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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
管理番号 1339133
異議申立番号 異議2017-700799  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-08-21 
確定日 2018-02-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6084090号発明「ポリビニルアルコール系フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6084090号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2-4〕について訂正することを認める。 特許第6084090号の請求項2ないし4に係る特許を維持する。 特許第6084090号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6084090号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成25年3月28日に特許出願され、平成29年2月3日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年8月21日付けで特許異議申立人 森川真帆(以下、「特許異議申立人」という。)により請求項1?4に対して特許異議の申立てがされ、同年10月13日付けで取消理由が通知され、同年12月12日付け(受理日:同年12月14日)で意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年12月18日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、平成30年1月11日付け(受理日:同年1月12日)で特許異議申立人から意見書が提出されたものである。


第2 本件訂正請求の適否

1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、次の訂正事項1?3のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
また、請求項1を直接的に引用する請求項3において「請求項1または2」と記載されているのを「請求項2」に、請求項1を直接的に引用する請求項4において「請求項1?3いずれか」と記載されているのを「請求項2または3」に、それぞれ訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)が、5×10^(8)Pa以上であることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系フィルム。」と記載されているのを、「乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)と180℃でのフィルムの貯蔵弾性率(β)との比(α/β)が5以上であり、乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)が、7×10^(8)Pa?13×10^(8)Paであることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム。」に訂正する(請求項2の記載を直接的に引用する請求項3及び4も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0011】に、「即ち、本発明の要旨は、乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)と180℃でのフィルムの貯蔵弾性率(β)との比(α/β)が5以上であるポリビニルアルコール系フィルムに関するものである。」と記載されているのを、「即ち、本発明の要旨は、乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)と180℃でのフィルムの貯蔵弾性率(β)との比(α/β)が5以上であり、乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)が、7×10^(8)Pa?13×10^(8)Paであるポリビニルアルコール系フィルムに関するものである。」に訂正する。
また、願書に添付した明細書の段落【0018】に、「また、本発明のポリビニルアルコール系フィルムにおいては、乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)が、5×10^(8)Pa以上であることが均一な膜厚の成形品を得る点で好ましく、更には6×10^(8)?15×10^(8)Pa、特には7×10^(8)?13×10^(8)Paであることが好ましい。」と記載されているのを、「また、本発明のポリビニルアルコール系フィルムにおいては、乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)が、7×10^(8)?13×10^(8)Paであることが均一な膜厚の成形品を得る点で好ましい。」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件の適否及び一群の請求項

(1)訂正事項1について
訂正事項1のうち、請求項1を削除する訂正については、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められ、かつ、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、請求項1を削除することを受けて、当該請求項1を引用しないように下位請求項の引用関係を整合させる訂正については、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当すると認められ、かつ、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、ポリビニルアルコール系フィルムの性質について、「乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)」の数値範囲が、訂正前は「5×10^(8)Pa以上」であったところ、それよりも数値範囲が限定された「7×10^(8)Pa?13×10^(8)Pa」の範囲に訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められる。そして、かかる数値範囲の根拠は、例えば願書に添付した明細書の段落【0018】に記載されていることから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、上記訂正事項2に連動して、願書に添付した明細書の段落【0011】及び【0018】についても、「乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)」の数値範囲を「7×10^(8)Pa?13×10^(8)Pa」に限定する訂正である。よって、訂正事項3は、形式的に訂正後の請求項2の記載に整合させるための訂正であるといえるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当すると認められ、かつ、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)一群の請求項
訂正前の請求項2?4は、訂正前の請求項1を引用しており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1?4は一群の請求項である。
したがって、本件訂正請求は、一群の請求項に対して請求されたものと認められる。

(5)別の訂正単位とする求めについて
本件訂正請求書の第6頁において、訂正後の請求項2、3及び4についての訂正が認められる場合には、一群の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
上記(1)?(4)のとおり、本件訂正請求による請求項2、3及び4についての訂正が認められるものであるため、上記一群の請求項とは別途訂正することを認める。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第4項及び第9項で準用する同法第126条第4?6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1、〔2?4〕について訂正することを認める。


第3 本件発明

上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正が認められるから、訂正後の請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明4」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(下線は、訂正された箇所を示す。)。

【請求項1】
(削除)
【請求項2】
乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)と180℃でのフィルムの貯蔵弾性率(β)との比(α/β)が5以上であり、乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)が、7×10^(8)Pa?13×10^(8)Paであることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム。
【請求項3】
乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、180℃でのフィルムの(β)が、3×108Pa以下であることを特徴とする請求項2記載のポリビニルアルコール系フィルム。
【請求項4】
ポリビニルアルコール系フィルムが、二軸延伸されたポリビニルアルコール系フィルムであることを特徴とする請求項2または3記載のポリビニルアルコール系フィルム。


第4 特許異議の申立ての概要

特許異議申立人は、証拠方法として、
甲1:山田雅章 他、「ケン化度の異なるポリビニルアルコールをブレンドした相分離系接着剤による難接着木材の接着I-ブレンドPVAの相構造-」、日本接着学会誌、一般社団法人日本接着学会、平成24年6月1日発行、第48巻、第6号、表紙、(7)?(17)頁(通し頁:193?203頁)及び最終頁(なお、甲1と併せて、甲1中の第(13)頁の「Fig.10」の上図を拡大したものが甲第1-2号証として提出されている。)
甲2:特開2007-92041号公報
甲3:特開2006-327881号公報
を提出し、特許異議の申立てとして、次の主張をしている。

・本件特許発明1?4は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであり、本件特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
・本件特許発明1?4は、甲2及び甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、本件特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
・本件特許発明1?4は発明の詳細な説明に記載されたものではないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、本件特許は同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。


第5 当審が通知した取消理由

当審が通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

本件特許の請求項1?4に係る特許は、下記(1)?(3)の理由によって、特許法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
また、本件特許は、下記の理由(4)の理由によって、特許法第36条に違反してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(1)本件特許の請求項1?3に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。
(2)本件特許の請求項1?3に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
(3)本件特許の請求項4に係る発明は、甲1に記載された発明並びに甲2及び甲3の記載に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
(4)本件特許の請求項1?4に係る発明は、本件特許の明細書に記載されたものとは認められないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


第6 取消理由についての当審の判断

1 特許法第29条第1項第3号(新規性)について

(1)甲1の記載
取消理由通知において提示した、本件特許の出願前に頒布されたことが明らかな刊行物である甲1には、以下のとおりア?キの記載がある。(頁については丸括弧()内の数字で示す。)

