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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1338691
審判番号 不服2017-1082  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-25 
確定日 2018-04-10 
事件の表示 特願2015- 99136「表示体及び印刷物」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月29日出願公開,特開2015-187737,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特願2015-99136号(以下「本件出願」という。)は,平成23年2月3日に出願した特願2011-21763号の一部を,平成27年5月14日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成28年 2月26日付け:拒絶理由通知書
平成28年 5月 2日差出:意見書,手続補正書
平成28年10月13日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成29年 1月25日差出:審判請求書,手続補正書
平成29年11月 7日付け:拒絶理由通知書(以下,この拒絶理由通知書による拒絶の理由を「当審拒絶理由」という。)
平成30年 1月10日差出:意見書,手続補正書(以下「本件補正」という。)

第2 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は,以下の通りである。
平成29年1月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に係る発明は,以下の引用例1に記載された発明,並びに,引用例2に記載されるような周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用例1.特開2010-204348号公報
引用例2.特開2008-107472号公報

第3 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1?請求項5に係る発明は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項5に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明は,次のとおりである(以下「本願発明1」といい,同様に請求項2?請求項5に係る発明をそれぞれ「本願発明2」?「本願発明5」という。)。
「 光透過性基材の少なくとも一方の面上に,指向性散乱領域からなるレリーフ構造成形層を備え,前記レリーフ構造成形層の面上に透過率が60%以上である透明光反射層を配していて,前記光透過性基材の観察方向から遠い面側に文字や記号,マークなどのパターンが白色紙に形成されている印刷層を具備している表示体であって,前記指向性散乱領域は,各々が直線状であり方向が揃った複数の凸部および/または凹部の平均間隔が10μm以下の指向性散乱構造を含み,予め決められた角度範囲にのみ標準白色板の輝度値の2倍から3倍の輝度で強く散乱光を射出する機能を有しており,前記印刷層と前記レリーフ構造成形層の指向性散乱領域は,各々で異なる文字,記号,マークなどのパターンが形成されている表示体と,前記表示体を支持する印刷が施された基材とを備えたことを特徴とする印刷物。」

また,本願発明2?本願発明5は,本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用例
1 引用例1の記載
本件出願の原出願前に頒布され,当審拒絶理由において引用例1として引用された刊行物である特開2010-204348号公報(以下「引用例1」という。)には,以下の事項が記載されている。なお,下線は,当合議体が付したものであり,引用発明の認定に活用した箇所を示す。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面に凹凸を備えるレリーフ構造形成層からなる表示体であって,
前記一方の主面が複数種類の領域に区分されており,
これら複数種類の領域のうち一部の領域(第1界面部)は前記一方の主面の法線方向に回折光を発生しない領域であるのに対し,少なくとも一部の他の領域(第2界面部)は可視光を散乱する領域であり,
前記第1界面部には,複数の凸部または凹部が可視光の最短波長未満の中心間距離で配置されており,
前記第2界面部には,方向がほぼ揃った直線状の凸部または凹部が複数配置されており,
これら第1界面部と第2界面部の配列によって可視画像を構成していることを特徴とする表示体。
・・・(略)・・・
【請求項11】
前記凸部または凹部の少なくとも一部が反射層により被覆されていることを特徴とする請求項1?10のいずれかに記載の表示体。
・・・(略)・・・
【請求項13】
請求項1?12のいずれか1項に記載の表示体と,この表示体をラベルとして支持した物品とを具備したことを特徴とするラベル付き物品。」

(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は,例えば偽造防止効果を提供する表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に,商品券及び小切手などの有価証券類,クレジットカード,キャッシュカード及びIDカードなどのカード類,並びにパスポート及び免許証などの証明書類には,それらの偽造を防止するために,通常の印刷物とは異なる光学的作用を発揮する表示体が貼り付けられている。また,近年,これら以外の物品についても,偽造品の流通が社会問題化している。そのため,そのような物品に対しても,同様の偽造防止技術を適用する機会が増えてきている。
・・・(略)・・・
【0006】
また,微細な凹凸構造により光の散乱性を制御することで画像を表示する表示体が知られている(例えば特許文献3)。光散乱に基づいて表示されるパターン(以下,「光散乱パターン」と称する)は,通常,表示体の基材上に凹凸構造を加工することで形成される。その加工方法として,(1)エッチングによる方法や,(2)表面を薬品等で荒らす方法,(3)微細な砂状の粒を加工面に吹き付けるサンドブラストによる方法,(4)先端に鋭利な構造を有する装置で加工面をブラッシングするヘアライン加工,あるいは(5)電子ビーム(Electron Beam,以下,EBという)描画装置により表面全体に亘って連続的に凹凸を形成する方法等がある。このような方法により加工された光散乱パターンの表面では,光が散乱することで,白色や灰色の表示が可能となる。
【0007】
EB描画装置を用いれば,微小な凹凸構造を精密に加工することができる。そのため,基材上に形成する凹凸構造の配置密度や形状,個数等を任意に制御し,基材表面にパターニングすることができ,散乱の度合い,すなわち散乱光の光量を制御することが可能である。
・・・(略)・・・
【0010】
これらの光散乱構造は単独で用いられたり,レリーフ型の回折格子パターンが形成された表示体に組み合わされて用いられることで,偽造防止効果を発揮するものとして利用されているが,光散乱構造は上述のように複数の方法によって実現することが可能であるので,十分な偽造防止効果を発揮しているとは言えなかった。
【0011】
また,虹色の光を分光する回折格子を利用した表示体及び,白色の光を呈する散乱光を利用した表示体では,所謂「黒色」の表現が不可能であった。
・・・(略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は,より高い偽造防止効果を達成可能とすることにある。」

