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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1339192
異議申立番号 異議2018-700030  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-12 
確定日 2018-04-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第6162927号発明「食品包装体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6162927号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6162927号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成24年4月13日に特許出願され、平成29年6月23日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成30年1月12日に特許異議申立人 猪瀬則之 により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし7の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明7」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
10℃以下で流通される、固形具材及び液状物からなる食品を容器に盛り付け包装した食品包装体の製造方法であって、
前記容器に加熱済みの前記固形具材を盛り付ける固形具材盛付工程と、
前記容器に盛り付けられた前記固形具材をスチーム加熱する固形具材加熱工程と、
スチーム加熱された前記固形具材上に、高温の前記液状物を充填する液状物充填工程と、
前記液状物充填工程完了後、食品の温度が85℃?90℃である前記加熱済み食品が盛り付けられた前記容器にフィルムを被せてチャンバ内に収納し、前記チャンバ内を500mbar以上600mbar以下に減圧し、不活性ガスを800?1200mbarまで導入して前記容器内を95%以上のガス置換率のガス交換を行った後、前記容器と前記フィルムを熱溶着して前記加熱済み食品を包装する包装工程と、を有し、
前記容器は、広口且つ深底形状であり、前記包装工程において、前記容器のフランジに前記フィルムを熱溶着することを特徴とする食品包装体の製造方法。
【請求項2】
10℃以下で流通される、固形具材及び液状物からなる食品を容器に盛り付け包装した食品包装体の製造方法であって、
前記容器に加熱済みの前記固形具材を盛り付ける固形具材盛付工程と、
前記容器に盛り付けられた前記固形具材をスチーム加熱する固形具材加熱工程と、
スチーム加熱された前記固形具材上に、高温の前記液状物を充填する液状物充填工程と、
前記液状物充填工程完了後、食品の温度が80?85℃である前記加熱済み食品が盛り付けられた前記容器にフィルムを被せてチャンバ内に収納し、前記チャンバ内を400mbar以上600mbar以下に減圧し、不活性ガスを800?1200mbarまで導入して前記容器内を95%以上のガス置換率でガス交換を行った後、前記容器と前記フィルムを熱溶着して前記加熱済み食品を包装する包装工程と、を有し、
前記容器は、広口且つ深底形状であり、前記包装工程において、前記容器のフランジに前記フィルムを熱溶着することを特徴とする食品包装体の製造方法。
【請求項3】
10℃以下で流通される、固形具材及び液状物からなる食品を容器に盛り付け包装した食品包装体の製造方法であって、
前記容器に加熱済みの前記固形具材を盛り付ける固形具材盛付工程と、
前記容器に盛り付けられた前記固形具材をスチーム加熱する固形具材加熱工程と、
スチーム加熱された前記固形具材上に、高温の前記液状物を充填する液状物充填工程と、
前記液状物充填工程完了後、食品の温度が70?80℃である前記加熱済み食品が盛り付けられた前記容器にフィルムを被せてチャンバ内に収納し、前記チャンバ内を300mbar以上600mbar以下に減圧し、不活性ガスを800?1200mbarまで導入して前記容器内を95%以上のガス置換率でガス交換を行った後、前記容器と前記フィルムを熱溶着して前記加熱済み食品を包装する包装工程と、を有し、
前記容器は、広口且つ深底形状であり、前記包装工程において、前記深底容器のフランジに前記フィルムを熱溶着することを特徴とする食品包装体の製造方法。
【請求項4】
10℃以下で流通される、固形具材及び液状物からなる食品を容器に盛り付け包装した食品包装体の製造方法であって、
前記容器に加熱済みの前記固形具材を盛り付ける固形具材盛付工程と、
前記容器に盛り付けられた前記固形具材をスチーム加熱する固形具材加熱工程と、
スチーム加熱された前記固形具材上に、高温の前記液状物を充填する液状物充填工程と、
