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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02C
管理番号 1338891
審判番号 不服2017-7720  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-30 
確定日 2018-04-17 
事件の表示 特願2015-520507「多重状態電気活性眼用装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年1月3日国際公開,WO2014/004839,平成27年 8月27日国内公表,特表2015-524938,請求項の数(20)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2015-520507号(以下「本件出願」という。)は,特許協力条約8条(1)による優先権(2012年6月29日 米国)を主張する申立を伴い2013年(平成25年)6月27日の国際出願日が認められた国際出願(PCT/US2013/048200号)が,特許法184条の3第1項の規定により,その国際出願日(同条約8条(2)が準用するパリ条約による優先権 2012年6月29日 米国)にされた特許出願とみなされたものであって,その手続等の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成28年 8月18日付け:拒絶理由通知書
平成29年 1月10日付け:意見書
平成29年 1月10日付け:手続補正書
平成29年 1月26日付け:拒絶査定
平成29年 5月30日付け:審判請求書
平成29年 5月30日付け:誤訳訂正書
平成29年 5月30日付け:手続補正書
(この手続補正書による補正を,以下「本件補正」という。)

2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は,概略,本件補正前の請求項1-請求項20に係る発明は,その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明([1]引用例1に記載された発明,又は[2]引用例2に記載された発明及び周知技術)に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用例1:特表2007-531042号公報
引用例2:特表2007-531038号公報
引用例3:特表2007-526517号公報(周知技術を示す文献)

3 本願発明
本件出願の請求項1-請求項20に係る発明は,それぞれ本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1-請求項20に記載された事項により特定される発明であるところ,その請求項1に係る発明は,次のものである(以下「本願発明1」という。)。
「【請求項1】
可変焦点眼用装置であって,
前方湾曲上部光学表面と前方湾曲底部光学表面とを含む前記可変焦点眼用装置の前方湾曲光学部と,
後方湾曲上部光学表面と後方湾曲底部光学表面とを含む前記可変焦点眼用装置の後方湾曲光学部と,
前記可変焦点眼用装置の前記前方湾曲光学部の前記前方湾曲底部光学表面と前記可変焦点眼用装置の前記後方湾曲光学部の前記後方湾曲上部光学表面とによって形成された空洞と,
第1の屈折率を有する流体と,前記第1の屈折率を有する前記流体の少なくとも一部と接触し,電界を確立し得る電極を覆う誘電性フィルムと,
第2の屈折率を有するガスであって,前記第1の屈折率と前記第2の屈折率は異なる,ガスと,
1つ又は複数の壁によって前記形成された空洞から分離され,前記壁の間を通る1つまたは複数の流路を介して前記形成された空洞と流体接続されている貯留部とを含み,
前記貯留部が,1つ又は複数の貯留領域であって,前記流路を通じて前記貯留部と前記空洞の間に流体を流させ,前記空洞内の材料を前記流体と前記ガスの間で交換するための流体の収容に利用できる前記貯留領域の内部容積を変更するように動作可能である前記貯留領域を含み,前記交換後は,前記ガスと前記流体の一方のみが前記空洞中に存在する,
可変焦点眼用装置。」

なお,請求項2-請求項20に係る発明は,いずれも,本願発明1に対してさらに他の発明特定事項を付加した可変焦点眼用装置の発明(本願発明1を減縮した発明)である。

第2 当合議体の判断
1 引用例1について
(1) 引用例1の記載
原査定の拒絶の理由において引用され,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である前記引用例1には,以下の記載がある(下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定に活用した箇所を示す。)。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
その光活性部分を通過する放射線のビームを制御し得る切替可能な光ユニットであり,
室と,該室内に収容され且つその周囲の屈折率と異なる屈折率を有する導電性の液体とを含み,前記室は,電極構造を備え,電圧制御システムから前記電極への電圧の印加が,前記液体の移動を引き起こす切替可能な光ユニットであって,
前記電極構造は,前記光活性部分の位置で前記室の内壁に取り付けられた一対の第一中央電極と,前記光活性部分の外側の位置で前記室の内壁に取り付けられた第二電極手段と,前記伝導性液体と接触し,且つ,電圧源の第一出力に連続的に接続される第三電極とを含み,
前記電圧源の第二出力は,第一モードにおいて,前記第一電極の少なくとも1つに接続され,第二モードにおいて,第二電極手段に接続されることを特徴とする切替可能な光ユニット。
…(省略)…
【請求項3】
前記液体に面する前記室の内壁は,絶縁疎水性層で被覆されることを特徴とする,請求項1又は2に記載の切替可能な光ユニット。
【請求項4】
前記室は,前記伝導性液体の屈折率と異なる屈折率を有する媒体を含むことを特徴とする,請求項1,2,又は,3に記載の切替可能な光ユニット。
…(省略)…
【請求項6】
前記媒体はガスであることを特徴とする,請求項4に記載の切替可能な光ユニット
…(省略)…
【請求項8】
前記光活性部分内に位置する少なくとも1つの室壁が屈折レンズ表面によって構成されることを特徴とする少なくとも1つのレンズ素子を含むことを特徴とする,請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の切替可能な光ユニット。
【請求項9】
前記光活性部分内に位置する2つの対向する室壁のそれぞれが,屈折レンズ表面によって構成されることを特徴とする,請求項8に記載の切替可能な光ユニット。」

