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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1339059
審判番号 不服2017-6235  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-28 
確定日 2018-04-05 
事件の表示 特願2016- 3019「二次元コード」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月 7日出願公開、特開2016- 48587〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2013年11月7日(優先権主張 平成24年11月13日)を国際出願日とする出願である特願2014-546956号の一部を、平成28年1月8日に新たな特許出願としたものであって、平成28年11月1日付けで拒絶理由が通知され、平成28年12月6日付けで手続補正がなされたが、平成29年1月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年4月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2.補正却下の決定
[結論]
平成29年4月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
平成29年4月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成28年12月6日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項6に記載された、

「【請求項6】
二進コードで表されるデータをセル化して、二次元のマトリックス状にパターンとして配置した二次元コードであって、
単独で画像から検出可能な3個以上の異なる位置検出パターンを備え、
3個以上の異なる前記位置検出パターンには、回転させると形状が一致するか、又は回転させると外形が一致するか、又は前記位置検出パターンを形成する線の線幅の比率が同一であるか、又は大きさが同一である、位置検出パターンが含まれない二次元コード。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「【請求項1】
二進コードで表されるデータをセル化して、二次元のマトリックス状にパターンとして配置した二次元コードであって、
単独で画像から検出可能な3個以上の形状が異なる位置検出パターンであって、前記セルの位置を特定するための位置検出パターンを備え、
3個以上の形状が異なる前記位置検出パターンには、回転させると形状が一致するか、又は回転させると外形が一致するか、又は前記位置検出パターンを形成する線の線幅の比率が同一であるか、又は大きさが同一である、位置検出パターンが含まれない二次元コード。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.補正の適否
(1)補正の目的要件
本件補正のうち上記補正事項は、本願発明の「3個以上の異なる位置検出パターン」が、「3個以上の形状が異なる位置検出パターン」であって「前記セルの位置を特定するための位置検出パターン」であるとして限定したものであり、特許法第17条の2第5項第2号にいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものと認められ、特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合している。
また、特許法17条の2第4項(シフト補正)の規定に違反するものでもない。

(2)独立特許要件
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下検討する。

ア.補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で、「補正後の発明」として認定したとおりのものである。

イ.引用文献、引用発明
(ア)引用文献1
原査定の拒絶の理由において引用された、特開2009-259192号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審において付加した。以下、同じ。)

a.「【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元コード、二次元コード生成方法、二次元コードを表示させるコンピュータ読み取り可能なプログラム、二次元コードを利用した認証方法、及び二次元コードを利用した情報提供方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数のセルをマトリックス状に配置してなる二次元コードが各種提供されている。この種の二次元コードを読み取る読取装置(二次元コードリーダ)は、当該二次元コードを含んだ画像データを取得した上で、その画像データの中から二次元コードの領域(コード領域)を特定する解析処理を行い、その特定されたコード領域の画像内容に基づいてデコード処理を行う構成のものが一般的である。
【特許文献1】特許2938338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、二次元コードを読み取る場合、取得した画像データの中から二次元コードの領域を具体的に特定する必要があるため、二次元コードの構成としては、読み取りの際にコード領域を迅速且つ正確に特定しうるコード構成が求められる。
【0004】
コード領域を特定する方法としては、例えば、矩形状のコード領域の2辺に暗色セル(暗方形)がL字状に連続した特定パターンを配置し、他の2辺に別の特定パターン(暗色セルと明色セルを交互に配置してなるパターン等)を配置することが考えられる。このように矩形領域の四辺全てを特定パターンによって囲むようにすれば、読み取りの際に背景とコード領域(矩形領域)とを区別しやすくなる。しかしながら、データ(デコードすべきデータや誤り訂正のためのデータ)ではない特定パターンに割り当てるセルを多く必要とするため、データに割り当てるセル数を減らさざるを得ない。」

