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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B22D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B22D
管理番号 1339145
異議申立番号 異議2016-701158  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-20 
確定日 2018-02-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5937377号発明「シリンダブロック鋳造装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5937377号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第5937377号の請求項2ないし6に係る特許を維持する。 特許第5937377号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5937377号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成24年2月22日に特許出願され、平成28年5月20日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 西谷敬之(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年4月10日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年6月12日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から同年7月19日付けで意見書が提出され、その後同年8月29日付けで取消理由通知(決定の予告)がなされ、これに対してその指定期間内である同年10月31日に2回目の訂正の請求及び意見書の提出がなされ、当該2回目の訂正の請求に対して特許異議申立人から同年12月11日に意見書が提出されたものである。
なお、平成29年10月31日に訂正請求がされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、同年6月12日の訂正請求は、取り下げられたものとみなす。(以下、平成29年10月31日の訂正請求を「本件訂正請求」という。)

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のア?カのとおりである。
ア 請求項2の「前記制御手段(31)は、前記キャビティ(6)への溶湯の注入タイミングに応じて前記冷媒螺旋通路(15)を循環する冷媒の循環量を制御することを特徴とする請求項1記載のシリンダブロック鋳造装置。」との記載を、
「ピストンが摺動するシリンダボア(42)を形成する円柱状のボアピン(10)を中子として金型内に備えてキャビティ(6)に溶湯を注入して内燃機関のシリンダブロック(40)を鋳造するシリンダブロック鋳造装置において、
前記ボアピン(10)には、その外周面(10a)の内側でかつボアピンの一方の円柱端面(10b)に近接して、ボアピンの円柱中心軸(C)を中心とする螺旋状をなして冷却用の冷媒螺旋通路(15)が形成され、
前記ボアピン(10)には、前記一方の円柱端面(10b)とは逆の他方の円柱端面の側から前記円柱中心軸(C)に沿って冷媒導入通路(13)が穿孔され、
前記一方の円柱端面(10b)に沿って、前記冷媒導入通路(13)の下流端に冷媒放射通路(14)が設けられ、前記冷媒螺旋通路(15)の前記一方の円柱端面(10b)の側の冷媒流れ方向上流端環状部(15a)に、前記冷媒導入通路(13)が前記冷媒放射通路(14)を介して連通し、
鋳造1サイクル中に前記冷媒螺旋通路(15)を循環する冷媒の循環量を制御する制御手段(31)を備え、
前記制御手段(31)は、定常注入圧力(P1)を検知したときを基準として、キャビティ(6)が溶湯で満たされると想定される時点(t1)より若干前の時点を冷却開始時点(Ts)として前記冷媒螺旋通路(15)の冷媒の循環を開始し、溶湯が冷却されて凝固すると想定される時点よりは若干後の時点を冷却停止時点(Te)として前記冷媒螺旋通路(15)の冷媒の循環を停止することにより、前記キャビティ(6)への溶湯の注入タイミングに応じて前記冷媒螺旋通路(15)を循環する冷媒の循環量を制御することを特徴とするシリンダブロック鋳造装置。」
に訂正する。
イ 請求項1を削除する。
ウ 請求項3の「前記ボアピン(10)には、前記冷媒螺旋通路(15)の最も高い位置に下流端部を有し、同下流端部から冷媒導出通路(16)が延出して形成されていることを特徴とする請求項1記載のシリンダブロック鋳造装置。」との記載を、「前記ボアピン(10)には、前記冷媒螺旋通路(15)の最も高い位置に下流端部を有し、同下流端部から冷媒導出通路(16)が延出して形成されていることを特徴とする請求項2記載のシリンダブロック鋳造装置。」に訂正する。
エ 請求項4の「前記冷媒螺旋通路(15)は、通路断面が前記ボアピン(10)の外周面側が直線で円柱中心軸側が円弧状に膨らんで、円柱中心軸を通る仮想平面による断面がD字状をなし、冷媒螺旋通路(15)のD字状断面は、ボアピン(10)の軸線方向に途切れることなく隣接配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載のシリンダブロック鋳造装置。」との記載を、「前記冷媒螺旋通路(15)は、通路断面が前記ボアピン(10)の外周面側が直線で円柱中心軸側が円弧状に膨らんで、円柱中心軸を通る仮想平面による断面がD字状をなし、冷媒螺旋通路(15)のD字状断面は、ボアピン(10)の軸線方向に途切れることなく隣接配置されていることを特徴とする請求項2または請求項3記載のシリンダブロック鋳造装置。」に訂正する。
オ 請求項5の「アルミニウム合金を溶融した溶湯を高圧で前記金型内のキャビティ(6)に注入するアルミダイカスト製法を用いて前記シリンダブロック(40)を鋳造する装置であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載のシリンダブロック鋳造装置。」との記載を、「アルミニウム合金を溶融した溶湯を高圧で前記金型内のキャビティ(6)に注入するアルミダイカスト製法を用いて前記シリンダブロック(40)を鋳造する装置であることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項記載のシリンダブロック鋳造装置。」に訂正する。