イ 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,室と,室内に含まれ且つその周囲の屈折率と異なる屈折率を有する導電性液体とを含み,室は電極構造を備え,電極制御システムから電極への電圧の印加は,前記液体の移動を引き起こす,その光活性部分を通過する放射線ビームを制御し得る切替可能な光ユニットに関する。
【0002】
本発明は,そのような切替可能な光ユニットを含む,カメラシステム,及び,光記録担体を走査するための光ヘッドにも関する。
【背景技術】
…(省略)…
【0006】
光学装置の多数の用途では,特定範囲に亘って焦点距離を変えることは不要であり,2つの値の間,例えば,テレ(Tele)構造又はモードとマクロモードとの間で焦点距離を切り替えることで十分である。そのような用途のために,異なる屈折率を有する2つの液体で充填された液体室を含む装置を使用することができ,液体室内では,液体は,エレクトロウェッテイングによって,装置の光活性部分,即ち,放射線ビームが通過する部分に出たり入ったり切り替えられる。他の液体を液体室内に移動し得るよう,液体の1つを液体室の一端から液体室の他端に運搬するために,これは液体循環系を必要とする。そのような循環系は比較的複雑なシステムであり,追加的な空間を必要とし,そのような循環系を含む光学系は小型の消費者向け装置に適さない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
簡単且つコンパクトな構造を有し,比較的低電圧で駆動可能であり,且つ,新しい用途を切り開く,冒頭段落に定められるような切替可能な光ユニットを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
…(省略)…
【0011】
第一液体及び第二液体を光活性ゾーン内で交互に移動することによってその光パワーを2つの値の間で切り替え得るレンズ系は,米国特許第4,477,158号からそれ自体既知である。しかしながら,このレンズ系において,液体は,メガネレンズ又はコンタクトレンズの一部を形成し得るレンズ系を傾斜することによって移動され,そのような動作を実現するために,とりわけメガネの耳当てにおける液体通路の複雑化された構造が必要とされる。」

ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1a及び1bは,本発明に従った装置がレンズ系1内に一体化された実施態様を示している。」
(当合議体注:図1a及び図1bは以下の図である。)
図1a:


図1b:


エ 「【0044】
図1aに示されるようなユニットの第一の離散的な状態では,適切な値の電圧Vが第一電極20,22及び共通の第三電極のそれぞれに亘って印加されるよう,スイッチ40は電圧源の第二出力を一対の第一電極20,22に接続している。印加された電圧Vは,切替可能ユニットが第一状態を採用するよう,エレクトロウェッティング力をもたらし,第一状態では,極性液体18は,第一電極20及び22の間の空間,即ち,光活性部分を充填するよう移動する。
…(省略)…
【0045】
第一離散状態から第二離散状態に切り換えるために,適切な値の電圧,例えば,Vが,第二電極手段24及び共通第三電極28に亘って印加されるのに対し,第一電極20,22に電圧が印加されないよう,スイッチ36は電圧源の第二出力34に移動され,スイッチ40は接地電極41に移動される。
【0046】
切替可能な光ユニットは,今や,第二電極手段に印加される電圧によってもたらされるエレクトロウェッティング力の結果として,第一液体18が第二電極手段24間の液体室空間を満たす第二離散状態にある。
…(省略)…
【0047】
レンズ系1の光活性部分に出入りする極性液体の動作は,2つの屈折表面12及び14間の空間内の屈折率が2つの値の間で切り替わることを意味する。この屈折率は,屈折表面の曲率と共に,屈折表面12,14及び液体室によって形成されるレンズサブシステムの光パワーを決定するので,第一電極対から第二電極手段へ或いはこの逆に電圧を切り替えることによって,このレンズサブシステム,故に,レンズ系全体の光パワーを2つの値の間で切り替え得る。」

オ 「【0100】
上記された用途に加えて,屈折性であれ,回折性であれ,これらの組み合わせであれ,概ね全ての光学系に本発明を用いることができ,そのような光学系の能力を拡張するためには,光挙動,例えば,光パワーの切替が必要とされる。一般的には,これらの素子を2つ又はそれよりも多くの離散的状態に切り替え得るならば設計し且つ製造し得る光学系に本発明を用い得る。」