「油状成分を多く含み接着が阻害される木材に適応可能な接着剤を開発するため,ケン化度の異なる5種類のPVAを用い,単独系とブレンド系における相構造の観察や動的粘弾性について検討した。
単独系,ブレンド系ともにケン化度の低いPVAでは吸湿率は高くなった。また,pMDIの添加によりほとんどのPVAで吸湿率が低く抑えられたが,ケン化度が同程度の場合は単独系よりもブレンド系の方が吸湿率は低かった。
SEM観察により完全ケン化と低ケン化度PVAのブレンド系フィルムで海島構造が確認された。また分率の多いPVAが海に,少ないPVAが島領域になる傾向が見られた。ブレンドPVAにはN77とN99の二つのTgが連続して観測され,相分離していることが確認された。また,結晶化度はN99の比率が高いほど高く,pMDI添加系についてもほぼ同様の傾向を示した。
ブレンド系PVAの貯蔵弾性率は,Tg以上の温度域では完全ケン化PVAの割合が多いものほど高かった。pMDIを添加した場合,架橋によるゴム状平坦部が現れた。ケン化度の低いPVAの比率が高いブレンド系ほどゴム状平坦部のE’値が高く架橋密度も高い傾向が見られた。」(第7頁「要旨」)


「本報では特にフィルム物性について検討するため,ケン化度の異なる5種類の一般PVAを用い,それらをそのまま使用した単独系とブレンドして使用したブレンド系におけるフィルムの吸湿率,走査型電子顕微鏡によるフィルムの構造観察,示差走査熱量測定や動的粘弾性測定による結晶化度,ガラス転移温度等について実験を行った。」(第8頁左欄第2?7行)


「2.1 供試材料
2.1.1 供試PVAおよびそのブレンド法
本実験で使用した単独系およびブレンド系PVAをTable 1に示す。なお,単独系PVAではNの後の数字はケン化度を示している。これらに使用したPVAは全て日本合成化学工業(株)の試作品である。単独系については,粉末状のPVAと蒸留水をビーカーに取り,80℃の湯浴中にて1時間プロペラで攪拌しながら溶解した。水溶液濃度は15%とした。ブレンド系水溶液の作製は,単独系PVA水溶液を各ブレンド比になるようにビーカーに取り,ガラス棒で200回攪拌して作製した。なお,ブレンド系PVAの親・疎水基量はブレンドした2種類の単独系PVAのケン化度およびブレンド比から算出した値である。」(第8頁左欄第9?21行)




」(第8頁)


「2.2.4 動的粘弾性の測定
作成したフィルムを120℃の乾燥機中に2時間入れ加温処理を行った。その後,60℃で3日間減圧乾燥し全乾とした。動的粘弾性の測定はDVA-225型(アイティー計測制御(株))を用い,測定周波数10Hz,昇温速度約3℃/分で行った。なお,測定中は試料の吸湿を防ぐため,乾燥空気を流入した。」(第8頁右欄第31行?第9頁左欄第5行)


「3.4 動的粘弾性
3.4.1 ブレンド系PVAの動的粘弾性
N99とN77の単独系およびブレンド系のpMDI未添加系,添加系の動的粘弾性をFig.10に示す。pMDI未添加の場合,ガラス転移点(Tg)以上の温度域では結晶性の高いN99の貯蔵弾性率(E’)が最も高く,N99の割合が多い80/20,60/40,40/60,20/80の順に値は低くなった。40/60と20/80の間でE’挙動に大きな差が見られるが,これはフィルム中の相構造の結晶化度の違いによるものと考えられる。3.2のSEM観察から,40/60フィルムには結晶性の高いN99が海領域(連続相)となった構造が存在するのに対し,20/80は結晶性の低いN77が海領域となった海島構造を有していて40/60と20/80との間で相反転が起こっている可能性があり,このようなE’挙動の違いが生じたものと思われる。なお,40/60については,SEMの項でも考察したように,造膜の過程でテフロンおよび空気に触れている表裏面に表面張力の低いN77が移動しN99はフィルム中央部に残り,表層部では連続相がN77,分散相がN99,芯部ではその逆になっている。本来は分率の高いN77が連続相になる筈であるが,部分的に弾性率の高いN99が連続相になっているため,全体としてはN99の影響が強く粘弾性挙動に反映されているものと考えられる。なお,ここではテフロン板上でフィルムをキャストしており,PVA水溶液はテフロンと空気に挟まれた形態をとっている。実際の木材接着ではPVA水溶液の上下に木材が存在することから,ここで得られた結果が必ずしも木材接着に反映するか否かは不明である。」(第13頁右欄第1行?第14頁左欄第18行)




」(第13頁)

(2)甲1に記載された発明
甲1は、記載ア及びイによると、油状成分を多く含み接着が阻害される木材に適応可能な接着剤を開発するため、ケン化度の異なる5種類のPVAを用い、単独系とブレンド系における相構造の観察や動的粘弾性について検討した結果を示す文献である。
甲1の記載ウにおいて、実験に使用された「供試PVA」として、記載エの「Table 1」に示されるとおりのPVAを用いたことが記載されている。また、記載オには、供試PVAから作成したフィルムの乾燥方法及び動的粘弾性の測定方法が記載され、その測定結果が記載カに、そして各PVAの貯蔵弾性率と温度との関係を示す図が記載キの「Fig.10」に記載されている。かかる図中、PVAのみの結果である上側の図の「N99」(点線で示されたもの)に着目すると、その110℃及び180℃における貯蔵弾性率E’(N/m^(2))の値は、それぞれおよそ5×108N/m^(2)、7×107N/m^(2)であることが看取される。
したがって、特に記載エにおける供試PVAとして「N99」に着目し、これと記載キの「Fig.10」における「N99」の貯蔵弾性率の値に基づくと、甲1には次の発明が記載されているといえる(以下、「甲1発明」という。)。

甲1発明:
「乾燥雰囲気条件下におけるフィルムの、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率が約5×10^(8)N/m^(2)であり、180℃でのフィルムの貯蔵弾性率が約7×10^(7)N/m^(2)であるポリビニルアルコールフィルム。」

