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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1338949
審判番号 不服2017-10677  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-18 
確定日 2018-04-24 
事件の表示 特願2013-112367「プローブガイド板及びその製造方法、半導体検査装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月11日出願公開、特開2014-232030、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年5月28日の出願であって、平成28年1月14日付けで手続補正がなされ、平成28年11月14日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月17日付けで手続補正がなされたが、平成29年4月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年7月18日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年4月28日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 1-10
・引用文献等 1-8
<引用文献等一覧>
1.特開2012-93127号公報
2.特開2007-227341号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2001-91544号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2008-66481号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2007-263650号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2009-276316号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2005-189086号公報(周知技術を示す文献)
8.特開2013-16672号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成29年7月18日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
対象物を検査するための電気信号をプローブ針を介して入出力する半導体検査装置に用いられるプローブガイド板であって、
シリコン基板と、
前記シリコン基板の一方の面から他方の面に貫通し、前記プローブ針が挿入される貫通孔と、
前記貫通孔の前記一方の面側の端部に設けられ、前記一方の面に近づくに従って孔の大きさが拡大する第1テーパ部と、
前記貫通孔の前記他方の面側の端部に設けられ、前記他方の面に近づくに従って孔の大きさが拡大する第2テーパ部と、
前記第1テーパ部及び前記第2テーパ部を含む前記貫通孔の内壁面に形成されたシリコン酸化膜と、を有し、
前記貫通孔の内壁面に形成されたシリコン酸化膜の膜厚は3μm以上10μm以下であり、
前記シリコン基板の一方の面の全体及び他方の面の全体において、シリコンが露出していることを特徴とするプローブガイド板。
【請求項2】
前記一方の面及び前記他方の面は、前記シリコン基板の(100)面であることを特徴とする請求項1記載のプローブガイド板。
【請求項3】
請求項1又は2記載のプローブガイド板と、
前記貫通孔に挿入されたプローブ針と、を有し、
対象物を検査するための電気信号を前記プローブ針を介して入出力することを特徴とする半導体検査装置。
【請求項4】
対象物を検査するための電気信号をプローブ針を介して入出力する半導体検査装置に用いられるプローブガイド板の製造方法であって、
シリコン基板の一方の面から他方の面に貫通し、前記プローブ針が挿入される貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔が形成された前記シリコン基板を異方性ウェットエッチングし、前記貫通孔の前記一方の面側の端部に、前記一方の面に近づくに従って孔の大きさが拡大する第1テーパ部を形成すると共に、前記貫通孔の前記他方の面側の端部に前記他方の面に近づくに従って孔の大きさが拡大する第2テーパ部を形成する工程と、
前記シリコン基板を熱酸化し、前記第1テーパ部及び前記第2テーパ部を含む前記貫通孔の内壁面にシリコン酸化膜を形成する工程と、を有し、
前記貫通孔の内壁面に形成されたシリコン酸化膜の膜厚は3μm以上10μm以下であり、
前記シリコン基板の一方の面の全体及び他方の面の全体において、シリコンが露出することを特徴とするプローブガイド板の製造方法。
【請求項5】
前記一方の面及び前記他方の面は、前記シリコン基板の(100)面であることを特徴とする請求項4記載のプローブガイド板の製造方法。
【請求項6】
前記第1テーパ部及び前記第2テーパ部を形成する工程の前に、前記シリコン基板に対してエキシマ処理、紫外線照射処理、又はプラズマ処理を行い、
前記第1テーパ部及び前記第2テーパ部を形成する工程では、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて異方性ウェットエッチングを行うことを特徴とする請求項4又は5記載のプローブガイド板の製造方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2012-93127号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は、液晶パネルやカメラモジュール、IC、LSI等の多電極半導体デバイスの検査用のプローブカードに備えられたプローブヘッドに関し、特に、垂直方向に沿って屈曲部を有するプローブ針をプローブヘッドに挿着する構造を備えたバーチカルプローブヘッドに関する。」

