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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1339043
審判番号 不服2016-16607  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-07 
確定日 2018-04-05 
事件の表示 特願2012- 68785「円偏光板」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 3日出願公開,特開2013-200445〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本件出願」という。)は,平成24年3月26日の出願であって,平成28年2月17日付けで拒絶理由が通知され,同年4月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年9月8日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件拒絶査定不服審判は,これを不服として,同年11月7日に請求されたものであって,本件審判の請求と同時に手続補正書が提出され,当審において,平成29年10月30日付けで拒絶理由が通知され,同年12月27日に意見書及び手続補正書が提出された。


2 本件出願の請求項1に係る発明
本件出願の請求項1ないし5に係る発明は,平成29年12月27日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるところ,そのうちの請求項1の記載は次のとおりである。

「防湿層,光硬化性接着剤層,偏光子層及び位相差層がこの順で積層され,
前記偏光子層と前記位相差層とが,粘着剤層を介して積層されており,
前記防湿層の透湿度は,200g/m^(2)/24hrs以下であり,
前記防湿層の面内の位相差値は,100nm以上であり,
前記偏光子層の吸収軸に対する前記防湿層の遅相軸の角度θは,20度以上70度以下であり,
前記偏光子層は,二色性色素が吸着配向したポリビニルアルコール系樹脂から形成され,
前記偏光子層の厚みは,7μm以下である円偏光板。」(以下,当該請求項1に係る発明を「本願発明」という。)


3 当審において通知された拒絶理由の概要
当審において平成29年10月30日付けで本願発明に関して通知された拒絶理由は,概略,本件出願の請求項1(審決注:平成28年11月7日提出の手続補正書による補正後の請求項1である。)に係る発明は,引用文献2に記載された発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて(少なくとも,引用文献2に記載された発明,引用文献1に記載された事項,引用文献4,5等にみられる周知技術及び引用文献6,7等にみられる周知技術に基づいて),当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件出願は特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由(以下,「当審拒絶理由」という。)を含んでいる。
引用文献2,1,4ないし7は,次のとおりである。
引用文献2:特許第4804589号公報
引用文献1:特開2012-53078号公報
引用文献4:特開2009-258570号公報
引用文献5:特開昭59-159109号公報
引用文献6:特開2010-204502号公報
引用文献7:特開2011-113018号公報


4 引用例
(1)引用文献2
ア 引用文献2の記載
引用文献2(特許第4804589号公報)は,本件出願の出願前に頒布された刊行物であるところ,当該引用文献2には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,偏光膜,偏光膜を含む光学フィルム積層体,及び,偏光膜を含む光学フィルム積層体の製造に用いるための延伸積層体,並びにそれらの製造方法,並びに偏光膜を有する有機EL表示装置に関する。特に,本発明は,二色性物質を配向させたポリビニルアルコール系樹脂からなる,厚みが10μm以下の偏光膜,そのような偏光膜を含む光学フィルム積層体,及び,そのような偏光膜を含む光学フィルム積層体の製造に用いるための延伸積層体,並びにそれらの製造方法,並びにそのような偏光膜を有する有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム状に製膜したポリビニルアルコール系樹脂(以下,「PVA系樹脂」という。)の単層体に染色処理及び延伸処理を施すことにより,PVA系樹脂の分子が延伸方向に配向され,該PVA系樹脂内に二色性物質が配向状態で吸着された,PVA系樹脂層からなる偏光膜の製造方法はよく知られている。このPVA系樹脂単層膜を使用する従来の方法により得られる偏光膜の厚みは,ほぼ15?35μmである。この方法によれば,単体透過率が42%以上で,偏光度が99.95%以上の光学特性を有する偏光膜を得ることができ,この方法で製造された偏光膜は,現在では,テレビ,携帯電話機,携帯情報端末その他の光学的表示装置に使用されている。
【0003】
しかし,PVA系樹脂は親水性であり,高い吸湿性を有するため,PVA系樹脂を用いて製造された偏光膜は,温度や湿度の変化に敏感であり,周囲の環境変化により伸縮を生じ易く,そのためクラックが発生し易い,という傾向がある。また,使用中の環境変化によって生じる伸縮は,該偏光膜が接合される隣接部材に応力を生じさせ,該隣接部材に反り等の変形を生じることになる。
【0004】
したがって,偏光膜の伸縮を抑制し,温度や湿度の影響を軽減するために,通常は,テレビ,携帯電話機,携帯情報端末等の光学的表示装置用の偏光フィルムとしては,偏光膜の両面に,保護フィルムとして40?80μmのTAC(トリアセチルセルロース系)フィルムが貼り合された積層体が用いられる。そのような構成によっても,単層体による偏光膜を用いる場合には,偏光膜の薄膜化に限界があるので,伸縮力は無視できず,伸縮の影響を完全に抑制することは困難であり,偏光膜を含む光学フィルム積層体にある程度の伸縮を生じるのは避けられない。・・・(中略)・・・
【0005】
上述した課題が存在するために,十分な程度までの薄膜化を達成できない,従来のPVA系樹脂単層体を使用する偏光膜の製造方法に代わる,偏光膜の製造方法が求められている。しかしながら,フィルム状に製膜したPVA系樹脂の単層体を使用する従来の方法では,厚みが10μm以下の偏光膜を製造することは事実上不可能である。その理由は,フィルム状のPVA系樹脂単層体による偏光膜の製造においては,PVA系樹脂単層体の厚みが薄くなり過ぎると,染色工程及び/又は延伸工程において,PVA系樹脂層に溶解及び/又は破断を生じる恐れがあるため,均一な厚みの偏光膜を形成することができなくなるからである。
【0006】
この問題に対処するため,熱可塑性樹脂基材上にPVA系樹脂層を塗布形成し,この樹脂基材上に形成されたPVA系樹脂層を樹脂基材とともに延伸し,染色処理を施すことにより,従来の方法により得られる偏光膜に比べて非常に薄い偏光膜を製造する製造方法が提案されている。この熱可塑性樹脂基材を用いた偏光膜の製造方法は,PVA系樹脂の単層体による偏光膜の製造方法に比べて,偏光膜をより均一に製造できる点で注目される。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
熱可塑性樹脂基材上にPVA系樹脂層を塗工形成し,該PVA系樹脂層と熱可塑性樹脂基材とともに延伸して偏光膜を製造する方法は,特許文献1?5に記載されているように既に知られている。しかし,厚みが非常に薄い10μm以下の偏光膜であって,有機EL表示装置用の偏光膜として求められる,単体透過率42.5以上かつ偏光度99.5以上,好ましくは単体透過率43.0以上かつ偏光度99.5以上の光学特性を満たす高機能の偏光膜は,これまでのところ実現されていない,ないしは安定的な生産が実現されていない。
【0015】
したがって,本発明は,従来の偏光膜に比べて非常に薄く,しかも必要とされる光学特性を備えた偏光膜,そのような偏光膜を含む光学フィルム積層体,及び,そのような偏光膜を含む光学フィルム積層体の製造に用いるための延伸積層体,並びにそれらの製造方法,並びにそのような偏光膜を有する有機EL表示装置を提供し,ないしは安定的に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは,非晶性熱可塑性樹脂基材と,その上に塗布形成されたPVA系樹脂層とを一体に,空中補助延伸とホウ酸水中延伸とからなる2段延伸工程で延伸することと,該PVA系樹脂層に二色性色素による染色処理を施すこととによって,厚みが10μm以下であり,単体透過率T及び偏光度Pによって表される光学特性が,光学的表示装置に使用される偏光膜に要求される特性を満足させることができる,従来にない偏光膜を得ることに成功し,本発明を完成するに至った。本発明者らは,有機EL表示装置に使用される偏光膜に要求される光学的特性として,単体透過率をTとし,偏光度をPとしたとき,
T≧42.5,およびP≧99.5
で表される条件を設定した。本発明は,上述の延伸と染色とによって,厚みが10μm以下であり,単体透過率T及び偏光度Pによって表される光学特性が,上記の条件を満足するものとされた偏光膜を用いる有機EL表示装置を提供するものである。」