(3)対比・判断
ア 本件発明2について
本件発明2と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「ポリビニルアルコールフィルム」は、本件発明2における「ポリビニルアルコール系フィルム」に相当することは明らかである。
甲1発明における「貯蔵弾性率」については、甲1の記載オにおけるフィルムの乾燥方法及び動的粘弾性の測定方法の記載からみて、本件発明2における「貯蔵弾性率」と同じものを意味していることは明らかである。
また、甲1発明における、本件発明2の「110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)と180℃でのフィルムの貯蔵弾性率(β)との比(α/β)」に対応する値については、甲1発明の110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)=5×10^(8)N/m^(2)と、180℃でのフィルムの貯蔵弾性率(β)=7×10^(7)N/m^(2)とから計算すると、α/β=5×10/7=約7.1となる。したがって、甲1発明における「110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)と180℃でのフィルムの貯蔵弾性率(β)との比(α/β)」は、本件発明2の数値範囲「5以上」に含まれている。
したがって、本件発明2と甲1発明とは次の点で一致している。
「乾燥雰囲気条件下におけるフィルムの、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)と180℃でのフィルムの貯蔵弾性率(β)との比(α/β)が5以上である、
ポリビニルアルコール系フィルム。」

そして、両者は次の点で一見相違している。
(相違点1)
貯蔵弾性率に係るフィルムの方向について、本件発明2ではフィルムの「幅方向」であることが特定されているのに対し、甲1発明ではそうであるか不明な点。

(相違点2)
110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)について、本件発明2では「7×10^(8)Pa?13×10^(8)Pa」であるのに対し、甲1発明では「約5×10^(8)N/m^(2)」である点。

事案に鑑み、相違点2について検討する。
貯蔵弾性率の単位として1N/m^(2)=1Paと換算できることは技術常識であるところ、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)について、本件発明2では7×10^(8)Pa?13×10^(8)Paであるのに対し、甲1発明では約5×10^(8)Paであり、数値範囲に重複する部分がないから、相違点2は実質的な相違点であることは明らかである。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

イ 本件発明3、4について
本件発明3、4は、請求項2を直接又は間接的に引用してなるものであり、本件発明2の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明2と同様に、甲1に記載された発明であるとはいえない。

2 特許法第29条第2項(進歩性)について
(1)本件発明2について
上記1(3)アで示したとおり、本件発明2と甲1発明との間には、相違点1及び相違点2が存在する。
事案に鑑み、相違点2について検討する。
甲1には、実験に使用された「供試PVA」の一つとして「N99」というものが記載されており、かかる「N99」の貯蔵弾性率と温度との関係を示す図が記載キの「Fig.10」で示されているにすぎない。してみると、甲1には、「N99」の110℃における貯蔵弾性率の値に関して、およそ5×10^(8)N/m^(2)という値を含まない数値範囲である「7×10^(8)Pa?13×10^(8)Pa」に変更するということは記載も示唆もされていない。よって、甲1発明において、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)を「7×10^(8)Pa?13×10^(8)Pa」とすることに動機付けがない。
したがって、本件発明2は、相違点1について検討するまでもなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明3、4について
本件発明3、4は、請求項2を直接又は間接的に引用してなるものであり、本件発明2の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明2と同様に、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
本件発明2?4が解決しようとする課題は、本件特許の明細書の段落【0009】等の記載に基づくと、経済的メリットが大きいうえに、水蒸気等のガスバリア性や成形性に優れた積層体を得るためのポリビニルアルコール系フィルムを提供することであると認められる。
本件発明2?4が、本件特許の明細書の記載及び技術常識に照らして、上記課題を解決することができると理解できるかについて検討する。
まず、ポリビニルアルコール系フィルムを採用することによって、経済的なメリットがある点については、本件特許の明細書の段落【0006】の記載からみて明らかである。
次に、本件特許の明細書の段落【0065】?【0079】に記載された「実施例」の特に【表2】には、積層体すなわち基材フィルム、ポリビニルアルコール系フィルム及びフッ素樹脂フィルムを積層したものについての「透湿度」と「成形性」の評価結果が記載されている。かかる記載によれば、本件発明2?4に含まれる具体的なポリビニルアルコール系フィルム(B-1又はB-2)を用いた積層体は「透湿度」と「成形性」の点で満足いくものであり、一方、本件発明2?4には含まれないポリビニルアルコール系フィルム(B’-1又はB’-2)を用いた積層体は、「透湿度」と「成形性」のいずれかが満足いくものではなかったことが理解できる。積層体については、ポリビニルアルコール系フィルム以外は同じ素材であるため、「透湿度」と「成形性」の評価の差については、ポリビニルアルコール系フィルム自体の差に基づくものと理解することができる。
すなわち、本件特許の明細書には、上記課題を解決することができるポリビニルアルコール系フィルムが開示されていると認められるから、本件発明2?4は本件特許の明細書に記載されたものであるといえる。


第7 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立の理由について

1 甲2及び甲3の記載
(1)甲2の記載
本件特許の出願前に頒布されたことが明らかな刊行物である甲2には、以下のとおりク?サの記載がある。

「【0025】
ポリビニルアルコール系フィルムの製造(製膜)に用いるポリビニルアルコール系樹脂溶液としては、ポリビニルアルコール系樹脂含有量(濃度)が5?70重量%のポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調製することが好ましく、10?60重量%のポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調製することがより好ましい。」


「【0027】
次いで、上記で調製したポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、製膜機(押出機)により、製膜されるが、かかる水溶液を一旦乾燥させて、ペレット化あるいはフレーク化してから製膜機に供給して押出製膜することも可能である。」


「【0029】
押出機での溶融混練温度は、55?160℃であることが好ましい。かかる温度が下限値未満ではフィルム肌の不良を招く傾向があり、上限値を超えると発泡現象を招く傾向があり、好ましくない。押出製膜されたフィルムは、次いで乾燥されるのであるが、このときの乾燥温度は、70?120℃であることが好ましく、80?100℃がより好ましい
。かかる温度が下限値未満ではフィルムの乾燥時間が不必要に長くなったり、水分が残りすぎてしまって後工程に悪影響を及ぼす傾向があり、逆に上限値を超えるとフィルムの水分が失われすぎて硬くなってしまい、延伸工程で充分延伸ができなくなってしまう傾向がある。」


「【0030】
かくして、ポリビニルアルコール系フィルムが得られるのであるが、本発明においては、耐水性、可撓性、機械的強度や酸素遮断性等の物性を安定付与できる点で、かかるフィルムが延伸されていることが必要で、かかる延伸方法について以下に説明する。
【0031】
延伸するにあたっては、縦(機械)方向に一軸延伸してもよいが、縦・横両方向に二軸延伸することが、上記の物性をより改善することができる点で好ましい。」