b.「【0148】
[第1実施形態]
以下、本発明の二次元コードを具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る二次元コードを概略的に説明する説明図である。また、図2(a)は、図1の二次元コードのマトリックス構成を説明する説明図であり、(b)は、コードブロックのマトリックス構成を説明する説明図である。((c)は、コードブロックの構成について(b)とは異なる例を示す説明図である。図3は、図1の二次元コードを読み取る光学的情報読取装置を概略的に例示するブロック図である。図4は、図1の二次元コードを読み取る読取処理を例示するフローチャートである。なお、図1では、誤り訂正コードブロック12の位置を破線にて概念的に示しており、データコードブロック11の位置については実線枠内にハッチングを付して概念的に示している。また、図1では、各コードブロック10の具体的セル構成は省略して示している。
【0149】
本実施形態に係る二次元コード1は、図1に示すように、複数のセルCがマトリックス状に配列されてなるものであり、複数のコードブロック10と、第1の特定パターン2と、第2の特定パターン3、4と、を備えた構成をなしている。この二次元コード1は、外形が正方形状に構成されたセルCが集合してマトリックス状に配置されたセル集合体として構成されており、図1の例では、セル数が縦横同数(11セル×11セル)となる配列で構成されている。また、二次元コード1を構成するコード領域(セルCが配置される領域)は、外形が矩形状の矩形領域とされており、図1の二次元コード1のコード領域は、外形が正方形状の正方形領域とされている。なお、図1では、一部のセルのみについて符号Cを付しており、他のセルの符号は省略している。
【0150】
また、二次元コード1は、色彩又は濃度又は輝度の異なる複数種類のセルが用いられている。なお、以下の説明では、図1に示すような構成、即ち、色彩又は濃度又は輝度の異なる2種類のセル(即ち、黒色セル及び白色セル)が用いられて二次元コード1が構成された例について説明する。なお、本実施形態及びその他の実施形態を通し、黒色セルについては符号Cbで示し、白色セルについては符号Cwで示すこととする。
【0151】
コードブロック10は、複数のセルCが集合してなるものであり、図1の二次元コード1では、データコードブロック11と、誤り訂正コードブロック12とに分けられている。なお、本実施形態では全てのコードブロック10がマトリックス状に構成され、縦横の違いはあるものの全て同一形状とされているが、一部のコードブロックの形状をこれとは別の形状(例えば図2(c)のような形状)としてもよい。また、本実施形態のデータコードブロック11及び誤り訂正コードブロック12は、いずれもマスク処理が施されていない非マスク化ブロックとされており、マスク処理の解除等を必要とせずにデコードしうるものである。
【0152】
データコードブロック11は、デコードの対象となるデータを符号化した符号化データ(データコード語)を複数のセルによって表現したブロックであり、図1の例では、複数(図1では8つ)のセルがマトリックス状に集合した構成をなしている。データコードブロック11を構成する各セルは、予め定められた複数種類(図1の例では白黒の二種類)のセルの中からいずれかの種類のセルが選択されて用いられる。
【0153】
各データコードブロック11は、全体として、デコードすべき符号化データ(データコード語)に対応したセルの配列で構成されるようになっている。本実施形態では、セルの色が、数値に対応付けられており、例えば、データ値「0」に対して白色セル、データ値「1」に対して黒色セルがそれぞれ対応付けられている。」

