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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1338536
審判番号 不服2016-19196  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-22 
確定日 2018-03-14 
事件の表示 特願2014-255829「生体インピーダンス測定装置およびその装置で電極がどのように使用されているかを判断する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月 9日出願公開、特開2016- 67877〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月18日(パリ条約による優先権主張 2014年9月25日 韓国)の出願であって、平成27年11月12日付けで拒絶理由が通知され、平成28年4月15日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月26日付けで拒絶査定されたところ、同年12月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成28年12月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の結論]
平成28年12月22日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は、請求人が付与したものであり、補正箇所を示す。以下、本件補正後の請求項1に記載された発明を「本件補正発明」という。)。

「 【請求項1】
生体インピーダンス測定装置であって、前記装置が、生体インピーダンス測定のための複数の電極と、
前記複数の電極のうち少なくとも一部の電極を電流電極にスイッチングしたり、電圧電極にスイッチングしたり、オープンしたりするスイッチと、
前記スイッチの動作を制御する制御部と、
を含み、
前記複数の電極のうち身体と接触している電極をどのように使用するかを判断し、
前記制御部は前記身体と接触していない電極をオープンするように前記スイッチを動作し、
前記制御部は身体と接触していない電極がオープンされるように、電流電極にスイッチングするための電流印加部及び電圧電極にスイッチングするための電圧測定部ではない、別の位置に接続されるように前記スイッチを制御する生体インピーダンス測定装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成28年8月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「 【請求項1】
生体インピーダンス測定装置であって、前記装置が、生体インピーダンス測定のための複数の電極と、
前記複数の電極のうち少なくとも一部の電極を電流電極にスイッチングしたり、電圧電極にスイッチングしたり、オープンしたりするスイッチと、
前記スイッチの動作を制御する制御部と、
を含み、
前記複数の電極のうち身体と接触している電極をどのように使用するかを判断し、 前記制御部は前記身体と接触していない電極をオープンするように前記スイッチを動作する
生体インピーダンス測定装置。」

2 補正の適否
(1) 本件補正の補正事項について
本件補正の補正事項は、以下のとおりである。

(補正事項)「制御部」が「身体と接触していない電極がオープンされるように、電流電極にスイッチングするための電流印加部及び電圧電極にスイッチングするための電圧測定部ではない、別の位置に接続されるように前記スイッチを制御する」ことを限定する。

以下において、当該補正事項が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に明示的に記載されている事項又は当初明細書等の記載から自明な事項であるか否かを検討する。

(2) 本願の当初明細書等に記載された事項
当初明細書等には、以下の記載がある。

ア 「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書に記載された多様な実施形態は、生体インピーダンス測定装置に接触している被測定者の多様な身体部位の生体インピーダンスを精密に測定することができる生体インピーダンス測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によると、生体インピーダンス測定装置は、生体インピーダンス測定のために複数の電極を提供し、提供された複数の電極のうち身体と接触した電極がどのように使用されているかを判断する。
・・・
【0009】
前記生体インピーダンス測定装置は、身体と接触している電極を電流電極にスイッチングしたり、前記電極を電圧電極にスイッチングしたり、オープンしたりするスイッチが前記電極とインピーダンス測定回路の間に備えられ、前記スイッチの動作に基づいて前記電極がどのように使用されているかを判断してもよい。
・・・
【0016】
さらに、本明細書に記載された多様な実施形態によると、被測定者の身体が接触していない電極をオープンすることにより、生体インピーダンス測定の精密度を向上させることができる。」