「【0044】
以下、本発明に係るバーチカルプローブヘッドの実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態の構成を説明するための概略図であり、(a)は横断面が矩形状に形成されたプローブ針のコンタクト前のプローブヘッドを示す斜視図、(b)はプローブ針のコンタクト時のプローブヘッドを示す斜視図である。
図1の(a)に示すように、バーチカルプローブヘッド1は、プローブ針2、プローブハウジング3、およびインターポーザ4を備えている。
このプローブ針2は、被検査対象である電子デバイス5のテスト端子5aに接触して電気的に導通を有するプローブ先端2aと、電気信号測定装置(図略)に電気信号を伝達するインターポーザ4と接触して電気的に導通を有するプローブ後端2bとを備えている。そして、プローブ先端2aを含む直線部で形成された部分をプローブ下部2cと称し、プローブ後端2bを含んで垂直に延びたプローブ針2の垂直軸芯に向かって延出した形状に形成された部分をプローブ上部2dと称したとき、この延出して形成された長さはプローブ針2の自然長における屈曲方向の投影長さに形成され、さらに第1の開口3aに隙間を有して摺動可能に形成されている。そして、プローブ下部2cとプローブ上部2dとの間にプローブ針2の長手方向に沿って左右に屈曲する屈曲部2eを備えている。プローブ針2のプローブ後端2bには凸形状の導電端子2fを形成している。この導電端子の凸形状は柱状、山形形状、三角形状、四角形状、丸形状、およびそれらの錐形状など、その他の形状であっても構わない。
【0045】
図1の(b)に示すように、矢印はプローブ針2が伸縮するときの屈曲方向を示している。このプローブ針2の屈曲部2eは、複数の曲点を有して形成されている。この複数の曲点の数は4つとし、その形状は、例えば、4つの曲点を有するS字状に屈曲したS字状屈曲部であり、同じく4つの曲点を有するくの字状に屈曲した、くの字状屈曲部としても構わない。これはプローブ針が曲点を支点にしてカーブして、全長を縮めてバネとして働くもので座屈によるものではない。また、複数の曲点を有して形成されておれば良く、4つの曲点に限定することなく、形成される形状もこれらに限定するものではない。
プローブハウジング3は、プローブ針2をプローブ先端2a側から挿入可能な第1の開口3aを有する上部スルーホール3cと、プローブ先端2aを電子デバイス5側に突出させる第2の開口3bを有する下部スルーホール3dとを備えている。
さらにプローブハウジング3は、上部スルーホール3cを有する上部シリコン基板3eと、下部スルーホール3dを有する下部シリコン基板3fとを備えている。上部スルーホール3cは、上部シリコン基板3eの上方に形成されており、かつ、下部スルーホール3dは、下部シリコン基板3fの下方に形成されている。そして上部スルーホール3cと下部スルーホール3dとの間には屈曲部3eの非屈曲方向の位置を支持する空洞部3gを備えている。なお、上部スルーホール3cおよび下部スルーホール3dの長さは、適宜決定して形成するようにしても良い。さらに下部スルーホール3dの下部シリコン基板3fには入り勝手部3hが形成されている。この入り勝手部3hはカーブを描いて形成されたプローブ針2を上方から挿入するときに、所定の下部スルーホール3dに間違わずに容易に挿着できるようにしたものであり、プローブ針2を下方にずれ落ちないように支える箇所である。第1の開口3aは、プローブ針2をそのまま上方から挿入脱着可能に形成され、その一辺の長さはプローブ針2の屈曲方向の投影長さ3aa、他辺の長さはプローブ針2の非屈曲方向の断面長さ3abであり、屈曲した形状を備えたプローブ針2を第1の開口3aからそのまま自然落下させるように挿入できる。また、第2の開口3bはプローブ針2を摺動可能に形成されている。これによって、複数のプローブ針2の屈曲部2eは、互いに干渉せずに屈曲可能に並設され、屈曲するときに互いに接触を避ける方向に逃げ、互いに独立した電気信号の導通を可能とする。
【0046】
このように・・・(中略)・・・効果がある。
また、下部スルーホール3dの上端を入り勝手部3hを備えた形状に形成することによって、プローブ針2は、所定の下部スルーホール3dではなく近隣の他の下部スルーホール3dに間違って入ることがなく、プローブ針2をプローブハウジング3に挿入し易く、プローブ針2の交換が容易である。この入り勝手部の形状はR形状であり、このR形状はエッチング技術で容易に形成可能である。このような入り勝手部のR形状によって、プローブ針は支持されており挿着安定性がある。なお、入り勝手部のR形状はこれに限定することはなく、他のCカット形状などであっても構わない。」

「【0048】
これによって、プローブ針2は上部スルーホール3cの側壁3kに押圧され、さらに、下部スルーホール3dの入り勝手部3hに支持され、プローブ針2の水平方向および垂直方向位置が支持されてずれ落ちることもなく位置決め精度が良い。また、プローブ上部の周囲全体が上部スルーホール3cの第1の開口3a、長手方向側壁3j、および短手方向側壁3kとの摩擦接触で支持されるためしっかりと固定でき、位置精度も良い。長手方向側壁3jは空洞部3gの側壁にも延長している。なお、バネ性を有するプローブ針を付勢して装着するとしたが、付勢せずに嵌着しても良い。この場合、プローブ上部2dは必ずしも上部スルーホール3cの側壁に押圧されることはなくフリーであるが、主に下部スルーホール3dの入り勝手部3hで支持されており、プローブハウジング3から抜け落ちることもなくプロービングの位置精度も良い。つまり、プローブ針2を装着するスルーホールは入口が広く、出口が狭いという特徴によって、プローブ針2を安定的に支持する方向である。また、プローブ先端2aの位置は一定で、プローブ針2はぶら下がっていないため、従来技術のように落下しないように微妙な調整を必要とせず、垂直方向への位置ずれもない。例えば、漏斗のように下すぼまりであるので上から挿入したプローブ針は下に抜け落ちることはなく、また、上からはインターポーザの接続端子が付勢して押えているため、プローブ針は上方にもずれることがなく、極めて自然に安定している。しかも、強制せずにフリーで支持されるので挿入し易く、側壁で支持されるため回転することはない安定構造である。そして、このプローブ針2の屈曲部2eによって、プローブ針2は第1の開口3aから第2の開口3bへ通じるスルーホール3c、3dおよび空洞部3gの側壁で支持されて摺動可能に嵌着されているので、プローブ針2はその軸中心に回動することもない。
【0049】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るプローブハウジングの概略図であり、(a)は角形の下部スルーホールを備えたプローブハウジングを斜め上方から見た斜視図であり、(b)は上部シリコン基板を斜め上方から見た斜視図、(c)は下部シリコン基板を斜め上方から見た斜視図、(d)は(c)に示すA矢視図である。
図3の(a)(b)(c)(d)に示すように、プローブハウジング3は、MEMES技術によって高度な精密性で形成された横断面角形のプローブ針2を挿着可能な下部スルーホール3dを備えている。プローブ針は横断面が丸形でも構わない。
【0050】
そして、図3の(b)(c)に示すように、上部シリコン基板3eと下部シリコン基板3fとは、上部シリコン基板3eの下面3ebと、下部シリコン基板3fの上面3faとが、面接触により分子間で直接接合される。つまり、下部シリコン基板3fに上部シリコン基板3eを位置合わせして、適当な一端から重ね合わせて行くことによって、周囲の一点から徐々に分子間接合が進行して行くことによって直接接合される。このとき接着材を用いることなく、上部シリコン基板3eと下部シリコン基板3fを容易に接合することができ、一体的に形成することができる。なお、接着材を用いて接合するようにしても構わない。