c.「【0157】
第1の特定パターン2は、二次元コード1の矩形領域において4つ設けられた角部5a?5dのうち、規定の角部5aに配置されるものである。図1の例では第1の特定パターン2の外形が矩形状(詳しくは正方形状)に構成されており、第1の特定パターン2の外縁を構成する2辺によって矩形領域における規定の角部5aの角位置が定められている。この第1の特定パターン2は、矩形領域における各セルCの位置の特定するための要素として機能するものであり、具体的には、光学的情報読取装置(後述)で得られる画像データにおいて規定の角部5aの位置を特定するために用いられると共に、その画像データにおいて二次元コード1の向きを特定するために用いられる。なお、本明細書全体を通し、「特定パターン」は、二次元コードに含まれるデータ(デコードすべきデータ)に関係なく一定のパターンとして構成されるものである。
【0158】
なお、図1に示す第1の特定パターン2は、中心に第1の色のセル(黒色セル2a)が1つ配置され、その第1の色のセル(黒色セル2a)の周りを第2の色のセル(白色セル2b)が矩形状に囲んでいる。さらに、その環状のセル群(白色セル2bのセル群)の周りを第1の色のセル(黒色セル2c)が囲んだ構成をなし、それが最外周のセル群として構成されている。そして、その最外周のセル群の外形が正方形状に構成され、第1の特定パターン2全体として外形が矩形状となっている。
【0159】
また、第2の特定パターン3、4は、コード領域(矩形領域)の境界をなす4つの辺(4つの境界部6)のうち、第1の特定パターン2が接する境界部(第1境界部6a、6b)に隣接して配置されるものである。この第2の特定パターン3、4は、二次元コード1のコード領域(矩形領域)を背景から分離するために利用されるものであり、後述する読み取りの際に、この第2の特定パターン3,4を基準として矩形領域が背景から分離され、ひいてはコードブロック10がそれぞれ背景から分離されることとなる。
【0160】
第2の特定パターン3は、矩形領域における規定の角部5a(第1の特定パターン2が配置された角部)とは異なる角部5b(角部5bは、「第2の角部」の一例に相当する)に、当該角部5bを示すエンドパターン3aを配置してなるものである。このエンドパターン3aは、色彩、濃度、輝度が同一の同種セルが複数連続して配置された直線形状(具体的には色彩、濃度、輝度が同一の黒色セル3a'が3つ連続して配置された直線形状と)して構成されており、このエンドパターン3aの端部(具体的には第1の特定パターン2から遠い側の端部)の黒色セル3a'における外縁を構成する2辺によってコード領域(矩形領域)における角部5bの角位置が定められている。
【0161】
第2の特定パターン3において第1の特定パターン2とエンドパターン3aとの間には中間特定パターン3bが配置されている。この中間特定パターン3bは、複数色のセルが所定の配列で並んでなるものであり、本実施形態では、特定色のセル(図1の例では白色セル3b')とその特定色とは異なる色のセル(図1の例では黒色セル3b")が交互に並んだパターンとして構成されている。
【0162】
また、第2の特定パターン4も同様であり、規定の角部5aとは異なる角部5c(角部5cは、「第2の角部」の一例に相当する)に、当該角部5cを示すエンドパターン4aを配置してなるものである。このエンドパターン4aも、色彩、濃度、輝度が同一の同種セルが複数連続して配置された直線形状(具体的には色彩、濃度、輝度が同一の黒色セル4a'が3つ連続して配置された直線形状)として構成されており、このエンドパターン4aの端部(具体的には第1の特定パターン2から遠い側の端部)の黒色セル4a'における外縁を構成する2辺によって矩形領域における角部5cの角位置が定められている。なお、本実施形態では、エンドパターン3a、4aが「第1のエンドパターン」の一例に相当する。
【0163】
第2の特定パターン4において第1の特定パターン2とエンドパターン4aとの間には中間特定パターン4bが配置されている。この中間特定パターン4bも、複数色のセルが所定の配列で並んでなるものであり、本実施形態では、特定色のセル(図1の例では白色セル4b')とその特定色とは異なる色のセル(図1の例では黒色セル4b")が交互に並んだパターンとして構成されている。
【0164】
また、二次元コード1のコード領域(矩形領域)における第1の特定パターン2の対角位置には、コード領域(矩形領域)の角部5dを示すエンドパターン7が配置されている。エンドパターン7は、色彩、濃度、輝度が同一の同種セルが複数連続したL字形状(具体的には、色彩、濃度、輝度が同一の黒色セル7aが3つ連続したL字形状)として構成されている。図1では、エンドパターン7の外側の外縁が直角に構成され、この外側の直角外縁によって矩形領域における角部5dの角位置が定められている。本実施形態では、エンドパターン7が「第2のエンドパターン」の一例に相当する。
なお、図1の例では、エンドパターン7に隣接するセル(エンドパターン7、誤り訂正コードブロック12、データコードブロック11に囲まれた空白セル)をどの用途に用いるか特に示していないが、例えば、データコードブロック11や誤り訂正コードブロック12の配置を変更してこれらの配置領域として利用してもよい。或いは、データコードブロック11や誤り訂正コードブロック12のデータとされない余剰ブロックとして構成してもよい。」

