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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E03C 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 E03C |
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管理番号 | 1339152 |
異議申立番号 | 異議2017-700513 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-05-24 |
確定日 | 2018-02-14 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6031641号発明「遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6031641号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6031641号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6031641号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成24年4月13日に特許出願され、平成28年11月4日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人池内義真(以下「申立人」という。)より請求項1ないし6に対して特許異議の申立てがされ、平成29年7月28日付けで取消理由(発送日同年8月3日)が通知され、その指定期間内である同年9月29日に意見書の提出及び訂正請求がされ、これに対して申立人より同年11月22日に意見書の提出がされたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 平成29年9月29日付け訂正請求書による訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「筒状にして側面方向に可撓性を備え、軸方向に剛性を備えるアウターチューブと、 該アウターチューブ内に摺動自在に収納される、側面方向に可撓性を備え、軸方向に剛性を備えたインナーワイヤと、 前記アウターチューブに固着され、且つアウターチューブの軸方向に沿って配設される金属線と、 から成る遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤにおいて、」と記載されているのを、 「筒状にして側面方向に可撓性を備え、軸方向に剛性を備え、槽体の排水口から排出される排水に晒されるアウターチューブと、 該アウターチューブ内に摺動自在に収納される、側面方向に可撓性を備え、軸方向に剛性を備えたインナーワイヤと、 前記アウターチューブに固着され、且つアウターチューブの軸方向に沿って配設される金属線と、 から成る遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤにおいて、」に訂正すること。 (請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 明細書の段落【0014】に「筒状にして側面方向に可撓性を備え、軸方向に剛性を備えるアウターチューブと、 該アウターチューブ内に摺動自在に収納される、側面方向に可撓性を備え、軸方向に剛性を備えたインナーワイヤと、 前記アウターチューブに固着され、且つアウターチューブの軸方向に沿って配設される金属線と、 から成る遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤにおいて、」と記載されているのを、 「筒状にして側面方向に可撓性を備え、軸方向に剛性を備え、槽体の排水口から排出される排水に晒されるアウターチューブと、 該アウターチューブ内に摺動自在に収納される、側面方向に可撓性を備え、軸方向に剛性を備えたインナーワイヤと、 前記アウターチューブに固着され、且つアウターチューブの軸方向に沿って配設される金属線と、 から成る遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤにおいて、」に訂正すること。 (3)訂正事項3 明細書の【発明の名称】の欄に記載した「排水配管」を「遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ」に訂正すること。 (4)訂正事項4 明細書の段落【0042】に記載した「アウターエンド2」を「アウターエンド8」に訂正すること。 2 訂正の適否について (1)訂正事項1について ア 訂正の目的の適否について 訂正事項1は、アウターチューブと槽体の排水口から排出される排水との関係が特定されていないものから、槽体の排水口から排出される排水に晒されるアウターチューブと、前記関係が具体的に限定されたものにしたといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて 上記アで説示したように、訂正事項1は、アウターチューブと槽体の排水口から排出される排水との関係を限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 訂正事項1に関して、本件明細書には「・・・排水口21は槽体20に生じた排水を下流側に排出する開口であって、・・・」(【0024】)及び「エルボ部材25は前記排水栓22を介して槽体20の排水口21と連結し、排水を更に下流側へと排出する為の流路を形成する部材であり、流入口26、流出口27と、チューブ管29及び後述するレリースワイヤ1が連結される接続口28を有している。・・・」(【0026】)との記載があり、槽体の排水口から排水を排出する点が記載されている。 また、本件明細書には、「チューブ管29は可撓性を備えた中空パイプ状の部材であって、一端はエルボ部材25の接続口28に、他端は操作部30にそれぞれ接続され、その内部にレリースワイヤ1を挿通させることで、レリースワイヤ1のガイドとして機能する。」(【0027】)及び「・・・排水口21を通水可能に開口すると、排水はエルボ部材25の流入口26、流出口27を通り、更に下流側の配管へと排出される。又、この時、流入口26より流入した排水は、流出口27へと流れると共に、該排水の一部が接続口28を介してチューブ管29内に流入する。」(【0038】)「上記チューブ管29内に流入した排水(湯)によって本発明の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ1に対し熱が加わった際、該熱によってアウターチューブ2が収縮しようとする。・・・」(【0039】)との記載があり、エルボ部材25の接続口28に接続されるチューブ管29の内部にレリースワイヤ1を挿通させる点及び排水が接続口28を介してチューブ管29内に流入する点が記載されている。 さらに、図1には、レリースワイヤ1が、排水口の下方に配置されている構成が記載されているとともに、排水口の下方の空間がエルボ部材25の接続口28及びチューブ管29に通じている点が記載されている。 上記の記載から、レリースワイヤのアウターチューブが槽体の排水孔から排出される排水に晒されるといえるから、アウターチューブが「槽体の排水孔から排出される排水に晒される」点は、明細書又は図面に記載されているものと認められる。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的の適否について 訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図ることを目的としたものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて 上記アで説示したように、訂正事項2は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図ることを目的としたものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 上記(1)ウで説示したことと同様、アウターチューブが「槽体の排水孔から排出される排水に晒される」点は、明細書又は図面に記載されているものと認められる。