カ 請求項6の「円柱状の前記ボアピン(10)の冷媒螺旋通路(15)が設けられる領域を囲んで円筒中子(20)が設けられ、該円筒中子(20)はボアピン軸線方向で、冷媒螺旋通路(15)の前記冷媒流れ方向上流端環状部(15a)から遠い側に偏して配置されることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載のシリンダブロック鋳造装置。」との記載を、「円柱状の前記ボアピン(10)の冷媒螺旋通路(15)が設けられる領域を囲んで円筒中子(20)が設けられ、該円筒中子(20)はボアピン軸線方向で、冷媒螺旋通路(15)の前記冷媒流れ方向上流端環状部(15a)から遠い側に偏して配置されることを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか1項記載のシリンダブロック鋳造装置。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アの訂正事項に関連する記載として、明細書の発明の詳細な説明の【0046】には「本実施の形態の制御装置31は、図6を参照して、溶湯の射出注入が開始し、定常注入圧力P1を検知したときを基準として、キャビティ6が溶湯で満たされると想定される時点t1より若干前の時点を冷却開始時点Tsとして予め設定するとともに、溶湯が冷却されて急に凝固すると想定される時点よりは後の若干余裕を持った時点を冷却停止時点Teとして予め設定しておく。」との記載があり、また、【0047】には「したがって、溶湯の射出注入によりキャビティ6が溶湯で満たされる時点t1の若干前の冷却開始時点Tsで制御弁30を開き、ボアピン10内の冷媒螺旋通路15に冷却水を循環させて冷却を開始する。
その後、時点t1を過ぎ、溶湯圧力が急激に上昇する。
そして、キュアリング時の高い溶湯圧力が凝固の始まりと同時に急激に低下した後の冷却停止時点Teで制御弁30を閉じ、冷媒螺旋通路15の冷却水の循環を止めて冷却を停止する。」との記載があることから、「制御手段(31)」が、「定常注入圧力(P1)を検知したときを基準として、キャビティ(6)が溶湯で満たされると想定される時点(t1)より若干前の時点を冷却開始時点(Ts)として前記冷媒螺旋通路(15)の冷媒の循環を開始し、溶湯が冷却されて凝固すると想定される時点よりは若干後の時点を冷却停止時点(Te)として前記冷媒螺旋通路(15)の冷媒の循環を停止すること」にて冷媒の循環量を制御するとした発明は明細書に記載されているものと認められる。
上記アの訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において、「制御手段(31)」を限定したものといえ、同時に、訂正前では先行する請求項1を引用する形式とされていたものを、請求項1を引用しない形式へと改める内容とを含むものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、の双方を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、上記イの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、上記ウないしカの訂正は、訂正事項イによって請求項1が削除されたことに伴って、引用する対象の請求項の内、「請求項1」を引用する部分を除く内容であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
そして、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし6に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次の事項(請求項1は削除されたので本件発明1は記載を省略する。)により特定されるとおりのものである。
本件発明2「ピストンが摺動するシリンダボア(42)を形成する円柱状のボアピン(10)を中子として金型内に備えてキャビティ(6)に溶湯を注入して内燃機関のシリンダブロック(40)を鋳造するシリンダブロック鋳造装置において、
前記ボアピン(10)には、その外周面(10a)の内側でかつボアピンの一方の円柱端面(10b)に近接して、ボアピンの円柱中心軸(C)を中心とする螺旋状をなして冷却用の冷媒螺旋通路(15)が形成され、
前記ボアピン(10)には、前記一方の円柱端面(10b)とは逆の他方の円柱端面の側から前記円柱中心軸(C)に沿って冷媒導入通路(13)が穿孔され、
前記一方の円柱端面(10b)に沿って、前記冷媒導入通路(13)の下流端に冷媒放射通路(14)が設けられ、前記冷媒螺旋通路(15)の前記一方の円柱端面(10b)の側の冷媒流れ方向上流端環状部(15a)に、前記冷媒導入通路(13)が前記冷媒放射通路(14)を介して連通し、
鋳造1サイクル中に前記冷媒螺旋通路(15)を循環する冷媒の循環量を制御する制御手段(31)を備え、
前記制御手段(31)は、定常注入圧力(P1)を検知したときを基準として、キャビティ(6)が溶湯で満たされると想定される時点(t1)より若干前の時点を冷却開始時点(Ts)として前記冷媒螺旋通路(15)の冷媒の循環を開始し、溶湯が冷却されて凝固すると想定される時点よりは若干後の時点を冷却停止時点(Te)として前記冷媒螺旋通路(15)の冷媒の循環を停止することにより、前記キャビティ(6)への溶湯の注入タイミングに応じて前記冷媒螺旋通路(15)を循環する冷媒の循環量を制御することを特徴とするシリンダブロック鋳造装置。」
本件発明3「前記ボアピン(10)には、前記冷媒螺旋通路(15)の最も高い位置に下流端部を有し、同下流端部から冷媒導出通路(16)が延出して形成されていることを特徴とする請求項2記載のシリンダブロック鋳造装置。」
本件発明4「前記冷媒螺旋通路(15)は、通路断面が前記ボアピン(10)の外周面側が直線で円柱中心軸側が円弧状に膨らんで、円柱中心軸を通る仮想平面による断面がD字状をなし、冷媒螺旋通路(15)のD字状断面は、ボアピン(10)の軸線方向に途切れることなく隣接配置されていることを特徴とする請求項2または請求項3記載のシリンダブロック鋳造装置。」
本件発明5「アルミニウム合金を溶融した溶湯を高圧で前記金型内のキャビティ(6)に注入するアルミダイカスト製法を用いて前記シリンダブロック(40)を鋳造する装置であることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項記載のシリンダブロック鋳造装置。」
本件発明6「円柱状の前記ボアピン(10)の冷媒螺旋通路(15)が設けられる領域を囲んで円筒中子(20)が設けられ、該円筒中子(20)はボアピン軸線方向で、冷媒螺旋通路(15)の前記冷媒流れ方向上流端環状部(15a)から遠い側に偏して配置されることを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか1項記載のシリンダブロック鋳造装置。」

