• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05B
管理番号 1338749
審判番号 不服2016-13976  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-16 
確定日 2018-03-22 
事件の表示 特願2012- 83129「有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月17日出願公開、特開2013-214370〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続の経緯
特願2012-83129号(以下、「本件出願」という。)は、平成24年3月30日に出願された特許出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成27年11月12日付け:拒絶理由通知書
平成28年 1月12日提出:意見書
平成28年 1月12日提出:手続補正書
平成28年 6月16日付け:拒絶査定
平成28年 9月16日提出:審判請求
平成29年 7月13日付け:拒絶理由通知書
平成29年 9月19日提出:意見書
平成29年 9月19日提出:手続補正書

2 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1,2に係る発明は、平成29年9月19日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「透明基板と、当該透明基板上に形成された画素部分と、前記画素部分の周囲に形成された非画素エリアと、を有し、前記画素部分の少なくとも一箇所以上に着色層が形成されており、前記非画素エリアの少なくとも一箇所以上に凸状柱が形成されており、前記凸状柱を含め前記非画素エリアおよび前記画素部分を覆うようにオーバーコート層が形成されてなる有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタの製造方法であって、
前記凸状柱を含め前記非画素エリアおよび前記画素部分を覆う領域に光硬化性樹脂を塗布する工程と、
前記塗布された光硬化性樹脂を露光するにあたり、前記凸状柱が形成されている領域に対する露光量と比べて、その他の領域に対する露光量が少なくなるように露光することにより、前記光硬化性樹脂を硬化せしめる露光工程と、
未硬化の光硬化性樹脂を洗浄する洗浄工程と、
を含み、さらに、
前記各工程により形成された、前記凸状柱上のオーバーコート層にメタル補助電極を形成する工程を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタの製造方法。」

3 当審の拒絶理由
平成29年7月13日付け拒絶理由通知書において、当審が通知した拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、概略、本件出願の請求項1,2に係る発明は、その出願前日本国内または外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献は、以下のとおりである。
引用例1:特開2008-90191号公報
引用例2:特開2010-160345号公報
引用例3:特開2003-92192号公報

第2 当合議体の判断
1 引用例の記載及び引用発明
(1)引用例1
本件出願の出願前に頒布された刊行物である当審拒絶理由で引用された引用例1(特開2008-90191号公報)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定に関連する箇所を示す。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、前記透明基材上に形成された遮光部と、前記遮光部の開口部に形成された3色以上の着色層と、前記遮光部の開口部以外の上に形成され、少なくとも1層以上の着色層からなる積層柱と、を有するカラーフィルタ用基板上に、感光性樹脂からなる感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、
前記感光性樹脂層を、多階調マスクを用いて露光し、現像して、前記積層柱と、前記積層柱上に形成され、前記感光性樹脂からなる積層柱頭頂部とを有するスペーサおよび前記感光性樹脂からなるオーバーコート層を同時に形成するスペーサ・オーバーコート層形成工程と、
を有することを特徴とするカラーフィルタ基板の製造方法。」

イ 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に適用されるカラーフィルタ基板の製造方法であって、十分な高さを持ったスペーサおよびオーバーコート層を同時に形成することができ、かつ表示品位に優れたカラーフィルタ基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶ディスプレイの需要が増加している。また、最近においては家庭用の液晶テレビの普及率も高まっており、益々液晶ディスプレイの市場は拡大する状況にある。さらに近年普及している液晶ディスプレイは大画面化の傾向があり、特に家庭用の液晶テレビに関してはその傾向が強くなってきている。このような状況において、液晶ディスプレイを構成する部材についてはより低コストで高品質なものを高生産性で製造することが望まれており、特に液晶ディスプレイをカラー表示化させる機能を有するカラーフィルタ基板は、従来高コストであったことからこのような要望が高まっている。
【0003】
液晶表示装置は、カラーフィルタ基板と液晶駆動側基板(対向基板)とを対向させ、両者の間に液晶化合物を封入して薄い液晶層を形成し、液晶駆動側基板により液晶層内の液晶配列を電気的に制御して表示側基板の透過光の量を選択的に変化させることによって表示を行う。
このような液晶表示装置において、上記カラーフィルタ基板と対向基板との間隙(セルギャップ)は液晶層の厚さそのものであり、色ムラやコントラストムラといった表示ムラを防止し、均一な表示、高速応答性、高コントラスト比、広視野角等の良好な表示性能をカラー液晶表示装置に付与するためには、セルギャップを一定且つ均一に維持する必要がある。
【0004】
セルギャップを維持する方法としては、上記間隙内にスペーサとしてガラス、アルミナ又はプラスチック等からなる一定サイズの球状又は棒状粒子を多数散在させる方法が用いられてきたが、スペーサとして粒子を散在させる方法では、スペーサの分布が偏り易い等の種々の問題点があった。これら粒子状スペーサの問題点を解消する方法として、遮光部上に着色層を積層して形成した積層柱をスペーサとして用いる方法(特許文献1、特許文献2)が開示されている。しかしながら、遮光部上の限られた領域に積層柱を形成するため、高さが制限され、十分なセルギャップを確保することができないといった問題があった。これに対して、積層柱上に樹脂層を形成することでスペーサを形成する方法(特許文献3)が開示されているが、工程数が多くなり生産性が低くなるといった問題があった。
【0005】
また、近年、液晶ディスプレイとした際に視野角が広いといった利点から液晶表示装置の動作モードとして、配向した液晶分子を透明基板に対して平行な方向に回転させるIPS(In-Plane Switching)方式が普及してきている。このようなIPS方式や他の方式の液晶表示装置に用いられるカラーフィルタ基板においては、液晶分子の保護および着色層の平坦性のために、遮光部、着色層といった各構成を覆うように配置されたオーバーコート層が用いられてきた。
このようなオーバーコート層は、塗工液として調製されたものを塗工することによって形成する。そのため、オーバーコート層形成前に積層柱を形成した場合には、オーバーコート層形成後において、オーバーコート層の平坦化能力により、スペーサ高さが実質的に低くなるといった問題があった。また、上記積層柱の周辺においては、オーバーコート層がブロード化することにより、着色層上のオーバーコート層の厚みが均一とならず、屈折率のばらつきによる表示品位の低下や、液晶の配向不良による透過率の低下が発生するといった問題があった。そのため、従来は、オーバーコート層を形成した後に感光性樹脂層を形成し、それをフォトリソグラフィー法等によってスペーサを形成する方法が一般的に用いられてきた。しかしながら、低コスト化の流れのなかにあって、工程数の増加、生産性の低下が問題となっていた。
【0006】
・・・(略)・・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、十分な高さを持ったスペーサおよびオーバーコート層を同時に形成することができ、かつ表示品位に優れたカラーフィルタ基板の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、透明基材と、上記透明基材上に形成された遮光部と、上記遮光部の開口部に形成された3色以上の着色層と、上記遮光部の開口部以外の上に形成され、少なくとも1層以上の着色層からなる積層柱と、を有するカラーフィルタ用基板上に、感光性樹脂からなる感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、上記感光性樹脂層を多階調マスクを用いて露光し、現像して、上記積層柱と、上記積層柱上に形成され、上記感光性樹脂からなる積層柱頭頂部とを有するスペーサ、および上記感光性樹脂からなるオーバーコート層を同時に形成するスペーサ・オーバーコート層形成工程と、を有することを特徴とするカラーフィルタ基板の製造方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、上記多階調マスクを用いることにより、所望の位置に、所望の高さのスペーサ、およびオーバーコート層を形成することができる。したがって、本発明の製造方法により製造されたカラーフィルタ基板を用いることにより、所望のセルギャップを有し、かつ液晶表示品位の低下が少ない液晶表示装置を得ることができる。
また、オーバーコート層とスペーサを同時に形成するため、生産性に優れたものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、液晶表示装置に用いた際に、十分なセルギャップを得ることができ、かつ表示品位の低下が少なく、さらに生産性に優れたカラーフィルタ基板の製造方法を提供するといった効果を奏する。」

ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、カラーフィルタ基板の製造方法に関するものである。以下、本発明のカラーフィルタ基板の製造方法について説明する。
【0012】
本発明のカラーフィルタ基板の製造方法は、透明基材と、上記透明基材上に形成された遮光部と、上記遮光部の開口部に形成された3色以上の着色層と、上記遮光部の開口部以外の上に形成され、少なくとも1層以上の着色層からなる積層柱と、を有するカラーフィルタ用基板上に、感光性樹脂からなる感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、上記感光性樹脂層を多階調マスクを用いて露光し、現像して、上記積層柱と、上記積層柱上に形成され、上記感光性樹脂からなる積層柱頭頂部と、を有するスペーサ、および上記感光性樹脂からなるオーバーコート層を同時に形成するスペーサ・オーバーコート層形成工程と、を有することを特徴とするものである。
【0013】
次に本発明のカラーフィルタ基板の製造方法について図を参照しながら説明する。図1は本発明のカラーフィルタ基板の製造方法の一例を示す工程図である。図1に例示するように、本発明のカラーフィルタ基板の製造方法は、透明基材1と、上記透明基材1上に形成された遮光部2と、上記透明基材1上の遮光部2の開口部に形成された赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の着色層3R,3G,3Bと、上記遮光部2上に形成され、各色の着色層3R,3G,3Bが積層してなる積層柱4と、を有するカラーフィルタ用基板10を準備し(図1(a))、上記カラーフィルタ用基板10上に感光性樹脂からなる感光性樹脂層5を形成する感光性樹脂層形成工程(図1(b))と、上記感光性樹脂層5を、上記積層柱4が形成された遮光部2に対応するように形成された透過領域21、および上記透過領域21より露光光の透過率の低い半透過領域22を有する多階調マスク20を用いて露光し、現像することにより、上記積層柱4と、上記積層柱4上に上記感光性樹脂からなる積層柱頭頂部7とを有するスペーサ9および上記感光性樹脂からなるオーバーコート層6を同時に形成するスペーサ・オーバーコート層形成工程(図1(c))と、を有することを特徴とするものである。
ここで、感光性樹脂からなり感光性樹脂の厚みの厚い箇所であって上記積層柱頭頂部以外の領域はスペーサ領域部であり、感光性樹脂の厚みが薄く、一定である領域はオーバーコート層である。上記多階調マスクを用いて露光した場合には、図1(c)に示すように、上記透過領域21に対応する箇所である遮光部2上に、感光性樹脂からなり感光性樹脂の厚みが厚いスペーサ領域部8が形成され、上記半透過領域22に対応する箇所に感光性樹脂の厚みが薄く、一定であるオーバーコート層6が形成されることになる。
なお感光性樹脂の厚みとは、遮光部の開口部に形成された着色層の表面から感光性樹脂の表面までの距離をいうものである。
このような製造方法によって得られたカラーフィルタ基板は、図1(c)に示すように、上記オーバーコート層6の厚みを薄く、上記積層柱頭頂部7の高さを高いものとすることができるので、オーバーコート層6の表面からスペーサ9の頂部までの距離であるスペーサ高さh1が十分な高さのスペーサ9が形成されることになる。
【0014】
一方、多階調マスクを用いない従来のオーバーコート層の形成方法では、スペーサの高さを所望の高さとすることができない。すなわち、図2(a)に例示するように、透明基材1と、上記透明基材1上に形成された遮光部2と、上記透明基材1上の遮光部2の開口部上に形成された赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の着色層3R,3G,3Bと、上記遮光部2上に形成され、各色の着色層3R,3G,3Bが積層してなる積層柱4と、を有するカラーフィルタ用基板10に対して、オーバーコート層形成用樹脂を塗工液状にしたオーバーコート層塗工液を塗工することにより、積層柱4と、積層柱4上に形成され、オーバーコート層形成用樹脂からなる積層柱頭頂部7とを有するスペーサ9、オーバーコート層形成用樹脂からなり、オーバーコート層形成用樹脂の厚みが厚いスペーサ領域部8、および厚みが薄く、一定であるオーバーコート層6を形成することになる(図2(b))。
なおオーバーコート層形成用樹脂の厚みとは、遮光部の開口部に形成された着色層の表面からのオーバーコート層形成用樹脂表面までの距離をいうものである。
ここで、積層柱4上に塗工されたオーバーコート層塗工液は塗工直後から自重によってより低い位置へと流れ落ちるため、最終的に形成される積層柱頭頂部7の厚みh3は、上記オーバーコート層の厚みh4より薄いものとなる。したがって、従来の方法では、スペーサの高さ、すなわちオーバーコート層表面から上記スペーサの頂部までの距離を、十分なものとすることができなかった。
【0015】
また、塗工したオーバーコート層塗工液が自重により、より低い位置へと流れ落ちる結果、形成されるスペーサ領域部8の幅w1は、積層柱4の最大幅w2より広いものとなる(図2(b))。上記スペーサ領域部8が、遮光部2上のみに形成されている場合には問題はないが、開口部に形成された各色の着色層3R,3G,3B上にまで及んだ場合には、開口部に形成された各色の着色層3R,3G,3B上のオーバーコート層形成用樹脂の厚みが一定ではないことになり、開口部を透過する光の散乱、液晶配向のばらつき等を引き起こし、液晶表示装置としての表示品位の低下を生じる可能性があった。
このような問題のため、従来は、オーバーコート層を形成した後、感光性樹脂層を形成し、フォトリソグラフィー法等によってスペーサを形成する方法が一般的であったが、工程数が多くなり生産性が低くなる問題があった。
【0016】
この点、本発明によれば、多階調マスクを用いることにより、所望の位置に、所望の高さを有したスペーサ、およびオーバーコート層を同時に形成するため、工程数が少なく、生産性に優れたものとすることができる。」