前記液状物充填工程完了後、食品の温度が55?70℃である前記加熱済み食品が盛り付けられた前記容器にフィルムを被せてチャンバ内に収納し、前記チャンバ内を200mbar以上600mbar以下に減圧し、不活性ガスを800?1200mbarまで導入して前記容器内を95%以上のガス置換率でガス交換を行った後、前記容器と前記フィルムを熱溶着して前記加熱済み食品を包装する包装工程と、を有し、
前記容器は、広口且つ深底形状であり、前記包装工程において、前記深底容器のフランジに前記フィルムを熱溶着することを特徴とする食品包装体の製造方法。
【請求項5】
10℃以下で流通される、固形具材及び液状物からなる食品を容器に盛り付け包装した食品包装体の製造方法であって、
前記容器に加熱済みの前記固形具材を盛り付ける固形具材盛付工程と、
前記容器に盛り付けられた前記固形具材をスチーム加熱する固形具材加熱工程と、
スチーム加熱された前記固形具材上に、高温の前記液状物を充填する液状物充填工程と、
前記液状物充填工程完了後、食品の温度が35?55℃である前記加熱済み食品が盛り付けられた前記容器にフィルムを被せてチャンバ内に収納し、前記チャンバ内を100mbar以上600mbar以下に減圧し、不活性ガスを800?1200mbarまで導入して前記容器内を95%以上のガス置換率でガス交換を行った後、前記容器と前記フィルムを熱溶着して前記加熱済み食品を包装する包装工程と、を有し、
前記容器は、広口且つ深底形状であり、前記包装工程において、前記深底容器のフランジに前記フィルムを熱溶着することを特徴とする食品包装体の製造方法。
【請求項6】
前記不活性ガスは、窒素ガス、または、窒素及び二酸化炭素からなる混合ガスであることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の食品包装体の製造方法。
【請求項7】
前記チャンバは、上部ハウジングと下部ハウジングとが接合することで形成され、
前記包装工程は、前記チャンバ内において、前記上部ハウジングと前記下部ハウジングの間に貼られた前記フィルムが前記下部ハウジングの表面に配置された前記容器の開口部を覆った状態でガス交換を行った後、前記フィルムを前記容器の前記フランジに熱溶着することを特徴とする請求項1?6に記載の食品包装体の製造方法。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、特許請求の範囲の請求項1ないし5の記載は「高温の前記液状物」及び「前記容器は、広口且つ深底形状であり」に係る点が明確でなく本件特許の請求項1ないし7に係る特許は特許法第36条第6項第2号の規定に違反してなされたものであり(以下、「理由1」という。)、「固形具材に含まれる水分の突沸」及び「加熱調理後の品質維持」について、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号の規定に違反してなされたものである(以下、「理由2」及び「理由3」という。)から、請求項1ないし7に係る特許を取り消すべきものである旨主張すると共に、主たる証拠として
甲第1号証:特開平11-192077号公報
及び従たる証拠として
甲第2号証:ウェブサイト「日本工業規格Z0108:2012及びZ8126-1:1999」の印刷物 2018年1月11日印刷
<URL:http://kikakurui.com/z0/Z0108-2012-01.html>
<URL:http://kikakurui.com/z8/Z8126-1-1999-01.html>
甲第3号証:特開2000-264331号公報
甲第4号証:特許第3925873号公報
甲第5号証:ウェブサイト「化学連載 第47回:蒸気圧降下と沸点上昇」の印刷物 2018年1月11日印刷
<URL:http://www.sidaiigakubu.com/examination-measure/chemistry/47/>
甲第6号証:ウェブサイト「加熱しても死なない食中毒菌 1.セレウス菌による食中毒」の印刷物 2018年1月11日印刷
<URL:http://www.kenko-kenbi.or.jp/science-center/foods/topics-foods/5377.html>
甲第7号証:特開平10-225267号公報
甲第8号証:特開平6-127526号公報
を提出し、請求項1ないし7に係る特許は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1ないし7に係る特許を取り消すべきものである旨(以下、「理由4」という。)主張している。

第4 甲各号証の記載
(1) 甲第1号証には、「容器に充填密封した殺菌済み固液混合食品の製造方法」の発明が記載されている。
(2) 甲第2号証には、「真空」及び「ガス置換包装」に係る技術的事項が記載されている。
(3) 甲第3号証には、「トレー状の容器に食品を充填し真空ガス置換充填包装機を用いガス置換度を99.5%以上として容器のフランジ部と蓋材とをヒートシールした方法」に係る技術的事項が記載されている。
(4) 甲第4号証には、「窒素で空気を置換して除去する空気の量を約99容量%以上として生赤身肉製品を包装する」という技術的事項が記載されている。
(5) 甲第5号証には、「蒸気圧降下と沸点上昇」に係る技術的事項が記載されている。
(6) 甲第6号証には、「加熱しても死なない食中毒菌」に係る技術的事項が記載されている。