d.「【0178】
このように構成される光学的情報読取装置20では、以下のように読取処理が行われる。まず、作業者が所定操作(例えば、操作スイッチ42のオン操作)を行うことで、図4に示す読取処理が開始され、画像データ取得処理が行われる(S1)。画像データ取得処理では、まず制御回路40が同期信号を基準に照明光源21に発光信号を出力し、当該発光信号を受けた照明光源21が、LEDを発光させて照明光Lfを照射する。すると、二次元コード1に照射された照明光Lfが反射し、その反射光Lrが読取口およびフィルタ25を介して結像レンズ27に入射する。そして、受光センサ23の受光面23aには結像レンズ27によって二次元コード1の像、つまりコード画像が結像される。これにより、受光センサ23を構成する各受光素子が露光され、それら各受光素子から二次元コード1の像に応じた受光信号がそれぞれ出力される。これら受光信号は、二次元コード1の画像データを構成するものであり、この画像データはメモリ35に一時的に記憶される。
【0179】
その後、S1にて取得された画像データにおいて二次元コード1のコード領域(矩形領域)を特定する処理を行う(S2)。なお、この特定処理(S2)では、二次元コード1の画像データにおいて各境界部6を特定することとなるが、各境界部6の特定方法は、特開平10-198754号公報に示されるような方法でもよく、或いは、特開2000-353210公報に示されるような、明暗変化点数を計数してコード領域を抽出する方法でも好適に用いることができる。なお、特開2000-353210公報の技術では、二色の二次元コードを対象として明暗の変化を検出しており、図1のような二色の二次元コードの場合にはこの技術を同様に適用できる。また、二次元コードを3種類以上のセルによって構成する場合(例えば、図1の構成を変形して多色のカラーコードとしたり、或いは後述する本実施形態以外の構成等)も境界部の特定方法は基本的に同様であり、走査線に沿って検査したときのいずれかの色を示す値から他の色を示す値への変化を計数するようにすればよい。なお、画像処理の分野において異なる色の領域を区別する技術は各種提供されているため、公知の別の方法を用いて領域を特定してもよい。要するに、本実施形態のように、矩形領域の境界部6a?6bのそれぞれに隣接して背景色と色の異なる異色セルが配置されていれば、各種画像処理方法を用いてこの異色セルを特定でき、この異色セルの外縁をつなぐことで矩形領域の境界部を正確に抽出することができる。
【0180】
特に、本実施形態の二次元コード1では、各角部5a、5b、5c、5dにおいてそれぞれ、外縁部に背景とは色の異なるセルが配置されてなる第1の特定パターン2、エンドパターン3、エンドパターン4、エンドパターン7が設けられているため、各種画像処理技術を用いて角部5a、5b、5c、5dを確実に特定でき、さらに、角部5a、5b間には、背景とは色の異なるセルを第1境界部6aに隣接させて構成される中間特定パターン3bが設けられ、角部5a、5c間には、背景とは色の異なるセルを第1境界部6bに隣接させて構成される中間特定パターン4bが設けられているため、第1境界部6a、6bも各種画像処理技術を用いて確実に特定できる。さらに、角部5b、5d間には誤り訂正コードブロック12(第2境界部隣接ブロック12a)が配置されて背景とは色の異なるセルが第2境界部6cに隣接しており、角部5c、5d間には誤り訂正コードブロック12(第2境界部隣接ブロック12b)が配置されて背景とは色の異なるセルが第2境界部6dに隣接しているため、第2境界部6c、6dも各種画像処理技術を用いて確実に特定できるようになる。
【0181】
なお、誤り訂正コードブロック12として構成される第2境界部隣接ブロック12a、12bはそれぞれ、長辺側が第2境界部6c、6dに隣接する構成となっており、第2境界部隣接ブロック12a、12bのそれぞれにおいて、第2境界部6c、6dに隣接するセル数が多く確保されている。このようにすれば、第2境界部隣接ブロック12a、12bのそれぞれにおいて、境界部6(第2境界部6c、6d)に隣接する部分が全て背景色と同一色となる確率を極めてゼロに近づけることができる。
【0182】
図4に戻り説明を続けると、S2にてコード領域が特定された後には、その特定されたコード領域と第1の特定パターンとに基づいて二次元コードの向きを特定する処理を行う(S3)。具体的には、特定された矩形領域のどの角部に第1の特定パターン2が存在するかを検出する。その第1の特定パターン2の位置が検出されれば、画像データにおいて二次元コードの向き(姿勢)を特定できることとなる。
【0183】
その後、位置及び向きが特定されたコード領域(矩形領域)に基づいてデコード処理を行う(S4)。本実施形態では、予めコード種別が光学的情報読取装置20内に記憶されており、コード領域(矩形領域)のサイズや特定パターン(第1の特定パターン2、第2の特定パターン3、4、エンドパターン7)の構成によってコード種別を特定した上で、各データコードブロック11についてデコードを行うと共に、誤り訂正コードブロック12に基づいて誤り訂正を行う。」

