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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G01N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  G01N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
管理番号 1339135
異議申立番号 異議2017-700370  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-14 
確定日 2018-02-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6009938号発明「プロカルシトニンの検出のためのイムノアッセイ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6009938号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-4、9〕、〔5、10〕、〔6-8、11-13〕について訂正することを認める。 特許第6009938号の請求項1、5、6、8ないし14に係る特許を維持する。 特許第6009938号の請求項2ないし4、7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6009938号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし14に係る特許についての出願は、2010年(平成22年)4月27日(パリ条約による優先権主張 2009年4月28日 欧州特許庁,2009年7月10日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成28年9月23日にその特許権の設定登録がされ、その後、本件特許の請求項1ないし14に係る特許に対し、特許異議申立人ハイテスト リミテッドにより、また、本件特許の請求項1ないし13に係る特許に対し、特許異議申立人川原 園生より特許異議の申立てがされたものである。
その後、当審より平成29年6月5日付けで取消理由を通知したところ、その指定期間内である同年9月7日付けで特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされたので、特許異議申立人ハイテスト リミテッド及び特許異議申立人川原 園生に対して本件訂正請求があった旨を通知し(取消理由通知の写し、訂正請求書及び訂正した特許請求の範囲、意見書の副本を添付)、両特許異議申立人に意見を求めたが、両特許異議申立人から意見書が提出されなかったものである。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりであり、訂正前の請求項の引用関係からみて、次の訂正単位があると認められる。
・訂正単位1(請求項1ないし4、9)
・訂正単位2(請求項5、10)
・訂正単位3(請求項6ないし8、11ないし13)

(1) 訂正単位1についての訂正事項

訂正単位1は、訂正事項1ないし5、12よりなる。
なお、下線は当審が付したものであり、訂正箇所を示す。

ア 請求項1に係る訂正事項

(ア) 訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る「生物学的サンプル中のプロカルシトニン」を、「生物学的サンプル中の配列番号1に規定されるアミノ酸配列からなるプロカルシトニン」に訂正する。

(イ) 訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る「少なくとも20アミノ酸残基長のその断片」を、「配列番号1の3?116のアミノ酸残基を含むその断片」に訂正する。

(ウ) 訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る「前記抗体は、モノクローナル抗体であり、かつ、前記エピトープに対して10^(8)?10^(11)M^(-1)の範囲の親和性を有する」を、「前記抗体は、DSMZ に受入番号DSM ACC2993 として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生され、」に訂正する。

(エ) 訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る「ことを特徴とする、方法。」の前に、「もう1つの抗体又はその機能性断片が、プロカルシトニンの96?116 のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープ、又はプロカルシトニンの 60?91 のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対し、そして前記もう1つの抗体又はその機能性断片が、モノクローナル抗体である」を加えて訂正する。

(オ) 請求項1に係る訂正に伴う訂正事項
請求項1に係る上記の訂正に伴い、請求項1を引用する請求項9も訂正された。

イ 請求項2ないし4に係る訂正事項

(ア) 訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項2、3及び4を削除する。

ウ 請求項9に係る訂正事項

(ア) 訂正事項12
訂正前の特許請求の範囲の請求項9に係る「請求項1?4のいずれか1項」を「請求項1」に訂正する。

(2) 訂正単位2についての訂正事項

訂正単位2は、訂正事項6よりなる。

ア 請求項5に係る訂正事項

(ア) 訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項5に係る「前記抗体は、モノクローナル抗体であり、かつ、前記エピトープに対して10^(8)?10^(11)M^(-1)の範囲の親和性を有する」を、「前記抗体は、DSMZ に受入番号DSM ACC2993 として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生される」に訂正する。

(イ) 請求項5に係る訂正に伴う訂正事項
請求項5に係る上記の訂正に伴い、請求項5を引用する請求項10も訂正された。

(3) 訂正単位3についての訂正事項

訂正単位3は、訂正事項7ないし11、13、14よりなる。

ア 請求項6に係る訂正事項

(ア) 訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項6に係る「前記第一抗体は、モノクローナル抗体であり、かつ、前記エピトープに対して10^(8)?10^(11)M^(-1)の範囲の親和性を有する」を、「前記第一抗体は、DSMZ に受入番号DSM ACC2993 として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生される」に訂正する。

(イ) 訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項6に係る「プロカルシトニンの53?116のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対する第二抗体又はその機能性断片」を、「プロカルシトニンの96?116のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープ、又はプロカルシトニンの60?91のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対する第二抗体又はその機能性断片」に訂正する。

(ウ) 請求項6に係る訂正に伴う訂正事項
請求項6に係る上記の訂正に伴い、請求項6を直接又は間接的に引用する請求項8、11ないし13も訂正された。

イ 請求項7に係る訂正事項

(ア) 訂正事項9
訂正前の特許請求の範囲の請求項7を削除する。

ウ 請求項8に係る訂正事項

(ア) 訂正事項10
訂正前の特許請求の範囲の請求項8に係る「請求項6又は7」を「請求項6」に訂正する。

(イ) 訂正事項11
訂正前の特許請求の範囲の請求項8に係る「プロカルシトニンの検出及び/又は定量のため」を、「配列番号1に規定されるアミノ酸配列からなるプロカルシトニンの検出及び/又は定量のため」に訂正する。

エ 請求項11に係る訂正事項

(ア) 訂正事項13
訂正前の特許請求の範囲の請求項11に係る「請求項6又は7」を「請求項6」に訂正する。

オ 請求項12に係る訂正事項

(ア) 訂正事項14
訂正前の特許請求の範囲の請求項12に係る「請求項6又は7」を「請求項6」に訂正する。

カ 請求項12に係る訂正に伴う訂正事項
請求項12に係る上記の訂正に伴い、請求項12を引用する請求項13も訂正された。

2 一群の請求項について

訂正前の請求項の引用関係からみて、訂正事項1ないし5、12は、請求項1ないし4、9を一群の請求項として、訂正事項6は、請求項5、10を一群の請求項として、訂正事項7ないし11、13、14は、請求項6ないし8、11ないし13を一群の請求項として請求されたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1) 訂正単位1について

