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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  H01M
審判 一部無効 1項3号刊行物記載  H01M
管理番号 1338923
審判番号 無効2013-800236  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-12-18 
確定日 2018-04-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第5072123号発明「扁平形非水電解質二次電池」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5072123号についての手続の経緯は、以下のとおりである。
平成11年 8月27日 原出願(特願平11-240964号)
平成21年10月 9日 本件分割出願(特願2009-234722号)
平成24年 8月31日 特許権の設定登録
平成25年12月18日 無効審判請求
平成26年 3月24日 被請求人:審判事件答弁書
平成26年 6月30日 審理事項通知
平成26年 7月24日 請求人:口頭審理陳述要領書
平成26年 7月31日 被請求人:口頭審理陳述要領書
平成26年 8月 7日 口頭審理
平成26年 9月 8日 被請求人:訂正請求書、意見書
平成27年11月13日 請求人:審判事件弁駁書
平成27年 3月 6日 併合審理通知(無効2013-800022号)
平成27年 3月 9日 通知書
平成27年 4月 9日 被請求人:意見書
平成27年 6月 4日 通知書
平成27年 7月28日 請求人:意見書
〃 請求人:審判事件弁駁書(無効2013-800 022号)
平成28年 4月 7日 併合分離通知
平成28年10月18日 上申書

第2 請求人の主張
請求人は、特許第5072123号の請求項1に係る特許は無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、以下のとおり主張し、その証拠方法として下記甲第1?4号証を提出し、口頭審理陳述要領書で下記甲第5?8号証を提出している。

1 無効理由I
特許第5072123号(以下、「本件特許」という。)の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項2号に該当し、無効とすべきである。

2 無効理由II
本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明と周知技術に基いて、本件特許に係る特許出願の原出願の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項2号に該当し、無効とすべきである。

なお、無効理由I及び無効理由IIの具体的理由は、概略、次のとおりである。
本件特許発明と甲第1号証の「比較例4」として記載されるコイン型非水電解質電池(甲第1号証に記載された発明)との間に相違点はないから、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明である。
本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明と甲第2?4号証に示されるような、絶縁ガスケットを介して嵌合された正極ケースまたは負極ケースが加締め加工により加締められた封口構造という周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書第10頁?第17頁)


甲第1号証: 国際公開第98/28804号
甲第2号証: 特開平9-63644号公報
甲第3号証: 特開平10-92414号公報
甲第4号証: 特開昭63-259967号公報
甲第5号証: JIS C8500^(:2013 ),一次電池通則,
日本規格協会,平成25年3月21日,p.1-42
甲第6号証: 電池便覧,丸善株式会社,平成2年8月20日,p.32 2-338
甲第7号証: Research and Development o f Li Swing Type Secondary
Battery(II),1994年9月16日,p.1 -139
甲第8号証: Research and development o f Polymer Secondary Batte ry,1990年6月,p.1-64

第3 被請求人の主張
被請求人は、答弁書において、無効理由I及びIIはいずれも成立しない旨主張し、下記乙第1-4号証および参考資料を提出し、口頭審理陳述要領書において、下記乙第5号証を提出した。


乙第1号証:特許第5072123号公報
乙第2号証:フリー百科事典『ウィキペディア』ボタン型電池(2013 年6月14日作成)
乙第3号証:フリー百科事典『ウィキペディア』コイン形リチウム電池( 2013年6月19日作成)
乙第4号証:実開昭61-42062号公報
乙第5号証:JIS規格「JIS C 8515」(平成25年3月21 日発行)
参考資料1:特開2011-129253号公報

第4 口頭審理において告知された無効理由
本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証明細書本文の第8頁下から2行ないし第9頁第12行、第9頁第20行ないし第10頁第8行、第10頁最終行ないし第11頁第9行及び図4等に記載された実施例2に係るコイン型リチウムイオン二次電池に関する記載事項、又は、同号証明細書本文の第12頁第5行ないし第21行、第13頁第15行ないし第14頁第1行に記載された比較例4に係るコイン型リチウムイオン二次電池に関する記載事項に、甲第2号証及び甲第6号証に記載されたガスケットの封口構造に関する周知技術を、それぞれ、組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、該請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、上記特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。

第5 本件特許発明
本件無効審判と特許法第154条による併合審理がなされた別件無効審判(無効2013-800022号;以下、「別件無効」という。)において、本件特許5072123号に係る請求項1?8に係る発明について、平成27年2月25日付けで訂正請求がなされ、その訂正は別件無効審決において認められた。
これにより、本件の平成26年9月8日付け訂正請求は取り下げられたものとみなされる。
よって、本件特許の請求項1に係る発明は、次に記載されるとおりである(以下、「本件特許発明」という。)。

「【請求項1】
負極端子を兼ねる金属製の負極ケースと正極端子を兼ねる金属製の正極ケースとが絶縁ガスケットを介して嵌合され、さらに前記正極ケースまたは負極ケースが加締め加工により加締められた封口構造を有し、その内部に、少なくとも、正極板と負極板とがセパレータを介し多層積層されて対向配置している電極群を含む発電要素と、非水電解質とを内包し、前記絶縁ガスケットが円形である、コイン形又はボタン形の扁平形非水電解質二次電池において、
前記正極板は、導電性を有し、直線状の2辺が対向する部分を有する正極構成材の表面に、塗工により正極作用物質を含有する作用物質含有層を有し、かつ前記正極構成材の直線状の部分から連続した一部である幅の狭い張り出し部に、前記正極構成材が露出している通電部を有しており、
前記負極板は、導電性を有し、直線状の2辺が対向する部分を有する負極構成材の表面に、塗工により負極作用物質を含有する作用物質含有層を有し、かつ前記負極構成材の直線状の部分から連続した一部である幅の狭い張り出し部に、前記負極構成材が露出している通電部を有しており、
前記正極板の各通電部が、電池の扁平面に平行な方向において同方向を向くように、かつセパレータが配置されている箇所よりも外側に露出するように配置され、
前記負極板の各通電部が、前記正極板の各通電部が露出している位置に対向する位置において、電池の扁平面に平行な方向において同方向を向くように、かつセパレータが配置されている箇所よりも外側に露出するように配置されていて、
前記各正極板同士及び前記各負極板同士が、それぞれの通電部の電気的接続によって接続されており、
前記電極群は両端の最外部と中間部とからなり、少なくとも中間部に位置する前記各正極板及び前記各負極板は、前記各正極構成材及び前記各負極構成材の両面に前記各作用物質含有層を有しており、
前記電極群は、前記正極板、前記負極板および前記セパレータが電池の扁平面に平行に積層されており、かつ前記セパレータを介して対向している前記正極板の作用物質含有層と前記負極板の作用物質含有層との対向面が少なくとも5面であり、
前記電極群内の正極板の作用物質含有層と負極板の作用物質含有層との対向面積が、前記絶縁ガスケットの開口面積よりも大きいことを特徴とする扁平形非水電解質二次電池。」

