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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1338625 |
審判番号 | 不服2017-2941 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-28 |
確定日 | 2018-03-12 |
事件の表示 | 特願2012-195455「カラーフィルタおよび表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月20日出願公開、特開2014- 52436〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年9月5日の出願であって、平成28年4月13日付けの拒絶理由の通知に対し、平成28年6月7日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成28年11月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成29年2月28日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成29年2月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成29年2月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「有機エレクトロルミネッセンス素子を備える表示装置に用いられ、基板と、前記基板上に形成された開口部を有する遮光部と、前記開口部に形成された着色層と、前記着色層上に形成された無機保護膜とを備えてなるカラーフィルタであって、 前記着色層が、青色着色層を含み、前記青色着色層が、トリアリールメタン系染料および/またはトリアリールメタン系染料をレーキ化した顔料を含んでなる、カラーフィルタ。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、平成28年6月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「有機エレクトロルミネッセンス素子を備える表示装置に用いられ、基板と、前記基板上に形成された開口部を有する遮光部と、前記開口部に形成された着色層と、前記着色層上に形成された無機保護膜とを備えてなるカラーフィルタであって、 前記着色層が、トリアリールメタン系染料および/またはトリアリールメタン系染料をレーキ化した顔料を含んでなる、カラーフィルタ。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「着色層」について、上記の「青色着色層を含」むこと、及びその「青色着色層」が「トリアリールメタン系染料および/またはトリアリールメタン系染料をレーキ化した顔料を含」むとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2004-191817号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。 なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。 (ア)「【請求項1】 透明基材と、該透明基材上に順次積層された着色パターン層、透明保護層、接着剤層、および、透明バリア層とを少なくとも備え、前記透明バリア層は前記透明保護層上に前記接着剤層を介して転写により積層されたものであり、かつ、前記透明バリア層の表面粗さRmaxは20nm以下であることを特徴とするカラーフィルタ。 【請求項2】 前記透明保護層の前記接着剤層側の表面粗さRmaxの値A(単位nm)と前記接着剤層の平均厚みの値B(単位nm)との間にB≧2.0×Aなる関係が成立することを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ。 【請求項3】 前記透明バリア層は酸素透過率が0.1cc/m^(2)/day・atm以下であり、水蒸気透過率が0.1g/m^(2)/day以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカラーフィルタ。」 (イ)「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明はカラーフィルタに係り、特に液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンスパネル等の各種ディスプレイに用いられるカラーフィルタに関する。 【0002】 【従来の技術】 従来より、液晶ディスプレイ(LCD)や、色変換方式のエレクトロルミネッセンスパネル(EL)等の各種ディスプレイの色分解用、あるいは、色補正用のフィルターの一つとして、カラーフィルタが使用されている。