ショウキョウエキス、及びチンピエキスなど)と非生薬活性成分(アセトアミノフェンなど)とを併用しても、上記と同様にケーキング及び変色又は着色を防止でき、長期間に亘り安定な流動性を示す。」

12d「【0041】
本発明の組成物は、他の担体又は添加剤、例えば、滑沢剤(ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、・・・(略)・・・などが挙げられる。これらの担体又は添加剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。」

甲13:特開2009-256349号公報(下線は当審で付与。)
13a「【0025】
本発明の錠剤には、さらに必要に応じて、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、流動化剤、着色剤、矯味剤等の製剤添加物を配合することができる。・・・(略)・・・滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油等が挙げられる。・・・(略)」

13b「【0031】
1.錠剤の製造
製造例 核錠
メチルメチオニンスルホニウムクロライド150質量部、ロートエキス3倍散90質量部、・・(略)・・・を常法により顆粒化した。この顆粒591質量部とステアリン酸マグネシウム9質量部を混合し打錠用顆粒とした。・・・(略)
【0032】
実施例1
炭酸水素ナトリウム900質量部、・・・(略)・・・、ステアリン酸マグネシウム20質量部を常法により顆粒化した。・・・(略)
【0033】
実施例2
炭酸水素ナトリウム900質量部、・・・(略)・・・、ステアリン酸マグネシウム20質量部を常法により顆粒化した。・・・(略)
【0034】
比較例1
炭酸水素ナトリウム900質量部、・・・(略)・・・、ステアリン酸マグネシウム20質量部を常法により顆粒化し外層顆粒とした。・・・(略)
【0035】
比較例2
炭酸水素ナトリウム900質量部、・・・(略)・・・、ステアリン酸マグネシウム20質量部を常法により顆粒化した。・・・(略)」

13c「【0041】
実施例3
炭酸水素ナトリウム9.0kg、・・・(略)・・・、ステアリン酸マグネシウム0.2kgを混合機を用いて混合、練合し、・・・(略)・・・顆粒を製した。・・・(略)・・・
【0042】
実施例4
メチルメチオニンスルホニウムクロライド0.75kg、ロートエキス3倍散0.45kg、ソウジュツ乾燥エキス0.25kg、センブリ末0.15kg、・・・(略)・・・を混合機を用いて混合、練合し、次に乾燥機を用いて乾燥し、さらに整粒機を用いて整粒し顆粒を製した。顆粒2.655kgとステアリン酸マグネシウム0.045kgを混合し打錠用顆粒とし、・・・(略)・・・の錠剤を30000錠製した。この錠剤12000錠に・・・(略)・・・、1錠100mgの核錠とした。
炭酸水素ナトリウム9.0kg、・・・(略)・・・、ステアリン酸マグネシウム0.2kgを混合機を用いて混合、練合し、次に乾燥機を用いて乾燥し、さらに整粒機を用いて整粒し顆粒を製した。顆粒5.95kgと・・・(略)・・・外層顆粒6.0kgを得た。
上述の1錠100mgの核錠12000錠と外層顆粒6.0kgをφ11mmのパンチを備えた有核打錠機を用いて打錠し、1錠600mgの有核錠を12000錠製した。」

甲14:特開2009-73778号公報
14a「【0011】
・・・(略)・・・
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、・・・(略)・・・、ステアリン酸等が挙げられる。・・・(略)」

14b「【0027】
(実施例1)
・・・(略)・・・次いで、ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方ステアリン酸マグネシウム(軽質)、太平化学産業株式会社製)6.7gを加えて5分間混合して混合物を得た。得られた混合物を、打錠成型機(クリンプレスコレクト12HUK、株式会社菊水製作所製)にて打錠し、直径8mmの2段R型の錠剤を得た。」

甲15:特許・実用審査基準(第III部 第2章 第4節 1?16頁)