第6 当審の判断
1 甲第1?8号証(以下、それぞれ、「甲第1号証」・・・「甲第8号証」という。)の記載事項
(なお、下線は、当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。
以下、同様。)
(1)甲第1号証
(1a)「背景技術
非水電解質電池、特にリチウム二次電池における正負両極は、活物質粉体を、導電材と高分子バインダを混合し、溶媒で溶いて塗料化したものを金属箔に塗布、乾燥させ、所定の形状に成形して製造されている。この電極中に占める活物質の割合はおよそ40vol%で、残りはバインダ、導電材、金属箔等20?30vol%および空孔30?40vol%から構成されている。したがって、バインダ、導電材、金属箔といった本来電極の容量に寄与しないものが体積当たりの電気容量を制限する。また金属箔は電極の重量として大きな割合を占め、単位重量当たりの電気容量をも制限している。」(明細書第1頁第6?15行)

(1b)「発明の開示
そこで、本発明の第1の目的は、実質的に活物質のみからなる多孔質体を電極材料とすることにより、構成される電池の容器内の電極中のデッドスペースの容積を減少させ、単位体積当たりの電気容量を大きくすることができる非水溶媒二次電池を提供することにある。

本発明の第2の目的は、電極材料として粉体ではなく多孔質体を用いることにより、活物質は電気的に電解液と充分に接触させる一方、集電体としての金属箔ゃ導電材の使用を減少または不要とし、単位重量当たりの電気容量を従来よりも大きくすることができる非水溶媒二次電池を提供することにある。」(明細書第2頁第3?12行)

(1c)「発明を実施するための最良の形態
図1には本発明の単位セルの基本形態を示し、多孔質焼結体正極5と多孔質焼結体負極3とをセパレー夕4を介して積層し、その上下端面に各集電タブ2、2を接着し、絶縁体膜1で覆うことにより形成されている。上記多孔質焼結体からなる正極5は寸法は用途に応じて任意に作成することができ、厚みは1 0μm?2mm、好ましくは5 0μm?l mmである。

正極材料としては、従来公知の何れの材料も使用でき、例えば、LixCo0_(2),LixNi0_(2), Mn0_(2), LixMn0_(2), LiMn_(2)0_(4), LixCoyMn_(2-y)0_(4),α-V_(2)0_( 5),TiS_(2)等が挙げれるが、LiCo0_(2),LiNi0_(2), LiMn0_(4)またはリチウム遷移金属酸化物を主体とする物質が好ましい。
・・・
本発明において使用される負極材料としては、炭素材料、IIIb?Vb族酸化物、金属アルミニウム、ケイ素、またはケイ素化合物など公知の電極材料が挙げられる。 炭素材料としては 天然黒鉛、コークスやガラス状炭素、黒鉛前駆体等の炭素材料を用いることができるが、 特に、熱処理して炭素化する材料を原料として焼成した炭素材料が好ましい。
・・・
上記セパレ一タ4は厚み200 m以下、より好ましくは50m以下である薄手のポリエチレン微多孔質膜、ポリプロピレン微多孔質膜やポリプロピレン不織布など公知のいずれのものであってもよい。
本発明に使用される非水電解液は、有機溶媒と電解質とを適宜組み合わせて調製されるが、これら有機溶媒や電解質はこの種の電池に用いられるものであればいずれも使用可能である。
・・・
電解質としては、例えばLiC10_( 4),LiAsF_(6),LiBF_(4), LiB(C_( 6)H_( 5))_(4) ,LiCl, LiPF_( 6)(LiBr, Lil,CH_(3)S0_( 3)Li,CF_(3)S0_( 3)Li, LiAlCl_(4)等が挙げられ、これらの1種を単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる
・・・
図4は上記集電タブの両側に形成した多孔質焼結体を備える複合正極板5 0と集電タブの両側に形成した多孔質焼結体を備える負極板3 0とをセパレータ4を介して積層した電池単位6を繰り返し、最後は上側に負極板3?1、上集電タブ2?1、上絶縁体膜1?1を重ねる一方、多孔質焼結体正極板5?2、 下集電タブ 2?2、下絶縁体膜1?2を重ね、多層型セルを構成している。・・・」(明細書第2頁末行?第9頁第5行)

(1d)「


」(図中、「上絶縁薄膜」等の名称は当審において付与した。)

(1e)「製造例1 (正極の製造)
炭酸リチウム粉末と炭酸コバルト粉末をモル比でLi/Co=1/1となるように混合し、大気雰囲気中でセ氏600度1時間仮焼する。次いでこれを粉砕し、アクリル繊維直径20μm長さ50μmを混合して押し固め、大気雰囲気中でセ氏800度10時間熱処理を施して研磨工程を経て直径15mm厚さ0.4mm比重一立方センチメートル当たり3.0g、空孔率40%の正極を得た。」(明細書第9頁第6-12行)