例えば、色変換方式のELの場合、青色発光の有機EL素子層を使用し、蛍光色素を利用した色変換蛍光体層を設置して、青色光を緑色蛍光や赤色蛍光に変換し、その後、カラーフィルタにて色補正されて三原色発光がなされる。 ここで、有機EL素子は色変換蛍光体層やカラーフィルタを構成する着色パターン層等から発生する水蒸気、酸素、有機モノマー、低分子成分等のガスにより劣化するため、このようなガスを発生する層の上に直接有機EL素子層を形成することはできず、透明バリア層を介して有機EL素子層を形成する必要がある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、有機EL素子層は薄膜の有機EL素子を電極で挟んだ構成であるため、下地となる層の表面に比較的鋭い凸部が存在すると、有機EL素子層へ悪影響を与えることになる。例えば、カラーフィルタ表面の凸部により、有機EL素子を挟持している電極間にリークが発生したり、電極の断線を生じることがあり、発光素子の駆動に悪影響が及び、有機EL画像表示装置の製造歩留りの低下を来たすことになる。 本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、表面に鋭い凸部がなくなだらかな透明バリア層を備えたカラーフィルタを提供することを目的とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】 このような目的を達成するために、本発明は、透明基材と、該透明基材上に順次積層された着色パターン層、透明保護層、接着剤層、および、透明バリア層とを少なくとも備え、前記透明バリア層は前記透明保護層上に前記接着剤層を介して転写により積層されたものであり、かつ、前記透明バリア層の表面粗さRmaxは20nm以下であるような構成とした。 本発明の好ましい態様として、前記透明保護層の前記接着剤層側の表面粗さRmaxの値A(単位nm)と前記接着剤層の平均厚みの値B(単位nm)との間にB≧2.0×Aなる関係が成立するような構成とした。 本発明の好ましい態様として、前記透明バリア層は酸素透過率が0.1cc/m^(2)/day・atm以下であり、水蒸気透過率が0.1g/m^(2)/day以下であるような構成とした。」 (ウ)「【0006】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。 図1は、本発明のカラーフィルタの一実施形態を示す概略断面図である。図1において、カラーフィルタ1は、透明基材2と、この透明基材2上に形成された赤色着色層3R、緑色着色層3G、青色着色層3Bからなる着色パターン層3、各着色層間に設けられたブラックマトリックス4、これらを覆うように形成された透明保護層5、この透明保護層5上に接着剤層6を介して転写により積層された透明バリア層7とを備えている。 【0007】 カラーフィルタ1を構成する透明基材2は、光透過性を有するガラス材料、樹脂材料、これらの複合材料からなるものを使用することができる。透明基材2の厚みは、材料、画像表示装置の使用状況等を考慮して設定することができ、例えば、0.2?1.5mm程度とすることができる。 着色パターン層3は光を色補正して色純度を高めたり、色分解を行うものであり、青色着色層3B、赤色着色層3R、緑色着色層3Gは所望の着色材を含有した感光性樹脂を使用した顔料分散法により形成することができ、さらに、印刷法、電着法、転写法等の公知の方法により形成することができる。このような着色パターン層3の厚みは、各着色層の材料、要求されるフィルター機能等に応じて適宜設定することができ、例えば、0.5?5μm程度の範囲で設定することができる。 【0008】 ブラックマトリックス4は、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み100?200nm程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングして形成したもの、カーボン微粒子等の遮光性粒子を含有させたポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂層を形成し、この樹脂層をパターニングして形成したもの、カーボン微粒子、金属酸化物等の遮光性粒子を含有させた感光性樹脂層を形成し、この感光性樹脂層をパターニングして形成したもの等、いずれであってもよい。 【0009】 カラーフィルタ1を構成する透明保護層5は、着色パターン層3やブラックマトリックス4により生じている段差(表面凹凸)を減少させるものである。このような透明保護層5は、透明(可視光透過率50%以上)材料により形成することができる。具体的には、アクリレート系、メタクリレート系の反応性ビニル基を有する光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂や、ポリシロキサン等の透明酸化物を使用することができる。また、透明樹脂として、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等を使用することができる。 