ア 請求項1に係る訂正事項

(ア) 訂正事項1について

a 新規事項の有無について
本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の段落【0010】の図5の簡単な説明には、「図5はプロカルシトニン(PCT)のアミノ酸配列(配列番号1)である。」との記載がなされており、図5、段落【0045】の表1、及び、配列表にはプロカルシトニンのアミノ酸配列が記載されている。そして、段落【0063】で表1のプロカルシトニン(PCT)のアミノ酸配列をイムノアッセイで使用することが記載されている。
よって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、「プロカルシトニン」を「配列番号1に規定されるアミノ酸配列からなるプロカルシトニン」に限定するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ) 訂正事項2について

a 新規事項の有無について
本件特許明細書等の段落【0004】には、「循環するPCTが、PCTのカルシトニン部分に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより、敗血症患者から単離され、そしてPCT3-116が主に循環しているPCT種であると結論付けられている(WeglohnerらによるPeptides 2001;22:2099-103.)。」と記載されている。したがって、生物学的サンプル中のプロカルシトニンの断片は、配列番号1の3?116のアミノ酸残基を含むことは明らかである。
よって、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項2は、「少なくとも20アミノ酸残基長のその断片」と記載されているのを「配列番号1の3?116のアミノ酸残基を含むその断片」に限定するものであり、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(ウ) 訂正事項3について

a 新規事項の有無について
本件特許明細書等の段落【0027】には、「本発明によるプロカルシトニンの16?40のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対するモノクローナル抗体は、好ましくは、DSMZに受入番号DSM ACC2993又はDSM ACC2996又はDSM ACC2997として寄託されているハイブリドーマ細胞株により産生される。」と記載されており、段落【0059】には、「抗体FX1G5の最大の結合は、前記のペプチド由来のペプチド、すなわちLLAALVQDYVQMK (25-37番)で観察された。」と記載されており、段落【0027】には、「モノクローナル抗体FX1G5を産生するハイブリドーマ細胞株は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH (DSMZ)に、2009年4月29日にDSM ACC2993の受入番号で寄託された。」と記載されている。
よって、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項3は、「エピトープに対して10^(8)?10^(11)M^(-1)の範囲の親和性を有する」、「モノクローナル抗体」が、「DSMZ に受入番号DSM ACC2993 として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生され」るものであることを限定するものであり、特定のハイブリドーマ細胞株により産生される抗体であることを限定することにより特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、また、測定方法が不明であった親和性の数値範囲の規定に基づく抗体の特定に代えて、当該抗体を産生するハイブリドーマ細胞株の特定をすることによって記載を明瞭化するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(エ) 訂正事項4について

a 新規事項の有無について
本件特許明細書等の段落【0014】には、「本発明の方法に用いられる少なくとも二つの抗体は、好ましくはそれぞれの他の抗体又は抗体(複数)のエピトープに対する顕著な交差反応性を(すなわち、>10%)示さない。プロカルシトニンの2?52のアミノ酸残基にまたがる配列中のエピトープに対する抗体は、このエピトープに特異的であり、それゆえプロカルシトニンの53?116のアミノ酸残基にまたがる配列中のエピトープとの顕著な交差反応性を示さず、逆の場合も同じである。」との記載がされており、また、段落【0016】には、「プロカルシトニンの53?116のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープは、好ましくは、プロカルシトニンの96?116のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープ、又はプロカルシトニンの60?91のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープである。」との記載がされ、さらに、訂正前の請求項4には、「プロカルシトニンの53?116のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対する抗体又はその機能性断片が、モノクローナル抗体である」との記載がされている。
よって、訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項4は、「もう1つの抗体又はその機能性断片」がプロカルシトニンのどのアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対するものであるのかを限定するものであり、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(オ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

請求項1に係る訂正事項1ないし4の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(カ) 請求項1に係る訂正のまとめ

以上のことから、請求項1に係る訂正事項1ないし4の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

イ 請求項1に係る訂正に伴う訂正事項

請求項1に係る上記の訂正に伴い、請求項1を引用する請求項9も訂正された。
そして、請求項1に係る訂正事項1ないし4は、上記「ア 請求項1に係る訂正事項」「(カ) 請求項1に係る訂正のまとめ」のとおりであり、また、訂正事項1ないし4による訂正によって、請求項9に係る発明が、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内ではないものになるものではなく、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
よって、請求項9に係る訂正事項1ないし4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 請求項2ないし4に係る訂正事項

(ア) 訂正事項5について

a 新規事項の有無について
訂正事項5は、請求項2、3及び4を削除するものであるから、訂正事項5は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項5は、請求項2、3及び4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

c 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
請求項2ないし4に係る訂正事項5の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(イ) 請求項2ないし4に係る訂正のまとめ
以上のことから、請求項2ないし4に係る訂正事項5の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ 請求項9に係る訂正事項

(ア) 訂正事項12について

a 新規事項の有無について
訂正事項12は、訂正前の請求項2ないし4が削除されたことに伴い、請求項の引用関係を訂正したものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項12は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項12は、訂正前の請求項2ないし4が削除されたことに伴い、請求項の引用関係を訂正したものであり、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

c 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
請求項9に係る訂正事項12の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(イ) 請求項9に係る訂正のまとめ

以上のことから、請求項9に係る訂正事項12の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(2) 訂正単位2について

ア 請求項5に係る訂正事項

(ア) 訂正事項6について

a 新規事項の有無について
本件特許明細書等の段落【0027】には、「本発明によるプロカルシトニンの16?40のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対するモノクローナル抗体は、好ましくは、DSMZに受入番号DSM ACC2993又はDSM ACC2996又はDSM ACC2997として寄託されているハイブリドーマ細胞株により産生される。」と記載されており、段落【0059】には、「抗体FX1G5の最大の結合は、前記のペプチド由来のペプチド、すなわちLLAALVQDYVQMK (25-37番)で観察された。」と記載されており、段落【0027】には、「モノクローナル抗体FX1G5を産生するハイブリドーマ細胞株は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH (DSMZ)に、2009年4月29日にDSM ACC2993の受入番号で寄託された。」と記載されている。
よって、訂正事項6は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項6は、「エピトープに対して10^(8)?10^(11)M^(-1)の範囲の親和性を有する」、「モノクローナル抗体」が、「DSMZ に受入番号DSM ACC2993 として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生され」るものであることを限定するものであって、特定のハイブリドーマ細胞株により産生される抗体であることを限定することにより特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、また、測定方法が不明であった親和性の数値範囲の規定に基づく抗体の特定に代えて、当該抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を特定をすることによって記載を明瞭化するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

c 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
請求項5に係る訂正事項6の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(イ) 請求項5に係る訂正のまとめ

