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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) H04N
管理番号 1338189
判定請求番号 判定2017-600050  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2018-04-27 
種別 判定 
判定請求日 2017-11-30 
確定日 2018-03-19 
事件の表示 上記当事者間の特許第4008021号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号物件の説明書に示す「ビデオカメラの高所据付具」は、特許第4008021号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号物件の説明書に示す「ビデオカメラの高所据付具」は、特許第4008021号発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。
なお、本件判定の請求は、判定請求書全体の記載からみて、判定請求書に添付したイ号物件の説明書に示す「ビデオカメラの高所据付具」(以下、「イ号物件」という。)は、特許第4008021号(以下、「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものであると認められる。

第2 手続の経緯
本件特許発明に係る出願は、平成19年6月29日の出願であって、同年9月7日に特許権の設定登録がなされたものである。
その後、平成29年11月30日に請求人から本件判定が請求され、これに対し、平成30年1月19日に被請求人から判定請求答弁書が提出されたものである。

第3 本件特許発明
1.本件特許発明
本件特許発明は、特許第4008021号に係る願書に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(その構成を構成要件ごとに分説し、記号A?Gを付した。以下「構成要件A」?「構成要件G」という。)。

(A)複数本の単位ロッドを振り出し竿構造により多段に収容し、個々の単位ロッドを任意の引き出し状態で固定可能とされた伸縮ロッドと、
(B)伸縮ロッドを構成する複数本の単位ロッドのうちで最初に引き出されるべき第1段目の単位ロッドの先端部に設けられた雲台と、
(C)第1段目の単位ロッドの先端部に設けられ、かつ当該単位ロッドの軸方向と直交する方向へと向けられたパッド面を有するロッド支持部材と、
(D)第1段目の単位ロッドの先端部に設けられ、かつロープ通し孔を有する先端部ロープガイドと、
(E)伸縮ロッドの最大伸張時の長さに対応可能な長さを有すると共に、先端部ガイドリングのロープ通し孔に挿通され、かつその先端部には第1段目の単位ロッドの先端部適所に対して着脱可能な係止具が取り付けられた操作ロープと、を備え、
(F)操作ロープの先端部を対象となる照明柱等の支柱の周囲に少なくとも一巻きしたのち、ロープ先端部の係止具を第1段目の単位ロッドの先端部適所に係止させることで、支柱及び当該伸縮ロッドを緩く取り巻くループ部分を形成した状態において、伸縮ロッドを適宜な長さに伸張固定して支柱に沿わせて立て掛け、しかるのち、操作ロープの垂れ下げ部分を強く引っ張って、支柱を取り巻くループ部分を締め付け、その状態にて操作ロープの垂れ下げ部分を適宜に固定することにより、支柱外表面とロッド支持部材のパッド面との当接を介して雲台と支柱とを位置決めしつつ、伸縮ロッドを支柱に添設し得るように構成した、
(G)ことを特徴とするカメラ等の高所据付具。

2.本件特許発明の目的及び効果
(1)本件特許明細書の記載事項
本件特許発明の目的について、本件特許明細書の【0007】には、「その目的とするところは、カメラ支柱を自立構造とするのではなく、他の支柱(照明柱、電柱、建築物の支柱等々)に添わせると言う斬新な発想を採用することで、カメラ支柱の支持構造を大幅に簡素化し、それにより低コストで可搬性の良好な使い勝手のよいカメラ等の高所据付具を提供することにある。」と記載されている。
また、本件特許発明の効果について、本件特許明細書の【0017】には、「このような構成によれば、支柱は元々自立機構を採用していないから、常時は、伸縮ロッドを振り出し竿機構により完全に縮めた状態とすることで、どこでも容易に持ち運ぶことができ、必要に応じて撮影の現場へといつでも持ち運ぶことができる。しかも、リフトカーを使用する場合のように、道路許可を得る必要もないから、この種のカメラ撮影作業を低コストかつ迅速に進めることかができる。」と記載され、同【0018】には、「一方、使用にあたっても、単に、ループ部分を作ったのち、伸縮ロッドを必要な長さ伸張させ、垂れ下げロープを引っ張ると言うだけであるから、特に熟練を要するものではなく、誰でも容易に行うことができる訳である。それにも拘わらず、伸縮ロープはその上端部をしっかりと照明柱などの支柱に固定されるため、振動や風があっても、カメラ等はぶれることなくしっかりと固定され、しかも雲台と支柱とはパッド面の当接を介して所期の状態に位置決めされるため、カメラが意図しない姿勢に向けられることがなく、期待通りの姿勢で高所にしっかりと据え付けられることとなる。」と記載されている。

