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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F27D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F27D
審判 全部申し立て 特39条先願  F27D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F27D
管理番号 1339183
異議申立番号 異議2017-701195  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-18 
確定日 2018-03-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第6165656号発明「炉内耐火物の寿命予測方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6165656号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6165656号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成26年 3月19日を出願日とする出願であって、平成29年 6月30日にその特許権の設定登録がなされ、同年 7月19日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年12月18日に特許異議申立人井上潤(以下、「異議申立人」という)により特許異議の申立てがなされたものである。


第2 本件特許発明
本件特許の請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明7」といい、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものである。


第3 申立理由の概要
異議申立人は、証拠として甲第1号証?甲第10号証(以下、それぞれ「甲1」?「甲10」という。)を提出し、特許異議申立書(以下、「異議申立書」という。)において、以下の理由により、本件特許が取り消されるべきものであることを主張している。
以下、各理由を、異議申立書の第9頁第11行、第9頁第15行及び第11頁第18行に対応させて、「申立の理由1」?「申立の理由3」という。

・申立の理由1 特許法第36条第6項第2号
本件特許発明1に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものである。
・申立の理由2 特許法第39条第1項
本件特許発明1に係る特許は、特許法第39条第1項の規定に違反してされたものである。
・申立の理由3 特許法第29条第1項又は第2項
本件特許発明1?3、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、本件特許発明1?7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

[証拠方法]
甲1:特開平9-20906号公報
甲2:特開2001-3058号公報
甲3:特開2010-281515号公報
甲4:特開平10-245616号公報
甲5:特許第6099527号公報
甲6:特開平5-340881号公報
甲7:特開2010-156471号公報
甲8:特開平5-1313号公報
甲9:特開2009-074819号公報
甲10:特開2006-153845号公報


第4 各甲号証に開示された事項
以下、甲1?甲6、甲9に開示された事項について摘記する。
1 甲1について
甲1には、以下の記載がある。
「【0004】この炉壁の損耗は、均一に進行するものではなく、円周方向、高さ方向位置によって異なり、炉内プロフィールが円周方向や高さ方向で不均一となり、コークスと焼結鉱の混合層が発生するばかりでなく、炉内還元ガスの流れも不均一となる等操業上大きな問題となる。また、炉壁の損耗部では、鉄皮にホットスポットを生じ、変形、亀裂等の発生原因となり、炉体寿命を短縮させる大きな原因となる。」

2 甲2について
甲2には、以下の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】耐火物(耐火煉瓦)製の壁により周囲を囲われた炭化室内に原料炭を装炭し、該原料炭を、幅方向両側に相隣する燃焼室からの伝熱により加熱乾留せしめてコークスを生成するコークス炉においては、前記燃焼室との仕切り壁となる炭化室の幅方向両側の壁面に、原料炭の乾留に伴って発生するカーボンの付着、生成されたコークスの押出しに用いる押出機との接触により発生する疵、過酷な温度条件下での劣化等、種々の損傷が発生し、これらの損傷が操業の継続に伴って進行して、壁面の亀裂、目地切れ、損耗、肌荒れ、剥離、更には、壁面の部分的な欠損、段差の発生等、炉の寿命低下を引き起こす重大な損傷に発展することから、両側壁の損傷状態を定期的に検査し、損傷か所に適宜の補修を施すことが炉体の延命化のために重要である。」

3 甲3について
甲3には、以下の記載がある。
「【課題】ウェア耐火物の寿命を容易にかつ精度よく予測可能な耐火物寿命予測方法の提供。
【解決手段】真空脱ガス炉1を構成するウェア耐火物21とパーマネント耐火物20との間に熱電対31を設置し、熱電対31で測定したウェア背面温度とウェア耐火物21の残厚との関係を表す温度残厚関係データをデータベースとして構築し、さらに、ウェア背面温度とチャージ回数との温度チャージ回数関係データを更新しながら構築し、温度残厚関係データと温度チャージ回数関係データとに基づいて、ウェア耐火物21が寿命の残厚となるウェア背面温度に達するチャージ回数を予測する。」

「【請求項1】
鉄皮と、パーマネント耐火物と、ウェア耐火物とが外側からこの順序で設けられた溶鉄精錬用の窯炉設備における前記ウェア耐火物の寿命を予測する耐火物寿命予測方法であって、
前記ウェア耐火物における前記パーマネント耐火物側の面又は前記ウェア耐火物の内部に温度計を設置し、前記温度計の設置位置を同じとした複数の炉代について、各炉代ごとに前記温度計により測定した前記窯炉設備の任意の精錬処理回数の精錬処理終了時における測定温度と前記ウェア耐火物の残厚の実測値のデータをデータベースとして求め、前記測定温度と前記残厚の実測値との関係を表す温度残厚関係データを予め構築しておき、
前記窯炉設備のウェア耐火物補修後に新たな炉代として溶鉄の精錬処理を複数回行う際に、前記温度計の設置位置と同じ位置に温度計を設置し、当該温度計での各精錬処理の終了時における測定温度を取得する測定温度取得工程と、
この測定温度取得工程で取得した測定温度と当該窯炉設備による精錬処理回数との関係を表す温度処理回数関係データを更新しながら構築する温度処理回数関係データ構築工程と、
前記予め構築された温度残厚関係データを用いて、前記ウェア耐火物の寿命の残厚と設定した厚みに相当する前記ウェア耐火物の温度を推定し、前記温度処理回数関係データの定常状態のデータを外挿したデータに基づいて、前記ウェア耐火物の寿命の残厚に相当する推定温度に達する処理回数を予測する寿命予測工程とを実施することを特徴とする耐火物寿命予測方法。」