(イ) 「【0017】
詳細に述べると,本発明の1つの態様は,二色性物質を配向させたポリビニルアルコール系樹脂からなる連続ウェブの有機EL表示装置用偏光膜であって,
非晶性熱可塑性樹脂基材に製膜された前記ポリビニルアルコール系樹脂層を含む積層体が空中補助延伸とホウ酸水中延伸とからなる2段延伸工程で延伸されることにより,10μm以下の厚みにされたものであり,かつ,
単体透過率をT,偏光度をPとしたとき,
T≧42.5,およびP≧99.5
の条件を満足する光学特性を有するようにされたものに関する。単体透過率Tは,T≧43.0の条件を満足することがより好ましい。非晶性熱可塑性樹脂基材は,非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材とすることができる。二色性物質は,ヨウ素またはヨウ素と有機染料の混合物のいずれでもよい。
・・・(中略)・・・
【0023】
別の実施態様において,前記有機EL表示装置用偏光膜の連続ウェブの一方の面に保護層を貼り合せ,他方の面に前記有機EL表示装置用偏光膜と共に用いられて円偏光を生成するための位相差層を貼り合せて生成された積層体の一方の面に,粘着剤層を介してセパレータを剥離自在に積層するようにした光学機能フィルム積層体をさらに,生成することができる。・・・(中略)・・・
【0024】
保護層の材料としては,一般的に,透明性,機械的強度,熱安定性,水分遮断性,等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては,トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂,ポリエステル樹脂,ポリエーテルスルホン樹脂,ポリスルホン樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリアミド樹脂,ポリイミド樹脂,ポリオレフィン樹脂,(メタ)アクリル樹脂,環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂),ポリアリレート樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリビニルアルコール樹脂,およびこれらの混合物があげられる。
【0025】
保護層の偏光膜を接着させない面には,表面処理層として,ハードコート処理や反射防止処理,拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施した層を設けてもよい。また,表面処理層には紫外線吸収剤が含有していても良い。更に,表面処理層は偏光膜の加湿耐久性を向上させる目的で透湿度の低い層であることが好ましい。ハードコート処理は偏光膜表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり,例えばアクリル系,シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護膜の表面に付加する方式などにて形成することができる。・・・(中略)・・・
【0033】
ここでいう円偏光としては,実質的に反射防止機能を発現する範囲であれば楕円偏光も包含される。位相差層の正面位相差としては,代表的に1/4波長位相差の層が使用されるが,実質的に反射防止機能を発現する位相差であれば1/4波長位相差に限定されず例えば1/5波長位相差や1/6波長位相差の層なども使用することが出来る。ここでいう正面位相差とは位相差層の遅相軸方向の屈折率をnx,遅相軸と垂直方向の屈折率をnyとし,位相差膜の厚みをd(nm)としたときに,「(nx-ny)×d」によって求めることができる数値のことである。位相差層の配置角度は,代表的には,直線偏光膜と位相差層とを,それらの光軸が45度又は135度で交差するように積層して形成されるが,実質的に反射防止機能を発現する角度であれば,45度又は135度に限定されず使用することができる。・・・(中略)・・・
【0041】
本実施態様において,薄型高機能偏光膜厚みは,好ましくは10μm以下である。厚みが3?10μm以下の薄型高機能偏光膜であれば,薄型偏光膜の偏光性能を表す図2のT-Pグラフによって示されたように,3μm,8μm,10μmの各々の偏光性能に有意差はなく,上記不等式を満たす光学特性を有することが確認できる。図2は,少なくとも,厚みが10μmを越えない薄型高機能偏光膜は,クラック耐久性の問題を懸念することなく,要求性能を満たす光学特性を得ることを示すものである。
・・・(中略)・・・
【0046】
1つの実施態様において,染色液に浸漬する前に,予め延伸積層体を不溶化しておくことが好ましい。具体的には,この工程は,限定されるものではないが,延伸中間生成物を液温30℃のホウ酸水溶液に30秒間浸漬することによって,延伸積層体に含まれるPVA分子が配向されたPVA系樹脂層を不溶化する工程である。本工程のホウ酸水溶液は,水100重量%に対してホウ酸を3重量%含む。この不溶化工程に求められる技術的課題は,少なくとも染色工程において,延伸積層体に含まれるPVA系樹脂層を溶解させないようにすることである。これを第1不溶化とすると,二色性物質を配向させたPVA系樹脂層を含む着色積層体をホウ酸水中延伸前に,該着色積層体を40℃のホウ酸水溶液に60秒間浸漬することによって架橋処理を施すことにより不溶化する工程を第2不溶化と位置付けることができる。第1および第2の不溶化は,いずれも本発明の実施態様においては,最終的に製造される光学フィルム積層体に含まれる有機EL表示装置用偏光膜の光学特性にも影響を与える。
・・・(中略)・・・
【0054】
・・・(中略)・・・保護層は,前記偏光膜と共に用いられて円偏光を生成するための第2の位相差層として構成されることができる。この構成により,偏光膜から射出される直線偏光が円偏光に変換されるので,例えば視聴者が偏光サングラスを着用している場合にも,視認に支障がなくなる,という利点がもたらされる。」

(ウ) 「【発明の効果】
【0060】
本発明によれば,従来の偏光膜に比して大幅に薄膜化され,しかも必要とされる光学特性を備えた偏光膜,そのような偏光膜を含む光学フィルム積層体,及び,そのような偏光膜を含む光学フィルム積層体の製造に用いるための延伸積層体,並びに従来の偏光膜に比して大幅に薄膜化された偏光膜を使用し,しかも必要とされる光学特性を備えた有機EL表示装置を得る,ないしは安定的に得ることができる。すなわち,二色性物質を配向させたポリビニルアルコール系樹脂からなり,厚みが10μm以下であって,所要の光学的特性を備えた偏光膜,そのような偏光膜を含む光学フィルム積層体,及び,そのような偏光膜を含む光学フィルム積層体の製造に用いるための延伸積層体,並びにそれらの製造方法,並びにそのような偏光膜を使用する有機EL表示装置を得る,ないしは安定的に得ることができる。」