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的の適否について 明細書の段落【0001】には、「本発明は、遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤに関するものである。」との記載があり、また段落【0013】には、「・・・アウターチューブの温度変化による伸縮を防ぎ、且つアウターチューブの収縮した場合における金属線の飛び出しを防止することが可能である遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤを提供することを課題とする。」との記載がある。さらに、明細書の段落【0022】には、「以下、図面を参照しながら本発明の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤを説明する。・・」との記載があり、いずれの図面にも1の番号で示された「遠隔操作式水栓装置のレリースワイヤ」が示されている。 しかしながら、明細書のいずれの段落にも「排水配管」との記載はなく、図面にも「排水配管」として指示される部材の記載はない。加えて、願書に添付した特許請求の範囲の末尾は、「遠隔操作式配水栓装置のレリースワイヤ」である。 ところで、訂正前の明細書の【発明の名称】である「排水配管」は、平成28年2月19日付け手続補正書により「遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ」から補正されたものであり、今回の訂正は、上記補正前の【発明の名称】である「遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ」に戻そうとするものある。 したがって、訂正前の【発明の名称】の欄に記載された「排水配管」は、明細書の【発明の詳細な説明】、及び願書に添付した特許請求の範囲の記載と整合していない。そして、平成28年2月19日付提出に係る手続補正書において補正時に錯誤によって誤記したものであると認められる。 よって、訂正事項3は、誤記の訂正を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて 上記アで説示したように、訂正事項3は、誤記の訂正を目的としたものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 「遠隔操作式配水栓装置のレリースワイヤ」は、上記アで説示したように明細書又は図面に記載されていることは明らかである。 (4)訂正事項4について ア 訂正前の明細書の段落【0042】に記載された「アウターエンド2」は、同段落、段落【0029】、【0034】、【0036】、【0039】における「アウターエンド8」の記載と整合しておらず、明細書の他の部分や願書に添付した図面の記載から符号2が「アウターエンド」を示すものでないことは明らかである。 よって、当該「アウターエンド2」は「アウターエンド8」の誤記である。 したがって、訂正事項4は、誤記の訂正を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて 上記アで説示したように、訂正事項4は、誤記の訂正を目的としたものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 「アウターエンド8」は、明細書又は図面に記載されている事は明らかである。 訂正事項1に係る訂正前の請求項1?6について、請求項1の記載を請求項2?6が直接的または間接的に引用するものであって、訂正事項1は、請求項1を訂正するものであるから、訂正前の請求項1?6に対応する訂正後の請求項1?6は、一群の請求項である。 (5)まとめ したがって、上記訂正請求による訂正事項1ないし4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1ないし6について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件訂正発明 上記訂正請求により訂正された請求項1ないし6に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等という。)は、以下のとおりのものである(下線は訂正箇所を示す)。 (1)本件訂正発明1 【請求項1】 筒状にして側面方向に可撓性を備え、軸方向に剛性を備え、槽体の排水口から排出される排水に晒されるアウターチューブと、 該アウターチューブ内に摺動自在に収納される、側面方向に可撓性を備え、軸方向に剛性を備えたインナーワイヤと、 前記アウターチューブに固着され、且つアウターチューブの軸方向に沿って配設される金属線と、 から成る遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤにおいて、 前記金属線は前記アウターチューブよりも温度変化による伸縮率の低い金属より成り、 前記アウターチューブは端部に硬質部材を有し、 前記硬質部材は、前記アウターチューブの軸方向の収縮により前記アウターチューブの端部より金属線が飛び出そうとする際金属線と当接し、当該金属線の飛び出しを防止することを特徴とする遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ。 (2)本件訂正発明2 【請求項2】 前記アウターチューブにアウターエンドがインサート成形され、 前記硬質部材がアウターチューブとアウターエンド間に配置固定されていることを特徴と する請求項1に記載の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ。 (3)本件訂正発明3 【請求項3】 前記硬質部材が金属製のワッシャーであることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ。 (4)本件訂正発明4 【請求項4】 前記硬質部材が、アウターチューブ内部に圧入される筒部分と外側方向に突出して構成されるフランジ部を有することを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ。 (5)本件訂正発明5 【請求項5】 前記硬質部材が、アウターチューブ外周に嵌合される筒部分と内側方向に突出して構成されるフランジ部を有することを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ。 (6)本件訂正発明6 【請求項6】 前記硬質部材が、アウターチューブ内周及び外周に嵌め込まれる形状であることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ。 2 取消理由の概要 訂正前の請求項1ないし6に係る特許に対して平成29年7月28日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)判断1 ア 本件特許発明1について (ア)本件特許発明1は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき、容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (イ)本件特許発明1は、甲第3号証、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき、容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 イ 本件特許発明2ないし6について 本件特許発明2ないし6は、甲1号証ないし甲6号証に記載された発明に基づき、容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (2)判断2 ア 本件特許発明1について (ア)本件特許発明1は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき、容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (イ)本件特許発明1は、甲第3号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき、容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 イ 本件特許発明2ないし6について (ア)本件特許発明2ないし6は、甲第1号証、甲第2号証、及び甲第4号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づき、容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (イ)本件特許発明2ないし6は、甲第3号証、甲第2号証、及び甲第4号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づき、容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 3 甲号証の記載 甲第1号証:実願平1-50146号(実開平2-140019号) のマイクロフィルム 甲第2号証:実願昭63-117041号(実開平2-38515号 )のマイクロフィルム 甲第3号証:特開平7-224451号公報 甲第4号証:特開2006-234123号公報 甲第5号証:実公昭56-14428号公報 甲第6号証:特開平8-177100号公報 甲第7号証:特公平1-52604号公報 (1)甲第1号証について 甲第1号証には、図面とともにつぎの記載があり、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 ア 「この従来のレリースワイヤは、コアコイル、ガイドコイルの可撓性とアウタチューブの柔軟性とにより湾曲配設が可能であり、操作部の操作でコアコイルに押圧力を掛けてガイドコイル内を摺働させることにより動作部に操作部を操作を伝達するように操作部、動作部間に取り付けられるものである。」(第2頁第10?16行) イ 「急激な湾曲配設が可能な取付性の良好なレリースワイアを提供することにある。」(第3頁第12?14行) ウ 「本考案に係るレリースワイアの実施例を図面に基いて説明する。この実施例では、第4図に示すように、浴槽、洗面器等の排水栓の栓蓋開閉装置に組込まれたものを示してある。」(第5頁第3?7行) エ 「・・実施例のレリースワイアWは、操作部C側の硬質性部Waと・・動作部A側の軟質性部Wbとから構成されている。」(第6頁第2?4行) オ 「硬質性部Waは、・・・鋼線等の線状材でコイル状に形成されたコアコイル1と、平鋼線等の平線状材でコイル状に形成され内部にコアコイル1が摺働可能に挿通されたガイドコイル2と、ガイドコイル2の外側にビニル等の合成樹脂材が焼付け等により被覆されたアウタチューブ3とからなる。」(第6頁第5?11行) カ 「軟質性部Wbは、硬質性部Waのコアコイル1、アウタチューブ3を共通にし、ガイドコイル4を平線状材の小幅のものを用いる等して径を硬質性部Wa側のガイドコイル2より小径にしてあり、小径となったガイドコイル4とアウタチューブ3との間に銅細線を編組してなる等のシールド材5を介装してある。」(第6頁第12?18行) キ 「動作部A側の軟質性部Wbにおいてガイドコア1とアウタチューブ3との間にシールド材5を介装したことにより、アウタチューブの被覆の際にアウタチューブ3の内側面がガイドコイル4の線間隙に浸入するのをシールド材5で遮蔽して防止することができるため硬質性部Wa側のガイドコイル2に比しこのガイドコイル4の可撓性の低下が防止される。」(第7頁第17行-第8頁第4行) ク 図面について (ア)第1図は、本考案に係るレリースワイアの実施例を示す一部省略の断面図である。当該図のうちのシールド材5は、軟質性部Wbにおいて、アウターチューブ3の軸方向に沿って配設されている点が看てとれる。 (イ)第4図は第1図の取付例を示す側面断面図である。当該図のうちの軟質性部Wbのアウタチューブ3は、排水口を開閉する栓蓋Aaに近い側に配設された点が看てとれる。 ケ 甲1発明の認定 a 上記ク(イ)の点をふまえると、軟質性部Wbのアウターチューブが、排水口を開くと排出される排水に晒されることは明らかである。 b 上記アないしク及び上記ケのaの事項から、以下の発明(甲1発明)が記載されていると認められる。 (甲1発明) 「硬質性部Waと軟質性部Wbから構成されたレリースワイヤWであり、 硬質性部Waは、鋼線等の線状材でコイル状に形成されたコアコイル1と、平鋼線等の平線状材でコイル状に形成され内部にコアコイル1が摺働可能に挿通されたガイドコイル2と、ガイドコイル2の外側にビニル等の合成樹脂材が焼付け等により被覆されたアウタチューブ3とを有し、 軟質性部Wbは、排水栓に近い側に配設され、銅細線を編組してなるシールド材5を介装して、柔軟性を備えるアウターチューブ3が被覆された可撓性を備えるガイドコイルと、ガイドコイル内を操作部の操作で押圧力を掛けて摺働させるコアコイルとを有し、前記シールド材5は、アウターチューブ3の軸方向に沿って配設され、アウターチューブ3が排出される排水に晒されている、 排水栓の栓蓋開閉装置のレリースワイア。」 (2)甲第2号証について 甲第2号証には、図面とともにつぎの記載があり、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。 ア 「本考案は、自動車など各種産業機器におけるコントロールケーブル用導管の改良に関する。」(第1頁16?17行) イ 「従来よりコントロールケーブル用導管は、第2・・に示したように該導管内摺働自在に挿通された、内索1の引き操作によって生ずる張力に対する反力を保持できるように鋼線からなる補強部材である補強線6と該補強部材を埋没した合成樹脂から成る被覆3が設けられている。導管2の両端(他端は図示省略)には操作側と受動側の取付板などに固定するための管状のキャップ4が固着されるが、該キャップは製造が容易であることから比較的強度の高い合成樹脂の一体成型などによって導管端部に固着される。(第2頁第2?12行) ウ 「操作の繰返しによって導管の合成樹脂部分が圧力により縮み補強線が突き出してくるので、ついに補強線が合成樹脂製のキャップ部材内に突きささり、やがては貫通して、外に飛び出してしまう。」(第2頁14?18行) エ 「本考案のコントロールケーブル用導管は、管状キャップ部材と導管端面との間に金属製ワッシャー状のストッパーを設けた構造が採用されている。」(第2頁20行?第3頁第3行) オ 「第1図において、1は可撓性の内索、2は内索1が摺働自在に挿通されている可撓性の導管、4は導管(他端は図示省略)に固着された比較的硬度の高い合成樹脂のキャップ部材である。」(第3頁第12?16行) カ 「本考案によれば、操作の繰返しによって補強線6がA方向に突出しようとしても、ストッパ-7によってとめられる。」(第3頁19行-第4頁1行) キ 図面について 第1図には、ストッパー7が被覆3とキャップ4との間に配置固定されている点が看てとれる。 ク 甲2発明の認定 上記アないしキの事項から、以下の発明(甲2発明)が記載されていると認められる。 (甲2発明) 「被覆3は端部に金属製ワッシャー状のストッパー7を設け、金属製ワッシャー状のストッパー7は、被覆3の軸方向の収縮により被覆3の端部より補強線が飛び出そうとする際補強線と当接し、当該補強線の飛び出しを防止し、 被覆3にキャップ4が一体成型され、 金属製ワッシャー状のストッパー7が被覆とキャップ4との間に配置固定されているコントロールケーブル用導管」 (3)甲第3号証について 甲第3号証には、図面とともにつぎの記載があり、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。 ア 「【請求項1】 排水栓の上端開口にケレップを上下動自在に取り付け、レリーズのインナーケーブルの一端にロッドを設けると共にインナーケーブルの他端に操作具を設け、ロッドの先端をケレップに接続し、操作具の上下動にケレップを応動自在に形成して成る排水装置において、排水栓の下端に連結される排水パイプを屈曲して排水パイプの屈曲部にケレップの直下方に位置する取付け部を形成し、取付け部にロッドホルダーを配設すると共に排水パイプの内外に開口しケレップの真下に位置する上下方向の通孔をロッドホルダーに形成し、この通孔にロッドを上下動自在に挿着して成ることを特徴とする排水装置。 