(7) 甲第7号証には、「真空包装に供される加工食品の温度が高温では、食品中の空気の膨張や水分の突沸により食品の形状が破壊されるという問題があった」という技術的事項が記載されている。
(8) 甲第8号証には、「真空にする場合、食品中の水分が突沸する」という技術的事項が記載されている。

第5 判断
1 理由1について
(1) 特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された「高温の前記液状物」は、「高温」の液状物を意味する点で、その文言上も明確であるところ、明細書の【0032】には「この液体充填工程において、容器8内に盛り付けられた固形具材上に高温の液状物が充填されることにより、加熱殺菌処理後、固形具材に付着した空気中の浮遊粉塵または浮遊菌を殺菌することができる。また、高温の液状物で食品を覆うことにより、食品が包装されるまでの間、食品の表面を高温に保つことができるので、再度、細菌等が食品の表面に付着する可能性を抑えることができる。従って、液状物は、固形具材の表面全体を覆うように充填されていることが好ましい。充填される液状物の温度は、食品の表面部分に付着した細菌等を殺菌することができる温度であれば特に限定されないが、60?100℃であることが好ましく、また、固形具材の冷却により二次汚染が発生することを防ぐためにも、固形具材より高温であることが好ましい。また、特に、強い殺菌作用を持つ80℃以上が好ましい。」と記載されていることを参酌すると、特に「充填される液状物の温度は、食品の表面部分に付着した細菌等を殺菌することができる温度であれば特に限定されない」のであって、その「高温」は「食品の表面部分に付着した細菌等を殺菌することができる温度」を意味することが明確であり、具体的な温度に特定しなければならない性質のものではなく、さらに、セレウス菌といった、特定の細菌を殺菌できる温度を特定して限定しなければならない性質のものでもないといえる。したがって「高温の前記液状物」は明確である。

(2) 特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された「前記容器は、広口且つ深底形状であり」は、容器の形状が広口且つ深底形状であることを意味する点で、その文言上も明確であるところ、各請求項の記載を考慮し、明細書の【0020】には「容器8の形状は、盛り付けられる内容物(惣菜)の種類に応じたものが選択されるが、包装時に、包装内のガス交換がしやすい広口のものを用いることが好ましい。また、本発明が対象とする食品は固形具材と液状物からなるため、包装性及び外観の点から、底の深い容器を用いることが好ましい。」と記載されていることを参酌すると、固形具材と液状物からなる食品の容器への充填や容器にフィルムを被せ、ガス交換を行い、容器のフランジにフィルムを熱溶着する包装において扱いやすいといった程度の容器の形状であって、「包装時に、包装内のガス交換がしやすい」程度に「広口」であって、食品が「固形具材と液状物からなるため、包装性及び外観」において都合が良いように「底の深い」容器の形状を意味することが明確であり、具体的数値を用いて「広口」及び「深底」の程度を特定のものに限定しなければならない性質のものではないといえる。したがって「前記容器は、広口且つ深底形状であり」は明確である。

2 理由2及び理由3について
特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された包装工程における食品の温度及び減圧する圧力の組合せと、発明の詳細な説明の【0008】?【0010】等の発明が解決しようとする課題についての記載を加味した上で、発明の詳細な説明の記載を検討すると、【0045】には「突沸が起こりフィルムに多く澱粉溶液が付着し外観が非常に悪いもの」か否かを調べた【表1】及び【0047】に係る実験が記載され、それは、「タピオカ澱粉(松谷化学工業)55gと食紅1gを水に加熱溶解させた後、所定の温度で容器8(215×125×32mm)に40g充填したサンプル」について、その温度と減圧する所定の圧力を選択して確認したものである。また、【0048】に記載された実施例1は、突沸が起こり外観が非常に悪いものではないと解せるところ、80℃以上の高温のソースを鶏の唐揚げ上に充填し、盛り付けられた食品の中心品温が80℃を維持している間にチャンバ14内に収容され、フィルム17が被せられ、チャンバ内が300mbarまで減圧されたものであることも記載され、それは「固形具材と液状物からなる食品」である。そして、実施例1の包装工程における食品の温度及び減圧する圧力の80℃及び300mbarの組合せと同じ組合せについて「タピオカ澱粉」に係る「サンプル」の実験結果を見てみると、外観は突沸が起こり非常に悪いものということはなく、ガス置換率は99.5%以上であるから、両者に齟齬はないといえる。このことから、「タピオカ澱粉」に係る「サンプル」の実験結果は「固形具材と液状物からなる食品」に係る結果の代用として見られることは素直な理解といえる。その上、この実施例1と、【0050】に記載された比較例1と【0051】に記載された比較例2とを合わせて、【表2】及び【0053】の記載に係る「品質」及び「微生物検査」の評価を検討すると、当業者は当該発明の課題を解決できると認識し得るといえる。したがって、これらの記載からすると、当業者が、本件発明1ないし5の「食品包装体の製造方法」により、当該発明の課題を解決できると認識し得るものであって、サポート要件に適合しているといえ、また、本件特許に係る明細書の上記記載に基づけば、上記「食品包装体の製造方法」を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されており、実施可能要件に適合しているといえる。