「【0053】
図3の(b)(c)(d)および図4の(b)(c)(d)(e)に示すように、プローブ針2と接触するシリコン基板3e、3e´、3m、3f、3f´の表面には、酸化膜を形成している。これによって、それぞれのプローブ針2は互いに独立した電気信号の導通を可能としている。また、プローブハウジング3は電気的に絶縁されているため、絶縁コーティング処理をしないプローブ針を用いることができる。このようにプローブ針を絶縁コーティング処理しない場合に、プローブハウジングは絶縁コーティング処理をする必要があるが、プローブ先端およびその周辺を除いてプローブ針を絶縁コーティング処理した場合は、プローブハウジングは絶縁コーティング処理をしなくても良く、必須ではないため、プローブハウジングのSiO2処理またはDLCコーティング処理が不要となりコスト低減できる。また、プローブハウジングを金属(メタル)で形成することも可能である。
【0054】
また、プローブ針2とシリコン基板3e、3e´、3m、3f、3f´とが接触する接触面だけでなく、それぞれのシリコン基板3e、3e´、3m、3f、3f´の全体の表面に酸化膜を形成することによって、上部シリコン基板および下部シリコン基板、または上部シリコン基板、中間部シリコン基板、および下部シリコン基板の面接触により分子間で直接接合が促進される。これによって接着材を用いることなく、上部シリコン基板、中間部シリコン基板、および下部シリコン基板を容易に接合することができ、一体的に形成することができる。」

したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「多電極半導体デバイスの検査用のプローブカードに備えられ、垂直方向に沿って屈曲部を有するプローブ針をプローブヘッドに挿着する構造を備えたバーチカルプローブヘッド(段落【0001】より。以下同様。)であって、
バーチカルプローブヘッド1は、プローブ針2、プローブハウジング3、およびインターポーザ4を備え、プローブ針2は、被検査対象である電子デバイス5のテスト端子5aに接触して電気的に導通を有するプローブ先端2aと、電気信号測定装置に電気信号を伝達するインターポーザ4と接触して電気的に導通を有するプローブ後端2bとを備え、プローブ下部2cとプローブ上部2dとの間にプローブ針2の長手方向に沿って左右に屈曲する屈曲部2eを備え(【0044】)
プローブハウジング3は、プローブ針2をプローブ先端2a側から挿入可能な第1の開口3aを有する上部スルーホール3cと、プローブ先端2aを電子デバイス5側に突出させる第2の開口3bを有する下部スルーホール3dとを備え、プローブハウジング3は、上部スルーホール3cを有する上部シリコン基板3eと、下部スルーホール3dを有する下部シリコン基板3fとを備え、上部スルーホール3cは、上部シリコン基板3eの上方に形成されており、かつ、下部スルーホール3dは、下部シリコン基板3fの下方に形成され、そして上部スルーホール3cと下部スルーホール3dとの間には屈曲部3eの非屈曲方向の位置を支持する空洞部3gを備え、さらに下部スルーホール3dの下部シリコン基板3fには入り勝手部3hが形成され、この入り勝手部3hはカーブを描いて形成されたプローブ針2を上方から挿入するときに、所定の下部スルーホール3dに間違わずに容易に挿着できるようにしたものであり(【0045】)、
下部スルーホール3dの上端を入り勝手部3hを備えた形状に形成することによって、プローブ針2は、所定の下部スルーホール3dではなく近隣の他の下部スルーホール3dに間違って入ることがなく、プローブ針2をプローブハウジング3に挿入し易く、プローブ針2の交換が容易であり、この入り勝手部の形状はR形状であり、このような入り勝手部のR形状によって、プローブ針は支持されており挿着安定性があり、入り勝手部のR形状はCカット形状などであっても構わず(【0046】)、
プローブ針を嵌着する場合、プローブ針2を装着するスルーホールは入口が広く、出口が狭いという特徴によって、プローブ針2を安定的に支持する方向であり、例えば、漏斗のように下すぼまりであるので上から挿入したプローブ針は下に抜け落ちることはなく、また、上からはインターポーザの接続端子が付勢して押えているため、プローブ針は上方にもずれることがなく、極めて自然に安定し(【0048】)、
プローブ針2と接触するシリコン基板3e、3fの表面には、酸化膜を形成し、これによって、それぞれのプローブ針2は互いに独立した電気信号の導通を可能とし(【0053】)、
上部シリコン基板3eと下部シリコン基板3fとは、接着材を用いて接合するようにしても構わない(【0050】)、
バーチカルプローブヘッド(【0001】)。」

(2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に、周知技術を示す文献として引用された引用文献2(特開2007-227341号公報)には、図面ともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は、電子部品(半導体など)に設けられた複数の接触子とこれに対応する複数の弾性接点とを接続する接続ボードに係わり、特に接触子を弾性接点に案内するガイド部材及びガイド部材を備えた接続ボード並びにガイド部材の製造方法に関する。」