(2)本件特許発明の目的及び効果
以上を総合すると、本件特許発明は、「自立構造を備えた従来技術に対し、カメラ支柱の支持構造を大幅に簡素化するとともに、振動や風があってもカメラ等をぶれることなくしっかりと支柱に固定、位置決めすること」という課題を解決することを目的とし、上記構成要件A?Gを有するカメラ等の高所据付具により、「どこでも容易に持ち運ぶことができ、使用にあたっても、特に熟練を要するものではなく、誰でも容易に行うことができる。それにも拘わらず、伸縮ロープはその上端部をしっかりと照明柱などの支柱に固定され、しかも雲台と支柱とはパッド面の当接を介して所期の状態に位置決めされるため、カメラが意図しない姿勢に向けられることがなく、期待通りの姿勢で高所にしっかりと据え付けられる。」という効果を奏するものと認められる。

第4 当事者の主張
1.請求人の主張の概要
請求人は、平成29年11月30日付け判定請求書において、概略、以下のとおり主張している。
(1)イ号物件の構成は、イ号物件の説明書に記載されたとおりであって、以下のように分説することができる(判定請求書第6頁第1行?第7頁第1行。以下、分説した各構成を「構成a」?「構成g」という。)。

「a 5本の単位ロッド(201-1, 201-2, ・・・201-5)を振り出し竿構造により多段に収容し、個々の単位ロッドを任意の引き出し状態で固定可能とされた伸縮ロッド(201)と、
b 伸縮ロッド(201)を構成する5本の単位ロッド(201-1, 201-2 ,・・・201-5)のうちで第1段目の単位ロッド(201-1)の先端部に設けられた角度調整金具(203)と、
c 第1段目の単位ロッド(201-1)の先端部に角度調整金具(203)を介して設けられ、かつ当該単位ロッド(201-1)の軸方向と直交する方向へと向けられた筐体左側面(204C)を有するカメラ筐体(204A)と、
d 第3段目の単位ロッド(201-3)の先端部に設けられ、かつ先端部ロ一プ繋留リング(215)に係止することができ、かつ係止状態にあっては、ロープ通し孔としても機能するカラビナ(205A)と、
e 伸縮ロッドの最大伸張時の長さに対応可能な長さを有すると共に、その先端部には、第3段目の単位ロッド(201-3)の先端部に設けられた先端部ロープ繋留リングに対して着脱可能なカラビナ(205A)が取り付けられた操作ロープ(205)と、を備え、
f 操作ロープ(205)の先端部を対象となる照明柱等の支柱(206)の周囲に一巻きしたのち、ロープ先端部のカラビナ(205A)を第3段目の単位ロッド(201-3)の先端部に設けられた先端部ロープ繋留リング(215)に係止させ、カラビナ(205A)のなすロープ通し孔内に当該操作ロープ(205)を通すことで、支柱及び当該伸縮ロッドを緩く取り巻くループ部分(205a)を形成した状態において、伸縮ロッド(201)を適宜な長さに伸張固定して支柱に沿わせて立て掛け、しかるのち、操作ロープ(205)の垂れ下げ部分を強く引っ張って、支柱を取り巻くループ部分(205a)を締め付け、その状態にて操作ロープの垂れ下げ部分を支柱及び伸縮ロッドを取り巻くように多重巻きして緊縛することにより、支柱(206)の外表面と力メラ筐体(204A)の左側面(204C)との当接を介してカメラ筐体(204A)と支柱(206)とを位置決めしつつ、伸縮ロッド(201)を支柱に添設し得るように構成した、
g ことを特徴とするビデオカメラの高所据付具。」