e.


f. 【図4】




・上記b.の段落【0149】、上記c.の段落【0164】、及び図1によれば、引用文献1には、複数のセルCがマトリックス状に配列される外形が矩形状の矩形領域であるコード領域からなり、複数のコードブロック10と、第1の特定パターン2と、第2の特定パターン3、4と、エンドパターン7と、を備えた二次元コード1、が記載されている。
・上記d.、及び、図4には、二次元コード1の読取処理の流れが記載されており、該読取処理は、二次元コード1の画像データ取得処理を行い(S1)、S1にて取得された画像データから各境界部6を特定し二次元コード1のコード領域(矩形領域)を特定する処理を行い(S2)、特定されたコード領域と第1の特定パターンとに基づいて二次元コードの向きを特定する処理を行い(S3)、位置及び向きが特定されたコード領域(矩形領域)に基づいてデコード処理を行う(S4)、ことからなることが記載されている。
また、上記c.の段落【0160】-【0161】、上記d.の段落【0180】、及び図4には、前記二次元コード1における(S2)のコード領域(矩形領域)の特定は、画像処理技術を用いて、外縁部に背景とは色の異なるセルが配置されてなる第1の特定パターン2、エンドパターン3a、エンドパターン4a、エンドパターン7を検出し、角部5a、5b、5c、5dを確実に特定し、さらに、角部5a、5b間の第1境界部6a、角部5a、5c間の第1境界部6b、角部5b、5d間の第2境界部6c、角部5c、5d間の第2境界部6dを特定して行う、ことであることが記載されている。
したがって、引用文献1には、二次元コード1の読取処理は、二次元コード1の画像データ取得処理が行われ(S1)、S1にて取得された画像データから、画像処理技術を用いて、外縁部に背景とは色の異なるセルが配置されてなる第1の特定パターン2、エンドパターン3a、エンドパターン4a、エンドパターン7を検出し、角部5a、5b、5c、5dを確実に特定し、角部5a、5b間の第1境界部6a、角部5a、5c間の第1境界部6b、角部5b、5d間の第2境界部6c、角部5c、5d間の第2境界部6dを特定することで二次元コード1のコード領域(矩形領域)を特定する処理を行い(S2)、特定されたコード領域と第1の特定パターンとに基づいて二次元コードの向きを特定する処理を行い(S3)、位置及び向きが特定されたコード領域(矩形領域)に基づいてデコード処理を行う(S4)ことである、ことが記載されているといえる。