(2) 引用例1発明
引用例1には,請求項1,請求項3,請求項4,請求項6及び請求項8に記載された発明特定事項を具備する請求項9に係る発明として,以下の発明が記載されている(以下「引用例1発明」という。)。
「 その光活性部分を通過する放射線のビームを制御し得る切替可能な光ユニットであり,
室と,該室内に収容され且つその周囲の屈折率と異なる屈折率を有する導電性の液体とを含み,前記室は,電極構造を備え,電圧制御システムから前記電極への電圧の印加が,前記液体の移動を引き起こす切替可能な光ユニットであって,
前記電極構造は,前記光活性部分の位置で前記室の内壁に取り付けられた一対の第一中央電極と,前記光活性部分の外側の位置で前記室の内壁に取り付けられた第二電極手段と,前記伝導性液体と接触し,且つ,電圧源の第一出力に連続的に接続される第三電極とを含み,
前記電圧源の第二出力は,第一モードにおいて,前記第一電極の少なくとも1つに接続され,第二モードにおいて,第二電極手段に接続され,
前記液体に面する前記室の内壁は,絶縁疎水性層で被覆され,
前記室は,前記伝導性液体の屈折率と異なる屈折率を有する媒体を含み,
前記媒体はガスであり,
前記光活性部分内に位置する室壁が屈折レンズ表面によって構成されるレンズ素子を含み,
前記光活性部分内に位置する2つの対向する室壁のそれぞれが,屈折レンズ表面によって構成される,
切替可能な光ユニット。」

2 引用例2について
(1) 引用例2の記載
原査定の拒絶の理由において引用され,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である前記引用例2には,以下の記載がある(下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定に活用した箇所を示す。)。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別に調整可能な集束レンズであって,
光路を定形し,該光路に沿って配置された少なくとも一つのレンズ面を有するレンズチャンバと,
該レンズチャンバと流体的に連通された貯蔵チャンバであって,前記レンズチャンバとともに,密閉システムを形成する貯蔵チャンバと,
前記両チャンバ内に含まれ,第1の屈折率を有する第1の流体,および前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の流体を有する流体システムであって,さらに,前記流体は,非混和性であり,電場に対して異なる引力を示すところの流体システムと,
電極を有し,静電力によって,第1の個別の状態と第2の個別の状態の間で,前記流体システムを再配置するように作動する流体システムスイッチと,
を有し,
前記第1の個別の状態では,前記第1の流体によって,前記少なくとも一つのレンズ面が実質的に被覆され,前記第2の個別の状態では,前記第2の流体によって,前記少なくとも一つのレンズ面が実質的に被覆されるところの個別に調整可能な集束レンズ。
【請求項2】
前記密閉システムは,前記第1および第2の流体に対する濡れ性が異なる内表面を有することを特徴とする請求項1に記載のレンズ。
…(省略)…
【請求項4】
前記レンズチャンバは,前記光路に沿って配置された2つのレンズ面を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のレンズ。」

イ 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,個別に調整可能なレンズに関し,特に,カメラレンズ配置内のマクロレンズとしての使用に適したレンズに関する。
…(省略)…
【背景技術】
…(省略)…
【0003】
またカメラは,固定焦点を有するレンズを担持する場合もある。そのようなレンズは,通常,70cmの距離に最適焦点を有しており,他の距離では,像の鮮明度が低下する。
…(省略)…
【0004】
接近した対象への焦点化を容易にするため,レンズシステムは,マクロレンズに固定される。マクロレンズは,必要な際に追加される別の付属品であっても良く,あるいは,マクロレンズは,ミクロ状態(すなわち,通常の動作)とマクロ状態(すなわち,接写動作)の間で,切り替えることが可能な常設レンズであっても良い。
…(省略)…
【0005】
出願人による最近の研究開発によって,従来のレンズは,国際公開第2003/069380号に見られるような,いわゆるエレクトロウェッティングレンズに代替し得ることが示されている。
…(省略)…
【0006】
…(省略)…そのようなレンズは,極めて多目的に使用できるため,現在,各種用途に対して注目されている。このレンズは,低コストで製作することが可能であり,可動部分を有さず,小型設計が可能になるという利点を有する。
【0007】
…(省略)…しかしながら,この設計には,いくつかの問題が生じる。特に,十分に長期にわたって,メニスカスの形状を正確に制御し,維持することは難しく,特に,レンズが異なる状態間で,繰り返し切り替えられる場合,これは難しくなる。また,前述のように,通常の場合,マクロレンズの使用により,像収差が増大する。
…(省略)…
【0008】
このように,マクロレンズでの使用に適し,小型,低コストで,余分な像収差の発生を抑え,正確に制御することの可能な,改善されたレンズに対する要求がある。
…(省略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この目的のため,本発明では,特許請求の範囲に記載のレンズが提供される。また本発明では,そのようなレンズを有する光学レンズスタックおよびカメラ配置が提供される。」