エ 「【実施例】
【0074】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてさらに具体的に説明する。
【0075】
[実施例1]
1.感光性樹脂組成物の調製
重合槽中にメタクリル酸メチル(MMA)を63重量部、アクリル酸(AA)を12重量部、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル(HEMA)を6重量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を88重量部仕込み、攪拌し溶解させた後、2,2´-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)を7重量部添加し、均一に溶解させた。その後、窒素気流下、85℃で2時間攪拌し、更に100℃で1時間反応させた。得られた溶液に、更にメタクリル酸グリシジル(GMA)を7重量部、トリエチルアミンを0.4重量部、及びハイドロキノンを0.2重量部添加し、100℃で5時間攪拌し、共重合樹脂溶液(固形分50%)を得た。
【0076】
次に下記の材料を室温で攪拌、混合して感光性樹脂組成物とした。
<感光性樹脂組成物の組成>
・上記共重合樹脂用液(固形分50%):16重量部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー社 SR399):24重量部
・オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社 エピコート180S70):4重量部
・2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン:4重量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル:52重量部
【0077】
2.遮光部の形成
まず、下記分量の成分を混合し、サンドミルにて十分に分散し、黒色顔料分散液を調製した。
【0078】
<黒色顔料分散液の組成>
・黒色顔料:23重量部
・高分子分散材(ビックケミー・ジャパン(株) Disperbyk111):2重量部
・溶剤(ジエチレングリコールジメチルエーテル):75重量部
【0079】
次に、上記黒色顔料分散液を、下記分量の成分を十分混合して、遮光部用感光性樹脂組成物を得た。
【0080】
<遮光部用感光性樹脂組成物の組成>
・上記黒色顔料分散液:61重量部
・上記の感光性樹脂組成物:20重量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル:30重量部
【0081】
そして、透明基材として、厚み1.1mmのガラス基板(旭硝子(株)AN材)上に上記遮光層用組成物(当合議体注:「上記遮光層用組成物」は、「上記遮光部用感光性樹脂組成物」の誤記である。)をスピンコーターで塗布し、100℃で3分間乾燥させ、膜厚約1μmの遮光層を形成した。次いで、当該遮光層を、超高圧水銀ランプで遮光パターンに露光した後、0.05wt%水酸化カリウム水溶液で現像し、その後、基板を180℃の雰囲気下に30分間の加熱処理を施すことで、開口部を有する遮光部を形成した。
【0082】
3.着色層、積層柱の形成
次に、下記組成の赤色用感光性樹脂組成物、緑色用感光性樹脂組成物、および青色用感光性樹脂組成物を調製した。
【0083】
<赤色用感光性樹脂組成物の組成>
・C.I.ピグメントレッド177:10重量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤:3重量部
・上記の感光性樹脂組成物:5重量部
・酢酸-3-メトキシブチル:82重量部
<緑色用感光性樹脂組成物の組成>
・C.I.ピグメントグリーン36:10重量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤:3重量部
・上記の感光性樹脂組成物:5重量部
・酢酸-3-メトキシブチル:82重量部
<青色用感光性樹脂組成物の組成>
・C.I.ピグメントブルー15:6:10重量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤:3重量部
・上記の感光性樹脂組成物:5重量部
・酢酸-3-メトキシブチル:82重量部
【0084】
上記のようにして遮光部を形成した基板上に、上記赤色用感光性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布(塗布厚み1.5μm)し、その後、70℃のオーブン中で3分間乾燥させ、塗膜を形成した。その後、塗膜から100μmの距離のところにフォトマスクを配置し、プロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて、赤色の着色層を形成すべき領域にのみ紫外線を10秒間照射した。
次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、塗膜の未硬化部分のみを除去した。その後、基板を180℃の雰囲気下に30分間の加熱処理を施して、赤色の着色層を形成すべき領域に赤色の着色層を形成した。
【0085】
また、上述した赤色の着色層の形成と同様の工程で、上記緑色用感光性樹脂組成物を用いて、緑色の着色層を形成すべき領域に緑色の着色層を形成した。
【0086】
さらに、上述した赤色の着色層の形成と同様の工程で、上記青色用感光性樹脂組成物を用いて、青色の着色層を形成すべき領域に青色の着色層を形成した。
以上により、赤、緑、青の3色の着色層を形成した。
また、上述した、赤、緑、青の各色の着色層が、この順に積層された高さ4μmの積層柱を形成した。
以上により、カラーフィルタ用基板を作製した。
【0087】
4.スペーサ、オーバーコート層の形成
上記のようにして着色層および積層柱を形成した基板上に、感光性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布、乾燥し、乾燥塗膜2μmの感光性樹脂層を形成した。
感光性樹脂層から100μmの距離に、上記積層柱に対応する位置に配置された透過領域およびオーバーコート層を形成すべき領域に対応する位置に配置された半透過領域を有する多階調マスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、感光性樹脂層の未硬化部分のみを除去した。その後透明基材を200℃の雰囲気中に30分間の加熱処理を施して上記積層柱と、上記積層柱上形成され(当合議体注:「上記積層柱上形成され」は、「上記積層柱上に形成され」の誤記である。)、感光性樹脂からなる積層柱頭頂部とを有するスペーサ、および感光性樹脂からなるオーバーコート層を形成した。
以上により、カラーフィルタ基板を作製した。
【0088】
[実施例2]
着色層、積層柱の形成において、積層柱を赤、緑のみの着色層で形成した以外は実施例1と同様にしてカラーフィルタ基板を作成した。
【0089】
[実施例3]
着色層、積層柱の形成において、積層柱を赤色のみの着色層で形成した以外は実施例1と同様にしてカラーフィルタ基板を作成した。
【0090】
[比較例1]
積層柱頭頂部、オーバーコート層の形成において、多階調マスクを使用せず、カラーフィルタ用基板の全面を均一な露光量で露光した以外は実施例1と同様にしてカラーフィルタ基板を作成した。
【0091】
[評価]
カラーフィルタ基板の評価として、積層柱と感光性樹脂からなる積層柱頭頂部とを有するスペーサの高さを測定した。測定結果は、各実施例、比較例毎に任意の20箇所のスペーサを測定して、高さの平均値を求めた。結果を下記表1に示す。
なお、スペーサの高さとは、オーバーコート層の表面からスペーサの頂部までの距離をいう。
【0092】
・・・(略)・・・
【0093】
スペーサの高さを測定した結果、比較例に比較して十分な高さを有するスペーサが形成されていることが確認できた。また、実施例2?3のようにスペーサを構成する積層柱の積層数が低いものであっても、十分な高さの積層柱頭頂部が形成でき、かつオーバーコート層の厚みを薄いものとすることができるので、得られるスペーサの高さを十分な高さとすることができることが確認できた。」

オ 「【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明のカラーフィルタ基板の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】従来のカラーフィルタ基板の製造方法を説明する説明図である。
【図3】本発明に用いられる透明基材を説明する説明図である。
【図4】本発明に用いられるカラーフィルタ用基板の一例を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0095】
1 … 透明基材
2 … 遮光部
3R,3G,3B … 着色層
4 … 積層柱
5 … 感光性樹脂層
6 … オーバーコート層
7 … 積層柱頭頂部
8 … スペーサ領域部
9 … スペーサ
10 … カラーフィルタ用基板
11 … 表示領域
12 … 非表示領域
20 … 多階調マスク
21 … 透過領域
22 … 半透過領域
30、30´ … カラーフィルタ基板」

カ 「【図1】



キ 「【図2】



(2) 引用発明
ア 引用例1の段落【0001】の記載によれば、引用例1における「本発明」は、「液晶表示装置」用「カラーフィルタ基板の製造方法」である。

イ 引用例1の段落【0075】?【0087】の実施例1の記載によれば、実施例1の「カラーフィルタ基板の製造方法」は、「1.感光性樹脂組成物の調製」工程(段落【0075】?【0076】)、「2.遮光部の形成」工程(段落【0077】?【0081】)、「3.着色層、積層柱の形成」工程(段落【0082】?【0086】)、「4.スペーサ、オーバーコート層の形成」工程(段落【0087】欄)からなることが把握できる。

ウ 上記アとイより、引用例1の段落【0075】?【0087】の実施例1に係る記載からは、「液晶表示装置」用「カラーフィルタ基板の製造方法」として次の発明が把握できる(以下、「引用発明」という。)。