3 理由4について
(1) 本件発明1について
本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証には「前記液状物充填工程完了後、食品の温度が85℃?90℃である前記加熱済み食品が盛り付けられた前記容器にフィルムを被せてチャンバ内に収納し、前記チャンバ内を500mbar以上600mbar以下に減圧し、不活性ガスを800?1200mbarまで導入して前記容器内を95%以上のガス置換率のガス交換を行った後、前記容器と前記フィルムを熱溶着して前記加熱済み食品を包装する包装工程」の、特に、「食品の温度が85℃?90℃である」場合、「チャンバ内を500mbar以上600mbar以下に減圧し、不活性ガスを800?1200mbarまで導入して前記容器内を95%以上のガス置換率のガス交換を行」うことは記載されていない。そして、この技術的事項に係る構成により本件発明1は「真空包装する食品が高温である場合、減圧時、固形具材に含まれる水分が突沸して食品の形状が破壊されてしまうという問題がある。また、破裂した食品や突沸液体の飛散により透明フィルムの汚れ、見栄えの低下、商品価値の低下を招くなど、包装された製品(食品包装体)の外観も著しく損われるという問題がある」(【0008】)との、明細書に記載された課題があるところ、「食品の品質保持期間を14日間ほどにすることができるとともに、出来たてと遜色のない色調および風味等も維持することができる。また、商品として外観の良いものを提供することができる」(【0015】)との、明細書に記載された効果を奏するものである。しかしながら、突沸の問題を考慮して食品の温度に応じてチャンバ内を所定の範囲の気圧に減圧調整してガス置換する旨の技術的事項は、甲第2号証ないし甲第8号証にも記載されていない。したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第8号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2) 本件発明2について
本件発明2と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証には「前記液状物充填工程完了後、食品の温度が80?85℃である前記加熱済み食品が盛り付けられた前記容器にフィルムを被せてチャンバ内に収納し、前記チャンバ内を400mbar以上600mbar以下に減圧し、不活性ガスを800?1200mbarまで導入して前記容器内を95%以上のガス置換率でガス交換を行った後、前記容器と前記フィルムを熱溶着して前記加熱済み食品を包装する包装工程」の、特に、「食品の温度が80?85℃である」場合、「チャンバ内を400mbar以上600mbar以下に減圧し、不活性ガスを800?1200mbarまで導入して前記容器内を95%以上のガス置換率のガス交換を行」うことは記載されていない。そして、この技術的事項に係る構成により本件発明2は、上述のような、明細書に記載された課題(【0008】)があるところ、明細書に記載された効果(【0015】)を奏するものである。しかしながら、突沸の問題を考慮して食品の温度に応じてチャンバ内を所定の範囲の気圧に減圧調整してガス置換する旨の技術的事項は、甲第2号証ないし甲第8号証にも記載されていない。したがって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第8号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3) 本件発明3について
本件発明3と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証には「前記液状物充填工程完了後、食品の温度が70?80℃である前記加熱済み食品が盛り付けられた前記容器にフィルムを被せてチャンバ内に収納し、前記チャンバ内を300mbar以上600mbar以下に減圧し、不活性ガスを800?1200mbarまで導入して前記容器内を95%以上のガス置換率でガス交換を行った後、前記容器と前記フィルムを熱溶着して前記加熱済み食品を包装する包装工程」の、特に、「食品の温度が70?80℃である」場合、「チャンバ内を300mbar以上600mbar以下に減圧し、不活性ガスを800?1200mbarまで導入して前記容器内を95%以上のガス置換率のガス交換を行」うことが記載されていない。そして、この点に係る構成により本件発明3は、上述のような、明細書に記載された課題(【0008】)があるところ、明細書に記載された効果(【0015】)を奏するものである。しかしながら、食品の温度に応じてチャンバ内を所定の範囲の気圧に減圧調整してガス置換する旨の技術的事項は、甲第2号証ないし甲第8号証にも記載されていない。したがって、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第8号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(4) 本件発明4について