以上のことから、請求項5に係る訂正事項6の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

イ 請求項5に係る訂正に伴う訂正事項

請求項5に係る上記の訂正に伴い、請求項5を引用する請求項10も訂正された。
そして、請求項5に係る訂正事項6は、上記「ア 請求項5に係る訂正事項」「(イ) 請求項5に係る訂正のまとめ」のとおりであり、また、訂正事項6による訂正によって、請求項10に係る発明が、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内ではないものになるものではなく、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
よって、請求項10に係る訂正事項6は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(3) 訂正単位3について

ア 請求項6に係る訂正事項

(ア) 訂正事項7について

a 新規事項の有無について
本件特許明細書等の段落【0027】には、「本発明によるプロカルシトニンの16?40のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対するモノクローナル抗体は、好ましくは、DSMZに受入番号DSM ACC2993又はDSM ACC2996又はDSM ACC2997として寄託されているハイブリドーマ細胞株により産生される。」と記載されており、段落【0059】には、「抗体FX1G5の最大の結合は、前記のペプチド由来のペプチド、すなわちLLAALVQDYVQMK (25-37番)で観察された。」と記載されており、段落【0027】には、「モノクローナル抗体FX1G5を産生するハイブリドーマ細胞株は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH (DSMZ)に、2009年4月29日にDSM ACC2993の受入番号で寄託された。」と記載されている。
よって、訂正事項7は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項7は、「エピトープに対して10^(8)?10^(11)M^(-1)の範囲の親和性を有する」、「モノクローナル抗体」が、「DSMZ に受入番号DSM ACC2993 として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生され」るものであることを限定するものであって、特定のハイブリドーマ細胞株により産生される抗体であることを限定することにより特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、また、測定方法が不明であった親和性の数値範囲の規定に基づく抗体の特定に代えて、当該抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を特定をすることによって記載を明瞭化するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(イ) 訂正事項8について

a 新規事項の有無について
本件特許明細書等の段落【0014】には、「本発明の方法に用いられる少なくとも二つの抗体は、好ましくはそれぞれの他の抗体又は抗体(複数)のエピトープに対する顕著な交差反応性を(すなわち、>10%)示さない。プロカルシトニンの2?52のアミノ酸残基にまたがる配列中のエピトープに対する抗体は、このエピトープに特異的であり、それゆえプロカルシトニンの53?116のアミノ酸残基にまたがる配列中のエピトープとの顕著な交差反応性を示さず、逆の場合も同じである。」との記載がされており、また、段落【0016】には、「プロカルシトニンの53?116のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープは、好ましくは、プロカルシトニンの96?116のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープ、又はプロカルシトニンの60?91のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープである。」との記載がされている。
よって、訂正事項8は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項8は、「もう1つの抗体又はその機能性断片」がプロカルシトニンのどのアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対するものであるのかを限定するものであり、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
請求項6に係る訂正事項7及び8の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(エ) 請求項6に係る訂正のまとめ

以上のことから、請求項6に係る訂正事項7及び8の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

イ 請求項6に係る訂正に伴う訂正事項

請求項6に係る上記の訂正に伴い、請求項6を直接又は間接的に引用する請求項8、11ないし13も訂正された。
そして、請求項6に係る訂正事項7及び8は、上記「ア 請求項6に係る訂正事項」「(エ) 請求項6に係る訂正のまとめ」のとおりであり、また、訂正事項6による訂正によって、請求項8、11ないし13に係る発明が、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内ではないものになるものではなく、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
よって、請求項8、11ないし13に係る訂正事項7及び8は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 請求項7に係る訂正事項

(ア) 訂正事項9について

a 新規事項の有無について
訂正事項9は、請求項7を削除するものであるから、訂正事項9は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項9は、請求項7を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

c 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
請求項7に係る訂正事項9の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(イ) 請求項7に係る訂正のまとめ

以上のことから、請求項7に係る訂正事項9の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ 請求項8に係る訂正事項

(ア) 訂正事項10について

a 新規事項の有無について
訂正事項10は、訂正前の請求項7が削除されたことに伴い、請求項の引用関係を訂正したものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項10は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項10は、訂正前の請求項7が削除されたことに伴い、請求項の引用関係を訂正したものであり、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(イ) 訂正事項11について

a 新規事項の有無について
本件特許明細書等の段落【0010】の図5の簡単な説明には、「図5はプロカルシトニン(PCT)のアミノ酸配列(配列番号1)である。」との記載がなされており、図5、段落【0045】の表1、及び、配列表にはプロカルシトニンのアミノ酸配列が記載されている。そして、段落【0063】で表1のプロカルシトニン(PCT)のアミノ酸配列をイムノアッセイで使用することが記載されている。
よって、訂正事項11は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項11は、「プロカルシトニン」が「配列番号1に規定されるアミノ酸配列からなるプロカルシトニン」に限定するものである。
よって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

請求項8に係る訂正事項10及び11の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(イ) 請求項8に係る訂正のまとめ

以上のことから、請求項8に係る訂正事項10及び11の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

オ 請求項11に係る訂正事項

(ア) 訂正事項13について

a 新規事項の有無について
訂正事項13は、訂正前の請求項7が削除されたことに伴い、請求項の引用関係を訂正したものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項13は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項13は、訂正前の請求項7が削除されたことに伴い、請求項の引用関係を訂正したものであり、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

c 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
請求項11に係る訂正事項13の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(イ) 請求項11に係る訂正のまとめ

以上のことから、請求項11に係る訂正事項13の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

カ 請求項12に係る訂正事項

(ア) 訂正事項14について

a 新規事項の有無について
訂正事項14は、訂正前の請求項7が削除されたことに伴い、請求項の引用関係を訂正したものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項14は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項14は、訂正前の請求項7が削除されたことに伴い、請求項の引用関係を訂正したものであり、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

c 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
請求項12に係る訂正事項14の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(イ) 請求項12に係る訂正のまとめ

以上のことから、請求項12に係る訂正事項14の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

キ 請求項12に係る訂正に伴う訂正事項

請求項12に係る上記の訂正に伴い、請求項12を引用する請求項13も訂正された。
そして、請求項12に係る訂正事項14は、上記「カ 請求項12に係る訂正事項」「(イ) 請求項12に係る訂正のまとめ」のとおりであり、また、訂正事項14による訂正によって、請求項13に係る発明が、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内ではないものになるものではなく、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
よって、請求項13に係る訂正事項14は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

4 むすび

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-4、9〕、〔5、10〕、〔6-8、11-13〕について訂正を認める。

第3 本件特許発明について

本件訂正請求により訂正された請求項1ないし14に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」及び「本件特許発明14」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定された以下のとおりのものである。