(2)イ号物件の構成a?d、gは、本件特許発明の構成要件A?D、Gを充足する(判定請求書第9頁第28行?第12頁第14行、第15頁第23?29行)。

(3)イ号物件の構成e、fと本件特許発明の構成要件E、Fとの間には相違点が存在するが、均等である(判定請求書第12頁第15行?第15頁第22行、第16頁第1行?第18頁第4行)。

2.被請求人の主張の概要
被請求人は、平成30年1月19日付け判定請求答弁書において、イ号物件が本件特許発明の技術的範囲に属しない理由を、概略、以下のとおり主張している。
(1)イ号物件の構成b?fは、本件特許発明の構成要件B?Fを充足しない(判定請求答弁書第3頁第29行?第11頁第29行)。

第5 当審の判断
1.イ号物件
判定請求書に添付されたイ号物件の説明書の記載内容によれば、イ号物件に関して以下の事項が認められる。

(1)図1?図3によれば、イ号物件であるビデオカメラの高所据付具は、伸縮ロッド(201)と、三脚(202)と、ビデオカメラ(204)を支持する角度調整金具(203)と、先端部ロープ繋留リング(215)と、操作ロープ(205)と、カラビナ(205A)とを有する。

(2)図1によれば、伸縮ロッド(201)は、5本の単位ロッドを振り出し竿構造により多段に基段部分(201-0)へと収容し、個々の単位ロッド(201-1,201-2,・・・201-5)が引き出し可能であり、締結具(201a)により固定可能となされている。

(3)図2及び図3によれば、角度調整金具(203)は、第1段目の単位ロッド(201-1)の先端部に設けられ、第1のL字金具(203a)と第2のL字金具(203b)とは、互いの垂直部同士を蝶ナット(203c)とボルト(203d)とで締結することにより回動可能に結合されている。第1のL字金具は、その水平部を第1段目の単位ロッドの先端面に当接した状態で、同先端面から突出する雄ネジ部(203e)と蝶ナット(203f)とを螺合することにより、第1段目の単位ロッドの先端部に固定されている。第2のL字金具は、その水平部をビデオカメラの底面に当接した状態で、ボルト(203g)をビデオカメラの底面にねじ込むことで、ビデオカメラと結合される。蝶ナット(203c)とボルト(203d)とを緩めることにより、ビデオカメラの俯仰角度を調整することができる。

(4)図2によれば、カラビナ(205A)が係止された先端部ロープ繋留リング(215)は、第3段目の単位ロッド(201-3)の先端部に設けられている。

(5)図2によれば、操作ロープ(205)は、その先端部に、先端部ロープ繋留リング(215)に対して着脱可能なカラビナ(205A)が取り付けられている。ここで、図2からは、ロープの長さは特定できないものの、伸縮ロッドの最大伸張時の長さに対応可能な長さとすることは、当然の構成であるといえる。

(6)図1、2によれば、操作ロープ先端部のカラビナがリング部材に係止され、操作ロープの先端部が支柱(206)の周囲に一巻きされて、カラビナに通されることにより、支柱及び伸縮ロッドを取り巻くループ部分(205a)が形成され、伸縮ロッドを適宜な長さに伸張固定して、伸縮ロッドの基段部分に設けた三脚(202)を開いて、L字金具に取り付けたビデオカメラを支柱に当接させない状態で、照明柱に沿わせられ、操作ロープの垂れ下げ部分は伸縮ロッド下部において照明柱及び伸縮ロッドを取り巻くようにして固定され、伸縮ロッドが支柱に添設されている。

(7)以上を総合すると、イ号物件は次の構成を具備するものである(説明のため、構成を分説し、記号a2?g2を付した。以下、分説した各構成を「構成a2」?「構成g2」という。)。