イ 「【図面の簡単な説明】
【0017】
・・・
【図3】一実施形態に係る生体インピーダンス測定装置を示したブロック図である。」

ウ 「【0038】
図3は、一実施形態に係る生体インピーダンス測定装置を示したブロック図である。
【0039】
図3を参照すると、生体インピーダンス測定装置は、電極110およびスイッチ120を備える。また、生体インピーダンス測定装置は、制御部130、電流印加部140、電圧測定部150、およびインピーダンス測定回路160を備えてもよい。
【0040】
電極110は、生体インピーダンスを測定するために足板10やパッド20、30に露出させてもよい。電極は、再設定可能な(reconfigurable)電極であってもよい。すなわち、電極110は、その特性が被測定者の電圧を測定する電圧電極であるか、被測定者に電流を印加する電流電極であるかに特定されない電極であってもよい。電極110は被測定者の身体と接触する導体であり、スイッチ120のスイッチング動作に応じてその特性が決定されてもよい。
【0041】
スイッチ120は、電極110の特性を決める。すなわち、スイッチは、電極110を電流電極にスイッチングしたり、電極110を電圧電極にスイッチングしたりしてもよい。さらに、スイッチは、電極110をオープンしてもよい。
【0042】
スイッチ120は、電極110を電流印加部140と接続させることによって電極110を電流電極にスイッチングしてもよい。また、スイッチ120は、電極110を電圧測定部150と接続させることによって電極110を電圧電極にスイッチングしてもよい。スイッチ120は、電極110とインピーダンス測定回路160の間に位置してもよい。
・・・
【0046】
制御部130は、スイッチ120のスイッチング動作を制御する。
【0047】
制御部130は、スイッチ120が電流電極として動作するように、スイッチ120を電流印加部140に接続してもよい。また、制御部130は、スイッチが電圧電極として動作するように、スイッチ120を電圧測定部150に接続してもよい。さらに、制御部130は、スイッチをオープンしてもよい。
【0048】
制御部130は、生体インピーダンスを測定するために、足板10やパッド20、30に置かれた被測定者の身体の位置に応じ、被測定者の身体が接触している電極110を感知してもよい。被測定者の身体は、被測定者の足、腹部、腕、脚などであってもよい。制御部130は、感知結果に基づき、スイッチ120が電極110を電流電極にスイッチングしたり、電極110を電圧電極にスイッチングしたり、オープンしたりするようにスイッチ120を制御してもよい。
【0049】
例えば、制御部130は、被測定者の身体が接触している電極110を電流電極にスイッチングしたり、電極110を電圧電極にスイッチングしたりし、被測定者の身体が接触していない電極110はオープンするようにスイッチ120を制御してもよい。
【0050】
このように、本発明の生体インピーダンス測定装置は、電極110を再設定することによって電圧電極と電流電極を十分に離隔させることができるため、生体インピーダンス測定の精密度を向上させることができる。また、本発明の生体インピーダンス測定装置は、足の大きさに応じて電極110をスイッチングするため、被測定者は足の位置を調整するための努力をしなくとも、便利に生体インピーダンスを測定することができる。また、本発明の生体インピーダンス測定装置は、足の大きさに関係なく生体インピーダンスを精密に測定することができる。さらに、本発明の生体インピーダンス測定装置は、接触していない電極をオープンすることによって生体インピーダンス測定の精密度を向上させ、生体インピーダンス測定によって消費する電力の効率を高めることができる。」

エ 「【0055】
電極110は、被測定者の足の大きさを考慮して十分に広く配置されてもよい。電極110が被測定者の足の大きさに比べて広く配置された場合でも、電極110は被測定者の身体が接触した領域でのみ電圧電極または電流電極として動作するため、被測定者の身体部位に関係なく生体インピーダンスを精密に分析することができる。
・・・
【0059】
足板10の全体に配列された電極110のうち、被測定者の身体が感知された電極110だけが活性化するが、そのうち一部は電圧電極に、他の一部は電流電極にスイッチングされてもよい。したがって、本発明の電極110は、足板10またはパッド20、30の上面全体に配列されていても被測定者の身体部位の位置と大きさを認識し、被測定者の生体インピーダンスを精密に測定することができる。」

