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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C04B
管理番号 1339040
審判番号 不服2016-12662  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-23 
確定日 2018-04-05 
事件の表示 特願2012- 91169「石炭灰を用いた盛土工法、及び、締固め材料の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月28日出願公開、特開2013-220948〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成24年4月12日の出願であって、原審にて平成27年12月25日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月2日付けで手続補正がされたが、同年5月19日付けで拒絶査定がされたものであり、同年8月23日に当該査定を不服とする本件審判の請求と同時に手続補正がされ、これに対し、当審にて平成29年8月1日付けで拒絶理由を通知したところ、同年9月27日付けで手続補正がされたものである。

第2.本願発明の認定

本願の請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年9月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項3に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる。

石炭灰、及び、前記石炭灰の乾燥重量に対して7.5%の貧配合相当量に調整されたセメントを、締固め密度が最も高い含水比となる量に調整された混合水とともに練り混ぜることを特徴とする石炭灰を用いた締固め材料の製造方法。

第3.原査定の理由

原査定の理由の一つは、
特開2004-285605号公報(以下、「引用例」という。)
を引用し、
「本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、当該発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、同条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というものである。

第4.引用例の記載

引用例には、次の記載がある(関連箇所に下線を追記)。

【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明では、多量の石炭灰と、固化材と、最適含水比程度の水粉体比の水とを含む材料からなる混練物で構造物を構築するための工法であって、所定量の石炭灰及び固化材と、最適含水比程度の水粉体比の水とを練り混ぜて生成した混練物を、前記構造物の構築現場あるいはその近傍まで搬送し、搬送された前記混練物を前記構造物の構築現場に層状に敷き均した後に、前記混練物上から面状に振動を加えて流動状態にすることを特徴とする構造物の構築方法が提供される。
本発明は、混練物を構造物の構築現場に層状に敷き均した後に、混練物上から面状に振動を加えて流動状態にする施工方法であるため、この施工方法が適用可能な構造物は、従来のブロック構造体などのプレキャスト部材に限定されず、例えば、ダムの堤体、路盤、べた基礎、人工地盤、盛土、堰堤などのような構造物、すなわち、混練物が層状に打設されながら構築される構造物に適用することができる。したがって、混練物に含まれる石炭灰を有効かつ大量に消費することが可能になる。
【0006】
本発明において、前記固化材はセメント、消石灰の少なくとも一方を含むものであるか、あるいは、セメント、消石灰の少なくとも一方を含むものに、さらに、石膏を加えたものである。
このようにセメント等を石炭灰に加えた混練物に振動を加えて流動状態、すなわち、流体化させて固化させれば、たとえ、石炭灰に重金属類などの有害物質が含まれていても、これらの物質は溶出し難いように固化体中に封じ込められる。また石膏、消石灰の少なくとも一方がセメントに添加された固化材を用いた場合には、有害物質の溶出量は、固化材がセメントのみの場合よりも更に大きく低減させることが可能になる。
【0007】
本発明において、構造物は、例えば、ダムの堤体、電車や自動車などの車両通行用の路盤、構造物のべた基礎、人工地盤、盛土、堰堤などがある。
【0008】
本発明において、最適含水比とは、JIS A 1210-1979の突き固めによる土の締固め試験方法に規定されている値であって、最大乾燥密度が得られる含水比をいい、混練物が振動締め固めにより流動状態に変化する限界の水粉体比とほぼ一致するものである。また最適含水比程度とは、概ね、最適含水比以上であって、練上がり材料のスランプが2cm程度以下の範囲に収まる程度である。さらに、水粉体比とはセメント及び石炭灰の粉体に対する水の重量比をいい、{(水の重量)/(セメント重量+石炭灰重量)×100}の式から求めることができる。
【0009】
本発明において、石炭灰、固化材及び水を混練する際に、セメントと石炭灰との重量比は、石炭灰の品質に応じて変更するものの、概ね石炭灰の95?80重量部に対して、セメントを5?20重量部混ぜ合わせる。すなわち、混練物が硬化した時の圧縮強度は、石炭灰の品質によって異なり、所要の圧縮強度を得るためにはセメントの重量比を増加させなければならない場合もあり、したがって、セメントと石炭灰との総重量に対して、セメントを概ね重量比3?20%の範囲で増減させる調整を行う。

第5.引用発明の認定

引用例の【0005】には、多量の石炭灰を含む材料から構造物を構築するための工法において、所定量の石炭灰及び固化材と、最適含水比程度の水粉体比の水とを練り混ぜて混練物を生成することが記載されており、【0006】には、当該固化材にセメントが含まれること、【0008】には、最適含水比とは、締固め試験方法に規定される最大乾燥密度が得られる含水比を意味すること、【0009】には、セメントと石炭灰との重量比について、セメントと石炭灰との総重量に対してセメントを概ね重量比3?20%の範囲で調整することが記載されている。
してみると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「石炭灰、及び、セメントと石炭灰との総重量に対して3?20%の量に調整されたセメントと、締固め試験方法における最大乾燥密度が得られる含水比の水とを練り混ぜる、石炭灰を含む混練物の製造方法。」

第6.対比・判断

本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「締固め試験方法における最大乾燥密度が得られる含水比」「混練物」は、本願発明の「締固め密度が最も高い含水比」「締め固め材料」にそれぞれ相当するから、本件発明のうち、
「石炭灰、及び、セメントを、締固め密度が最も高い含水比となる量に調整された混合水とともに練り混ぜる石炭灰を用いた締固め材料の製造方法。」の点は、引用発明と一致し、
本願発明が、「石炭灰の乾燥重量に対して7.5%の貧配合相当量に調整された」セメントを用いるのに対し、
引用発明は、セメントと石炭灰との総重量に対して3?20%の量(3/100?20/100)に調整されたセメントを用いる点で一応相違する。

そこで検討するに、引用例の【0008】に記載された水粉体比の式から、引用例におけるセメントや石炭灰の重量は、水を含まない乾燥重量と解されるから、引用発明は、石炭灰の乾燥重量に対し換算すると、約3.1?25%の量(3/97?20/80)に調整されたセメントを用いるものと認められる。そして、引用例の【0009】には、石炭灰の品質に応じ所要の圧縮強度となるようにセメントの量を調整すること、さらに【0006】には、必要に応じ石膏や消石灰をセメントに添加することで、石炭灰に含まれる有害物質の溶出を抑えることも記載されている。
してみると、引用発明において、セメントを石炭灰の乾燥重量に対し7.5%の貧配合相当量に調整して用いることは、引用例の上記記載に基づき、当業者が行う単なる設計的事項であるか、仮にそうでないとしても、適宜なし得る設計的事項にすぎないといえる。

次に、本願発明において、セメントを石炭灰の乾燥重量に対して7.5%の貧配合相当量に調整して用いることにより得られる作用効果について検討するに、本願明細書の【0032】には、圧縮強度の目標値を満足すること、【0035】には、有害物質の溶出量が環境基準値以下になることがそれぞれ記載されているが、いずれの作用効果も、引用例の上記記載から当業者が予期し得るものにすぎない。

第7.むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから同条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、原査定の理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-01-30 
結審通知日 2018-02-06 
審決日 2018-02-19 
出願番号 特願2012-91169(P2012-91169)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C04B)
P 1 8・ 113- WZ (C04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 武  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 中澤 登
大橋 賢一
発明の名称 石炭灰を用いた盛土工法、及び、締固め材料の製造方法  
代理人 一色国際特許業務法人  

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