「【0069】
図4及び図5に示すように、ガイド部材30は、前記中継ボード20の図示Z1方向の上部に設けられている。前記ガイド部材30は略正方形状からなる平板状の部材であり、例えば絶縁性を有する樹脂を金型に流して一体的に成形する射出成形法により、あるいは後述する製法により形成されている。
【0070】
図5に示すように、前記ガイド部材30は樹脂製のベース30Aと前記ベース30Aの中心部に形成された角状の貫通孔30Bとを有している。
【0071】
そして、前記貫通孔30Bの周囲には上下方向(図示Z1-Z2方向)に貫通する多数の小孔31からなる位置決め手段が設けられている。前記個々の小孔31は、前記電子部品1の前記球状接触子(外部接触子)2aおよび前記中継ボード20のスルーホール22に対応して形成されており、全体の配列は上記同様に平面「口」形状である。ただし、この形状も、前記中継ボード20のスルーホール22の場合同様に、前記電子部品1の接続面1Aに形成された外部接触子2の配列形状に応じ、例えば平面マトリックス状などその他の形状であってもよい。
【0072】
前記位置決め手段を形成する多数の小孔31のうち、隅部に設けられた4つの位置決め小孔31A,31A,31A,31Aの直径は、その他の多数の小孔31よりも小さな寸法で形成されている。例えば、前記電子部品1の球状接触子2aの直径が0.6mmである場合には、前記4つの位置決め小孔31Aの直径は0.71mmで形成され、前記その他多数の小孔31の直径は0.75mmである。
【0073】
なお、図8および図10Aないし図10Cに示すように、前記小孔31及び前記位置決め小孔31Aの表裏両端の一方の縁部(板厚方向の一方の縁部)、好ましくは双方の縁部には傾斜面31a,31bが形成されている。このため、本実施の形態に示すガイド部材30では、前記球状接触子2aと前記上側スパイラル接触子24Aの一方または双方を、前記小孔31および前記位置決め小孔31A内に導き易くなっている。」

したがって、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「電子部品(半導体など)に設けられた複数の接触子を弾性接点に案内するガイド部材(段落【0001】より。以下同様。)であって、ガイド部材30は平板状の部材であり、例えば絶縁性を有する樹脂より形成され(【0069】)、上下方向に貫通する多数の小孔31からなる位置決め手段が設けられ、前記個々の小孔31は、前記電子部品1の前記球状接触子(外部接触子)2aおよび前記中継ボード20のスルーホール22に対応して形成されており(【0071】)、前記小孔31及び前記位置決め小孔31Aの表裏両端の一方の縁部(板厚方向の一方の縁部)、好ましくは双方の縁部には傾斜面31a,31bが形成され、前記球状接触子2aと前記上側スパイラル接触子24Aの一方または双方を、前記小孔31および前記位置決め小孔31A内に導き易くなっている(【0073】)、ガイド部材(【0001】)。」

(3)引用文献3について
原査定の拒絶の理由に、周知技術を示す文献として引用された引用文献3(特開2001-91544号公報)には、図面ともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はウエハ上に形成された半導体素子あるいは半導体デバイスの検査方法に係り、特にプロービング検査およびバーンイン検査など半導体製造工程における電気的特性測定用の検査装置に関する。」
「【0023】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。図1は本発明による半導体検査装置の検査ウエハの構造の一実施例を示す断面図である。
【0024】検査ウエハ11は、両持ち梁又はダイアフラム12(以後はダイアフラムで説明する)と、プローブ13と、貫通孔14とで構成されている。ダイアフラム12部には、プローブ13が形成されており、プローブ13は検査ウエハ11の底面より数μmから数十μm突き出している。貫通孔14はプローブ13と同数個形成されており、検査ウエハ11の全面は酸化シリコン膜15で被覆されている。プローブ13と配線16は、酸化シリコン膜15の上に形成してある。配線16は、個々のプローブ13からそれぞれの貫通孔14を経て検査ウエハ11の反対側面に形成した二次側電極パッド17まで形成されている。」
「【0056】図9はエッチング方法による貫通孔の形状を示す平面図と断面図である。(a)(b)(c)のいずれもX=2mm、Y=2mm、Z=600μmの(100)面のシリコンウエハにd=100μmの貫通孔を形成するものとし、貫通孔が互いに重ならないようにL=100μmの間隔を開けて並ぶように形成する。」
「【0058】(b)は異方性ウェットエッチングによってシリコンウエハ101の両側から貫通孔104を形成したもので、逆四角錐状の貫通孔をつなぎ合せた鼓状の形状をしている。この時、D2=Z/tan54.7°+d=524μm、P2=D2+L=624μmとなり、□2mmのシリコンウエハ101には9個の貫通孔104形成できる。
【0059】(a)、(b)とも貫通孔102、104のdの寸法を小さくしたところで□2mmのシリコンウエハ101に形成できる数量に変化はなく、異方性ウェットエッチングにおける加工限界がある。
【0060】一方、(c)はRIE装置などのドライエッチングによってシリコンウエハ101に貫通孔105を形成したものである。ドライエッチングのために貫通孔105はマスクパターンとほぼ同形状のほぼ垂直な形状になる。このため、D3=d=100μm、P3=D3+L=200μmとなり、□2mmのシリコンウエハ101には100個の貫通孔105が形成されることになる。」