上記引用文献1の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「複数のセルCがマトリックス状に配列される外形が矩形状の矩形領域であるコード領域からなり、複数のコードブロック10と、第1の特定パターン2と、第2の特定パターン3、4と、エンドパターン7と、を備えた二次元コード1であって、
前記コードブロック10は、複数のセルCが集合してなるものであり、データコードブロック11と、誤り訂正コードブロック12とに分けられており、
前記各データコードブロック11は、全体として、デコードすべき符号化データ(データコード語)に対応したセルの配列で構成されるようになっており、セルの色が、数値に対応付けられており、データ値「0」に対して白色セル、データ値「1」に対して黒色セルがそれぞれ対応付けられており、
前記第1の特定パターン2は、二次元コード1の矩形領域において4つ設けられた角部5a?5dのうち、規定の角部5aに配置されるものであり、外形が矩形状(詳しくは正方形状)に構成されており、外縁を構成する2辺によって矩形領域における規定の角部5aの角位置が定められ、矩形領域における各セルCの位置の特定するための要素として機能するものであり、光学的情報読取装置で得られる画像データにおいて規定の角部5aの位置を特定するために用いられると共に、その画像データにおいて二次元コード1の向きを特定するために用いられ、二次元コード1に含まれるデータ(デコードすべきデータ)に関係なく一定のパターンとして構成されるものであり、
前記第1の特定パターン2は、中心に黒色セル2aが1つ配置され、該黒色セル2aの周りを白色セル2bが矩形状に囲み、その環状の白色セル2bのセル群の周りを黒色セル2cが囲んだ構成をなし、それが最外周のセル群として構成され、その最外周のセル群の外形が正方形状に構成され、第1の特定パターン2全体として外形が矩形状となっており、
前記第2の特定パターン3、4は、コード領域(矩形領域)の境界をなす4つの辺(4つの境界部6)のうち、第1の特定パターン2が接する境界部(第1境界部6a、6b)に隣接して配置されるものであり、二次元コード1のコード領域(矩形領域)を背景から分離するために利用されるものであり、該第2の特定パターン3,4を基準として矩形領域が背景から分離され、ひいてはコードブロック10がそれぞれ背景から分離されるものであり、
前記第2の特定パターン3は、矩形領域における規定の角部5a(第1の特定パターン2が配置された角部)とは異なる角部5bに、当該角部5bを示す、色彩、濃度、輝度が同一の黒色セル3a'が3つ連続して配置された直線形状のエンドパターン3aと、第1の特定パターン2とエンドパターン3aとの間に、白色セル3b'と黒色セル3b"が交互に並んだパターンとして構成されている中間特定パターン3bからなり、
前記第2の特定パターン4は、規定の角部5aとは異なる角部5c(角部5cは、「第2の角部」の一例に相当する)に、当該角部5cを示す、色彩、濃度、輝度が同一の黒色セル3a'が3つ連続して配置された直線形状のエンドパターン4aと、第1の特定パターン2とエンドパターン4aとの間に、白色セル4b'と黒色セル4b"が交互に並んだパターンとして構成されている中間特定パターン4bからなり、
前記エンドパターン7は、二次元コード1のコード領域(矩形領域)における第1の特定パターン2の対角位置に配置され、コード領域(矩形領域)の角部5dを示し、色彩、濃度、輝度が同一の黒色セル7aが3つ連続したL字形状として構成され、外側の外縁が直角に構成され、この外側の直角外縁によって矩形領域における角部5dの角位置が定められているものであって、
前記二次元コード1の画像データ取得処理が行われ(S1)、S1にて取得された画像データから、画像処理技術を用いて、外縁部に背景とは色の異なるセルが配置されてなる第1の特定パターン2、エンドパターン3a、エンドパターン4a、エンドパターン7を検出し、角部5a、5b、5c、5dを確実に特定し、角部5a、5b間の第1境界部6a、角部5a、5c間の第1境界部6b、角部5b、5d間の第2境界部6c、角部5c、5d間の第2境界部6dを特定することで二次元コード1のコード領域(矩形領域)を特定する処理を行い(S2)、特定されたコード領域と第1の特定パターンとに基づいて二次元コードの向きを特定する処理を行い(S3)、位置及び向きが特定されたコード領域(矩形領域)に基づいてデコード処理を行う(S4)ことで、読取処理が行われる、
二次元コード1。」

