• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03F
管理番号 1338534
審判番号 不服2016-18553  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-09 
確定日 2018-03-14 
事件の表示 特願2015-541000「ワークテーブルとマスクテーブルで共有するバランスマスシステム及びリソグラフィマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月15日国際公開、WO2014/071780、平成27年12月14日国内公表、特表2015-535613〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
平成25年 9月23日 国際特許出願(パリ条約による優先権主張20 12年11月12日、中国)
平成28年 1月12日 拒絶理由通知(同年1月19日発送)
平成28年 4月18日 意見書・手続補正書
平成28年 8月 2日 拒絶査定(同年8月9日送達)
平成28年12月 9日 審判請求書
平成29年 6月 5日 拒絶理由通知(平成29年6月6日発送、
以下「当審拒絶理由通知」という。)
平成29年 9月 4日 意見書

2 本願発明
本願の請求項1?12に係る発明は、平成28年4月18日付け手続補正により補正された請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は以下のとおりである。

「リソグラフィマシンのワークステージシステムを支持するように構成され、前記リソグラフィマシンのベースフレーム上に固定せずに配置された第1部分と、
前記リソグラフィマシンのマスクステージシステムを支持するように構成された第2部分と、
前記第1部分及び前記第2部分を相互接続するように構成された第3部分と、
を具備するバランスマスを備える前記リソグラフィマシンのためのバランスマスシステムであって、
前記バランスマスシステムは、前記バランスマスの重心に近傍に配置され、前記ベースフレームに前記バランスマスの前記第3部分を接続するように構成されたアンチドリフト及び補償装置をさらに備える。」(以下「本願発明」という。)

3 引用発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-4677号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に以下の記載がある。なお、当審拒絶理由は、明細書及び特許請求の範囲の記載不備を通知したものであり、新規性進歩性等の特許要件の判断は行っていない。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、防振方法に係り、更に詳しくはマスクパターンを感光基板上に露光するための露光装置等における基板ステージの移動による装置本体の防振に適用して好適な防振方法に関する。」(注:下線は、当審が付加した。以下同様である。)

イ 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】…
【0006】本発明は、かかる従来技術の有する不都合に鑑みてなされたもので、その目的は、防振パッド上に保持される装置本体の揺動の発生を効果的に阻止することが可能な防振装置を提供することにある。」

ウ 「【0011】
【実施例】以下、本発明に係る防振方法が適用されるステッパ型の投影露光装置の一実施例について、図1ないし図4に基づいて説明する。
【0012】図1には、一実施例の投影露光装置の正面図が示されている。この図1において、設置面としての床1の上に4個の台座2A,2B,…(図1では2A,2Bのみが現れている、以下同様)が設置され、これら4個の台座2A,2B,…上にそれぞれ上下動機構3A?3Dを介して防振パッド4A?4Dが設置され、これら防振パッド4A?4D上に加重センサ5A?5Dを介して投影露光装置の定盤6が設置されている。ここで、後述するように本実施例では投影光学系25が使用されているため、投影光学系25の光軸に平行にZ軸を取り、Z軸に直交する平面内で図1の紙面平行方向にX軸を、図1の紙面直交方向にY軸を取る。
【0013】図3には、図1のC-C線に沿う断面図が示されている。この図3に示されるように、上下動機構3A?3D、防振パッド4A?4D、及び加重センサ5A?5Dは、それぞれ定盤6の四角形の底面の4個の頂点付近に配置されている。上下動機構3A?3Dとしては、例えばねじを駆動モータにより回転させて高さを調整する電動式の高さ調整機構が使用され、上下動機構3A?3DのZ方向への高さ調整量は、制御装置11により制御される。また、防振パッド4A?4Dとしては、空気式ダンパ、又はダンピング液中に圧縮コイルばねを入れた機械式ダンパ等が使用される。防振パッド4A?4Dとして空気式ダンパを使用する場合、空気の圧力により防振パッド4A?4Dの高さを調整できるため、その空気式ダンパはそれぞれ上下動機構3A?3Dと防振パッド4A?4Dとを兼用できることになる。また、加重センサ5A?5Dとしては、歪みゲージ等からなるロードセルが使用でき、加重センサ5A?5Dにより計測される定盤6からの加重、即ち、防振パッド4A?4Dから定盤6に対するZ方向への反力が制御装置11に供給されている。
【0014】図1に戻り、台座2Aと定盤6との間に防振パッド4Aと並列にアクチュエータ7Aが設置されている。アクチュエータ7Aは、台座2A上に固定された固定子9Aと定盤6の底面に固定された可動子8Aとから構成され、制御装置11からの指示に応じて台座2Aから定盤6の底面に対するZ方向への付勢力、又は定盤6の底面から台座2Aに向かう吸引力を発生する。他の防振パッド4B?4Dにおいても、防振パッド4Aと同様にそれぞれ並列にアクチュエータ7B?7Dが設置され、これらアクチュエータ7B?7Dの付勢力又は吸引力もそれぞれ制御装置11により設定される。