(1f)「製造例3 (負極の製造)
太さ20μmのポリエステル繊維70万本を内径18mm筒状の容器に収納し、さらに容器内の空間を充填するように熱硬化性樹脂、詳しくはフルフリルアルコール100重量部、92%パラホルムアルデビド46重量部、フエノール134重量部の組成物を流し込んで繊維に含浸させた。これを80℃の乾燥機に72時間入れて樹脂を硬化させた後、得られた棒状の硬化物をダイヤモンドカッタを用いて厚さ0.5mmのディスク状に切断した。次いでこれを不活性雰囲気下2,200℃で3時間熱処理し、硬化樹脂を炭化させるとともに含浸繊維を分解揮散させ、直径15mm厚さ0.4mm重量0.05g、空孔率36%のカーボン薄板を製造した。これを顕微鏡(×200)で観察し一平方ミリメートル中の平均孔径が20/μm連通孔の数は2,000であり、厚さ方向の電気伝導度を両面に金属板を張り付けて測定した結果は1×100S/cm以上であった。これを負極とした。」(明細書第9頁第20行?第10頁第8行)

(1g)「実施例2
製造例1および3で得られた正極板と負極板にそれぞれ集電を目的とする金属片を付け、ポリエチレン多孔膜をセパレータとしてはさみ正極板側を上方として電池素単位を作った。この電池素単位をセパレータをはさんで10単位積み重ね、正極負極それぞれで集電用の金属片を束ねて一つの正極の集電体束と一つの負極の集電体束を作り、負極を最下層に、正極を最上層に導きコイン電池用の金属容器に入れ、電解液にエチレンカ一ボネ一トとジメチルカーボネート体積比で1:1の混合溶媒に1mon/l(審決注;「1mol/l」の誤記)の六フッ化リン酸リチウムを加えたものを用いてコイン型リチウムイオン二次電池を得た。この電気容量は180mAhであった。」(明細書第10頁末行?第11頁第9行)

(1h)「比較例2
正負両極共上述の焼成品で繊維を混入していないものを粉砕し、メジアン径が共に30μm程度にしたコバルト酸リチウムの粉体と炭素の粉体を得た。
正極の場合はコバルト酸リチウムの粉体90重量部にアセチレンブラック9重量部、炭素粉9重量部、ポリフッ化ビニリデン12重量部を混入し、n-メチル-2-ピロリドンで溶いてペースト状にし、厚さ20μmのアルミ二ウム箔に塗布し乾燥、カレンダプレスを経て厚さ0.4mmとし、直径15μm(審決注;「15mm」の誤記)に打ち抜いた。負極は炭素の粉体90重量部にポリフッ化ビニリデン10重量部を混入し、n-メチル-2-ピロリドンで溶いてぺ一スト状にし、乾燥、カレンダプレスを経て厚さ0.4mmとし、厚さ15μmの銅箔に塗布し直径15μm(審決注;「15mm」の誤記)に打ち抜いた。これら正極と負極の間にポリエチレン多孔膜をセパレー夕としてはさみ、電解液にエチレンカーボネートとジメチルカーボネート体積比で1:1の混合溶媒に1mon/l(審決注;「1mol/l」の誤記)の六フッ化リン酸リチウムを加えたものを用いてコイン型リチウム二次電池を得た。この電気容量は14mAhであり、実施例1の性能の優位が示される。」(明細書第12頁第5?21行)

(1i)「比較例4
比較例2で得られた正極板と負極板にそれぞれ集電を目的とする金属片を集電体にスポット溶接によって取り付け、ポリエチレン他孔膜(審決注;「多孔膜」の誤記」をセパレータとしてはさみ正極板側を上方として電池素単位を作つた。この電池素子単位を絶縁薄膜をはさんで10単位積み重ね、正極負極それぞれで集電用の金属片を束ねて一つの正極の集電体束と一つの負極の集電体束を作り、負極を最下層に、正極を最上層に導きコイン電池用の金属容器に入れ、電解液にエチレンカーボネートとジメチルカーボネート体積比で1:1の混合溶媒に1mon/l(審決注;「1mol/l」の誤記)の六フッ化リン酸リチウムを加えたものを用いてコイン型リチウムイオン二次電池を得た。この電気容量は140mAhであった。
実際に広く用いられるような条件でも実施例2の性能の優位が示された」
(明細書第13頁第15行?第14頁第1行)

(2)甲第2号証
(2a)「【0026】実施例7 電池サイクル寿命
図1に示した電池寸法が外径20mm、高さ2.5mmのコイン形非水電解液電池を製作した。負極には金属リチウムを、正極2にはLiCoO_(2)85重量部に導電剤としてグラファイト12重量部、結合剤としてフッ素樹脂3重量部を加えた混合物を加圧成形したものを用いた。これら負極1、正極2を構成する物質は、ポリプロピレンから成る多孔質セパレータを介してそれぞれ負極缶4および正極缶5に圧着されている。このような電池の電解液として炭酸トリフルオロメチルエチレン(TFMEC)と炭酸ジメチル(DMC)とを体積比1:1の割合で混合した溶媒にLiPF_(6)を1.0mol/L(リットル)の割合で溶解したものを用い、封口ガスケット6より封入した。」

(2b)「




(3)甲第3号証
(3a)「【0017】(実施例1)図1は、本発明の実施例に用いたコイン型の非水電解液二次電池の断面図、・・・を示し、図において1はステンレス鋼製ケース、2はステンレス製封口板、3は一方の表面にInメッキ層3aを施した銅製の負極集電体、4はInメッキ層3aに積層して形成したリチウムを吸蔵,放出できる球状黒鉛とフッ素樹脂製粘着剤とから構成した黒鉛層、5は負極で、負極集電体3の表面にInメッキ層3aおよび黒鉛層4を順次積層して形成している。6はアルミニウム箔製の正極集電体で、表面にLiCoO_(2) と、アセチレンブラックとフッ素樹脂とで構成された正極活物質層7を形成して正極としている。8はポリプロピレン樹脂製のセパレータ、9はポリプロピレン樹脂製のガスケットである。・・・」

(3b)「




(4)甲第4号証
(4a)「第1図は酸化銅リチウム電池の縦断面図を示す。」(第2頁右上欄第9行)