【請求項2】 レリーズのアウターケーシングを樹脂で、インナーケーブルを金属でそれぞれ形成して成ることを特徴とする請求項1に記載の排水装置。」 イ 「【0012】図2に示すようにレリーズ3はチューブ状のアウターケーシング12の内部に金属製のインナーケーブル4を挿通させて形成されるものである。アウターケーシング12は屈曲自在な樹脂で形成されており、このようにアウターケーシング12を樹脂で形成することで、金属製のアウターケーシング12を用いるよりもレリーズ3を安価に作成することができる。」 ウ 「【0013】レリーズ3のインナーケーブル4の一方の端部には、金属製の円柱棒などで形成されるロッド5が取り付けてある。またインナーケーブル4の他端には操作具6が連結してある。操作具6は、例えばボール19の上面開口の周縁等にナット31で取り付けられた本体筒17に上下動自在に嵌着されているものであり、その上端には摘み部18が設けてある。そしてボール19の裏面に突出した本体筒17の下端にレリーズ3のアウターケーシング12の端部をワッシャ32を介してナット24で固定すると共に操作具6の下端にインナーケーブル4の端部を連結するようにする。・・・」 エ 「【0016】レリーズ3に予め挿通しておいたナット28とネジ部10cとをワッシャ32を介して螺合してロッドホルダー10のフランジ部10dとナット28とで取付け孔25の周縁の排水パイプ7を挟持する」 オ 甲3発明の認定 上記アないしエの事項から、以下の発明(甲3発明)が記載されていると認められる。 甲3発明 「排水栓の上端開口にケレップを上下動自在に取り付け、レリーズのインナーケーブル4の一端にロッドを設けると共にインナーケーブル4の他端に操作具を設け、ロッドの先端をケレップに接続し、操作具の上下動にケレップを応動自在に形成して成る排水装置におけるレリーズ3であって、樹脂で形成されたチューブ状のアウターケーシング12の内部に金属製のインナーケーブル4を挿通させて形成されるものであるレリーズ3。」 (4)甲第4号証について 甲第4号証には、申立人が主張するとおり、以下の発明(以下、「甲4技術」という。)が記載されている。(申立書11頁6-22行) 甲4技術 「アウターチューブ5の両端部に、鍔状に外側方向に突出した鍔部7と、外周面に雄ねじ8を刻設した、金属材から成るアウターエンド6を圧入固定して備える遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ。」 (5)甲第5号証について 甲第5号証には、申立人が主張するとおり、以下の技術(以下、「甲5技術」という。)が記載されている。(申立書11頁23行-12頁13行) 甲5技術 「管状ストッパ8が、補強部材4内部に挿入される挿入部8aと外側方向に突出して構成される鍔部8bを有することを特徴とするコントロールケーブルの導管。」 (6)甲第6号証について 甲第6号証には、申立人が主張するとおり、以下の技術(以下、「甲6技術」という。)が記載されている。(申立書12頁14-29行) 甲6技術 「中加締金具1”が、アウターチューブ51外周に勘合(「嵌合」の誤記と認める)される筒部分と内側方向に突出して構成されるフランジ部を有することを特徴とする排水栓装置用レリース。」 (7)甲第7号証について 甲第7号証には、以下の技術(以下、「甲7技術」という。)が記載されている。(申立書13頁1-18行) 甲7技術 「アウターケーシングが加熱されると後結晶化のために収縮し、アウターケーシングの両端から金属線が突出する」点 4 判断 (1)取消理由通知に記載した取消理由(特許法第29条第2項)について ア 本件訂正発明1について (ア)対比・判断 a 甲1発明を主引用例とした場合 (a)対比 本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「排水栓の栓蓋開閉装置のレリースワイア」は、本件訂正発明1の「遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ」に相当し、同様に「コアコイル1」は、「インナーワイヤ」に相当する。 また、甲1発明の軟質性部wbの「アウターチューブ3」が排水栓に近い側に配設され、排出される排水に晒されることからみて、軟質性部Wbの「アウターチューブ3」が、本件訂正発明1の「槽体の排水口から排水される排水に晒されるアウターチューブ」に相当する。 さらに、甲1発明の「アウターチューブ」の「軸方向に沿って配設されている銅細線を編組してなるシールド材」が、本件訂正発明1の「アウターチューブの軸方向に沿って配設される金属線」に相当する。 そうすると、両者は、少なくとも以下の点で相違する。 相違点1 金属線が、本件訂正発明1では、アウターチューブに固着され、前記アウターチューブよりも温度変化による伸縮率の低い金属より成るものであるに対して、甲1発明では、アウターチューブに固着されているかどうか不明であり、また、アウターチューブよりも温度変化による伸縮率の低い金属より成るものであるかどうか不明である点。 相違点2 排水口から排出される排水に晒されるアウターチューブが、本件訂正発明1では、端部に硬質部材を有し、前記硬質部材は、前記アウターチューブの軸方向の収縮により前記アウターチューブの端部より金属線が飛び出そうとする際金属線と当接し、当該金属線の飛び出しを防止するのに対して、甲1発明では、端部に硬質部材を有していない点。 (b)判断 事案にかんがみ、相違点2から検討する。 甲2発明は、引き操作が繰返され、合成樹脂部分が圧力により縮むことが起因となって被覆3の端部より補強線が飛び出そうとすることを防止することを課題とし、その課題を解決するためにストッパー7(本件訂正発明1の硬質部材に相当するもの)を設けるものである。 しかしながら、甲2発明は、上記のとおり補強線の飛び出しを防止する点では本件訂正発明1とは共通するものの、甲2発明は、コントロールケーブル用導管であって、そのアウターチューブは、排水口から排出される排水に晒されるものではない。よって、甲2発明は、本件訂正発明1とは異なり、排水に晒されるアウターチューブを有しておらず、しかも、アウターチューブが排水に晒されることにより軸方向の収縮が生じて、アウターチューブの端部から金属線が飛び出すものでもない。 そして、甲1発明のアウターチューブは排水口から排出される排水に晒されるものであるから、前記アウターチューブに代えて、甲2発明の排水口から排出される排水に晒されるものではないアウターチューブを適用することに、阻害要因があると言うべきである。 また、その他の証拠である甲第3号証ないし甲第7号証のいずれにも、相違点2に係る本件訂正発明1の構成は記載も示唆もされていない。 そして、本件訂正発明1は、上記構成によって、アウターチューブが熱等によって収縮しようとする際、該アウターチューブ端部より飛び出そうとする金属線を硬質部材が押さえつけるという顕著な効果を有するものである。 (c)小括 以上のとおりであるので、他の相違点を検討するまでもなく,本件訂正発明1は、甲1発明ないし甲3発明、並びに甲4技術ないし甲7技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 b 甲3発明を主引用例とした場合 (a)対比 本件訂正発明1と甲3発明を対比すると、甲3発明の「アウターケーシング12」及び「インナーケーブル4」は、本件訂正発明1の「アウターチューブ」及び「インナーワイヤ」にそれぞれ相当する。 そうすると、両者は、少なくとも以下の点で相違する。 相違点1’ 本件訂正発明1では、アウターチューブに固着され、アウターチューブの軸方向に沿って金属線が配設されるとともに、前記金属線がアウターチューブよりも温度変化による伸縮率の低い金属より成るのに対して、甲3発明では、アウターチューブに金属線が配設されていない点。 相違点2’ アウターチューブが、本件訂正発明1では、槽体の排水口から排出される排水に晒され、端部に硬質部材を有し、前記硬質部材は、前記アウターチューブの軸方向の収縮により前記アウターチューブの端部より金属線が飛び出そうとする際金属線と当接し、当該金属線の飛び出しを防止するものであるのに対して、甲3発明では、槽体の排水口から排出される排水に晒されておらず、アウターチューブの端部に硬質部材を有していない点 (b)判断 事案にかんがみ相違点2’から検討する。 