(2)取消理由の概要
平成29年4月10日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
ア-1 請求項1?6に係る特許は、請求項1?6に係る発明が、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証乃至甲第6号証記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
ア-2 請求項1?6に係る特許は、請求項1?6に係る発明が、甲第5号証に記載の発明に常識的及び甲第4号証に記載のごとき常套的な事項を補うこと、並びに甲第1号証や第6号証に記載のごとき慣用的な事項を補うことにより、当業者が容易に発明できたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、取り消されるべきものである。

また、平成29年6月12日の訂正請求を踏まえて、同年8月29日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
イ 本件発明1?6は、引用発明8及び甲第1号証ないし7号証に記載された公知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1?6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3)甲号証の記載
ア 甲第1号証(特開2007-216238号公報)には、図面とともに、シリンダブロック鋳造用ボアピン及びライナ固定装置が記載されており、特に、図1-4及び【0023】-【0024】、【0029】、【0032】-【0033】には、次の記載及び図面看取事項が記載されている。
A
「【0023】
図1は、ライナ固定装置を備えたシリンダブロック鋳造用金型が配設される鋳造機となるダイカスト機1の概要を示す図である。なお、本発明が適用されるダイカスト機1は、シリンダボアを形成するシリンダライナが一体に鋳包みされたエンジン用シリンダブロックのダイカスト鋳造に適用される。
【0024】
図1に示すようにダイカスト機1は、ベースフレーム2上に配置された固定盤3と、可動盤4とを備えている。固定盤3に固定型11が脱着可能に取り付けられ、可動盤4に可動型12及び図示しないライナ固定装置20(後述する)が着脱可能に取り付けられ、これら固定型11の成形面11aと可動型12の成形面12aによって成形空間となるキャビティ14を形成するシリンダブロック鋳造用の金型10が構成される。固定型11には後端に注湯口5aが形成されたスリーブ5が連通しており、アルミニウム等の溶湯がキャビティ14に注入されるようになっている。」

B
「【0029】
ライナ固定装置20は、可動盤4に着脱可能に取り付けられる可動型12に形成された固定装置取付孔13に嵌合しボルト15により可動盤4に取り付け固定される円柱状の内側部材22と内側部材22に装着されると共に可動型12に対しキー16により位置決めされる有底円筒状の外側部材31とからなるライナ固定部本体21、内側部材22に外側部材31を着脱可能に固定する取付ボルト45、取付ボルト45と外側部材31との間をシールするシール部材51及びシーリングキャップ55によって構成され、ライナ固定部本体21内に冷却液路61が形成される。」