(エ) 「【0085】
[実施例1]・・・(中略)・・・
【0093】
光学フィルム積層体の製造に必須の工程ではないが,洗浄工程によって,光学フィルム積層体をホウ酸水溶液から取り出し,非晶性PET基材に製膜された3μm厚のPVA層の表面に付着したホウ酸をヨウ化カリウム水溶液で洗浄した。しかる後に,洗浄された光学フィルム積層体を60℃の温風による乾燥工程によって乾燥した。なお洗浄工程は,ホウ酸析出などの外観不良を解消するための工程である。
【0094】
次に,貼合せ及び/又は転写工程によって,非晶性PET基材に製膜された3μm厚のPVA層の表面に接着剤を塗布しながら,80μm厚のTAC(トリアセチルセルロース系)フィルムを貼合せた後,非晶性PET基材を剥離し,3μm厚のPVA層を80μm厚のTAC(トリアセチルセルロース系)フィルムに転写した。
・・・(中略)・・・
【0104】
[実施例4]
実施例4は,実施例1の製造工程に実施例3の不溶化工程と実施例2の架橋工程を加えた製造工程によって生成した光学フィルム積層体である。まず,非晶性PET基材に7μm厚のPVA層が製膜された積層体を生成し,次に,7μm厚のPVA層を含む積層体を空中補助延伸によって延伸倍率が1.8倍になるように自由端一軸に延伸した延伸積層体を生成した。実施例4は,実施例3の場合と同様に,生成された延伸積層体を液温30℃のホウ酸不溶化水溶液に30秒間浸漬する不溶化工程によって,延伸積層体に含まれるPVA分子が配向されたPVA層を不溶化した。実施例4はさらに,不溶化されたPVA層を含む延伸積層体を,実施例3の場合と同様に,液温30℃のヨウ素及びヨウ化カリウムを含む染色液に浸漬することによってヨウ素を吸着させたPVA層を含む着色積層体を生成した。
【0105】
実施例4は,実施例2の場合と同様に,生成された着色積層体を40℃のホウ酸架橋水溶液に60秒間浸漬する架橋工程によって,ヨウ素を吸着させたPVA層のPVA分子同士を架橋した。実施例4はさらに,架橋された着色積層体を,実施例1の延伸温度65℃より高い75℃のホウ酸水中延伸浴に5?10秒間浸漬し,実施例2の場合と同様に,延伸倍率が3.3倍になるように自由端一軸に延伸し,光学フィルム積層体を生成した。また実施例4の洗浄工程,乾燥工程,貼合せ及び/又は転写工程は,いずれも実施例1から3の場合と同様である。
【0106】
また実施例4は,実施例3の場合と同様に,染色液のヨウ素濃度を0.12?0.25重量%であっても,PVA層は溶解することはない。実施例4においては,延伸積層体の染色液への浸漬時間を一定にし,染色液のヨウ素濃度及びヨウ化カリウム濃度を実施例1に示した一定範囲内で変化させることによって,最終的に生成される偏光膜の単体透過率を40?44%になるようにヨウ素吸着量を調整し,単体透過率と偏光度を異にする着色積層体を種々生成した。
【0107】
以上のように実施例4は,まず,非晶性PET基材に7μm厚のPVA層が製膜された積層体を生成し,次に,7μm厚のPVA層を含む積層体を空中補助延伸によって延伸倍率が1.8倍になるように自由端一軸に延伸した延伸積層体を生成した。生成された延伸積層体を液温30℃のホウ酸不溶化水溶液に30秒間浸漬することによって延伸積層体に含まれるPVA層を不溶化した。不溶化されたPVA層を含む延伸積層体を液温30℃のヨウ素及びヨウ化カリウムを含む染色液に浸漬することによって不溶化されたPVA層にヨウ素を吸着させた着色積層体を生成した。ヨウ素を吸着させたPVA層を含む着色積層体を40℃のホウ酸架橋水溶液に60秒間浸漬することによって,ヨウ素を吸着させたPVA層のPVA分子同士を架橋した。架橋されたPVA層を含む着色積層体をホウ酸とヨウ化カリウムを含む液温75℃のホウ酸水中延伸溶に5?10秒間浸漬し,しかる後に,ホウ酸水中延伸によって倍率が3.3倍になるように自由端一軸に延伸した光学フィルム積層体を生成した。
【0108】
実施例4は,このように空中高温延伸及びホウ酸水中延伸からなる2段延伸と染色浴への浸漬に先立つ不溶化及びホウ酸水中延伸に先立つ架橋からなる前処理とによって,非晶性PET基材に製膜されたPVA層のPVA分子が高次に配向され,染色によってPVA分子に確実に吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向された偏光膜を構成する3μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体を安定的に生成することができた。
・・・(中略)・・・
【0143】
実施例4,8,12,19?25及び比較例1,4の製造方法により得られた偏光膜のうちの特定の偏光膜を選び,各偏光膜について,以下に示すようにして各種評価を行った。評価の対象とした偏光膜の光学特性を図30に,光学特性を含む各種特性と評価結果を表2に示す。ここで,各偏光膜の実施例の番号は,製造方法の実施例番号に枝番を付す形とした。
【0144】
【表2】

【0145】
まず,各評価に共通の構成である円偏光板の構成について説明する。
・・・(中略)・・・
【0147】
各実施例及び比較例1-1,1-2に係る偏光膜については,比較例4-1と異なり,偏光膜の片面のみにTAC(トリアセチルセルロース系)フィルム(厚み40μm)を接合した。すなわち,非晶性PET基材に製膜されたPVA層の表面に接着剤を介して,ハードコート(HC)処理のされたTAC(トリアセチルセルロース系)フィルム(厚み45μm)を貼合せて,光学フィルム積層体を作製した。更に,光学フィルム積層体から非晶性PET基材を剥離し,PVA層を45μm厚のHC処理TAC(トリアセチルセルロース系)フィルムに転写して光学機能フィルム積層体を作製した。得られた光学機能フィルム積層体と1/4波長位相差膜(帝人化成社製 商品名「ピュアエースWR(S-148)」)を貼り合わせて円偏光板を作製した。具体的には,光学機能フィルム積層体の偏光膜面と1/4波長位相差膜を,1/4波長位相差膜の遅相軸と偏光膜の吸収軸が45度となるように,アクリル系粘着剤(20μm)を介して貼り合わせることにより円偏光板を作成した。
・・(中略)・・・
【0202】
実施例1は,第1及び第2の不溶化工程を経ることなく製造された偏光膜の光学特性である。これに対して,実施例2は,第1の不溶化工程を行わず,第2の不溶化処理のみを行った偏光膜,実施例3は,第2の不溶化工程を行わず,第1の不溶化処理のみを行った偏光膜,実施例4は,第1及び第2の不溶化処理が行われた偏光膜の,それぞれの光学特性を示すものである。
【0203】
本発明の実施態様において,第1及び第2の不溶化工程を経ることなく要求性能を満たす偏光膜を製造することができる。しかしながら,図7から明らかなように,実施例1の不溶化処理が施されていない偏光膜の光学特性は,実施例2?4のいずれの偏光膜の光学特性よりも低い。それぞれの光学特性値を比較すると,実施例1<実施例3<実施例2<実施例4の順に光学特性が高くなる。」

(オ) 「【0246】
〔発明の実施の形態〕
図10a?12bに,上述の偏光膜を使用した本発明による有機EL表示装置の幾つかの実施形態を示す。
・・・(中略)・・・
【0255】
図10hに示す光学的表示装置200においては,図10gに示す有機EL表示装置の構成において,保護層206と帯電防止層210との間に,例えば,1/4波長位相差膜といった偏光膜と共に用いられて円偏光を生成するための第2の位相差層211が配置される。この構成によれば,偏光膜206よりも視認側に,偏光膜と共に用いられて円偏光を生成するための位相差層が配置されているため,有機EL表示パネル201から偏光膜206を経て出射する光は,第2の位相差層211を出るときに円偏光に変換される。この構成の有機EL表示装置は,例えば視聴者が偏光サングラスを着用している場合にも,視認に支障がなくなる,という利点をもたらす。」

イ 引用文献2に記載された発明
前記ア(ア)ないし(オ)の記載(特に前記ア(エ)の記載)から,実施例4の製造方法により得られた偏光膜であって,【0144】の表2に示された光学特性を有する「実施例4-1」の偏光膜を用いて作成した円偏光板についての発明を把握することができるところ,前記表2から,「実施例4-1」の偏光膜の「偏光膜厚(μm)」,「単体透過(%)」及び「偏光度(-)」の値がそれぞれ「3」,「43.5」及び「99.97」であることが看取されるから,前記円偏光板についての発明の構成は次のとおりである。(なお,引用文献2では,「光学フィルム積層体」という文言が,架橋された着色積層体を,75℃のホウ酸水中延伸浴に5?10秒間浸漬し,延伸倍率が3.3倍になるように自由端一軸に延伸することにより生成された積層体(【0105】)と,非晶性PET基材上に積層された実施例4-1の偏光膜の表面にHC処理TACフィルムを貼合せることにより作製される積層体(【0147】)の両者に対して用いられているが,混乱を避けるため,前者については「偏光膜積層体」と表現して,引用発明を認定した。)