【請求項1】
対象から得られた体液由来の生物学的サンプル中の配列番号1に規定されるアミノ酸配列からなるプロカルシトニン、又は配列番号1の3?116のアミノ酸残基を含むその断片の検出のためのインビトロ方法であって、以下のステップ:
a. 前記サンプルと、プロカルシトニン内の異なったエピトープに対する少なくとも二つの抗体又はその機能性断片とを接触させ、及び
b. 前記の少なくとも二つの抗体の、プロカルシトニン又はその前記断片への結合を定性的又は定量的に検出すること、ここで、結合は前記サンプル中のプロカルシトニン又は前記断片の存在又は濃度を示す、
を含み、
少なくとも1つの抗体又はその機能性断片はプロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対するものであり、ここで、前記抗体は、DSMZ に受入番号DSM ACC2993 として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生され、もう1つの抗体又はその機能性断片が、プロカルシトニンの96?116 のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープ、又はプロカルシトニンの 60?91 のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対し、そして前記もう1つの抗体又はその機能性断片が、モノクローナル抗体であることを特徴とする、方法。
【請求項2】 削除
【請求項3】 削除
【請求項4】 削除
【請求項5】
プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対する抗体又はその機能性断片であって、前記抗体は、DSMZ に受入番号DSM ACC2993 として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生されることを特徴とする、抗体又はその機能性断片。
【請求項6】
少なくとも、
a. プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対する第一抗体又はその機能性断片であって、前記第一抗体は、DSMZ に受入番号DSM ACC2993 として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生される、第一抗体又はその機能性断片、及び
b. プロカルシトニンの96?116のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープ、又はプロカルシトニンの60?91のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対する第二抗体又はその機能性断片、
を含むキット。
【請求項7】 削除
【請求項8】
体液からの生物学的サンプル中の配列番号1に規定されるアミノ酸配列からなるプロカルシトニンの検出及び/又は定量のためのサンドイッチイムノアッセイにおける、請求項6に記載のキットの使用。
【請求項9】
体液からの生物学的サンプル中の、プロカルシトニン若しくはその断片の存在若しくは非存在を決定するための、又はそれを定量するための、請求項1に記載の方法の使用。
【請求項10】
体液からの生物学的サンプル中の、プロカルシトニン若しくはその断片の存在若しくは非存在を決定するための、又はそれを定量するための、請求項5に記載の抗体の使用。
【請求項11】
体液からの生物学的サンプル中の、プロカルシトニン若しくはその断片の存在若しくは非存在を決定するための、又はそれを定量するための、請求項6に記載のキットの使用。
【請求項12】
上昇したプロカルシトニンレベルに関連する疾患又は症状の治療的手段の適用のための、診断、予後、危険度分類、治療法モニタリング、治療法ガイダンス、又は分類のための、請求項6に記載のキット。
【請求項13】
前記疾患又は症状が、局所細菌感染、敗血症、重症敗血症、及び敗血性ショックからなる群から選択される、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
受入番号DSM ACC2993、DSM ACC2996又はDSM ACC2997としてDSMZに寄託されたハイブリドーマ細胞株。

第4 当審の取消理由について

1 取消理由に採用した証拠

特許異議申立人ハイテスト リミテッドより、甲第1号証ないし甲第15号証が示され、特許異議申立人川原 園生より、甲第1号証ないし甲第4号証が示された。
それらのうち、取消理由に採用した特許異議申立人ハイテスト リミテッドにより示された甲第1号証及び甲第2号証は、以下のとおりである。

甲第1号証:HyTest's Cardiac Markers Panel, June 2004, HyTest Ltd. の表紙、48-49頁及び奥付(以下、「ハイテストの甲1」という。)

甲第2号証:ウラジミール・フィラトフ(Vladimir Filatov)博士の宣誓書(2016年8月11日付)(以下、「ハイテストの甲2」という。)

2 取消理由の概要

訂正前の請求項1ないし13に係る特許に対して平成29年6月5日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1) 取消理由1(特許法第29条第1項第2号)

本件特許発明1ないし13は、本件特許の優先日前日本国内または外国において公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、その発明に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。

(2) 取消理由2(特許法第29条第2項)

本件特許発明1ないし13は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布されたハイテストの甲1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、その発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。

(3) 取消理由3(特許法第36条)

本件特許は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載に不備があり特許法第36条第6項第2号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたため、特許法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。

3 ハイテストの甲1、及び、ハイテストの甲2の記載より認定できる事項

ア ハイテストの甲1の記載事項及びハイテストの甲1に記載された発明

ハイテストの甲1の第48ないし第49頁には、以下の記載がある。

(ア) 「Procaicitonin(PCT) is a 116 amino acid residue peptide with molecular weight of about 13 kDa.」(第48頁左上欄第1行-第2行)(当審訳:プロカルシトニン(PCT)は、116アミノ酸残基のペプチドであり、約13kDaの分子量を有する。)

(イ) 「PCT is produced normally in C-cells of the thyroid glands. It undergoes successive cleavages to form three molecules:N-terminal fragment(55 a.a.r.), calcitonin(32 a.a.r.) and katacalcin(21 a.a.r.).」(第48頁左上欄第11行-右上欄第1行)(当審訳:「PCTは、通常は甲状腺のC細胞で生成される。PCTは、継続的な切断を受けて3つの断片(N末端断片(55アミノ酸残基)、カルシトニン(32アミノ酸残基)、およびカタカルシン(21アミノ酸残基))を形成する。)

(ウ) 「It has been shown that the level of PCT in serum increases significantly during an infection of bacterial origin(2). Today PCT is considered to be one of the earliest and most specific markers of sepsis.」(第48頁右上欄第2行-第5行)(当審訳:細菌源の感染の間に血中のPCT濃度が著しく上昇することが示されている(2)。今日、PCTは、敗血症の最も早期かつ最も特異的なマーカーの1つであると考えられている。)

(エ) 「PROCALCITONIN - 116 a.a.r.
N-terminal region calcitonin katacalcin
1(3) - 57 60 - 91 96 - 116
57(55) a.a.r. 32 a.a.r. 21 a.a.r.」(第48頁中央の図)
(当審訳:
N末端領域 カルシトニン カタカルシン
1(3) - 57 60 - 91 96 - 116
57(55) アミノ酸残基 32アミノ酸残基. 21 アミノ酸残基)