【0018】図1に戻り、床1と定盤6の底面の中央部との間に、床1に対する定盤6のZ方向の変位を検出するための変位センサ10が設置され、変位センサ10の検出結果も制御装置11に供給されている。変位センサ10としては、例えば分解能0.1mm程度のリニアポテンショメータ、又は光電式のリニアエンコーダ等が使用できる。
【0019】また、定盤6上には図示しない駆動手段によってY軸方向に駆動されるYステージ20Aが載置され、このYステージ20A上に図示しない駆動手段によってX軸方向に駆動されるXステージ20Bが載置されている。更に、このXステージ20B上にZレベリングステージ、θステージ(いずれも図示省略)及びウエハホルダ21を介してウエハ22が吸着保持されている。定盤6上でYステージ20Aを囲むように第1コラム24が植設され、第1コラム24の上板の中央部に投影光学系25が固定され、第1コラム24の上板に投影光学系25を囲むように第2コラム26が植設され、第2コラム26の上板の中央部にレチクルステージ27を介してレチクル28が載置されている。

【0024】更に、第1コラム24の-X方向の側面に可動軸35Aが埋め込まれ、可動軸35Aと床上に固定された支柱31Aとの間にアクチュエータ32Aが取り付けられている。アクチュエータ32Aは、アクチュエータ7Aと同様に、支柱31Aに固定された発磁体よりなる固定子34Aと、可動軸35Aに取り付けられたコイルを含む可動子33Aとから構成され、制御装置11から可動子33A内のコイルに流れる電流を調整することにより、可動軸35Aに対して+Y方向又は-Y方向に力を与えることができる。同様に、第1コラム24の+X方向の側面に可動軸35Bが埋め込まれ、可動軸35Bと床上に固定された支柱31Bとの間に、アクチュエータ32Aと同一構成のアクチュエータ32Bが取り付けられ、制御装置11からの指示により可動軸35Bに対して+Y方向又は-Y方向に力を与えることができるようになっている。また、第1コラム24の+X方向の側面の中央部と床上の支柱31Cとの間に、固定子34Cと可動子33Cとからなるアクチュエータ32Cが設置され、制御装置11からの指示によりアクチュエータ32Cを介して第1コラム24に対して+X方向、又は-X方向に力を与えることができる。制御装置11による、アクチュエータ32A?32Cの制御方法についても後述する。
【0025】また、図1に戻り、支柱31A,31B及び31Cはそれぞれ床上に第1コラム24に沿って植設されている。
【0026】ここで、定盤6、Yステージ20A、Xステージ20B、ウエハホルダ21、第1コラム24、投影光学系25、第2コラム26、及びレチクルステージ27等から成る装置本体の重心Gが図1に示される位置にあり、また、アクチュエータ32A、32Bによる可動軸35A,35Bの第1コラム24との接続部の中心をそれぞれ作用点AP及びBPとし、図3に示されるように、アクチュエータ32Cの可動子34Cの第1コラム24との接続部の中心を作用点CPとすると、本実施例では、3つの作用点AP、BP及びCPのZ方向の位置がそれぞれ装置本体の重心Gとほぼ同じZ方向位置(高さ)に設定されている。」

エ 「【0036】即ち、制御装置11では各ステージの加速度値及び質量値に基づき各ステージに作用する力が重心Gを6自由度方向に運動させようとする力を推測し、この力を相殺するのに必要な7つのアクチュエータ7A、7B、7C、7D、32A、32B、32Cの制御量を求めて、いわゆるフィードフォワード制御によりアクチュエータ7A、7B、7C、7D、32A、32B、32Cを駆動制御する。