「非晶性PET基材に7μm厚のPVA層が製膜された積層体を生成し,当該積層体を空中補助延伸によって延伸倍率が1.8倍になるように自由端一軸に延伸した延伸積層体を生成し,当該延伸積層体を液温30℃のホウ酸不溶化水溶液に30秒間浸漬する不溶化工程によって,延伸積層体に含まれるPVA分子が配向されたPVA層を不溶化し,さらに,不溶化されたPVA層を含む延伸積層体を,液温30℃のヨウ素及びヨウ化カリウムを含む染色液に浸漬することによってヨウ素を吸着させたPVA層を含む着色積層体を生成し,当該着色積層体を40℃のホウ酸架橋水溶液に60秒間浸漬する架橋工程によって,ヨウ素を吸着させたPVA層のPVA分子同士を架橋し,さらに,架橋された着色積層体を,75℃のホウ酸水中延伸浴に5?10秒間浸漬し,延伸倍率が3.3倍になるように自由端一軸に延伸して,偏光膜積層体を生成し,当該偏光膜積層体をホウ酸水溶液から取り出し,非晶性PET基材に製膜された3μm厚のPVA層の表面に付着したホウ酸をヨウ化カリウム水溶液で洗浄し,しかる後に,当該偏光膜積層体を60℃の温風による乾燥工程によって乾燥することによって,前記非晶性PET基材上に積層された,膜厚が3μmで,単体透過率が43.5%で,偏光度が99.97の偏光膜を得,
当該偏光膜の表面に接着剤を介して,ハードコート(HC)処理のされた45μm厚のHC処理TACフィルムを貼合せて,光学フィルム積層体を作製し,
当該光学フィルム積層体から前記非晶性PET基材を剥離して光学機能フィルム積層体を作製し,当該光学機能フィルム積層体の偏光膜面に1/4波長位相差膜(帝人化成社製 商品名「ピュアエースWR(S-148)」)を,1/4波長位相差膜の遅相軸と偏光膜の吸収軸が45度となるように,アクリル系粘着剤(20μm)を介して貼り合わせることにより作成した,
円偏光板。」(以下,「引用発明」という。)

(2) 引用文献1
ア 引用文献1の記載
引用文献1(特開2012-53078号公報)は,本件出願の出願前に頒布された刊行物であるところ,当該引用文献1には次の記載がある。(下線は,後述する引用文献1記載事項の認定に特に関係する箇所を示す。)
「【0023】
<偏光板>
図2は,本発明の一実施形態における偏光板を示す図面である。この図に示すように,偏光板20は,偏光フィルム21と,この偏光フィルム21の片面に貼合された内側フィルム23と,偏光フィルム21の他面に貼合された外側フィルム25と,外側フィルム25のうち偏光フィルム21の貼合面とは反対側に貼合されたプロテクトフィルム26と,が積層された層構成を有している。さらに,本実施形態の偏光板20は,内側フィルム23のうち偏光フィルム21の貼合面とは反対側の面に積層された粘着剤層27と,この粘着剤層27の表面に剥離可能の貼合されたセパレートフィルム28とを備えている。
【0024】
通常,偏光板20は,ロール状に巻かれた状態で搬送や保管される。ロール状の偏光板20の巻き回し方向は,特には限定されないが,例えばプロテクトフィルム26が内側になるように巻き回すことができる。
【0025】
偏光板20は,図示しない液晶セルに貼合され,画像表示装置等の偏光板として機能する。液晶セルに貼合する際には,ロール状に巻かれた偏光板20から長尺状の偏光板20が繰り出され,液晶セルの長辺又は短辺のサイズに応じて適宜チップカットされる。そして,セパレートフィルム28を剥離して粘着剤層27を露出させ,この粘着剤層27を介して液晶セルに貼合される。以下に,偏光板20を構成するフィルムについて説明する。
【0026】
(1)偏光フィルム21
偏光フィルム21は,自然光を直線偏光に変換する機能を有する部材である。偏光フィルム21としては,一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたものを用いることができる。・・・(中略)・・・
【0040】
(2)内側フィルム23
内側フィルム23は,偏光フィルム21の表面に貼合されるフィルムであり,液晶パネルや液晶表示装置に要求される特性に応じて種々の性質を有するフィルムを採用することができる。内側フィルム23の例としては,偏光板20が楕円偏光板として使用される場合には,例えば1/4波長板を備える位相差層が挙げられる。また,偏光板20が直線偏光板として使用される場合には,例えば光学補償機能を有する二軸性位相差フィルムや,表面保護機能を有する無配向性フィルムなどを挙げることができる。
【0041】
内側フィルム23を構成する樹脂材料は特に限定されない。このような樹脂材料の例としては・・・(中略)・・・
【0042】
これらの樹脂材料のうち,以下の理由から,オレフィン系樹脂,特にポリプロピレン系樹脂が好ましい。ポリプロピレン系樹脂を内側フィルム23の構成樹脂として選択した場合,以下のような優位点がある。すなわち,ポリプロピレン系樹脂は,光弾性係数が2×10^(-13)cm^(2)/dyne前後と小さく,また,透湿度が低いため,それを内側フィルム23とする偏光板20を液晶セルに適用することにより,湿熱条件での耐久性に優れた液晶表示装置とすることができる。さらに,ポリプロピレン系樹脂フィルムの偏光フィルム21に対する接着性は,トリアセチルセルロースフィルムほどではないにしても良好であり,公知の各種接着剤を用いた場合に,内側フィルム23を十分な強度で偏光フィルム21に接着することができる。
【0043】
上記オレフィン系樹脂としては,例えば,ノルボルネン又は他のシクロペンタジエン誘導体等の環状オレフィンモノマーを,重合用触媒を用いて重合した環状オレフィン系樹脂や,エチレン又はプロピレン等の鎖状オレフィンモノマーを,重合用触媒を用いて重合した鎖状オレフィン系樹脂が挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0063】
(3-1)1/4波長板(位相差層)
内側フィルム23の例としては,1/4波長板を少なくとも1枚含む位相差層が挙げられる。1/4波長板は,可視光の波長領域(380?780nm)のいずれかの光に対してほぼ1/4波長(90°)の位相差を示す位相差フィルムであり,直線偏光と円偏光を相互に変換する機能を有するとともに,液晶セルの視野角を補償する機能を有している。
・・・(中略)・・・
【0067】
(1/4波長板の製造方法)
1/4波長板は,樹脂材料をフィルム状に成形して未延伸フィルムに製膜し,この未延伸フィルムに一軸延伸,二軸延伸など公知の延伸方向で延伸処理を施すことで製造することができる。未延伸フィルムの製膜方法としては,上述した押出成形法や溶剤キャスト法などが挙げられる。また,延伸方向としては,斜め延伸が好ましい。以下,1/4波長板の製造方法について説明する。
・・・(中略)・・・
【0090】
(斜め延伸)
通常,斜め延伸は以下の工程を有する。
(i)樹脂の融点付近の温度で未延伸フィルムを予熱する予熱工程;
(ii)予熱された未延伸フィルムを機械流れ方向(MD)と斜交する方向へ斜め延伸する延伸工程;
(iii)斜め延伸された延伸フィルムを熱固定する熱固定工程。
【0091】
テンター法に用いる延伸機(テンター延伸機)としては,予熱工程を行うゾーン,延伸工程を行うゾーン,熱固定工程を行うゾーンにおいて,それぞれの温度を独立に調節できる機構を備えたものが好ましい。このようなテンター延伸機を用いて延伸を行うことにより,光学的に均一性が高い延伸フィルムを得ることができる。上記(i)?(iii)の工程のうち,最も重要な工程は(ii)の工程であり,(i)と(iii)の工程は,高温環境下における透過率と透明性の低下が抑制された延伸フィルムを得るために適宜付加される。
・・・(中略)・・・
【0114】
(3)外側フィルム25
外側フィルム25は,偏光フィルム21のうち内側フィルム23とは反対側の表面に貼合されるフィルムであり,液晶パネルや液晶表示装置に要求される特性に応じて種々の性質を有するフィルムを採用することができる。内側フィルム23の例としては,偏光フィルム21の表面を保護する機能を有する保護フィルム,防眩性フィルムなどが挙げられる。
【0115】
外側フィルム25としての保護フィルムは,透明樹脂で形成されるフィルムであれば特に限定されない。透明樹脂の例としては,・・・(中略)・・・
【0116】
これらの樹脂材料のうち,上述した内側フィルム23と同じく湿熱条件での耐久性の高さや偏光フィルム21との接着性の良さから,オレフィン系樹脂,特にポリプロピレン系樹脂が好ましい。
・・・(中略)・・・
【0121】
外側フィルム25としては,上述した保護フィルムや防眩性フィルムに限定されず,他の機能性フィルムであってもよい。このような機能性フィルムとしては,例えば,反射防止,低反射,防汚,帯電防止などの機能を有するフィルムが挙げられる。これらの機能性フィルムについても公知の物を採用することができるため,詳細な説明は省略する。その他,立体画像表示装置や偏光サングラスに対応する目的で,外側フィルム25として1/4波長板を設けるようにしてもよい。このような1/4波長板としては,斜め延伸フィルムを用いることが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0123】
(4)プロテクトフィルム26
プロテクトフィルム26は,外側フィルム25の表面を損傷,摩損などから保護するための部材である。プロテクトフィルム26は,透明樹脂からなる基材フィルム26aと,この基材フィルム26aの表面に積層された弱い接着性を有する粘着剤層26bと,により構成される。プロテクトフィルム26は,偏光板20の使用時まで外側フィルム25に貼合されており,使用時においては外側フィルム25から剥離される。
・・・(中略)・・・
【0147】
(6)セパレートフィルム28
セパレートフィルム28は,粘着剤層27を乾燥等から保護するためのフィルムである。セパレートフィルム28としては,通常,透明基材フィルムに易剥離層を形成して,粘着剤層27からの剥離性を付与したものが用いられる。・・・(中略)・・・
【0149】
(7)接着剤層(不図示)
偏光フィルム21への外側フィルム25及び内側フィルム23の貼合,積層は,通常,接着剤層を介してなされる。偏光フィルム21の両面に設けられる接着剤層を形成する接着剤は,同種であってもよく,異種であってもよい。
【0150】
接着剤としては,エポキシ系樹脂,ウレタン系樹脂,シアノアクリレート系樹脂,アクリルアミド系樹脂などを接着剤成分とする接着剤を用いることができる。本発明において好ましく用いられる接着剤の1つは,無溶剤型の接着剤である。無溶剤型の接着剤は,有意量の溶剤を含まず,活性エネルギー線(例えば,紫外線,可視光,電子線,X線等)の照射により反応硬化する硬化性化合物(モノマー又はオリゴマーなど)を含み,当該硬化性化合物の硬化により接着剤層を形成するものであり,典型的には,活性エネルギー線の照射により反応硬化する硬化性化合物と,重合開始剤とを含む。特に,上述したとおり外側フィルム25は透湿度が低いため,水系接着剤を使用した場合に水抜けが悪く,接着剤の水分によって偏光フィルム21の損傷や偏光性能の劣化などを引き起こす場合がある。したがって,このような透湿度の低い樹脂フィルムを接着する場合には,無溶剤系の接着剤が好ましい。
【0151】
速硬化性及びこれに伴う偏光板20の生産性向上の観点から,接着剤層を形成する好ましい接着剤の例として,活性エネルギー線の照射で硬化する活性エネルギー線硬化性接着剤を挙げることができる。このような活性エネルギー線硬化性接着剤の例として,例えば,紫外線や可視光などの光エネルギーで硬化する光硬化性接着剤が挙げられる。光硬化性接着剤としては,反応性の観点から,カチオン重合で硬化するものが好ましく,特に,エポキシ化合物を硬化性化合物とする無溶剤型のエポキシ系接着剤は,偏光フィルム21と外側フィルム25や内側フィルム23との接着性に優れているためより好ましい。」