4 甲4について
甲4には、以下の記載がある。
「【0010】
【課題を解決するための手段】発明者らは脱炭精錬転炉の操業条件と炉体寿命との関係を種々解析した結果、炉内で生成するスラグのマグネシヤ(MgO)濃度が10wt%以上の場合には炉体寿命が延長されることを知見し、下記の発明をするに至った。」

「【0021】上記脱炭精錬において、転炉寿命を決定するのは、転炉内張りの内で、最も損耗が大きい湯面直上の炉体煉瓦(図2のA)の損耗速度である。この損耗速度を340ton(溶銑量)転炉において種々の操業条件で測定した。その結果、以下のような結果が得られた。」


5 甲5について
甲5には、以下の記載がある。
「【請求項1】
炉体の内部に内張された耐火物の表面形状を測定することによって、前記耐火物の損耗状態を検出する炉内耐火物損耗状態の測定方法であって、
前記耐火物に対して測定光を照射することにより炉内の2次元形状を測定する測定手段を、移動手段である前記炉体の底部側に配置された移動式の炉床によって前記炉内で移動させつつ複数回測定することにより、前記炉内の側壁部及び天井部の形状である炉内の3次元形状を求め、求めた前記3次元形状に基づいて前記耐火物の損耗状態を測定するものであって、
前記炉内に設置された複数の位置決めターゲットを用いて、前記炉床に対する測定手段の設置誤差を補正する設置面誤差処理と、
前記炉内に設置された複数の位置決めターゲットを用いて、前記測定光が前記炉体の軸線方向に対して傾斜することで生じる誤差を補正する走査ライン誤差処理と、
を有することを特徴とする炉内耐火物損耗状態の測定方法。」

「【請求項4】
前記炉体の補修直後に、測定して得られた炉内の3次元形状を基準データとし、
前記炉体の操業後に、測定して得られた炉内の3次元形状を操業後データとし、
前記基準データと操業後データとの差を基に、前記耐火物の損耗状態を求めることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の炉内耐火物損耗状態の測定方法。」

「【0030】
本発明では、第2方法を採用し、炉内耐火物の補修直後に炉内形状(3次元形状)を測定して当該3次元形状を基準データとする。次に、炉を所定期間操業した後の炉内形状(3次元形状)を測定して当該3次元形状を操業後データとする。そして、基準データと操業後データとの差から耐火物の損耗状態を評価する。
詳しくは、まず、炉内の耐火物を補修した後、補修直後に炉内に距離センサ10を設置する。図2に示したように、距離センサ10によって炉内の2次元形状を複数取得し、2次元形状から得られた3次元形状を基準データとする。その後、炉を所定期間操業し、例えば、耐火物の定期補修や状況確認を行うときのタイミングで距離センサ10を設置する。距離センサ10によって炉内の2次元形状を複数取得し、2次元形状から得られた3次元形状を操業後データとする。そして、操業後データによって得られる操業後の3次元形状と、基準データによって得られる操業前(補修直後)の3次元形状とを比較して、耐火物の損耗分布や損耗速度分布などを求める。」

「【0059】
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。」

6 甲6について
甲6には、以下の記載がある。
「【請求項1】 製鋼用耐火物の損傷状態を、複数のセンサーによって検出し、これらの検出データを処理することにより、補修に必要なパラメータを抽出し、これらのパラメータに、操業条件に関する情報を加味して、熟練者の知識を基にデータベースを作成し、このデータベースを基に耐火物の劣化状況を判定する補修のための耐火物劣化状況判定方法。」

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、転炉、取鍋、タンディッシュ等の製鋼用容器の内張り耐火物の損傷状態を知識データベースを基に診断し補修する方法に関する。」

「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、亀裂、地金差し、溶損量等の耐火物の損傷状態を、画像処理装置、渦流式金属検出器、変位計等の複合センサによって検出し、これらの検出データを画像処理及び信号処理により、必要な亀裂位置、長さ、開口幅、最大残厚位置と各部との高低差等の補修に必要なパラメータを抽出する。これらのパラメータと、チャージ回数、適用鋼種等の操業条件を、補修に際しての最も効率の高い補修方法に対する熟練者の知識を基にデータベースを作成し、このデータベースを基に、最適な補修方法を判定することを特徴とする。
【0008】データベースの一例としては、各センサー情報及び操業条件から抽出したパラメータを基に作成した、耐火物劣化状況に関する質問と、結論として導かれる各補修方法とが影響度によってリンクされており、各質問を遂次回答し、それらの影響度を演算することにより、各補修方法すなわち結論に対する確信度を求め、特定の結論に対する確信度がある閾値を超えると診断結果が判定される方法を採用することができる。」

