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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09C
管理番号 1338907
審判番号 不服2016-17306  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-21 
確定日 2018-03-29 
事件の表示 特願2014-154491「クラウド内にデータを確保するシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月18日出願公開,特開2014-238599〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,2010年5月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年5月19日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2012-511985号の一部を,特許法第44条第1項の規定により,平成26年7月30日に新たな特許出願としたものであって,
平成26年7月30日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出され,同日付けで審査請求がなされ,平成27年12月28日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成28年5月6日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成28年7月21日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達;平成28年7月26日),これに対して平成28年11月21日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成28年12月14日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされたものである。

第2.平成28年11月21日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成28年11月21日付け手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容
平成28年11月21日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,平成28年5月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,
「 【請求項1】
直交周波数分割多重(OFDM)ネットワークを使用してデータを確保する方法であって,該方法は,
第1の場所において,データセットから少なくとも2つのデータ部分を生成することと,
少なくとも2つのOFDMチャネル上で,該少なくとも2つのデータ部分を該第1の場所から第2の場所まで伝達することであって,異なるデータ部分は,異なるOFDMチャネル上で伝達され,それにより,該データセットは,全部よりは少ない閾値数のデータ部分を備えるサブセットから,該サブセットからのデータを再結合することによって該第2の場所において復元可能であり,該少なくとも2つのデータ部分のうちの1つは,少なくとも2つのOFDMチャネル上で伝達される,ことと
を含む,方法。
【請求項2】
前記OFDMネットワークは,広帯域無線ネットワークを備える,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記OFDMネットワークは,広帯域送電線ネットワークを備える,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
直交周波数分割多重(OFDM)ネットワーク内にデータを確保する装置であって,該装置は,
第1の場所において,データセットから少なくとも2つのデータ部分を生成するように動作可能である確実なデータパーサと,
少なくとも2つのOFDMチャネル上で,該少なくとも2つのデータ部分を該第1の場所から第2の場所まで伝達するように動作可能であるOFDMトランシーバであって,異なるデータ部分は,異なるOFDMチャネル上で伝達され,それにより,該データセットは,全部よりは少ない閾値数のデータ部分を備えるサブセットから,該サブセットからのデータを再結合することによって該第2の場所において復元可能であり,該少なくとも2つのデータ部分のうちの1つは,少なくとも2つのOFDMチャネル上で伝達される,OFDMトランシーバと
を備える,装置。
【請求項5】
前記OFDMネットワークは,広帯域無線ネットワークを備える,請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記OFDMネットワークは,広帯域送電線ネットワークを備える,請求項4に記載の装置。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は,
「 【請求項1】
直交周波数分割多重(OFDM)ネットワークを使用してデータを確保する方法であって,該方法は,
第1の場所において,データセットから少なくとも2つのデータ部分を生成することと,
少なくとも2つのOFDMチャネル上で,該少なくとも2つのデータ部分を該第1の場所から第2の場所まで伝達することであって,異なるデータ部分は,異なるOFDMチャネル上で伝達され,それにより,該データセットは,全部よりは少ない閾値数のデータ部分を備えるサブセットから,該サブセットからのデータを再結合することによって該第2の場所において復元可能であり,該少なくとも2つのデータ部分のうちの1つは,少なくとも2つのOFDMチャネル上で同時に伝達される,ことと
を含む,方法。
【請求項2】
前記OFDMネットワークは,広帯域無線ネットワークを備える,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記OFDMネットワークは,広帯域送電線ネットワークを備える,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
直交周波数分割多重(OFDM)ネットワーク内にデータを確保する装置であって,該装置は,
第1の場所において,データセットから少なくとも2つのデータ部分を生成するように動作可能である確実なデータパーサと,
少なくとも2つのOFDMチャネル上で,該少なくとも2つのデータ部分を該第1の場所から第2の場所まで伝達するように動作可能であるOFDMトランシーバであって,異なるデータ部分は,異なるOFDMチャネル上で伝達され,それにより,該データセットは,全部よりは少ない閾値数のデータ部分を備えるサブセットから,該サブセットからのデータを再結合することによって該第2の場所において復元可能であり,該少なくとも2つのデータ部分のうちの1つは,少なくとも2つのOFDMチャネル上で同時に伝達される,OFDMトランシーバと
を備える,装置。
【請求項5】
前記OFDMネットワークは,広帯域無線ネットワークを備える,請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記OFDMネットワークは,広帯域送電線ネットワークを備える,請求項4に記載の装置。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。

2.補正の適否
(1)本件手続補正は,補正前の請求項1,及び,請求項4に記載された,
「少なくとも2つのOFDMチャネル上で伝達される」,
を,
「少なくとも2つのOFDMチャネル上で同時に伝達される」,
と補正するものであって,当該手続補正は,平成26年7月30日付けで提出された明細書,請求の範囲の日本語による翻訳文,及び,国際出願の願書に添付された図面(以下,これを「当初明細書等」という)のうち,明細書の段落【0456】に記載された内容に基づくものであるから,特許法第17条の2第3項の規定を満たすものであり,加えて,本件手続補正は,「伝達される」方法を限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)を目的としたものであることは明らかであるので,特許法第17条の2第5項の規定を満たすものである。
そこで,本件手続補正が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,以下に検討する。