(2)甲3の記載
本件特許の出願前に頒布されたことが明らかな刊行物である甲3には、以下のとおりシ、スの記載がある。

「【0018】
次いで、上記で調製したポリビニルアルコール水溶液は、製膜機(押出機)により、製膜される」


「【0019】
押出機での溶融混練温度は、55?140℃(さらには55?130℃)が好ましく、かかる温度が55℃未満ではフィルム肌の不良を招き、140℃を超えると発泡現象を招き好ましくない。押出製膜されたフィルムは、次いで乾燥されるが、このときの乾燥温度は、70?120℃(さらには80?100℃)で行うことが好ましく、かかる温度が70℃未満では乾燥に時間がかかりすぎたり残存水分が過剰となり、逆に120℃を超えるとフィルムの柔軟性が失われて後の延伸工程に支障をきたす場合があり好ましくない。
尚、ポリビニルアルコールの製膜において、最初に調整される水溶液は、そのまま製膜に用いることも出来るが、これを一旦含水状態でペレット化あるいはフレーク化してから製膜機に供給して押出製膜することも可能である。
かくして、本発明の保護方法に用いるポリビニルアルコールフィルムが得られるのであるが、本発明においては、かかるフィルムが延伸されていることが、耐水性、可撓性、機械的強度や酸素遮断性等の物性を安定付与できる点で好ましく、かかる延伸方法について説明する。
【0020】
延伸するにあたっては、縦(機械)方向に一軸延伸してもよいが、縦・横両方向に二軸延伸することが、上記の物性をより改善することができ好ましい。・・・(以下省略)・・・」

2 判断
甲2及び甲3には、溶融混練して押出することでポリビニルアルコール系フィルムを製造することが記載されているが、貯蔵弾性率については記載がなく、ましてや、本件発明2の発明特定事項である「110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)」に着目して、これを「7×10^(8)Pa?13×10^(8)Pa」とすることについては記載も示唆もない。
したがって、本件発明2は、甲2及び甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件発明3、4は、請求項2を直接的又は間接的に引用してなるものであり、本件発明2の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明2と同様に、甲2及び甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第8 むすび

以上のとおりであるから、当審が通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項2?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