(4b)「




(5)甲第5号証


」(「3 用語及び定義」第2頁)

(6)甲第6号証


」(第330頁)

(7)甲第7号証



」(第51頁)

(8)甲第8号証
(8a) 「


」(第26頁)

(8b)「


・・・


」(第28頁)
(当審による翻訳:
「「イ.電池の組立
・・・
(3)組立て及びクランプ
Dry box内で製造したanode部に、電解液を0.2ml含浸させた後、cathode部を閉めて写真2-5のクランプ工具を利用してクランプさせコイン型のPan/Li-Al2次電池を製造した。写真2-7,2-8に電池の組立過程と製造したコイン型Pan/Li-Al2次電池をそれぞれ表している。」)

2 甲第1号証に記載された発明
(1)上記(1e)?(1g)によれば、実施例2に記載される電極群を図示すると次のようになる。
(参考図1)


なお、口頭審理の際に告知された前記無効理由において「本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証明細書本文の第8頁下から2行ないし第9頁第12行、第9頁第20行ないし第10頁第8行、第10頁最終行ないし第11頁第9行及び図4等に記載された実施例2に係るコイン型リチウムイオン二次電池に関する記載事項」とされた図4に示される電極群は、「図4は上記集電タブの両側に形成した多孔質焼結体を備える複合正極板50と集電タブの両側に形成した多孔質焼結体を備える負極板30とをセパレー夕4を介して積層した電池単位6を繰り返し、最後は上側に負極板3-1、上側集電タブ2-1、上絶縁体膜1-1を重ねる一方、多孔質焼結体5-2、下側集電タブ2-2、下絶縁体膜1-2を重ね、多層型セルを構成している。」(第8頁下から第2行?第9頁第4行)との記載のとおりのもの(下記に再掲)であって、実施例2に記載される電極群(参考図1)とは構造が異なり、実施例2に係るコイン形リチウムイオン二次電池の構造を説明したものではない。



そして、上記(1g)の実施例2において用いられる正極板、負極板は、上記(1e)、(1f)によれば、実質的に活物質のみからなる多孔質体であることは明らかである。
よって、甲第1号証には、上記(1e)-(1g)および上記参考図1によれば、実施例2に係るコイン形リチウムイオン二次電池として、以下の発明が記載されているといえる。
「コイン電池用の金属容器の内部に、円形の正極板と負極板との間にセパレータをはさんで、正極板側を上方とした電池素単位を10単位積み重ねた電極群と、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1)に1mol/lの六フッ化リン酸リチウムを加えた電解液を含むコイン形リチウムイオン二次電池において、
前記正極板は、実質的に活物質のみからなる多孔質体であり、集電用の金属片が付けられ、
前記負極板は、実質的に活物質のみからなる多孔質体であり、集電用の金属片が付けられ、
前記各正極板の集電用の金属片を束ねて一つの正極の集電体束を作り、前記各負極板の集電用の金属片を束ねて一つの負極の集電体束を作り、
前記電極群は、前記正極板、前記負極板および前記セパレータが、実質的に電池の扁平面に平行に積層されている、
コイン型リチウムイオン二次電池。」(以下、「甲1-1発明」という。)

(2)上記(1h)、(1i)に基づき、比較例4に記載される電極群を図示すると次のようになる。

(参考図2)



そして、甲第1号証には、上記(1h)、(1i)および上記参考図2によれば、比較例4に係るコイン形リチウムイオン二次電池として、以下の発明も記載されていると認められる。
「コイン電池用の金属容器の内部に、円形の正極板と負極板との間にセパレータをはさんで、正極板側を上方として作製した電池素単位を、絶縁薄膜をはさんで10単位積み重ねた電極群と、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1)に1mol/lの六フッ化リン酸リチウムを加えた電解液を含むコイン形リチウムイオン二次電池において、
前記正極板は、円形の集電体であるアルミニウム箔の片面に、ペースト状物の塗布によるコバルト酸リチウム含有層を有し、アルミニウム箔の片面には集電用の金属片が取り付けられ、
前記負極板は、円形の集電体である銅箔の片面に、ペースト状物の塗布による炭素含有層を有し、銅箔の片面には集電用の金属片が取り付けられ、
前記各正極板の集電用の金属片を束ねて一つの正極の集電体束を作り、前記各負極板の集電用の金属片を束ねて一つの負極の集電体束を作り、
前記電極群は、前記正極板、前記負極板および前記セパレータが、実質的に電池の扁平面に平行に積層されており、かつ、セパレータを介して対向している正極板のコバルト酸リチウム含有層と負極板の炭素含有層との対向面が10面であり、絶縁薄膜を介して対向している正極板のコバルト酸リチウム含有層と負極板の炭素含有層との対向面が9面あり、セパレータを介して対向している対向面と絶縁薄膜を介して対向している対向面が交互に存在すしている、
コイン型リチウムイオン二次電池。」(以下、「甲1-2発明」という。)