ウ 「【課題を解決するための手段】
【0010】
従って,本発明では,2つの異なる状態間を,個別に切り替えることの可能なレンズが提供される。各状態は,簡単に異なる光出力を提供する(例えば,第1の状態は,ミクロ状態に対応し,第2の状態は,マクロ状態に対応するなど)。
…(省略)…
【0019】
2つの流体に利用できる多くの異なる選択肢がある。液体,気体および蒸気は,多くの異なる方法で組み合わせることができる。重要な特徴は,これらの流体が異なる屈折率を有し,相互に非混和性であり,電場に対して異なる挙動を示すことである。また,流体は,実質的に透明である必要があることは明らかである。
…(省略)…
【0021】
前述の個別に調整可能な集束レンズは,多くの用途に使用できる。しかしながら,カメラレンズ配置に使用されるマクロレンズは,特に有意である。
…(省略)…
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下,添付図面を参照して,本発明の実施例の詳細な説明を示す。」
(当合議体注:添付図面のうち,図1及び図2は以下の図である。)
図1:


図2:


エ 「【0034】
切り替え可能レンズの第1の個別の状態では,図1に示すように,第1の流体120は,レンズチャンバ101と,貯蔵チャンバ104の一部に,実質的に充填される。
…(省略)…
【0036】
…(省略)…切り替え可能なレンズの第2の個別の状態では,図2に示すように,第1の流体120が,貯蔵チャンバ104に実質的に充填される。
…(省略)…
【0037】
第1,第2および第3の電極108,112および130は,エレクトロウェッティング電極配置を構成し,これらの電極配置は,電圧制御システム(図示されていない)とともに,流体システムスイッチを形成する。
…(省略)…
【0038】
レンズの第1の個別の状態では,第1のエレクトロウェッティング電極108と共通の第3の電極130の間に,適切な値の印加電圧V1が印加される。印加電圧V1は,エレクトロウェッティング力を提供し,これにより,本発明の切り替え可能なレンズは,第1の個別の状態を取るようになり,導電性の第1の流体120は,レンズチャンバ101に実質的に充填されるように移動する。
…(省略)…
【0040】
切り替え可能レンズの第1の個別の状態と第2の個別の状態間を切り替えるため,流体システムスイッチの電圧制御システムは,印加電圧V1をオフにし,第2のエレクトロウェッティング電極112と,共通の第3の電極130の間に,適切な値の第2の電圧V2を印加する。
…(省略)…
【0041】
次に,切り替え可能レンズが,第2の個別の状態にある場合,印加電圧V2によって提供されるエレクトロウェッティング力によって,第1の流体120は,貯蔵チャンバ104に実質的に充填される。
…(省略)…
【0042】
流体システムスイッチによって制御される,レンズの第1および第2の個別の状態間の遷移の間,流体システムの第1および第2の流体120,121は,流体システムを通り循環的に流れ,各流体が相互に置換される。この循環的な流体の流れでは,第1から第2の個別の状態の遷移の間,第1の流体は,レンズチャンバ101を通過し,レンズチャンバ101の一つの開口102を介して,貯蔵チャンバ104の一つの端部に入り,第2の流体121は,レンズチャンバ101の他の開口103を介して,レンズチャンバ101に入る。第2の個別の状態から第1の個別の状態への遷移の間,流体の流れに反対の循環が生じる。
…(省略)…
【0051】
このように,本発明では,個別に調整可能なレンズ100,300,604が提供され,これらのレンズは,静電的な力またはエレクトロウェッティング力によって制御することができる。レンズは,高精度に再現することができ,自由に設計することが可能な2つのレンズ状態を有し,これらの状態は,2つの流体120,121の一方と,少なくとも一つのレンズ面105,155の間の界面によって定められる。静電的な力またはエレクトロウェッティング力による流体の位置の移動によって,レンズ状態間の切り替えが可能となる。レンズは,例えば,カメラレンズ配置に,選択肢としてのマクロレンズを提供する。」