「【0009】
【作用】耐火物の損傷状態を診断する要素としては、主として、亀裂、地金差し、溶損がある。亀裂は、カメラで撮像し、画像処理を施すことにより、地金差しは渦流式の金属検出器を用いることにより、検出することができる。また、溶損量は、レーザー変位計を用いることにより、検出が可能である。これらのセンサーを多関節ロボットに搭載して、耐火物全面に渡り走査して、耐火物の損傷状態に関するデータを採取する。これらの検出データを画像処理及び信号処理を施すことにより、亀裂の位置、長さ、開口幅、地金侵入位置、溶損量、最大残厚位置と各部との高低差等の補修に必要なパラメータが抽出される。これらのパラメータとチャージ回数、適用鋼種等の操業条件に関する情報を用いて、熟練者の知識を基にデータベースを作成する。このデータベースを用いて推論を実行することにより、耐火物の劣化状況に応じた最適な補修方法を自動的に診断することができる。これらは、溶銑鍋あるいはトピードカー等にも適用することもできる。」

「【0014】これらのパラメータと、チャージ回数、適用鋼種等の操業条件に関する情報を用いて、熟練者の知識を基に、知識データベース10を構築する。この知識データベース10を用いて推論を実行すると、耐火物の劣化状況に応じた最適な補修方法が診断される。この診断結果を耐火物補修材吹付装置のような補修装置に入力すると、自動補修を行なうことができる。」

「【0016】表1は、タンディッシュの劣化レベルとこれを診断するための熟練者による判断要素からなる、知識データーベースの構成例である。

【0017】
【表1】


表1において、質問文とは、該当タンディッシュの操業条件、損傷箇所の状況等、熟練者が補修に必要な判断を行っている条件である。補修の程度は、タンディッシュの劣化レベルに対応して、「大修理」、「中修理」、「小修理」の3通りに分類される。ここで大修理とは、タンディッシュの内張り補修材の完全塗替であり、中修理とは、タンディッシュ特定面の補修材の塗替、小修理とは、損傷部位のみの補修を指す。各補修の程度と診断条件との関係は、すべて-4?+4の数値で示す影響度で表されている。
【0018】推論は、これらの質問文を遂次回答し、各結論の候補(この場合は、補修の程度)に対する確信度を遂次計算し、特定の結論に対する確信度がある閾値を超えると診断結果が導かれる。」

「【0021】このような、知識データベース及び推論アルゴリズムを用いて、図3に示す劣化タンディッシュサンプルを診断した結果を表2に示す。

【0022】
【表2】



「【図2】



7 甲9について
甲9には、以下の記載がある。
「【0044】
本発明に係るレーザ距離計としては、レーザ光を投光してからその反射光を受光するまでの時間に基づき距離を測定する方式の距離計が用いられる。この方式のレーザ距離計の中でも、特に本実施形態に係るレーザ距離計12としては、パルスレーザ光を用いたTOF(Time Of Flight)方式の距離計が用いられている。すなわち、本実施形態に係るレーザ距離計12は、パルスレーザ光を測定対象に向けて投光し、該測定対象から戻ってきた反射光を受光するまでの飛行時間を測定して、測定対象までの距離に換算する(距離=飛行時間/2×光速)方式である。」


第5 判断
1 申立の理由1(特許法第36条第6項第2号)について
(1) 異議申立人が主張する申立の理由1は、具体的には、以下のとおりである。
本件特許の請求項1には「前記炉体の操業条件」との記載があるが、この記載より前の箇所には「炉体の操業条件」の記載は存在しないから、「前記炉体の操業条件」との記載が指し示すものが不明確である。
(2) 検討
本件特許の請求項1の「前記炉体の操業条件」との記載より前の箇所には、「炉体」との記載は複数存在する。具体的には、例えば冒頭部の「炉体の内部に内張された耐火物の」との記載が挙げられる。
したがって、「前記炉体の操業条件」との記載における「前記炉体」の指し示すものは明確である。
そして、「操業条件」との記載自体も不明確であるとはいえないことも踏まえると、「前記炉体の操業条件」との記載が指し示すものが不明確であるとはいえない。
(3) 申立の理由1についてのまとめ
以上の検討のとおり、本件特許発明1に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。