したがって、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「半導体検査装置の検査ウエハ11は、両持ち梁又はダイアフラム12と、プローブ13と、貫通孔14とで構成され、ダイアフラム12部には、プローブ13が形成されており、プローブ13は検査ウエハ11の底面より数μmから数十μm突き出し、貫通孔14はプローブ13と同数個形成され、配線16は、個々のプローブ13からそれぞれの貫通孔14を経て検査ウエハ11の反対側面に形成した二次側電極パッド17まで形成され(段落【0023】、【0024】より。以下同様。)、
異方性ウェットエッチングによってシリコンウエハ101の両側から貫通孔104を形成したものは、逆四角錐状の貫通孔をつなぎ合せた鼓状の形状をし、□2mmのシリコンウエハ101には9個の貫通孔104形成できる(【0056】、【0058】)が、貫通孔102、104のdの寸法を小さくしたところで□2mmのシリコンウエハ101に形成できる数量に変化はなく、異方性ウェットエッチングにおける加工限界があり(【0059】)、RIE装置などのドライエッチングによってシリコンウエハ101に貫通孔105を形成したものでは、ドライエッチングのために貫通孔105はマスクパターンとほぼ同形状のほぼ垂直な形状になり、□2mmのシリコンウエハ101には100個の貫通孔105が形成される(【0060】)、
半導体検査装置の検査ウエハ(【0023】)。」

(4)引用文献4について
原査定の拒絶の理由に、周知技術を示す文献として引用された引用文献4(特開2008-66481号公報)には、図面ともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は、シリコン基板に半導体素子が実装されてなる半導体装置、および当該半導体装置を製造する製造方法に関する。」
「【0010】
本発明の具体的な課題は、シリコン基板を用いて形成されるパッケージと、該パッケージに半導体素子が搭載されてなる半導体装置の実装の信頼性を良好とすることである。」
「【0023】
本発明によるパッケージの製造方法は、シリコン基板をエッチングして、該シリコン基板を貫通するビアホールを形成するエッチング工程と、前記ビアホールに導電材料を埋設してビアプラグを形成する工程と、を有するパッケージの製造方法であって、前記エッチング工程は、直線状に前記ビアホールが形成される第1のエッチング工程と、テーパー状に前記ビアホールが形成される第2のエッチング工程とを含むことを特徴とを特徴としている。
【0024】
上記の製造方法により形成されるパッケージでは、前記ビアプラグは、直線状に形成される直線部と、テーパー形状に形成されるテーパー部とを有することになる。
【0025】
上記のパッケージの製造方法によれば、シリコン基板にビアホールを形成する場合のエッチング形状のばらつきを抑制し、形成されるビアプラグの信頼性を良好とすることが可能となる。例えば、前記エッチング工程では、前記ビアホールの開口側がテーパー状となるようにエッチングを行うことで、当該開口側でのエッチング形状のばらつきの発生を抑制し、形成されるビアプラグの電気的な接続の信頼性を良好とすることができる。
【0026】
また、形成される前記ビアプラグは、前記テーパー部を有しているために所定の部分に応力が集中する影響が抑制され、破損や接続不良の発生が抑制されて信頼性が良好となる効果を奏する。例えば、前記テーパー部は、応力集中が生じやすい前記ビアプラグが前記シリコン基板から露出する側に形成されていることが好ましい。」


したがって、引用文献4には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「シリコン基板を用いて形成されるパッケージであって、半導体素子が搭載され(段落【0010】より。以下同様。)、パッケージの製造方法は、シリコン基板をエッチングして、該シリコン基板を貫通するビアホールを形成するエッチング工程であって、直線状に前記ビアホールが形成される第1のエッチング工程と、テーパー状に前記ビアホールが形成される第2のエッチング工程とを含む工程と、前記ビアホールに導電材料を埋設してビアプラグを形成する工程と、を有し(【0023】)、ビアプラグは、直線状に形成される直線部と、テーパー形状に形成されるテーパー部とを有することになり(【0024】)、
形成される前記ビアプラグは、前記テーパー部を有しているために所定の部分に応力が集中する影響が抑制され、破損や接続不良の発生が抑制されて信頼性が良好となる効果を奏する(【0026】)、
パッケージ(【0010】)。」

(5)引用文献5について
原査定の拒絶の理由に、周知技術を示す文献として引用された引用文献5(特開2007-263650号公報)には、図面ともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0005】
このような目的を達成するために、本発明の電気信号測定用治具は、シリコン基板と、該シリコン基板に穿設された複数のスルーホールと、該スルーホール内壁面を含む前記シリコン基板の裏面の所定部位に形成された二酸化珪素膜と、前記シリコン基板の表面の所定部位に形成された表面側二酸化珪素層と、該表面側二酸化珪素層に表面を露出した状態で埋設された複数の電気信号測定用パッドと、前記スルーホール内の二酸化珪素膜上に形成された導電材料層と、各電気信号測定用パッドと各スルーホール内の前記導電材料層とを接続するように前記表面側二酸化珪素層に表面を露出した状態で埋設された複数の配線と、前記シリコン基板の裏面に配設され各導電材料層と接続された複数の電極パッドと、を備え、前記シリコン基板の厚みは100?600μmの範囲であり、前記スルーホールの内径は10?100μmの範囲であるような構成とした。」
「【0016】
このようなシリコン基板2が備えるスルーホール3は、その内径が10?100μm、好ましくは10?50μmの範囲、ピッチ(図1に示されるように、隣接するスルーホールの開口中心の距離L)が20?1000μm、好ましくは30?300μmの範囲である。また、スルーホール3の少なくとも一部はピッチが20?200μmの範囲であってもよい。本発明では、スルーホール3の全ての内径、ピッチが上記の範囲内であってもよく、また、複数のスルーホール3うち、所望のスルーホール3が上記の範囲の内径、ピッチを有するものであってもよい。勿論、全てのスルーホール3が、例えば、内径10μm、形成ピッチ20μmとなるものであってもよい。
シリコン基板2に形成されている二酸化珪素膜4は、その厚みが0.1?5μm、好ましくは0.8?4.5μm程度である。また、表面側二酸化珪素層5は、その厚みが0.1?5μm、好ましくは0.8?4.5μm程度である。二酸化珪素膜4、表面側二酸化珪素層5の厚みが上記の範囲未満であると、絶縁不良を生じ易く、上記の範囲を超えると、成膜時の応力コントロールが困難となり反りや歪みが生じ易くなり好ましくない。」