(オ) 「Hybridomas producing anti-PCT MAbs were generated after immunization of Balb/c mice with three PCT fragments - N-terminal fragment of PCT, calcitonin and katacalcin. For PCT immunodetection antibodies specific to different fragments of the molecule should be used. Calibration curves of sandwich immunoassays for PCT detection in blood, utilizing MAbs with different epitope specificity, are shown on Fig.38.」(第48頁左下欄第1行-右上欄第4行)(当審訳:抗PCT-MAbを産生するハイブリドーマを、3種のPCT断片(PCTのN末端断片、カルシトニンおよびカタカルシン)でBalb/cマウスを免疫した後に調製した。PCTの免疫検出のために、このPCT分子の異なる断片に特異的な抗体が使用されるべきである。異なるエピトープ特異性を有するMAbを利用した、血中のPCT検出のためのサンドイッチイムノアッセイの検量線を、図38に示す。)

(カ) 「Fig.38 Calibration curves of several PCT sandwich immunoassays.
Capucure MAbs: 1μg/well
Antigen:human recombinant PCT
Detection Eu-labeled MAbs:0.1μg/well」
(第48頁右下欄)(当審訳:図38.数種のPCTサンドイッチイムノアッセイの検量線
捕捉用モノクローナル抗体:1μg/ウェル
抗原:ヒト組換えPCT
検出用Eu標識化MAb:0.1μg/ウェル)

(キ) 「27A3(N-terminal fragment) - 22A11(C-terminal part)」
(第48頁右下欄最下行)(当審訳:27A3(N末端断片)-22A11(C末端部分))

(ク) 上記(エ)より、N末端領域は、プロカルシトニンの1?57のアミノ酸残基にまたがる配列を有し、カルシトニンは60?91のアミノ酸残基にまたがる配列、カタカルシンは96?116のアミノ酸残基にまたがる配列を有していることが理解できる。

(ケ) 第49頁の中央に「Ordering information」と記載されていることから、ハイテストの甲1は、HyTest社の宣伝資料であることは明らかであり、ハイテストの甲1の出版時点である2004年6月において、ハイテストの甲1に記載された抗体は、既に販売されていたものと認められる。

(コ) 上記(オ)、(カ)及び(キ)の記載より、27A3及び22A11の抗体が、モノクローナル抗体であることは、当業者にとって明らかである。

上記(ア)ないし(キ)の記載、及び、上記(ク)及び(コ)の認定事項より、ハイテストの甲1には、以下の発明が記載されていることが理解できる。

「ヒトの敗血症のマーカーとして利用することを目的として、敗血症では血中のプロカルシトニンの濃度が上昇することに着目し、プロカルシトニンを検出するにあたって、プロカルシトニンの異なる断片に特異的な抗体を使用されるべきである点に鑑み、プロカルシトニンの1?57のアミノ酸残基にまたがる配列を有するN末端断片に特異性を有するのモノクローナル抗体27A3と、プロカルシトニンのC末端部分に特異性を有するモノクローナル抗体22A11を組み合わせて用いる方法。」
(以下、「甲1発明1」という。)

「プロカルシトニンの1?57のアミノ酸残基にまたがる配列を有するN末端断片に特異性を有するモノクローナル抗体27A3。」(以下、「甲1発明2」という。)

イ ハイテストの甲2より認定できる事項

ハイテストの甲2の追加実験において用いた「27A3抗体」が、ハイテストの甲1に記載されたHyTest社が市販するモノクローナル抗体「27A3抗体」をさすことが、ウラジミール・フィラトフ博士の宣誓書より認められる。
そして、ハイテストの甲2の第1頁に掲示された一覧表に記載されたPeptide3は、プロカルシトニンの25-37のアミノ酸残基に対応するエピトープを有するものであり、前記Peptide3は、第3頁に掲示された一覧表に記載されているように、27A3抗体と特異的に結合するものであることがわかる。

公然実施された発明について

上記アの(ケ)から、ハイテストの甲1の27A3は、本件優先日前に販売されていたものであり、上記イに鑑みれば、ハイテストの甲1の27A3は、プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に対応するエピトープに対する抗体であるといえる。
してみれば、以下の抗体の発明が、公然実施された発明といえる。

「プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に対応するエピトープに特異性を有するモノクローナル抗体27A3。」(以下、「公然実施発明1」という。)

さらに、その抗体が、甲1発明1の方法によって使われるものであるから、以下の方法の発明も、公然実施された発明といえる。

「ヒトの敗血症のマーカーとして利用することを目的として、敗血症では血中のプロカルシトニンの濃度が上昇することに着目し、プロカルシトニンを検出するにあたって、プロカルシトニンの異なる断片に特異的な抗体を使用されるべきである点に鑑み、プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に対応するエピトープに特異性を有するモノクローナル抗体27A3と、プロカルシトニンのC末端部分に特異性を有するモノクローナル抗体22A11を組み合わせて用いる方法。」(以下、「公然実施発明2」という。)

4 取消理由についての当審の判断

(1) 取消理由1(特許法第29条第1項第2号)について

事案に鑑み、最初に本件特許発明5について検討する。

(ア) 本件特許発明5について

a 対比
本件特許発明5と公然実施発明1を対比する。

(a) 公然実施発明1の「プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に対応するエピトープに特異性を有する」「抗体」は、本件特許発明5の「プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対する抗体」に相当する。
(b) 公然実施発明1の「モノクローナル抗体27A3」と、本件特許発明5の「DSMZ に受入番号DSM ACC2993 として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生される」「抗体」は、「プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対する抗体」である点で一致する。
よって、本件特許発明5と公然実施発明1は、以下の点で一致する。