(2) 引用例2発明
引用例2には,請求項1及び請求項2に記載された発明特定事項を具備する請求項4に係る発明として,以下の発明が記載されている(以下「引用例2発明」という。)。
「 個別に調整可能な集束レンズであって,
光路を定形し,該光路に沿って配置された少なくとも一つのレンズ面を有するレンズチャンバと,
該レンズチャンバと流体的に連通された貯蔵チャンバであって,前記レンズチャンバとともに,密閉システムを形成する貯蔵チャンバと,
前記両チャンバ内に含まれ,第1の屈折率を有する第1の流体,および前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の流体を有する流体システムであって,さらに,前記流体は,非混和性であり,電場に対して異なる引力を示すところの流体システムと,
電極を有し,静電力によって,第1の個別の状態と第2の個別の状態の間で,前記流体システムを再配置するように作動する流体システムスイッチと,
を有し,
前記第1の個別の状態では,前記第1の流体によって,前記少なくとも一つのレンズ面が実質的に被覆され,前記第2の個別の状態では,前記第2の流体によって,前記少なくとも一つのレンズ面が実質的に被覆され,
前記密閉システムは,前記第1および第2の流体に対する濡れ性が異なる内表面を有し,
前記レンズチャンバは,前記光路に沿って配置された2つのレンズ面を有する,
個別に調整可能な集束レンズ。」

3 引用例3について
原査定の拒絶の理由において引用され,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である前記引用例3には,以下の記載がある。
「【0033】
図1から3は,本発明の実施形態と一致した可変焦点レンズ2を示す。図1,2及び3は,それぞれ,凸状の,平面の,及び凹状の曲率を有するレンズ2の流体のメニスカス4を,それぞれ,示す。この実施形態においては,可変焦点レンズ2は,(示唆されない)ヒトの目の外部の表面における配置のためのコンタクトレンズ2の形態にある。」
(当合議体注:図1-図3は以下の図である。)
図1:


図2:


図3:


4 引用例1発明との対比及び判断
(1) 対比
本願発明1と引用例1発明を対比すると,以下のとおりである。
ア 可変焦点眼用装置
引用例1発明は,「切替可能な光ユニット」を具備する。ここで,引用例1発明において,切り替えにより可変とされているものは,技術的にみて,焦点距離である(引用例1の【0006】及び【0047】からも確認できる事項である。)。
そうしてみると,引用例1発明の「切替可能な光ユニット」と本願発明1の「可変焦点眼用装置」は,「可変焦点」「装置」の点で共通する。
(当合議体注:以下,括弧の頻出を回避するため,「可変焦点装置」というように,間の括弧を省いて表記する。他の用語についても同様とする。)

イ 前方湾曲光学部,後方湾曲光学部,空洞
引用例1発明は,「前記光活性部分内に位置する室壁が屈折レンズ表面によって構成されるレンズ素子を含み」,「前記光活性部分内に位置する2つの対向する室壁のそれぞれが,屈折レンズ表面によって構成される」という構成を具備する。したがって,引用例1発明の「切替可能な光ユニット」は,光学的にみて,物体側の室壁を構成する「物体側レンズ素子」と,像側の室壁を構成する「像側レンズ素子」という,2つの光学部を具備する。そして,本願発明1において「前方」及び「後方」と称される方向,並びに,「上部」及び「底部」と称される部分は,光学系でいえば「物体側の方向」及び「像側の方向」,並びに,「物体側の部分」及び「像側の部分」である。
そうしてみると,引用例1発明の「物体側レンズ素子」,「像側レンズ素子」と本願発明1の「前方湾曲光学部」及び「後方湾曲光学部」は,それぞれ「前方光学部」及び「後方光学部」の点で共通する。また,引用例1発明の「物体側レンズ素子の物体側の屈折レンズ表面」,「物体側レンズ素子の像側の屈折レンズ表面」,「像側レンズ素子の物体側の屈折レンズ表面」及び「像側レンズ素子の像側の屈折レンズ表面」と本願発明1の「前方湾曲上部光学表面」,「前方湾曲底部光学表面」,「後方湾曲上部光学表面」及び「後方湾曲底部光学表面」は,それぞれ「前方上部光学表面」,「前方底部光学表面」,「後方上部光学表面」及び「後方底部光学表面」の点で共通する。
したがって,引用例1発明の「物体側レンズ素子」は,本願発明1の「前方湾曲上部光学表面と前方湾曲底部光学表面とを含む前記可変焦点眼用装置の前方湾曲光学部」という構成のうち,「前方上部光学表面と前方底部光学表面とを含む前記可変焦点装置の前方光学部」という要件を満たす。また,引用例1発明の「像側レンズ素子」も同様に,「後方上部光学表面と後方底部光学表面とを含む前記可変焦点装置の後方光学部」という要件を満たす。
加えて,引用例1発明は「室」を具備するところ,この「室」は,その文言の意味,並びに,「物体側レンズ素子」及び「像側レンズ素子」との位置関係からみて,本願発明1の「空洞」に対応する部分を,光活性部分の位置に有する。そして「前記可変焦点装置の前記前方光学部の前記前方底部光学表面と前記可変焦点装置の前記後方光学部の前記後方上部光学表面とによって形成された」という点において,本願発明1の「空洞」が具備する要件の一部を満たす。