3 対比・判断
(1)甲1-1発明を主引用発明として
(1-1)対比
本件特許発明と甲1-1発明とを対比すると、本件特許発明において、「負極端子を兼ねる金属製の負極ケースと正極端子を兼ねる金属製の正極ケースとが絶縁ガスケットを介して嵌合され、さらに前記正極ケースまたは負極ケースが加締め加工により加締められた封口構造を有」するものは、その内部に、少なくとも、正極板と負極板とがセパレータを介し多層積層されて対向配置している電極群を含む発電要素と、非水電解質とを内包し、コイン形又はボタン形の扁平形非水電解質二次電池を構成するものであり、コイン形又はボタン形の扁平形非水電解質二次電池における「容器」といえるから、甲1-1発明における「コイン電池用の金属容器」とは「電池用の容器」との点で共通する。
そして、甲1-1発明における「円形の正極板と負極板と・・・重ねた電極群」、「エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1)に1mol/lの六フッ化リン酸リチウムを加えた電解液」、「コイン型リチウムイオン二次電池」は、それぞれ、本件特許発明の「正極板と負極板とが・・・発電要素」、「非水電解質」、「コイン形」の「扁平型非水電解質二次電池」に相当する。
また、甲1-1発明において、「前記各正極板の集電用の金属片を束ねて一つの正極の集電体束を作り、前記各負極板の集電用の金属片を束ねて一つの負極の集電体束を作」ることにより、各正極板同士及び前記負極板同士が、それぞれの集電用の金属片の電気的接続によって接続されることは明らかである。
さらに、本件特許発明における「前記正極構成材の直線状の部分から連続した一部である幅の狭い張り出し部に、前記正極構成材が露出している通電部」と、甲1-1発明の「円形の多孔質焼結体からなる正極板」に「付けられる集電用の金属片」とは、正極板の集電部材として機能する点で共通し、本件特許発明における「前記負極構成材の直線状の部分から連続した一部である幅の狭い張り出し部に、前記負極構成材が露出している通電部」と、甲1-1発明の「円形の多孔質焼結体からなる負極板」に「付けられる集電用の金属片」とは、負極板の集電部材として機能する点で共通する。

よって、両者は、以下の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「電池用の容器内部に、少なくとも、正極板と負極板とが多層積層されて対向配置している電極群を含む発電要素と、非水電解質とを内包する、コイン形の扁平形非水電解質二次電池において、
前記各正極板同士及び前記負極板同士が、それぞれの集電部材の電気的接続によって接続されており、
前記電極群は両側の最外部と中間部とからなり、
前記電極群は、前記正極板、前記負極板および前記セパレータが電池の扁平面に平行に積層されているコイン形の扁平形非水電解質二次電池。」

(相違点1)
前記電池用の容器について、本件特許発明は「負極端子を兼ねる金属製の負極ケースと正極端子を兼ねる金属製の正極ケースとが絶縁ガスケットを介して嵌合され、さらに前記正極ケースまたは負極ケースが加締め加工により加締められた封口構造を有し」、「前記絶縁ガスケットの開口が円形である」のに対し、甲1-1発明では、「コイン電池用の金属容器」である点。

(相違点2)
本件特許発明では、前記正極板は、「導電性を有し、直線状の2辺が対向する部分を有する正極構成材の表面に、塗工により正極作用物質を含有する作用物質含有層を有し」、かつ「前記正極構成材の直線状の部分から連続した一部である幅の狭い張り出し部に、前記正極構成材が露出している通電部を有し」ており、また、前記負極板は、「導電性を有し、直線状の2辺が対向する部分を有する負極構成材の表面に、塗工により負極作用物質を含有する作用物質含有層を有し」、かつ「前記負極構成材の直線状の部分から連続した一部である幅の狭い張り出し部に、前記負極構成材が露出している通電部を有し」ているのに対して、甲1-1発明では、かかる構成を備えておらず、前記正極板が「円形の実質的に活物質のみからなる多孔質体であり、集電用の金属片が付けられ」ており、前記負極板が「円形の実質的に活物質のみからなる多孔質体であり、集電用の金属片が付けられ」ている点。

(相違点3)
本件特許発明では、「前記正極板の各通電部が、電池の扁平面に平行な方向において同方向を向くように、かつセパレータが配置されている箇所よりも外側に露出するように配置され、
前記負極板の各通電部が、前記正極板の各通電部が露出している位置に対向する位置において、電池の扁平面に平行な方向において同方向を向くように、かつセパレータが配置されている箇所よりも外側に露出するように配置されてい」るのに対し、甲1-1発明では、それが明らかではない点。

(相違点4)
本件特許発明では、前記電極群は、「少なくとも中間部に位置する前記各正極板及び前記各負極板は、前記各正極構成材及び前記各負極構成材の両面に前記各作用物質含有層を有し」ているのに対して、甲1-1発明では、そのような構成を有していない点。

(相違点5)
本件特許発明では、「前記セパレータを介して対向している前記正極板の作用物質含有層と前記負極板の作用物質含有層との対向面が少なくとも5面であり、前記電極群内の正極板の作用物質含有層と負極板の作用物質含有層との対向面積が、前記絶縁ガスケットの開口面積よりも大き」いのに対して、甲1-1発明では、そのような構成を有していない点。

(1-2)判断
・相違点1について
コイン形の扁平形非水電解質電池における容器として、「負極端子を兼ねる金属製の負極ケースと正極端子を兼ねる金属製の正極ケースとが絶縁ガスケットを介して嵌合され、さらに前記正極ケースまたは負極ケースが加締め加工により加締められた封口構造を有し」、「前記絶縁ガスケットの開口が円形である」ものは周知であり(甲第2?4、6?8号証)、甲1-1発明におけるコイン電池用の金属容器として、該周知のものを適用することは当業者が適宜なし得ることである。