さらに、本件特許の請求項1は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項1に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ポリビニルアルコール系フィルム
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール系フィルムに関するものであり、更に詳しくは、医薬品、化粧品及び食品等の包装分野で、とりわけ、固形剤包装用として用いられるプレススルーパック(PTP)包装に用いられる積層体に好適なポリビニルアルコール系フィルムであり、更に、水蒸気などのガスバリア性に優れた積層体、及びそれを用いた包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品、化粧品、食品等の包装分野において、錠剤やカプセル等の固形剤を包装するに際してはPTP包装という形態がある。
PTP包装は、硬質ポリ塩化ビニル樹脂やポリプロピレン樹脂からなるフィルムを基材フィルムとして用い、該基材フィルムをポケット形状に成形し、その中に固形剤(錠剤、カプセル等)を充填し、アルミ箔からなる蓋剤で密封した包装体であり、広く普及している。
【0003】
更に、固形剤に防湿性の求められるものには、上記の硬質ポリ塩化ビニル樹脂やポリプロピレン樹脂からなる基材フィルムに、防湿性に優れるポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)フィルムを積層したり(例えば、特許文献1及び2参照。)、ポリ塩化トリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)フィルムを積層したり(例えば、特許文献3参照。)した積層フィルムが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-112426号公報
【特許文献2】特開2005-59455号公報
【特許文献3】特表2009-511310公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に開示の積層フィルムでは、水蒸気などのガスバリア性がまだまだ満足のいくものではなく、PCTFEフィルムを用いたPTP包装の検討が進められているが、高いガスバリア性を発揮させるにはPCTFEフィルムの厚みを50μm以上にしておくことが望まれている。
【0006】
ところが、PCTFEフィルム自身は非常に高価なフィルムであるため、PTP包装を行う際の包装体も高価なものとなり、かかるPCTFEフィルムの厚みを薄くして従来よりも同等或いはそれ以上のガスバリア性を有する積層体の開発が求められている。
【0007】
かかる課題を解決するために、PCTFEフィルムと基材フィルムとの間にエチレン-酢酸ビニル系共重合体ケン化物(EVOH)層を積層させておくことも提案されているが、水蒸気バリア性等においてはまだまだ満足のいくものではなく、更なる改善が求められている。
【0008】
更に、PTP包装の包装体を成形するに際しては、固形剤を充填するためのポケット形状を成形する必要があり、積層体の成形性、柔軟性も重要である。
【0009】
そこで、本発明はこのような背景下において、経済的メリットが大きいうえに、水蒸気等のガスバリア性、成形性に優れた積層体を得るためのポリビニルアルコール系フィルム、及びその積層体を提供することを目的とするものであり、更にその積層体を用いた包装体及びプレススルーパックも提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
しかるに、本発明者等はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、所定温度におけるフィルムの粘弾性挙動に着目し、110℃でのフィルムの粘弾性が180℃でのフィルムの粘弾性よりも充分に大きいものとすることにより、PCTFEフィルム等の防湿性フィルムの厚みを薄くでき、かつ、水蒸気等のガスバリア性及び成形性に優れた積層体を提供することができるポリビニルアルコール系フィルムとなることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明の要旨は、乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)と180℃でのフィルムの貯蔵弾性率(β)との比(α/β)が5以上であり、乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)が、7×10^(8)Pa?13×10^(8)Paであるポリビニルアルコール系フィルムに関するものである。
【0012】
ここで、110℃及び180℃でのフィルムの貯蔵弾性率に着目したのは、下記の通りである。
即ち、PTP包装に用いる包装体を成形するに際しては、通常130?160℃で成形しているところ、かかる成形温度よりやや低い温度及び成形温度よりやや高い温度でのフィルムの粘弾性挙動が、外観が良好で膜厚の均一な成形物を得るという点で非常に重要であり、従って、その温度の代表として上記の通り110℃及び180℃での粘弾性挙動を確認し、両者を比較することにより、フィルムを特定したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、水蒸気等のガスバリア性、成形性に優れた積層体を得ることができ、かかる積層体は包装体やプレススルーパックを製造するための材料として非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)と180℃でのフィルムの貯蔵弾性率(β)との比(α/β)が5以上のポリビニルアルコール系フィルムである。更に、かかる比(α/β)の好ましい範囲は5?7であり、特に好ましくは5?6である。かかる比(α/β)が小さすぎるとフィルムの柔軟性が低下するなど成形性が低下することとなる。
【0017】
ここで、ポリビニルアルコール系フィルムの貯蔵弾性率は次のようにして測定される。
即ち、ポリビニルアルコール系フィルムの貯蔵弾性率は、フィルムに特定周波数の振動を与えたときに測定される値で、本発明においては、例えば、粘弾性測定装置(ユ?ビーエム社製 レオスペクトラー DVE-V4)を用いて、乾燥雰囲気条件下にて、測定周波数10Hzで、-30?200℃まで昇温速度3℃/minでフィルムを昇温しながら、連続的に貯蔵弾性率を測定して、110℃における測定値を貯蔵弾性率(α)とし、180℃における測定値を貯蔵弾性率(β)とした。
「乾燥雰囲気」とは、水分率1000ppm以下の状態のことをいう。
【0018】
また、本発明のポリビニルアルコール系フィルムにおいては、乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)が、7×10^(8)?13×10^(8)Paであることが均一な膜厚の成形品を得る点で好ましい。かかる貯蔵弾性率(α)が小さすぎると成形品の膜厚が不均一となる傾向がある。なお、大きすぎる場合には良好な成形性が得られない傾向がある。
【0019】
更に、本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、180℃でのフィルムの貯蔵弾性率(β)が、3×10^(8)Pa以下であることが成形性の点で好ましく、更には0.1×10^(8)?2.5×10^(8)Pa、特には0.5×10^(8)?2×10^(8)Paであることが好ましい。かかる貯蔵弾性率(β)が大きすぎるとフイルムの追従性が低下して成形性が低下する傾向がある。なお、小さすぎる場合にはガスバリア性が低下する傾向がある。
【0020】
本発明においては、上記フィルム物性を満足することが重要であり、かかるポリビニルアルコール系フィルムとしては、上記フィルム物性を満足するものであれば未延伸のポリビニルアルコール系フィルム、一軸延伸されたポリビニルアルコール系フィルム、二軸延伸されたポリビニルアルコール系フィルムのいずれでもよいが、ガスバリア性の点で、二軸延伸されたポリビニルアルコール系フィルムであることが好ましい。
【0021】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂より製膜されてなるポリビニルアルコール系フィルムである。
【0022】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコールや変性ポリビニルアルコールが挙げられ、ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルを単独重合し、更にそれをケン化して製造される。また変性ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルと酢酸ビニルと共重合可能な不飽和単量体を共重合させた後ケン化して製造されるものであり、その変性量としては、本発明の効果を損なわない範囲内であり、通常10モル%未満である。
【0023】