2 申立の理由2(特許法第39条第1項)について
(1) 異議申立人が主張する申立の理由2は、具体的には、本件特許発明1は、先願である甲5の請求項4に係る発明と同一である、というものである。
(2) 検討
ア 甲5について
甲5に係る特許出願の出願日は、平成25年 9月 9日であって、本件特許の出願日よりも前である。
そして、甲5に係る特許出願において設定登録された請求項1?8に係る発明は、甲5の特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項によって特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項4に係る発明であって、請求項1を引用するものを具体的に書き下すと、以下のとおりである(以下、これを「甲5発明」という。)。
(甲5発明)
「炉体の内部に内張された耐火物の表面形状を測定することによって、前記耐火物の損耗状態を検出する炉内耐火物損耗状態の測定方法であって、
前記耐火物に対して測定光を照射することにより炉内の2次元形状を測定する測定手段を、移動手段である前記炉体の底部側に配置された移動式の炉床によって前記炉内で移動させつつ複数回測定することにより、前記炉内の側壁部及び天井部の形状である炉内の3次元形状を求め、求めた前記3次元形状に基づいて前記耐火物の損耗状態を測定するものであって、
前記炉内に設置された複数の位置決めターゲットを用いて、前記炉床に対する測定手段の設置誤差を補正する設置面誤差処理と、
前記炉内に設置された複数の位置決めターゲットを用いて、前記測定光が前記炉体の軸線方向に対して傾斜することで生じる誤差を補正する走査ライン誤差処理と、
を有することを特徴とする炉内耐火物損耗状態の測定方法において、
前記炉体の補修直後に、測定して得られた炉内の3次元形状を基準データとし、
前記炉体の操業後に、測定して得られた炉内の3次元形状を操業後データとし、
前記基準データと前記操業後データとの差を基に、前記耐火物の損耗状態を求めることを特徴とする、炉内耐火物損耗状態の測定方法。」

イ 本件特許発明1と、甲5発明との対比
(ア) 甲5発明における「炉体の内部に内張された耐火物の表面形状を測定することによって、前記耐火物の損耗状態を検出する炉内耐火物損耗状態の測定方法であって」との事項と、本件特許発明1における「炉体の内部に内張された耐火物の表面形状を測定することによって、前記耐火物の損耗状態を検出し、検出された耐火物の損耗状態を基に前記耐火物の寿命を予測する炉内耐火物の寿命予測方法であって」との事項は、「炉体の内部に内張された耐火物の表面形状を測定することによって、前記耐火物の損耗状態を検出」する点で共通するものである。
(イ) 甲5発明における「前記炉体の補修直後に、測定して得られた炉内の3次元形状を基準データとし、前記炉体の操業後に、測定して得られた炉内の3次元形状を操業後データとし、前記基準データと操業後データとの差を基に、前記耐火物の損耗状態を求める」との事項と、本件特許発明1における「前記炉体の補修直後に測定して得られた炉内壁の3次元形状を基準データとして取得し、前記炉体を操業した後に測定して得られた炉内壁の3次元形状を操業データとして取得し、前記基準データと操業データとの差から、耐火物の損耗速度を求め」るとの事項は、「前記炉体の補修直後に測定して得られた炉内壁の3次元形状を基準データとして取得し、前記炉体を操業した後に測定して得られた炉内壁の3次元形状を操業データとして取得し、前記基準データと操業データとの差」から、「耐火物」の「損耗」に関する事項を求める、という点で共通するものである。
(ウ) そして、本件特許発明1と、甲5発明とは、以下の相違点1で少なくとも相違する。
(相違点1)
本件特許発明1においては、「検出された耐火物の損耗状態を基に前記耐火物の寿命を予測する炉内耐火物の寿命予測方法」であって、「前記耐火物の損耗速度と前記炉体の操業条件とを基に、耐火物の寿命を予測する」ものであるのに対し、甲5発明においては、「炉内耐火物損耗状態の測定方法」であって、「検出された耐火物の損耗状態を基に前記耐火物の寿命を予測する炉内耐火物の寿命予測方法」ではなく、また、「前記耐火物の損耗速度と前記炉体の操業条件とを基に、耐火物の寿命を予測する」ことを行うことも特定されていない点

ウ 相違点1についての判断
(ア) 本件特許発明1と甲5発明は、前記イ(ア)において示したとおり、「炉体の内部に内張された耐火物の表面形状を測定することによって、前記耐火物の損耗状態を検出」する点で共通しているが、本件特許発明1は、「耐火物の損耗状態を検出」することから更に進んで「耐火物の寿命を予測」することを行うものであるから、「検出」する時点よりも未来の時点における「耐火物の損耗状態」を「予測」するものである。
一方、甲5発明は、「耐火物の損耗状態を検出」することにとどまるものであり、「検出」する時点よりも未来の時点における「予測」を行うものではない。
したがって、甲5発明は「耐火物の寿命を予測する」との事項を有していない点で、本件特許発明1に対し、構成上の実質的な差異がある。
(イ) また、本件特許明細書の「現時点における耐火物の残厚測定の結果のみを用いたとしても、炉内耐火物の寿命を予測することは難しい。すなわち、耐火物の溶損には、炉の操業条件などのパラメータが深く関わっており、これら操業条件と耐火物の残厚の測定結果との関係性を明らかにしないことには、炉内耐火物の寿命を正確に予測することは困難である。」(段落【0006】)との記載や「炉体の耐火物の損耗状況は、炉の操業条件によっても大きく変動することが知られている・・・すなわち、耐火物の損耗速度(例えば、月当たりの損耗速度)は常に一定ではなく、操業条件に連動して変動するものと思われる。」(段落【0031】、当審注:「・・・」により記載の省略を示す。以下同様である。)との記載を踏まえると、本件特許発明1は、相違点1に係る構成である「前記耐火物の損耗速度と前記炉体の操業条件とを基に、耐火物の寿命を予測する」との事項を備えることによって、「耐火物の損耗速度」だけでなく「炉体の操業条件」をも考慮に入れるものとなっており、その結果、本件特許発明1は、「炉内耐火物の寿命予測」を「正確」に行うことができるという技術的意義を有するものとなっている。そして、このような技術的意義は、甲5発明が有しない本件特許発明1に特有のものである。
(ウ) 上記(ア)において検討した構成上の実質的な差異、及び、上記(イ)において検討した技術的意義の差異を考慮すると、本件特許発明1と甲5発明とは、技術思想が異なる別個の発明であるといえる。
(エ) よって、少なくとも相違点1が存在することによって、本件特許発明1と、甲5発明とは、同一であるとはいえない。