本件発明4と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証には「前記液状物充填工程完了後、食品の温度が55?70℃である前記加熱済み食品が盛り付けられた前記容器にフィルムを被せてチャンバ内に収納し、前記チャンバ内を200mbar以上600mbar以下に減圧し、不活性ガスを800?1200mbarまで導入して前記容器内を95%以上のガス置換率でガス交換を行った後、前記容器と前記フィルムを熱溶着して前記加熱済み食品を包装する包装工程」の、特に、「食品の温度が55?70℃である」場合、「チャンバ内を200mbar以上600mbar以下に減圧し、不活性ガスを800?1200mbarまで導入して前記容器内を95%以上のガス置換率のガス交換を行」うことが記載されていない。そして、この点に係る構成により本件発明4は、上述のような、明細書に記載された課題(【0008】)があるところ、明細書に記載された効果(【0015】)を奏するものである。しかしながら、食品の温度に応じてチャンバ内を所定の範囲の気圧に減圧調整してガス置換する旨の技術的事項は、甲第2号証ないし甲第8号証にも記載されていない。したがって、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第8号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(5) 本件発明5について
本件発明5と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証には「前記液状物充填工程完了後、食品の温度が35?55℃である前記加熱済み食品が盛り付けられた前記容器にフィルムを被せてチャンバ内に収納し、前記チャンバ内を100mbar以上600mbar以下に減圧し、不活性ガスを800?1200mbarまで導入して前記容器内を95%以上のガス置換率でガス交換を行った後、前記容器と前記フィルムを熱溶着して前記加熱済み食品を包装する包装工程」の、特に、「食品の温度が35?55℃である」場合、「チャンバ内を100mbar以上600mbar以下に減圧し、不活性ガスを800?1200mbarまで導入して前記容器内を95%以上のガス置換率のガス交換を行」うことが記載されていない。そして、この点に係る構成により本件発明5は、上述のような、明細書に記載された課題(【0008】)があるところ、明細書に記載された効果(【0015】)を奏するものである。しかしながら、食品の温度に応じてチャンバ内を所定の範囲の気圧に減圧調整してガス置換する旨の技術的事項は、甲第2号証ないし甲第8号証にも記載されていない。したがって、本件発明5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第8号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(6) 本件発明6及び7について
本件発明6及び7は、本件発明1ないし5のいずれかを更に減縮したものに相当するから、上記本件発明1ないし5についての判断と同様の理由により、上記甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第8号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7) まとめ
以上のとおり、本件発明1ないし7は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第8号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-03-30 
出願番号 特願2012-91705(P2012-91705)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A23L)
P 1 651・ 121- Y (A23L)
P 1 651・ 536- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 菅原 洋平田中 耕一郎  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 田村 嘉章
窪田 治彦
登録日 2017-06-23 
登録番号 特許第6162927号(P6162927)
権利者 株式会社日清製粉グループ本社
発明の名称 食品包装体の製造方法  
代理人 渡辺 望稔  
代理人 三和 晴子  

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