ウ 流体,誘電性フィルム
引用例1発明は,「該室内に収容され且つその周囲の屈折率と異なる屈折率を有する導電性の液体」及び「電極構造を備え,電圧制御システムから前記電極への電圧の印加が,前記液体の移動を引き起こす」とともに,「前記電極構造は,前記光活性部分の位置で前記室の内壁に取り付けられた一対の第一中央電極」を具備する。また,引用例1発明は,「前記液体に面する前記室の内壁は,絶縁疎水性層で被覆され」という構成を具備する。
ここで,「液体」は「流体」の一種である。また,引用例1発明の「絶縁疎水性層」は,その文言のとおり絶縁性の層であるから,導電性よりも誘電性を示す膜状のもの,すなわち誘電性フィルムということができる。加えて,引用例1発明の「電極」はその機能からみて,電界を確立し得るものであり,引用例1発明の「絶縁疎水性層」は,その位置関係からみて,液体と接触しているとともに,第一中央電極を覆っている。
そうしてみると,引用例1発明の「その周囲の屈折率と異なる屈折率」,「液体」,「第一中央電極」及び「絶縁疎水性層」は,それぞれ本願発明1の「第1の屈折率」,「流体」,「電極」及び「誘電性フィルム」に相当する。また,引用例1発明の「液体」,「第一中央電極」及び「絶縁疎水性層」は,本願発明1の「流体」,「電極」及び「誘電性フィルム」における,「第1の屈折率を有する」,「電界を確立し得る」及び「前記第1の屈折率を有する前記流体の少なくとも一部と接触し,電界を確立し得る電極を覆う」という要件を満たす。

エ ガス
引用例1発明は,「前記室は,前記伝導性液体の屈折率と異なる屈折率を有する媒体を含み」,「前記媒体はガスであり」という構成を具備する。
そうしてみると,引用例1発明の「媒体」は,本願発明1の「ガス」に相当するとともに,「第2の屈折率を有するガスであって,前記第1の屈折率と前記第2の屈折率は異なる」という要件を満たす。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明1と引用例1発明は,次の構成で一致する。
「 可変焦点装置であって,
前方上部光学表面と前方底部光学表面とを含む前記可変焦点装置の前方光学部と,
後方上部光学表面と後方底部光学表面とを含む前記可変焦点装置の後方光学部と,
前記可変焦点装置の前記前方光学部の前記前方底部光学表面と前記可変焦点装置の前記後方光学部の前記後方上部光学表面とによって形成された空洞と,
第1の屈折率を有する流体と,前記第1の屈折率を有する前記流体の少なくとも一部と接触し,電界を確立し得る電極を覆う誘電性フィルムと,
第2の屈折率を有するガスであって,前記第1の屈折率と前記第2の屈折率は異なる,ガスとを含む,
可変焦点装置。」

イ 相違点
本願発明1と引用例1発明は,以下の点で相違する。
(相違点1A)
本願発明1は,「可変焦点眼用装置であって」,「前方湾曲上部光学表面と前方湾曲底部光学表面とを含む前記可変焦点眼用装置の前方湾曲光学部と」,「後方湾曲上部光学表面と後方湾曲底部光学表面とを含む前記可変焦点眼用装置の後方湾曲光学部と」,「前記可変焦点眼用装置の前記前方湾曲光学部の前記前方湾曲底部光学表面と前記可変焦点眼用装置の前記後方湾曲光学部の前記後方湾曲上部光学表面とによって形成された空洞」という構成を具備するのに対して,引用例1発明の「切替可能な光ユニット」は「眼用」とは特定されないものであり,また,引用例1発明の「レンズ素子」は,「屈折レンズ」ではあるが「湾曲」と表現しうる形状のものとは特定されていない点。

(相違点1B)
本願発明1の「可変焦点眼用装置」は,「1つ又は複数の壁によって前記形成された空洞から分離され,前記壁の間を通る1つまたは複数の流路を介して前記形成された空洞と流体接続されている貯留部とを含み」,「前記貯留部が,1つ又は複数の貯留領域であって,前記流路を通じて前記貯留部と前記空洞の間に流体を流させ,前記空洞内の材料を前記流体と前記ガスの間で交換するための流体の収容に利用できる前記貯留領域の内部容積を変更するように動作可能である前記貯留領域を含み,前記交換後は,前記ガスと前記流体の一方のみが前記空洞中に存在する」という構成を具備するのに対して,引用例1発明の「切替可能な光ユニット」は,「光活性部分の位置」から「光活性部分の外側の位置」に連続して形成された「室」において,液体の移動を引き起こすようにされている点。