エ 異議申立人の主張について
(ア) 異議申立人は、本件特許発明における特許性の有無は、本件特許の出願当時の技術水準をベースにして判断すべきであると主張している。具体的には、甲1?甲4の記載を根拠とし、「炉内耐火物の寿命予測をする必要性、及び寿命予測すること」、「炉内耐火物の寿命予測する際に、炉体の過去の炉厚のデータベースを構築しておき、このデータベースに基づいて、耐火物の寿命を予測すること」、「耐火物の寿命に、耐火物の損耗速度と炉体の操業条件とが影響を及ぼす因子でいること」、及び「データベースを構築するための高炉炉壁プロフィールの三次元測定技術」は、いずれも本件特許の出願当時に当業者において既に共有されている技術的知見であって、本件特許発明における特許性の有無は、これらの技術水準をベースにして判断すべきである、と主張している(異議申立書第7頁第19行?第9頁第10行)。
しかしながら、異議申立人が主張する「技術的知見」なるものが、本件特許の出願当時に当業者において既に共有されていたものであると仮定したとしても、本件特許発明1と甲5発明とは、技術思想が異なる別個の発明であるといえるとした上記の判断を左右するものではない。
(イ) また、異議申立人は、甲5の段落【0059】を挙げて、甲5発明において炉体の操業条件を考慮していることは当業者にとって自明であることを主張している(異議申立書第11頁第1行?第9行)。
しかしながら、甲5発明において炉体の操業条件を考慮していたとしても、本件特許発明1と甲5発明とは、技術思想が異なる別個の発明であるといえるとした上記の判断を左右するものではない。
なお、甲5の段落【0059】の記載は、「ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。」というものであるから、この記載は、「操業条件」として通常の当業者が容易に想到することが可能な値を採用するという点に関して「炉体の操業条件を考慮している」ことを示しているのであって、耐火物の寿命を予測することに関して「炉体の操業条件を考慮している」ことを示しているものではない。そのため、甲5の前記記載は、相違点1に係る構成である「前記耐火物の損耗速度と前記炉体の操業条件とを基に、耐火物の寿命を予測する」との事項を何ら示唆するものではない。
(ウ) また、異議申立人は、炉内耐火物の寿命予測をする必要性、及び寿命予測することは本件特許の出願前の当業者に共有されている技術的知見であり、炉内耐火物の損傷状況を測定した結果、炉内耐火物の寿命予測されることは当業者にとって自明な技術的事項である、と主張している(異議申立書第11頁第10行?第14行)。
異議申立人が提出した証拠のうち、甲3には「耐火物寿命予測方法」の発明が記載されており、炉内耐火物の寿命予測をすることの記載があるといえる。
しかしながら、甲3に炉内耐火物の寿命予測をすることの記載があるとしても、本件特許発明1と甲5発明とは、技術思想が異なる別個の発明であるといえるとした上記の判断を左右するものではない。
(エ) したがって、異議申立人のこれらの主張は、いずれも理由がない。

(3) 申立の理由2についてのまとめ
以上の検討のとおり、甲5発明は、本件特許発明1と同一であるとはいえないから、本件特許発明1に係る特許は、特許法第39条第1項の規定に違反してされたものであるとはいえない。

3 申立の理由3(特許法第29条第1項又は第2項)について
(1) 異議申立人が主張する申立の理由3のうち、本件特許発明1に対するものは、具体的には、本件特許発明1が甲6に記載された発明であるか、仮にそうでないとしても甲6に記載された発明から容易に想到し得たものである、というものである。
(2) 本件特許発明1の新規性進歩性に関する検討
ア 甲6に記載された発明について
甲6の請求項1、段落【0001】、【0009】の記載を総合すると、甲6には、以下の発明(以下、「甲6発明」という)が記載されている。
(甲6発明)
「転炉等の製鋼用容器の内張り耐火物の損傷状態を、レーザー変位計を含む複数のセンサーによって検出し、これらの検出データを処理することにより、亀裂の位置、長さ、開口幅、地金侵入位置、溶損量、最大残厚位置と各部との高低差等の補修に必要なパラメータを抽出し、これらのパラメータに、操業条件に関する情報を加味して、熟練者の知識を基にデータベースを作成し、このデータベースを基に耐火物の劣化状況を判定する補修のための耐火物劣化状況判定方法。」