【0038】この一方、制御装置11では、前述したような各機能部11A?11Eの働きにより、力F_(x1)、F_(y1)、F_(z1)、N_(x1)、N_(y1)、N_(z1)を相殺するような力をアクチュエータ7A、7B、7C、7D、32A、32B、32Cで発生させるべく、フィードフォワード制御を行なうので、アクチュエータ7A、7B、7C、7D、32A、32B、32Cが、理論上はF_(x1)、F_(y1)、F_(z1)、N_(x1)、N_(y1)、N_(z1)を相殺できる力F_(1)?F_(7)をそれぞれ発生する。この場合においても、7つのアクチュエータがそれぞれ発生した力F_(1)?F_(7)は、装置本体を重心G回りに6自由度方向に運動させようとするので、あたかも図4に点線で示される座標変換ブロック42が存在し、この座標変換ブロック42よって力F1 ?F7 が重心G回りの6自由度方向の力F_(xO)、F_(yO)、F_(zO)、N_(xO)、N_(yO)、N_(zO)に変換されるような現象となる。
【0039】従って、Xステージ20B、Yステージ20Aが移動すると、装置本体には、図4に示される加え合わせ点44A?44Fのそれぞれの出力である6自由度方向の力F_(x)=F_(x1)-F_(xO)、F_(y)=F_(y1)-F_(yO)、F_(z)=F_(z1)-F_(zO)、N_(x)=N_(x1)-N_(xO)、N_(y)=N_(y1)-N_(yO)、N_(z)=N_(z1)-N_(zO)が作用することになるが、本実施例の場合、計算上は、F_(x1)=F_(xO)、F_(y1)=F_(yO)、F_(z1)=F_(zO)、N_(x1)=N_(xO)、N_(y1)=N_(yO)、N_(z1)=N_(zO) となっているので、F_(x)=F_(y)=F_(z)=N_(x)=N_(y)=N_(z)=0となり、装置本体には、何等力が作用しないのと同じ状態になり、装置本体はいずれの方向にも揺動しない。なお、実際には、干渉計の計測誤差、演算誤差等があるので、その誤差分の力が作用すると考えられるが、この力の影響による装置本体の揺動は無視できる程度に小さくなる。」

オ 図1、図3は、以下のとおりである。

(2)上記記載によれば、刊行物には以下の露光装置の発明が記載されている。
「設置面としての床1の上に4個の台座2A,2B,…が設置され、これら4個の台座2A,2B,…上にそれぞれ上下動機構3A?3Dを介して防振パッド4A?4Dが設置され、これら防振パッド4A?4D上に加重センサ5A?5Dを介して投影露光装置の定盤6が設置され、
加重センサ5A?5Dにより計測される定盤6からの加重、即ち、防振パッド4A?4Dから定盤6に対するZ方向への反力が制御装置11に供給され、
台座2Aと定盤6との間に防振パッド4Aと並列にアクチュエータ7Aが設置され、
アクチュエータ7Aは、制御装置11からの指示に応じて台座2Aから定盤6の底面に対するZ方向への付勢力、又は定盤6の底面から台座2Aに向かう吸引力を発生し、
他の防振パッド4B?4Dにおいても、防振パッド4Aと同様にそれぞれ並列にアクチュエータ7B?7Dが設置され、これらアクチュエータ7B?7Dの付勢力又は吸引力もそれぞれ制御装置11により設定され、
定盤6上にはYステージ20Aが載置され、このYステージ20A上にX軸方向に駆動されるXステージ20Bが載置され、Xステージ20B上にZレベリングステージ、θステージ及びウエハホルダ21を介してウエハ22が吸着保持され、
定盤6上でYステージ20Aを囲むように第1コラム24が植設され、
第1コラム24の上板に第2コラム26が植設され、
第2コラム26の上板の中央部にレチクルステージ27を介してレチクル28が載置され、
第1コラム24の-X方向の側面に可動軸35Aが埋め込まれ、可動軸35Aと床上に固定された支柱31Aとの間にアクチュエータ32Aが取り付けられ、
第1コラム24の+X方向の側面に可動軸35Bが埋め込まれ、可動軸35Bと床上に固定された支柱31Bとの間に、アクチュエータ32Aと同一構成のアクチュエータ32Bが取り付けられ、
アクチュエータ32A、32Bによる可動軸35A,35Bの第1コラム24との接続部の中心をそれぞれ作用点AP及びBPとし、アクチュエータ32Cの可動子34Cの第1コラム24との接続部の中心を作用点CPとすると、3つの作用点AP、BP及びCPのZ方向の位置がそれぞれ装置本体の重心Gとほぼ同じZ方向位置(高さ)に設定され、
制御装置11では各ステージの加速度値及び質量値に基づき各ステージに作用する力が重心Gを6自由度方向に運動させようとする力を推測し、この力を相殺するのに必要な7つのアクチュエータ7A、7B、7C、7D、32A、32B、32Cの制御量を求めて、いわゆるフィードフォワード制御によりアクチュエータ7A、7B、7C、7D、32A、32B、32Cを駆動制御し、
Xステージ20B、Yステージ20Aが移動すると、装置本体には何等力が作用しないのと同じ状態になり、装置本体はいずれの方向にも揺動しない
ステッパ型の投影露光装置。」(以下「引用発明」という。)