「遮光部の形成工程、着色層、積層柱の形成工程、スペーサ、オーバーコート層の形成工程からなる液晶表示装置用カラーフィルタ基板の製造方法であって、
遮光部の形成工程は、
透明基材として、ガラス基板上に遮光部用感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させ、遮光層を形成し、
次いで、当該遮光層を、遮光パターンに露光した後、現像し、その後、基板に加熱処理を施すことで、開口部を有する遮光部を形成するものであり、
着色層、積層柱の形成工程は、
遮光部を形成した基板上に、赤色用感光性樹脂組成物を塗布し、その後、乾燥させ、塗膜を形成し、その後、赤色の着色層を形成すべき領域にのみ紫外線を照射し、次いで、アルカリ現像し、塗膜の未硬化部分のみを除去し、その後、基板に加熱処理を施して、赤色の着色層を形成すべき領域に赤色の着色層を形成し、
赤色の着色層の形成と同様の工程で、緑色用感光性樹脂組成物を用いて、緑色の着色層を形成すべき領域に緑色の着色層を形成し、
赤色の着色層の形成と同様の工程で、青色用感光性樹脂組成物を用いて、青色の着色層を形成すべき領域に青色の着色層を形成し、赤、緑、青の3色の着色層を形成し、
また、赤、緑、青の各色の着色層が、この順に積層された積層柱を形成するものであり、
スペーサ、オーバーコート層の形成工程は、
着色層および積層柱を形成した基板上に、感光性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布、乾燥し、感光性樹脂層を形成し、
上記積層柱に対応する位置に配置された透過領域およびオーバーコート層を形成すべき領域に対応する位置に配置された半透過領域を有する多階調マスクを配置して紫外線を照射し、次いで、アルカリ現像し、感光性樹脂層の未硬化部分のみを除去し、その後透明基材に加熱処理を施して上記積層柱と、上記積層柱上に形成され、感光性樹脂からなる積層柱頭頂部とを有するスペーサ、および感光性樹脂からなるオーバーコート層を形成するものである、
液晶表示装置用カラーフィルタ基板の製造方法。」

(3) 引用例2
本件出願の出願前に頒布された刊行物である当審拒絶理由で引用された引用例2(特開2010-160345号公報)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものである。

ア 「【0062】
e.用途
本実施態様のカラーフィルタは、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイ等に用いられるものである。本実施態様のカラーフィルタは、中でも液晶表示装置に用いられることが好ましい。」

イ 「【0143】
b.表示装置
本発明の表示装置は、上述したカラーフィルタを少なくとも有するものであれば特に限定されるものではない。
上記表示装置としては、例えば液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイ等が挙げられる。なかでも液晶表示装置であることが好ましい。
上記液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイに用いられる部材、材料、形成方法等については、一般的なこれらの表示装置と同様とすることができるのでここでの説明は省略する。」

(4) 引用例3
本件出願の出願前に頒布された刊行物である当審拒絶理由で引用された引用例3(特開2003-92192号公報)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものである。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
・・・(略)・・・
【請求項3】 発光画素により表示を行なう有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、前記発光画素に対応する表示電極を表面上に備えた基板と、前記表示電極上に形成されたエレクトロルミネッセンス発光層を含む有機層と、前記有機層の上に形成された光透過性の上部電極と、前記基板に対向して封着された光透過性の封止板とを備え、前記封止板の前記基板に対向する面上には、突出した凸部と、前記凸部上の補助電極を有し、前記上部電極と前記補助電極とが凸部上において接続されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
・・・(略)・・・
【請求項13】 発光画素により表示を行なう有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法であって、前記発光画素に対応する表示電極を表面上に備えた基板上に、エレクトロルミネッセンス発光層を含む有機層を形成する工程と、前記有機層上に光透過性の上部電極を形成する工程と、光透過性の封止板の表面に突出した凸部を形成し、さらに少なくとも前記凸部表面上に補助電極を形成する工程と、前記基板に対向させて前記封止板を封着するとともに、前記上部電極と前記補助電極とを凸部上において接続する工程を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発光型の表示を行なう有機エレクトロルミネッセンス表示装置およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】映像や文字の表示、あるいは照明、発光用として開発されている有機エレクトロルミネッセンス(以下、ELとも称す。)表示装置は、基板上に形成された発光画素などから構成されており、自発光型であるためにコントラストが高く、視野角が広いなどの優れた特性を有する。最近では、特に薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板上に画素として有機EL素子を形成したアクティブマトリックス型の有機EL表示装置が特性の優れたフラットディスプレイとして注目され、盛んに開発が行われている。
【0003】図6、7に、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の一従来例の構成を示す。図7は図6における画素が配置されたエリア11を拡大表示したものである。表示電極2と絶縁性の隔壁3とが配置されたガラス基板1上に、EL発光層を含む有機層4と、その上に上部電極5が形成され、それらを覆って封止板6がガラス基板1に封着されている。
【0004】表示電極2は有機EL素子の陽極であり、その材料にはITOなどの導電性金属酸化物が用いられる。アクティブ型の表示装置の場合、表示電極は画素に対応してパターニングされ、それぞれがスイッチング用の非線形素子に接続される。隔壁3は、後の有機層形成時に使用するマスクのストッパー等の役割を持つもので、絶縁性の樹脂や無機膜等で構成される。有機層4は、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等を積層して形成する。上部電極5はEL素子の陰極として機能し、その材料としてはAlLi合金、MgAg合金などの仕事関数の低い金属が用いられる。封止板6は金属缶やガラス板で構成され、ガラス基板とはUV硬化樹脂12を介して接着される。内部空間7を外気と遮断し、有機層および上部電極の水分による劣化を防止する。この従来例では、有機EL層からの発光は透明な表示電極とガラス基板とを透過して取り出されるいわゆる光の下取り出し構造を示している。
【0005】有機EL表示装置の構成としては、発光を上方から(すなわち基板と反対側から)取り出す構造と、先の従来例のように発光を下方から(すなわち基板側から)取り出す構造と、大きく分けて2つがあるが、特にTFTアレイ基板を用いるアクティブ型有機EL表示装置においては、上方から発光を取り出すと開口率が大きくなるので好ましい。上方から光を取り出す構造においては、上部電極が透光性でなければならず、低仕事関数の金属を含む極薄膜陰極の上に、スパッタリング法により成膜したITO(インジウム・スズ酸化物)などの透明導電膜を積層した構成が、例えば特開2001-85163号公報など、いくつか提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、有機層の上部電極(もしくは陰極)としてスパッタリング法により透明導電膜を成膜する工程においては、スパッタリングされた原子や、酸素やアルゴンの原子もしくはイオンが高いエネルギーを持って有機層表面に到達するために、有機層がダメージを受ける。また、高温に晒されて熱で変性したり、紫外光、プラズマに晒されることによる劣化も起こる。これらの結果、有機EL素子の発光効率低減や早期劣化といった発光特性の劣化を引き起こすという問題が生じていた。
【0007】上記の先行例は、スパッタリングの際の電力を低く抑えることにより、有機層へのダメージを低減させようという試みである。しかしながら、この方法によってもダメージを全く与えないスパッタリングは困難である。実用に耐えうる素子特性を得るには、電力を非常に低く抑え、ターゲットと基板との距離を大きくするなどの工夫が必要であるが、そうすると成膜レートが極端に遅くなってしまい大量生産には向かないという課題があった。特に有機EL表示装置においては、基板の全領域において上記不良を抑えて表示品位と信頼性を確保することが望まれるため、これは非常に重要な課題となっていた。
【0008】そこで、本発明は高い発光効率かつ長寿命である発光上取り出し型の有機EL表示装置とそれを実現するための製造方法を提供することを目的とする。」