C
「【0032】
図3及び図4に示すように軸部24の頂端24cに、底面26a及び周面26bを有する有底円筒状の外側部材取付凹部26が形成され、底面26aに軸方向に延在するネジ穴27が形成されている。この底面26aにおけるネジ穴27の周囲が後述するジャッキ用ボルト71の先端71aが当接する環状のジャッキ点26cとなる。軸部24の先端側には外周24aに沿って螺旋状に連続する環状溝28が形成されている。更に、頂端24cには外側部材取付凹部26の周面26bと環状溝28の先端側28aを連通する複数の連通溝29が形成されている。
【0033】
この内側部材22内には基端面23bに導入口62aが開口して外側部材取付凹部26の底面26aに送出口62bが開口する冷却液導入路62が形成され、かつ環状溝28の基端側28bに導入口63aが開口して基端面23bに排出口63bが開口する冷却液排出路63が形成されている。」

D
図1には図面左側に可動型12が配置され、図面右側に固定型11が配置され、固定型11と可動型12とは互いに水平面で合わさり、合わせ面にキャビティ14とされる空間が形成されていることが看取される。また、注湯口5aがあるスリーブ5の出口は、間にキャビティ14を挟み、ライナ固定部本体21が配設される可動型12と軸線方向で対向している様が看取できる。

E
図2にはキャビティ14内に置かれたライナ固定装置20が図示され、ライナ固定装置20の内側部材22にある排出口63bは、図の上部とされ、そこから冷却液排出路63へと連通している様が見てとれる。

以上の記載によれば、甲第1号証には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「シリンダブロック鋳造用金型が配設される鋳造機となるダイカスト機1であって、
前記ダイカスト機1の金型10は、固定型11の成形面11aと可動型12の成形面12aによって成形空間となるキャビティ14を形成する金型が構成されるものであり、
前記固定型11には後端にアルミニウム等の溶湯が注入される注湯口5aが形成され、
前記可動型12は、ボルト15で固定された円柱状の内側部材22と、当該内側部材22に装着される有底円筒状の外側部材31とからなるライナ固定部本体21を含み、
当該ライナ固定部本体21はシリンダ鋳造用ボアピンと一体とされ、キャビティ14内に突出して、シリンダボアを形成し、軸線方向で対向する位置からキャビティ14へアルミニウム等の溶湯が注湯されることでシリンダブロックが鋳造されるものであり、
前記内側部材22は、その円柱状とされる外周24aに沿った螺旋状の環状溝28が形成されていると共に、前記内側部材内には冷却液導入路62及び冷却液排出路63が形成され、
該冷却液導入路62及び冷却液排出路63は、基端面23bの導入口62aから冷却液が導入され、外側部材取付凹部26の底面26aに開口する送出口62bを介して、環状溝28の導入口63aに冷却液は導かれ、環状溝28の基端側28bであって内側部材22の上側とされた排出口63bに続く冷却液排出路63から排出される
可動型12を冷却する構造を有するダイカスト機1。」

イ 甲第2号証(特開平10-328810号公報)には、シリンダブロックの製造方法に関する記載があり、特に図1及び【0006】-【0010】には、シリンダブロックの製造方法を実施している状態の断面図が図示されると共に、型3内にボア入子1がセットされて生じるキャビティ4に、図の右側から溶湯5が注湯され、略円筒状のシリンダブロックとなる成形体2を鋳造する様が記載されている。

ウ 甲第3号証(実願平4-78250号(実開平6-41952号)のCD-ROM)には、射出時に高温の溶湯に触れて加熱されるダイカスト用プランジャチップに冷却機構を備えたとする記載があり、特に図1及び図3の図示及び【0008】の記載から、チップ本体AにプランジャロッドBの先端側の通水チップ2が嵌装状に設置される構造であって、通水チップ2はその中心軸に沿って入り側通路21と戻り側通路23とが二重にされた冷却水の通路を有し、当該入り側通路21は末端でチップ本体Aの先端に少し貯留するようになした冷却室1内へ分岐する複数の分岐通路22が形成され、分岐通路22をとおり冷却室1へ開放された冷却水は、通水チップ先端から戻り側通路23へ導かれて排出する構造が看取され、【0004】には、当該構造を採用したことにより、冷却水をチップ本体の先端部まで効率良く行きわたらせて、チップ本体の先端部分を効率良く且つ均等に冷却することが出来る旨が記載されている。