オ 「【0063】
図6は、一実施形態に係る生体インピーダンス測定装置の動作方法を示したフローチャートである。
【0064】
図6を参照すると、ステップ310で、生体インピーダンス測定装置は、生体インピーダンス測定のために複数の電極を提供する。
【0065】
ステップ320で、生体インピーダンス測定装置は、提供された複数の電極のうち身体と接触している電極110がどのように使用されているかを判断する。生体インピーダンス測定装置は、生体インピーダンスを測定するために提供された複数の電極110のうち身体と接触している電極を感知してもよい。このとき、電極に接触する身体は、足の裏、手の平、足首、腰、胴体、上腕、太もものうちの1つであってもよく、どのように使用されているかが判断される電極は、提供された複数の電極のうち、足の裏、手の平、足首、腰、胴体、上腕、太もものうちの1つと接触することによって感知された電極であってもよい。生体インピーダンス測定装置は、感知結果に基づいて電極110がどのように使用されているかを判断してもよい。
【0066】
生体インピーダンス測定装置は、複数の電極110のうち少なくとも一部を電流電極にスイッチングしたり、電圧電極にスイッチングしたり、オープンしたりしてもよい。身体と接触している電極を電流電極にスイッチングしたり、電極を電圧電極にスイッチングしたり、オープンしたりするスイッチは、電極とインピーダンス測定回路の間に備えられてもよい。生体インピーダンス測定装置は、スイッチの動作に基づいて電極がどのように使用されているかを判断してもよい。
【0067】
生体インピーダンス測定装置は、身体と接触している電極を感知し、身体の長さを測定してもよい。また、生体インピーダンス測定装置は、身体と接触している電極の個数および電極間の間隔に基づいて身体の長さを測定してもよい。生体インピーダンス測定装置は、さらに生体インピーダンスに基づいて身体の長さを測定してもよい。
【0068】
ステップ320は、足が接触している電極のうち、第1領域に位置した電極は電流電極にスイッチングし、第2領域に位置した電極は電圧電極にスイッチングすることを含んでもよい。このとき、第1領域と第2領域は、足が接触している領域内で互いに離隔して位置してよい。
【0069】
さらに、ステップ320は、足が接触していない電極をオープンすることを含んでもよい。したがって、本発明の生体インピーダンス測定装置は、足が接触していない電極をオープンすることにより、生体インピーダンス測定によって消費する電力の効率を高めることができる。」

カ 図3は、以下のようなものである。


キ 図6は、以下のようなものである。


(3) 判断
ア 当初明細書等には、「身体と接触していない電極がオープンされるように、電流電極にスイッチングするための電流印加部及び電圧電極にスイッチングするための電圧測定部ではない、別の位置に接続されるように前記スイッチを制御する」ことについての明示的な記載はない。

イ 「身体と接触していない電極」に関するスイッチの制御について、当初明細書等には、「被測定者の身体が接触していない電極をオープンする」(【0016】段落)、「被測定者の身体が接触していない電極110はオープンするようにスイッチ120を制御してもよい」(【0049】段落)、「本発明の生体インピーダンス測定装置は、接触していない電極をオープンする」(【0050】段落)、及び「足が接触していない電極をオープンする」(【0069】段落)との記載がある。

ウ そこで、当初明細書等における「電極をオープンする」ことが、「電流電極にスイッチングするための電流印加部及び電圧電極にスイッチングするための電圧測定部ではない、別の位置に接続される」ことを意味しているかどうかについて、検討する。

(ア) 当初明細書等の発明の詳細な説明には、「電極をオープンする」とは、スイッチをどのような状態とすることであるかについて、明確な定義がされていない。
特に、発明の詳細な説明において、「電極をオープンする」ことが、電極を何らかの回路や接点に接続させることであるとの記載もない。

(イ) 当初明細書等の図3からは、「スイッチ(120)」として示された矩形の領域内に、「OPEN」と記された、端子を示すと思われる丸印が読み取れる。
ここで、図3は、【0017】段落及び【0038】段落に記載されているように、「一実施形態に係る生体インピーダンス測定装置を示したブロック図」である。
そして、当業者にとって、「ブロック図」とは、実際の回路部品のつながりを示す「回路図」とは異なり、信号の流れや部分の機能が分かりやすいように表現した図であり、ブロック図上で1つのブロックとして表された機能が実際には複数個の回路部品を組み合わせて実現されることがあることは、技術常識である。
したがって、「ブロック図」である図3に記載された、「スイッチ120」は、当該図3に記されたとおりに信号の流れを切り替えるスイッチ機能を有する回路ブロックを表わしたものでしかなく、図3から、「スイッチ120」のスイッチング機能を実現する具体的な回路部品として、電流印加部でも電圧測定部でもない「別の位置に接続」できるスイッチ部品が記載されていることは読み取れない。