【0010】 透明保護層5の形成は、上記の樹脂材料が液体の場合、スピンコート、ロールコート、キャストコート等の方法で塗布して成膜し、光硬化型樹脂は紫外線照射後に必要に応じて熱硬化させ、熱硬化型樹脂は成膜後そのまま硬化させる。また、使用材料がフィルム状に成形されている場合、直接、あるいは、粘着剤を介して貼着することができる。このような透明保護層5の厚みは、例えば、1?7μm程度とすることができる。 【0011】 カラーフィルタ1を構成する接着剤層6は、透明バリア層7を透明保護層5上に転写形成するためのものである。この接着剤層6を形成する接着剤としては、熱硬化型のポリエステル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂や、光硬化型のアクリレート系樹脂等が挙げられる。接着剤層6の厚みは1?10μm程度で設定することができるが、接着剤層6と上述の透明保護層5との間には、透明保護層5の表面粗さ(接着剤層6との界面側の表面粗さ)Rmaxの値(単位nm)をAとし、接着剤層6の平均厚みの値(単位nm)をBとしたときに、B≧2.0×Aなる関係が成立することが好ましい。このような関係が成立することにより、着色パターン層3、ブラックマトリックス4と透明保護層5に存在する凹凸が接着剤層6により吸収され、転写された透明バリア層7は平坦なものとなる。 尚、接着剤層6の平均厚みの値B(単位nm)は、断面をSEMやTEMのような顕微鏡を用いて観察し、接着剤層6の厚みを計測して平均値を算出することにより得ることができる。また、X線反射率測定装置を用いて非破壊で測定することもできる。 【0012】 また、カラーフィルタ1を構成する透明バリア層7は、表面粗さRmaxが20nm以下、好ましくは1?15nmであるような平坦な表面を有するものである。このような透明バリア層7は、電気絶縁性を有し、ガスおよび有機溶剤に対する優れたバリア性を有し、透明性が高く(可視光透過率50%以上)、カラーフィルタ1を使用したディスプレイ製造における透明電極層の成膜に耐え得る硬度(2H以上の鉛筆硬度)を有する材料を用いて形成することが好ましい。このような材料としては、酸化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ゲルマニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化ナトリウム、酸化リチウム、酸化カリウム、酸化セリウム等の1種あるいは2種以上の無機化合物を用いて形成することができ、特に酸化珪素、窒化珪素、および、これらの混合物が好適に使用できる。 ここで、本発明における表面粗さRmaxとは、表面の粗さの最大高低差を意味するものである。 このような透明バリア層7は、酸素透過率が0.1cc/m^(2)/day・atm以下であり、水蒸気透過率が0.1g/m^(2)/day以下であることが好ましい。透明バリア層7の厚みは、バリア性と透明性とを考慮して0.01?1μmの範囲で適宜設定することができる。」 (エ)「【図1】 」 (オ)「【0027】 【実施例】 次に、より具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。 [実施例1] 転写シートの作製 厚さ25μmの長尺のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 ルミラー)の一方の面に、グラビアコート法により下記の組成の剥離層用インキを塗布、乾燥して剥離層(厚さ1μm)を形成した。 (剥離層用インキの組成) ・アクリルシリコーン … 70重量部 ・ポリエチレン樹脂 … 6重量部 ・ポリエチレンワックス樹脂 … 8重量部 ・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 … 15重量部 【0028】 次に、上記の剥離層上に下記の条件でスパッタリング法により酸化窒化珪素膜を成膜して、厚み100nmの透明バリア層を形成した。各成膜工程の間では、PETフィルムを真空チャンバーから取り出し、クリーンルーム内にて超音波ドライ洗浄装置((株)伸興製 UVU-F)を用いて、下記の条件で成膜面に対してドライ洗浄を行った。 (酸化窒化珪素膜の成膜条件) ・RFスパッタ電力 : 5kW/cm^(2)、周波数13.56MHz ・成膜レート : 200nm/分 ・成膜圧力 : 0.25Pa ・ターゲット : Si(4N) ・プラズマガス : アルゴン(100sccm) ・反応ガス : 窒素(30sccm) 【0029】 次いで、上記の透明バリア層上に下記組成の接着剤層用インキをグラビアコート法により塗布、乾燥して接着剤層(厚さ1μm)を形成し、転写シートを得た。 (接着剤層用インキの組成) ・ポリエステル系塗工剤 … 25重量部 (東洋紡績(株)製バイロン220) ・トルエン … 50重量部 ・メチルエチルケトン … 50重量部 【0030】 作製した転写シートの透明バリア層について、下記の条件で酸素透過率および水蒸気透過率を測定した。