甲16:「生薬のエキス製剤の製造販売承認申請に係るガイダンス」
(2015年12月25日:https://www.pmda.go.jp/files/000209984.pdf)
16a
「生薬名 オンジ
分量(1日量)3g
用法及び用量 成人は、1日3回、食前又は食間服用する。
効能又は効果 中年期以降の物忘れの改善
参考文献等 ・Neuroscience letters, 454(2), 111-114(2009). (RCT)
・Neuroscience letters, 465(2), 157-159(2009). (RCT)
・漢方と民間薬:西山英雄著、1977、創元社
・中国臨床のための常用漢薬ハンドブック:神戸中医 ・学研究会編、1987、医歯薬出版」
(参考資料の表、2頁目「オンジ」の項)

甲17:中医臨床のための中薬学、医歯薬出版株式会社、第459?460頁(2004年5月10日第1版第8刷発行)
17a「遠志(おんじ)
・・・(略)・・・
・・・癰疽瘡腫(皮膚化膿症)に、単味の粉末を酒に漬けて内服・外用」

甲18:漢方薬と民間薬(西山英雄、創元社、昭和38年12月15日 第1刷発行、昭和57年7月20日第11刷発行)
18a「ひめはぎ
異名 いとひめはぎ。すずめのはぎ。おんじ。
・・・(略)・・・
用法 一日量約8g煎服」

第5 合議体の判断
(1)理由1 特許法第29条第2項について(甲1を主引用例とする場合)

甲1には、上記摘記事項1a?1eより、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「生薬としてオンジ抽出物のみが配合され、オンジ抽出物100.0mg、ステアリン酸マグネシウム1.8mgを含有する錠剤、またはカプセル剤。」

本件特許発明1と、甲1発明とを対比すると、甲1の錠剤もカプセル剤も内服用製剤の代表的な剤形であることから、両者は「オンジエキスとステアリン酸塩とを含有し、生薬としてオンジのみが配合される内服組成物であって、上記ステアリン酸塩がステアリン酸マグネシウムである内服組成物」である点で一致し、本件特許発明1ではステアリン酸マグネシウムの含有量が「オンジエキス1質量部に対し0.036?100質量部」の範囲であるところ、甲1発明ではオンジ抽出物100mgに対してステアリン酸マグネシウムが1.8mgの量である点、すなわち換算すればオンジ抽出物1質量部に対してステアリン酸マグネシウム0.018質量部と本件特許発明1の下限値より少ない点で、相違する。

上記相違点について検討する。
甲2、3、6?14には、オンジエキスを含有する内服用組成物や、医薬組成物におけるステアリン酸マグネシウムの配合について記載されているものの、いずれの証拠にもオンジエキスとステアリン酸マグネシウムの量を「オンジエキス1質量部に対し0.036?100質量部」の範囲とすることは記載されていない(第4 提出された証拠について 参照)。
特に、甲6、甲7には生薬としてオンジ抽出物のみが配合され、ステアリン酸マグネシウムを同時に含有する治療用組成物が記載されるものの、甲6に記載される使用量はオンジ抽出物100mgに対してステアリン酸マグネシウム2mg(オンジ抽出物1質量部に対してステアリン酸マグネシウム0.02質量部)とやはり本件特許発明1の範囲よりも少なく(摘記6e)、甲7にはステアリン酸マグネシウムの使用量が「適宜」とのみ記載され、具体的な数値は明らかでない(摘記7e)。
また、甲2には、ステアリン酸金属塩が医薬品や化粧料において吸湿を防止するために使用されることが記載されるものの、特にステアリン酸マグネシウムをオンジエキスに対して本件特許発明1の範囲の量で使用することについては記載も示唆も無い。
甲12には生薬由来成分を含有する製剤における固化や着色、変色の防止が記載されるが、滑沢剤の一例として言及されるステアリン酸マグネシウムの配合量との関係については記載も示唆もなく、甲13、14は滑沢剤の例としてステアリン酸マグネシウムが使用されることを示したものに過ぎず、オンジエキスと組み合わせることには何ら記載も示唆もない。
甲3はオンジを単味生薬として用いることについて記載されるが、ステアリン酸マグネシウムを含め、添加剤については何ら言及されていない。
また、甲8?11はオンジと他の生薬を含有する組成物が記載され、ステアリン酸マグネシウムの使用も記載されるが、ステアリン酸マグネシウムの具体的な量は記載されていない。