イ 本件特許発明1と、甲6発明との対比
(ア) 甲6発明は、「転炉等の製鋼用容器の内張り耐火物」の劣化状況を判定する方法であるから、本件特許発明1と、甲6発明とは、「炉体の内部に内張された耐火物」又は「炉内耐火物」が対象となっている方法である点で共通する。
(イ) そして、本件特許発明1と甲6発明とは、少なくとも以下の相違点Aで相違する。
(相違点A)
本件特許発明1は「前記基準データと操業データとの差から、耐火物の損耗速度を求め、前記耐火物の損耗速度と前記炉体の操業条件とを基に、耐火物の寿命を予測する」ことを発明特定事項として備える「寿命予測方法」であるのに対し、甲6発明は、「補修のための耐火物劣化状況判定方法」であって「前記基準データと操業データとの差から、耐火物の損耗速度を求め、前記耐火物の損耗速度と前記炉体の操業条件とを基に、耐火物の寿命を予測する」ことを発明特定事項として備えない点

ウ 甲6発明が相違点Aに係る構成を実質的に備えているといえるか否かについての判断
相違点Aに係る構成には、
・「前記基準データと操業データとの差から、耐火物の損耗速度を求め」るとの事項
・「前記耐火物の損耗速度と前記炉体の操業条件とを基に、耐火物の寿命を予測する」との事項
とが含まれるが、以下のとおり、甲6発明は、上記各事項を実質的に備えているとはいえない。
(ア) 甲6発明が、相違点Aに係る構成のうちの「前記基準データと操業データとの差から、耐火物の損耗速度を求め」るとの事項を備えているとはいえないことについて
a 甲6発明は「これらのパラメータに、操業条件に関する情報を加味して、熟練者の知識を基にデータベースを作成し、このデータベースを基に耐火物の劣化状況を判定する」との事項を備えるところ、この「判定」に際し、具体的に何を行っているかについて、甲6の記載から検討する。
甲6には「熟練者の知識を基に、知識データベース10を構築する。この知識データベース10を用いて推論を実行すると、耐火物の劣化状況に応じた最適な補修方法が診断される。」との記載(段落【0014】)、「図2に示す推論アルゴリズムによって、(1)から(18)までの過程を経て、必要とされる補修の程度を導出し、自動補修装置に入力する。」(段落【0020】)との記載、及び「このような、知識データベース及び推論アルゴリズムを用いて、図3に示す劣化タンディッシュサンプルを診断した結果を表2に示す。」との記載(段落【0021】)があり、これらの記載に加えて表2及び図2の内容を総合すると、甲6発明が備える前記事項の「判定」は、具体的には、当該「データベース」を前もって作成しておいた上で、「耐火物の劣化状況を判定する」対象(例えば劣化タンディッシュ)に関して、センサーによる測定結果や操業条件の具体的な質問(例えば「断面Aの平均残厚量は何mmか」や「大修理後何チャージ目か」等)に答えていくことで、推論によって劣化状況を判定する、ということを意味するものであると認められる。
b そうすると、甲6発明においては、耐火物の劣化状況を判定する対象に関するセンサーによる測定結果や操業条件の具体的な質問に答える結果、推論によって、耐火物の劣化状況が判定されるのであるから、「耐火物の損耗速度」を求める工程、すなわち「耐火物の損耗」の量を稼働期間の数値で除する計算を行う工程、が行われているとはいえない。
c また、甲6の表2に記載の質問文の一つである「大修理後何チャージ目か」との事項は、補修が行われてからの時間と関係があるといえるが、甲6の全体を参照しても、「大修理後何チャージ目か」という事項と、「耐火物の損耗」の量とを関連付けることは記載されていないから、甲6発明において、「耐火物の損耗速度」を求める工程が実質的に行われているということもできない。
d したがって、甲6発明が、相違点Aに係る構成のうちの「前記基準データと操業データとの差から、耐火物の損耗速度を求め」るとの事項を備えているとはいえない。
(イ) 甲6発明が、相違点Aに係る構成のうちの「前記耐火物の損耗速度と前記炉体の操業条件とを基に、耐火物の寿命を予測する」との事項を備えているとはいえないことについて
a 当該「前記耐火物の損耗速度と前記炉体の操業条件とを基に、耐火物の寿命を予測する」との事項は、「前記耐火物の損耗速度」との記載を含むから、上記(ア)で検討した「前記基準データと操業データとの差から、耐火物の損耗速度を求め」るとの事項が行われることが前提となっている。
そして、上記(ア)で検討したとおり、甲6発明が「前記基準データと操業データとの差から、耐火物の損耗速度を求め」るとの事項を備えているとはいえない以上、甲6発明は、「前記耐火物の損耗速度と前記炉体の操業条件とを基に、耐火物の寿命を予測する」との事項についても、備えているとはいえない。
b さらに、前記2(2)ウ(ア)でも述べたとおり、本件特許発明1は、「耐火物の損耗状態を検出」することから更に進んで「耐火物の寿命を予測」することを行うものであるから、「検出」する時点よりも未来の時点における「耐火物の損耗状態」を「予測」するものである。
一方、甲6発明は、「補修のための耐火物劣化状況判定方法」の発明であって、甲6の段落【0009】によれば、耐火物の劣化状況に応じた最適な補修方法を自動的に診断することができるという作用を有するものであるから、甲6発明は、測定する時点における最適な補修方法を特定するものであって、測定する時点よりも未来の時点における「予測」を行うものではない。
したがって、この検討からみても、甲6発明は、「耐火物の寿命を予測」するとの事項を備えているとはいえない。
(ウ) 上記(ア)、(イ)での検討に照らせば、甲6発明が、上記相違点Aに係る構成を実質的に備えているということはできないから、当該相違点Aは、実質的なものである。