なお、当業者にとって、図3のブロック図に示されたスイッチ120の機能を実現するための実際の回路部品の配置として、例えば、電極110と電流印加部140との間にトランジスタ等の半導体スイッチを配置し、電極110と電圧測定部150との間にも別のトランジスタ等の半導体スイッチを配置し、両方の半導体スイッチをともにOFF状態とすることで、図3のブロック図においてスイッチ120を「OPEN」端子に切り替えた場合と等価な信号の流れを実現することが想定されうる。

(ウ) 上記(ア)-(イ)から、当初明細書等において、「電極をオープンする」ことが、「電流電極にスイッチングするための電流印加部及び電圧電極にスイッチングするための電圧測定部ではない、別の位置に接続される」ことを意味していることは自明であるとはいえない。

エ 【0055】段落には、「電極110は被測定者の身体が接触した領域でのみ電圧電極または電流電極として動作する」との記載があり、また、【0059】段落には、「足板10の全体に配列された電極110のうち、被測定者の身体が感知された電極110だけが活性化する」との記載がある。
当該記載からは、「身体と接触していない電極」が「電圧電極または電流電極として動作」せずまた「活性化」しないことが示唆されているといえる。
しかしながら、「電圧電極または電流電極として動作」せずまた「活性化」しないとは、当業者にとって、電極110は「電圧測定部150」にも「電流印加部140」にも接続されていない状態であることが推測されるにとどまる。
したがって、【0055】段落、【0059】段落の記載を参酌しても、「身体と接触していない電極が」「電流電極にスイッチングするための電流印加部及び電圧電極にスイッチングするための電圧測定部ではない、別の位置に接続される」ことが自明であるとはいえない。

オ ア-エから、「身体と接触していない電極」が「電流電極にスイッチングするための電流印加部及び電圧電極にスイッチングするための電圧測定部ではない、別の位置に接続される」ことが、当初明細書等の記載から自明である事項とは認められない。

すると、「身体と接触していない電極」が「電流電極にスイッチングするための電流印加部及び電圧電極にスイッチングするための電圧測定部ではない、別の位置に接続される」という事項を含む上記補正事項が、当初明細書等に明示的に記載されている事項でも、当初明細書等の記載から自明である事項でもないから、当該補正事項を含む本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。
したがって、当該補正事項を含む本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年12月22日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-14に係る発明は、平成28年8月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものであり、以下のとおり、当審にて分節しA)?G)の見出しを付けた。

「 【請求項1】
A)生体インピーダンス測定装置であって、
B)前記装置が、生体インピーダンス測定のための複数の電極と、
C)前記複数の電極のうち少なくとも一部の電極を電流電極にスイッチングしたり、電圧電極にスイッチングしたり、オープンしたりするスイッチと、
D)前記スイッチの動作を制御する制御部と、を含み、
E)前記複数の電極のうち身体と接触している電極をどのように使用するかを判断し、
F)前記制御部は前記身体と接触していない電極をオープンするように前記スイッチを動作する
G)生体インピーダンス測定装置。」

2 引用文献・引用発明等
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(特開2005-230392号公報)には、以下の記載がある。