(3)「【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち,請求項1に係る発明は,一方の主面に凹凸を備えるレリーフ構造形成層からなる表示体であって,
前記一方の主面が複数種類の領域に区分されており,
これら複数種類の領域のうち一部の領域(第1界面部)は前記一方の主面の法線方向に回折光を発生しない領域であるのに対し,少なくとも一部の他の領域(第2界面部)は可視光を散乱する領域であり,
前記第1界面部には,複数の凸部または凹部が可視光の最短波長未満の中心間距離で配置されており,
前記第2界面部には,方向がほぼ揃った直線状の凸部または凹部が複数配置されており,
これら第1界面部と第2界面部の配列によって可視画像を構成していることを特徴とする表示体である。
【0016】
本発明に係る第1界面部は,複数の凸部または凹部が可視光の最短波長未満の中心間距離で配置された領域である。後述するように微小の中心間距離で複数の凸部または凹部が配置された場合には,前記主面の法線方向に可視光の回折光が発生することがない。このため,この領域においては反射が低減され,また,光散乱も低減される。そして,その結果,黒色を表示する。他方,第2界面部は,方向がほぼ揃った直線状の凸部または凹部が複数配置された領域である。そして,この領域に入射した可視光は,直線状の前記凸部または前記凹部によって散乱されるため,第2界面部は第1界面部に比較して高散乱性を示し,その散乱光は前記主面の法線方向から観察することが可能である。そして,これら第1界面部と第2界面部とが配列されているため,前記主面の法線方向から観察した場合,低反射・低散乱の第1界面部と高散乱の第2界面部とで明るさが異なり,全体として可視画像を構成するのである。また,これら第1界面部及び第2界面部の存在しない領域との対比によって可視画像を構成することもできる。
【0017】
他方,第1界面部は前記主面の斜め方向に回折光を発生する。このため,斜め方向から観察した場合には,主面の法線方向から観察した場合の可視画像とは異なる画像状態が観察できる。そして,このため,より高い偽造防止効果を達成することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように,本発明によると,より高い偽造防止効果を達成することが可能となる。」

(4)「【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す平面図
【図2】図1に示す表示体のII-II’線に沿った断面図
・・・(略)・・・
【図10】図1及び図2に示す表示体の第2界面部に採用可能な構造の一例を示す斜視図
・・・(略)・・・
【図18】偽造防止用ラベルを物品に支持させてなるラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図
【図19】図18に示すラベル付き物品のIII-III’線に沿った断面図」