(2)補正後の請求項1に記載の発明
補正後の請求項1に記載の発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,上記「1.補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した,次のとおりのものである。

「直交周波数分割多重(OFDM)ネットワークを使用してデータを確保する方法であって,該方法は,
第1の場所において,データセットから少なくとも2つのデータ部分を生成することと,
少なくとも2つのOFDMチャネル上で,該少なくとも2つのデータ部分を該第1の場所から第2の場所まで伝達することであって,異なるデータ部分は,異なるOFDMチャネル上で伝達され,それにより,該データセットは,全部よりは少ない閾値数のデータ部分を備えるサブセットから,該サブセットからのデータを再結合することによって該第2の場所において復元可能であり,該少なくとも2つのデータ部分のうちの1つは,少なくとも2つのOFDMチャネル上で同時に伝達される,ことと
を含む,方法。」

(3)引用刊行物に記載の事項
ア.原審における平成27年12月28日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)に引用された,本願の原出願の第1国出願前に既に公知である,国際公開第2009/020143号(国際公開日;2009年2月12日,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「[0002] ネットワークを介してメッセージを伝送する方法は様々ある。このような方法には,ネットワークに少しの障害があっても,
(A)十分な正確さでメッセージを送ることができるような機能が求められる。
[0003] また,用途に応じて様々な機能が付加されており,特に,
(B)盗聴者に何を送っているか知られないための機能,
(c)受け取ったメッセージが改ざんされていないか検証する機能は,
それぞれもっとも重要な機能の中の1つである。
[0004] 上記(A),(B),(C)の機能を具備しているメッセージ伝送方法の1つに,送信装置と受信装置の間に,複数のチャンネルを用意し,以下に示す3つの機能を持つメッセージ伝送方法がある。なお,送信装置と受信装置の間にはn本のチャンネルがあるものとする。」(下線は,当審にて,説明の都合上付加したものである。以下,同じ。)

B.「[0030] 本発明の一実施形態において,メッセージ伝送システムの送信側は,メッセージを想定する不正チャンネル数であるt個以下の数の符号化されたメッセージからは,メッセージに関する情報が得られず,t個以下の符号化されたメッセージなしでもメッセージが復号できるような3t+1個以上のメッセージの符号語を生成して送信し,そのうち,t個以下のデータに誤りがあっても,前記した複数のメッセージの符号語のうち,t個以下の誤りを検出することができる複数の不正符号化メッセージ特定用データを生成して送信する。
[0031] メッセージ伝送システムの受信側は,前述のようにして生成されたメッセージの符号語とそれらに対応する不正符号化メッセージ特定用データとを受信し,メッセージの符号語と,不正符号化メッセージ特定用データを用いて,メッセージの符号語のそれぞれが不正なメッセージの符号語であるかを判断し,不正な符号化メッセージ情報であると判断されなかったメッセージの符号語のすべてが同じメッセージの符号語であるか否かを判断し,同じメッセージの符号語であった場合には,当該メッセージを出力し,それ以外の場合はメッセージの受信失敗を表す出力を行う。
[0032] 前述のようなメッセージの符号化方法として,(a,b,c)しきい値法と呼ばれる符号化手法を用いることができる。
[0033] この符号化手法は,情報をc個の分散情報に符号化するものである。そのうち,任意のa個以上の分散情報からは秘密情報が完全に復元できるが,a-b-1個までの分散情報からでは秘密情報に関する情報は全く得られない,という特徴を持つ。
[0034] したがって,仮に,a-b-1個までの分散情報が盗難にあったとしても,秘密情報は漏れず,c-a個までの分散情報が破壊されても,秘密情報を復元できる。
[0035] このような符号化手法において,
符号語数をnとして,
a=t+1,
b=n-3t+1,
c=n,
とすると,前述の条件を満たす。
[0036] (a,b,c)しきい値法として代表的な手法としては,非特許文献2に記載されている手法があげられる。
[0037] より詳細には,本発明のメッセージ伝送システムは,想定不正チャンネル数をtとすると,
チャンネル数n=3t+d+1 (但し,d≧0)
を満たす数のチャンネルで互いに接続された送信装置と受信装置からなる。
[0038] 送信装置は,d’を,d≧d’≧0であるような値として, メッセージを,(2t+d’+1,d’+t,n)しきい値法を用いて符号化した値V_i (i=1,・・・,n)を生成し,
V_iとランダムなt次多項式とを用いて,n個のV_iのうち,t個以下のものに誤りがある場合に,リードソロモン誤り訂正処理による誤りの検出および訂正を可能とする不正チャンネル特定情報A_i(i=1,・・・,n)を,n個のV_iに対応付けて生成し,チャンネルC_i(i=1,・・・,n)を用いて,V_i(i=1,・・・,n),A_i(i=1,・・・,n)を送信する。
[0039] 受信装置には,送信装置で生成されたV_i(i=1,・・・,n)とA_i(i=1,・・・,n)をそれぞれチャンネルC_i(i=1,・・・,n)を介して受信し,V_i(i=1,・・・,n)とA_i(i=1,・・・,n)を用いて,リードソロモン誤り訂正処理を行って,n個のV_iそれぞれについて不正な値であるか否かを判断し,不正であると判断されなかったV_iがすべて同じメッセージの符号語であるかを調べる。同じメッセージの符号語である場合には,そのメッセージを出力し,異なるメッセージの符号語が含まれている場合には,メッセージの受信失敗を表す記号を出力する。
[0040] 本発明によれば,このような構成を用いることによって,各チャンネルを通して流す情報量を,従来よりも小さくすることができる。
[0041] n本のチャンネルを用いた場合の説明を行ったが,チャンネルを実現する手段は,送信装置で生成した複数のデータを分けて送信することができるものであれば任意のものが用いられる。つまり,チャンネルはn本でなくてもよい。」