「(a2)5本の単位ロッド(201-1,201-2,・・・201-5)を振り出し竿構造により基段部分(201-0)に収容し、個々の単位ロッドを任意の引き出し状態で固定可能とされた伸縮ロッド(201)と、
(b2)伸縮ロッドを構成する5本の単位ロッドのうちで第1段目の単位ロッド(201-1)の先端部に設けられ、ビデオカメラの俯仰角度を調整する角度調整金具(203)と、
(d2)第3段目の単位ロッド(201-3)の先端部に設けられた先端部ロープ繋留リング(215)に係止することができ、かつ係止状態にあっては、ロープ通し孔としても機能するカラビナ(205A)と、
(e2)伸縮ロッドの最大伸張時の長さに対応可能な長さを有すると共に、先端部ロープ繋留リングに対して着脱可能なカラビナが先端部に取り付けられた操作ロープ(205)と、を備え、
(f2)操作ロープ先端部のカラビナが先端部ロープ繋留リングに係止され、操作ロープの先端部が支柱(206)の周囲に一巻きされて、カラビナに通されることにより、支柱及び伸縮ロッドを取り巻くループ部分(205a)が形成され、伸縮ロッドを適宜な長さに伸張固定して、伸縮ロッドの基段部分に設けた三脚(202)を開いて、角度調整金具に取り付けたビデオカメラを支柱に当接させない状態で、支柱に沿わせられ、操作ロープの垂れ下げ部分は伸縮ロッド下部において支柱及び伸縮ロッドを取り巻くようにして固定され、伸縮ロッドが支柱に添設される、
(g2)ビデオカメラの高所据付具。」

2.本件特許発明の各構成要件とイ号物件の各構成との対比、判断
イ号物件が本件特許発明の構成要件AないしGを充足するか否かについて検討する。

(1)構成要件A、Gについて
イ号物件の構成a2の「5本の単位ロッド」は、本件特許発明の構成要件Aの「複数本の単位ロッド」に相当する。また、イ号物件の構成g2の「ビデオカメラの高所据付具」は、本件特許発明の構成要件Gの「カメラ等の高所据付具」に相当する。
したがって、イ号物件の構成a2、g2は、本件特許発明の構成要件A、Gを充足する。

(2)構成要件Bについて
イ号物件の構成b2の「角度調整金具」は、第1段目の単位ロッドの先端部とビデオカメラとを結合し、ビデオカメラの俯仰角度を調整することができる構成を具備しているものの、「カメラを載せてその向きや傾きなどを調整する器具」として広く用いられている「雲台」に相当するとはいえない。
したがって、イ号物件の構成b2は、本件特許発明の構成要件Bを充足するとは認められない。

(3)構成要件Cについて
イ号物件は、本件特許発明の構成要件Cの「第1段目の単位ロッドの先端部に設けられ、かつ当該単位ロッドの軸方向と直交する方向へと向けられたパッド面を有するロッド支持部材」に相当する部材は具備していない。
請求人は、本件特許発明の構成要件Cの充足性について、判定請求書において、「単位ロッドの軸方向と直交する方向へと向けられた押し当て面を有する部材に関して、構成要件Cにあっては『第1段目の単位ロッドの先端部に設けられ、かつ当該単位ロッドの軸方向と直交する方向へと向けられたパッド面を有するロッド支持部材』とあるのに対して、構成要件cにあっては『第1段目の単位ロッド(201-1)の先端部に角度調整金具を介して設けられ、かつ当該単位ロッドの軸方向と直交する方向へと向けられた筐体左側面(204c)を有するカメラ筐体(204A)』とある。
このように、構成要件Cと構成要件cとは、支柱等の外表面に対する押し当て面を有する部材の実体が、カメラ誼体とは別部材(例えば、実施例のL字金具(2))なのか、それとも、カメラ筐体それ自身なのかの点において文言上相違し、残余の点においては一致する。
ここで、構成要件Cにおける『ロッド支持部材』なるものの成立要件は、構成要件Cの文言によれば、1)第1段目の単位ロッドの先端部に設けられること、及び2)当該単位ロッドの軸方向と直交する方向へと向けられたパッド面を有すること、であると認められる。このことからすると、イ号物件の構成要件c(カメラ筐体)は、上述の2つの成立要件を一応満足すると言える。」(判定請求書第10頁第16行?第11頁第2行)と主張した上で、イ号物件は、「文言上の相違は有するものの、本件特許発明の構成要件Cを充足する」(判定請求書第11頁第14?15行)旨主張している。
しかしながら、カメラ筐体及びその左側面はカメラの一部であって、据付具を構成する部材ではないから、請求人の当該主張は採用できない。
したがって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Cを充足するとは認められない。