(引1a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、被験体の足裏に電極を接触させてインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置及び体組成測定装置に関するものである。
・・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、人及び四足動物とで共用でき、且つ両者を自動で識別可能なインピーダンス測定装置はなかった。これは、インピーダンス測定電極の配置が人用の測定装置と動物用の測定装置とでは異なることがあげられる。
・・・
【0010】
従って本発明は上述の問題点を解決し、被験体の足裏と測定電極との接触状態によって、被験体が人か動物かを自動判別し、各々に応じたインピーダンスを測定し、前記インピーダンスに基づいて体組成データを算出する人及び動物共用のインピーダンス測定装置及び体組成測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は、人及び足裏に肉球を有する四足動物を被験体とし、前記被験体の足裏に電極を接触させて生体インピーダンスを測定するインピーダンス測定装置であって、前記被験体に応じて接触状態の異なる複数の電極から成る電極群と、前記複数の電極の内、被験体の足裏に接触している電極を検出する検出手段と、前記検出された電極の接触状態に従って、被験体が人であるか四足動物であるかを自動判別する判別手段と、前記判別された被験体に適するインピーダンス測定モードに切り替える切替手段とを有することを特徴とするインピーダンス測定装置を提供する。」

(引1b)「【0039】
まず図1より、体組成測定装置1は公知の体重測定部2、測定ガイドや測定結果等を表示する表示部3、被験体の身体情報の数値入力等を行なうUP/DOWNキー及び決定キーから成る操作部4及び電源オン/オフスイッチを兼ねており、被験体の身体情報や測定データ等を呼び出すために被験体毎に割り当てた割り当てキー群6を備え、更に前記体重測定部2の載置面上に、短冊状の電極を複数配して成る電極群を左足裏に接触させる電極群と右足裏に接触させる電極群とを別々に設け、各々左足側電極群5a及び右足側電極群5bとして配した。前記左足側電極群は5a_(1)から5a_(n)までn個の電極を並べて配して成り、同じく右足側電極群は5b_(1)から5b_(n)までn個の電極を配して構成するものである。
【0040】
また、図2の電気ブロック図を用いて構成を説明する。前記左足側電極群5a及び右足側電極群5bを構成する各n個の電極が各々独立に、インピーダンス測定又は後述する電極の検出において電極特性を切り替える切替部11を介して制御部12に接続されている。前記切替部11は、インピーダンス測定又は電極の検出において、電極に所定の電流を印加する電流印加部13、及びインピーダンス測定において電圧を測定する電圧測定部14に接続しており、前記電流印加部13及び電圧測定部14を各々制御部12に接続して成る。
【0041】
また、前記電流印加部13は、前記各電極群5a及び5bを構成する各電極の内、2電極間の通電の可否により、前記被験体の足裏が接触している電極を検出する通電検出部15を介して制御部12に接続されている。更に、前記通電を検出された電極の接触状態に基づいて、載置面上の被験体が人か動物かを自動で判別する判別部16、測定に関するデータを記憶しておきデータの格納及び読み込み可能な記憶部17及び測定データを演算する演算部18が各々制御部12に接続されている。更に制御部12は、前記体重測定部2、表示部3、操作部4及び割り当てキー群6に各々接続し、体組成測定装置1に電力を供給する電源19を備えて構成する。
・・・
【0047】
体重値が記憶されると、ステップS7及びステップS8において、図4を用いて後述する、被験体の足裏に接触している電極の検出が成される。
【0048】
電極が検出されると、ステップS9において、図5を用いて後述する、前記検出された電極の接触状態に基づいて、被験体が人であるか動物であるかの判別と、判別された被験体に応じて、前記制御部12により切替部11を制御し、前記被験体の足裏に接触している電極と、電流印加部13及び電圧測定部14との接続を切り替えることにより、被験体に適するインピーダンス測定モードを選択する。
【0049】
前記電極切り替えにより、インピーダンス測定モードが選択されると、ステップS10において、前記インピーダンス測定モードに従って、人又は四足動物の内何れかの前記4電極法を用いたインピーダンス測定が成され、測定されたインピーダンスを記憶部17に記憶する。続いて演算部18において、前記測定されたインピーダンスと共に、前記入力された身体情報と前記測定された体重とを記憶部17より込みこむ。更に、前記判別された被験体に基づいて予め記憶部17に記憶してある体脂肪率算出用回帰式を記憶部17より読み込む。前記インピーダンス、身体情報及び体重を前記回帰式に代入して体脂肪率を算出する。」