その結果、酸素透過率は0.08cc/m^(2)/day・atmであり、水蒸気透過率は0.05g/m^(2)/dayであり、良好なバリア性を有することが確認された。 (酸素透過率の測定条件) 酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製 OX-TRAN 2/20)を用いて、温度23℃、湿度90%RH、バックグラウンド除去測定を行うインディヴィジュアルゼロ(Individual Zero)測定ありの条件で測定する。 (水蒸気透過率の測定条件) 水蒸気透過率測定装置(MOCON社製 PERMATRAN-W 3/31)を用いて、温度40℃、湿度100%RHで測定する。 【0031】 カラーフィルタの作製 透明基材として、50mm×50mm、厚み1.1mmの無アルカリガラス(コーニング社製1737ガラス)を準備した。この透明基材を定法にしたがって洗浄した後、透明基材の片側全面にスパッタリング法により酸化窒化複合クロムの薄膜(厚み0.2μm)を形成し、この複合クロム薄膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、複合クロム薄膜のエッチングを行って、94μm×284μmの長方形状の開口部を110μmピッチでマトリックス状に備えたブラックマトリックスを形成した。 【0032】 一方、赤色、緑色、青色の3種の着色パターン層用感光性塗料を調製した。すなわち、赤色感光性塗料は、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等の単品、あるいは、2種以上の混合物からなる着色材をバインダー樹脂に分散させたものとした。バインダー樹脂としては、透明(可視光透過率50%以上)な樹脂が好ましく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の透明樹脂が挙げられる。また、着色材の含有量は、形成された赤色着色層中に5?50重量%含有されるように設定した。 【0033】 緑色感光性塗料は、ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料、ハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等の単品、あるいは、2種以上の混合物からなる着色材をバインダー樹脂に分散させたものとした。バインダー樹脂としては、上記の透明樹脂が挙げられ、着色材の含有量は、形成された緑色着色層中に5?50重量%含有されるように設定した。 青色感光性塗料は、銅フタロシアニン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等の単品、あるいは、2種以上の混合物からなる着色材をバインダー樹脂に分散させたものとした。バインダー樹脂としては、上記の透明樹脂が挙げられ、着色材の含有量は、形成された青色着色層中に5?50重量%含有されるように設定した。 【0034】 次に、上記の3種の着色パターン層用感光性塗料を用いて各色の着色層を形成した。すなわち、ブラックマトリックスが形成された上記の透明基材全面に、緑色感光性塗料をスピンコート法により塗布し、プリベーク(80℃、30分間)を行った。その後、所定の着色層用フォトマスクを用いて露光した。次いで、現像液(0.05%KOH水溶液)にて現像を行い、次いで、ポストベーク(100℃、30分間)を行って、ブラックマトリックスパターンに対して所定の位置に帯状(幅100μm)の緑色着色層(厚み1.5μm)をピッチ(周期)330μmで形成した。 同様に、赤色感光性塗料を用いて、ブラックマトリックスパターンに対して所定の位置に帯状(幅100μm)の赤色着色層(厚み1.5μm)をピッチ(周期)330μmで形成した。さらに、青色感光性塗料を用いて、ブラックマトリックスパターンに対して所定の位置に帯状(幅100μm)の青色着色層(厚み1.5μm)をピッチ(周期)330μmで形成した。」 (カ)「【0042】 有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子の作製 上述のように作製した本発明のカラーフィルタ上に、以下のように透明電極層、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子注入層、陰極の6層を形成して有機EL素子を作製した。」 (キ)「【0053】 【発明の効果】 以上詳述したように、本発明によれば透明基材上に順次、着色パターン層、透明保護層を積層し、この上に接着剤層を介して転写により透明バリア層を設けた構成であるため、透明基材から透明保護層までの積層構造に存在する凹凸が接着剤層により吸収され、透明バリア層は表面粗さRmaxが20nm以下の平坦なものとなる。