<一致点>
プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対する抗体である点。

そして、以下の点で相違する。

<相違点1>
プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対する抗体が、本件特許発明5は、「DSMZ に受入番号DSM ACC2993 として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生される」ものであるのに対して、公然実施発明1は、そのようなものではない点。

b 判断
上記相違点1について検討する。
本件特許発明5におけるDSMZ に受入番号DSM ACC2993 として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生される抗体と、公然実施発明1におけるモノクローナル抗体27A3は、プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに特異性を有するという共通の性質を有してはいるものの、抗体を産出する細胞株が異なれば、各々の抗体の構造や性質が異なるものであることは、抗体の技術分野における技術常識であるから、本件特許発明5の抗体と、公然実施発明1の抗体は異なるものである。
よって、上記相違点1は、実質的な相違点である。

c 小括

よって、本件特許発明5と公然実施発明1は、同一の発明ではなく、本件特許発明5は、特許法第29条第1項第2号に該当しない。

(イ) 本件特許発明1について

a 対比
本件特許発明1と公然実施発明2を対比する。

(a) 公然実施発明2の「血」は、本件特許発明1の「サンプル」に相当し、公然実施発明2の「血中のプロカルシトニン」は、本件特許発明1の「対象から得られた体液由来の生物学的サンプル中のプロカルシトニン」に相当する。
(b) 公然実施発明2のプロカルシトニンの検出が、インビボではなく、インビトロで行われることは、当業者にとって明らかであるから、公然実施発明2の「プロカルシトニンを検出する」「方法」は、本件特許発明1の「プロカルシトニン」の「検出のためのインビトロ方法」に相当する。
(c) 公然実施発明2における「プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に対応するエピトープに特異性を有するモノクローナル抗体27A3」と「プロカルシトニンのC末端部分に特異性を有するモノクローナル抗体22A11」は、本件特許発明1の「プロカルシトニン内の異なったエピトープに対する少なくとも二つの抗体」に相当する。
(d) 公然実施発明2において、「抗体を使用」するにあたって、抗体を血に接触させることは明らかである。よって、公然実施発明2における、「抗体を使用」することは、本件特許発明1の「サンプル」と「抗体」を「接触させ」ることに相当する。
(e) 公然実施発明2において、プロカルシトニンの検出は、モノクローナル抗体27A3とエピトープとの結合を検出することにより行うこと、及び、プロカルシトニンの検出が血中のプロカルシトニンの存在を表すことは明らかであるから、公然実施発明2における「プロカルシトニンの濃度が上昇することに着目し、」「プロカルシトニンを検出する」ことは、本件特許発明1の「プロカルシトニン」「への結合を定性的又は定量的に検出すること、」「ここで、結合は前記サンプル中のプロカルシトニン」「の存在又は濃度を示す」に相当する。
(f) 公然実施発明2の「プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に対応するモノクローナル抗体27A3」は、本件特許発明1の「プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対する」「1つの抗体」に相当する。
(g) 公然実施発明2における「プロカルシトニンのC末端部分に特異性を有するモノクローナル抗体22A11」は、カタカルシンをエピトープとするものであるから、プロカルシトニンの96?116のアミノ酸残基にまたがる配列をエピトープとするものであり、本件特許発明1の「プロカルシトニンの96?116 のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープ」「に対」する「もう1つの抗体」に相当する。
(h) 公然実施発明2の「22A11」が「モノクローナル抗体」であることは、本件特許発明1の「前記もう一つの抗体」が「モノクローナル抗体であ」ることに相当する。

よって、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
対象から得られた体液由来の生物学的サンプル中のプロカルシトニンの検出のためのインビトロ方法であって、以下のステップ:
a. 前記サンプルと、プロカルシトニン内の異なったエピトープに対する少なくとも二つの抗体を接触させ、及び
b. 前記の少なくとも二つの抗体の、プロカルシトニンへの結合を定性的又は定量的に検出すること、ここで、結合は前記サンプル中のプロカルシトニンの存在又は濃度を示す、
を含み、
少なくとも1つの抗体はプロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対するものであり、もう1つの抗体が、プロカルシトニンの96?116 のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープ、又はプロカルシトニンの 60?91 のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対し、そして前記もう1つの抗体が、モノクローナル抗体である、方法。

そして、両者は、少なくとも以下の相違点を有する。

<相違点2>
プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対する抗体が、本件特許発明1は、「DSMZ に受入番号DSM ACC2993 として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生される」ものであるのに対して、公然実施発明2では、そのようなものではない点。

b 判断
上記相違点2は、上記相違点1と実質的に同じものであり、その判断は、上記「(ア) 本件特許発明5について」「b 判断」において示したとおりである。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1と公然実施発明2は、同一の発明ではなく、本件特許発明1は、特許法第29条第1項第2号に該当しない。

(ウ) 本件特許発明6、8ないし13について

本件特許発明6は、「方法」の発明である本件特許発明1のカテゴリーを「キット」の発明に変更したものであり、本件特許発明8及び11は、「キット」の発明である本件特許発明6のカテゴリーを「キットの使用」とした発明であり、本件特許発明9は、「方法」の発明である本件特許発明1のカテゴリーを「方法の使用」とした発明であり、本件特許発明10は、「抗体」の発明である本件特許発明5のカテゴリーを「抗体の使用」とした発明であり、本件特許発明12及び13は、「キット」の発明である本件特許発明6の目的を特定した発明であり、いずれも上記相違点1に係る本件特許発明5の発明特定事項を備えたものである。
したがって、本件特許発明1及び5と同様に、本件特許発明6、8ないし13は、特許法第29条第1項第2号に該当しない。

(エ) 小括

以上のことから、本件特許発明1、5、6、8ないし13についての特許は、特許法第29条第1項第2号に該当せず、同法第29条第1項の規定に違反してなされたものではないから、特許法第113条第2号の規定に該当するものではない。

(2) 取消理由2(特許法第29条第2項)について

事案に鑑み、最初に本件特許発明5について検討する。

(ア) 本件特許発明5について

a 対比
ハイテストの甲1の記載事項より認定される発明である甲1発明2は、上記「3 ハイテストの甲1、及び、ハイテストの甲2の記載より認定できる事項」「ア ハイテストの甲1の記載事項及びハイテストの甲1に記載された発明」に記載したとおりの、以下のものである。

「プロカルシトニンの1?57のアミノ酸残基にまたがる配列を有するN末端断片に特異性を有するモノクローナル抗体27A3。」

そして、本件特許発明5と甲1発明2を対比すると、両者は以下の点で相違する。

<相違点3>
プロカルシトニンの1?57のアミノ酸残基にまたがる配列が、本件特許発明5では、「プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列」であるのに対して、甲1発明2では、その点が特定されていない点。