(3) 判断
事案に鑑みて,相違点1Bについて判断を示す。
引用例1発明の「切替可能な光ユニット」は,「前記光活性部分の位置で前記室の内壁に取り付けられた一対の第一中央電極と,前記光活性部分の外側の位置で前記室の内壁に取り付けられた第二電極手段と,前記伝導性液体と接触し,且つ,電圧源の第一出力に連続的に接続される第三電極とを含み」,「前記電圧源の第二出力は,第一モードにおいて,前記第一電極の少なくとも1つに接続され,第二モードにおいて,第二電極手段に接続され」,「電圧制御システムから前記電極への電圧の印加が,前記液体の移動を引き起こす」ようにされたものである。
すなわち,引用例1発明は,1つの室の中で液体の移動を引き起こすようにされた発明であり,その「光活性部分の位置」と「光活性部分の外側の位置」を,壁によって分離する必要のない発明である(引用例1発明において,「光活性部分の位置」と「光活性部分の外側の位置」を壁によって分離した場合には,かえって流体の流れが妨げられ流路の有効断面積が小さくなるから,好ましくないと考えられる。)。
また,引用例1発明は,電極への電圧の印加によって液体の移動が引き起こされる発明であるから,「壁」によって「室」を「空洞」と「貯留部」に分け,さらに「貯留部」に,「空洞内の材料を前記流体と前記ガスの間で交換するための流体の収容に利用でき」,「内部容積を変更するように動作可能である」「貯留領域」を設ける必要のない発明である。
引用例1発明の発明が解決しようとする課題は,「簡単且つコンパクトな構造を有し,比較的低電圧で駆動可能であり,且つ,新しい用途を切り開く,冒頭段落に定められるような切替可能な光ユニットを提供すること」(【0007】)にある。したがって,引用例1発明の「室」を壁によって分離し,空洞及び貯留部とすることや,内部容積を変更するように動作可能である貯留領域を設けることは,簡単且つコンパクトな構造を有する切替可能な光ユニットを提供するという引用例1発明の課題に反する事項と考えられる。なお,引用例1の【0006】には,背景技術として,「異なる屈折率を有する2つの液体で充填された液体室を含む装置を使用することができ,液体室内では,液体は,エレクトロウェッテイングによって,装置の光活性部分,即ち,放射線ビームが通過する部分に出たり入ったり切り替えられる。他の液体を液体室内に移動し得るよう,液体の1つを液体室の一端から液体室の他端に運搬するために,これは液体循環系を必要とする。そのような循環系は比較的複雑なシステムであり,追加的な空間を必要とし,そのような循環系を含む光学系は小型の消費者向け装置に適さない。」と記載されているところでもある。

(4) 小括
以上のとおりであるから,相違点1Aについて判断するまでもなく,本願発明1は,当業者が引用例1発明に基づいて容易に発明できたものであるということができない。

(5) 請求項2-請求項20について
請求項2-請求項20に係る発明は,いずれも,本願発明1に対してさらに他の発明特定事項を付加した可変焦点眼用装置の発明であるから,前記相違点1Bに係る発明を具備する。
したがって,本願発明1と同じ理由により,当業者が引用例1発明に基づいて容易に発明できたものであるということができない。

5 引用例2発明との対比及び判断
(1) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明1の「ガス」が「流体」の一種であること,そして,本願発明の「流体」及び「ガス」を,「第1の流体」及び「第2の流体」と呼び分けることができることを考慮して,本願発明1と引用例2発明を対比すると,両者は,次の構成で一致する。
「 可変焦点装置であって,
前方上部光学表面と前方底部光学表面とを含む前記可変焦点装置の前方光学部と,
後方上部光学表面と後方底部光学表面とを含む前記可変焦点装置の後方光学部と,
前記可変焦点装置の前記前方光学部の前記前方底部光学表面と前記可変焦点装置の前記後方光学部の前記後方上部光学表面とによって形成された空洞と,
第1の屈折率を有する第1の流体と,
第2の屈折率を有する第2の流体であって,前記第1の屈折率と前記第2の屈折率は異なる,第2の流体と,
1つまたは複数の流路を介して前記形成された空洞と流体接続されている貯留部とを含み,
前記貯留部が,1つ又は複数の貯留領域であって,前記流路を通じて前記貯留部と前記空洞の間に第1の流体を流させ,前記空洞内の材料を前記第1の流体と前記第2の流体の間で交換するための第1の流体の収容に利用できる前記貯留領域を含み,前記交換後は,前記第2の流体と前記第1の流体の一方のみが前記空洞中に存在する,
可変焦点装置。」

イ 相違点
本願発明1と引用例2発明は,以下の点で相違する。
(相違点2A)
本願発明1は,「可変焦点眼用装置であって」,「前方湾曲上部光学表面と前方湾曲底部光学表面とを含む前記可変焦点眼用装置の前方湾曲光学部と」,「後方湾曲上部光学表面と後方湾曲底部光学表面とを含む前記可変焦点眼用装置の後方湾曲光学部と」,「前記可変焦点眼用装置の前記前方湾曲光学部の前記前方湾曲底部光学表面と前記可変焦点眼用装置の前記後方湾曲光学部の前記後方湾曲上部光学表面とによって形成された空洞」という構成を具備するのに対して,引用例2発明の「個別に調整可能な集束レンズ」は「眼用」とは特定されないものであり,また,引用例2発明の「レンズチャンバ」は,「前記光路に沿って配置された2つのレンズ面」の形状が特定されていない点。