(引1c)「【0065】
また、図5を用いて、前記図3のステップS9において、前記検出された電極に基づく被験体判別及び前記被験体に適する測定モードへの電極切り替え動作を説明する。
【0066】
図5ステップS31において、前記接触が検出された左足側電極5ak及び右足側電極5bkを記憶部17から読み込み、続くステップS32において前記電極から足裏との接触状態が判定される。ここで前記接触状態の判定は、人の場合足裏が2つであり、四足動物の場合足裏が4つであることから、前記左足側電極群5a及び右足側電極群5bの各々において、接触が検出された電極の内、隣り合う電極が連続して検出された1群を1接触群として、いくつの接触群があるかを判定するものである。例えば、前記左足側電極群5aにおいて、電極5a_(k-1)、5a_(k)及び5a_(k+1)の3電極のみ検出された場合、1接触群であると見なす。
【0067】
従って、図6に示すように、左右共に1接触群ずつ検出された場合、全電極群において接触群は2つ、すなわち体脂肪測定装置1上に載置されている足裏は2つであると判断し、ステップS33において被験体は人であると判断する。
【0068】
また、図7に示したように、左右共に2接触群ずつ検出された場合、前述と同様に全電極群において接触群は4つ、すなわち検出された足裏は4つであると判断し、ステップS35において、被験体は左右各々に前脚及び後脚を有する四足動物であると判断する。
【0069】
更に前記以外の接触群が検出された場合、ステップS37において、検出不良として表示部3にエラー表示し、予め設定した一定時間後に自動で電源オフして終了する。

【0070】
ステップS33において被験体が人と判断されると、ステップS34において、両足の爪先付近を電流印加電極側とし、踵付近を電圧測定電極側として公知の4電極法による、人用のインピーダンス測定モードへの電極切り替えが成される。
【0071】
前記図6に示すように、まず、左足側電極群5aにおいて、前記1接触群として検出された電極の内、両端の電極5a_(k(min))及び5a_(k(max))を、爪先側及び踵側に接触している電極と見なして記憶部17より読み込み、前記制御部12により切替部11を制御し、電極5a_(k(min))を電流印加部13に接続し、電極5a_(k(max))を電圧測定部14に接続して左足側の電極を設定する。
【0072】
また、右足側電極群5bにおいても、前述と同様にして、5b_(k(min))を爪先側に接触している電極として電流印加部13に接続し、5b_(k(max))を踵側に接触している電極として電圧測定部14に接続し、インピーダンス測定電極を設定する。
【0073】
また、ステップS35において被験体が四足動物であると判断されると、ステップS36において、図16を用いて前述した測定原理に基づいて、4電極法を用いた四足動物用のインピーダンス測定モードへの電極切り替えが成される。すなわち、左前後足裏側を電流印加電極側として動物の体幹部を介して左前後足裏間に電流を印加し、逆側の右前後足裏側を電圧測定電極側として右前後足裏間における電圧を測定することにより、四肢の抵抗の影響を受けずに被験体の体幹部インピーダンスを測定するものである。
【0074】
従って、前記図7に示したように、左足側電極群5aにおいて、前記足裏との接触が検出された電極の内、両端の電極5a_(k(min))及び5a_(k(max))を、前脚及び後脚の足裏に接触している電極として記憶部17より読み込み、前記制御部12により切替部11を制御し、電極5a_(k(min))及び5a_(k(max))を電流印加部13に接続して左足側の電極を設定する。
【0075】
また、右足側電極群5bにおいても、前述と同様にして、検出された内の両端の電極5b_(k(min))及び5b_(k(max))を電圧測定部14に接続して、インピーダンス測定電極を設定する。
【0076】
前記ステップS34及びステップS36においてインピーダンス測定電極が決定すると、図3のメインフローチャートへ戻る。
【0077】
なお、本実施例において、インピーダンス測定電極は、図3のステップS9、すなわち図5を用いて示したサブルーチンのステップS34及びステップS36により、前記各接触群の端部を示す、電極5a_(k(min))及び5a_(k(max))と電極5b_(k(min))及び5b_(k(max))とをインピーダンス測定電極として設定したが、前記1接触群が3つ以上の電極から成る場合、前記端部の電極よりも、より確実に足裏に接触している内側の電極を選択する方が望ましい。例えば、5a_(k(min)+1)及び5a_(k(max)-1)と電極5b_(k(min)+1)及び5b_(k(max)-1)を選択することにより、各々1電極分内側の電極を選択させることができる。」