したがって、引用文献5には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「電気信号測定用治具は、シリコン基板と、該シリコン基板に穿設された複数のスルーホールと、を備え(段落【0005】より。以下同様。)、
シリコン基板2に形成されている二酸化珪素膜4は、その厚みが0.1?5μm、好ましくは0.8?4.5μm程度であり、また、表面側二酸化珪素層5は、その厚みが0.1?5μm、好ましくは0.8?4.5μm程度であり、二酸化珪素膜4、表面側二酸化珪素層5の厚みが上記の範囲未満であると、絶縁不良を生じ易く、上記の範囲を超えると、成膜時の応力コントロールが困難となり反りや歪みが生じ易くなり好ましくない【0016】、
電気信号測定用治具【0005】。」

(6)引用文献6について
原査定の拒絶の理由に、周知技術を示す文献として引用された引用文献6(特開2009-276316号公報)には、図面ともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0019】
このように、基板本体15の材料としてシリコンを用いることにより、プローブカード10と半導体チップ25との間の熱膨張係数の差が緩和されるため、半導体チップ25に設けられた電極パッド26にプローブ針12を精度良く接触させることができる。基板本体15の材料としてシリコンを用いた場合、基板本体15の厚さは、例えば、300μmとすることができる。
【0020】
絶縁膜16は、基板本体15の表面(貫通孔18の側面に対応する部分の基板本体15の面も含む)を覆うように設けられている。絶縁膜16は、基板本体15とプローブ針12との間を絶縁するための膜である。絶縁膜16としては、例えば、酸化膜(例えば、熱酸化膜)を用いることができる。絶縁膜16として、熱酸化膜を用いた場合、絶縁膜16の厚さは、例えば、0.5μm?1.0μmとすることができる。」


したがって、引用文献6には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「基板本体15の材料としてシリコンを用い(段落【0019】より。以下同様。)、 絶縁膜16は、基板本体15の表面(貫通孔18の側面に対応する部分の基板本体15の面も含む)を覆うように設けられ、絶縁膜16は、基板本体15とプローブ針12との間を絶縁するための膜であり、絶縁膜16としては、例えば、酸化膜(例えば、熱酸化膜)を用いることができ、絶縁膜16として、熱酸化膜を用いた場合、絶縁膜16の厚さは、例えば、0.5μm?1.0μmとすることができる(【0020】)、プローブカード(【0019】)。」

(7)引用文献7について
原査定の拒絶の理由に、周知技術を示す文献として引用された引用文献7(特開2005-189086号公報)には、段落【0044】より、技術的事項として、「絶縁膜19を支持枠体16,16,17,18と比較して膜厚が薄く形成することにより、熱膨張に関しては無視しうること」が記載されていると認められる。


(8)引用文献8について
原査定の拒絶の理由に、周知技術を示す文献として引用された引用文献8(特開2013-16672号公報)には、段落【0045】より、技術的事項として、「フォトレジストパターンを用いた絶縁膜のウェットエッチングを行う前に、アッシャーを用いたプラズマ処理などによりフォトレジストパターンに対して表面処理(プラズマ表面処理)を行い、それによってウェットエッチング時の濡れ性向上(フォトレジストパターンに対する濡れ性向上)を図ることができる」ことが記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
引用発明は、バーチカルプローブヘッドにおけるプローブハウジング3を構成する「下部シリコン基板3f」の発明として捉えることも可能であるから、引用発明を「下部シリコン基板3f」についての発明と捉えて、本願発明1と対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明における「プローブ針2」が、本願発明1における「プローブ針」に相当する。

イ 引用発明における「多電極半導体デバイスの検査」が検査装置によって行われることは明らかである。すると、引用発明における「多電極半導体デバイスの検査」を行う検査装置は、「プローブ針2」によって「被検査対象である電子デバイス5のテスト端子5aに接触して電気的に導通を有する」とともに、「電気信号測定装置に電気信号を伝達するインターポーザ4と接触して電気的に導通を有する」ものであるから、本願発明1における、「対象物を検査するための電気信号をプローブ針を介して入出力する半導体検査装置」に相当するといえる。

ウ 引用発明における「プローブハウジング3」の「下部シリコン基板3f」は、「下部スルーホール3dを有」し、「下部スルーホール3dの上端を入り勝手部3hを備えた形状に形成することによって、プローブ針2は、所定の下部スルーホール3dではなく近隣の他の下部スルーホール3dに間違って入ることがなく、プローブ針2をプローブハウジング3に挿入し易く、プローブ針2の交換が容易であ」るから、本願発明1における「プローブガイド板」に相当する。

エ 引用発明における「下部シリコン基板3f」となる「シリコン基板」が、本願発明1における「シリコン基板」に相当する。

オ 引用発明の「下部シリコン基板3f」における「下部スルーホール3d」は、「プローブ針2を上方から挿入する」ためのスルーホールであるから、本願発明1における「前記シリコン基板の一方の面から他方の面に貫通し、前記プローブ針が挿入される貫通孔」に相当する。