(5)「【発明を実施するための形態】
【0020】
以下,本発明の態様について,図面を参照しながら詳細に説明する。なお,全ての図面を通じて,同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し,重複する説明は省略する。
【0021】
図1は,本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す平面図である。図2は,図1に示す表示体のII-II’線に沿った断面図である。この表示体10は,光透過層11と反射層13との積層体を含んでいる。この例においては,光透過層11がレリーフ構造形成層である。図2に示す例では,光透過層11側を前面側(観察者側)とし且つ反射層13側を背面側としている。
【0022】
そして,光透過層11の主面,すなわち,光透過層11と反射層13との界面は,複数の領域に区分されており,その一部の領域は第1界面部IF1,他の一部の領域は第2界面部IF2である。これら第1界面部IF1及び第2界面部IF2は,いずれも微小な凹凸が形成された領域であり,後述するように,第1界面部IF1の凹凸と第2界面部IF2の凹凸とは,その構造や性質が異なる。
【0023】
光透過層11の材料としては,例えば,熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂などの光透過性を有する樹脂を使用することができる。熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を使用すると,例えば,表示体の凸構造及び/又は凹構造が形成された金属製のスタンパから,一方の主面に凸構造及び/又は凹構造が設けられた光透過層11を転写成形することができる。
【0024】
図2には,一例として,光透過性基材111と光透過性樹脂層112との積層体で構成された光透過層11を描いている。光透過性基材111は,それ自体を単独で取り扱うことが可能なフィルム又はシートである。光透過性樹脂層112は,光透過性基材111上に形成された層である。図2に示す光透過層11は,例えば,光透過性基材111上に熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を塗布し,この塗膜にスタンパを押し当てながら樹脂を硬化させることにより得られる。
【0025】
反射層13としては,例えば,アルミニウム,銀,金,及びそれらの合金などの金属材料からなる金属層を使用することができる。或いは,反射層13として,光透過層11とは屈折率が異なる誘電体層を使用してもよい。或いは,反射層13として,隣り合うもの同士の屈折率が異なる誘電体層の積層体,即ち,誘電体多層膜を使用してもよい。なお,誘電体多層膜が含む誘電体層のうち光透過層11と接触しているものの屈折率は,光透過層11の屈折率とは異なっていることが望ましい。反射層13は,例えば,真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法により形成することができる。
【0026】
この表示体10は,接着剤層,樹脂層などの他の層を更に含むことができる。接着剤層は,例えば,反射層13を被覆するように設ける。表示体10が光透過層11及び反射層13の双方を含んでいる場合,通常,反射層13の表面の形状は,光透過層11と反射層13との界面の形状とほぼ等しい。接着剤層を設けると,反射層13の表面が露出するのを防止できるため,先の界面の凸構造及び/又は凹構造の,偽造を目的とした複製を困難とすることができる。
【0027】
光透過層11側を背面側とし且つ反射層13側を前面側とする場合,接着層は,光透過層11上に形成する。この場合,光透過層11と反射層13との界面ではなく,反射層13と外界との界面が界面部IF1乃至IF2を含む。
【0028】
樹脂層は,光透過層11及び反射層13の積層体に対して前面側に設ける。例えば,光透過層11側を背面側とし且つ反射層13側を前面側とする場合,反射層13を樹脂層によって被覆することで,反射層13の損傷を抑制できるのに加え,その表面の凸構造及び/又は凹構造の,偽造を目的とした複製を困難とすることができる。」