・相違点2について
コイン形の扁平形非水電解質二次電池において、正極板が、「導電性を有し、直線状の2辺が対向する部分を有する正極構成材の表面に、塗工により正極作用物質を含有する作用物質含有層を有し」、かつ「前記正極構成材の直線状の部分から連続した一部である幅の狭い張り出し部に、前記正極構成材が露出している通電部を有し」ており、また、負極板が、「導電性を有し、直線状の2辺が対向する部分を有する負極構成材の表面に、塗工により負極作用物質を含有する作用物質含有層を有し」、かつ「前記負極構成材の直線状の部分から連続した一部である幅の狭い張り出し部に、前記負極構成材が露出している通電部を有し」ているものは、甲第1?8号証のいずれにも記載も示唆もなく、また、それが周知、慣用技術であるとも認められない。
よって、当該相違点2に係る構成は、当業者が容易になし得たものとはいえない。
また、仮に、かかる構成が公知技術あるいは周知、慣用技術であったとしても、甲第1号証の記載によれば、「非水電解質電池、特にリチウム二次電池における正負両極は、活物質粉体を、導電材と高分子バインダを混合し、溶媒で溶いて塗料化したものを金属箔に塗布、乾燥させ、所定の形状に成形して製造されている。・・・したがって、バインダ、導電材、金属箔といった本来電極の容量に寄与しないものが体積当たりの電気容量を制限する。また金属箔は電極の重量として大きな割合を占め、単位重量当たりの電気容量をも制限している。」(上記(1a))ことを問題とし、これに対して、「実質的に活物質のみからなる多孔質体を電極材料とすることにより、構成される電池の容器内の電極中のデッドスペースの容積を減少させ」、また、「電極材料として粉体ではなく多孔質体を用いることにより、活物質は電気的に電解液と充分に接触させる一方、集電体としての金属箔や導電材の使用を減少または不要とし単位重量当たりの電気容量を大きくすることができる非水溶媒二次電池を提供する」(上記(1b))と記載されている。
そして、これらの記載によれば、実質的に金属箔や導電材を含まない多孔質体を電極材料とした場合に、体積当たりの電気容量が制限されず、また、粉体ではなく多孔質体を電極材料とする場合には、集電体としての金属箔や導電材の量を減らしたりあるいは不要にすることができ、重量当たりの電気容量が制限されないものと認められる。
そうすると、「正極構成材の表面に、塗工により正極作用物質を含有する作用物質含有層を有」する正極板や、「負極構成材の表面に、塗工により負極作用物質を含有する作用物質含有層を有」する負極板のような、活物質粉体、導電材を含む塗料を金属箔に塗布、乾燥させて製造する電極(板)の使用は、体積当たりの電気容量、重量当たりの電気容量のいずれをも制限するのであるから、甲1-1発明において、かかる構成の電極とすることには阻害事由があるといえる。
よって、当該相違点2に係る構成は、当業者が容易になし得たものとはいえない。

・相違点4について
正極板と負極板とがセパレータを介して多層積層されて対向配置している電極群を含むコイン形の扁平形非水電解質二次電池において、「少なくとも中間部に位置する各正極板及び各負極板は、各正極構成材及び各負極構成材の両面に各作用物質含有層を有し」、「正極板と負極板とがセパレータを介して多層積層され」たものは、甲第1?8号証のいずれにも記載も示唆もなく、また、それが、周知、慣用技術であるとも認められない。
したがって、当該相違点4に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

以上のとおり、相違点1、2、4は実質的な相違点であり、また、相違点2、4については、当業者が容易になし得たことはいえないから、相違点3、5について検討するまでもなく、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲1-1発明及び甲第1?8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)甲1-2発明を主引用発明として
(2-1)対比
本件特許発明と甲1-2発明とを対比すると、本件特許発明において、「負極端子を兼ねる金属製の負極ケースと正極端子を兼ねる金属製の正極ケースとが絶縁ガスケットを介して嵌合され、さらに前記正極ケースまたは負極ケースが加締め加工により加締められた封口構造を有」するものは、その内部に、少なくとも、正極板と負極板とがセパレータを介し多層積層されて対向配置している電極群を含む発電要素と、非水電解質とを内包し、コイン形又はボタン形の扁平形非水電解質二次電池を構成するものであり、コイン形又はボタン形の扁平形非水電解質二次電池における「容器」といえるから、甲1-2発明における「コイン電池用の金属容器」とは「電池用の容器」との点で共通する。
そして、甲1-2発明における「集電体であるアルミニウム箔」、「ペースト状物の塗布によるコバルト酸リチウム含有層」、「集電体である銅箔」、「ペースト状物の塗布による炭素含有層」、「エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1)に1mol/lの六フッ化リン酸リチウムを加えた電解液」、「コイン型リチウムイオン二次電池」は、本件特許発明の「導電性を有」する「正極構成材」、「塗工により正極作用物質を含有する作用物質含有層」、「導電性を有」する「負極構成材」、「塗工により負極作用物質を含有する作用物質含有層」、「非水電解質」、「コイン形」の「扁平形非水電解質二次電池」に相当する。
また、甲1-2発明において、「各正極板および各負極板の集電用の金属片をそれぞれを束ねて一つの正極の集電体束と一つの負極の集電体束が形成」されることによって、「各正極板同士及び前記負極板同士が、それぞれの集電部材の電気的接続によって接続され」ることは明らかである。
そして、本件特許発明における「前記正極構成材の直線状の部分から連続した一部である幅の狭い張り出し部に、前記正極構成材が露出している通電部」と、甲1-2発明の「アルミニウム箔」の「片面に」「スポット溶接で取り付けられ」る「集電用の金属片」は、正極板の集電部材である点で共通し、本件特許発明における「前記負極構成材の直線状の部分から連続した一部である幅の狭い張り出し部に、前記負極構成材が露出している通電部」と、甲1-2発明の「銅箔」の「片面に」「スポット溶接で取り付けられる」「集電用の金属片」は、負極板の集電部材である点で共通する。

よって、両者は、以下の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「電池用の容器内部に、少なくとも、正極板と負極板とが多層積層されて対向配置している電極群を含む発電要素と、非水電解質とを内包する、コイン形の扁平形非水電解質二次電池において、
前記正極板は、導電性を有する正極構成材の表面に、塗工により正極作用物質を含有する作用物質含有層を有し、
前記負極板は、導電性を有する負極構成材の表面に、塗工により負極作用物質を含有する作用物質含有層を有し、
前記各正極板同士及び前記負極板同士が、それぞれの集電部材の電気的接続によって接続されており、
電極群は両端の最外部と中間部とからなり、
前記電極群は、前記正極板、前記負極板および前記セパレータが電池の扁平面に平行に積層されている、
コイン形の扁平形非水電解質二次電池。」

(相違点6)
前記電池用の容器について、本件特許発明は「負極端子を兼ねる金属製の負極ケースと正極端子を兼ねる金属製の正極ケースとが絶縁ガスケットを介して嵌合され、さらに前記正極ケースまたは負極ケースが加締め加工により加締められた封口構造を有し」、「前記絶縁ガスケットの開口が円形である」のに対し、甲1-2発明では、「コイン電池用の金属容器」である点。