カ 引用発明における「下部スルーホール3dの下部シリコン基板3f」に形成された(「プローブ針2を上方から挿入する」ときの)「入り勝手部3h」は、「下部スルーホール3dの上端」(つまり、「上部シリコン基板3e」と「接合」される面側)に「形成」され、「入り勝手部のR形状はCカット形状などであっても構わ」ないから、本願発明1における「前記貫通孔の前記一方の面側の端部に設けられ、前記一方の面に近づくに従って孔の大きさが拡大する第1テーパ部」に相当する。

キ 引用発明における「プローブ針2と接触するシリコン基板」「3fの表面」に「形成」された「酸化膜」は、「これによって、それぞれのプローブ針2は互いに独立した電気信号の導通を可能とし」ているのであるから、「プローブ針2と接触する」、「Cカット形状」の「入り勝手部」を含む「下部スルーホール3d」の内壁面に形成されていることは明らかである。
よって、引用発明の「下部シリコン基板3f」における、「Cカット形状」の「入り勝手部」を含む「下部スルーホール3d」の内壁面に形成された「酸化膜」と、本願発明1における「前記第1テーパ部及び前記第2テーパ部を含む前記貫通孔の内壁面に形成されたシリコン酸化膜」とは、「前記第1テーパ部を含む前記貫通孔の内壁面に形成されたシリコン酸化膜」の点で共通するといえる。

ク 引用文献の段落【0054】の記載(また、プローブ針2とシリコン基板3e、3e´、3m、3f、3f´とが接触する接触面だけでなく、それぞれのシリコン基板3e、3e´、3m、3f、3f´の全体の表面に酸化膜を形成することによって、上部シリコン基板および下部シリコン基板、または上部シリコン基板、中間部シリコン基板、および下部シリコン基板の面接触により分子間で直接接合が促進される。これによって接着材を用いることなく、上部シリコン基板、中間部シリコン基板、および下部シリコン基板を容易に接合することができ、一体的に形成することができる。)を反対解釈することにより、引用発明において「上部シリコン基板3eと下部シリコン基板3f」とを「接着材を用いて接合する」場合には、「下部シリコン基板3f」の全面の表面に酸化膜を形成する必要はなく、したがって、「下部シリコン基板3f」における「上部シリコン基板3e」と「接合」される面と、その反対の面とにも、「酸化膜を形成する」必要のないことは明らかである。
よって、引用発明において「上部シリコン基板3eと下部シリコン基板3fと」を「接着材を用いて接合する」場合、「下部シリコン基板3f」における「上部シリコン基板3e」と「接合」される面と、その反対の面とに「酸化膜を形成」せず、露出させることが、本願発明1における「前記シリコン基板の一方の面の全体及び他方の面の全体において、シリコンが露出していること」に相当するといえる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「対象物を検査するための電気信号をプローブ針を介して入出力する半導体検査装置に用いられるプローブガイド板であって、
シリコン基板と、
前記シリコン基板の一方の面から他方の面に貫通し、前記プローブ針が挿入される貫通孔と、
前記貫通孔の前記一方の面側の端部に設けられ、前記一方の面に近づくに従って孔の大きさが拡大する第1テーパ部と、
前記第1テーパ部を含む前記貫通孔の内壁面に形成されたシリコン酸化膜と、を有し、
前記シリコン基板の一方の面の全体及び他方の面の全体において、シリコンが露出していることを特徴とするプローブガイド板。」

(相違点1)
本願発明1では、プローブガイド板が、「前記貫通孔の前記他方の面側の端部に設けられ、前記他方の面に近づくに従って孔の大きさが拡大する第2テーパ部」を有し、「貫通孔」が「第2テーパ部」を含むのに対し、引用発明では、「下部シリコン基板3f」における「下部スルーホール3d」の下端面側(つまり、「下部シリコン基板3f」における、「上部シリコン基板3e」と「接合」される面とは反対の面の側。以下同様。)に、「R形状」や「Cカット形状」を形成することは示されていない点。

(相違点2)
本願発明1では、「前記貫通孔の内壁面に形成されたシリコン酸化膜の膜厚は3μm以上10μm以下であ」るのに対し、引用発明では、「下部シリコン基板3f」における「下部スルーホール3d」に形成された「酸化膜」について、膜厚が示されていない点。

(2)判断
ア 上記相違点1について検討すると、引用発明では、「下部スルーホール3dの下部シリコン基板3f」に「入り勝手部3h」を「形成」することで、「この入り勝手部3hはカーブを描いて形成されたプローブ針2を上方から挿入するときに、所定の下部スルーホール3dに間違わずに容易に挿着でき」、「プローブ針2は、所定の下部スルーホール3dではなく近隣の他の下部スルーホール3dに間違って入ることがなく、プローブ針2をプローブハウジング3に挿入し易く、プローブ針2の交換が容易であ」るようにしているのであるから、プローブ針2の挿入、交換に関して、「下部スルーホール3d」における「プローブ針2」の出側(つまり、「下部シリコン基板3f」における「下部スルーホール3d」の下端面側。以下同様。)を、入り勝手部3hと同様な形状にする必要性は見いだせない。

イ また、 引用文献1の段落 【0045】に記載されているように、引用発明の「バーチカルプローブヘッド1」における「プローブ針2」は、「屈曲部2e」において「複数の曲点を有して形成され」、「プローブ針2が伸縮するとき」は、該「屈曲部2e」においてなされ、「プローブ針が曲点を支点にしてカーブして、全長を縮めてバネとして働くもので座屈によるものではない」のであるから、「下部スルーホール3d」の「プローブ針2」の出側に「プローブ針2」が接触して破壊が生じるおそれはなく、「下部シリコン基板3f」における「下部スルーホール3d」の下端面側に、「プローブ針2」の接触による破壊を防止するための「Cカット形状」を形成する動機付けを見出すこともできない。