上記酢酸ビニルと共重合可能な不飽和単量体としては、例えばエチレンやプロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン類、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、等が挙げられる。
【0024】
また、ポリビニルアルコール系樹脂として、側鎖に1,2-ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂を用いることもでき、かかる側鎖に1,2-ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、(ア)酢酸ビニルと3,4-ジアセトキシ-1-ブテンとの共重合体をケン化する方法、(イ)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(ウ)酢酸ビニルと2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、(エ)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により得られる。
【0025】
更に、変性ポリビニルアルコールとしては、ポリビニルアルコールを後変性することにより製造することもできる。かかる後変性の方法としては、ポリビニルアルコールをアセト酢酸エステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化する方法等が挙げられる。
【0026】
本発明においては、上記ポリビニルアルコール系樹脂の平均ケン化度が90モル%以上であることが好ましく、更に好ましい範囲は95?100モル%、特に好ましい範囲は99?99.9モル%である。かかる平均ケン化度が低すぎるとガスバリア性が低下する傾向がある。
尚、上記平均ケン化度はJIS K 6726に準じて測定されるものである。
【0027】
また、上記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度が1100以上であることが好ましく、更には1100?4000、特には1200?2600である。かかる平均重合度が低すぎるとフィルムとしたときの機械強度が低下する傾向にある。なお、平均重合度が高すぎると製膜性が低下する傾向にある。
尚、上記平均重合度は、JIS K 6726に準じて測定されるものである。
【0028】
また、上記ポリビニルアルコール系樹脂の4重量%水溶液の粘度としては、10?80mPa・s(20℃)が好ましく、更には15?70mPa・s(20℃)、特には20?60mPa・s(20℃)が好ましい。該粘度が低すぎるとフィルム強度等の機械的物性が低下する傾向があり、高すぎるとフィルムへの製膜性が低下する傾向がある。
尚、上記粘度はJIS K 6726に準じて測定されるものである。
【0029】
これらのポリビニルアルコール系樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0030】
本発明では、上記ポリビニルアルコール系樹脂を用いてフィルム製膜するのであるが、かかる製膜方法も公知のものでよく、例えば、ドラム、エンドレスベルト等の金属面上にポリビニルアルコール系樹脂溶液を流延してフィルム形成する流延式成形法、あるいは押出機により溶融押出する溶融成形法によって製膜される。
【0031】
本発明においては、上述の通り、上記フィルム物性を満足することが重要であるが、ガスバリア性の点で、二軸延伸されたポリビニルアルコール系フィルムであることが好ましい。
以下、二軸延伸されたポリビニルアルコール系フィルムについて説明する。
【0032】
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂を用いて、ポリビニルアルコール系フィルム(延伸前ポリビニルアルコール系フィルム)を製膜する。通常は、製膜用の原液として、ポリビニルアルコール系樹脂濃度が5?70重量%、好ましくは10?60重量%のポリビニルアルコール系樹脂-水の組成物を調製する。
【0033】
かかるポリビニルアルコール系樹脂-水組成物には、本発明の効果を損なわない範囲でエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール類の可塑剤やフェノール系、アミン系等の抗酸化剤、リン酸エステル類等の安定剤、着色料、香料、増量剤、消包剤、剥離剤、紫外線吸収剤、無機粉体、界面活性剤等の通常の添加剤を適宜配合しても差し支えない。また、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のポリビニルアルコール系樹脂以外の他の水溶性樹脂を混合してもよい。
【0034】
ポリビニルアルコール系フィルムの製膜法については、特に限定されないが、上記ポリビニルアルコール系樹脂-水組成物を押出機に供給して溶融混練した後、Tダイ法、インフレーション法により押出し製膜し、乾燥する方法が好ましい。
【0035】
かかる方法における押出機内での溶融混練温度は、55?160℃が好ましい。かかる温度が低すぎるとフィルム肌の不良を招き、高すぎると発泡現象を招く傾向にある。また、製膜後のフィルムの乾燥については、70?120℃で行うことが好ましく、更には80?100℃で行うことが好ましい。
【0036】
上記で得られたポリビニルアルコール系フィルムに対して、更に二軸延伸を施すことにより、本発明で用いられる二軸延伸ポリビニルアルコール系フィルムとなる。
かかる二軸延伸については、通常行われる同時二軸延伸、逐次二軸延伸など、公知方法に従い行うことができるが、延伸操作の自由度の点で逐次二軸延伸が好ましく、特には縦一軸延伸後に横一軸延伸を行う逐次二軸延伸が好ましい。
【0037】
かかる二軸延伸の延伸倍率については、機械の流れ方向(MD方向)の延伸倍率が1.5?4.5倍、幅方向(TD方向)の延伸倍率が1.5?4.5倍であることが好ましく、特に好ましくはMD方向の延伸倍率が2?4倍、TD方向の延伸倍率が2?4倍、更に好ましくはMD方向の延伸倍率が2.5?3.5倍、TD方向の延伸倍率が2.5?3.5倍である。該MD方向の延伸倍率が低すぎると延伸による物性向上が得難くかつフィルム強度が低下する傾向があり、高すぎるとフィルムがMD方向へ裂けやすくなる傾向がある。また、TD方向の延伸倍率が低すぎると延伸による物性向上が得難くかつフィルム強度が低下する傾向があり、高すぎると工業的にフィルムを製造する際に延伸時の破断が多発する傾向がある。
【0038】
かかる逐次二軸延伸あるいは同時二軸延伸を行うにあたっては、ポリビニルアルコール系フィルムの含水率を5?30重量%、特には10?25重量%に調整しておくことが好ましい。含水率の調整は、乾燥前のポリビニルアルコール系フィルムを引き続き乾燥する方法、含水率5重量%未満のポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬あるいは調湿等を施す方法等により行うことができる。かかる含水率が低すぎても、高すぎても延伸工程でフィルム長手(流れ)方向(MD方向)、フィルム幅方向(TD方向)の延伸倍率を高めることが困難となる傾向がある。
【0039】
本発明においては、上記で得られた二軸延伸ポリビニルアルコール系フィルムに対して少なくとも二段階で熱処理を行うことが重要である。
【0040】
かかる二段階熱処理において、一段目の熱処理温度は、成形性とガスバリア性の点から、110?160℃であることが重要であり、特に好ましくは120?155℃、更に好ましくは、130?150℃であり、二段目の熱処理温度も、成形性とガスバリア性の点から、150?200℃であることが重要であり、特に好ましくは160?195℃、更に好ましくは、165?190℃である。一段目の熱処理温度が低すぎるとガスバリア性が低下する傾向があり、高すぎると成形性が低下する傾向がある。二段目の熱処理温度が低すぎるとフィルムの強度が低下する傾向があり、高すぎるとフィルムが着色する傾向がある。
【0041】
また、二段目の熱処理温度が、一段目の熱処理温度よりも5℃以上高い温度であることが好ましく、特には10℃以上高い温度であり、更には20?50℃高い温度であることが好ましい。
【0042】
また、二段階熱処理において、一段目の熱処理時間が1?30秒であり、二段目の熱処理時間が1?30秒であることがフィルムの強度と透明性の点で好ましい。一段目の熱処理時間は、更には3?20秒であることが好ましく、特には5?15秒であることが好ましく、二段目の熱処理時間は、更には3?20秒であることが好ましく、特には5?15秒であることが好ましい。一段目の熱処理時間が短すぎても長すぎてもフィルムが不均一となる傾向がある。また、二段目の熱処理時間が短すぎるとフィルム強度が低下する傾向があり、長すぎるとフィルムが黄変する傾向がある。
【0043】
なお、本発明においては、上記の二段階熱処理にて本発明の目的を達成することができるが、必要に応じて、三段階以降の熱処理を行うこともできる。
【0044】