(相違点7)
本件特許発明では、前記正極構成材が「直線状の2辺が対向する部分を有する」形状であり、前記正極板の集電部材が「前記正極構成材の直線状の部分から連続した一部である幅の狭い張り出し部に、前記正極構成材が露出している通電部」であるのに対して、甲1-2発明では、前記正極構成材が「円形」であり、前記正極板の集電部材が、前記正極構成材の「片面に取り付けられ」る「金属片」であり、また、本件特許発明1では、前記負極構成材が「直線状の2辺が対向する部分を有する」形状であり、前記負極板の集電部材が「前記負極構成材の直線状の部分から連続した一部である幅の狭い張り出し部に、前記負極構成材が露出している通電部」であるのに対して、甲1-2発明では、前記負極構成材が「円形」であり、前記負極板の集電部材が、前記負極構成材の「片面に取り付けられ」る「金属片」である点。

(相違点8)
本件特許発明では、「前記正極板の各通電部が、電池の扁平面に平行な方向において同方向を向くように、かつセパレータが配置されている箇所よりも外側に露出するように配置され、
前記負極板の各通電部が、前記正極板の各通電部が露出している位置に対向する位置において、電池の扁平面に平行な方向において同方向を向くように、かつセパレータが配置されている箇所よりも外側に露出するように配置されている」のに対し、甲1-2発明では、それが明らかではない点。

(相違点9)
本件特許発明では、前記電極群は、「少なくとも中間部に位置する前記正極板及び前記負極板は、前記正極構成材及び前記負極構成材の両面に前記各作用物質含有層を有し」、「正極板と負極板とがセパレータを介して多層積層され」、「前記セパレータを介して対向している前記正極板の作用物質含有層と前記負極板の作用物質含有層との対向面が少なくとも5面であ」るのに対して、甲1-2発明では、前記電極群は、「中間部に位置する前記正極板および負極板が、前記正極構成材および負極構成材の片面にのみ、前記各作用物質層を有して」おり、「正極板と負極板はセパレータおよび絶縁薄膜を交互に介して多層積層され」、「前記セパレータを介して対向している正極板の作用物質含有層と負極板の作用物質含有層との対向面が10面であ」るが、「絶縁薄膜を介して正極板の作用物質含有層と負極板の作用物質含有層とが対向している面が9面ある」点。

(相違点10)
本件特許発明では、「前記電極群内の正極板の作用物質含有層と負極板の作用物質含有層との対向面積が、前記絶縁ガスケットの開口面積よりも大き」いのに対して、甲1-2発明では、それが明らかではない点。

(2-2)判断
・相違点6について
前記「(1)(1-2)」の「・相違点1について」と同様である。

・相違点7について
コイン形の扁平形非水電解質二次電池において、正極構成材が「直線状の2辺が対向する部分を有する」形状であり、正極板の集電部材が「前記正極構成材の直線状の部分から連続した一部である幅の狭い張り出し部に、前記正極構成材が露出している通電部」であり、また、負極構成材が「直線状の2辺が対向する部分を有する」形状であり、負極板の集電部材が「前記負極構成材の直線状の部分から連続した一部である幅の狭い張り出し部に、前記負極構成材が露出している通電部」である、当該相違点7に係る構成については、甲第1?8号証のいずれにも記載も示唆もなく、また、それが、周知または慣用技術であるともいえない。
したがって、当該相違点7に係る構成は、当業者が容易になし得たものとはいえない。

・相違点9について
正極板と負極板とがセパレータを介して多層積層されて対向配置している電極群を含むコイン形の扁平形非水電解質二次電池において、「少なくとも中間部に位置する正極板及び負極板は、正極構成材及び負極構成材の両面に各作用物質含有層を有し」、「正極板と負極板とがセパレータを介して多層積層され」たものは、甲第1?8号証のいずれにも記載も示唆もなく、また、それが、周知または慣用技術であるともいえない。
したがって、当該相違点9に係る構成は、当業者が容易になし得たものとはいえない。

以上のとおり、相違点6、7、9は実質的な相違点であり、また、相違点7、9については当業者が容易になし得たものとはいえないから、相違点8、10について検討するまでもなく、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲1-2発明及び甲第1?8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)なお、甲第1号証の上記(1d)の図4に係るものに基づく特許法第29条第1項第3号、同第29条第2項の無効理由の有無についても、以下、検討する。
(3-1)上記(1c)、(1d)の図4の記載によれば、甲第1号証には、
「集電タブの両側に形成した多孔質焼結体を備える複合正極板と集電タブの両側に形成した多孔質焼結体を備える複合負極板とをセパレータを介して積層した電池単位を繰り返し、上側に多孔質焼結体負極板、上集電タブ、上絶縁体膜を重ねる一方、下側に多孔質焼結体正極板、下集電タブ、下絶縁体膜を重ねた多層型セルと、プロピレンカーボネート等の有機溶媒にLiClO_(4)等の電解質を加えた電解液を有する非水電解液二次電池において、
前記複合正極板の各集電タブが、同方向を向くように、かつセパレータが配置されている箇所よりも外側に露出するように配置され、
前記複合負極板の各集電タブが、前記複合正極板の各集電タブが露出している位置に対向する位置において、同方向を向くように、かつセパレータが配置されている箇所よりも外側に露出するように配置されている非水電解液二次電池。」(以下、「甲1-3発明」という。)が記載されていると認められる。

(3-2)対比
本件特許発明と甲1-3発明とを対比すると、甲1-3発明における「集電タブの両側に形成した多孔質焼結体を備える複合正極板と集電タブの両側に形成した多孔質焼結体を備える複合負極板とをセパレータを介して積層した電池単位を繰り返し、上側に多孔質焼結体負極板、上集電タブ、上絶縁体膜を重ねる一方、下側に多孔質焼結体正極板、下集電タブ、下絶縁体膜を重ねた多層型セル」は、「電極群」であり、「発電要素」であるといえる。
また、甲1-3発明における「複合正極板」、「複合負極板」、「プロピレンカーボネート等の有機溶媒にLiClO_(4)等の電解質を加えた電解液」、「非水電解液二次電池」は、それぞれ、本件特許発明の「正極板」、「負極板」、「非水電解質」、「非水電解質二次電池」に相当する。
さらに、甲1-3発明における「集電タブ」と、本件特許発明における「通電部」は、「集電部材」との点で共通する。