C.「[0048] メッセージを符号化し,符号化したメッセージをチャンネルを用いて送信するフェーズでは,まず,送信装置100は,パラメータとして入力された,想定不正チャンネル数およびチャンネル数nに従って,メッセージを符号化することにより,複数の符号化メッセージ情報を生成し,該複数の符号化メッセージ情報(「分散メッセージ情報」ともいう)を,それぞれ,異なるチャンネル300-1?300-nを用いて送信する。」

D.「[0088] 第1の実施例におけるメッセージ符号化装置101(図1参照)は,非特許文献3に記載された,(2t+d’+1,t+d’,n)しきい値法を用いて秘密情報を分散符号化する。
[0089] メッセージ復号装置201は,(2t+d’+1,t+d’,n)しきい値法に対応する復号方法を用いてメッセージを復元する。」

E.「[0178] なお,発明を実施する最良の形態,第1の実施例,第2の実施例の説明では,すべてチャンネルを用いた場合の説明を行ったが,チャンネルを実現する手段は,送信装置の生成した複数のデータを分けて送信することができるものであればよい。」

イ.原審拒絶理由に引用された,本願の原出願の第1国出願前に既に公知である,特開2000-174675号公報(2000年6月23日公開,以下,これを「引用刊行物2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

F.「【0064】(第4の実施形態)ところで,本発明は,所定の長さのシンボル列を,n種類(nは,正の整数)の異なる並べ替え手法を用いて並べ替え,n種類の異なる並びを持つシンボル列をそれぞれ周波数に割り当てて送信することを特徴としている。従って,各シンボル列を周波数軸上にマッピングさせる手法としてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調を用い,周波数軸上にマッピングされた情報を取り出す手法としてOFDM復調を用いても,上述した第1および第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。以下,このOFDM変復調を用いる電力線搬送通信システムを説明する。
【0065】図6は,本発明の第4の実施形態に係る電力線搬送通信システムの構成を示すブロック図である。図6において,第4の実施形態に係る電力線搬送通信システムは,送信装置10と受信装置20とが伝送路30を介して接続される構成である。送信装置10は,インタリーブ部11と,OFDM変調部15と,送信アンプ13とを備える。受信装置20は,受信アンプ21と,OFDM復調部25と,デ・インタリーブ部23と,判定部24とを備える。
【0066】図6に示すように,第4の実施形態に係る電力線搬送通信システムは,上記第1の実施形態に係る電力線搬送通信システムの送信装置10の変調部12をOFDM変調部15に,受信装置20の復調部22をOFDM復調部25にそれぞれ代えた構成である。なお,第4の実施形態に係る電力線搬送通信システムにおけるその他の構成は,上記第1の実施形態に係る電力線搬送通信システムの構成と同様であり,当該その他の構成部分については,同一の参照番号を付してその説明を省略する。
【0067】送信装置10において,OFDM変調部15は,インタリーブ部11から入力するn種類のシンボル列パラレルデータの1シンボルに対して逆FFT(Fast Fourier Transform)演算を行い,周波数軸上の振幅/位相情報を時間軸データに変換する。次に,OFDM変調部15は,時間軸データに変換した後のn種類のシンボル列パラレルデータをパラレル/シリアル変換し,シンボルの時系列信号を得る。そして,OFDM変調部15は,この時系列信号をD/A変換し,送信アンプ13へ出力する。一方,受信装置20において,OFDM復調部25は,受信アンプ21から入力する受信信号をA/D変換した後,1シンボルに対してシリアル/パラレル変換を行って時間軸データのn種類のシンボル列パラレルデータを得る。そして,OFDM復調部25は,この時間軸データのn種類のシンボル列パラレルデータに対しFFT演算を用いて周波数解析を行い,周波数軸上の振幅/位相情報を求め,このn種類のシンボル列パラレルデータをデ・インタリーブ部23へ出力する。
【0068】以上のように,本発明の第4の実施形態に係る電力線搬送通信システムによれば,変復調にOFDM方式を用いる。これにより,上記第1および第2の実施形態で述べた効果に加え,さらにOFDM方式の利点である伝送特性の劣化が少ない,また,ある特定の周波数帯にノイズが存在する場合でも,インタリーブ等によって効果的に特性を改善することができるといった有用な効果を得ることができる。」