これにより、例えば、色変換方式のエレクトロルミネッセンス(EL)に本発明のカラーフィルタを使用して、透明バリア層上に有機EL素子層を形成しても、有機EL素子を挟持している電極間にリークが発生したり、電極の断線を生じることがなく、有機EL画像表示装置の製造歩留りを向上させることができる。また、本発明のカラーフィルタの作製と、有機EL素子層の作製を別工程とし、両者を貼合して有機EL画像表示装置を製造することが可能となり、製造歩留りを更に向上させることができる。」 イ 上記アから、引用文献1には、カラーフィルタ表面の凸部による有機EL画像表示装置の製造歩留りの低下を課題として、図1に対応した実施形態に関する次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「エレクトロルミネッセンスパネル等の各種ディスプレイに用いられるカラーフィルタに関し、 透明基材2と、この透明基材2上に形成された赤色着色層3R、緑色着色層3G、青色着色層3Bからなる着色パターン層3、各着色層間に設けられたブラックマトリックス4、これらを覆うように形成された透明保護層5、この透明保護層5上に接着剤層6を介して転写により積層された透明バリア層7とを備え、 着色パターン層3は光を色補正して色純度を高めたり、色分解を行うものであり、 ブラックマトリックス4は、クロム等の金属薄膜をパターニング、カーボン微粒子等の遮光性粒子を含有させた樹脂層をパターニング、カーボン微粒子、金属酸化物等の遮光性粒子を含有させた感光性樹脂層をパターニングなどして形成し、 透明バリア層7は、表面粗さRmaxが20nm以下である平坦な表面を有するものであり、電気絶縁性を有し、ガスおよび有機溶剤に対する優れたバリア性を有し、透明性が高く(可視光透過率50%以上)、カラーフィルタ1を使用したディスプレイ製造における透明電極層の成膜に耐え得る硬度(2H以上の鉛筆硬度)を有する材料である酸化珪素、窒化珪素等の1種あるいは2種以上の無機化合物を用いて形成される、 カラーフィルタ1。」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)基板 引用発明の「透明基材2」は、その上に着色パターン層やブラックマトリックスを形成してカラーフィルタとするものであり、本件補正発明の「基板」に相当する。 (イ)遮光部 引用発明の「ブラックマトリックス4」は、「クロム等の金属薄膜」や「遮光性粒子」を含有させた樹脂をパターニングして形成しており、可視光を遮光するものといえ、本件補正発明の「遮光部」に相当する。 (ウ)着色層 引用発明の「赤色着色層3R、緑色着色層3G、青色着色層3Bからなる着色パターン層3」は、本件補正発明の「着色層」に相当する。引用発明の「青色着色層3B」は、本件補正発明の「青色着色層」に相当し、引用発明の「着色層」は、「青色着色層を含む」といえる。 (エ)開口部 引用発明の「ブラックマトリックス4」は、「各着色層間に設けられ」ている。「ブラックマトリックス4」の間の「着色パターン層」が形成されている部分は、ブラックマトリックスが基板上にない部分と認められるから、本件補正発明の「開口部」に相当し、引用発明の「ブラックマトリックス4」は、「基板上に形成された開口部を有する」といえる。そして、引用発明の「着色パターン層3」は、「開口部に形成された」といえる。 (オ)無機保護膜 引用発明の「透明バリア層7」は、「無機化合物を用いて形成され」、「ガスおよび有機溶剤に対する優れたバリア性を有」するため、本件補正発明の「無機保護膜」に相当する。引用発明の「透明バリア層7」は、着色パターン層3、ブラックマトリックス4を覆うように形成された透明保護層5上に接着剤層6を介して積層されており、「着色層上に形成された」といえる。 (カ)有機エレクトロルミネッセンス素子を備える表示装置に用いる 引用発明の「カラーフィルタ」は、「エレクトロルミネッセンスパネル等の各種ディスプレイに用いられる」ものであるから、「有機エレクトロルミネッセンス素子を備える表示装置に用いる」といえる。 (キ)本件補正発明と引用発明とは、上記(ア)?(カ)の点で共通する「カラーフィルタ」であるといえる。 イ 一致点及び相違点 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (ア) 一致点 「有機エレクトロルミネッセンス素子を備える表示装置に用いられ、基板と、前記基板上に形成された開口部を有する遮光部と、前記開口部に形成された着色層と、前記着色層上に形成された無機保護膜とを備えてなるカラーフィルタであって、 前記着色層が、青色着色層を含む、カラーフィルタ。」 (イ) 相違点 「青色着色層」について、本件補正発明は、「トリアリールメタン系染料および/またはトリアリールメタン系染料をレーキ化した顔料を含」むのに対し、引用発明は、当該構成について特定されていない点。 (4)判断 ア 相違点について 引用文献1の具体的な実施例においては、各色の塗料について、さまざまなものが例示されており、その中にレーキ顔料(段落【0032】)やトリフェニルメタン系塩基性染料(段落【0033】)があげられている。