4 対比
本願発明と、引用発明の「ステッパ型の投影露光装置」を構成する「定盤6」、「第1コラム24」、「第2コラム26」、「アクチュエータ32C」等を一体として対比する。

(1)本願発明の「リソグラフィマシンのワークステージシステムを支持するように構成され、前記リソグラフィマシンのベースフレーム上に固定せずに配置された第1部分」と、引用発明の「設置面としての床1の上に…上下動機構3A?3Dを介して防振パッド4A?4Dが設置され、これら防振パッド4A?4D…を介して」設置された「投影露光装置の定盤6」であって、その「上にはYステージ20Aが載置され、このYステージ20A上にX軸方向に駆動されるXステージ20Bが載置され、Xステージ20B上にZレベリングステージ、θステージ及びウエハホルダ21を介してウエハ22が吸着保持され」る「定盤6」を対比する。
ア 引用発明の「投影露光装置」は本願発明の「リソグラフィマシン」に相当し、以下同様に、「Yステージ20A」、「Xステージ20B」、「Zレベリングステージ」、「θステージ」は一体として「ワークステージシステム」に、「定盤6」は「第1部分」に、それぞれ相当する。そして、本願発明の「リソグラフィマシンのベースフレーム」と引用発明の「床1」は、「土台部分」の点で一致する。

イ 引用発明の「投影露光装置の定盤6」が、その「上にはYステージ20Aが載置され、このYステージ20A上にX軸方向に駆動されるXステージ20Bが載置され、Xステージ20B上にZレベリングステージ、θステージ及びウエハホルダ21を介してウエハ22が吸着保持され」ていることは、本願発明の「第1部分」が「リソグラフィマシンのワークステージシステムを支持するように構成され」ていることに相当する。

ウ 本願発明の「第1部分」が「前記リソグラフィマシンのベースフレーム上に固定せずに配置され」ていることと、引用発明の「定盤6」が、「設置面としての床1の上に」「上下動機構3A?3D」、「防振パッド4A?4D」等を介して設置されていることは、「第1部分」が「土台部分上に固定せずに配置され」ている点で一致する。

エ してみると、両者は、「リソグラフィマシンのワークステージシステムを支持するように構成され、土台部分上に固定せずに配置された第1部分」の点で一致する。

(2)本願発明の「前記リソグラフィマシンのマスクステージシステムを支持するように構成された第2部分」と、引用発明のその「上板の中央部にレチクルステージ27を介してレチクル28が載置され」る「第2コラム26」を対比する。
ア 引用発明の投影露光装置の「レチクルステージ27」は、本願発明のリソグラフィマシンの「マスクステージシステム」に相当し、以下同様に、「載置され」ることは「支持する」ことに、「第2コラム26」は「第2部分」に、それぞれ相当する。

イ してみると、両者は相当関係にある。

(3)本願発明の「前記第1部分及び前記第2部分を相互接続するように構成された第3部分」と、引用発明の「定盤6上」に「植設され」た「第1コラム24」であって、そ「の上板に第2コラム26が植設され」た「第1コラム24」を対比する。
ア 引用発明の「定盤6」は本願発明の「第1部分」に相当し、以下同様に、「第2コラム」は「第2部分」に、「第1コラム」は、「第3部分」に、それぞれ相当する。

イ 引用発明において、定盤6上に第1コラム24が植設され、第1コラム24の上板に第2コラム26が植設されていることは、第1コラムが定盤6と第2コラムを相互接続していると言える。

ウ してみると、両者は相当関係にある。

(4)本願発明の「リソグラフィマシンのためのバランスマスシステム」と、引用発明の「Xステージ20B、Yステージ20Aが移動すると、装置本体には何等力が作用しないのと同じ状態になり、装置本体はいずれの方向にも揺動しないステッパ型の投影露光装置」を対比する。
ア 引用発明は、Xステージ20BやYステージ20Aが移動しても、装置本体には何等力が作用しないのと同じ状態になり、装置本体はいずれの方向にも揺動しないものである。そうすると、引用発明の装置本体は、本願発明の「バランスマスシステム」に相当するものを構成するものである。

イ してみると、両者は相当関係にある。

(5)本願発明の「前記バランスマスシステムは、前記バランスマスの重心に近傍に配置され、前記ベースフレームに前記バランスマスの前記第3部分を接続するように構成されたアンチドリフト及び補償装置」と、引用発明の「アクチュエータ32A、32Bによる可動軸35A,35Bの第1コラム24との接続部の中心をそれぞれ作用点AP及びBPとし」、「作用点AP、BP…のZ方向の位置がそれぞれ装置本体の重心Gとほぼ同じZ方向位置(高さ)に設定され」た「アクチュエータ32A、32B」であって、床上に固定された支柱31A、31Bに取り付けられた「アクチュエータ32A、32B」を対比する。