ウ.原審における平成28年7月21日付けの拒絶査定(以下,これを「拒絶査定」という)に,周知技術を示すために引用された,本願の原出願の第1国出願前に既に公知である,国際公開第2007/099485号(国際公開日;2007年9月7日,以下,これを「周知技術文献1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

G.「This communication channel may employ orthogonal frequency division multiplexing (“OFDM”) which transmits data over a number of different carriers within the channel. OFDM systems are characterized as having high spectral efficiency and good resiliency to RF interference. OFDM channels are multi-path resulting in signal distortions which may be caused by a number of factors including spatial variations in temperature, pressure, humidity, etc. that cause variations in the index of reflection as well as the reflection of signals off of various objects. Because OFDM channels are multi-path, groups of frequencies may be attenuated and shifted in phase within the frequency domain, and adjacent symbols may smear into each other in the time domain.
An OFDM channel delay spread may also adversely affect the channel's performance. For example, if the channel delay spread is relatively short, then the OFDM channel may be flat (i.e. the signal is faded equally) resulting in longer error bursts. This bursty nature of the signal is oftentimes difficult to correct at the receiver and may significantly reduce the channel performance. In order to lengthen the channel delay spread, the OFDM channel frequency diversity may be increased to reduce the error bursts within the signal. One manner in which the channel delay spread may be lengthened is by introducing cyclic delays or prefixes to OFDM symbols within the channel.」(1頁23行?2頁8行)
(【0004】
この通信チャネルには直交周波数分割多重(OFDM)方式を用いることができ,この方式はチャネル内の多くの異なる搬送波に乗せてデータを送信する。OFDMシステムは高いスペクトル効率及びRF干渉に対する抵抗力が優れているという特徴をもつ。OFDMチャネルは信号に歪みを生じるマルチパスであり,この信号の歪みは,様々な物体からの信号の反射のみならず,屈折率の変化をもたらす温度や気圧や湿度などの空間的変数を含む多くの要因によっても引き起こされる。OFDMチャネルがマルチパスであることにより,周波数群は減衰して,周波数領域内で位相シフトし,時間領域内で隣接するシンボルがお互いに干渉してしまう。
【0005】
また,OFDMチャネルの遅延広がりがチャネルの性能に悪影響を与えることがある。例えば,チャネルの遅延広がりが相対的に短い場合には,OFDMチャネルが平坦になり(つまり,信号が均一に衰えてしまう)長いエラーバーストになることがある。多くの場合,この信号のバースト性は受信機で補正することが難しく,チャネルの性能を著しく低下させることがある。チャネルの遅延広がりが長くするために,OFDMチャネルの周波数ダイバーシティを増加させて,信号内のエラーバーストを低下させることができる。チャネルの遅延広がりを長くし得るひとつの方法は,循環遅延あるいはプレフィックスをチャネル内のOFDMシンボルに導入することである。<国際公開第2007/099485号の日本語出願である,特願2008-556893号の公表公報である,特表2009-528753号公報の対応箇所より引用>)

エ.本願の原出願の第1国出願前に既に公知である,国際公開第2008/041546号(2008年4月10日公開,以下,これを「周知技術文献」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

H.「【0004】
また,最近,マルチキャスト通信に関する検討が行われている。マルチキャスト通信 は,ユニキャスト通信のような1対1の通信ではなく,1対多の通信となる。すなわち,マルチキャスト通信では,1つの無線通信基地局装置(以下,基地局と省略する)が 複数の無線通信移動局装置 (以下,移動局と省略する)に同時に同じデータ(マルチキャストデータ)を送信する。このマルチキャスト通信により,移動体通信システムにおいて音楽データやビデオ画像データの配信サービス,テレビ放送等の放送サービス等が実現される。
【0005】
また,マルチキャスト通信では上記のように1つの基地局が複数の移動局に同時に 同じマルチキャストデータを送信するため,1つのセルが複数のセクタに分割されている場合,マルチキャストデータは複数のセクタにおいて互いに同一のデータとなる。また,1つのセルが複数のセクタに分割されている場合,それら複数のセクタに対して同時に同じマルチキャストデータが送信されるため,セクタ境界に位置する移動局では,複数のセクタのマルチキャストデータが混合された状態で受信される。
【0006】
ここで,マルチキャスト通信にOFDM方式を用いる場合,セクタ境界付近に位置する移動局では,複数のセクタに対して同時に送信される複数の同一OFDMシンボルがCP長以内の時間差で受信されると,それらのOFDMシンボルが合成されて受信電力が増幅された状態で受信される。このように同一データを同一のリソース(同一 時刻および同一周波数)を用いて複数の経路で送信する方法をSFN(Single Frequency Network)送信と呼ぶ。SFN送信においては,移動局ではセクタ間干渉なくデータを受信することができるため,誤り率が低い高品質な伝送が可能となる。」