甲2発明は、引き操作が繰返され、合成樹脂部分が圧力により縮むことが起因となって被覆3の端部より補強線が飛び出そうとすることを防止することを課題とし、その課題を解決するためにストッパー7(本件訂正発明1の硬質部材に相当するもの)を設けるものである。 しかしながら、甲2発明は、上記a(b)のとおり補強線の飛び出しを防止する点では本件訂正発明1とは共通するものの、甲2発明は、コントロールケーブル用導管であって、そのアウターチューブは、排水口から排出される排水に晒されるものではない。よって、甲2発明は、本件訂正発明1とは異なり、排水に晒されるアウターチューブを有しておらず、しかも、アウターチューブが排水に晒されることにより軸方向の収縮が生じて、アウターチューブの端部から金属線が飛び出すものでもない。 したがって、仮に、甲3発明に甲2発明を適用しても、甲3発明のアウターチューブ及び甲2発明のアウターチューブのいずれもが排水に晒されるものではないから、相違点2’に係る本件訂正発明1の構成(排水に晒されるアウターチューブを含む構成)とすることは容易になし得ることではない。 また、その他の証拠である甲第1号証、並びに甲第4号証ないし甲第7号証のいずれにも、相違点2’に係る本件訂正発明1の構成は記載も示唆もされていない。 そして、本件訂正発明1は、上記構成によって、アウターチューブが熱等によって収縮しようとする際、該アウターチューブ端部より飛び出そうとする金属線を硬質部材が押さえつけるという顕著な効果を有するものである。 (c)異議申立人の主張について 申立人は、平成29年11月22日付け意見書において、訂正により新たに生じた相違点「軸方向に剛性を備え、槽体の排水口から排出される排水に晒されるアウターチューブ」については、甲第1号証に記載されているとおり周知であること、甲第1号証に記載されたものは、操作部Cにおける押ボタンを支持する支持軸Cbと支持軸Cbを操作部C側へ引長するバネCc等の機構はアウターチューブ3の軟質性部Wb側に持ってくることは当業者では何ら困難性はないこと、エルボ部材25等の排水の流路にアウターチューブが排水に晒される装置構成は、甲第1号証の図4、甲第3号証の図5、甲第4号証の図5及び甲第6号証の図4等に記載されており、アウターチューブが排水に晒されるのが従来公知の構成であることから、本件訂正発明は、かかる公知の構成により公知の課題を甲第1号証による公知の構成で解決するものに他ならず、当業者にとって何ら困難性はないと述べ、訂正により新たに生じた相違点「軸方向に剛性を備え、槽体の排水口から排出される排水に晒されるアウターチューブ」については、依然として、甲第3号証に記載された発明に同一の技術分野である甲第1号証発明及び甲第2号証発明を適用したもので進歩性を有さない旨主張している。 しかしながら、申立人が主張するように甲1発明に記載の「軸方向に剛性を備え、槽体の排水口から排出される排水に晒されるアウターチューブ」の技術が、周知であって、仮に甲3発明に適用することができたとすると、その結果、アウターチューブは「槽体の排水口から排出される排水に晒されるアウターチューブ」となるが、さらに甲2発明を適用する場合には、「槽体の排水口から排出される排水に晒されるアウターチューブ」に対して、甲2発明の排水口から排出される排水に晒されるものではないアウターチューブを適用することになるから、上記a(b)で説示したように、阻害要因がある。 したがって、申立人の上記主張を採用することができない。 (d)小括 以上のとおりであるので、本件訂正発明1は、甲3発明と、甲1発明及び甲2発明、並びに甲4技術ないし甲7技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件訂正発明2ないし6について 本件訂正発明2ないし6は、本件訂正発明1を減縮したものであるから、本件訂正発明1と同様の理由で、本件訂正発明2ないし6は、上記甲1発明ないし甲3発明、並びに甲4技術ないし甲7技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について ア サポート要件(特許法36条6項1号)について 申立人は訂正前の特許請求の範囲に関し、特許異議申立書(24頁1-13行)において、本件の特許請求の範囲の請求項1には、「アウタチューブに固着され、且つアウターチューブの軸方向に沿って配設される金属線」なる記載があるが、金属線がアウターチューブに固着されているのであれば、本件が課題とする「アウターチューブが熱等によって収縮しようとする際、金属線がアウターチューブ端部より飛び出す」ことが生じない。そのため、アウターチューブに金属線が固着することと、アウターチューブから金属線が滑って飛び出すことには記載に矛盾がある。しかし、アウターチューブから金属線が滑って飛び出すようなアウターチューブに対する金属線の固着については一切記載もなく、そもそも固着しているのであれば課題が生じ得ない。したがって、請求項1および、請求項1に従属する請求項2?6は、出願当初明細書に記載の解決課題を解決するものではなく、いわゆるサポート要件(特許法第36条第6項第1号)を満たす発明ではない、と主張している。 上記主張について検討する。 請求項1には、「アウタチューブに固着され・・る金属線」と記載されているとともに、「前記アウターチューブの軸方向の収縮により前記アウターチューブの端部より金属線が飛び出そうとする」とも記載されている。したがって、本件訂正発明1は、アウターチューブに金属線が固着される一方で、アウターチューブの軸方向の収縮によりアウターチューブの端部より金属線が飛び出す発明、すなわち、金属線がアウターチューブに当初固着されていても、金属線とアウターチューブの固着する力を、アウターチューブの軸方向に収縮しようとする力が上回った場合に、アウターチューブと金属線が固着の状態を保つことができず金属線がアウターチューブ端部より飛び出してしまうことを前堤とする発明である(訂正明細書【0010】参照)。 したがって、本件訂正発明1は、アウターチューブに固着されていても、「アウターチューブが熱等によって収縮しようとする際、金属線がアウターチューブ端部より飛び出す」ことは場合によって生じることもあるから、申立人の、「アウターチューブに金属線が固着することと、アウターチューブから金属線が滑って飛び出すことには記載に矛盾がある」との上記主張は失当である。 そして、本件訂正発明1は、「金属線がアウターチューブ端部より飛び出」しを防止することを課題(訂正明細書【0013】参照)とし、当該課題に対して、「アウターチューブは端部に硬質部材を有」するという構成で解決する、すなわち「硬質部材」が「飛び出そうとする金属線に当接し、金属線の飛び出しを防止」しようとするものである。 よって、本件訂正発明1は、当初明細書に記載の課題を生じるものであって、その課題を解決する構成を有している。 したがって、本件訂正発明1および本件訂正発明2ないし6は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許法第36条第6項第1号(いわゆるサポート要件)を満たす発明である。 イ 甲7に基づく主張について 申立人は、特許異議申立書(23頁9-29行)において、金属線がアウターチューブから飛び出すという課題に対して硬質部材を用いて課題を解決することは公知技術であり、また、甲第7号証には、アウターケーシングが加熱されると後結晶化のために収縮し、アウターケーシングの両端から金属線が突出する点が記載されており、そのため、公知の課題である、熱でのアウターチューブの軸方向への収縮に起因する金属線の飛び出しについて、公知技術であるワッシャである硬質部材をアウターチューブの端部に適用して、特許発明に容易に到達することができる旨主張している。 上記主張について検討する。 上記第3の4(1)ア(ア)a及びb並びにイにおいて説示したように、本件訂正発明と甲1発明との相違点2及び本件訂正発明と甲3発明との相違点2’に係る本件訂正発明1の構成は、いずれも、甲第7号証には記載も示唆もされておらず、甲第7号証を考慮しても、本件訂正発明は、当業者が容易に発明をすることができたものではないものである。 