ア 本願発明の「アンチドリフト及び補償装置」の技術的意味について検討する。本願の発明の詳細な説明には、「アンチドリフト及び補償装置」の技術的意味について説明する記載は無いところ、当審拒絶理由通知に応答する平成29年9月4日付け意見書によれば、「このようなアンチドリフト及び補償装置16は、センサ及びアクチュエータによって実施することができ、当該技術分野において知られています。これらのシステムの一例は、米国特許第8,606,426号の第4欄第58行?第5欄21行および図3に開示されています。」等と説明する。上記意見書の説明によれば、本願発明の「アンチドリフト及び補償装置」は、アクチュエータを用いて駆動することにより、センサで検出したドリフトを補償するものと解される。

イ 上記アを踏まえて検討する。引用発明の「アクチュエータ32A、32B」は、各ステージの加速度値及び質量値に基づき制御装置11が「アクチュエータ32A、32B」等を駆動し、装置本体が何れの方向にも振動しない(ドリフトを補償する)ように制御するものである。そうすると、引用発明の「アクチュエータ32A、32B」は、本願発明の「アンチドリフト及び補償装置」に相当する。

ウ 引用発明の「アクチュエータ32A、32B」の「作用点AP、BP…のZ方向の位置がそれぞれ装置本体の重心Gとほぼ同じZ方向位置(高さ)に設定され」ていることは、本願発明の「アンチドリフト及び補償装置」が「前記バランスマスの重心に近傍に配置され」ていることに相当する。

エ 引用発明の「アクチュエータ32A、32Bによる可動軸35A,35Bの第1コラム24との接続部」は、アクチュエータ32A、32Bによる可動軸35A,35Bが第1コラムと接続されていることであるから、本願発明の「前記バランスマスの前記第3部分を接続する」ことに相当する。

オ してみると、両者は、「前記バランスマスシステムは、前記バランスマスの重心に近傍に配置され、前記バランスマスの前記第3部分を接続するように構成されたアンチドリフト及び補償装置」の点で一致する。

カ 以上によれば、本願発明と引用発明の「ステッパ型の投影露光装置」を構成する「定盤6」、「第1コラム24」、「第2コラム26」、「アクチュエータ32C」等は、
「リソグラフィマシンのワークステージシステムを支持するように構成され、土台部分上に固定せずに配置された第1部分と、
前記リソグラフィマシンのマスクステージシステムを支持するように構成された第2部分と、
前記第1部分及び前記第2部分を相互接続するように構成された第3部分と、
を具備するバランスマスを備える前記リソグラフィマシンのためのバランスマスシステムであって、
前記バランスマスシステムは、前記バランスマスの重心に近傍に配置され、前記バランスマスの前記第3部分を接続するように構成されたアンチドリフト及び補償装置をさらに備える。」
点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:「土台部分」が、本願発明では「リソグラフィマシンのベースフレーム」であるのに対し、引用発明では、「床1」である点。
相違点2:「アンチドリフト及び補償装置」が「前記バランスマスの前記第3部分を接続する」相手側の部材が、本願発明では「ベースフレーム」であるのに対し、引用発明では、「床上に固定された支柱31A」、「床上に固定された支柱31B」である点。

5 判断
以下、上記相違点1、2についてまとめて検討する。
本願発明の「ベースフレーム」と、引用発明の「床1」あるいは「床上に固定された支柱」は、何れも、「バランスマスシステム」や「装置本体」とアクチュエータを介して接続される部材であり、アクチュエータによって可動されない部分である。そして、一般に機械装置を構成する際、可動されない部分、すなわち装置の土台や基礎となる部分をベースフレームとして構成することは、周知の技術手段である。
そうすると、引用発明において、「床1」あるいは「床上に固定された支柱」をベースフレームとして構成し、上記相違点1,2に係る本願発明の発明特定事項となすことは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

そして、本願発明が奏する作用効果も、引用発明と、周知の技術手段に基づいて当業者が容易に想到し得たものと認められる。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明と周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-05 
結審通知日 2017-10-10 
審決日 2017-10-30 
出願番号 特願2015-541000(P2015-541000)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤尾 隼人今井 彰  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 森林 克郎
小松 徹三
発明の名称 ワークテーブルとマスクテーブルで共有するバランスマスシステム及びリソグラフィマシン  
代理人 家入 健  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