(4)引用刊行物に記載の発明
ア.上記Aの「ネットワークを介してメッセージを伝送する方法」という記載,及び,同じく,上記Aの「送信装置と受信装置の間に,複数のチャンネルを用意し,以下に示す3つの機能を持つメッセージ伝送方法がある。なお,送信装置と受信装置の間にはn本のチャンネルがあるものとする」という記載から,引用刊行物1には,
“送信装置と受信装置間のネットワークにn本のチャネルを用意し,前記ネットワークを介してメッセージを伝送する方法”
が記載されていることが読み取れる。

イ.上記Bの「メッセージ伝送システムの送信側は,メッセージを想定する不正チャンネル数であるt個以下の数の符号化されたメッセージからは,メッセージに関する情報が得られず,t個以下の符号化されたメッセージなしでもメッセージが復号できるような3t+1個以上のメッセージの符号語を生成して送信し」という記載,上記Bの「(a,b,c)しきい値法と呼ばれる符号化手法を用いることができる」という記載,及び,上記Cの「送信装置100は,パラメータとして入力された,想定不正チャンネル数およびチャンネル数nに従って,メッセージを符号化することにより,複数の符号化メッセージ情報を生成し」という記載から,引用刊行物1においては,
“送信装置は,(a,b,c)しきい値法と呼ばれる符号化手法を用いてメッセージを符号化し,メッセージが復号できるような3t+1個以上の符号化メッセージ情報を生成する”
ものであることが読み取れ,更に,上記Bの「本発明のメッセージ伝送システムは,想定不正チャンネル数をtとすると,チャンネル数n=3t+d+1 (但し,d≧0)を満たす数のチャンネルで互いに接続された送信装置と受信装置からなる」という記載から,3t+1個以上は,nを含むものであるから,引用刊行物1においては,
“送信装置は,(a,b,c)しきい値法と呼ばれる符号化手法を用いてメッセージを符号化し,メッセージが復号できるようなn個の符号化メッセージ情報を生成する”ものであることが読み取れる。

ウ.上記ア.において引用した上記Aの記載内容と,上記イ.において引用した上記Bの記載内容,同じく,上記Bの「このような符号化手法において,符号語数をnとして,a=t+1,b=n-3t+1,c=n,とすると,前述の条件を満たす」という記載,同じく,上記Bの「受信装置には,送信装置で生成されたV_i(i=1,・・・,n)とA_i(i=1,・・・,n)をそれぞれチャンネルC_i(i=1,・・・,n)を介して受信し」という記載,同じく,上記Bの「各チャンネルを通して流す情報量を,従来よりも小さくすることができる」という記載,同じく,上記Bの「n本のチャンネルを用いた場合の説明を行ったが,チャンネルを実現する手段は,送信装置で生成した複数のデータを分けて送信することができるものであれば任意のものが用いられる」という記載,同じく,上記Bの「チャンネルC_i(i=1,・・・,n)を用いて,V_i(i=1,・・・,n),A_i(i=1,・・・,n)を送信する」という記載,及び,上記Cの「送信装置100は,パラメータとして入力された,想定不正チャンネル数およびチャンネル数nに従って,メッセージを符号化することにより,複数の符号化メッセージ情報を生成し,該複数の符号化メッセージ情報(「分散メッセージ情報」ともいう)を,それぞれ,異なるチャンネル300-1?300-nを用いて送信する」という記載から,引用刊行物1においては,送信装置で符号化方法を用いて生成された,メッセージが復号できるような,
“n個の符号化メッセージ情報を,それぞれ,n本の異なるチャネルを用いて受信装置に送信する”
ものであることが読み取れる。

エ.上記ウ.において検討した「符号化メッセージ情報」に関する事項と,上記イ.においても引用した,上記Bの「(a,b,c)しきい値法と呼ばれる符号化手法を用いることができる」という記載,同じく,上記Bの「この符号化手法は,情報をc個の分散情報に符号化するものである。そのうち,任意のa個以上の分散情報からは秘密情報が完全に復元できるが,a-b-1個までの分散情報からでは秘密情報に関する情報は全く得られない,という特徴を持つ」という記載から,引用刊行物1においては,「符号化メッセージ情報」と,「分散情報」とは,同じものであると読み取れるので,以上に引用した上記Bの記載内容を踏まえると,引用刊行物1においては,
“(a,b,c)しきい値法と呼ばれる符号化手法においては,c>a>a-b-1であって,秘密情報は,a個以上の符号化メッセージ情報から完全に復元することができる”
ことが読み取れる。

オ.上記ウ.,及び,上記エ.において言及した“秘密情報”とは,“n個の符号化メッセージ情報”の元情報であって,上記イ.おいて検討した事項における“メッセージ”と同じものであることは,明らかであるから,上記イ.において検討した事項と,上記ウ.に引用した上記Bの記載内容を踏まえると,上記エ.において検討した事項は,引用刊行物1においては,
“(a,b,c)しきい値法と呼ばれる符号化手法において,n>t+1であって,メッセージは,t+1個以上の符号化メッセージ情報から完全に復元することができる”
ものであることが読み取れる。

カ. したがって,上記ア.?オ.において検討した事項から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。