以上のとおり、いずれの証拠にも「オンジエキス1質量部に対し0.036?100質量部」の範囲でステアリン酸マグネシウムを配合する例は記載されておらず、また、オンジに対するステアリン酸マグネシウムの具体的な量が記載される甲1、甲6における両者の量比は、本件特許発明1の範囲の下限を下回る。そうすると、オンジを単独の生薬成分として含有する内服組成物において「オンジエキス1質量部に対し0.036?100質量部」の量でステアリン酸マグネシウムを含有させることを当業者が格別の創意を要することなく想到できたとはいえない。

次に、本件特許発明1の効果について検討する。本件特許明細書には、オンジ抽出物とステアリン酸マグネシウムの配合量を変えて製造した各種組成物について、高温高湿環境下に置いた時の色差抑制率、質量変化等を評価した結果が、次の表1?8に記載されている。

























表1より、オンジ抽出物1質量部に対するステアリン酸マグネシウムの含有量が0.036?10質量部の実施例1?4では、調製直後の試料に対して、40℃、湿度75%RHで10分間保存した後の試料の色の変化が、ステアリン酸マグネシウムを加えない比較例1に比べて12.4?93.8%抑制されたことが確認できる。ステアリン酸マグネシウム0.01質量部を添加した比較例2では抑制率が2.9%であるのに比して大きな効果といえ、本件特許発明1のステアリン酸マグネシウム含有量の範囲では、オンジ抽出物を単味で含む組成物において一定程度以上の色差抑制率を得られると理解できる。
これに対し、表2中の比較例3、4はオンジ抽出物の他にカンゾウ抽出物またはニンジン抽出物をそれぞれ含有し、オンジに対するステアリン酸マグネシウムの量比が実施例1と同じ場合の結果であるが、オンジとともに他の生薬を含有する場合には実施例1と同様の効果は得られておらず、ステアリン酸マグネシウムの含有量を本件特許発明1の範囲とすることは、生薬としてオンジ抽出物を単独で使用する場合において変色を抑制する効果(以下、「特有の効果1」という。)を奏するものといえる。
また、表4には、オンジ抽出物に対するステアリン酸マグネシウムの含有量を変えた組成物において、40℃、湿度75%RHで1時間保存した後の固化の有無が示されている。ステアリン酸マグネシウムの含有量が多いほど固化が生じにくい結果となっており、これは疎水性物質であるステアリン酸マグネシウムの組成物中の含有比率が増大するほど組成物の吸湿量が低減することに由来するとして、当業者であれば予測し得る程度のもののようにも見える。
しかしながら、表5には、比較例10?12としてオンジに加えてカンゾウ、ニンジンなど他の生薬を含有する組成物では、ステアリン酸マグネシウムを十分な量で添加しても固化が生じたことが記載されている。特に、比較例10?12は、オンジ抽出物に対しても、生薬抽出物の総量または組成物総量に対してもステアリン酸マグネシウムの含有量比率が表4の実施例5、比較例9に比べてかなり大きいにもかかわらず、表4の実施例5、比較例9よりも固化発生の結果が不良であることが示されており、表4に示される固化防止の効果が、生薬の種類によらず単に疎水性物質であるステアリン酸マグネシウムの添加量が十分に多いことのみに由来するとは言い難い。結局、表4、5の結果を総合して見れば、特にオンジを単味で使用する組成物において、本件特許発明1の配合比でステアリン酸マグネシウムを含有することにより、固化を抑制する点で特有の効果(以下、「特有の効果2」という。)を得られたものと理解される。
さらに、表3にはステアリン酸マグネシウムの含有量が多いほど高温高湿下での質量変化が抑制でき、本件特許発明1の範囲では一定以上の効果があったことが、表6にはステアリン酸マグネシウムの含有量が本件特許発明1の範囲にあるときには組成物の調製後のにおいを抑制し、また高温高湿下でのにおいの悪化を抑制したことが、表7、8にはオンジ抽出物とステアリン酸マグネシウム以外の成分を添加した場合も、ステアリン酸マグネシウムの含有量が本件特許発明1の範囲にある組成物において色差抑制率が十分なものであったことが、それぞれ示されている。これらの結果は、上記の表1、2、および表4、5により示された作用効果に加えてさらなる効果(以下、「特有の効果3」という。)があることや、他の添加剤によっても作用効果が維持できることを確認したものである。
以上のとおりであるから、オンジを単味で含有する組成物において、ステアリン酸マグネシウムをオンジエキス1質量部に対して0.036質量部以上の量で用いることにより、高温高湿下での変色の抑制や固化を抑制するという特有の効果を奏することが確認でき、この効果は当業者が従来技術から予測できる範囲を超えるものといえる。