したがって、申立人が主張するように、甲第7号証に上記の点が記載されているとしても、本件訂正発明に到達することができるということができない。また、金属線がアウターチューブから飛び出すという課題に対して硬質部材を用いて課題を解決することが公知であることを考慮したとしても、同様である。 したがって、甲7号証に基づいて本件訂正発明に容易に到達することができるとの上記主張は失当である。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ 【技術分野】 【0001】 本発明は、遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤに関するものである。 【背景技術】 【0002】 遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤは、操作部と、浴槽や洗面ボウル等の槽体の排水口を連絡するように配置され、該操作部の押動操作を、排水口に設けられた弁体へと伝えることによって弁体の開口/閉口を行うことを可能とするものである。 又、遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤは、アウターチューブとインナーワイヤより構成され、アウターチューブの端部にはアウターエンドが備えられている。 前記アウターチューブは合成樹脂より成り、円筒状にして側面方向に可撓性を備え、軸方向に剛性を備えている。 インナーワイヤは金属より成り、前記アウターチューブ内に摺動自在に収納されるワイヤー部材であり、側面方向に可撓性を備え、軸方向に剛性を備えている。 アウターエンドは前記アウターチューブ端部に取り付けられる部材であって、アウターチューブと操作部等の、遠隔操作式排水栓装置のその他の部材との接続を行う。 【0003】 上記構成の遠隔操作式排水栓装置では、前記操作部の押動操作によって、インナーワイヤがアウターチューブ内を摺動し、弁体を突き上げることによって、弁体の開口/閉口を行うことが出来る。 【0004】 上記遠隔操作式排水栓装置に配置されるレリースワイヤは、従来、アウターエンドを金属製とし、アウターチューブにカシメ固定していたが、当該カシメ固定ではアウターチューブに鋭利な金属が食い込み、破れが発生するという問題が生じていた。 そこで、文献1に記載の構造においては、アウターエンドを合成樹脂製とし、アウターチューブ端部にインサート成形することで当該破れに関する問題を解決している。又、アウターエンドを合成樹脂製としてアウターチューブ端部にインサート成形することによって、金属製アウターエンドよりも素材単価を下げることを可能としている。 【0005】 ところで、遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤは、上記の通り洗面ボウルや浴槽等の槽体の排水口と連結する為、当該排水口からの湯等にレリースワイヤが晒される。この為、直接湯等に晒されるアウターチューブが伸縮し、軸方向長さが変化しまうことがある。(加熱により膨張するか収縮するかは材質によって異なる) 一方、インナーワイヤは前記アウターチューブ内にある為、直接湯等に晒されない。この為、インナーワイヤは前記アウターチューブよりも熱による影響が小さく、軸方向への伸縮の割合が低い。 即ち、当該レリースワイヤが湯等に晒された場合、アウターチューブのみ大きく軸方向長さが変動する為、弁体の開口/閉口に以下の問題が生じる。 【0006】 アウターチューブが収縮し、軸方向長さが短くなった場合、インナーワイヤの突き出し長さがアウターチューブに対して相対的に長くなる。その為、インナーワイヤがアウターチューブより(好適な長さより長く)飛び出した状態となり、弁体を良好に閉口することが出来なくなるという問題が生じる。 逆に、アウターチューブが膨張し、軸方向長さが長くなった場合、インナーワイヤの突き出し長さがアウターチューブに対して相対的に短くなる。その為、インナーワイヤがアウターチューブより(好適な長さより短く)飛び出した状態となり、弁体を良好に開口することが出来なくなるという問題が生じる。 【0007】 尚、上記問題は、アウターチューブが合成樹脂製であって、インナーワイヤが金属である場合は、材質の膨張率の違いにより顕著に現れる。 【0008】 そこで、文献2に記載の構造においては、アウターチューブ内部にステンレス線材等の、アウターチューブよりも温度変化による伸縮率の低い金属線を網目状に配置し、アウターチューブの伸縮を抑えることによって上記問題の解決を図っている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0009】 【特許文献1】特開2007-204915号 【特許文献2】特開2002-147430号 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 しかし、文献2に記載の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤにおいて、アウターチューブが軸方向に収縮しようとする力が、(金属線による)当該収縮を抑える力を上回った場合、金属線がアウターチューブ端部より飛び出してしまうという新たな問題が生じる。(図9) 即ち、文献2に記載の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤはアウターチューブの伸縮の割合をある程度抑えることが可能であるものの、該伸縮を完全に防ぐことは出来ない。 【0011】 又、当該内部に金属線を設けたアウターチューブ端部に、文献1に記載の構造のように合成樹脂製のアウターエンドが取り付けられている場合、前記飛び出した金属線がアウターエンドを貫通してしまい、動作不良を生じさせてしまうという更に新たな問題が生じる。 【0012】 特に、文献1に記載の遠隔操作式排水栓装置のように、レリースワイヤをガイドする為のチューブ管が設けられている場合、該チューブ管内にも湯等が流れる。その為、アウターチューブが湯等に晒される時間・面積が増大し、更にアウターチューブが軸方向に収縮する。 又、浴槽等に使用される全長の長い遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ、具体的には1000mm以上のレリースワイヤにおいては、アウターチューブの収縮する長さが全体として大きくなる。その為、金属線が飛び出す問題が顕著に現れる。(通常、洗面台等に使用されるレリースワイヤは250mm?400mm程度である。) 【0013】 そこで、本発明は上記新たな問題を踏まえ、アウターチューブの温度変化による伸縮を防ぎ、且つアウターチューブが収縮した場合における金属線の飛び出しを防止することが可能である遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤを提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0014】 上記課題を解決する為の請求項1に記載の発明は、筒状にして側面方向に可撓性を備え、軸方向に剛性を備え、槽体の排水口から排出される排水に晒されるアウターチューブと、 該アウターチューブ内に摺動自在に収納される、側面方向に可撓性を備え、軸方向に剛性を備えたインナーワイヤと、 前記アウターチューブに固着され、且つアウターチューブの軸方向に沿って配設される金属線と、 から成る遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤにおいて、 前記金属線は前記アウターチューブよりも温度変化による伸縮率の低い金属より成り、 前記アウターチューブは端部に硬質部材を有し、 前記硬質部材は、前記アウターチューブの軸方向の収縮により前記アウターチューブの端部より金属線が飛び出そうとする際金属線と当接し、当該金属線の飛び出しを防止することを特徴とする遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤである。 【0015】 請求項2に記載の発明は、前記アウターチューブにアウターエンドがインサート成形され、 前記硬質部材がアウターチューブとアウターエンド間に配置固定されていることを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤである。 