ウ 「【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の有機EL表示装置は、発光画素により表示を行なう有機EL表示装置であって、発光画素に対応する表示電極を表面上に備えた基板と、表示電極上に形成されたEL発光層を含む有機層と、有機層の上に形成された光透過性の上部電極と、基板に対向して封着された光透過性の封止板とを備え、封止板の基板に対向する面上には上部電極と電気的に接続された光透過性の補助電極を有する。
【0010】この構成によれば、有機層上の上部電極は封止板表面上の補助電極を介して外部に引き出される。よって、ITO等の透明導電膜を上部電極上にスパッタリング成膜する必要がなく、有機EL層の特性を劣化させることがない。
【0011】本発明の有機EL表示装置において、上部電極と補助電極とが接続される構成としては、表示電極の少なくとも一部分を露出させるように形成された基板上に突出する隔壁を有し、光透過性の上部電極が有機層上と隔壁上にまたがって形成され、上部電極と補助電極とが隔壁上において接続される。
【0012】または、封止板の基板に対向する面上に、突出した凸部と、その上の補助電極を有し、上部電極と補助電極とが凸部上において接続されている。
【0013】または、表示電極の少なくとも一部分を露出させるように形成された基板上に突出する隔壁と、封止板の基板に対向する面上に形成された突出する凸部とその上の補助電極を有し、隔壁上の上部電極と凸部上の補助電極とが接続されている。
【0014】以上、いずれの構成においても基板と封止板との間にわずかな間隔を保持し、安定した電気的接続を形成するものであるとともに、封止の機能も果たされる。」

エ 「【0016】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態について、図面を参考にしながら、構造と製造方法を詳細に説明する。
【0017】本発明の有機EL表示装置は、例えば図4に示すように、画像や文字を表示するための発光画素10が基板1上に配置されてなる。これらの発光画素は例えば図1に示すように、表示電極2、有機層4、上部電極5などから構成され、図5に示すようにガラス等からなる封止板6により密閉封止されている。
【0018】(実施の形態1)図1は本発明に係る有機EL表示装置の第1実施例を示す図である。
・・・(略)・・・
【0022】まず、表示電極の一部分を露出させるように隔壁3を形成する。隔壁3の材料としてはレジスト等の樹脂膜、絶縁性無機膜等を用いることができるが、パターニング加工性を考慮すると感光性のポリイミド樹脂等が好ましい。樹脂膜は塗布形成後、フォトリソグラフィーで所望の形状にパターニングされて隔壁となる。隔壁の高さは10μm以下程度、好ましくは1?3μm程度である。また、以降の工程において形成する上部電極が断線しないようにするため、隔壁の断面形状はテーパーを有するなだらかな台形であることが望ましい。
【0023】
・・・(略)・・・
【0032】(実施の形態2)図2は本発明に係る有機EL表示装置の第2実施例を示す断面図である。図4のA-A'線での断面を示している。
【0033】基板1上に、表示電極2とEL発光層を含む有機層4が形成され、さらに有機層上に光透過性の上部電極5が形成されている。基板に封着された光透過性の封止板6の対向する面上には、突出する凸部9とその上に光透過性の補助電極7を有し、上部電極5と補助電極7とが凸部9上において接続されている。
【0034】基板、表示電極、有機層、封止板は(実施の形態1)と同様のものであるので、それらの製造工程は省略し、封止板に凸部を設ける工程以降の説明を行なう。
【0035】封止板の上に設けられた凸部は、(実施の形態1)に述べた隔壁と同様、その材料としてはレジスト等の樹脂膜、絶縁性無機膜等を用いることができるが、パターニング加工性を考慮すると感光性のポリイミド樹脂等が好ましい。樹脂膜は塗布形成後、フォトリソグラフィーで所望の形状にパターニングされて凸部となる。凸部の高さは10μm以下程度、好ましくは1?3μm程度である。
【0036】次に補助電極7を形成する。補助電極の材料としては、ITOやIZO等の金属酸化物を含む透明導電膜を用いる。これらの形成はスパッタリング法やEB蒸着法等により行なう。
【0037】補助電極は封止板6全面に形成されていても、凸部の上にのみ形成されていても良い。補助電極を全面に形成する場合は、補助電極が断線しないようにするため、凸部の断面形状はテーパーを有するなだらかな台形であることが望ましい。
【0038】補助電極を凸部の上にのみ形成する場合は、アルミ等の金属材料を用いてもよく、その場合はより低抵抗の補助電極とすることができる。この金属補助電極の形成は、スパッタリング等により成膜された薄膜をフォトリソグラフィーでエッチングすることによって得られる。もしくは、メタルペーストを印刷焼成するなどして形成しても良い。
【0039】以下、(実施の形態1)と同様にして、基板1と封止板6とを張り合わせて本実施の形態の有機EL表示装置が完成する。
【0040】なお、基板と封止板との間隙空間8を真空もしくは減圧雰囲気にすると望ましいのは勿論である。
【0041】
・・・(略)・・・
【0045】
【発明の効果】以上説明したように本発明の構成によれば、有機層上の上部電極は封止板表面上の補助電極を介して外部に引き出される。よって、ITO等の透明導電膜を上部電極上にスパッタリング成膜する必要がないため、有機EL層に何らのダメージを与えることない。よって、有機EL発光の効率不足や寿命短縮といった特性の劣化を引き起こすことがない。以上により、本発明は高い発光効率かつ長寿命である発光上取り出し型の有機EL表示装置を実現するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における有機EL表示装置の構成を示す模式断面図
【図2】本発明の実施の形態2における有機EL表示装置の構成を示す模式断面図
【図3】本発明の実施の形態3における有機EL表示装置の構成を示す模式断面図
【図4】本発明による有機EL表示装置の一実施例を模式的に示した平面図
【図5】本発明による有機EL表示装置の一実施例を模式的に示した平面図
【図6】有機EL表示装置の一従来例の構成を示す模式断面図
【図7】図6の有機EL表示装置の画素が配置されたエリアを拡大して示した図
【符号の説明】
1 基板
2 表示電極
3 隔壁
4 有機層
5 上部電極
6 封止板
7 補助電極
8 基板と封止板との間隙空間
9 凸部
10 発光画素
11 画素が配置されたエリア
12 UV硬化樹脂」

オ 「【図1】



カ 「【図2】



キ 「【図4】



2 対比及び判断
(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。
ア 「透明基板」
引用発明の「透明基材」である「ガラス基板」は、その機能からみて、本願発明の「透明基板」に相当する。

イ 「画素部分」及び「非画素エリア」
(ア) 引用発明の「遮光部の形成工程」は、「ガラス基板上」に「遮光層を形成し」、「当該遮光層を、遮光パターンに露光した後、現像し、その後、基板に加熱処理を施すことで、開口部を有する遮光部を形成するものであ」る。
そうすると、引用発明における「液晶表示装置用カラーフィルタ基板」は、「ガラス基板上」に、「遮光部」及び「遮光部」の「開口部」を形成したものであることが分かる。
してみると、引用発明における「液晶表示装置用カラーフィルタ基板」は、「ガラス基板」と、「ガラス基板上」に形成した「遮光部」及び「遮光部」の「開口部」とを有するものである。

(イ) 引用発明における「ガラス基板上」に形成した「遮光部」及び「遮光部」の「開口部」は、それぞれ光を遮光する部分及び光を透過する部分である。
本件出願の明細書の段落【0024】及び段落【0028】の記載によれば、「画素部分」とは、当該カラーフィルタを有機EL表示装置に用いた場合に光が透過する部分であり、「非画素エリア」とは、「遮光部」が形成される部分である。
そうすると、引用発明の「遮光部」の「開口部」及び「遮光部」は、それぞれ、本願発明の「画素部分」及び「非画素エリア」に相当する。
また、上記(ア)より、引用発明の「開口部」と、本願発明の「画素部分」は、「当該透明基板に形成された」ものである点で共通する。
また、「遮光部」が「開口部」を「有する」ということは、「開口部」の周囲には「遮光部」が存在するということである。
そうすると、引用発明の「遮光部」と、本願発明の「非画素エリア」は、「前記画素部分の周囲に形成された」ものである点で共通する。