<相違点4>
プロカルシトニンの1?57のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対する抗体が、本件特許発明5は、「DSMZ に受入番号DSM ACC2993 として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生される」ものであるのに対して、甲1発明2は、そのようなものではない点。

b 判断
(a) 相違点について
上記相違点4について検討すると、本件特許発明5におけるDSMZ に受入番号DSM ACC2993 として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生される抗体と、甲1発明2におけるモノクローナル抗体27A3は、プロカルシトニンの1?57のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに特異性を有するという共通の性質を有してはいるものの、抗体を産出する細胞株が異なれば、各々の抗体の構造や親和性等の性質が異なるものであることは、抗体の技術分野における技術常識である。したがって、上記ハイブリドーマ細胞株により産生される抗体は、甲1発明2におけるモノクローナル抗体27A3とは異なる構造や性質を持つものと認められるとともに、甲1発明2におけるモノクローナル抗体27A3を、上記ハイブリドーマ細胞株により産生される抗体に置換する動機付けも見当たらないことから、本件特許発明5の上記相違点4に係る構成が当業者にとって容易に想到し得るものであるとすることはできない。
また、上記相違点4は、特許異議申立人ハイテスト リミテッドが提示した証拠及び特許異議申立人川原 園生が提出した各甲号証のいずれにも記載されておらず、特に、特許異議申立人ハイテスト リミテッドが提示した甲第9号証(Kramer P. M. et.al. ,「Development and characterization of new rat monoclonal antibodies for procalcitonin」,Analytical and Bioanalytical Chemistry,2008年10月,Vol.392,No.4,702-736頁)、甲第10号証(「HyTest News - Procalcitnin」,HyTest社,フィンランド,2008年2月,1-7頁及び奥付)、甲第11号証(HyTest's General Product Catalog 2005-2006,2005年6月)、及び、甲第12号証(特表平8-501151号公報)並びに特許異議申立人川原 園生が提出した甲第2号証(HARBARTH S. et.al.,「Diagnostic Value of Procalcitonin, Interleukin-6, and Interleukin-8 in Critically Ill Patients Admitted with Suspected Sepsis」,AMERICAN JOURNAL OF RESPIRATORY AND CRITICAL CARE MEDICINE,米国,2001年,第164巻,396-402頁)、甲第3号証(Castelli G. P. et.al.,「Procalcitonin and C-reactive protein during systemic inflammatory response syndorome, sepsis and organ dysfunction」,Critical Care,英国,2004年,第8巻,第4号,234-242頁)、及び、甲第4号証(日本版敗血症診療ガイドライン,日本集中医療医学会Sepsis Registry委員会,2012年11月6日,1-13頁)の記載に鑑みても、当業者が容易に発明できたものではない。
(b) 効果について
「DSMZ に受入番号DSM ACC2993 として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生され」た抗体が、プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対して、特に特異的であり、プロカルシトニンの検出に有効であることは、当業者において予期し得ないことである。

c 小括
したがって、相違点3を検討するまでもなく、本件特許発明5は、甲1発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(イ) 本件特許発明1について

本件特許発明1と、「3 ハイテストの甲1、及び、ハイテストの甲2の記載より認定できる事項」「ア ハイテストの甲1の記載事項及びハイテストの甲1に記載された発明」に記載した甲1発明1とを対比すると、両者は、少なくとも以下の相違点を有する。

<相違点5>
プロカルシトニンの1?57のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対する抗体が、本件特許発明1は、「DSMZ に受入番号DSM ACC2993 として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生されるもの」であるのに対して、甲1発明1は、そのようなものではない点。

そして、上記相違点5は、上記相違点4と実質的に同じものであり、その判断は、上記「(ア) 本件特許発明5について」「b 判断」において示したとおりである。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(ウ) 本件特許発明6、8ないし13について

本件特許発明6は、「方法」の発明である本件特許発明1のカテゴリーを「キット」の発明に変更したものであり、本件特許発明8及び11は、「キット」の発明である本件特許発明6のカテゴリーを「キットの使用」とした発明であり、本件特許発明9は、「方法」の発明である本件特許発明1のカテゴリーを「方法の使用」とした発明であり、本件特許発明10は、「抗体」の発明である本件特許発明5のカテゴリーを「抗体の使用」とした発明であり、本件特許発明12及び13は、「キット」の発明である本件特許発明6の目的を特定した発明であり、いずれも上記相違点4に係る本件特許発明5の発明特定事項を備えたものである。
したがって、本件特許発明1及び5と同様に、本件特許発明6、8ないし13は、ハイテストの甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(エ) 小括

以上のことから、本件特許発明1、5、6、8ないし13についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、特許法第113条第2号の規定に該当するものではない。

(3) 取消理由3(特許法第36条)について

本件訂正により、訂正前の請求項1、5、6に存在した、抗体が「モノクローナル抗体であり、かつ、前記エピトープに対して10^(8)?10^(11)M^(-1)の範囲の親和性を有する」との記載が、前記抗体が「DSMZ に受入番号DSM ACC2993 として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生され」るとの記載に訂正された。
その結果、測定方法が不明な親和性による数値限定に基づく抗体の特定の記載が無くなり、明瞭でない記載が存在しなくなったとともに、抗体を産出するハイブリドーマ細胞株が「DSMZ に受入番号DSM ACC2993」として寄託されたものに特定されたことにより、本件特許に係る発明を当業者が実施できないとする理由もなくなった。
したがって、本件特許が、特許法第36条第6項第2号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、特許法第113条第4号の規定に該当するものではない。

第5 取消理由通知において採用しなかった申立理由について

1 特許異議申立人ハイテスト リミテッドによる申立理由1について

特許異議申立人ハイテスト リミテッドは、本件特許発明1ないし5に対して、甲2に記載されている事実を踏まえないで、甲1の記載事項だけからも(すなわち、甲1発明1又は甲1発明2)、本件特許発明1ないし5は、新規性を有さない旨を主張している。
しかしながら、「第4 当審の取消理由について」「4 取消理由についての当審の判断」「(2) 取消理由2(特許法第29条第2項)について」「(ア) 本件特許発明5について」において示したとおり、本件特許発明5と甲1発明2を対比すると、両者は少なくとも相違点4で相違する。
そして、抗体を産出する細胞株が異なれば、各々の抗体の構造や性質が異なるものであることは抗体の技術分野における技術常識であるから、本件特許発明5の抗体と甲1発明2の抗体は異なるものである。
よって、上記相違点4は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明5と甲1発明2は同一の発明ではなく、本件特許発明5は特許法第29条第1項第3号に該当しない。
同様のことは、本件特許発明1と甲1発明1との対比においてもいえ、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第1項第3号に該当しない。