(4)構成要件Dについて
イ号物件の構成d2の「カラビナ」は、「第3段目の単位ロッドの先端部」に設けられたロープ繋留リングに係止されており、「第1段目の単位ロッドの先端部に設けられ」ているとはいえないから、本件特許発明の構成要件Dの「第1段目の単位ロッドの先端部に設けられ、かつロープ通し孔を有する先端部ロープガイド」に相当するとはいえない。
請求人は、本件特許発明の構成要件Dの充足性について、判定請求書において、「イ号物件の説明書の添付写真2、3を見れば明らかなように、伸縮ロッドの実際の運用時にあっては、第1段目及び第2段目の単位ロッド(201-1,201-2)は引き出されることなく縮めた状態に維持され、第3段目以降の単位ロッド(201-3,201-4・・・)が引き出されるため、第3段目の単位ロッド(201-3)が実質的に第1段目の単位ロッド(201-1)として機能しているのである。このように、伸縮ロッドの実際の運用時における伸張態様を考慮すれば、本件特許の第1段目の単位ロッドとイ号物件の第3段目の単位ロッド(201-3)とは、実は、同等に機能するのであって(イ号物件の説明書、第5頁第11行?第22行の記載参照)、実質的な相違は存在しないのである。」(判定請求書第12頁第3?12行)と主張した上で、イ号物件は、「文言上の相違は有するものの、本件特許発明の構成要件Dを実質的に充足する」(判定請求書第12頁第13行?14行)旨主張している。
しかしながら、本件特許発明の構成要件Dは、先端部ロープガイドが、「実際の運用時に、実質的に第1段目の単位ロッドとして機能する単位ロッドの先端部」に設けられることを規定しておらず、また、イ号物件は、必ずしも、第1段目、第2段目の単位ロッドを縮めた状態で用いられるとは限らないから、請求人の当該主張は採用できない。
したがって、イ号物件の構成d2は、本件特許発明の構成要件Dを充足するとは認められない。

(5)構成要件Eについて
イ号物件の構成e2の「操作ロープ」は、「先端部ロープ繋留リング」に対して着脱可能な「カラビナ」が先端部に取り付けられている。ここで、「先端部ロープ繋留リング」は、「第3段目の単位ロッドの先端部に設けられ」ている(イ号物件の構成d2)から、イ号物件の操作ロープに取り付けられたカラビナは、「第1段目の単位ロッドの先端部適所に着脱可能」であるとはいえない。
よって、イ号物件の構成e2の「先端部ロープ繋留リングに着脱可能なカラビナが取り付けられた操作ロープ」は、本件特許発明の構成要件Eの「その先端部には第1段目の単位ロッドの先端部適所に対して着脱可能な係止具が取り付けられた操作ロープ」に相当するとはいえない。
また、そもそも、イ号物件のカラビナは、操作ロープの先端部に取り付けられたものであるとともに、ロープ通し孔としても機能する(構成d2)から、本件特許発明の構成要件Eの「先端部ガイドリング」、「係止具」のいずれにも相当するとはいえないものである。
請求人は、本件特許発明の構成要件Eの充足性について、判定請求書において、「構成要件Eの側における『第1段目の単位ロッド』、『先端部」、及び『係止具』は、構成要件eの側における『第3段目の単位ロッド(201-3)』、『先端部ロープ繋留リング(215)』及び『カラビナ(205A)』にそれぞれ相当し、これらの点において両者は一致する。」と主張している(判定請求書第12頁第16?19行)。
しかしながら、上記したとおり、イ号物件の「第3段目の単位ロッドの先端部に設けられた先端部ロープ繋留リング」は、本件特許発明の「第1段目の単位ロッドの先端部適所」に当たらず、また、イ号物件のカラビナは本件特許発明の「係止具」に当たらないから、請求人の当該主張は採用できない。
したがって、イ号物件の構成e2は、本件特許発明の構成要件Eを充足するとは認められない。