エ 甲6発明において、当業者が相違点Aに係る構成を容易に想到し得たか否かについての判断
(ア) 前記ウ(ア)で検討したとおり、甲6発明は、「耐火物の損耗速度を求め」ることを行うものではない。そして、甲6発明は、耐火物の劣化状況を判定する対象に関するセンサーによる測定結果や操業条件の具体的な質問に答える結果、推論によって、耐火物の劣化状況が判定されるのであるから、そのような甲6発明において、あえて「耐火物の損耗速度」を求めることを行う必要性は見当たらない。
したがって、甲6の全記載を総合したとしても、甲6発明において、当業者があえて「耐火物の損耗速度」を求めるようにすることを容易に想到し得たということはできない。
(イ) また、異議申立人が提出したいずれの証拠を参照しても、甲6発明において、「耐火物の損耗速度」を求めるようにすることを容易に想到し得たといえる根拠を見いだせない。
(ウ) したがって、甲6発明において、本件特許発明1に特定される「前記基準データと操業データとの差から、耐火物の損耗速度を求め、前記耐火物の損耗速度と前記炉体の操業条件とを基に、耐火物の寿命を予測する」るとの事項を、当業者が容易に想到し得たとはいえないので、相違点Aに係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。

オ 異議申立人の主張について
(ア) 異議申立人は、本件特許発明における特許性の有無は、本件特許の出願当時の技術水準をベースにして判断すべきであると主張している。具体的には、甲1?甲4の記載を根拠とし、「炉内耐火物の寿命予測をする必要性、及び寿命予測すること」、「炉内耐火物の寿命予測する際に、炉体の過去の炉厚のデータベースを構築しておき、このデータベースに基づいて、耐火物の寿命を予測すること」、「耐火物の寿命に、耐火物の損耗速度と炉体の操業条件とが影響を及ぼす因子でいること」、及び「データベースを構築するための高炉炉壁プロフィールの三次元測定技術」は、いずれも本件特許の出願当時に当業者において既に共有されている技術的知見であって、本件特許発明における特許性の有無は、これらの技術水準をベースにして判断すべきである、と主張している(異議申立書第7頁第19行?第9頁第10行)。
しかしながら、前記ウ(ア)及び前記エ(ア)で検討したとおり、甲6発明は、耐火物の劣化状況を判定する対象に関するセンサーによる測定結果や操業条件の具体的な質問に答える結果、推論によって、耐火物の劣化状況が判定されるものであって、そのような甲6発明において、あえて「耐火物の損耗速度」を求めることを行う必要性は見当たらない。そして、異議申立人が主張する上記「技術的知見」なるものが、本件特許の出願当時に当業者において既に共有されていたものであると仮定したとしても、甲6発明において、あえて「耐火物の損耗速度」を求めることを行う必要性を、見いだすことはできない。
したがって、この主張は、甲6発明において、当業者が相違点Aに係る構成を容易に想到し得たものではないという、前記エに示した判断を左右するものではない。