(6)「【0042】
次に,第1界面部IF1の構造と光学的性質について説明する。
【0043】
第1界面部IF1には,可視光の最短波長未満の中心間距離で配置された複数のドット状の凸部PRが設けられている。
【0044】
このため,第1界面部IF1は法線方向に可視光の回折光を生じることがなく,負の角度範囲に1次回折光DLを射出する。それゆえ,法線方向から観察した場合,第1界面部IF1は回折による分光色を表示しない。つまり,第1界面部IF1は暗灰色又は黒色印刷層の如く視認される。
【0045】
従って,例えば,表示体10をその法線方向から観察した場合,第1界面部IF1は暗く見える。典型的には,第1界面部IF1は暗灰色又は黒色に見える。なお,ここで,「暗灰色」とは,例えば,表示体10に法線方向から光を照射し,正反射光の強度を測定したときに,波長が400nm乃至700nmの範囲内にある全ての光成分について反射率が約25%以下であることを意味する。また,「黒色」は,例えば,表示体10に法線方向から光を照射し,正反射光の強度を測定したときに,波長が400nm乃至700nmの範囲内にある全ての光成分について反射率が10%以下であることを意味する。それゆえ,第1界面部IF1は,例えば暗灰色又は黒色印刷層の如く見える。
・・・(略)・・・
【0059】
(第2界面部の説明)
次に,第2界面部IF2について説明する。
【0060】
第2界面部IF2は界面部IF1と同様に断面が凹凸形状であるレリーフ構造体であるが,その凸部や凹部の中心間距離は典型的には可視波長よりきわめて大きく,少なくとも最大可視波長(700nm)の10倍以上である。このような中心間距離の大きい凸部や凹部によっては光の回折による回折光は生じにくく,主に光散乱特性のみが光学特性として発揮される。
【0061】
そして,第2界面部IF2の凸部や凹部は,各々方向(方位角)がほぼ揃っている直線状の構造を呈している。第2界面部IF2に設けられる個々の構造は典型的には,図9のような長辺及び短辺を有する矩形状の凸部もしくは凹部であり,第2界面部IF2には図10のように,このような構造が複数形成されている。このため,界面部IF1における凸部や凹部の中心間距離と区別して,隣接して配置されている矩形状の凸部もしくは凹部の間の距離を配置間隔と呼び,その平均を平均配置間隔と呼ぶ。
【0062】
第2界面部IF2に対し法線方向より光を照射した場合,第2界面部IF2は複数設けられた直線状の凸部や凹部の長辺方向に対して垂直な面内には広い射出角範囲で散乱光を射出する。一方,直線状の凸部や凹部の長辺方向に並行であり,且つ,界面部IF2の主面に垂直な面内には狭い射出角範囲で散乱光を射出する。以下,光散乱領域が一定の光強度以上の散乱光を射出する角度範囲の大きさを,用語「光散乱能」で表現する。例えば,用語「光散乱能」を用いた場合,先の説明は,「直線状の凸部及び/又は凹部の長辺方向の光分解能は低く,これに垂直な方向では高い光散乱能を示す」と換言することができる。また,観察する方向に応じて十分に異なる光散乱能が得られる構造を「異方性光散乱構造」と呼ぶこととする。
【0063】
一般的な白色照明光の照明下において光散乱能が高くなる観察条件で第2界面部IF2を目視観察すると,第2界面部IF2は白色もしくは白色よりやや明度の低い灰白色に知覚され,光散乱能が低くなる観察条件下においては散乱光が届かず,第2界面部IF2は素材に応じた色がそのまま知覚される。例えば,第2界面部IF2に設けられた構造に,銀やアルミニウムなどの銀色の反射層が被覆されている場合,銀色の金属光沢がそのまま知覚される。いいかえると,反射層から反射される色よりも明度が低い色は表現することができない。
【0064】
なお,ここで「白色」は表示体10に法線方向から光を照射し,観察者に到達する散乱光の明度が90%以上となるような状態を指し,「灰白色」は明度が75%以上となるような状態を意味する。
【0065】
ここで,直線状の凸部や凹部の長辺の長さは,例えば,10μm以上,且つ,100μm以下が望ましい。また,直線状の凸部や凹部の短辺の長さは,1μm以上,且つ,10μm未満が望ましい。照明条件や観察位置に応じて光散乱能を変化させるためには長辺の長さと短辺の長さの差が大きいほうが望ましく,長辺と短辺の長さの差は10倍以上あるとなお良い。
【0066】
また,第2界面部の凸部又は凹部と第1界面部に設けられる凸部又は凹部とは,同一の工程でスタンパ等の押圧によって形成することが簡便であることから,これら両界面部の凸部の高さや凹部の深さは同程度であることが望ましい。前述のように,第1界面部凸部の高さや凹部の深さはせいぜい1μmであることから,第2界面部の凸部の高さや凹部の深さも1μm以下でよい。
・・・(略)・・・
【0068】
また,これら凸部や凹部は,10μm以上,且つ,100μm以下の平均間隔で形成されていることが望ましい。10μmより小さいと,複数の凸部又は凹部が回折格子のように機能し,散乱光だけでなく,回折光を射出するようになる。それによって十分な光散乱能が得られず,且つ,虹色に光ってしまい従来の回折格子パターンと類似した視覚効果となってしまう。一方で,100μmを超える平均間隔であると,十分な光散乱能を得るためには例えば100μmを超えるような高い凸部または深い凹部を作製する必要があり,EB描画装置では作製が困難となる。
【0069】
また,第2界面部IF2に設けられる構造としては,長辺や短辺の長さ,構造の高さや深さが各々異なる構造が,様々な配置間隔で配置されていることがより望ましい。設けられる構造の長辺や短辺の長さや構造の高さや深さ,配置間隔に統一性,規則性がみられないほうが,第2界面部IF2を巨視的に観察した際に粗面となり,より光を散乱させる効果が高くなる。
【0070】
ここで,第2界面部IF2の異方性光散乱構造が,偽造防止が必要な媒体に貼付されるなどして使用された場合,光散乱能が高い観察条件で見られる色と,光散乱能が低い観察条件において見られる色とに差があることから,通常の印刷物に用いられるインキでは実現が困難な視覚効果を実現し,偽造防止機能を発揮する。
・・・(略)・・・
【0073】
(微小な領域に形成された第1界面部と第2界面部とによって実現される視覚効果)
ここで,図1の本発明の一態様に係る表示体に示した第1界面部IF1と第2界面部IF2によって実現される視覚効果について説明する。
【0074】
第1界面部IF1及び第2界面部IF2はそれぞれ微小な領域に形成されており,肉眼で巨視的に観察した際にはそれぞれの領域の区別は困難である。この表示体10に対し主面の法線方向より光を照射し,地点Aから表示体10を観察した場合,第1界面部IF1は反射防止効果を呈するので第1界面部IF1から観察者の方向に対して到達する光はまったくないかあってもごくわずかである。一方,第2界面部IF2にはX方向に長い矩形の凹凸構造が多数設けられているので,地点Aにいる観察者に対しては高い光散乱能によって,観察者は白色もしくは灰白色の光を知覚することができる。表示体10の表面が第1界面部IF1及び第2界面部IF2に領域分割されているため,第2界面部から観察者に到達する散乱光の光量は第2界面部のみが表示体上に設けられている場合と比較してやや低下するが,それでも観察者は白色もしくは白色に近い灰白色を知覚することができる。
【0075】
また,この表示体10に対し主面の法線方向より光を照射し,地点Aと90°方位が変わった地点Bから表示体10を観察した場合は,第1界面部IF1は地点Aで観察した時と同様に反射防止効果を呈するので観察者の方向に対して射出される光はないかごくわずかであり,黒色もしくは暗灰色に見える。そして,第2界面部IF2は光散乱能が低くなる観察条件となるので,散乱光はほとんど到達しない。よって,地点Bで観察者が知覚する色は黒色と反射層の色が混ざった暗灰色となる。この効果は観察者が地点Aと地点Bの異なる位置から表示体10を観察した場合にも,照明光の位置が90°変わった場合にも見ることができる。
【0076】
このように表示体10は,複数の第1界面部IF1と第2界面部IF2によって観察条件に応じて白色(もしくは灰白色)と黒色(もしくは暗灰色)の色変化を呈する。照明光,もしくは観察者の位置が90°変化することで白色(もしくは灰白色)と黒色(もしくは暗灰色)に色変化する構造はこれまでになく,高い偽造防止効果を発揮する。」