(引1d)図1は、以下のようなものである。


(引1e)図2は、以下のようなものである。


(引1f)図5は、以下のようなものである。


(引1g)図6は、以下のようなものである。


(2)引用文献1の記載から把握できる事項
ア 【0066】段落の「接触が検出された電極」は、「被験体の足裏に接触している電極を検出する検出手段」により検出された電極を指すことは明らかであるから、「足裏との接触が検出された電極」と読み替える。

イ 【0072】段落の「前述と同様にして」は、【0071】段落の「前記1接触群として検出された電極の内」との記載を省略することを含むことは明らかであるから、「前記1接触群として検出された電極の内」と読み替える。

(3)引用文献1に記載された発明
上記(引1a)ないし(引1c)の下線部の記載及び上記(2)の事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
なお、引用発明の認定の根拠となった対応する段落番号等を付記した。

「人を被験体とし、前記被験体の足裏に電極を接触させて生体インピーダンスを測定するインピーダンス測定装置であって、前記被験体に応じて接触状態の異なる複数の電極から成る電極群と、前記複数の電極の内、被験体の足裏に接触している電極を検出する検出手段とを有し(【0011】)、
前記左足側電極群5a及び右足側電極群5bを構成する各n個の電極が各々独立に、インピーダンス測定又は後述する電極の検出において電極特性を切り替える切替部11を介して制御部12に接続され(【0040】)、
4電極法を用いたインピーダンス測定が成され(【0049】)、
左足側電極群5a及び右足側電極群5bの各々において、足裏との接触が検出された電極の内、隣り合う電極が連続して検出された1群を1接触群として(【0066】、上記(2)ア)、
左足側電極群5aにおいて、前記1接触群として検出された電極の内、両端の電極5a_(k(min))及び5a_(k(max))を、爪先側及び踵側に接触している電極と見なして記憶部17より読み込み、前記制御部12により切替部11を制御し、電極5a_(k(min))を電流印加部13に接続し、電極5a_(k(max))を電圧測定部14に接続して左足側の電極を設定し(【0071】)、
右足側電極群5bにおいても、前記1接触群として検出された電極の内、5b_(k(min))を爪先側に接触している電極として電流印加部13に接続し、5b_(k(max))を踵側に接触している電極として電圧測定部14に接続し、インピーダンス測定電極を設定する(【0072】、上記(2)イ)、
インピーダンス測定装置(【0011】)」

3 対比・判断
(1)対比
ア A)、G)について
引用発明の「生体インピーダンスを測定するインピーダンス測定装置」は、本願発明の「生体インピーダンス測定装置」に相当する。

イ B)について
引用発明の「複数の電極から成る電極群」は、「前記被験体の足裏に電極を接触させて生体インピーダンスを測定する」ための「電極」であるから、本願発明の「生体インピーダンス測定のための複数の電極」に相当する。

ウ C)について
引用発明における「インピーダンス測定」は、「1接触群」のうちの「両端の電極」である「5a_(k(min))」「5a_(k(max))」「5b_(k(min))」及び「5a_(k(max))」を、それぞれ「電流印加部13」及び「電圧測定部14」のいずれかに接続して、「4電極法」を用いて行なわれるものである。
してみれば、引用発明における「インピーダンス測定」の際に、「1接触群」のうちの「5a_(k(min))」と「5a_(k(max))」との間の電極及び「5b_(k(min))」と「5b_(k(max))」との間の電極は、「電流印加部13」にも「電圧測定部14」にも接続されないことは明らかである。
したがって、引用発明における「切替部11」は、「電極」を「電流印加部13に接続」するか「電圧測定部14に接続」するかの2者択一的なものではなく、「電極」を「電流印加部13に接続」したり、「電圧測定部14に接続」したりする以外に、「電流印加部13」にも「電圧測定部14」にも接続されない状態とすることもできるものである。
そして、引用発明の「電極」を「電流印加部13」にも「電圧測定部14」にも接続されない状態とすることは、本願発明の「電極を」「オープン」することに相当するといえる。
したがって、引用発明の「切替部11」は、「電極」を「電流印加部13に接続」したり、「電圧測定部14に接続」したり、「電流印加部13」にも「電圧測定部14」にも接続されない状態にしたりするものであるから、本願発明の「前記複数の電極のうち少なくとも一部の電極を電流電極にスイッチングしたり、電圧電極にスイッチングしたり、オープンしたりするスイッチ」に相当する。