(6)構成要件Fについて
上記(3)で検討したとおり、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Cに係る「パッド面を有するロッド支持部材」を備えていないから、イ号物件は、少なくとも、本件特許発明の構成要件Fの「操作ロープの垂れ下げ部分を強く引っ張って、支柱を取り巻くループ部分を締め付け、その状態にて操作ロープの垂れ下げ部分を適宜に固定することにより、支柱外表面とロッド支持部材のパッド面との当接を介して雲台と支柱とを位置決めしつつ、伸縮ロッドを支柱に添設し得るように構成した」の構成を具備していない。
請求人は、本件特許発明の構成要件Fの充足性について、判定請求書において、「先に述べたように、構成要件Fの『ロッド支持部材のパッド面』は構成要件fにおける『カメラ筐体(204A)の左側面(204c)』に相当するものであるから、両記載間には文言上の相違はあるものの、実質的な相違は存在しない」旨主張している(判定請求書第14頁第8?11行)。
しかしながら、上記(3)でも述べたとおり、カメラ筐体及びその左側面はカメラの一部であって、据付具を構成する部材ではなく、また、当該側面は支柱に当接しておらず、支柱外表面との当接を介して支柱と雲台を位置決めする、ロッド支持部材のパッド面としての機能を果たしていないから、請求人の当該主張は採用できない。
したがって、イ号物件の構成f2は、本件特許発明の構成要件Fを充足するとは認められない。

(7)まとめ
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件特許発明の構成要件BないしFを充足しない。

3.均等について
(1)本件特許発明のイ号物件と異なる構成
本件特許発明とイ号物件とは、上記2.のとおり、
本件特許発明は、
「伸縮ロッドを構成する複数本の単位ロッドのうちで最初に引き出されるべき第1段目の単位ロッドの先端部に設けられた雲台と、第1段目の単位ロッドの先端部に設けられ、かつ当該単位ロッドの軸方向と直交する方向へと向けられたパッド面を有するロッド支持部材と、第1段目の単位ロッドの先端部に設けられ、かつロープ通し孔を有する先端部ロープガイドと、先端部ガイドリングのロープ通し孔に挿通され、かつその先端部には第1段目の単位ロッドの先端部適所に対して着脱可能な係止具が取り付けられた操作ロープと、を備え、操作ロープの先端部を対象となる照明柱等の支柱の周囲に少なくとも一巻きしたのち、ロープ先端部の係止具を第1段目の単位ロッドの先端部適所に係止させることで、支柱及び当該伸縮ロッドを緩く取り巻くループ部分を形成した状態において、伸縮ロッドを適宜な長さに伸張固定して支柱に沿わせて立て掛け、しかるのち、操作ロープの垂れ下げ部分を強く引っ張って、支柱を取り巻くループ部分を締め付け、その状態にて操作ロープの垂れ下げ部分を適宜に固定することにより、支柱外表面とロッド支持部材のパッド面との当接を介して雲台と支柱とを位置決めしつつ、伸縮ロッドを支柱に添設し得るように構成した」
のに対し、
イ号物件は、
「伸縮ロッドを構成する5本の単位ロッドのうちで第1段目の単位ロッドの先端部に設けられ、ビデオカメラの俯仰角度を調整する角度調整金具と、第3段目の単位ロッドの先端部に設けられた先端部ロープ繋留リングに係止することができ、かつ係止状態にあっては、ロープ通し孔としても機能するカラビナと、先端部ロープ繋留リングに対して着脱可能なカラビナが先端部に取り付けられた操作ロープと、を備え、操作ロープ先端部のカラビナが先端部ロープ繋留リングに係止され、操作ロープの先端部が支柱の周囲に一巻きされて、カラビナに通されることにより、支柱及び伸縮ロッドを取り巻くループ部分が形成され、伸縮ロッドを適宜な長さに伸張固定して、伸縮ロッドの基段部分に設けた三脚を開いて、角度調整金具に取り付けたビデオカメラを支柱に当接させない状態で、支柱に沿わせられ、操作ロープの垂れ下げ部分は伸縮ロッド下部において支柱及び伸縮ロッドを取り巻くようにして固定され、伸縮ロッドが支柱に添設される」
点で異なっている。
したがって、以下、本件特許発明のイ号物件と異なる部分に対応する構成要件である
「伸縮ロッドを構成する複数本の単位ロッドのうちで最初に引き出されるべき第1段目の単位ロッドの先端部に設けられた雲台と、第1段目の単位ロッドの先端部に設けられ、かつ当該単位ロッドの軸方向と直交する方向へと向けられたパッド面を有するロッド支持部材と、第1段目の単位ロッドの先端部に設けられ、かつロープ通し孔を有する先端部ロープガイドと、先端部ガイドリングのロープ通し孔に挿通され、かつその先端部には第1段目の単位ロッドの先端部適所に対して着脱可能な係止具が取り付けられた操作ロープと、を備え、操作ロープの先端部を対象となる照明柱等の支柱の周囲に少なくとも一巻きしたのち、ロープ先端部の係止具を第1段目の単位ロッドの先端部適所に係止させることで、支柱及び当該伸縮ロッドを緩く取り巻くループ部分を形成した状態において、伸縮ロッドを適宜な長さに伸張固定して支柱に沿わせて立て掛け、しかるのち、操作ロープの垂れ下げ部分を強く引っ張って、支柱を取り巻くループ部分を締め付け、その状態にて操作ロープの垂れ下げ部分を適宜に固定することにより、支柱外表面とロッド支持部材のパッド面との当接を介して雲台と支柱とを位置決めしつつ、伸縮ロッドを支柱に添設し得るように構成した」
点が、最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決(平成6年(オ)第1083号)にて判示された、均等の5要件を満たすかどうか検討する。