特許異議申立人は、甲15の14?15頁「6.2 進歩性の判断」の項を引き、本件発明は主引用例との相違点がその数値限定のみにあり、その場合に進歩性があると認められるためには次の(i)?(iii)の全てを満たすべきところ、本件特許発明1の効果は優先日当時の文献に開示され、あるいは優先日当時の技術水準から予測できたものであり、また、顕著性を有しているとはいえない旨、主張する。
(i)その効果が限定された数値の範囲内において奏され、引用発明の示された証拠に開示されていない有利なものであること。
(ii)その効果が引用発明が有する効果とは異質なもの、又は同質であるが際だったものであること(すなわち、有利な効果が顕著性を有していること。)。
(iii)その効果が出願時の技術水準から当業者が予測できたものでないこと。なお、有利な効果が顕著性を有しているといえるためには、数値範囲内の全ての部分で顕著性があるといえなければならない。

しかしながら、既に検討したとおり、証拠のいずれにも本件特許発明1の特有の効果1?3は記載されておらず、また優先日当時の技術水準から当業者が予測できたものともいえない。そして、ステアリン酸マグネシウムの量が増えるほど効果が増大する傾向は実施例から把握できるから、上限値付近でも効果を有することは合理的に予測できる。よって、上記申立人の主張には理由がない。

そうしてみると、本件特許発明1は、甲1発明と、甲2、3、6?14に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件特許発明2?6は、いずれも本件特許発明1を更に減縮したものであって、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えるものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明と、甲2、3、6?14に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

異議申立人は、本件特許発明3の進歩性については、本件特許出願の優先日ではなく本件特許の出願日を基準として判断されるべきものであり、本件特許の進歩性は、平成27年12月25日付の甲16によっても進歩性を否定され得る旨述べており(特許異議申立書13頁5段落)、これは、本件特許発明3の「原生薬1?10gから抽出されたオンジエキスを一日量として含有する」という事項が本件特許の基礎出願に記載されていないので、本件特許発明3について優先権主張が認められるべきでないという主張に基づく(特許異議申立書13頁4段落)。
しかしながら、仮に本件特許発明3について優先権の主張が認められないとしても、甲16にはステアリン酸マグネシウムを用いること自体が記載されていない(摘記事項16a参照)。さらにステアリン酸マグネシウムをオンジに対して特定の量比で含有することは他の証拠にも記載されておらず、本件特許発明1は両者の量比を特定の範囲とすることによって特有の効果1?3を奏することは上記で確認したとおりである。
よって、本件特許発明3で新たに特定された事項について検討するまでもなく、異議申立人の上記の主張には理由がない。

以上のとおりであるから、理由1に関する特許異議申立人の主張には理由がない。

(2)理由2 特許法第29条第2項について(甲3を主引用例とする場合)

甲3には、上記摘記事項3aより、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
「生薬としてオンジのみを配合する内服組成物。」

本件特許発明1と、甲3発明とを対比すると、両者は、「オンジエキスを含有し、生薬としてオンジのみが配合される内服組成物」である点で一致し、甲3発明はステアリン酸マグネシウムを含有せず、その含有量も特定されない点で本件特許発明1と相違する。