エ 甲第4号証(特開2000-15421号公報)には、可動金型1のキャビティ面の背後に設けられた減圧室内のターゲット24に冷却水を噴霧ノズル10により噴霧することでキャビティを冷却する装置であって、該冷却装置の噴霧ノズル10への冷却水配管3には、冷却水の量を調節するためのバルブ5が介装されている旨(【0018】)、及びターゲット24に温度センサー31を設け、一致温度以上になったら制御バルブ5を開き、所定温度以下になったら冷却水の供給を停止することによって該当部分を一定温度に制御することができる旨(【0024】-【0025】)、並びに、冷却水の流通を制御する制御バルブ5に関して、溶融材料が充填完了となったところ、すなわち成形工程1サイクル中での射出充填工程の完了タイミングにより制御バルブ5を開き、冷却水の噴霧を行うこと(【0021】)が記載されている。

オ 甲第5号証(特開2000-167655号公報)には、金型内のキャビティに溶湯を充填して、有底円筒形状の鋳造品(【0003】)、特に車両用のエンジンを構成するシリンダブロックを鋳造成形する(【請求項6】、【0035】)際、金型のキャビティに組み込まれた鋳抜きピンの孔部内にインサート部材が挿入されたとするピンに、供給管から冷却液を供給することで当該鋳抜きピンを冷却する装置に関する記載があり、前記インサート部材の冷却液の通路は、冷却装置10のジョイント部材26が有する二重管24の内管20によりインサート部材16の先端まで延びた冷却通路18と、該冷却通路18の末端であるインサート部材16の中心部から半径外方向に向かって延在する第2通路30と、該第2通路30に連通しインサート部材16の外周面に沿って螺旋状に形成された第3通路32と、該第3通路32の終端部はインサート部材16とジョイント部材26との間に形成された空間部34を介して二重管24の外管22内の通路に連通する(【0019】)旨が記載されている。また、当該螺旋状の第3通路32に関し、【0023】及び図3の図示として、第3通路の通路断面が、外周面側を直線とし、中心軸側が円弧状に膨らんだ半円状であることが記載されている。
以上のことから、甲第5号証には以下の発明(以下、「引用発明5」という。)が記載されていると認める。
「金型内のキャビティに溶湯を充填して、有底円筒形状の鋳造品、特に車両用のエンジンを構成するシリンダブロックを鋳造成形する際、金型のキャビティに組み込まれた鋳抜きピンの孔部内にインサート部材が挿入されたとするピンに、供給管から冷却液を供給することで当該鋳抜きピンを冷却する装置であって、
前記インサート部材の冷却液の通路は、冷却装置10のジョイント部材26が有する二重管24の内管20によりインサート部材16の先端まで延びた冷却通路18と、該冷却通路18の末端であるインサート部材16の中心部から半径外方向に向かって延在する第2通路30と、該第2通路30に連通しインサート部材16の外周面に沿って螺旋状に形成された第3通路32と、該第3通路32の終端部はインサート部材16とジョイント部材26との間に形成された空間部34を介して二重管24の外管22内の通路に連通するとし、
前記第3通路の通路断面が、外周面側を直線とし、中心軸側が円弧状に膨らんだ半円状である
シリンダブロック鋳造装置。」

カ 甲第6号証(特開2011-167706号公報)には、シリンダブロックを鋳造するためのウォータージャケット入子(【0001】)のような薄板部Wを有する鋳造金型入子の均等冷却構造に関する記載があり、該ウォータージャケット入子の薄板部Wは、内部に冷媒供給ノズル112を装着した複数の鋳抜きピン11aから11d(【0042】)を近接して取り囲む旨(【0036】)が記載されている。また、【0036】及び図2の図示として、シリンダボア鋳抜きピンを囲んで設けられるウォータージャケット入子50が、シリンダボア鋳抜きピンの軸線方向で、冷却室111の上流端から遠い側である図の右側に偏して配置されることが記載及び図示されている。

また、特許異議申立人が平成29年7月19日付けで提出した意見書には、訂正請求を受けて新たに甲第7号証ないし甲第8号証が添付され、当該追加された書証には、以下の事項が記載されている。

キ 甲第7号証(国際公開第2003/074211号)には、「PLUNGER FOR A COLD CHAMBER DIECASTING MACHINE」(冷却機構を有するコールドチャンバダイカスト用プランジャ)と題して、Fig.1、4及び5の図示と共に、プランジャ1の先端を覆うピストン7の端面15とシールリング17の冷却を成す機構として、プランジャ1の中心軸の箇所に配された冷却材供給用管23から冷却材が導入され、先端の止まり穴67から外周方向に放射状に延びる6本の半径方向通路69に冷却材が連通し、横方向通路67を経由してピストン本体7cに設けられた環状スペース25cにて冷却材は収集され、軸方向通路23及び複数の半径方向通路27を介して管23を含んだピストン支持部11の中空スペース29に結合された様が記載されている。