「送信装置と受信装置間のネットワークにn本のチャネルを用意し,前記ネットワークを介してメッセージを伝送する方法であって,
送信装置は,(a,b,c)しきい値法と呼ばれる符号化手法を用いてメッセージを符号化し,メッセージが復号できるようなn個の符号化メッセージ情報を生成し,
前記n個の符号化メッセージ情報を,それぞれ,n本の異なるチャネルを用いて受信装置に送信し,
前記(a,b,c)しきい値法と呼ばれる符号化手法において,n>t+1であって,前記メッセージは,t+1個以上の符号化メッセージ情報から完全に復元することができる,方法。」

(5)本件補正発明と引用発明との対比
ア.引用発明において,「送信装置と受信装置間のネットワークにn本のチャネルを用意し,前記ネットワークを介してメッセージを伝送する方法」は,「送信装置」において,「メッセージを符号化し,メッセージが復号できるようなn個の符号化メッセージ情報を生成」するステップと,当該「メッセージが復号できるようなn個の符号化メッセージ情報」を,「送信装置」から,「n本の異なるチャネルを用いて受信装置に送信」するステップとを有し,当該「メッセージ」は,「受信装置」において,“t+1(<n)個以上から完全に復元することができる”ものであるから,引用発明における
「送信装置と受信装置間のネットワークにn本のチャネルを用意し,前記ネットワークを介してメッセージを伝送する方法」は,
“n本のチャネルを使用してメッセージを確保する方法”
といい得るものである。
一方,本件補正発明において,「直交周波数分割多重(OFDM)ネットワーク」とは,複数の「データ部分」を,「異なるOFDMチャネル上で伝達」するものであるから,
本件補正発明「直交周波数分割多重(OFDM)ネットワークを使用してデータを確保する方法であって,該方法」は,
“複数のOFDMチャネルを使用して,データを確保する方法”
といい得るものであるから,
引用発明における「送信装置と受信装置間のネットワークにn本のチャネルを用意し,前記ネットワークを介してメッセージを伝送する方法」と,
本件補正発明における「直交周波数分割多重(OFDM)ネットワークを使用してデータを確保する方法」とは,
“複数のチャネルを使用してデータを確保する方法”
である点で共通する。

イ.本件補正発明は,「少なくとも2つのデータ部分を該第1の場所から第2の場所まで伝達する」ものであるから,
引用発明における「送信装置」,「受信装置」が,それぞれ,本件補正発明における「第1の場所」,「第2の場所」に相当し,
引用発明において,「メッセージを符号化し,メッセージが復号できるようなn個の符号化メッセージ情報を生成」することは,「メッセージ」の“n個の部分メッセージ”を生成することに他ならないから,
そして,上記ア.において検討した事項を踏まえると,引用発明における「メッセージ」は,本件補正発明における「データ」,及び,「データセット」に相当するので,
引用発明における「送信装置は,(a,b,c)しきい値法と呼ばれる符号化手法を用いてメッセージを符号化し,メッセージが復号できるようなn個の符号化メッセージ情報を生成し」が,
本件補正発明における「第1の場所において,データセットから少なくとも2つのデータ部分を生成すること」に相当する。

ウ.引用発明における「n個の符号化メッセージ情報」は,本件補正発明における「少なくとも2つのデータ部分」に相当し,引用発明における「n本の異なるチャネル」と,本件補正発明における「少なくとも2つのOFDMチャネル」とは,“少なくとも2つのチャネル”である点で共通するので,上記ア.において検討した事項を踏まえると,
引用発明における「n個の符号化メッセージ情報を,それぞれ,n本の異なるチャネルを用いて受信装置に送信し」と,
本件補正発明における「少なくとも2つのOFDMチャネル上で,該少なくとも2つのデータ部分を該第1の場所から第2の場所まで伝達することであって,異なるデータ部分は,異なるOFDMチャネル上で伝達され」とは,
“少なくとも2つのチャネル上で,少なくとも2つのデータ部分を,第1の場所から,第2の場所まで伝達することであって,異なるデータ部分は,異なるチャネル上で伝達される”ものである点で共通する。

エ.引用発明において,「(a,b,c)しきい値法と呼ばれる符号化手法」は,「符号化メッセージ情報」が,「t+1個以上」なら,「メッセージ」を「完全に復号することができる」ものであって,「t+1個」は,「符号化メッセージ情報」の全体数である「n個」より少ないものであるから,当該「t+1個」が,「(a,b,c)しきい値法」における「しきい値」に該当することは明らかであるから,
引用発明において,「t+1個以上の符号化メッセージ情報から完全に復元することができる」とは,“符号化メッセージ情報の全体数より少ないしきい値数の符号化メッセージ情報から,メッセージを完全に復号することができる”といい得るものである。
そして,引用発明において,“複数の符号化メッセージ情報から,メッセージを完全に復号する”ことは,「複数の符号化メッセージ情報」を結合する処理を含むものであって,当該復号は,「受信装置」側で行われるものであるから,
引用発明における「(a,b,c)しきい値法と呼ばれる符号化手法において,n>t+1であって,前記メッセージは,t+1個以上の符号化メッセージ情報から完全に復元することができる」ことは,
本件補正発明における「異なるデータ部分は,異なるOFDMチャネル上で伝達され,それにより,該データセットは,全部よりは少ない閾値数のデータ部分を備えるサブセットから,該サブセットからのデータを再結合することによって該第2の場所において復元可能」であることに相当する。