上記相違点について検討する。
甲1、3、6?14には、オンジが単独の生薬として用いられるか否かを問わず、オンジとステアリン酸マグネシウムの量比が本件特許発明1に記載の範囲で含有する例を記載したものがないことは上記第5(1)で確認したとおりである。また、甲16は甲3と同様の記載があるにとどまり、甲17、甲18は生薬としてオンジが記載されるが、ステアリン酸マグネシウムについては一切記載がない。
甲4はオンジとステアリン酸マグネシウムとを含有するエキス粉末が記載ているが、生薬成分としてオンジ以外のものを含み、またステアリン酸マグネシウムの含有量が明らかでない。甲8?11も甲4と同様の事項が記載されるに過ぎない。
甲5には、ステアリン酸マグネシウム等の「油類」を固形製剤の2?35%の量で含有する旨の記載があるが、固形製剤にオンジエキスを唯一の生薬として含有する場合のオンジエキスに対する配合量については何ら記載も示唆も無い。

そして、本件特許発明1は、生薬としてオンジのみを含有する内服組成物において、ステアリン酸マグネシウムがオンジ抽出物に対して特定の量比で含有されることにより、高温高湿下での変色や固化を一定程度以上抑制できるという特有の効果1?3を有するのであるから、本件特許発明1は、甲3発明と他の証拠および技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また本件特許発明2?6は、いずれも本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えるものであるから、本件特許発明1と同様に、甲3発明と、甲1、4?14、16?18に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

よって、理由2に関する異議申立人の主張には理由がない。

(3)理由3 特許法第36条第4項第1号及び同条第6号第1項について
(3-1)特許法第36号第6項第1号
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載からみて、本件特許発明の解決しようとする課題は、オンジ生薬単味エキス含有内服組成物において、変質・変色等の経時的劣化を防止することと認められる(【0001】?【0004】、【0006】)。
この課題を解決する手段として、本件特許発明1?6では、生薬成分としてオンジのみが配合される内服組成物において、ステアリン酸マグネシウムの含有量がオンジエキス1質量部に対し0.036?100質量部の範囲に設定されることを必須の発明特定事項としている。

以下、本件特許明細書の記載内容について検討する。
まず、前掲の表1等に示される色差抑制率について見ると、本件特許明細書【0033】には次の記載がある(下線は当審で付した)。

「【0033】
(1)色差抑制率1
表1および表2に示す組成の通り調製した内服組成物0.5gをプラスチック製シャーレに入れ、40℃、湿度75%RHで10分間保存後の内服組成物の色の変化を、色差計(コニカミノルタ社製、品番:CR-400)を用いて測定し、調製直後の内服組成物の色をスタンダードとし、下記の式1を用いて保管前後における色差(ΔE*ab)を求めた。さらに、オンジ抽出物のみが配合された内服組成物(比較例1)の色の経時変化(ΔE*ab)を基準とし、経時による色の変化をどの程度抑制できたか(色差抑制率%)を式2により算出した。色差抑制率が高いほど、高温高湿度保存下での変色が抑制されたことを意味する。表1および表2に併せて結果を示す。
式1:色差(ΔE*ab)=[(Δa*)2+(Δb*)2+(ΔL*)2]1/2
Δa*:保存後の錠剤のa値-保存前の錠剤のa値
Δb*:保存後の錠剤のb値-保存前の錠剤のb値
ΔL*:保存後の錠剤のL値-保存前の錠剤のL値
式2:色差抑制率(%)=((比較例1の色差-各組成物の色差)/比較例1の色差)×100」