「フェニル基」は「アリール基」に該当する基であるから、当該「トリフェニルメタン系塩基性染料」は、本願発明の「トリアリールメタン系染料」のひとつである。 ここで、有機エレクトロルミネッセンス素子を備える表示装置では、赤色や緑色の発光体に比較して青色の発光体の寿命が短いため、用いられるカラーフィルタにおいて、青色着色層に透過率などに優れたトリアリールメタン系染料またはトリアリールメタン系染料をレーキ化した顔料を用いることは周知技術である(例えば、特開2011-150195号公報(特に、段落【0006】?【0009】、【0012】、【0013】、【0018】?【0022】、【0033】)、特開2009-186657号公報(特に、段落【0034】、【0035】、【0075】)を参照。以下「周知技術」という。)。 引用発明も、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いるカラーフィルタであり、上記周知技術と同様の塗料を使い得るとしているところ、上記の青色の発光体の寿命が短いことへの対応を動機付けとして、引用発明における「青色着色層」に、上記周知技術である透過率などに優れた「トリアリールメタン系染料および/またはトリアリールメタン系染料をレーキ化した顔料」を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 効果について 本願の発明の詳細な説明には、効果について、「本発明によれば、表示装置の製造工程において表示装置に悪影響を及ぼさず、高演色化および高輝度化を実現できる」と記載されている(段落【0020】)。 引用文献1には、「有機EL素子は色変換蛍光体層やカラーフィルタを構成する着色パターン層等から発生する水蒸気、酸素、有機モノマー、低分子成分等のガスにより劣化するため、このようなガスを発生する層の上に直接有機EL素子層を形成することはできず、透明バリア層を介して有機EL素子層を形成する必要がある。」と記載されている(段落【0002】)。そして、上記アのとおり引用文献1には、レーキ顔料(段落【0032】)やトリフェニルメタン系塩基性染料(段落【0033】)を用いることも記載されている。つまり、引用文献1には、高演色化および高輝度化を実現できる各種の塗料を用いた場合に着色パターン層等から発生する水蒸気等も封止して、表示装置に悪影響を及ぼさず表示装置の形成を可能とすることが記載されている。 したがって、本件補正発明の奏する作用効果は、引用文献1に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 ウ したがって、本件補正発明は、引用発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成29年2月28日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年6月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1乃至6に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2等にみられる周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2004-191817号公報 引用文献2:特開2011-150195号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記着色層が、青色着色層を含み、前記青色着色層が、トリアリールメタン系染料および/またはトリアリールメタン系染料をレーキ化した顔料を含んでなる」における「青色着色層を含み、前記青色着色層が、」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、引用文献1には、段落【0033】に、「緑色感光性塗料」の例として、「トリフェニルメタン系塩基性染料」をあげている。そうすると、引用発明において、引用文献1における当該記載から、「緑色感光性塗料」として、「トリフェニルメタン系塩基性染料」を選択することも、当業者が容易に想到し得たことである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-01-15 |
結審通知日 | 2018-01-16 |
審決日 | 2018-01-30 |
出願番号 | 特願2012-195455(P2012-195455) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 濱野 隆 |
特許庁審判長 |
中田 誠 |
特許庁審判官 |
清水 康司 多田 達也 |
発明の名称 | カラーフィルタおよび表示装置 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 佐藤 泰和 |
代理人 | 小島 一真 |
代理人 | 浅野 真理 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 永井 浩之 |