2 特許異議申立人ハイテスト リミテッドによる申立理由2について

特許異議申立人ハイテスト リミテッドは、本件特許発明14に対して、ハイテストの甲1を示し、受入番号 DSM ACC2993(名称:FX1G5)、DSM ACC2996(名称:FW5H6)、DSM ACC2997(名称:FX7A7)は、ハイテストの甲1に記載された公知抗体である27A3抗体、6F10抗体、42抗体などと比較して格別優れた効果を示すことは具体的に示されておらず、本件特許発明14は、ハイテストの甲1に記載された公知のモノクローナル抗体に対して優れた効果をもたらすものではなく、進歩性を有さない旨を主張している。
しかしながら、本件特許発明14の抗体は、当該抗体を産出するハイブリドーマ細胞株が特定されており、当該抗体の構造や親和性等の性質が異なるものであることは、当業者にとって明らかであり、ハイテストの甲1に記載された公知のモノクローナル抗体を、上記ハイブリドーマ細胞株により産生される抗体に置換する動機付けも見当たらないことから、本件特許発明14は、ハイテストの甲1に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

3 特許異議申立人ハイテスト リミテッドによる申立理由3について

特許異議申立人ハイテスト リミテッドは、本件特許明細書等に具体的に記載されている各モノクローナル抗体のいずれについても、エピトープ親和性の測定は具体的にはなされていないことから、本件特許発明1ないし13は本件特許明細書等にサポートされているか不明であり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨を主張している。
しかしながら、本件訂正により、エピトープ親和性に関する数値限定の記載は存在しなくなったことから、本件特許発明1、5、6、8ないし13は本件特許明細書等にサポートされていないとはいえない。
したがって、本件特許が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、特許法第113条第4号の規定に該当するものではない。

4 特許異議申立人川原 園生による申立理由1について

特許異議申立人川原 園生は、訂正前の請求項1ないし13に記載の発明に関して、本件特許明細書中において、その効果が示されているものはFX1G5抗体のみであり、FX1G5抗体を、請求項1ないし13に記載の発明にまで拡張乃至一般化できるものではなく、サポート要件を満たさないものである旨を主張している。
しかしながら、本件訂正により、抗体を産出するハイブリドーマ細胞株が特定されたことにより、本件特許発明1、5、6、8ないし13に含まれる抗体が、特定のものに限定され、本件特許明細書等にサポートされているもののみに限定された。
したがって、本件特許が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、特許法第113条第4号の規定に該当するものではない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立人ハイテスト リミテッドによる特許異議申立の理由及び証拠、及び、特許異議申立人川原 園生による特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件訂正後の請求項1、5、6、8ないし14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正後の請求項1、5、6、8ないし14を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項2ないし4及び7に対してなされた特許異議の申立てについては、本件請求項2ないし4及び7が訂正により削除され、申立ての対象となる請求項が存在しないものとなったから、却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象から得られた体液由来の生物学的サンプル中の配列番号1に規定されるアミノ酸配列からなるプロカルシトニン、又は配列番号1の3?116のアミノ酸残基を含むその断片の検出のためのインビトロ方法であって、以下のステップ:
a. 前記サンプルと、プロカルシトニン内の異なったエピトープに対する少なくとも二つの抗体又はその機能性断片とを接触させ、及び
b. 前記の少なくとも二つの抗体の、プロカルシトニン又はその前記断片への結合を定性的又は定量的に検出すること、ここで、結合は前記サンプル中のプロカルシトニン又は前記断片の存在又は濃度を示す、
を含み、
少なくとも1つの抗体又はその機能性断片はプロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対するものであり、ここで、前記抗体は、DSMZに受入番号DSM ACC2993として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生され、もう1つの抗体又はその機能性断片が、プロカルシトニンの96?116のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープ、又はプロカルシトニンの60?91のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対し、そして前記もう1つの抗体又はその機能性断片が、モノクローナル抗体であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対する抗体又はその機能性断片であって、前記抗体は、DSMZに受入番号DSM ACC2993として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生されることを特徴とする、抗体又はその機能性断片。
【請求項6】
少なくとも、
a. プロカルシトニンの25?37のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対する第一抗体又はその機能性断片であって、前記第一抗体は、DSMZに受入番号DSM ACC2993として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生される、第一抗体又はその機能性断片、及び
b. プロカルシトニンの96?116のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープ、又はプロカルシトニンの60?91のアミノ酸残基にまたがる配列に含まれるエピトープに対する第二抗体又はその機能性断片、
を含むキット。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
体液からの生物学的サンプル中の配列番号1に規定されるアミノ酸配列からなるプロカルシトニンの検出及び/又は定量のためのサンドイッチイムノアッセイにおける、請求項6に記載のキットの使用。
【請求項9】
体液からの生物学的サンプル中の、プロカルシトニン若しくはその断片の存在若しくは非存在を決定するための、又はそれを定量するための、請求項1に記載の方法の使用。
【請求項10】
体液からの生物学的サンプル中の、プロカルシトニン若しくはその断片の存在若しくは非存在を決定するための、又はそれを定量するための、請求項5に記載の抗体の使用。
【請求項11】
体液からの生物学的サンプル中の、プロカルシトニン若しくはその断片の存在若しくは非存在を決定するための、又はそれを定量するための、請求項6に記載のキットの使用。
【請求項12】
上昇したプロカルシトニンレベルに関連する疾患又は症状の治療的手段の適用のための、診断、予後、危険度分類、治療法モニタリング、治療法ガイダンス、又は分類のための、請求項6に記載のキット。
【請求項13】
前記疾患又は症状が、局所細菌感染、敗血症、重症敗血症、及び敗血性ショックからなる群から選択される、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
受入番号DSM ACC2993、DSM ACC2996又はDSM ACC2997としてDSMZに寄託されたハイブリドーマ細胞株。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-01-29 
出願番号 特願2012-507716(P2012-507716)
審決分類 P 1 651・ 112- YAA (G01N)
P 1 651・ 536- YAA (G01N)
P 1 651・ 113- YAA (G01N)
P 1 651・ 537- YAA (G01N)
P 1 651・ 121- YAA (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉田 将志伊藤 裕美  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 渡戸 正義
▲高▼橋 祐介
登録日 2016-09-23 
登録番号 特許第6009938号(P6009938)
権利者 ベー.エル.アー.ハー.エム.エス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
発明の名称 プロカルシトニンの検出のためのイムノアッセイ  
代理人 石田 敬  
代理人 古賀 哲次  
代理人 今里 崇之  
代理人 小林 浩  
代理人 中島 勝  
代理人 福本 積  
代理人 福本 積  
代理人 池田 達則  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 石田 敬  
代理人 中島 勝  
代理人 西澤 恵美子  
代理人 青木 篤  
代理人 池田 達則  
代理人 青木 篤  
代理人 田村 恭子  
代理人 古賀 哲次  
代理人 渡辺 陽一  
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