ウ.対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明の「二次元コード1」は、「複数のセルCがマトリックス状に配列される外形が矩形状の矩形領域であるコード領域から」なるものであって、「セルの色が、数値に対応付けられており、データ値「0」に対して白色セル、データ値「1」に対して黒色セルがそれぞれ対応付けられ」るものであるから、引用発明の「二次元コード1」は、補正後の発明の「二進コードで表されるデータをセル化して、二次元のマトリックス状にパターンとして配置した二次元コード」に相当する。
b.引用発明の「第1の特定パターン2」は、「矩形領域における各セルCの位置の特定するための要素として機能するもの」である。
また、引用発明の「二次元コード1」は、「位置及び向きが特定されたコード領域(矩形領域)に基づいてデコード処理を行う(S4)」ものであり、「コード領域(矩形領域)」の「位置及び向きが特定され」ることによって、「デコード処理」を行うための「セルC」の位置が特定できるものと認められる。
そして、引用発明の「二次元コード1のコード領域(矩形領域)を特定する」ことは、「第1の特定パターン2」、「第2の特定パターン3」の「エンドパターン3a」、「第2の特定パターン4」の「エンドパターン4a」、及び「エンドパターン7」を、「画像処理技術を用いて」検出し「角部5a、5b、5c、5dを確実に特定」することで行うものである。
したがって、引用発明の「第1の特定パターン2」以外の「第2の特定パターン3」の「エンドパターン3a」、「第2の特定パターン4」の「エンドパターン4a」、及び「エンドパターン7」も、「セルC」の位置を特定するための要素と認められる。
さらに、「第1の特定パターン2」は、「中心に黒色セル2aが1つ配置され、該黒色セル2aの周りを白色セル2bが矩形状に囲み、その環状の白色セル2bのセル群の周りを黒色セル2cが囲んだ構成をなし、それが最外周のセル群として構成され、その最外周のセル群の外形が正方形状」のものであって、「エンドパターン3a」は「色彩、濃度、輝度が同一の黒色セル3a'が3つ連続して配置された直線形状」のものであって、「エンドパターン7」は「色彩、濃度、輝度が同一の黒色セル7aが3つ連続したL字形状」のものであるから、「第1の特定パターン2」、「エンドパターン3a」、及び「エンドパターン7」は、形状が異なっていることは明らかであり、また、「画像処理技術を用いて」「第1の特定パターン2、エンドパターン3a、エンドパターン4a、エンドパターン7から」、「角部5a、5b、5c、5dを確実に特定」できるものであるから、単独で検出可能かは不明であるが、「第1の特定パターン2」、「エンドパターン3a」、「エンドパターン4a」、「エンドパターン7」のそれぞれは画像から検出可能なものと認められる。
してみれば、引用発明の「第1の特定パターン2」、「エンドパターン3a」、及び「エンドパターン7」と、補正後の発明の「単独で画像から検出可能な3個以上の形状が異なる位置検出パターンであって、前記セルの位置を特定するための位置検出パターン」とは、「画像から検出可能な3個以上の形状が異なる位置検出パターンであって、前記セルの位置を特定するための位置検出パターン」の点で共通する。
c.さらに、引用発明の「第1の特定パターン2」は、「中心に黒色セル2aが1つ配置され、該黒色セル2aの周りを白色セル2bが矩形状に囲み、その環状の白色セル2bのセル群の周りを黒色セル2cが囲んだ構成をなし、それが最外周のセル群として構成され、その最外周のセル群の外形が正方形状」であって、「エンドパターン3a」は「色彩、濃度、輝度が同一の黒色セル3a'が3つ連続して配置された直線形状」であって、「エンドパターン7」は「色彩、濃度、輝度が同一の黒色セル7aが3つ連続したL字形状」であり、各パターンは回転しても形状が異なっていることから、引用発明の「第1の特定パターン2」、「エンドパターン3a」、及び「エンドパターン7」は、補正後の発明の「回転させると形状が一致するか、又は回転させると外形が一致するか、又は前記位置検出パターンを形成する線の線幅の比率が同一であるか、又は大きさが同一である、位置検出パターンが含まれない」「3個以上の形状が異なる前記位置検出パターン」に相当する。