(イ) 本件特許発明1に特定される「前記基準データと操業データとの差から、耐火物の損耗速度を求め」るとの事項が甲6に記載されているか否かという点に関連して、異議申立人は、以下のa 、b に示した2点について主張している。
a 「(構成要件Bの耐火物の損耗速度を求めることについて)
・・・
甲第6号証においても、段落0009に「溶損量を、レーザ変位計を用いて検出する」旨記載されており、このことは、基準データと操業データとの差を検出していることに他ならない。」(異議申立書第13頁第20行?第28行)
b 「(構成要件B及び構成要件Cの耐火物の寿命予測に関し)
そして、本件特許発明では、前記耐火物の損耗速度と前記炉体の操業条件とを基に、耐火物の寿命を予測している。甲第6号証においても、請求項1に「検出された耐火物の損傷状態に操業条件を加味して補修のための耐火物劣化状況を判定する」旨の記載があり、このことは「耐火物の損耗速度と前記炉体の操業条件とを基に、耐火物の寿命を予測することと実質同義である。」(異議申立書第13頁第29行?第34行。(当審注:原文ママ))
c 上記a に示した主張について検討する。
確かに、甲6の段落【0009】には、耐火物の溶損量を、レーザ変位計を用いて検出することが記載されている。
しかしながら、甲6には、耐火物の損耗量を稼働期間の数値で除する計算を行う工程は何ら開示されていない。そして、溶損量は、基準データと操業データとの差から求められることが自明であることを考慮に入れたとしても、甲6からは、基準データと操業データとの差から耐火物の溶損量を検出することを把握できるにとどまり、耐火物の溶損量を稼働期間の数値で除して損耗速度を求めるという事項を把握することはできない。したがって、甲6が、「前記基準データと操業データとの差から、耐火物の損耗速度を求め」ることを開示しているとまでは認められない。
d 上記b に示した主張について検討する。
上記c で検討したとおり、甲6からは、基準データと操業データとの差から耐火物の溶損量を検出することを把握できるにとどまり、耐火物の溶損量を稼働期間の数値で除して損耗速度を求めるという事項を把握することはできないから、甲6の請求項1に記載された事項と、耐火物の損耗速度と前記炉体の操業条件とを基に、耐火物の寿命を予測することとが実質同義であるとまでは認められない。
e したがって、上記a 及びb の主張を考慮したとしても、本件特許発明1に特定される「前記基準データと操業データとの差から、耐火物の損耗速度を求め」るとの発明特定事項が甲6に記載されているとは認められない。

(ウ) 異議申立書の第3頁下から第14行?下から第17行においては、「(3)申立ての根拠」の欄において、本件特許発明1が甲6と甲7と甲9の組み合わせにより進歩性を欠くとしている。
しかしながら、異議申立書の全体を参照しても、甲7について具体的に記載があるのは、異議申立書の第13頁第8行?第10行のみであり、甲9について具体的に記載があるのは、異議申立書の第13頁第8行?第10行と、第15頁下から第4行?第16頁第7行のみである。
そして、異議申立書の第13頁第8行?第10行の記載は「この記載から明らかなように「レーザ変位計を用いる」ということは、先に提示した甲第7号証:特開2010-156471号公報、甲第9号証:特開2009-074819号公報を引用するまでもなく、3次元計測をすることと技術的に同義であることは自明である。」というものであって、異議申立書の当該記載は、「レーザ変位計を用いる」という事項と、3次元計測をすることとが技術的同義であることの例示のために甲7及び甲9を引用するものであると認められる。そのため、異議申立書の当該記載は、前記ウ及びエにおいて示した相違点Aに関する判断に対し、何ら影響を与えるものではない。
また、異議申立書の第15頁下から第4行?第16頁第7行の記載は、本件特許発明6の進歩性欠如に関する主張であって、甲9の段落【0044】のレーザ距離計に関する記載を引用しようとするものであるから、異議申立書の当該記載も、前記ウ及びエにおいて示した相違点Aの判断に対し、何ら影響を与えるものではない。
そして、甲7及び甲9を参照しても、甲6発明において相違点Aに係る構成を当業者が容易に想到し得たといえる根拠を見いだすことはできない。

(エ) したがって、異議申立人のこれらの主張は、いずれも理由がない。

カ 小括
以上の検討のとおり、少なくとも相違点Aが存在することによって、本件特許発明1は、甲6に記載された発明であるとはいえない。
また、甲6に記載された発明に基づき、他の証拠を総合したとしても、当業者が相違点Aに係る構成を容易に想到し得たものではないから、本件特許発明1は、甲6に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3) 本件特許発明2?7の新規性進歩性に関する検討
本件特許発明2?7は、全て、本件特許発明1に特定される発明特定事項を備える「炉内耐火物の寿命予測方法」の発明である。
したがって、本件特許発明1に対する判断と同様の理由で、本件特許発明1?3、5は、甲6に記載された発明であるとはいえず、また、本件特許発明2?7は、甲6に記載された発明に基づき、他の証拠を総合したとしても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4) 申立の理由3についてのまとめ
以上の検討のとおり、本件特許発明1?3、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるとはいえず、また、本件特許発明1?7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。


第6 むすび
したがって、請求項1?7に係る特許は、特許異議申立書において申立てられた申立理由及び証拠によって、取り消すことができない。
また、他に、請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-03-20 
出願番号 特願2014-56649(P2014-56649)
審決分類 P 1 651・ 4- Y (F27D)
P 1 651・ 121- Y (F27D)
P 1 651・ 113- Y (F27D)
P 1 651・ 537- Y (F27D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 瀧澤 佳世  
特許庁審判長 板谷 一弘
特許庁審判官 土屋 知久
▲辻▼ 弘輔
登録日 2017-06-30 
登録番号 特許第6165656号(P6165656)
権利者 株式会社神戸製鋼所
発明の名称 炉内耐火物の寿命予測方法  
代理人 安田 幹雄  
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