上記【0033】の内容によれば、この試験では、まず各試料について高温高湿へ曝露する試験の前後での色測定をそれぞれ行い、試験前後の色の「違い」、すなわち試験前後の変色量を「色差(ΔE*ab)」として求めている。
次に、オンジ抽出物を単独で含みステアリン酸マグネシウムを含まない比較例1の試験前後の変色量を対照とし、オンジ単独である比較例1の変色量に対してステアリン酸マグネシウムを加えた他の試料で変色量がどの程度小さくなったかを「色差抑制率(%)」として算出し(式2)、この「色差抑制率(%)」の値を評価している。
この操作は、定数である比較例1の変色量(色差)を対照として各試料の試験前後の変色量を比較しているのであり、【0033】の式2中「比較例1の色差」に同じ値を入れた計算式で処理した結果を比較しているのだから、各試料の高温高湿下での色の変化を同じ基準上で比べているものと理解される。
そうすると、結局、対照となる定数値との比較である「色差抑制率(%)」が提示されれば、各試料の「色差(ΔE*ab)」の大きさを比較することは可能であって、表1、2に示された結果により本件特許発明の効果を評価することができるといえる。ステアリン酸マグネシウム量が本件特許発明の範囲を下回る比較例2と下限値の実施例1とでは色差抑制率に10%程度の差があり、ステアリン酸マグネシウムの量比が増大するに伴い色差抑制率が大きくなることから、少なくともオンジに対して本願特許発明1の量比でステアリン酸マグネシウムを含有すれば変色を一定程度以上に抑えられることがわかる。そして、実施例1の組成に加えてオンジ以外の生薬成分を含有する比較例3、4の結果が、比較例2のみならず比較例1よりも変色を増大させていることから、オンジに対するステアリン酸マグネシウムの量比と変色抑制との関係は、生薬成分がオンジのみである場合に特有のものであることが理解できる(理由1の検討でも言及)。
質量変化率についても、色差抑制率と同様に、定数である比較例1の値との比較によって求めた「質量変化抑制率(%)」によって表されているが、色差抑制率の場合と同様、抑制率に換算して表現されていること自体によって質量変化に対するステアリン酸マグネシウム添加の効果を評価できないというものではなく、表2に示される実施例1?4の結果から、オンジを単味で含有する組成物において一定程度以上の質量変化抑制の効果を得られていることが確認できる。
オンジに対するステアリン酸マグネシウムの含有量比の上限を100質量部としているのに対しその上限値付近の実施結果は示されていないが、上で検討した比較例・実施例から見て、ステアリン酸マグネシウムの含有量が多いほど効果も増大する傾向が把握でき、したがって上限値付近でも十分に効果が期待できると予測できる。

本件特許発明2?4は、いずれも本件特許発明1をオンジエキスの含有量やオンジエキスの原生薬からの収率等の範囲といった、オンジエキスに関する技術常識の点で限定したものであるところ、実施例はいずれもそれらの発明特定事項を満足しており、本件特許発明2?4の発明特定事項を備える場合に本件特許発明1の効果を奏することが確認できている。してみれば、例えば本件特許発明1は本件特許発明2?4の発明特定事項を備える場合にその効果を損なうおそれがあるなどといった事情も見出せず、技術常識に属する事項について、その範囲の全てにわたって結果を示さなければ発明の効果を確認できないものではない。
以上のとおり、本件特許明細書の発明の詳細な記載から、当業者は、本件特許発明により、生薬としてオンジのみを配合する内服組成物において変色や質量変化等の経時的劣化を防止するという課題を解決できることを認識できるのであるから、本件特許発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。

なお、異議申立人は理由3について具体的には次のように主張する(特許異議申立書 19?23頁)。

1)本件特許発明1について
ステアリン酸マグネシウムの含有量を「オンジエキス1質量部に対し0.036?100質量部」の範囲に設定することの効果が充分に確認されていない。
(i)まず「変質・変色等の経時的劣化」について適切に評価するためには試料の試験前後の変化、例えば変色について評価するなら試験開始前と終了後の色差(ΔE*ab)の大小を評価すべきところ、そのような評価をせず、比較例と実施例との差に基づく「色差抑制率」なる値を用いており、測定時のばらつき等を考慮すれば、「変色の経時的劣化」の防止効果を確認できているとはいえない。
(ii)色差抑制率の結果について、実施例1、2のそれぞれ12.4%、12.7%という数値は他の実施例よりむしろ比較例に近い程度のものに過ぎない。さらに、表2中の比較例3、4はステアリン酸マグネシウムの量が本件特許発明1の範囲にあるにもかかわらず色差抑制率が-3.3%、-3.6%と、ステアリン酸マグネシウムを含まない比較例1に劣る不良な結果であるから、ステアリン酸マグネシウムをオンジに対して特定の量比で含有することの顕著な効果は認められない。
(iii)質量変化抑制率、固化の有無、においの抑制、及びにおいの変化の評価についても、色差抑制率と同様、各実施例の試験の開始前と終了後の比較がされておらず、効果が確認されたとはいえない。
(iv)特に質量変化抑制率について、表3の実施例1、2の質量変化抑制率の値は他の実施例よりも比較例2に近い値である。
(v)固化、においの抑制または変化について、オンジエキス1質量部に対してステアリン酸マグネシウムが本件特許発明1の範囲であって0.1質量部未満(例えば下限値0.036質量部)の実施例がない。
(vi)オンジエキス1質量部に対してステアリン酸マグネシウムが10質量部を超えて100質量部までの範囲を網羅する例が全くない。
(i)?(vii)より、本件特許発明1のうちステアリン酸マグネシウムの含有量がオンジエキス1質量部に対して1?10質量部以外の範囲、あるいは少なくとも0.1?10質量部以外の範囲について、明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できるものとはいえず、また、本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、当業者が発明の実施を出来る程度に明確かつ十分に記載したものではない。