(7)「【0086】
(表示体の使用方法)
上述した表示体10は,例えば,偽造防止用ラベルとして粘着材等を介して印刷物やその外の物品に貼り付けて使用することができる。表示体10は微細な凹凸構造により光反射防止機能を備えた画像を有することから偽造又は模造が困難であり,このラベルを物品に支持させた場合,真正品であるこのラベル付き物品の偽造又は模造も困難である。
【0087】
図18は,偽造防止用ラベルを物品に支持させてなるラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図である。図19は,図18に示すラベル付き物品のIII-III’線に沿った断面図である。
【0088】
図18及び図19には,ラベル付き物品の一例として,印刷物100を描いている。この印刷物100は,IC(integrated circuit)カードであって,基材20を含んでいる。基材20は,例えば,プラスチックからなる。基材20の一方の主面には凹部が設けられており,この凹部にICチップ30が嵌め込まれている。ICチップ30の表面には電極が設けられており,これら電極を介してICへの情報の書き込みやICに記録された情報の読出しが可能である。基材20上には,印刷層40が形成されている。基材20の印刷層40が形成された面には,上述した表示体10が例えば粘着層を介して固定されている。表示体10は,例えば,粘着ステッカとして又は転写箔として準備しておき,これを印刷層40に貼りつけることにより,基材20に固定する。
【0089】
この印刷物100は,微細な凹凸構造から成る表示体10を含んでいる。それゆえ,この印刷物100の同一品を偽造又は模造することは困難である。しかも,この印刷物100は,表示体10に加えて,ICチップ30及び印刷層40を更に含んでいるため,それらを利用した偽造防止対策を採用することができる。
【0090】
なお,図18及び図19には,表示体10を含んだ印刷物としてICカードを例示しているが,表示体10を含んだ印刷物は,これに限られない。例えば,表示体10を含んだ印刷物は,磁気カード,無線カード及びID(identification)カードなどの他のカードであってもよい。或いは,表示体10を含んだ印刷物は,商品券及び株券などの有価証券であってもよい。或いは,表示体10を含んだ印刷物は,真正品であることが確認されるべき物品に取り付けられるべきタグであってもよい。或いは,表示体10を含んだ印刷物は,真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部であってもよい。
【0091】
また,図18及び図19に示す印刷物100では,表示体10を基材20に貼り付けているが,表示体10は,他の方法で基材に支持させることができる。例えば,基材として紙を使用した場合,表示体10を紙に漉き込み,表示体10に対応した位置で紙を開口させてもよい。或いは,基材として光透過性の材料を使用する場合,その内部に表示体10を埋め込んでもよく,基材の裏面,即ち表示面とは反対側の面に表示体10を固定してもよい。」

(8)「【符号の説明】
【0094】
10…表示体,11…光透過層,111…光透過性基材,112…光透過性樹脂層,13…反射層,20…基材,30…ICチップ,40…印刷層,100…印刷物
GR…回折格子,IF1…第1界面部,IF2…第2界面部,PR…凸部,QR…凸部,SR…凹部,DL…1次回折光,IL…照明光,NL…法線,RL…正反射光」