かくして本発明のポリビニルアルコール系フィルム、とりわけ二軸延伸されたポリビニルアルコール系フィルムが得られるが、かかるポリビニルアルコール系フィルムの厚みは10?70μmであることが好ましく、特には15?65μm、更には20?60μmであることが好ましい。かかる厚みが薄すぎるとガスバリア性やフィルムの強度が低下する傾向があり、厚すぎると成形性の低下やコストアップとなる傾向がある。
【0045】
本発明においては、上記で得られたポリビニルアルコール系フィルムは、良好な成形性を持ち、かつ、良好なガスバリア性を有するといった相反する性能にバランスの良いポリビニルアルコール系フィルムとなるものであり、特に、医薬包装において用いられるPTP包装用ポリビニルアルコール系フィルムとして有用であり、積層することで高価なフッ素系フィルムを薄膜化するなどのコストダウン効果があり、しかもPTP包装に適した成形性を有するポリビニルアルコール系フィルムとなるものである。
【0046】
本発明においては、基材フィルム(A)/前記ポリビニルアルコール系フィルム(B)/フッ素樹脂フィルム(C)の層構成を有する積層体を提供するものであり、固形剤包装用として用いられるプレススルーパック(PTP)包装に好適な、水蒸気などのガスバリア性に優れた積層体を提供するものである。
【0047】
本発明で用いられる基材フィルム(A)としては、合成樹脂フィルムであればよく、例えば、熱可塑性樹脂フィルム、中でもポリ塩化ビニルフィルム、特には硬質ポリ塩化ビニルフィルム、やポリプロピレン系フィルム等のポリオレフィン系フィルム等が挙げられるが、成形性の点で硬質ポリ塩化ビニルフィルムが好ましい。
【0048】
かかる基材フィルム(A)の厚み(Ta)については、通常50?400μmであり、特に好ましくは80?360μm、更に好ましくは100?320μmである。かかる厚み(Ta)が薄すぎると破れや割れの原因となる傾向があり、厚すぎると 硬くなりすぎて成形品の機能が発揮されない結果となる傾向がある。
【0049】
本発明で用いられるポリビニルアルコール系フィルム(B)は、上述のポリビニルアルコール系フィルムであるが、本発明においては、下記の物性を有するポリビニルアルコール系フィルムであることが好ましい。
【0050】
即ち、上記ポリビニルアルコール系フィルムについては、成形性の点から、その破断伸度として、23℃、50%RH調湿条件下において、20%以上であることが好ましく、さらには40%以上が好ましい。なお、破断伸度の上限としては通常、100%である。ここで、フィルムの破断伸度は、JIS K 7127(1999年)に準拠して測定される。
【0051】
また、ポリビニルアルコール系フィルムの破断強度としても、成形性の点から、23℃、50%RHにおいて、250MPa以上であることが好ましく、更には270MPa以上であることが好ましい。なお、破断強度の上限値としては、通常、350MPaである。
【0052】
更に、ポリビニルアルコール系フィルムの全光線透過率としては、視認性の点で50%以上、特には70%以上、更には90%以上であることが好ましい。なお、全光線透過率の上限値としては通常92%である。
【0053】
また、ポリビニルアルコール系フィルムの厚み(Tb)は10?70μmであることが好ましく、特には15?65μm、更には20?60μmであることが好ましく、かかる厚み(Tb)が薄すぎるとフィルムの強度が低下する傾向があり、厚すぎると成形性が低下する傾向がある。
【0054】
本発明で用いられるフッ素樹脂フィルム(C)は、例えばPTP包装の際に最外層となるフィルムであり、水蒸気などのガスバリア性が求められるものである。具体的には、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ETCFE)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等の樹脂から製膜されるフィルムが挙げられる。中でも、水蒸気等のガスバリア性の点からポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)フィルムを用いることが好ましい。
【0055】
本発明で用いられるフッ素樹脂フィルム(C)の厚み(Tc)については、通常10?200μmであり、好ましくは13?180μm、特に好ましくは15?160μmである。かかる厚み(Tc)が薄すぎると水蒸気バリア性が低下となる傾向があり、厚すぎるとコストが高くなりすぎる傾向がある。なお、コストメリットを考慮すると、上限は通常、100μm程度であることが好ましい。
【0056】
フッ素樹脂フィルム(C)の透湿性は、包装する剤の安定性の点で、40℃、90%RHにおいて0.5g/(m^(2)・24hr・atm)以下であることが好ましく、更には0.4g/(m^(2)・24hr・atm)以下であることが好ましい。かかる透湿度が大きすぎると包装する剤の保存安定性が低下する傾向がある。なお、透湿性の下限値としては通常0.01g/(m^(2)・24hr・atm)である。
【0057】
かくして本発明においては、基材フィルム(A)/ポリビニルアルコール系フィルム(B)/フッ素樹脂フィルム(C)の層構成を有するガスバリア性に優れる積層体を形成するわけであるが、各層の厚み比については、以下の通りであることが好ましい。
【0058】
即ち、フッ素樹脂フィルム(C)の厚み(Tc)とポリビニルアルコール系フィルム(B)の厚み(Tb)との厚み比(Tc/Tb)は、0.5?5であることが水蒸気バリア性の点から好ましく、特には0.5?4、更には0.6?3、殊には0.7?2.5であることが好ましい。かかる厚み比(Tc/Tb)が小さすぎると水蒸気バリア効果が低下する傾向があり、大きすぎるとコストメリットが小さいものとなる傾向がある。
【0059】
また、基材フィルム(A)の厚み(Ta)とポリビニルアルコール系フィルム(B)の厚み(Tb)との厚み比(Ta/Tb)は、2?30であることが好ましく、特には3?25、更には4?20、殊には5?18であることが好ましい。かかる厚み比(Ta/Tb)が小さすぎると破れや割れの原因となる傾向があり、大きすぎると硬くなりすぎ成形品の機能が発揮しづらくなる傾向があり、またガスバリア性が低下する傾向がある。
【0060】
更に、基材フィルム(A)の厚み(Ta)とフッ素樹脂フィルム(C)の厚み(Tc)との厚み比(Ta/Tc)は、1?30であることが好ましく、特には2?25、更には3?20、殊には4?15であることが好ましい。かかる厚み比(Ta/Tc)が小さすぎると破れや割れの原因となる傾向があり、大きすぎると硬くなりすぎ成形品の機能が発揮しづらくなる傾向があり、またガスバリア性が低下する傾向がある。
【0061】
また、本発明においては、基材フィルム(A)/ポリビニルアルコール系フィルム(B)/フッ素樹脂フィルム(C)の層構成を有するものであるが、かかる3層は、かかる順序で連続して積層されてもよいし、各層の間もしくは外側に、接着剤層や、他の樹脂層または樹脂フィルム層を有していてもよい。
【0062】
上記の各層を貼り合わせるための接着剤として、例えば、有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物等の公知の接着剤を用いることができ、かかる接着剤を用いて各フィルムをラミネートする方法(ドライラミネート法)が好ましく用いられる。上記の中でも、接着性の点で、ポリエステル系樹脂とポリイソシアネート系樹脂の混合物の接着剤を用いることが好ましい。
かかる接着剤の厚みとしては、通常0.3?8μmであり、好ましくは0.5?5μm、特に好ましくは1?3μmである。
【0063】
貼り合わせに際しては、(1)基材フィルム(A)とポリビニルアルコール系フィルム(B)とを貼り合わせた後にフッ素樹脂フィルム(C)を貼り合わせたり、(2)ポリビニルアルコール系フィルム(B)とフッ素樹脂フィルム(C)とを先に貼り合わせた後に基材フィルム(A)を貼り合わせたりしてもよい。
【0064】
かくして本発明では、基材フィルム(A)/ポリビニルアルコール系フィルム(B)/フッ素樹脂フィルム(C)の層構成を有する積層体が得られ、かかる積層体は、上述の本発明のポリビニルアルコール系フィルムを中間層に用いることにより、非常に高価なフッ素樹脂の使用を低減することができ、非常に経済的であり、かつ、水蒸気等のガスバリア性に優れ、成形性にも優れたものとなる。
そして、本発明の積層体は、医薬品、化粧品及び食品等の包装体に有用であり、とりわけ、固形剤包装用として用いられるプレススルーパック(PTP)包装用に非常に有用である。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0066】
<実施例1>
以下のフィルムを用意した。
〔基材フィルム(A)〕
・硬質ポリ塩化ビニルフィルム(厚み230μm、住友ベークライト社製「VSS-8142タイプ」)
【0067】
〔ポリビニルアルコール系フィルム(B-1)〕