イ 引用文献1に記載された技術事項
前記アで摘記した記載から,引用文献1に,次の技術事項が記載されていると認められる。

「一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させた偏光フィルム21と,この偏光フィルム21の片面に貼合された内側フィルム23と,偏光フィルム21の他面に貼合された外側フィルム25とを有し,画像表示装置等の偏光板として機能する偏光板20において,
前記外側フィルム25の材質は,湿熱条件での耐久性の高さや前記偏光フィルム21との接着性の良さから,ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂が好ましく,
前記偏光フィルム21へ前記外側フィルム25を貼合する接着剤としては,外側フィルム25は透湿度が低いため,水系接着剤を使用した場合に水抜けが悪く,接着剤の水分によって前記偏光フィルム21の損傷や偏光性能の劣化などを引き起こす場合があるため,無溶剤系の接着剤が好ましく,その中で,速硬化性及びこれに伴う偏光板20の生産性向上の観点から,光硬化性接着剤が好ましく,
偏光サングラスに対応する目的で,前記外側フィルム25として可視光の波長領域(380?780nm)のいずれかの光に対してほぼ1/4波長の位相差を示す1/4波長板を設けるようにしてもよく,このような1/4波長板としては,斜め延伸フィルムを用いることが好ましいこと。」(以下,「引用文献1記載事項」という。)

(3)周知の技術事項
ア 引用文献4の記載
引用文献4(特開2009-258570号公報)は,本件出願の出願前に頒布された刊行物であるところ,当該引用文献4には次の記載がある。(下線は,後述する第1周知事項の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【0101】
また,本発明においては,さらに,前記光学フィルムは,ディスコティック液晶層が形成されない側の,透明基材フィルムの片面には偏光子を介して保護フィルム層が積層されていることが好ましい。
【0102】
また,前記保護フィルム層が低透湿性を有することが好ましい。具体的には,前記保護フィルム層が,40℃,90%R.H.での透湿度が200g/m^(2)・24h以下であることが好ましい。40℃,90%R.H.での透湿度が150g/m^(2)・24h以下であることがより好ましく,40℃,90%R.H.での透湿度が100g/m^(2)・24h以下であることがより好ましい。
【0103】
上述の低透湿性を有する保護フィルム層を形成する材料としては,たとえば,ポリカーボネート系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー,シクロ系ないしはノルボルネン構造を有する環状オレフィン系樹脂,またはこれらの混合体を用いることができる。」

(イ) 「【0151】
(下塗り層付き偏光板の作製)
厚さ20μmの偏光子の片面に,保護フィルムとして,厚さ80μmのアートンフィルム(JSR社製,透湿度:40℃90%℃/100g/m^(2)/24h)を貼り合わせ,偏光子の他方の面に,80μmのトリアセチルセルロースの片面にディスコティック液晶層を形成したフィルムのトリアセチルセルロースフィルム面を貼り合わせて,光学補償層付偏光フィルムを作製した。
・・・(中略)・・・
【0156】
〔実施例2?6,比較例1?9〕
実施例1において,粘着剤((メタ)アクリル系ポリマー(A)および(メタ)アクリル系オリゴマー(B))の調製に用いたモノマー成分の種類または配合量を表1に示すように変えたこと,下塗り剤の調製にあたりフェノール系酸化防止剤の有無を表1に示すように変えたこと,保護フィルムの種類を表1に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして,粘着型光学フィルムを作製した。
・・・(中略)・・・
【0158】
また,ゼオノア(日本ゼオン社製,透湿度:40℃90%℃/10g/m^(2)/24h),TAC(富士写真フィルム社製,透湿度:40℃90%℃/800g/m^(2)/24h)である。
・・・(中略)・・・
【0164】
【表1】