(2)均等の5要件
上記判決は、特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存在する場合であっても、以下の5つの要件を満たす場合には、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、対象製品等は特許発明の技術的範囲に属するものとするのが相当であると判示をしている。
(積極的要件)
(第1要件)異なる部分が特許発明の本質的部分でなく、
(第2要件)異なる部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、
(第3要件)前記のように置き換えることに、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、
(消極的要件)
(第4要件)対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から出願時に容易に推考できたものでなく、かつ、
(第5要件)対象製品等が、特許発明の出願手続において、特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる等の特段の事情もない。

(3)第1要件(本質的部分)について
上記第3の2.での検討のとおり、本件特許発明の課題は、「自立構造を備えた従来技術に対し、カメラ支柱の支持構造を大幅に簡素化するとともに、振動や風があってもカメラ等をぶれることなくしっかりと支柱に固定、位置決めすること」であると認められる。
これに対し、本件特許発明は、上記したイ号物件と異なる部分のうち、構成要件CないしFに係る、「『第1段目の単位ロッドの先端部』に『パッド面を有するロッド支持部材』を設けるとともに、『第1段目の単位ロッドの先端部』に『先端部ロープガイド』を設けて、『操作ロープ』により支柱を少なくとも一巻きした『ループ部分』を形成し、『操作ロープを強く引っ張って、支柱を取り巻くループ部分を締め付け』、『支柱外表面とロッド支持部材のパッド面との当接を介して雲台と支柱とを位置決めしつつ、伸縮ロッドを支柱に添設し得るように構成した』」ことにより、上記本件特許発明の課題を解決したものであるといえる。
一方、従来技術について検討すると、本件特許明細書には、伸縮式の支柱と雲台とを使用する各種のカメラの高所据付装置として、特開平8-336068号公報、特開2002-228088号公報、登録実用新案第3023696号公報(以下、それぞれ「先行技術文献1」、「先行技術文献2」、「先行技術文献3」という。)が示されている。
先行技術文献1には、基礎に固定した固定支柱と、カメラを載置した可動支柱とを締結した昇降式カメラ支柱が開示され、先行技術文献2には、三本の脚部に支持された伸縮自在のパイプ支柱に、カメラを設置した可動台を上下移動自在に取り付けた高所移動装置が開示され、先行技術文献3には、ビデオカメラと雲台部と円筒状支柱からなる長さ調整手段と三脚構造の支持手段とからなる点検装置が開示されている。
しかしながら、上記の従来技術はいずれも、装置が自立するための構造を備えており、「自立構造を備えた従来技術に対し、カメラ支柱の支持構造を大幅に簡素化するとともに、振動や風があってもカメラ等をぶれることなくしっかりと支柱に固定、位置決めすること」という課題に対し、本件特許発明の「『第1段目の単位ロッドの先端部』に『パッド面を有するロッド支持部材』を設けるとともに、『第1段目の単位ロッドの先端部』に『先端部ロープガイド』を設けて、『操作ロープ』により支柱を少なくとも一巻きした『ループ部分』を形成し、『操作ロープを強く引っ張って、支柱を取り巻くループ部分を締め付け』、『支柱外表面とロッド支持部材のパッド面との当接を介して雲台と支柱とを位置決めしつつ、伸縮ロッドを支柱に添設し得るように構成した』」に相当する解決手段は、どの先行技術文献にも開示されていない。
してみると、本件特許発明の「『第1段目の単位ロッドの先端部』に『パッド面を有するロッド支持部材』を設けるとともに、『第1段目の単位ロッドの先端部』に『先端部ロープガイド』を設けて、『操作ロープ』により支柱を少なくとも一巻きした『ループ部分』を形成し、『操作ロープを強く引っ張って、支柱を取り巻くループ部分を締め付け』、『支柱外表面とロッド支持部材のパッド面との当接を介して雲台と支柱とを位置決めしつつ、伸縮ロッドを支柱に添設し得るように構成した』」部分は、本件特許発明特有の技術的思想に基づく解決手段を構成する部分であるといえるから、当該構成要件は、本件特許発明の本質的部分であるといえる。
したがって、本件特許発明のイ号物件と異なる上記部分は、本件特許発明の本質的部分であるから、イ号物件の構成均等の第1要件を充足しない。