2)本件特許発明2?4について
本件特許発明2?4において、オンジエキスに関して限定される発明特定事項の数値範囲の全てにわたって効果があることは確認されていない。

しかしながら、次のとおり、上記異議申立人の主張にはいずれも理由がない。
1)本件特許発明1について
(i)ある試料について試験前後の変化を検討する場合、必ずしも試験前後の測定値をそのまま用いる必要はなく、試験前と後との変化量によって評価できるところ、上記説示のとおり、本件特許発明の実施例では試験前後の色をそれぞれ色空間上で数値化したものの差である色差(ΔE*ab)を同一の基準上で比較した結果を示しており、試料による変色の違いを評価できていないとはいえない。
(ii)実施例1、2により、少なくとも一定程度の効果を得られると確認できることは上記説示のとおりである。比較例3、4は本件特許発明1の発明特定事項を備える例ではなく、むしろオンジ単味である本件特許発明1の特有の効果を確認する根拠となることは上記(1)理由1の効果の検討で述べたとおりである。
(iii)?(v)質量変化の評価についても、(i)と同様、効果を確認できないとはいえない。そして、少なくとも色差抑制と質量変化抑制によって上記のとおり本件特許発明1がその課題を解決できることは理解でき、他の評価項目についてもこれに矛盾するものではない。
(vi)実施例はステアリン酸マグネシウム添加量の増加に伴いその効果も増大する傾向が明らかであり、添加量によりその傾向が変わるなどの事情を想定する根拠もないから、上限値付近でも本件特許発明1が効果を奏することは、実施例から推測できる。
2)本件特許発明2?4について
上記でも説示したとおり、本件特許発明2?4はオンジに関する一般的な技術常識を付加するものに過ぎず、また本件特許発明1の効果を妨げるような根拠も認められないから、その数値範囲の全てで効果を確認すべきとはいえない。

(3-2)特許法第36条第4項第1号
特許法第36条第4項第1号は、明細書の発明の詳細な説明の記載は「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと定めるところ、この規定にいう「実施」とは、物の発明においては、つまるところ、その物を生産し、使用することである。
本件特許発明の内服組成物は、発明の詳細な説明に基づき、当業者であれば、オンジエキスおよびステアリン酸マグネシウムを含有させることにより生産し、使用することができることは明らかである。
また、特許異議申立人の主張は、要するに本件特許発明は発明の詳細な説明に記載されたものではないから実施することができないというものであると解されるところ、上述のとおり、本件特許発明は発明の詳細な説明に記載されたものであるから、特許異議申立人の主張は、その前提において誤っている。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-03-02 
出願番号 特願2016-178475(P2016-178475)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (A61K)
P 1 651・ 121- Y (A61K)
P 1 651・ 537- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鶴見 秀紀  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 淺野 美奈
前田 佳与子
登録日 2017-04-07 
登録番号 特許第6122538号(P6122538)
権利者 ロート製薬株式会社
発明の名称 内服組成物  
代理人 西藤 征彦  
代理人 西藤 優子  
代理人 井▲崎▼ 愛佳  
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