ウ まして、引用発明には、「プローブ針2を装着するスルーホールは入口が広く、出口が狭いという特徴によって、プローブ針2を安定的に支持する方向であり、例えば、漏斗のように下すぼまりであるので上から挿入したプローブ針は下に抜け落ちることはな」いことを特徴としているのであるから、「下部スルーホール3d」の「プローブ針2」の出側(つまり、「下部シリコン基板3f」における「下部スルーホール3d」の下端面側)に、「Cカット形状」を形成することは、かえって、プローブ針2を安定的に支持するという上記目的を阻害する要因となるものといえる。

エ 次に、引用文献2に記載された技術的事項は、「小孔31」及び「位置決め小孔31A」の「表裏両端の」「双方の縁部には傾斜面31a,31bが形成され」ているものの、該「小孔31」及び「位置決め小孔31A」は、「電子部品(半導体など)に設けられた複数の接触子を弾性接点に案内するガイド部材」の「位置決め手段」であるから、引用発明における「プローブ針2を装着するスルーホール」とは異なる用途に用いられる「小孔」である。
よって、引用文献2に記載された技術的事項を引用発明1に適用する動機付けはないものといえる。

オ 引用文献3に記載された技術的事項における「貫通孔」は、プローブ針が挿入されるものではなく、個々のプローブ13への配線16が形成される貫通孔である。
また、引用文献3に記載された技術的事項には、「貫通孔」を「異方性ウェットエッチングによってシリコンウエハ101の両側から貫通孔104を形成したものは、逆四角錐状の貫通孔をつなぎ合せた鼓状の形状をし」ていることが示されているものの、該技術的事項は、「異方性ウェットエッチングにおける加工限界があ」るため、貫通孔105を高密度に形成できないことを説明するために例示された技術的事項である。
以上の点を併せ考えれば、引用文献3に記載された技術的事項を引用発明1に適用する動機付けはないものといえる。

カ 引用文献4に記載された技術的事項は、「直線状に前記ビアホールが形成される第1のエッチング工程と、テーパー状に前記ビアホールが形成される第2のエッチング工程とを含む工程と、前記ビアホールに導電材料を埋設してビアプラグを形成する工程」により形成された、「直線状に形成される直線部と、テーパー形状に形成されるテーパー部とを有する」「ビアプラグ」を開示するが、該「ビアプラグ」は「シリコン基板を貫通するビアホール」に「導電材料を埋設して」形成したものであって、プローブ針が挿入されるものではないから、引用文献4に記載された該技術的事項を、引用発明における「プローブ針2を装着するスルーホール」に適用することは、当業者といえども、動機付けられないものといえる。

キ 次に、引用文献5に記載された技術的事項は、二酸化珪素膜や表面二酸化珪素膜の膜厚が所定範囲未満であると、絶縁不良を生じ易く、上記の範囲を超えると、成膜時の応力コントロールが困難となり反りや歪みが生じ易くなり好ましくないことを開示するに過ぎず、上記相違点1に係る本願発明1の構成を開示するものではない。

ク 引用文献6に記載された技術的事項は、プラズマ処理などによりウェットエッチング時の濡れ性向上(フォトレジストパターンに対する濡れ性向上)を図ることができることを開示するに過ぎず、上記相違点1に係る本願発明1の構成を開示するものではない。

ケ 引用文献7に記載された技術的事項は、「絶縁膜を支持枠体と比較して膜厚が薄く形成することにより、熱膨張に関しては無視しうること」を開示するに過ぎず、上記相違点1に係る本願発明1の構成を開示するものではない。

コ 引用文献8に記載された技術的事項は、「アッシャーを用いたプラズマ処理」により、「ウェットエッチング時の濡れ性向上(フォトレジストパターンに対する濡れ性向上)を図ることができる」ことを開示するに過ぎず、上記相違点1に係る本願発明1の構成を開示するものではない。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明1は、上記相違点2について検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2、3について
本願発明2、3は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1と同じく、プローブガイド板が、「前記貫通孔の前記他方の面側の端部に設けられ、前記他方の面に近づくに従って孔の大きさが拡大する第2テーパ部」を有し、「貫通孔」が「第2テーパ部」を含む構成を備えるものである。
よって、本願発明2、3は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明4について
本願発明4は、本願発明1に対応する方法の発明であり、上記相違点1に係る本願発明1の構成に対応する構成(「前記貫通孔の前記一方の面側の端部に、前記一方の面に近づくに従って孔の大きさが拡大する第1テーパ部を形成すると共に、前記貫通孔の前記他方の面側の端部に前記他方の面に近づくに従って孔の大きさが拡大する第2テーパ部を形成する工程」を有し、「貫通孔の内壁面」は「前記第2テーパ部を含」む構成)を備えるものである。
よって、本願発明4は、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明5-6について
本願発明5-6は、本願発明4を減縮した発明であるから、上記「3.」で述べたとおり、上記相違点1に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものである。
よって、本願発明5-6は、本願発明4と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
1.理由1(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1-8は、「前記貫通孔の前記他方の面側の端部に設けられ、前記他方の面に近づくに従って孔の大きさが拡大する第2テーパ部」、つまり、「前記第2テーパ部を含む前記貫通孔」を有するという事項、または、それに対応する事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-8に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-04-09 
出願番号 特願2013-112367(P2013-112367)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 越川 康弘  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 ▲うし▼田 真悟
清水 稔
発明の名称 プローブガイド板及びその製造方法、半導体検査装置  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

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