【0016】 請求項3に記載の発明は、前記硬質部材が金属製のワッシャーであることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤである。 【0017】 請求項4に記載の発明は、前記硬質部材が、アウターチューブ内部に圧入される筒部分と外側方向に突出して構成されるフランジ部を有することを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤである。 【0018】 請求項5に記載の発明は、前記硬質部材が、アウターチューブ外周に嵌合される筒部分と内側方向に突出して構成されるフランジ部を有することを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤである。 【0019】 請求項6に記載の発明は、前記硬質部材が、アウターチューブ内周及び外周に嵌め込まれる形状であることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤである。 【発明の効果】 【0020】 請求項1に記載の発明によれば、アウターチューブが熱等によって収縮しようとする際、該アウターチューブ端部より飛び出そうとする金属線を硬質部材が押さえつける。そして、硬質部材は金属線の飛び出しを防止する。 請求項2乃至請求項5に記載の発明によれば、アウターチューブにアウターエンドがインサート成形されている為、アウターチューブとアウターエンドは離間することがない。又、前記硬質部材がアウターチューブとアウターエンド管に配置固定されている為、アウターチューブは金属線よりも収縮することが出来ない。 【図面の簡単な説明】 【0021】 【図1】本発明の一部省略施工断面図である。 【図2】本発明のレリースワイヤの要部断面図である。 【図3】本発明のレリースワイヤのアウターチューブ内部を示す一部破断側面図である。 【図4】図3のA-A’断面図である。 【図5】本発明のレリースワイヤの内部構造を示す断面図である。 【図6】本発明のレリースワイヤの第二実施形態を示す要部断面図である。 【図7】本発明のレリースワイヤの第三実施形態を示す要部断面図である。 【図8】本発明のレリースワイヤの第四実施形態を示す要部断面図である。 【図9】アウターチューブの収縮により内部の金属線が飛び出した状態を示す側面図である。 【発明を実施するための形態】 【0022】 以下、図面を参照しながら本発明の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤを説明する。尚、以下に記載する説明は理解を容易にする為のものであり、これによって本発明が制限して理解されるものではない。又、特に断りの無い限り、図1の設置状態を基準として上下左右を説明する。 【0023】 図1に示す遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ1は、以下に記載する槽体20の排水口21と、操作部30を連絡する。 【0024】 槽体20は浴槽であって、底部に円形の排水口21が開口し、該排水口21の下方にエルボ部材25が配置されている。又、排水口21は槽体20に生じた排水を下流側に排出する開口であって、排水栓22、弁体23が取り付けられている。尚、排水栓22には後述するレリースワイヤ1を取り付ける為の取付部24が設けられている。 【0025】 弁体23は排水口21の開閉を行う弁部材であり、後述する操作部30の操作により上下動し、排水口21を通水/止水可能な状態にする。 【0026】 エルボ部材25は前記排水栓22を介して槽体20の排水口21と連結し、排水を更に下流側へと排出する為の流路を形成する部材であり、流入口26、流出口27と、チューブ管29及び後述するレリースワイヤ1が連結される接続口28を有している。 又、エルボ部材25は流入口26より流入した排水を側方の流出口27へと排出し、流路を湾曲させる。 【0027】 チューブ管29は可撓性を備えた中空パイプ状の部材であって、一端はエルボ部材25の接続口28に、他端は操作部30にそれぞれ接続され、その内部にレリースワイヤ1を挿通させることで、レリースワイヤ1のガイドとして機能する。 【0028】 操作部30は任意の場所に配置される部材であって、操作ボタンなどを押し込むことによって、内部に設けられたスラストロック機構(図示せず)と呼ばれる機構を動作させ、後述するレリースワイヤ1を介して前記弁体23の上下動を制御することが可能な部材である。尚、当該スラストロック機構は内部に、上下方向に昇降自在で、前記操作ボタンの押し動作を受ける都度、上昇した状態を維持固定/固定を解除させ降下を繰り返す支持軸を備えている。 【0029】 上記排水口21と操作部30を連絡するレリースワイヤ1は、図2乃至図5に示すように、アウターチューブ2、インナーワイヤ6より構成され、端部に後述する硬質部材7、アウターエンド8、ロッド部11、ワイヤーカバー12を備える。 【0030】 アウターチューブ2はポリエチレンより成る円筒状にして側面方向に可撓性を備え、軸方向に剛性を備えており、且つ内層3と外層4に分かれている。又、アウターチューブ2は内層3と外層4の間に網目状の金属線5を備えており、押し出し成形によって成形される。即ち、アウターチューブ2は内側より内層3、金属線5、外層4の三層構造となっており、金属線5は内層3と外層4の間に埋設されている。 【0031】 金属線5は、図2乃至図5に示すように、アウターチューブ2の内層3と外層4の間において網目状に8本巻着されているステンレス線材であって、軸方向に剛性を有している。尚、金属線5はステンレス線材である為、前記アウターチューブ2の内層3と外層4の素材であるポリエチレンよりも温度変化による伸縮率が低い。 【0032】 インナーワイヤ6は前記アウターチューブ2内に摺動自在に収納されるワイヤー部材であり、側面方向に可撓性を備え、軸方向に剛性を備えた金属製の撚り線である。又、インナーワイヤ6は一端にロッド部11が取り付けられており、インナーワイヤ6は前記操作部30の押動操作に連動してアウターチューブ2内部を摺動すると共に、ロッド部11により弁体23を突き上げ、上下動させる。 【0033】 硬質部材7は前記アウターチューブ2の両端であって、前記金属線5の軸方向延長線上に配置される、中心にインナーワイヤ6を挿通する開口を有する略ドーナツ板状の金属製ワッシャーである。又、硬質部材7の前記開口の径は前記アウターチューブ2の内径と略等しく、硬質部材7の外径はアウターチューブ2の外径よりもやや大きい。 尚、硬質部材7は上記の通り金属線5の軸方向延長線上に配置される為、後述するように、アウターチューブ2が軸方向に収縮した際飛び出そうとする金属線5と当接する箇所に位置している。 【0034】 アウターエンド8は図2に示すように、前記硬質部材7を介してアウターチューブ2の両端にインサート成形されている合成樹脂製の部材である。尚、前記アウターエンド8は前記アウターチューブ2の両端にインサート成形され、一方が前記操作部30の下端に、他方が後述するワイヤーカバー12に固定される。 【0035】 ロッド部11は弁体23と当接して弁体23を上下動させる部材であり、レリースワイヤの一端であって取付部24側に設けられる。 【0036】 ワイヤーカバー12は前記アウターエンド8と螺合により連結し、インナーワイヤ6の座屈を防ぐと共に、内部にロッド部11の動作をガイドする空間を有する。 又、ワイヤーカバー12は前記排水栓22の取付部24に固定される。 【0037】 上記した遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ1は操作部30に押動操作を加えることによってアウターチューブ2の内側のインナーワイヤ6が摺動し、インナーワイヤ6端部に取り付けられたロッド部11が弁体23を下方より突き上げることによって排水口21を通水可能に開口する。又、この時、操作部30に設けられた図示しないスラストロック機構が作動し、弁体23を当該位置にて固定する。 そして、この状態においてもう一度操作部30に押動操作を加えると、スラストロック機構が再び作動し、前記固定が解除されることにより弁体23が下降し、排水口21を通水不可能に閉塞する。 