ポリビニルアルコール(平均ケン化度99.7モル%、平均重合度1700、4%水溶液粘度(25℃)40mPa・s、酢酸ナトリウム含有量0.3%)40部を水60部に溶解させたポリビニルアルコール水溶液を定量ポンプにより、ジャケット温度を60?150℃に設定した二軸押出型混錬機(スクリューL/D=40)に供給し、吐出量500kg/hrの条件で吐出した。この吐出物を直ちに、一軸押出機(スクリューL/D=30)に圧送し、温度85?140℃にて、混錬後、Tダイより5℃に冷却されたキャストロールに流延固化させ、キャストロールから冷却されたフィルムを剥離し、90℃に調整された連続した10個の回転加熱ロールを用いて30秒間乾燥し、次いで、かかるポリビニルアルコールフィルムを縦方向の3倍延伸した後に、テンター延伸機で横方向に3.5倍延伸して、二軸延伸ポリビニルアルコールフィルムとし、次いで145℃で8秒間熱処理(一段目熱処理)を行い、続いて、180℃で8秒間熱処理(二段目熱処理)を行い、含水率0.8%の二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム(B-1)(厚み30μm)を得た。
得られた二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム(B-1)について、以下の通り物性測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0068】
《乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)及び180℃でのフィルムの貯蔵弾性率(β)》
粘弾性測定装置(ユ?ビーエム社製 レオスペクトラー DVE-V4)を用いて、乾燥雰囲気条件下にて、測定周波数10Hzで、-30?200℃まで昇温速度3℃/minでフィルムを昇温しながら、連続的に貯蔵弾性率を測定して、110℃における測定値を貯蔵弾性率(α)とし、180℃における測定値を貯蔵弾性率(β)とした。
「乾燥雰囲気」とは、水分率1000ppm以下の状態のことである。
【0069】
〔フッ素樹脂フィルム(C)〕
・PCTFEフィルム(23μm、ダイキン工業社製「DF-0025C1」)
【0070】
〔積層体の製造〕
上記の二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム(B)と上記のPCTFEフィルム(C)とを、ポリエステル系/ポリイソシアネート二液型接着剤(DIC社製「ディックドライLX-703VL」/DIC社製「ディックドライKR-90」=15/1(重量比))により70℃で貼合した後、二軸延伸ポリビニルアルコールフィルムの露出面側に、上記接着剤により硬質ポリ塩化ビニルフィルム(A)を70℃で貼合し、その後、40℃の環境で2日間エージングして積層体を得た。
得られた積層体について、以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0071】
(透湿度)
JIS Z 0208に規定の透湿カップを用いて、40℃×90%RHの環境下にて、JIS Z 0208に準じて透湿度を測定した。
【0072】
(成形性)
ブリスターパッキングマシンPF-D1型PTP包装機(マルホ発條工業株式会社製)を用い、加熱温度130?160℃、加工速度30?40ショット/分の条件の範囲内でPTP包装を行い、下記の基準にて成形性を評価した。
○・・・設計通りの形状を有していた。
△・・・設計通りの形状から少し外れていた。
×・・・設計通りの形状から大きく外れていた。
【0073】
<実施例2>
表1に示す通り、実施例1において、二軸延伸ポリビニルアルコール系フィルムの熱処理条件を変更した以外は同様に行い、二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム(B-2)を得た。
得られたポリビニルアルコールフィルム(B-2)について、実施例1と同様の物性測定を行い、更に、実施例1と同様にして積層体を得、実施例1と同様の評価を行った。
【0074】
<参考例>
表1に示す通り、実施例1において、二軸延伸ポリビニルアルコール系フィルムの熱処理条件を変更した以外は同様に行い、二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム(B′-1)を得た。
得られたポリビニルアルコールフィルム(B′-1)について、実施例1と同様の物性測定を行い、更に、実施例1と同様にして積層体を得、実施例1と同様の評価を行った。
【0075】
<比較例1>
実施例1において、二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム(B)を用いなかった以外は同様に行い、積層体を得、実施例1と同様の評価を行った。
【0076】
<比較例2>
ポリビニルアルコール(平均ケン化度99.7モル%、平均重合度1700、4%水溶液粘度(25℃)40mPa・s、酢酸ナトリウム含有量0.3%)100部にグリセリン12部、ソルビタンエステルエーテル0.5部及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.5部及び水を加えて、固形分濃度23%の樹脂組成物の水分散液を得た。この樹脂組成物の水分散液(80℃脱泡済み)を80℃のエンドレスベルトの金属表面にTダイから流延し、110℃-120℃-115℃-100℃の4つの乾燥工程を各45秒ずつ通過して合計3分間乾燥して、含水率5%、厚さ60μmのポリビニルアルコールフィルム(B′-2)を得た。
得られたポリビニルアルコールフィルム(B′-2)について、実施例1と同様の物性測定を行い、更に、実施例1と同様にして積層体を得、実施例1と同様の評価を行った。
実施例、参考例及び比較例の測定結果を表1に、性能評価結果を表2に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
上記の通り、中間層としてポリビニルアルコール系フィルム(B)を用いた積層体である実施例1及び2は、非常に高価なPCTFEフィルムを薄膜で用いても非常に優れたガスバリア性を有するものであり、更に、成形性に優れるためPTPを製造するに際しても効率的に製造することができる。
一方、中間層としてポリビニルアルコール系フィルム(B)を用いない比較例1や所望の物性を有しないポリビニルアルコール系フィルム(B)を用いた比較例2では、実施例よりも水蒸気バリア性に劣るものであることが分かる。
なお、所望の物性を有しない二軸延伸ポリビニルアルコールフィルムを用いた参考例では、非常に優れたガスバリア性を有するものである一方、成形性の点では実施例よりも若干劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、水蒸気等のガスバリア性、成形性に優れた積層体を得ることができ、かかる積層体は、基材フィルム(A)/ポリビニルアルコール系フィルム(B)/フッ素樹脂フィルム(C)の層構成を有するものとすることにより、ポリビニルアルコール系フィルム(B)を中間層に用いているため、非常に高価なフッ素樹脂の使用を低減することができ、非常に経済的であり、かつ、水蒸気等のガスバリア性に優れたものであり、医薬品、化粧品及び食品等の包装体に有用であり、とりわけ、固形剤包装用として用いられるプレススルーパック(PTP)包装用に非常に有用である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)と180℃でのフィルムの貯蔵弾性率(β)との比(α/β)が5以上であり、乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、110℃でのフィルムの貯蔵弾性率(α)が、7×10^(8)Pa?13×10^(8)Paであることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム。
【請求項3】
乾燥雰囲気条件下におけるフィルム幅方向の、180℃でのフィルムの(β)が、3×10^(8)Pa以下であることを特徴とする請求項2記載のポリビニルアルコール系フィルム。
【請求項4】
ポリビニルアルコール系フィルムが、二軸延伸されたポリビニルアルコール系フィルムであることを特徴とする請求項2または3記載のポリビニルアルコール系フィルム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-01-29 
出願番号 特願2013-67783(P2013-67783)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08J)
P 1 651・ 537- YAA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大村 博一  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 佐久 敬
渕野 留香
登録日 2017-02-03 
登録番号 特許第6084090号(P6084090)
権利者 日本合成化学工業株式会社
発明の名称 ポリビニルアルコール系フィルム  
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