イ 引用文献5の記載
引用文献5(特開昭59-159109号公報)は,本件出願の出願前に頒布された刊行物であるところ,当該引用文献5には次の記載がある。(下線は,後述する第1周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「本発明は耐久性に優れた偏光板に関するものである。
従来の偏光板は,延伸配向した偏光膜基材にヨウ素や二色性染料を染色せしめ偏光能を有する偏光膜を作製したる後,保護膜を両面に形成させたる構成のものが一般的である。偏光膜基材としては主にポリビニルアルコールおよびその誘導体フィルムが主に用いられ,保護膜としてはセルロースアセテート系樹脂やアクリル系樹脂の実質的に無配向の膜状物が使用され,また両面への形成方法としてはフィルム状物の貼合や溶解状物の塗布等が行なわれている。このようにして得られた偏光板は液晶表示用部材や反射光の除去や装飾部材などの用途に利用されており,特にポリビニルアルコール(以下PVAと略す)-ヨウ素系からなる偏光板は良好な性能を有するため広く使用されている。
一方,偏光板の性能としては,偏光度で代表される偏光性能と,さらに重要な性能として長時間使用における初期偏光性能維持性能がある。後者は一般に耐久性能と呼ばれている。偏光板の耐久性としては種々要望されているが,前述したPVA系偏光膜からなる偏光板は耐湿性能が不充分であり,改良が望まれている。・・・(中略)・・・
本発明者達はかかる問題に関し鋭意検討の結果,透湿度の低い高分子化合物を保護膜として用いると驚くべきことに偏光板の耐湿性および耐熱性等の耐久性が著しく向上することを見い出し本発明に至ったものである。
すなわち,本発明は1層もしくは2層以上からなりかつ可視波長域における平均光線透過率が80%以上である高分子化合物膜を吸水性のある偏光膜の両面にコートもしくは貼合もしくは密封袋状に形成せしめ保護膜とした構成の偏光板において該高分子化合物膜の透湿度が10g/m^(2)・日以下であることを特徴とする耐久性に優れた偏光板に関する。
本発明で用いられる偏光膜は前述したPVA系偏光膜に限定されるべきものでなく,ごくわずかの吸水能を有する偏光膜であれば本発明による効果は十分に現われる。
また本発明において保護膜として用いる高分子化合物膜の透湿度(測定法:JIS-Z0208,40℃-90%RH)は10g/m^(2)・日以下であり,望ましくは5g/m^(2)・日以下であることが望ましい。またさらに望ましくは100μ以下の肉厚において前述した透湿度を有する高分子化合物膜とすることが軽量化,薄肉化という面で好適であり,さらに単体透過率の高い偏光板という面でも好適である。
具体的に本発明において用いる保護膜を述べると4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体等のフッ素系樹脂,ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂,ナイロン-12・ナイロン66等のポリアミド系樹脂等がある。さらに光線透過率を向上させる目的や透湿度を低下させる目的で高分子化合物をフィルム状にしたる後1軸方向もしくは2軸方向に延伸を施こしたる保護膜はより広い高分子化合物を提供する上で好ましい。」(1ページ右下欄10行ないし2ページ左下欄17行)

(イ) 「実施例1
・・・(中略)・・・一方,縦一軸に7倍の延伸を施した厚み100μの高密度ポリエチレンフィルムを用い封筒状の3方シール袋を作製した。なお該高密度ポリエチレンフィルムの延伸方法は圧延法でありロール温度は90℃,潤滑液に水を用いて行なった。またこの延伸を施されたフィルムの厚みは100μであり,透湿度は0.6g/m^(2)・日・100μであり,可視波長域における平均光線透過率は80%であった。・・・(中略)・・・
実施例2
実施例1と同じ条件でPVA-ヨウ素系偏光膜を作製した。この偏光膜(含水率9%)の両面に実施例1と同じ条件で7倍圧延を施した厚さ100μの高密度ポリエチレンフィルムを保護膜として貼合させた。なお貼合にはウレタン系接着剤を用い,偏光膜の配向方向と保護膜の配向方向は同一方向となるよう貼合させた。
こうして得られた偏光板を40℃-90%R.H.の恒温恒湿槽に96時間放置した後,偏光性能を測定し初期性能からの低下度をみた。結果を第1表に示す。・・・(中略)・・・

」(3ページ右下欄2行ないし5ページ左下欄末行)

ウ 引用文献6の記載
引用文献6(特開2010-204502号公報)は,本件出願の出願前に頒布された刊行物であるところ,当該引用文献6には次の記載がある。(下線は,後述する第2周知事項の認定に特に関係する箇所を示す。)
「【0001】
本発明は,積層光学フィルム,液晶パネル,および液晶表示装置に関する。より詳細には,本発明は,薄型化と高硬度化とを両立し得る積層光学フィルムならびに該積層光学フィルムを用いた液晶パネルおよび液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,携帯電話等の屋外で使用する液晶表示装置(LCD)に対して,偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合であっても良好な視認性を維持し得る表示特性が強く要求されつつある。このような表示特性を得るためには,液晶表示装置からの出射光を楕円偏光,円偏光,または偏光を解消した非偏光に変更する必要がある。・・・(中略)・・・
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下,本発明の好ましい実施形態について説明するが,本発明はこれらの実施形態には限定されない。・・・(中略)・・・
【0010】
A.積層光学フィルムの全体構成
本発明の積層光学フィルムは,偏光子と,該偏光子よりも視認側に配置された第1の保護フィルムと,該偏光子よりも視認側に配置された位相差層とを備える。・・・(中略)・・・
【0011】
図1は,本発明の好ましい実施形態による積層光学フィルムの概略断面図である。積層光学フィルム10は,偏光子11と,第1の保護フィルム13と,位相差層12とを視認側に向かってこの順に備える。・・・(中略)・・・
【0014】
本発明の積層光学フィルムは,液晶表示装置に好適に用いられる。その際,本発明の積層光学フィルムは,液晶セルの視認側に配置される。また,位相差層12および第1の保護フィルム13が偏光子11よりも視認側となるように配置される。具体的には,偏光子11が液晶セル側となり,位相差層12および第1の保護フィルム13が視認側となるように配置される。このように配置することで,偏光子11から出射する直線偏光を適切に楕円偏光または円偏光に変換し得る。その結果,偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも,視認性に優れる液晶表示装置を提供し得る。
【0015】
偏光子11と位相差層12とは,その吸収軸および遅相軸とが任意の適切な角度をなすように配置される。偏光子11の吸収軸と位相差層12の遅相軸とのなす角度αは,通常5?85°であり,好ましくは30?60°,さらに好ましくは40?50°である。このような範囲に設定することにより,偏光子11から出射する直線偏光をより適切に楕円偏光または円偏光に変換し得る。・・・(中略)・・・
【0055】
[実施例1]・・・(中略)・・・
【0062】
(積層光学フィルムの作製)
上記積層体の位相差層側に,ポリビニルアルコール系接着剤(日本合成化学社製,商品名「Z200」,厚み100nm)を介して上記偏光子を積層した。このとき,偏光子の吸収軸と位相差層の遅相軸とのなす角度が45°となるように積層した。次いで,偏光子の位相差層側とは反対側にポリビニルアルコール系接着剤(日本合成化学社製,商品名「Z200」,厚み100nm)を介して第2の保護フィルムを積層して積層光学フィルム1を得た。」