(ウ) 上記(ア)、(イ)及びアより、引用発明における「液晶表示装置用カラーフィルタ基板」は、「透明基板」と、「当該透明基板上に形成された画素部分と」、「前記画素部分の周囲に形成された非画素エリア」と、を有しているということができる。

ウ 「着色層」及び「凸状柱」
(ア) 引用発明において、「赤色の着色層」、「緑色の着色層」及び「青色の着色層」は、「開口部」に形成されていることは明らかである(引用例1の段落【0008】の記載からも確認できる事項である。)。
引用発明の「赤色の着色層」、「緑色の着色層」及び「青色の着色層」は、技術的にみて、カラーフィルタの赤、緑、青の画素を構成するものであるから、本願発明の「着色層」に相当する。
そうすると、上記イ(イ)より、引用発明における「液晶表示装置用カラーフィルタ基板」においては、「前記画素部分の少なくとも一箇所以上に着色層が形成されて」いるということができる。

(イ) 引用発明の「着色層、積層柱の形成工程」により形成される「赤、緑、青の各色の着色層が、この順に積層された積層柱」は、「スペーサ、オーバーコート層の形成工程」において、最終的には、該「積層柱」と「積層柱上に形成」した「感光性樹脂からなる積層柱頭頂部」とにより「スペーサ」「を形成するものである」。
そうすると、技術常識に照らせば、「赤、緑、青の各色の着色層が、この順に積層された積層柱」は、光を遮光する部分である「遮光部」の上に形成されていることが把握できる(引用例1の段落【0013】の記載「上記遮光部2上に形成され、各色の着色層3R,3G,3Bが積層してなる積層柱4と・・・」、あるいは引用例1の図1(a)(積層柱(4)、遮光部(2)等)からも確認できる事項である。)。
したがって、引用発明の「赤、緑、青の各色の着色層が、この順に積層された積層柱」は、本願発明の「凸状柱」に相当する。また、上記イ(イ)より、引用発明における「液晶表示装置用カラーフィルタ基板」においては、「前記非画素エリアの少なくとも一箇所以上に凸状柱が形成されて」いるということができる。

エ 「オーバーコート層」
(ア) 引用発明の「スペーサ、オーバーコート層の形成工程」の「着色層および積層柱を形成した基板上に、感光性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布、乾燥し、感光性樹脂層を形成」する工程(以下、「感光性樹脂層形成工程」という。)において、「感光性樹脂層」は、「感光性樹脂組成物」を「スピンコーティング法」により「塗布」、「乾燥」することによって形成されるから、「感光性樹脂層」は、「着色層および積層柱を形成した基板」の全面を覆うものであることは明らかである。
そうすると、「感光性樹脂層形成工程」により形成される「感光性樹脂層」は、「開口部」(「着色層」)、「遮光部」及び「積層柱」とを覆っていることは明らかである(引用例1の図1(b)(感光性樹脂層(5)等)からも確認できる事項である。)。

(イ) 引用発明の「スペーサ、オーバーコート層の形成工程」は、上記「感光性樹脂層形成工程」に加え、「上記積層柱に対応する位置に配置された透過領域およびオーバーコート層を形成すべき領域に対応する位置に配置された半透過領域を有する多階調マスクを配置して紫外線を照射」する工程(以下、「紫外線照射工程」という。)と、「次いで、アルカリ現像し、感光性樹脂層の未硬化部分のみを除去」する工程(以下、「アルカリ現像工程」という。)と、「その後透明基材に加熱処理を施して上記積層柱と、上記積層柱上に形成され、感光性樹脂からなる積層柱頭頂部とを有するスペーサ、および感光性樹脂からなるオーバーコート層を形成する」工程(以下、「スペーサ・オーバーコート層形成工程」という。)を有するものである。
上記(ア)より、引用発明の「スペーサ・オーバーコート層形成工程」により、引用発明の「積層柱」を含め「遮光部」及び「開口部」(「着色層」)を覆うように、「感光性樹脂からなるオーバーコート層」及び「積層柱上に形成され、感光性樹脂からなる積層柱頭頂部」を併せたものが形成されていることは、技術的にみて明らかである(引用例1の段落【0063】及び【0068】?【0071】や図1(c)からも確認できる事項である。)。
引用発明の「感光性樹脂からなるオーバーコート層」及び「積層柱上に形成され、感光性樹脂からなる積層柱頭頂部」を併せたものは、本願発明の「オーバーコート層」に相当する。
そうすると、引用発明における「液晶表示装置用カラーフィルタ基板」は、上記イとウより、「前記凸状柱を含め前記非画素エリアおよび前記画素部分を覆うようにオーバーコート層が形成されて」いるということができる。

オ カラーフィルタ及びその製造方法
(ア) 上記イ(ウ)、ウ(ア)、ウ(イ)及びエ(イ)より、引用発明における「液晶表示装置用カラーフィルタ基板」は、「透明基板」と、「当該透明基板上に形成された画素部分」と、「前記画素部分の周囲に形成された非画素エリア」と、を有するものであり、「前記画素部分の少なくとも一箇所以上に着色層が形成されて」おり、「前記非画素エリアの少なくとも一箇所以上に凸状柱が形成されて」おり、「前記凸状柱を含め前記非画素エリアおよび前記画素部分を覆うようにオーバーコート層が形成されて」なるものであるということができる。
したがって、引用発明における「液晶表示装置用カラーフィルタ基板」と、本願発明における「有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ」は、「カラーフィルタ」である点で共通する。また、引用発明における「液晶表示装置用カラーフィルタ基板」と、本願発明における「有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ」は、「透明基板と、当該透明基板上に形成された画素部分と、前記画素部分の周囲に形成された非画素エリアと、を有し、前記画素部分の少なくとも一箇所以上に着色層が形成されており、前記非画素エリアの少なくとも一箇所以上に凸状柱が形成されており、前記凸状柱を含め前記非画素エリアおよび前記画素部分を覆うようにオーバーコート層が形成されてなる」「カラーフィルタ」である点で共通する。
加えて、引用発明と、本願発明は、「透明基板と、当該透明基板上に形成された画素部分と、前記画素部分の周囲に形成された非画素エリアと、を有し、前記画素部分の少なくとも一箇所以上に着色層が形成されており、前記非画素エリアの少なくとも一箇所以上に凸状柱が形成されており、前記凸状柱を含め前記非画素エリアおよび前記画素部分を覆うようにオーバーコート層が形成されてなる」「カラーフィルタの製造方法」である点で共通する。

カ 「光硬化性樹脂を塗布する工程」
(ア) 引用発明の「感光性樹脂層形成工程」により形成される「感光性樹脂層」は、「紫外線照射工程」において、「上記積層柱に対応する位置に配置された透過領域およびオーバーコート層を形成すべき領域に対応する位置に配置された半透過領域を有する多階調マスクを配置して紫外線を照射」され、「アルカリ現像工程」において、「アルカリ現像し、感光性樹脂層の未硬化部分のみを除去」され、「スペーサ・オーバーコート層形成工程」において、「その後透明基材に加熱処理を施」されるものである。
そうすると、引用発明の「感光性樹脂層」は、「紫外線」の「照射」により「硬化」するものであるから、「感光性樹脂層」を形成する「感光性樹脂組成物」は光硬化性を有するものである。
したがって、引用発明の「感光性樹脂層」を形成する「感光性樹脂組成物」は、本願発明の「光硬化性樹脂」に相当する。

(イ) 引用発明の「感光性樹脂層形成工程」は、「感光性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布、乾燥し、感光性樹脂層を形成」するから、「感光性樹脂組成物」を塗布する工程を含むということができる。
そうすると、上記(ア)、イ(イ)、ウ(イ)及びエ(ア)より、引用発明は「感光性樹脂層形成工程」を具備する点において、本願発明の「前記凸状柱を含め前記非画素エリアおよび前記画素部分を覆う領域に光硬化性樹脂を塗布する工程」に相当する構成を具備するといえる。