(9)「【図1】


【図2】


【図10】


【図18】


【図19】



2 引用発明
引用例1には,請求項に記載される発明に係る具体的な形態として,図1に示されるような表示体10を,図18及び図19に示すように支持したラベル付き物品に関する発明として,以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「 表示体10を偽造防止用ラベルとして物品に支持させてなるラベル付き物品であって,
表示体10は,光透過層11と反射層13との積層体を含み,
光透過層11の主面,すなわち,光透過層11と反射層13との界面は,複数の領域に区分されており,その一部の領域は第1界面部IF1,他の一部の領域は第2界面部IF2であり,これら第1界面部IF1及び第2界面部IF2は,いずれも微小な凹凸が形成された領域であり,
表示体の凸構造及び/又は凹構造が形成された金属製のスタンパから,一方の主面に凸構造及び/又は凹構造が設けられた光透過層11を転写成形することができ,
光透過層11が,光透過性基材111と光透過性樹脂層112との積層体で構成され,光透過性基材111は,それ自体を単独で取り扱うことが可能なフィルム又はシートであり,光透過層11は,例えば,光透過性基材111上に熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を塗布し,この塗膜にスタンパを押し当てながら樹脂を硬化させることにより得られ,
反射層13として,光透過層11とは屈折率が異なる誘電体層を使用してもよく,
第1界面部IF1には,可視光の最短波長未満の中心間距離で配置された複数のドット状の凸部PRが設けられ,それゆえ,法線方向から観察した場合,第1界面部IF1は回折による分光色を表示せず,
第2界面部IF2は界面部IF1と同様に断面が凹凸形状であるレリーフ構造体であるが,その凸部や凹部の中心間距離は可視波長よりきわめて大きく,第2界面部IF2の凸部や凹部は,各々方向(方位角)がほぼ揃っている直線状の構造を呈し,
第2界面部IF2に対し法線方向より光を照射した場合,第2界面部IF2は複数設けられた直線状の凸部や凹部の長辺方向に対して垂直な面内には広い射出角範囲で散乱光を射出し,一方,直線状の凸部や凹部の長辺方向に並行であり,且つ,界面部IF2の主面に垂直な面内には狭い射出角範囲で散乱光を射出し,光散乱領域が一定の光強度以上の散乱光を射出する角度範囲の大きさを,用語「光散乱能」で表現すると,一般的な白色照明光の照明下において光散乱能が高くなる観察条件で第2界面部IF2を目視観察すると,第2界面部IF2は白色もしくは白色よりやや明度の低い灰白色に知覚され,光散乱能が低くなる観察条件下においては散乱光が届かず,第2界面部IF2は素材に応じた色がそのまま知覚される,
ラベル付き物品。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
ア 光透過性基材
引用発明の「光透過層11」は,「光透過性基材111と光透過性樹脂層112との積層体で構成され」る。また,「光透過性基材111は,それ自体を単独で取り扱うことが可能なフィルム又はシートであ」る。そして,下記イで指摘する「光透過性樹脂層112」の形成方法からして,「光透過性基材111」は「光透過性樹脂層112」を支持する光透過性の基材であると解される。したがって,引用発明の「光透過性基材111」は,本願発明1の「光透過性基材」に相当する。

イ レリーフ構造成型層
引用発明の「光透過層11」は,「光透過性基材111と光透過性樹脂層112との積層体で構成され」,当該「光透過層11は,例えば,光透過性基材111上に熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を塗布し,この塗膜にスタンパを押し当てながら樹脂を硬化させることにより得られ」,「一方の主面に凸構造及び/又は凹構造が設けられ」ている。そうしてみると,引用発明の「光透過性樹脂層112」は,「熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を塗布し,この塗膜にスタンパを押し当てながら樹脂を硬化させ」た層であり,「凸構造及び/又は凹構造」,すなわちレリーフ構造が成形された層であると解される。
したがって,引用発明の「光透過性樹脂層112」は,「光透過性基材111」の少なくとも一方の面上に設けられ,レリーフ構造が成形された層と解され,本願発明1の「レリーフ構造成形層」に対応付けられるものである。

ウ 透明光反射層
引用発明の「表示体10は,光透過層11と反射層13との積層体を含」む。また,引用発明の「表示体10」において,「光透過層11と反射層13との界面は,複数の領域に区分されており,その一部の領域は第1界面部IF1,他の一部の領域は第2界面部IF2であり,これら第1界面部IF1及び第2界面部IF2は,いずれも微小な凹凸が形成された領域であ」る。そうしてみると,「反射層13」は,「光透過層11」の主面のうち,凹凸構造が形成された面上に配されているものと解される。そして,上記イで指摘したように,「光透過層11」において凹凸構造が形成されているのは,「光透過性樹脂層112」であるから,「反射層13」は「光透過性樹脂層112」の面上に配されていると解される。
したがって,上記イで検討した対応関係も踏まえると,本願発明1の「透明光反射層」と引用発明の「反射層13」とは,レリーフ構造成形層の面上に配されている反射層である点で共通する。