エ 引用文献7の記載
引用文献7(特開2011-113018号公報)は,本件出願の出願前に頒布された刊行物であるところ,当該引用文献7には次の記載がある。(【0006】,【0007】,【0032】及び【0085】における下線は,後述する第1周知事項の認定に特に関係する箇所を,それ以外の下線は,後述する第2周知事項の認定に特に関係する箇所を,それぞれ示す。)
(ア) 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,液晶表示装置をはじめとする画像表示装置に使用される偏光板及びその製造方法に関するものである。本発明の偏光板を実装した表示装置では,出射側の偏光が円偏光になるために方位角依存性が小さく,サングラスなどをかけた状態でどの方位から見ても良好な表示を保てる特徴を有している。
【背景技術】
【0002】
・・・(中略)・・・
【0004】
上記のような液晶表示装置は,必ず液晶セルよりも視認側に偏光板を配置する構成となるため,出射する光が直線偏光となり,強い方向依存性を有してしまう。このため,偏光サングラスのような直線偏光のかかるフィルム越しに表示装置を見ると,ある角度で偏光板とクロスニコルの関係となってしまい,表示が視認出来なくなる問題がある。
【0005】
このような問題を回避するために,特許第2940031号(特許文献1)では,視認側の偏光フィルムの上にさらにλ/4波長板を貼ることで出射光を円偏光として方位角依存性をなくすことが提案されている。しかしながら,このような方法だと通常は,両面に透明フィルムの付いた偏光フィルムの上にさらに感圧式接着剤などを介してλ/4波長板などを貼合することになるため,薄型化の要求に対しては逆行してしまう,などの問題点がある。
【0006】
また,特開2008-83307号公報(特許文献2)では,偏光フィルムの上にセルロース系のλ/4波長板を配置することが提案されている。しかしながら,セルロースなどの透湿度の高いフィルムを用いた場合には,湿熱環境下で位相差値が変化することで見た目が変わってしまう,などの問題点もある。
【0007】
特開2009-122454号公報(特許文献3)では,偏光フィルムの上にλ/4を直接配置することが提案されているが,直接偏光フィルムの上に感圧紙機接着剤などを用いてλ/4を配置した場合には,耐熱環境下における偏光フィルムの収縮によってλ/4板の周囲が盛り上がって箱型になってしまう問題などがある。また,接着剤を用いて偏光フィルムと背接着した場合においても,偏光フィルムの両面ともに透湿度の高いフィルムなどを接着貼合する場合には偏光フィルムの性能が十分には出にくく,表示装置に実装した際に高いコントラスト比が得られない,などの問題がある。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は,サングラス着用時にも視認性に優れ,かつ,薄型であり,耐湿熱,耐熱環境下のいずれにおいても良好な外観と表示状態を保つことが出来る,高コントラスト偏光板を得ることである。
・・・(中略)・・・
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る偏光板の層構成の例を図1に断面模式図で示した。本発明では,図1に示すように,感圧接着剤層1,透明フィルム2,第一の接着剤層3,偏光フィルム4,第二の接着剤層5,透明なプラスチック基板6をこの順に積層して,偏光板を構成する。・・・(中略)・・・
【0030】
[透明なプラスチック基板6]
偏光フィルム4の片面には,透明なプラスチック基板6が接着される。この透明なプラスチック基板は,遅相軸が偏光フィルムの吸収軸に対して45±10°または135±10°にあり,100?200nmの位相差を有するものである。このため,透明なプラスチック基板6は,一軸延伸または二軸延伸されたものであることができる。延伸することで,透明なプラスチック基板6に任意の位相差値を付与することができる。・・・(中略)・・・
【0032】
透明なプラスチック基板6には,従来から偏光板の保護フィルムとして知られている各種の樹脂フィルムを使用することができるが,なるべく透湿度が低いものの方が好ましく,100(g/m^(2)・24hr)以下であることが,接着時に偏光フィルムが急激に乾燥しないなどの理由から,好ましい。さらには,50(g/m^(2)・24hr)以下であることがより好ましい。急激に偏光フィルムが乾燥する場合には,後述するように,偏光性能が十分に出ないことがある。このような理由から,透湿度が低いシクロオレフィン系樹脂フィルム,ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート,ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂フィルム,ポリカーボネート系樹脂フィルム,アクリル系樹脂フィルム,ポリプロピレン系樹脂フィルムなど,当分野において従来より広く用いられてきているフィルムを挙げることができる。なかでも透明性と位相差の発現性が適当であるシクロオレフィン系樹脂はもっとも好ましい。
・・・(中略)・・・
【0035】
位相差値が上述の範囲にあり,かつ,遅相軸の角度も上述の範囲にある場合には,サングラスを装着したままで画面を見ても,暗くなる部分がなく表示が良好に見える。これよりも,位相差値が低い場合や高い場合には,表示装置を回した際に明らかに暗くなって見えにくくなる角度が出たり,虹色が見えたりする不具合がある。遅相軸の角度が上述の範囲にない場合にも同様に,角度依存性が大きくなる不具合がある。
・・・(中略)・・・
[実施例1]
【0083】
・・・(中略)・・・
【0085】
(偏光板の作製)
先に得られた偏光フィルムの一方の面に,ケン化処理が施されたトリアセチルセルロースからなる厚み40μmのフィルム(KC4UY,コニカミノルタオプト(株)製)を上記接着剤(A)を用いて,また他方の面には,予めコロナ処理が施されたノルボルネン系樹脂製の位相差フィルム(ゼオノアフィルム ZD14-141158-A1340(日本ゼオン(株)製),厚み:32μm)を上記接着剤(B)を用いて,ニップロールにより貼合した。貼合物の張力を430N/mに保ちながら,室温で貼合から5秒経過した後に,60℃で11秒,80℃で141秒,70℃で93秒の乾燥を連続で行ない偏光板を得た。この位相差フィルムを位相差測定器(KOBRA-WPR,王子計測機器(株)製)で測定したところ,R_(0)=140nmであり,さらに,n_(x)>n_(y)>n_(z)の関係を有しており,2軸性フィルムであった。また,この位相差フィルムの透湿度を測定したところ,10(g/m^(2)・24hr)未満の数値であり,十分に低い透湿度を有していた。
・・・(中略)・・・
【0087】
[比較例1]
【0088】
・・・(中略)・・・
【0090】
(偏光板の作製)
先に得られた偏光フィルムの一方の面に,ケン化処理が施されたトリアセチルセルロースからなる厚み40μmのフィルム(KC4UY,コニカミノルタオプト(株)製)を上記接着剤(A)を用いて,また他方の面には,予めコロナ処理が施されたセルロース系樹脂を延伸して作製した位相差フィルム(厚み:40μm)を上記接着剤(B)を用いて,ニップロールにより貼合した。貼合物の張力を430N/mに保ちながら,室温で貼合から5秒経過した後に,60℃で11秒,80℃で141秒,70℃で93秒の乾燥を連続で行ない偏光板を得た。この位相差フィルムを位相差測定器(KOBRA-WPR,王子計測機器(株)製)で測定したところ,R_(0)=110nmであり,さらに,R_(0)=140nmの関係を有しており,2軸性フィルムであった。また,この位相差フィルムの透湿度を測定したところ,500(g/m^(2)・24hr)の数値であり,高い透湿度を有していた。」

オ 引用文献4,5及び7の記載から把握される周知の技術事項
前記ア及びイで摘記した引用文献4及び5の記載,並びに引用文献7の【0006】,【0007】,【0032】及び【0085】等の記載から,次の技術事項が,本件出願の出願前に周知であったと認められる。

「偏光板において,偏光子に貼合する保護フィルムとしては,透湿度が少なくとも200g/m^(2)/24h以下の低透湿性のものが好ましく,このような保護フィルムはポリオレフィン系ポリマーや環状オレフィン系樹脂により形成することができること。」(以下,「第1周知事項」という。)

カ 引用文献6及び7の記載から把握される周知の技術事項
前記ウで摘記した引用文献6の記載並びに引用文献7の【0001】,【0004】,【0030】及び【0035】等の記載から,次の技術事項が,本件出願の出願前に周知であったと認められる。

「偏光サングラス越しに表示画面を見たときに,角度によって暗くなるという問題を解消するために,偏光子の視認側に積層する位相差層については,偏光子の吸収軸と位相差層の遅相軸のなす角度が45°程度になるように設けること。」(以下,「第2周知事項」という。)


5 対比
(1) 引用発明の「偏光膜」,「1/4波長位相差膜(帝人化成社製 商品名「ピュアエースWR(S-148)」)」,「ヨウ素」,「『PVA層』の材質であるPVA」及び「円偏光板」は,本願発明の「偏光子層」,「位相差層」,「二色性色素」,「ポリビニルアルコール系樹脂」及び「円偏光板」に,それぞれ対応する。