オ.以上,上記ア.?エ.において検討した事項から,本件補正発明と,引用発明との一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
複数のチャネルを使用してデータを確保する方法であって,
該方法は,
第1の場所において,データセットから少なくとも2つのデータ部分を生成することと,
少なくとも2つのチャネル上で,少なくとも2つのデータ部分を,第1の場所から,第2の場所まで伝達することであって,異なるデータ部分は,異なるチャネル上で伝達され,それにより,該データセットは,全部よりは少ない閾値数のデータ部分を備えるサブセットから,該サブセットからのデータを再結合することによって該第2の場所において復元可能である,ことと
を含む,方法。

[相違点1]
“複数のチャネルを使用してデータを確保する方法”に関して,
本件補正発明においては,「複数のチャネル」として,「直交周波数分割多重(OFDM)ネットワークを使用」するものであるのに対して,
引用発明においては,「送信装置と受信装置間のネットワーク」として,どのような「ネットワーク」を用いるかについては,特に言及されていない点。

[相違点2]
“少なくとも2つのチャネル上で,少なくとも2つのデータ部分を,第1の場所から,第2の場所まで伝達することであって,異なるデータ部分は,異なるチャネル上で伝達され”に関して,
本件補正発明においては,「少なくとも2つのOFDMチャネル上で,該少なくとも2つのデータ部分を該第1の場所から第2の場所まで伝達することであって,異なるデータ部分は,異なるOFDMチャネル上で伝達され」るものであるのに対して,
引用発明においては,「異なるOFDMチャネル」を用いる点については,言及されていない点。

[相違点3]
本件補正発明においては,「少なくとも2つのデータ部分のうちの1つは,少なくとも2つのOFDMチャネル上で同時に伝達される」ものであるのに対して,
引用発明においては,当該構成についての言及がない点。

(6)相違点についての当審の判断
ア.[相違点1],及び,[相違点2]について
送信するデータを複数に分割して,OFDMを用いて送信することは,引用刊行物2の,上記Fに引用した「所定の長さのシンボル列を,n種類(nは,正の整数)の異なる並べ替え手法を用いて並べ替え,n種類の異なる並びを持つシンボル列をそれぞれ周波数に割り当てて送信することを特徴としている。従って,各シンボル列を周波数軸上にマッピングさせる手法としてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調を用い,周波数軸上にマッピングされた情報を取り出す手法としてOFDM復調を用いても,上述した第1および第2の実施形態と同様の効果を得ることができる」という記載からも明らかなように,当該技術分野においては,本願の原出願の第1国出願前,当業者には周知の技術事項であって,引用刊行物1の上記Bに引用した,「n本のチャンネルを用いた場合の説明を行ったが,チャンネルを実現する手段は,送信装置で生成した複数のデータを分けて送信することができるものであれば任意のものが用いられる」という記載,同じく,引用刊行物1の上記Eに引用した,「発明を実施する最良の形態,第1の実施例,第2の実施例の説明では,すべてチャンネルを用いた場合の説明を行ったが,チャンネルを実現する手段は,送信装置の生成した複数のデータを分けて送信することができるものであればよい」という記載から,引用発明において,“n本のチャネルを用いるネットワークとして,何を用いるかについて,特に,制限を設けていない”から,引用発明において,ネットワークとして,当該技術分野において周知の「OFDMネットワーク」を採用することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点1],及び,[相違点2]は,格別のものではない。

イ.[相違点3]について
「OFDMネットワーク」においては,上記Hに引用した,周知技術文献2に「同一データを同一のリソース(同一 時刻および同一周波数)を用いて複数の経路で送信する」とあるように,“同一のデータを,複数の異なるチャネルを介して,同時に送信する”ことは,当業者には周知の技術事項であるから,引用発明において,「OFDMネットワーク」を採用した場合に,“符号化メッセージ情報の1つを,異なるチャネルで同時に送信する”よう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点3]は,格別のものではない。

ウ.以上,上記ア.,及び,イ.において検討したとおり,[相違点1]?[相違点3]はいずれも格別のものではなく,そして,本件補正発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。

(7)補正の適否むすび
よって,本件補正発明は,引用発明,引用刊行物2に記載の発明,及び,周知技術文献に開示の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際,独立して特許を受けることができない。

3.補正却下むすび
したがって,本件手続補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
平成28年11月21日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成28年5月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された,上記「第2.平成28年11月21日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項1として引用した,次のとおりのものである。

「直交周波数分割多重(OFDM)ネットワークを使用してデータを確保する方法であって,該方法は,
第1の場所において,データセットから少なくとも2つのデータ部分を生成することと,
少なくとも2つのOFDMチャネル上で,該少なくとも2つのデータ部分を該第1の場所から第2の場所まで伝達することであって,異なるデータ部分は,異なるOFDMチャネル上で伝達され,それにより,該データセットは,全部よりは少ない閾値数のデータ部分を備えるサブセットから,該サブセットからのデータを再結合することによって該第2の場所において復元可能であり,該少なくとも2つのデータ部分のうちの1つは,少なくとも2つのOFDMチャネル上で伝達される,ことと
を含む,方法。」