ク 甲第8号証(「素形材」9月号、財団法人素形材センター発行、Vol.52(2011)No.9、平成23年9月20日、p.9-14)には、「高性能射出部品の最新動向」と題して、「2.強制冷却チップ」との見出しで、9ページに「写真1 強制冷却チップ概観」とされた写真と、10ページに「図1 チップ内部冷却構造」とされた図示が掲載されるとともに、特に9ページに以下の事項が記載されている。
A
「保温性プランジャースリーブや熱間時の偏膨張制御を可能にしたプランジャーチップ、・・・(中略)・・・など、射出能力の向上・摺動安定化を目指し開発され、鋳造欠陥対策にも効果のある高性能射出部品群を実際の使用事例と共に紹介する。」(9ページ上段)
B
「・・・本稿では、『高性能射出部品の最新動向』と題し、具体的な改善実例等を挙げながら説明をさせて頂く。本稿で紹介する高性能射出部品群のラインアップだが、最初にプランジャーチップより強制冷却チップと・・・(中略)・・・の順で紹介する。」(9ページ中段)
C
「写真1が強制冷却チップとインナージョイントである。チップ先端内部ギリギリまで突き出した形状のジョイント外径部に冷却回路が設けられている。このような形状に至った理由は、従来のプール冷却方式だと、チップ内部上側に空気溜まりができてしまい、冷却水が均等に回り難い構造であった。また、冷却水流路に方向性が無かったため、冷却水が滞留、熱間稼働中には偏膨張しカジリ等の原因になっていた。
そこで、チップ内部全体に均等に確実に冷却水が流れるように改善を加えたタイプのチップ、インナージョイントが強制冷却チップとなる(図1参照)。」(9ページ下段)
D
加えて写真1の画像からは、写真右に寝かせて置かれたインナージョイントと目される円柱状の部材の外周面に、らせん状の溝が刻設されている様、及び手前側の端部には中央の穴から放射状かつカーブして外周方向へ延びる8本の溝が刻設されている様が見てとれる。
また、10ページの図1の図示から、甲第8号証中に「強制冷却チップ」と記載されているものは、図1中右側に図示されているように、インナージョイントの中心軸に沿って図の右側から冷却水が注入され、ジョイント先端まで軸線に沿って導かれ、ジョイント先端の穴からジョイント外周方向に分岐して放射状に導かれ、インナージョイントとチップに挟まれたらせん状の流路に沿って外周を冷却水が流れる構造であることが見てとれる。

以上の記載及び写真及び図からの看取事項によれば、甲第8号証には以下の発明(以下、「引用発明8」という。)が記載されていると認められる。
「強制冷却プランジャーチップであって、
該チップの内部に、円柱状のインナージョイントを有するものであり、
前記インナージョイントは、外周面にらせん状の溝が刻設され、円柱の中心軸にはインナージョイントの両端に通じる冷却水を導入する流路を有し、
前記流路の出口に当たるインナージョイント先端部端面には、流路出口穴から放射状かつカーブして外周方向に8本に分岐する溝が刻設されており、
前記8本の分岐溝はそれぞれ前記外周面に刻設されたらせん溝に連通し、インナージョイント端部の入口から導入された冷却水は、中心軸に沿って該チップ先端へ向かい、先端部端面の8本に分岐する溝を経由しつつ該チップ先端部を冷却し、チップとインナージョイントに挟まれたらせん状の流路に沿って外周を冷却するものである
射出鋳造部品を製造する鋳造装置に用いられる円柱形状の強制冷却プランジャーチップ。」

さらに、特許異議申立人が平成29年12月11日に提出した意見書には、訂正請求を受けて新たに甲第9号証が添付され、当該追加された書証には、以下の事項が記載されている。

ケ 甲第9号証(特開平3-198965号公報)
A
アルミダイカストマシンを対象とした金型温度管理方法であって、金型キャビティ内に充填された溶湯から受ける熱量が大きい中子ピン類などの突出型部を局部的に冷却コントロールする方法に関すること。(1ページ左欄末行?右欄6行の記載を参照。)
B
第1図には金型温度管理方法を実施する温度管理装置の概要図が図示されると共に、図中の金型Bが冷却パイプを有し、冷却水を循環する循環装置a_(4)や高圧水供給装置a_(2)を備え、これらを制御する制御装置a_(5)で全体が構成され、冷却水の循環は、第5図の動作タイムチャートに図示されるとおり、高速射出信号のONと同時に高圧水供給電磁弁がONとされ、高圧水供給時間タイマーの設定時間終了により高圧水供給電磁弁はOFFされる。(特に、5ページ左上欄第1行?左下欄第13行の記載や、第1図を参照。)
C
「高圧水供給装置による冷却水の冷却穴への供給終了後、即ち金型キャビティ内に充填された製品素材溶湯の凝固終了後、残留冷却水除去装置により冷却穴内に高圧エアーを送り込んで冷却穴内に残る冷却水を外部に押し出し排出することから、金型キャビティ内溶湯の凝固終了後における冷却水の残留によって生じる金型の必要以上の冷えすぎを確実に防ぐことが出来る。」(6ページ右上欄下から3行?左下欄第5行)