エ 指向性散乱領域
引用発明の「第2界面部IF2」は,「光透過層11の主面」の「一部の領域」である。ここで,上記イの検討を踏まえると,「第2界面部IF2」は,本願発明1の「レリーフ構造成形層」に対応付けられる引用発明の「光透過性樹脂層112」に形成されているものと解される。
また,引用発明の「第2界面部IF2」は,「断面が凹凸形状であるレリーフ構造体であ」り,「第2界面部IF2の凸部や凹部は,各々方向(方位角)がほぼ揃っている直線状の構造を呈」する。すなわち,各々が直線状であり方向が揃った複数の凸部及び/又は凹部の構造を含むものである。
また,「第2界面部IF2は複数設けられた直線状の凸部や凹部の長辺方向に対して垂直な面内には広い射出角範囲で散乱光を射出し,一方,直線状の凸部や凹部の長辺方向に並行であり,且つ,界面部IF2の主面に垂直な面内には狭い射出角範囲で散乱光を射出し,光散乱領域が一定の光強度以上の散乱光を射出する角度範囲の大きさを,用語「光散乱能」で表現すると,一般的な白色照明光の照明下において光散乱能が高くなる観察条件で第2界面部IF2を目視観察すると,第2界面部IF2は白色もしくは白色よりやや明度の低い灰白色に知覚され,光散乱能が低くなる観察条件下においては散乱光が届かず,第2界面部IF2は素材に応じた色がそのまま知覚され」る。すなわち,「第2界面部IF2」は,「直線状の凸部や凹部の長辺方向」には,知覚できる程度に散乱光を放出し,それと直交する方向には散乱光が届かないものである。したがって,引用発明の「第2界面部IF2」は,方向に依存して強度が異なる散乱光を放出する領域であるから,本願発明1の「指向性散乱領域」に対応付けられるものである。

オ 表示体,印刷物
引用発明の「表示体10」は,「光透過性基材111」,「光透過性樹脂層112」,「反射層13」及び「第2界面部IF2」を備え,これらは,上記ア?エで検討したように,本願発明1の「表示体」の構成と対応付けられる。したがって,引用発明の「表示体10」は,本願発明1の「表示体」に対応付けられるものである。
また,引用発明の「ラベル付き物品」は,「表示体10」を「物品に支持させてなる」ものであるから,表示体と表示体を支持する物品とを備えた物品である点で,本願発明1の「印刷物」と共通する。

(2)一致点及び相違点
ア 一致点
上記(1)を踏まえると,本願発明1と引用発明は,次の構成で一致する。
「 光透過性基材の少なくとも一方の面上に,指向性散乱領域からなるレリーフ構造成形層を備え,前記レリーフ構造成形層の面上に光反射層を配している表示体であって,前記指向性散乱領域は,各々が直線状であり方向が揃った複数の凸部および/または凹部の指向性散乱構造を含む表示体と,前記表示体を支持する物品とを備えたことを特徴とする物品。」

イ 相違点
本願発明1と引用発明とは,以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1は,「透過率が60%以上である透明光反射層」を備えるのに対して,引用発明は「反射層13」を備えるものの,それが「透明」であるとの特定はなく,その透過率が明らかでない点。

(相違点2)
本願発明1の「表示体」は,「前記光透過性基材の観察方向から遠い面側に文字や記号,マークなどのパターンが白色紙に形成されている印刷層を具備してい」て,「前記印刷層と前記レリーフ構造成形層の指向性散乱領域は,各々で異なる文字,記号,マークなどのパターンが形成されてい」て,また,本願発明1の「印刷物」は,「前記表示体を支持する印刷が施された基材とを備え」ているのに対して,引用発明は,「印刷層」及び「印刷が施された基材」の両者を具備していることが明らかでない点。

(相違点3)
本願発明1の「指向性散乱領域」は「複数の凸部および/または凹部の平均間隔が10μm以下」であるのに対して,引用発明の「第2界面部IF2」の「凸部や凹部」の平均間隔は明らかでない点。

(相違点4)
本願発明1の「指向性散乱領域」は,「予め決められた角度範囲にのみ標準白色板の輝度値の2倍から3倍の輝度で強く散乱光を射出する機能を有して」いるのに対して,引用発明の「第2界面部IF2」は,散乱強度が指向性を有するものの,散乱強度が強い角度範囲における輝度が,特定されていない点。