キ 「露光工程」
(ア) 引用発明の「感光性樹脂層」を形成する「感光性樹脂組成物」は「光硬化性」を有するものであるから(上記カ(ア))、引用発明の「紫外線照射工程」において、「感光性樹脂層」に対して、「多階調マスクを配置して」「紫外線を照射」することは、「感光性樹脂組成物」を露光して、硬化させているということができる。
引用発明の「紫外線照射工程」において、「多階調マスクを配置して紫外線を照射」する「感光性樹脂層」は、上記カ(イ)より、「感光性樹脂層形成工程」により塗布された「感光性樹脂組成物」ということができる。
そうすると、引用発明の「紫外線照射工程」は、塗布された「感光性樹脂組成物」を露光し、塗布された「感光性樹脂組成物」を硬化する工程ということができる。

(イ) 引用発明の「多階調マスク」は、「上記積層柱に対応する位置に配置された透過領域およびオーバーコート層を形成すべき領域に対応する位置に配置された半透過領域を有する」ものであるから、引用発明の「紫外線照射工程」においては、「透過領域」に対応する「上記積層柱に対応する位置」に対する紫外線の照射量に比較して、「半透過領域」に対応する「オーバーコート層を形成すべき領域に対応する位置」に照射される紫外線の照射量が少なくなる。
そうしてみると、引用発明の「紫外線照射工程」における「積層柱に対応する位置」及び「オーバーコート層を形成すべき領域に対応する位置」は、それぞれ「積層柱」が形成されている領域及びその他の領域といいかえることができる。

(ウ) 上記(ア)及び(イ)より、引用発明の「紫外線照射工程」は、塗布された「感光性樹脂組成物」を露光する時に、「積層柱」が形成されている領域に対する紫外線の照射量に比べて、その他の領域に対する紫外線の照射量を少ないものとして、「感光性樹脂組成物」を硬化する工程ということができる。
また、「感光性樹脂組成物」を露光する時の紫外線の照射量は露光量ということができる。
以上(ア)ないし(ウ)、並びに上記カ(ア)とウ(イ)より、引用発明は、「紫外線照射工程」を具備する点において、本願発明の「前記塗布された光硬化性樹脂を露光するにあたり、前記凸状柱が形成されている領域に対する露光量と比べて、その他の領域に対する露光量が少なくなるように露光することにより、前記光硬化性樹脂を硬化せしめる露光工程」に相当する構成を具備するといえる。

ク 洗浄工程
(ア) 引用発明の「アルカリ現像工程」は、「紫外線照射工程」の後に、「アルカリ現像し、塗膜の未硬化部分のみを除去」するものである。
引用発明の「アルカリ現像工程」における「塗膜の未硬化部分」は、「紫外線照射工程」後の未硬化の「感光性樹脂」である。
また、引用発明の「アルカリ現像工程」において、「アルカリ現像」により、塗膜の未硬化部分のみを除去」することは、「塗膜の未硬化部分」を洗浄しているということができる。

(イ) 上記(ア)とカ(ア)より、引用発明は、「アルカリ現像工程」を具備する点において、本願発明の「未硬化の光硬化性樹脂を洗浄する洗浄工程」に相当する構成を具備するといえる。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明と引用発明は、次の構成で一致する。

「透明基板と、当該透明基板上に形成された画素部分と、前記画素部分の周囲に形成された非画素エリアと、を有し、前記画素部分の少なくとも一箇所以上に着色層が形成されており、前記非画素エリアの少なくとも一箇所以上に凸状柱が形成されており、前記凸状柱を含め前記非画素エリアおよび前記画素部分を覆うようにオーバーコート層が形成されてなる有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタの製造方法であって、
前記凸状柱を含め前記非画素エリアおよび前記画素部分を覆う領域に光硬化性樹脂を塗布する工程と、
前記塗布された光硬化性樹脂を露光するにあたり、前記凸状柱が形成されている領域に対する露光量と比べて、その他の領域に対する露光量が少なくなるように露光することにより、前記光硬化性樹脂を硬化せしめる露光工程と、
未硬化の光硬化性樹脂を洗浄する洗浄工程と、
を含む、
カラーフィルタの製造方法。」

イ 相違点
本願発明と引用発明は、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明の「カラーフィルタの製造方法」は、「有機エレクトロルミネッセンス表示装置用」であるのに対して、
引用発明の「カラーフィルタの製造方法」は、「液晶表示装置用」である点。

(相違点2)
本願発明は、さらに、「前記各工程により形成された、前記凸状柱上のオーバーコート層にメタル補助電極を形成する工程」を含むものであるのに対して、
引用発明は、さらに、「前記各工程により形成された、前記凸状柱上のオーバーコート層にメタル補助電極を形成する工程」を含むものであるのかどうか明らかでない点。

(3) 判断
上記(相違点1)及び(相違点2)について検討する。
ア 液晶表示装置用のカラーフィルタの構造やその製造方法を、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用のカラーフィルタの構造やその製造方法としても採用できることは、本件出願時に周知の技術的事項である(以下、「周知技術1」という。例えば、引用例2の段落【0062】、【0143】等を参照。)。
また、引用発明の【発明が解決しようとする課題】(段落【0007】)、【発明の効果】(段落【0010】)に記載されている、「十分な高さを持ったスペーサ及びオーバーコート層を同時に形成することができ、かつ表示品位に優れたカラーフィルタの製法方法を提供する」という課題や、「十分なセルギャップを得ることができ、かつ、表示品位の低下が少なく、さらに生産性に優れたカラーフィルタ基板の製造方法を提供する」という効果は、液晶表示装置用のカラーフィルタの製造方法に限られず、スペーサを有する同様な構造の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用のカラーフィルタ基板の製造に際しても、解決されることが望まれる課題、望まれる効果であることは、引用例1に接した当業者にとって明らかなことである。

イ 加えて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、駆動時の電圧降下を防ぐために、補助電極を形成して、補助電極と画素を駆動する高抵抗な透明電極とを電気的に接続することは、本件出願時に周知の技術的事項である(以下、「周知技術2」という。)。
例えば、引用例3(請求項13、【0011】?【0014】、【0032】?【0038】、図2等参照。)には、間隔を保持する凸部を有する封止板と、光透過性の上部電極及びエレクトロルミネッセンス発光層とを有する基板とを封着する有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、スパッタリング等により、間隔を保持する凸部の上にアルミ等の金属材料を用いて低抵抗な金属補助電極を形成して、金属補助電極と基板上の光透過性の上部電極とを電気的に接続することが記載されている。

ウ そうしてみると、上記周知技術1に基づき、引用発明の「カラーフィルタの製造方法」を、「有機エレクトロルミネッセンス表示装置」に採用して、上記(相違点1)に係る本願発明の構成とするとともに、上記周知技術2に基づき、駆動時の電圧降下を防ぐために、引用発明に、引用例3に記載された、間隔を保持する凸部の上にアルミ等の金属材料を用いて低抵抗な金属補助電極を形成する技術を採用して、引用発明において、間隔を保持する凸部に対応する、「積層柱」(凸状柱)と「積層柱頭頂部」と積層柱頭頂部と連続して積層柱を覆う「オーバーコート層」部分とから形成される凸部の上に金属補助電極を形成する工程、すなわち、凸状柱上のオーバーコート層にメタル補助電極を形成する工程をさらに備えた構成として、上記(相違点2)に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