(相違点2B)
本願発明1は,「前記第1の屈折率を有する前記第1の流体の少なくとも一部と接触し,電界を確立し得る電極を覆う誘電性フィルム」を具備するのに対して,引用例2発明の「前記第1および第2の流体に対する濡れ性が異なる内表面」は,一応,これが明らかではない点。

(相違点2C)
本願発明1の「貯留部」は,「1つ又は複数の壁によって前記形成された空洞から分離され,前記壁の間を通る」1つまたは複数の流路を介して前記形成された空洞と流体接続されている貯留部であるのに対して,引用例2発明の「貯蔵チャンバ」は,「1つ又は複数の壁によって前記形成された空洞から分離され,前記壁の間を通る」という構成を具備するか,一応,明らかではない点。

(相違点2D)
「第2の流体」について,本願発明は「ガス」であるのに対して,引用例2発明は「ガス」とは特定されていない点。

(相違点2E)
本願発明1の「貯留部」は,「前記貯留領域の内部容積を変更するように動作可能である貯留領域」の構成を具備するのに対して,引用例2発明の「貯蔵チャンバ」は,この構成を具備しない点。

(2) 判断
事案に鑑みて,相違点2Eについて判断を示す。
引用例2の記載からみて,引用例2発明は,「静電力によって,第1の個別の状態と第2の個別の状態の間で,前記流体システムを再配置する」という構成(以下「上記構成」という。)を動作原理とする発明である。また,上記構成は引用例2の請求項1に記載された構成であり,引用例2には,上記構成を動作原理として欠く発明は,背景技術の箇所を除き開示されていない。また,引用例2には,背景技術として,エレクトロウェッティングレンズにより「低コストで製作することが可能であり,可動部分を有さず,小型設計が可能になるという利点を有する」ことが開示されている(【0006】)。
そうしてみると,引用例2において,引用例2発明の上記構成を他のものに替えること,とりわけ,上記構成を,可動部分を有する構成に替えることは,予定されていないというべきである。また,引用例2には,上記構成によって発明が解決しようとする課題を解決し,発明の目的を達した発明として,引用例2発明が開示されているのであるから,引用例2発明の上記構成に対して,さらに他の構成を付加すること,とりわけ,可動部分を有する構成を付加することも,予定されていないというべきである。
したがって,引用例2の記載に接した当業者が,引用例2発明の上記構成に対して変更を加えることを想起し,かつ,変更後の構成として,前記相違点2Eに係る本願発明1の構成,すなわち,「前記貯留領域の内部容積を変更するように動作可能である貯留領域」のような構成を採用することについては,阻害要因があると考えられる。また,本件出願の優先日時点において,この阻害要因を克服するような,何らかの強い動機付けがあったとは考えられない。少なくとも,原査定の拒絶の理由において挙げられた引用例1-引用例3には,引用例2発明において,敢えて前記相違点2Eに係る本願発明1の構成を採用する積極的な動機付けが示されていない。

(3) 小括
以上のとおりであるから,相違点2A-相違点2Dについて判断するまでもなく,本願発明1は,当業者が引用例2発明に基づいて容易に発明できたものであるということができない。

(4) 請求項2-請求項20について
請求項2-請求項20に係る発明は,いずれも,本願発明1に対してさらに他の発明特定事項を付加した可変焦点眼用装置の発明であるから,前記相違点2Eに係る発明を具備する。
したがって,本願発明1と同じ理由により,当業者が引用例2発明に基づいて容易に発明できたものであるということができない。

6 原査定の拒絶の理由について
前記4で述べたとおりであるから,本件出願の請求項1-請求項20に係る発明は,当業者が,引用例1に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとであるということができない。
また,原査定の拒絶の理由において示された周知技術(引用例3の図1-図3のような液体メニスカスレンズによる可変焦点コンタクトレンズ)は,上記相違点2Aに関係するものである。そして,前記5で述べたとおりであるから,本件出願の請求項1-請求項20に係る発明は,当業者が,引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるということができない。

第3 むすび
以上のとおり,原査定の拒絶の理由によっては,本件出願を拒絶することはできない。
また,他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-04-04 
出願番号 特願2015-520507(P2015-520507)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 多田 達也
樋口 信宏
発明の名称 多重状態電気活性眼用装置  
代理人 加藤 公延  
代理人 大島 孝文  
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