したがって、補正後の発明と引用発明とを対比すると、両者は、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「二進コードで表されるデータをセル化して、二次元のマトリックス状にパターンとして配置した二次元コードであって、
画像から検出可能な3個以上の形状が異なる位置検出パターンであって、前記セルの位置を特定するための位置検出パターンを備え、
3個以上の形状が異なる前記位置検出パターンには、回転させると形状が一致するか、又は回転させると外形が一致するか、又は前記位置検出パターンを形成する線の線幅の比率が同一であるか、又は大きさが同一である、位置検出パターンが含まれない二次元コード。」

(相違点)
上記一致点の「3個以上の形状が異なる位置検出パターン」が、補正後の発明では、「単独で画像から検出可能な」ものであるのに対して、引用発明では、「第1の特定パターン2」、「エンドパターン3a」、及び「エンドパターン7」は、画像から検出可能であるが「単独」で検出可能とは特定されていない点。

上記相違点について検討する。
引用発明の「第1の特定パターン2」については、「矩形領域における各セルCの位置の特定するための要素として機能するものであり、光学的情報読取装置で得られる画像データにおいて規定の角部5aの位置を特定するために用いられると共に、その画像データにおいて二次元コード1の向きを特定するために用いられ」るものである以上、「単独で画像から検出可能な」ものであることは明らかである。
引用発明の「エンドパターン3a」、及び「エンドパターン7」については、「外縁部に背景とは色の異なるセルが配置されてなる」ものであって、「角部5b」、「5d」、「を確実に特定」できるものであること、また、コード領域に「エンドパターン3a、7」と同じパターンが存在すると両者で混同が生じ「角部」の確実な特定が難しいことは普通に予想できることから、通常であれば、「エンドパターン3a」、及び「エンドパターン7」についても、コード領域にはない単独で画像から検出可能なパターンを用いるものと認められる。
そして、引用発明の「エンドパターン3a」、及び「エンドパターン7」は、角の位置を確実に特定ができればどのような形状でもよいことは明らかであるから、「エンドパターン3a」、及び「エンドパターン7」についても、「第1の特定パターン2」と同様に単独で画像から検出可能なパターンとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明の技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである

3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである


第3.本願発明について
1.本願発明
平成29年4月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項6に係る発明は上記「第2」の「1.」の欄に転記したとおりのものであり、本願の請求項6は、上記「第2」の「1.」の欄に転記した記載事項により規定されるとおりのものである。

2.引用発明
引用発明等は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「イ.引用文献、引用発明」の項中の「(ア)引用文献1」の項で「引用発明」として認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明を対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。


そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「ウ.対比・判断」の項で検討したとおり、上記各引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明することができたものである。


4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものと認められるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-01-31 
結審通知日 2018-02-06 
審決日 2018-02-19 
出願番号 特願2016-3019(P2016-3019)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
P 1 8・ 575- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 山澤 宏
山田 正文
発明の名称 二次元コード  
代理人 青木 篤  
代理人 南山 知広  
代理人 関根 宣夫  
代理人 宮本 哲夫  
代理人 鶴田 準一  

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