(4)取消理由通知に記載した取消理由についての判断
(ア)特許法第29条第2項について
本件発明2と引用発明8とを対比すると、引用発明8は、「冷媒螺旋通路」に相当する流路に冷却水を導入し連通することでプランジャーチップの強制冷却を果たすものではあるが、「鋳造1サイクル中に前記冷媒螺旋通路を循環する冷媒の循環量を制御」するとした「制御手段」であって、キャビティが溶湯で満たされる想定時間より若干後にて「冷媒の循環を開始」すること、及び溶湯が冷却され凝固する想定時間より若干後にて「冷媒の循環を停止」することに相当する事項を有していない。
これに対し、特許異議申立人は平成29年12月11日提出の意見書にて、冷媒の循環量を開始・停止することが甲第9号証に記載されていると主張しているものの、甲第9号証に記載の高圧水の開始及び停止は、上記(3)ケに摘記した事項によれば、高圧水循環開始は溶湯のキャビティ内射出と同時(摘記B)とされた点で少なくとも相違していることが明らかであり、上述の本件発明2が有する事項と同等の記載は他の甲第1号証ないし甲第7号証には見いだせない。
そうすると、本件発明2は、引用発明8を主たる発明とし、他の証拠に記載の公知の技術的事項を従とする取消理由通知(決定の予告)で示した場合、また、引用発明1を主たる発明とし、他の証拠に記載の公知の技術的事項を従とする取消理由通知のア-1で示した場合、もしくは、引用発明5を主たる発明とし、他の証拠に記載の公知の技術的事項を従とする取消理由通知のア-2で示した場合、のいずれであっても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明2を引用する本件発明3ないし6についても同様である。
そして、本件発明2は、係る発明特定事項を有することにより、【図6】を参照しつつ説明した【0048】に記載の「溶湯射出時に冷却は停止されているので、ボア温度は低下することなく略一定の温度にあり、射出後溶湯圧力が上昇する若干前の冷却開始時点Tsでボアピン10内の冷媒螺旋通路15に冷却水を循環させて冷却が開始するので、キャビティ6が溶湯で満たされる時点t1辺りのボア温度の上昇が抑制される。」及び【0052】に記載の「ボアピン10の外周面10aの温度(ボア温度)を効率良く冷却制御して温度変化を小さく抑えることは、結局ボアピン10の外周面10aに接するシリンダ部41を形成する溶湯を小さな温度変化で適切な温度に保つことができることであり、よって特にシリンダ部41に細かい気泡を含まず湯境のない組成の最適化を図ったシリンダブロック40を鋳造することができる。」という顕著な効果を奏するものである。

(イ) 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は訂正により請求項2に追加された「定常注入圧力(P1)を検知したときを基準として、キャビティ(6)が溶湯で満たされると想定される時点(t1)より若干前の時点を冷却開始時点(Ts)として前記冷媒螺旋通路(15)の冷媒の循環を開始し、」なる事項、及び「溶湯が冷却されて凝固すると想定される時点よりは若干後の時点を冷却停止時点(Te)として前記冷媒螺旋通路(15)の冷媒の循環を停止すること」なる事項は、いずれも明確性要件を満たさない旨、並びに、甲第9号証の記載事項により当業者が容易想到であり進歩性を満たさない旨主張する。しかし、前記追加された事項の記載にある「若干前」及び「若干後」に関して、各々「溶湯で満たされる」及び「溶湯が冷却されて凝固する」とした時点がどちらも正確に一つに定まらずばらつき幅が現実にはあるものと技術常識的に十分認識できる条件とされている前提を踏まえて「若干」との表現を用いた事情が理解できるため、かかる「若干」の記載が直ちに不明確とはいえず、また、他に「若干」の記載により発明の技術的範囲が著しく不明瞭となる事情も認められないので、当該主張は採り上げられない。また、進歩性についての主張を検討したが、上記の通り甲第9号証には、「定常注入圧力(P1)を検知したときを基準として、キャビティ(6)が溶湯で満たされると想定される時点(t1)より若干前の時点を冷却開始時点(Ts)として前記冷媒螺旋通路(15)の冷媒の循環を開始し、」とする点が記載されているものと認められず、本件発明2が、甲第1号証に記載された発明と、甲第2号証ないし甲第9号証の記載事項とに基づいて当業者が容易想到であるとはいえない。