第4.引用刊行物に記載の発明
上記「第2.平成28年11月21日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(3)引用刊行物に記載の事項」において,「引用刊行物1」として引用した,国際公開第2009/020143号(国際公開日;2009年2月12日)には,上記「第2.平成28年11月21日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(4)引用刊行物に記載の発明」において認定したとおりの,次のとおりの引用発明が記載されているものと認める。

「送信装置と受信装置間のネットワークにn本のチャネルを用意し,前記ネットワークを介してメッセージを伝送する方法であって,
送信装置は,(a,b,c)しきい値法と呼ばれる符号化手法を用いてメッセージを符号化し,メッセージが復号できるようなn個の符号化メッセージ情報を生成し,
前記n個の符号化メッセージ情報を,それぞれ,n本の異なるチャネルを用いて受信装置に送信し,
前記(a,b,c)しきい値法と呼ばれる符号化手法において,n>t+1であって,前記メッセージは,t+1個以上の符号化メッセージ情報から完全に復元することができる,方法。」

第5.本願発明と引用発明との対比
本願発明は,上記「第2.平成28年11月21日付けの手続補正の却下の決定」において検討した,本件補正発明における「少なくとも2つのデータ部分のうちの1つは,少なくとも2つのOFDMチャネル上で同時に伝達される」という構成から,「同時に」という限定事項を取り除いたものであるから,
本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
複数のチャネルを使用してデータを確保する方法であって,
該方法は,
第1の場所において,データセットから少なくとも2つのデータ部分を生成することと,
少なくとも2つのチャネル上で,少なくとも2つのデータ部分を,第1の場所から,第2の場所まで伝達することであって,異なるデータ部分は,異なるチャネル上で伝達され,それにより,該データセットは,全部よりは少ない閾値数のデータ部分を備えるサブセットから,該サブセットからのデータを再結合することによって該第2の場所において復元可能である,ことと
を含む,方法。

[相違点a]
“複数のチャネルを使用してデータを確保する方法”に関して,
本願発明においては,「複数のチャネル」として,「直交周波数分割多重(OFDM)ネットワークを使用」するものであるのに対して,
引用発明においては,「送信装置と受信装置間のネットワーク」として,どのような「ネットワーク」を用いるかについては,特に言及されていない点。

[相違点b]
“少なくとも2つのチャネル上で,少なくとも2つのデータ部分を,第1の場所から,第2の場所まで伝達することであって,異なるデータ部分は,異なるチャネル上で伝達され”に関して,
本願発明においては,「少なくとも2つのOFDMチャネル上で,該少なくとも2つのデータ部分を該第1の場所から第2の場所まで伝達することであって,異なるデータ部分は,異なるOFDMチャネル上で伝達され」るものであるのに対して,
引用発明においては,「異なるOFDMチャネル」を用いる点については,言及されていない点。

[相違点c]
本願発明においては,「少なくとも2つのデータ部分のうちの1つは,少なくとも2つのOFDMチャネル上で伝達される」ものであるのに対して,
引用発明においては,当該構成についての言及がない点。

第6.相違点についての当審の判断
1.[相違点a],及び,[相違点b]について
本願発明と,引用発明との[相違点a],及び,[相違点b]は,本件補正発明と,引用発明との[相違点1],及び,[相違点2]と同じものであるから,上記「第2.平成28年11月21日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(6)相違点についての当審の判断」において検討したとおり,[相違点a],及び,[相違点b]は格別のものではない。

2.[相違点c]について
上記Gに引用した,周知技術文献1に「In order to lengthen the channel delay spread, the OFDM channel frequency diversity may be increased to reduce the error bursts within the signal. (チャネルの遅延広がりが長くするために,OFDMチャネルの周波数ダイバーシティを増加させて,信号内のエラーバーストを低下させることができる)」と記載されていて,ここでいう「周波数ダイバーシティ」とは,“複数の異なる搬送波から同一の信号を送信し,受信側においてそれらの選択ないしは構成することにより特性の改善を図る方法”であるから,「OFDMネットワーク」において,“同一のデータを,異なるOFDMチャネルを上で送信する”ことは,本願の原出願の第1国出願前に,当業者には周知の技術事項である。
よって,引用発明においても,“一つの符号化メッセージ情報を,異なるOFDMチャネルを用いて送信する”よう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点c]は,格別のものではない。

3.以上,上記1.,及び,2.において検討したとおり,[相違点a]?[相違点c]はいずれも格別のものではなく,そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。

第7.むすび
したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-31 
結審通知日 2017-11-01 
審決日 2017-11-17 
出願番号 特願2014-154491(P2014-154491)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09C)
P 1 8・ 575- Z (G09C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 重徳  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 山崎 慎一
石井 茂和
発明の名称 クラウド内にデータを確保するシステムおよび方法  
代理人 山本 健策  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  
代理人 飯田 貴敏  
代理人 石川 大輔  

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