以降、操作部30の押動を繰り返すことによって、弁体23の上下動を遠隔的且つ自在に操作することが出来る。 【0038】 上記操作部30の押動によって弁体23が上昇し、排水口21を通水可能に開口すると、排水はエルボ部材25の流入口26、流出口27を通り、更に下流側の配管へと排出される。 又、この時、流入口26より流入した排水は、流出口27へと流れると共に、該排水の一部が接続口28を介してチューブ管29内に流入する。 【0039】 上記チューブ管29内に流入した排水(湯)によって本発明の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ1に対し熱が加わった際、該熱によってアウターチューブ2が収縮しようとする。しかし、熱による収縮の割合が低い金属線5が内層3と外層4の間に固着されている為、アウターチューブ2の、軸方向の収縮が抑制される。 当該抑制力を超えてアウターチューブ2が収縮しようとしても、本発明ではアウターチューブ2の端部に金属製のワッシャーから成る硬質部材7が設けられている為、金属線5がアウターチューブ2の端部より飛び出そうとしても、硬質部材7が当接し、金属線5の飛び出しを押さえ付ける。従って、アウターチューブ2から金属線5が飛び出すことを防ぐことが出来る。 又、アウターチューブ2は端部にアウターエンド8がインサート成形されており、アウターチューブ2はアウターエンド8と離間不可能である為、アウターチューブ2は金属線5よりも収縮することが出来ない。その為、アウターチューブ2の収縮自体を更に抑制することが出来る。 【0040】 このように、本発明ではアウターチューブ2の軸方向の収縮が抑制出来る為、 アウターチューブ6の飛び出し長さが変わらず、弁体23の開閉を好適に行うことが出来る。 【0041】 尚、上記レリースワイヤ1のアウターチューブ2は熱収縮性を有するポリエチレンより成るが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば熱膨張性を有する材質より成るアウターチューブ2でも良い。この場合においては、例えば寒冷地等の低温下に配置された際のアウターチューブ2の収縮を防ぐと共に、当該収縮に伴う金属線5の飛び出しを防ぐことが出来る。 【0042】 又、本発明ではアウターエンド8を合成樹脂製としてインサート成形している為、カシメ固定によるアウターエンド8の破れが生じず、且つ部材単価を下げることが可能である。 【0043】 本発明の第一実施形態は上記のようであるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、発明の要旨を逸脱することのない範囲において自在に変更することが出来る。 【0044】 例えば、上記実施形態において、金属線5の硬質部材7は金属製のワッシャーであったが、図6に示す本発明の第二実施形態のように、金属製のワッシャーに換えて、アウターチューブ2内部に圧入される筒部分と外側方向に突出して形成されるフランジ部を有する硬質部材7として圧入しても良い。 【0045】 又、上記第二実施形態以外にも、図7に示す本発明の第三実施形態のように、硬質部材7を金属製のワッシャーに換えて、アウターチューブ2外周に嵌合する筒部分と内側にフランジ部を有する硬質部材7として、アウターチューブ2端部の外周に嵌め込んでも良い。 【0046】 又、上記第二、第三実施形態以外にも、図8に示す本発明の第四実施形態のように、硬質部材7を金属製のワッシャーに換えて、アウターチューブ2内周及び外周に嵌め込まれる形状の硬質部材7として、アウターチューブ2端部に嵌め込んでも良い。 【0047】 又、硬質部材7は金属製のものに限られるものではなく、金属線5が貫通しない程度の硬度があれば良い。そして、アウターエンド8が金属線5が貫通しない程度の硬度を有する材質から成る場合、硬質部材7をアウターエンド8と別体とする必要はなく、アウターエンド8が硬質部材7を兼ねても良い。 【0048】 又、上記実施形態では金属線5が押し出し成形によってアウターチューブ2の内部に埋設されていたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えばアウターチューブ2の内周に配されていても良く、又、外周に配されていても良い。成形方法に関しても、押し出し成形によって内層3、金属線5、外層4の三層が同時に成形されても良いし、一層ごとに成形し張り合わせる形でも良いものであって、どの様な成形方法であっても良い。 【符号の説明】 【0049】 1 レリースワイヤ 2 アウターチューブ 3 内層 4 外層 5 金属線 6 インナーワイヤ 7 硬質部材 8 アウターエンド 11 ロッド部 12 ワイヤーカバー 20 槽体 21 排水口 22 排水栓 23 弁体 24 取付部 25 エルボ部材 26 流入口 27 流出口 28 接続口 29 チューブ管 30 操作部 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 筒状にして側面方向に可撓性を備え、軸方向に剛性を備え、槽体の排水口から排出される排水に晒されるアウターチューブと、 該アウターチューブ内に摺動自在に収納される、側面方向に可撓性を備え、軸方向に剛性を備えたインナーワイヤと、 前記アウターチューブに固着され、且つアウターチューブの軸方向に沿って配設される金属線と、 から成る遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤにおいて、 前記金属線は前記アウターチューブよりも温度変化による伸縮率の低い金属より成り、 前記アウターチューブは端部に硬質部材を有し、 前記硬質部材は、前記アウターチューブの軸方向の収縮により前記アウターチューブの端部より金属線が飛び出そうとする際金属線と当接し、当該金属線の飛び出しを防止することを特徴とする遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ。 【請求項2】 前記アウターチューブにアウターエンドがインサート成形され、 前記硬質部材がアウターチューブとアウターエンド間に配置固定されていることを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ。 【請求項3】 前記硬質部材が金属製のワッシャーであることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ。 【請求項4】 前記硬質部材が、アウターチューブ内部に圧入される筒部分と外側方向に突出して構成されるフランジ部を有することを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ。 【請求項5】 前記硬質部材が、アウターチューブ外周に嵌合される筒部分と内側方向に突出して構成されるフランジ部を有することを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ。 【請求項6】 前記硬質部材が、アウターチューブ内周及び外周に嵌め込まれる形状であることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-02-02 |
出願番号 | 特願2012-91494(P2012-91494) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(E03C)
P 1 651・ 537- YAA (E03C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 藤脇 昌也 |
特許庁審判長 |
前川 慎喜 |
特許庁審判官 |
井上 博之 西田 秀彦 |
登録日 | 2016-11-04 |
登録番号 | 特許第6031641号(P6031641) |
権利者 | 丸一株式会社 |
発明の名称 | 遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ |
代理人 | 松本 好史 |
代理人 | 松本 好史 |
代理人 | 深津 雅央 |
代理人 | 小澤 ▲壮▼夫 |
代理人 | 石野 明則 |
代理人 | 深津 雅央 |
代理人 | 小澤 ▲壮▼夫 |