(3)相違点についての判断
上記相違点2を判断する。
ア 引用例1の段落【0088】には,引用発明のラベル付き物品の一例として印刷物100が挙げられ,更に,同段落【0090】には,「表示体10を含んだ印刷物は,商品券及び株券などの有価証券であってもよい。」と記載されている。ここで,「商品券及び株券などの有価証券」は,通常,紙からなる基材に印刷を施してなるものである。そうしてみると,引用発明において,「表示体10」を支持させる物品を,印刷が施された基材とすることは,引用例1の記載が示唆する事項に基づいて,当業者が容易になし得たことである。
しかし,この場合には,引用発明の「表示体10」は,本願発明1の「光透過性基材の観察方向から遠い面側に文字や記号,マークなどのパターンが白色紙に形成されている印刷層」に相当する構成を具備しない。そして,引用例1には,引用発明が第1界面部と第2界面部の散乱性の違いによって,観察方向に依存する可視画像を実現できることが記載されている(段落【0016】?【0017】を参照。)。一方本願発明1は,レリーフ構造成形層の指向性散乱領域と,光透過性基材の観察方向から遠い面側の濃淡パターンからなる印刷層によって,前記指向性散乱領域が散乱光を射出する角度範囲において,前記印刷層の文字や記号,マークなどは観察することができず,前記指散乱光が射出される角度範囲外のみにおいて,前記濃淡パターンを潜像として観察することを可能にして,観察方向に依存する表示を実現するものである(本件出願の明細書の段落【0021】を参照。)。すなわち,本願発明1と引用発明とは,異なる手段によって課題を解決するものである。したがって,引用発明の表示体に,本願発明1の「印刷層」に相当する層を設けることは,当業者であっても容易になし得たことではない。

イ 上記(1)オでは,引用発明の「表示体10」及び「ラベル付き物品」をそれぞれ,本願発明1の「表示体」及び「印刷物」に対応付けた。しかし,上記アのように,引用発明の「表示体10」を支持させる物品として,商品券及び株券等の有価証券を選択することは,当業者が容易になし得たことであるところ,商品券及び株券等の有価証券を,文字や記号,マークなどのパターンが白色紙に形成されたものとして,本願発明1の「印刷層」に対応付けられると考えることもできる。すなわちこの場合には,引用発明の「ラベル付き物品」が,本願発明1の「表示体」に対応付けられる。
しかし,上述のようにしてなるラベル付き物品は,商品券及び株券等の有価証券として,それ自体独立した物として使用されるから,それを更に「印刷が施された基材」に支持させることは,当業者であっても容易になし得たことではない。

ウ 以上より,相違点1,3及び4について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明並びに当審拒絶理由で引用した引用例2に記載される周知技術に基づいて,容易に発明できたものではない。

2 本願発明2?本願発明5について
本願発明2?本願発明5は,本願発明1の構成を全て有するから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,並びに,引用例2に記載された周知技術に基づいて,容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定の概要及び原査定についての判断
1 原査定の概要
原査定は,平成28年5月2日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項8に係る発明は,以下の引用文献1?引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
すなわち,引用文献1に記載された発明において,引用文献2に記載される周知技術のように,指向性散乱領域を設けることは,当業者が容易に発明できたことである,というものである。
引用文献1.特開2010-52437号公報
引用文献2.特開2008-107472号公報

2 原査定についての判断
上記引用文献1には,光透過性の基材5の一方の面に,レリーフ構造形成層2と光反射層3を設け,基材5の他方の面に印刷層4を設けた表示体1が記載されている(段落【0015】を参照。)。そして,当該表示体1において,レリーフ構造形成層が備える凹凸構造領域6は,通常の照明条件下において,黒色又は暗灰色等の明度と低散乱性を有し,また,特定条件下において回折光射出機能を有するものである(段落【0035】)。すなわち,引用文献1に記載された発明の凹凸構造領域は,回折光を利用して,それ自体によって特有の視覚効果をもたらすものである。そうしてみると,引用文献1に記載された発明と,本願発明1?本願発明5とは,課題解決手段を異にするから,引用文献1に記載された発明並びに引用文献2に記載される周知技術に基づいて,本願発明1?本願発明5に至ることが,当業者であっても容易になし得たことであるとはいえない。

第7 まとめ
以上のとおり,本願発明1?本願発明5は,原査定の理由あるいは当審拒絶理由によって,拒絶することはできない。
また,他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-03-26 
出願番号 特願2015-99136(P2015-99136)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 後藤 亮治  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 河原 正
佐藤 秀樹
発明の名称 表示体及び印刷物  
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