(4)第2要件(置換可能性)について
本件特許発明は、上記(3)で検討した、本件特許発明の構成中のイ号物件と異なる部分により、上記第3の2.で検討した、「自立構造を備えた従来技術に対し、カメラ支柱の支持構造を大幅に簡素化するとともに、振動や風があってもカメラ等をぶれることなくしっかりと支柱に固定、位置決めする」という目的を達成するものである。
一方、イ号物件は、先端部ロープ繋留リングとカラビナを第3段目の単位ロッドの先端部に設け、操作ロープにより支柱を一巻きしたループ部分を形成し、伸縮ロッドの基段部分に設けた三脚を開いて、第1段目の単位ロッドの先端部に設けた角度調整金具に取り付けたビデオカメラを支柱に当接させない状態で、伸縮ロッドを支柱に添設した、ものであるから、自立構造を備えるものであって、支持構造が簡素化されているとはいえない。
してみると、本件特許発明の構成中のイ号物件と異なる上記部分を、イ号物件におけるものと置き換えると、本件特許発明の上記目的を達成することができず、同一の作用効果を奏するとはいえない。
したがって、本件特許発明のイ号物件と異なる上記部分は、イ号物件の構成均等の第2要件を充足しない。

(5)請求人の主張について
請求人は、本件特許発明の構成要件E、Fに関して、判定請求書において、「『操作ロープの途中をリング内に挿通(経由)させる手順』については、支柱を取り巻く操作に『先立って』行うか、支柱を取り巻く操作の『後に』行うかの点で、イ号物件と相違するが、本件特許発明の均等の範囲のものに過ぎない」(判定請求書第12頁第15行?第15頁第22行、第16頁第1行?第18頁第4行)旨主張している。
しかしながら、本件特許発明とイ号物件との均等については、上記(3)及び(4)において検討したとおり、イ号物件は、均等の第1及び第2要件を充足しないから、請求人の上記主張は、本件判定請求においては、検討を要しないものである。

(6)均等についてのまとめ
以上のとおり、イ号物件は、少なくとも均等の第1及び第2要件を充足しないから、本件特許発明の均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するとはいえない。

4.まとめ
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の構成要件BないしFを充足しておらず、また、均等なものともいえないから、本件特許発明の技術的範囲に属するものとはいえない。

第6 むすび

したがって、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。

イ号物件説明書に添付された図面

〔図1〕

〔図2〕

〔図3〕

〔図4〕

 
判定日 2018-03-09 
出願番号 特願2007-173561(P2007-173561)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 明  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 鳥居 稔
篠原 功一
登録日 2007-09-07 
登録番号 特許第4008021号(P4008021)
発明の名称 カメラ等の高所据付具  
代理人 飯塚 健  
代理人 飯塚 信市  
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