エ 本願発明の効果及び請求人の主張
(ア) 請求人は、平成29年9月19日提出の意見書の「(3)進歩性欠如の拒絶理由について」の「(a)本発明について」において、本願発明の作用・効果として、「(特徴1) 凸状柱を含め前記非画素エリアおよび前記画素部分を覆う領域に光硬化性樹脂を塗布する工程と、前記塗布された光硬化性樹脂を露光するにあたり、前記凸状柱が形成されている領域に対する露光量と比べて、その他の領域に対する露光量が少なくなるように露光することにより、前記光硬化性樹脂を硬化せしめる露光工程と、未硬化の光硬化性樹脂を洗浄する洗浄工程と、によって、オーバーコート層を形成する点」、「(特徴2) 前記(特徴1)の各工程によって形成されたオーバーコート層上であって、特に凸状柱上のオーバーコート層にメタル補助電極を形成する工程を行う点」を有することにより、「前記(特徴1)、つまりそれぞれ所定の、塗布工程、露光工程、および洗浄工程によってオーバーコート層が形成されるため、凸状柱の高さを所望の高さに維持しつつ、当該オーバーコート層を形成することが可能となります。より具体的には、凸状柱およびオーバーコート層を有する有機EL表示装置用カラーフィルタを製造するにあたり、オーバーコート層を形成するための光硬化性樹脂を一様に塗布しつつ、これを硬化するための露光工程においては、一様に露光するのではなく、凸状柱が形成されている領域に対する露光量と比べて、その他の領域に対する露光量が少なくなるように露光するので、当該その他の領域における光硬化性樹脂は完全に硬化されることがなく、その後の洗浄工程において未硬化の樹脂が除去されることとなり、その結果、当該その他の領域におけるオーバーコート層は、塗布された状態よりも薄く形成されるので、当該部分のオーバーコート層表面と凸状柱の頂部とのギャップ、つまり凸状柱の高さを所望の高さに担保することが可能となります。」、「また、本発明にあっては、前記(特徴1)に加え前記(特徴2)、つまり前記(特徴1)の各工程によって形成されたオーバーコート層上であって、特に凸状柱上のオーバーコート層にメタル補助電極を形成する工程を行うことにより、当該凸状柱上のオーバーコート層に形成されたメタル補助電極によって、電圧降下を防ぐことも可能となります。」、「さらに、本発明によれば、前記(特徴1)と(特徴2)の相乗効果、つまり凸状柱を形成した後、当該凸状柱を含めてオーバーコート層を形成し、さらにその後にメタル補助電極を形成するので、オーバーコート層によって凸状柱の形状を所望の形状に整えることが可能となり、よって当該凸状柱の頂部や側部などにメタル補助電極を形成しても、当該メタル補助電極が断線することを回避することが可能となります。」旨主張している。

(イ) また、請求人は、同意見書の 「(3)進歩性欠如の拒絶理由について」の「(b)引用文献との対比」において、「引用文献1には、液晶表示装置においてセルギャップを調整することについての開示があるのみです。」、「これら引用文献1や引用文献2には、本願発明の前記(特徴2)および当該(特徴2)による作用効果、つまり「オーバーコート層によって凸状柱の形状を所望の形状に整えることができ、さらに凸状柱上のオーバーコート層にメタル補助電極を設けても、これが断線する虞がないこと」について、何らの開示も示唆もされておりません。」、「本願発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置においてカラーフィルタ基板の凸状柱上にメタル補助電極を形成し、有機EL素子側基板と導通することによって、カラーフィルタ側に電流を逃すものです。本願明細書の(0031)段落に記載のように、導通用のメタル補助電極を蒸着法やスパッタリング等で形成した場合、凸状柱の角部等にメタル補助電極が形成されず断線する虞があったものを、凸状柱上にオーバーコート層を設けることで、その形状を調整した上で、当該凸状柱上のオーバーコート層にメタル補助電極を形成することによって、断線の課題を解決したものです。」、「前記の通り、引用文献1には、液晶表示装置のセルギャップ(オーバーコート層の厚み)を調整することが開示されているものの、ここで開示されているオーバーコート層は、液晶を制御する電極を形成する際に着色層にダメージをあたえないようにすることを目的としたものであって、必ずしも有機エレクトロルミネッセンス表示装置に適用することを想定しているのではありません。」、「さらに、本願発明が解決しようとする断線の課題については、引用文献3の(0037)段落などに記載されておりますが、当該引用文献3に開示されている有機エレクトロルミネッセンス装置における凸部は、その形状がテーパーとなっているのみであり、この記載を引用文献1と組み合わせて本願発明が容易になし得るとは言えないと思料します。」旨主張している。

(ウ) しかしながら、上記(3)アないしウに示したとおり、引用発明、引用例3に記載された技術、周知技術1,2に基づいて、本願発明の構成とすることが、当業者であれば容易になし得たことであるから、上記(イ)の請求人の主張を採用することはできない。

(エ) また、上記(ア)の(特徴1)による上記の作用・効果については、引用例1(例えば、段落【0008】?【0010】、【0013】、【0016】)、【0093】等)に記載されているように、引用発明も有しているものである。
また、上記(ア)の(特徴2)による上記の作用・効果及び(特徴1)と(特徴2)の請求人が相乗効果とするところの効果については、引用例1、引用例3の記載及び周知技術1,2から、当業者にとって自明な、あるいは当業者が予測し得たことであるから、格別のものとは認められない。
すなわち、(特徴1)と(特徴2)の相乗効果である「凸状柱を形成した後、当該凸状柱を含めてオーバーコート層を形成し、さらにその後にメタル補助電極を形成するので、オーバーコート層によって凸状柱の形状を所望の形状に整えることが可能となり、よって当該凸状柱の頂部や側部などにメタル補助電極を形成しても、当該メタル補助電極が断線することを回避することが可能とな」るという作用・効果に関し、請求項1においては、塗布された光硬化性樹脂の露光量を、凸状柱が形成されている領域に対する露光量と比べて、その他の領域に対する露光量が少なくなるようにすることしか記載されていないところ、露光量に関して同じ条件を有する引用発明においても、オーバーコート層によって凸状柱は同じ形状となることから、凸状柱上のオーバーコート層に金属補助電極を形成した構成とした際に同じ作用・効果が当然奏されることとなる。
また、表面の凹凸を無くすために設けられるオーバーコート層が平坦化作用を有するものであることが技術常識であり(例えば、引用例1の段落【0005】欄の「オーバーコート層の平坦化能力」等参照。)、凸状柱上に形成されたオーバーコート層は、その表面が平坦なものとなること、あるいは、その形状がなだらかなものとなること、また、その結果、凸状柱上のオーバーコート層に形成した金属補助電極が断線しにくくなることは、当業者が予測し得たことである(例えば、引用例1の図1(c)の「スペーサ(9)」が、図1(a)の「積層柱(4)」と比較して、より平坦、あるいは、なだらかな形状となっていることが把握できる。また、引用例3の段落【0022】あるいは【0037】には、間隔を保持する凸部の断面形状がテーパーを有するなだらかな台形であると、その上に形成される電極が断線しないようにできることが記載・示唆されている。)。
よって、上記(ア)の請求人の主張を採用することはできない。

3 小括
よって、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用例1に記載された発明、引用例3に記載された技術及び周知技術1,2に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。

第3 まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-01-17 
結審通知日 2018-01-23 
審決日 2018-02-05 
出願番号 特願2012-83129(P2012-83129)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 素川 慎司辻本 寛司  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 河原 正
中田 誠
発明の名称 有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタの製造方法  
代理人 特許業務法人 インテクト国際特許事務所  
代理人 石橋 良規  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