(5)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件訂正により、請求項1は削除されたので、本件請求項1に係る特許に対して特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
ピストンが摺動するシリンダボア(42)を形成する円柱状のボアピン(10)を中子として金型内に備えてキャビティ(6)に溶湯を注入して内燃機関のシリンダブロック(40)を鋳造するシリンダブロック鋳造装置において、
前記ボアピン(10)には、その外周面(10a)の内側でかつボアピンの一方の円柱端面(10b)に近接して、ボアピンの円柱中心軸(C)を中心とする螺旋状をなして冷却用の冷媒螺旋通路(15)が形成され、
前記ボアピン(10)には、前記一方の円柱端面(10b)とは逆の他方の円柱端面の側から前記円柱中心軸(C)に沿って冷媒導入通路(13)が穿孔され、
前記一方の円柱端面(10b)に沿って、前記冷媒導入通路(13)の下流端から放射方向に分岐した複数本の冷媒放射通路(14)が設けられ、前記冷媒螺旋通路(15)の前記一方の円柱端面(10b)の側の冷媒流れ方向上流端環状部(15a)に、前記冷媒導入通路(13)が前記冷媒放射通路(14)を介して連通し、
鋳造1サイクル中に前記冷媒螺旋通路(15)を循環する冷媒の循環量を制御する制御手段(31)を備え、
前記キャビティ(6)に溶湯を注入する溶湯通路(5)と、前記冷媒螺旋通路(15)の前記冷媒流れ方向上流端環状部(15a)とが、前記ボアピン(10)の軸線方向で前記一方の円柱端面(10b)と同じ側に配置され、
前記制御手段(31)は、定常注入圧力(P1)を検知したときを基準として、キャビティ(6)が溶湯で満たされると想定される時点(t1)より若干前の時点を冷却開始時点(Ts)として前記冷媒螺旋通路(15)の冷媒の循環を開始し、溶湯が冷却されて凝固すると想定される時点よりは若干後の時点を冷却停止時点(Te)として前記冷媒螺旋通路(15)の冷媒の循環を停止することにより、前記キャビティ(6)への溶湯の注入タイミングに応じて前記冷媒螺旋通路(15)を循環する冷媒の循環量を制御することを特徴とするシリンダブロック鋳造装置。
【請求項3】
前記ボアピン(10)には、前記冷媒螺旋通路(15)の最も高い位置に下流端部を有し、同下流端部から冷媒導出通路(16)が延出して形成されていることを特徴とする請求項2記載のシリンダブロック鋳造装置。
【請求項4】
前記冷媒螺旋通路(15)は、通路断面が前記ボアピン(10)の外周面側が直線で円柱中心軸側が円弧状に膨らんで、円柱中心軸を通る仮想平面による断面がD字状をなし、冷媒螺旋通路(15)のD字状断面は、ボアピン(10)の軸線方向に途切れることなく隣接配置されていることを特徴とする請求項2または請求項3記載のシリンダブロック鋳造装置。
【請求項5】
アルミニウム合金を溶融した溶湯を高圧で前記金型内のキャビティ(6)に注入するアルミダイカスト製法を用いて前記シリンダブロック(40)を鋳造する装置であることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項記載のシリンダブロック鋳造装置。
【請求項6】
円柱状の前記ボアピン(10)の冷媒螺旋通路(15)が設けられる領域を囲んで円筒中子(20)が設けられ、該円筒中子(20)はボアピン軸線方向で、冷媒螺旋通路(15)の前記冷媒流れ方向上流端環状部(15a)から遠い側に偏して配置されることを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか1項記載のシリンダブロック鋳造装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-02-05 
出願番号 特願2012-35772(P2012-35772)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B22D)
P 1 651・ 121- YAA (B22D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川崎 良平  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 西村 泰英
平岩 正一
登録日 2016-05-20 
登録番号 特許第5937377号(P5937377)
権利者 九州柳河精機株式会社 本田技研工業株式会社
発明の名称 シリンダブロック鋳造装置  
代理人 中村 訓  
代理人 神澤 淳子  
代理人 中村 訓  
代理人 神澤 淳子  
代理人 江原 望  
代理人 神澤 淳子  
代理人 江原 望  
代理人 江原 望  
代理人 中村 訓  

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