(2) 引用発明の「HC処理TACフィルム」が引用文献2の【0023】や【0024】に記載された「保護層」として設けられたものであることは明らかであるところ,当該「保護層」の作用機能の一つが,偏光膜における湿度の影響を軽減することにあることは,引用文献2の【0004】の記載や技術常識から自明であるから,引用発明の「HC処理TACフィルム」を「防湿層」ということができる。
しかるに,引用発明は,「偏光膜」(本願発明の「偏光子層」に対応する。以下,「5 対比」欄において,「」で囲まれた引用発明の構成に付した()中の文言は,当該引用発明の構成に対応する本願発明の発明特定事項を表す。)の一方の面に「接着剤」を介して「HC処理TACフィルム」(防湿層)を貼合せ,他方の面に「1/4波長位相差膜(帝人化成社製 商品名「ピュアエースWR(S-148)」)」(位相差層)を「アクリル系粘着剤(20μm)」を介して貼り合わせたものであるから,本願発明と,「防湿層,接着剤層,偏光子層及び位相差層がこの順で積層され,前記偏光子層と前記位相差層とが,粘着剤層を介して積層されて」いる点で共通する。

(3) 引用発明の「偏光膜」(偏光子層)は,延伸することによってPVA分子が「配向」された「PVA」(ポリビニルアルコール系樹脂)層に「ヨウ素」(二色性色素)を「吸着」させ,これをさらに延伸することにより作成したものであるから,本願発明の「二色性色素が吸着配向したポリビニルアルコール系樹脂から形成され」たとの「偏光子層」に係る発明特定事項に相当する構成を具備している。

(4) 引用発明の「偏光膜」(偏光子層)の膜厚は3μmであるから,引用発明は,本願発明の「偏光子層の厚みは,7μm以下である」との発明特定事項に相当する構成を具備している。

(5) 前記(1)ないし(4)に照らせば,本願発明と引用発明は,
「防湿層,接着剤層,偏光子層及び位相差層がこの順で積層され,
前記偏光子層と前記位相差層とが,粘着剤層を介して積層されており,
前記偏光子層は,二色性色素が吸着配向したポリビニルアルコール系樹脂から形成され,
前記偏光子層の厚みは,7μm以下である円偏光板。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点:
本願発明の「防湿層」は,その透湿度が200g/m^(2)/24hrs以下であり,その「面内の位相差値」が「100nm以上」であり,「偏光子層の吸収軸に対する防湿層の遅相軸の角度θ」が「20度以上70度以下」となるよう積層され,「光硬化性接着剤層」により「偏光子層」と接着されているのに対して,
引用発明の「HC処理TACフィルム」は,その透湿度や面内位相差値が定かでなく,「偏光膜の吸収軸に対するHC処理TACフィルムの遅相軸の角度θ」も定かでなく,「偏光膜」と接着するための「接着剤」が光硬化性接着剤であるのか否かも定かでない点。

6 判断
(1)相違点について
ア 前記4(2)イで認定した引用文献1記載事項を再掲すると次のとおりである。
「一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させた偏光フィルム21と,この偏光フィルム21の片面に貼合された内側フィルム23と,偏光フィルム21の他面に貼合された外側フィルム25とを有し,画像表示装置等の偏光板として機能する偏光板20において,
前記外側フィルム25の材質は,湿熱条件での耐久性の高さや前記偏光フィルム21との接着性の良さから,ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂が好ましく,
前記偏光フィルム21へ前記外側フィルム25を貼合する接着剤としては,外側フィルム25は透湿度が低いため,水系接着剤を使用した場合に水抜けが悪く,接着剤の水分によって前記偏光フィルム21の損傷や偏光性能の劣化などを引き起こす場合があるため,無溶剤系の接着剤が好ましく,その中で,速硬化性及びこれに伴う偏光板20の生産性向上の観点から,光硬化性接着剤が好ましく,
偏光サングラスに対応する目的で,前記外側フィルム25として可視光の波長領域(380?780nm)のいずれかの光に対してほぼ1/4波長の位相差を示す1/4波長板を設けるようにしてもよく,このような1/4波長板としては,斜め延伸フィルムを用いることが好ましいこと。」

イ 引用文献2の【0054】や【0255】には,保護層を,偏光膜から射出される直線偏光を円偏光に変換する位相差層として構成したり,当該保護層より視認側に偏光膜から射出される直線偏光を円偏光に変換する1/4波長位相差膜を配置することによって,偏光サングラスを着用している場合でも視認に支障がなくなることが記載されているところ,これら記載中の「偏光膜から射出される直線偏光を円偏光に変換する位相差層」とは,その遅相軸と偏光膜の吸収軸とがなす角度が45°程度になるように配置された1/4波長位相差層のことであることが,第2周知事項や自然法則から当業者に自明である。しかるに,偏光サングラスを着用したときのために位相差層として構成できるとされた引用発明の保護層,すなわち「HC処理TACフィルム」は,引用文献1記載事項において偏光サングラスに対応する目的で1/4波長板としてもよいとされた「外側フィルム25」に対応する。
また,引用文献2の【0024】には,当該保護層の材料の具体例として,トリアセチルセルロース系のセルロース樹脂とともに,ポリオレフィン樹脂や環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)が挙げられているところ,当該ポリオレフィン樹脂や環状ポリオレフィン樹脂は,引用文献1記載事項における「ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂」にほかならない。
してみれば,引用発明において,偏光サングラスを着用している場合でも視認に支障がないものとするとともに,湿熱条件での耐久性を向上させるために,保護層として,HC処理TACフィルムに代えて,ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムを斜め延伸して,可視光の波長領域(380?780nm)のいずれの光に対してもほぼ1/4波長に該当する140nm程度の位相差を有する1/4波長板とした,厚みが45μm程度のものを用い,これを,遅相軸と偏光膜の吸収軸とがなす角度が45°程度になるような位置関係で偏光膜に貼合するとともに,当該保護層と偏光膜を貼合させるための接着剤として,光硬化性接着剤を用いることは,引用文献2自体の記載及び引用文献1記載事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たことというほかない。

ウ しかるに,帝人フィルムソリューション株式会社のホームページ(URL:http://www.teijinfilmsolutions.jp/product/material/tokusei.htmlの「代表的プラスチックフィルムの特性値」を参照。)によると,厚みが25μmの延伸ポリプロピレンOPPの透湿度は8g/m^(2)/24hrであるから,前記イで述べた構成の変更を行った引用発明における保護フィルムの透湿度は,本願発明の「200g/m^(2)/24hrs以下」という要件を満足するものと認められる。
なお,前記4(2)イにおいて第1周知事項として認定したように,偏光板の保護フィルムの透湿度が少なくとも200g/m^(2)/24h以下の低透湿性のものが好ましいこと,及びこのような保護フィルムはポリオレフィン系ポリマーや環状オレフィン系樹脂により形成することができることは,本件出願の出願前に周知であったと認められるから,前記イで述べた構成の変更を行うに際して,保護層としての1/4波長板の透湿度が200g/m^(2)/24h以下となるように,厚みや延伸倍率を調整することは,技術の具体的適用に伴って,当業者が適宜行う設計変更にすぎないともいえる。

エ 以上のとおりであるから,引用発明を,相違点に係る本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,引用文献1記載事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。

(2)効果について
本願発明が有する効果は,当業者が予測できた程度のものである。


7 むすび
本件出願の請求項1に係る発明は,引用発明及び引用文献1記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-01-31 
結審通知日 2018-02-06 
審決日 2018-02-20 
出願番号 特願2012-68785(P2012-68785)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 亮治  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 樋口 信宏
清水 康司
発明の名称 円偏光板  
代理人 中山 亨  
代理人 坂元 徹  
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