エ D)について
引用発明の「制御部12」は、「切替部11を制御」するものであるから、本願発明の「前記スイッチの動作を制御する制御部」に相当する。

オ E)について
引用発明の「1接触群として検出された電極」は、本願発明の「前記複数の電極のうち身体と接触している電極」に相当する。
そして、引用発明の「左足側電極群5aにおいて、前記1接触群として検出された電極の内、両端の電極5a_(k(min))及び5a_(k(max))を、爪先側及び踵側に接触している電極と見なして記憶部17より読み込み、前記制御部12により切替部11を制御し、電極5a_(k(min))を電流印加部13に接続し、電極5a_(k(max))を電圧測定部14に接続して左足側の電極を設定し、右足側電極群5bにおいても、前記1接触群として検出された電極の内、5b_(k(min))を爪先側に接触している電極として電流印加部13に接続し、5b_(k(max))を踵側に接触している電極として電圧測定部14に接続し、インピーダンス測定電極を設定する」ことは、本願発明の「前記複数の電極のうち身体と接触している電極をどのように使用するかを判断」することに相当する。

カ 上記ア-オから、引用発明と本願発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

<一致点>
「生体インピーダンス測定装置であって、
前記装置が、生体インピーダンス測定のための複数の電極と、
前記複数の電極のうち少なくとも一部の電極を電流電極にスイッチングしたり、電圧電極にスイッチングしたり、オープンしたりするスイッチと、
前記スイッチの動作を制御する制御部と、を含み、
前記複数の電極のうち身体と接触している電極をどのように使用するかを判断する
生体インピーダンス測定装置。」

<相違点>
(相違点1)
本願発明は、「前記制御部は前記身体と接触していない電極をオープンするように前記スイッチを動作する」するのに対して、引用発明は、足裏と接触していない電極についての特定がない点。

(2)判断
ア 相違点1について
引用発明において、「制御部12により」「制御」される「切替部11」には、「左足側電極群5a及び右足側電極群5bを構成する各n個の電極」の全てが「各々独立に」接続されている。
また、引用文献1の図6((引1g))から、「電極5a_(k(min))」及び「電極5a_(k(max))」の外側、「電極5b_(k(min))」及び「電極5b_(k(max))」の外側には、足裏と接触していない電極が存在しうることは自明である。
そして、上記(1)ウで検討したように、引用発明における「切替部11」は、「電流印加部13」にも「電圧測定部14」にも接続されない状態とすることもできるものである。
電気的計測一般において、測定に関与しない電極がある場合、ノイズの抑制等のため、その電極を計測用端子や電源端子に接続しないことは、普通に設計されることである。
したがって、引用発明において、インピーダンス測定に関与しない、足裏が接触していない電極を、インピーダンス測定におけるノイズの混入の抑制のため、「電流印加部13」にも「電圧測定部14」にも接続されない状態、すなわち「オープン」することは、当業者であれば容易に想到しうることである。

イ 本願発明の効果について
本願発明の効果は、引用発明から当業者が予測しうる範囲内のものにすぎず、格別顕著なものではない。

ウ 小括
上記ア-イから、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-12 
結審通知日 2017-10-17 
審決日 2017-11-02 
出願番号 特願2014-255829(P2014-255829)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 561- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 浩司門田 宏宮澤 浩  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
松岡 智也
発明の名称 生体インピーダンス測定装置およびその装置で電極がどのように使用されているかを判断する方法  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  

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