よって、両者は、
「少なくとも、正極板と負極板とがセパレータを介して多層積層されて対向配置している電極群を含む発電要素と、非水電解質とを有する、非水電解質二次電池において、
前記正極板の集電部材が、同方向を向くように、かつセパレータが配置されている箇所よりも外側に露出するように配置され、
前記負極板の集電部材が、前記正極板の各集電部材が露出している位置に対向する位置において、、同方向を向くように、かつセパレータが配置されている箇所よりも外側に露出するように配置され、
前記電極群は両端の最外部と中間部とからなる、
非水電解質二次電池。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点11)
本件特許発明は「負極端子を兼ねる金属製の負極ケースと正極端子を兼ねる金属製の正極ケースとが絶縁ガスケットを介して嵌合され、さらに前記正極ケースまたは負極ケースが加締め加工により加締められた封口構造を有し」、「前記絶縁ガスケットの開口が円形である」、「コイン形又はボタン形の扁平形」の電池であるのに対し、甲1-3発明では、それが明らかでない点。

(相違点12)
本件特許発明では、前記正極板は、「導電性を有し、直線状の2辺が対向する部分を有する正極構成材の表面に、塗工により正極作用物質を含有する作用物質含有層を有し」、かつ「前記正極構成材の直線状の部分から連続した一部である幅の狭い張り出し部に、前記正極構成材が露出している通電部を有し」ており、また、前記負極板は、「導電性を有し、直線状の2辺が対向する部分を有する負極構成材の表面に、塗工により負極作用物質を含有する作用物質含有層を有し」、かつ「前記負極構成材の直線状の部分から連続した一部である幅の狭い張り出し部に、前記負極構成材が露出している通電部を有し」ているのに対して、甲1-3発明では、かかる構成を備えておらず、前記正極板が「集電タブの両側に形成した多孔質焼結体を備える複合正極板」であり、前記負極板が「集電タブの両側に形成した多孔質焼結体を備える複合負極板」である点。

(相違点13)
本件特許発明では、「前記正極板の各通電部が、電池の扁平面に平行な方向において同方向を向くように」「配置され」、「前記負極板の各通電部が」「電池の扁平面に平行な方向において同方向を向くように」「配置され」ているのに対し、甲1-3発明では、それが明らかではない点。

(相違点14)
本件特許発明では、前記電極群は、「少なくとも中間部に位置する前記各正極板及び前記各負極板は、前記各正極構成材及び前記各負極構成材の両面に前記各作用物質含有層を有し」ているのに対して、甲1-3発明では、「中間部に位置する前記正極板及び前記負極板は、前記集電タブの両面に多孔質焼結体を備え」ている点。

(相違点15)
本件特許発明では、「前記電極群は、前記正極板、前記負極板および前記セパレータが電池の扁平面に平行に積層されており、かつ前記セパレータを介して対向している前記正極板の作用物質含有層と前記負極板の作用物質含有層との対向面が少なくとも5面であり、
前記電極群内の正極板の作用物質含有層と負極板の作用物質含有層との対向面積が、前記絶縁ガスケットの開口面積よりも大き」いのに対して、甲1-3発明では、かかる構成について明らかではない点。

(3-3)判断
・相違点11について
甲1-3発明においては、非水電解液二次電池の形状について特に限定されていないものの、上記(1g)のように、実施例2として、コイン型リチウムイオン電池が示されていることから、甲1-3発明を、周知(甲第2?4、6?8号証)の「負極端子を兼ねる金属製の負極ケースと正極端子を兼ねる金属製の正極ケースとが絶縁ガスケットを介して嵌合され、さらに前記正極ケースまたは負極ケースが加締め加工により加締められた封口構造を有し」、「前記絶縁ガスケットの開口が円形である」、「コイン形又はボタン形の扁平形」の電池とすることは、当業者が容易になし得ることである。

・相違点12について
甲1-3発明における「多孔質焼結体」は、実質的に活物質のみからなるものであるから、前記「(1)(1-2)」の「・相違点2について」で述べた理由と同様の理由により、甲1-3発明において、相違点12に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。

・相違点14について
前記「(1)(1-2)」の「・相違点4について」で述べた理由と同様の理由により、甲1-3発明において、相違点14に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。
以上のとおり、相違点11、12、14は実質的な相違点であり、また、相違点12、14については、当業者が容易になし得たこととはいえないから、相違点13、15について検討するまでもなく、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲1-3発明及び甲第1?8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)審判請求書において主張する無効理由について
上記「第2」に記載のとおり、請求人が審判請求書において主張する無効理由I(29条1項3号)、II(29条2項)は、具体的には、甲第1号証において「比較例4」として記載されるコイン型二次電池に基づくものである。
これについては、上記「第6 3(2)」で述べたとおり、本件特許発明は、「比較例4」に基づいて認定された「甲1-2発明」とは相違点6?10を有し、相違点6、7、9は実質的な相違点であり、相違点7、9については、当業者が容易になし得たことではないから、相違点8、10について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲1-2発明及び甲第1?8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件請求項1に係る発明の特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用は、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-07 
結審通知日 2016-12-13 
審決日 2016-12-27 
出願番号 特願2009-234722(P2009-234722)
審決分類 P 1 123・ 113- Y (H01M)
P 1 123・ 121- Y (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 安子  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 河本 充雄
鈴木 正紀
登録日 2012-08-31 
登録番号 特許第5072123号(P5072123)
発明の名称 扁平形非水電解質二次電池  
代理人 辻居 幸一  
代理人 佐竹 勝一  
代理人 飯田 圭  
代理人 鷺 健志  
代理人 岸 慶憲  
代理人 須田 洋之  
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