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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01R
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01R
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01R
管理番号 1339207
異議申立番号 異議2017-701161  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-07 
確定日 2018-04-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第6144353号発明「多段部分的埋込粒子形態を有する改良固定アレイ異方性導電フィルム及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6144353号の請求項1ないし14に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6144353号の請求項1?14に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、2013年11月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年11月16日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年5月19日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成29年12月7日に特許異議申立人前田桂子(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第6144353号の請求項1?14の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明14」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
(a)実質的に均一な厚さを有する接着剤層と、
(b)前記接着剤層に個々に貼着された複数の導電性粒子とを備え、
前記導電性粒子は、前記接着剤層の表面に第1深さで部分的に若しくは完全に埋め込まれた粒子の第1非ランダムアレイと、前記接着剤層の前記と同じ表面に第2深さで部分的に若しくは完全に埋め込まれた導電性粒子の第2非ランダムアレイとを含み、
前記第1深さは前記第2深さよりも深いことを特徴とする異方性導電性フィルム。
【請求項2】
前記第1深さと前記第2深さとにおいてそれぞれ粒子の個数のピークを有することを特徴とする請求項1に記載の異方性導電性フィルム。
【請求項3】
前記導電性粒子の第1非ランダムアレイは約40?90%埋め込まれ、前記導電性粒子の第2非ランダムアレイは約10?60%埋め込まれることを特徴とする請求項1または2に記載の異方性導電性フィルム。
【請求項4】
前記導電性粒子の分散体を含む前記接着剤層の下に、分離非導電性接着剤層をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の異方性導電性フィルム。
【請求項5】
(a)実質的に均一な厚さを有する接着剤層と、
(b)前記接着剤層に個々に貼着された複数の導電性粒子とを備え、
前記導電性粒子は、前記接着剤層の表面に第1深さで部分的に埋め込まれた粒子の第1非ランダムアレイと、前記接着剤層の前記と同じ表面に第2深さで部分的に埋め込まれた導電性粒子の第2非ランダムアレイとを含み、
前記第1深さは前記第2深さよりも深いことを特徴とする異方性導電性フィルム。
【請求項6】
前記第1深さと前記第2深さとにおいてそれぞれ粒子の個数のピークを有することを特徴とする請求項5に記載の異方性導電性フィルム
【請求項7】
前記第1非ランダムアレイは、前記第2非ランダムアレイの深さに対して、前記粒子の直径の少なくとも約20%深く埋め込まれることを特徴とする請求項5に記載の異方性導電性フィルム。
【請求項8】
前記第1非ランダムアレイは、前記第2非ランダムアレイの深さに対して、前記粒子の直径の少なくとも約30%深く埋め込まれることを特徴とする請求項5に記載の異方性導電性フィルム。
【請求項9】
請求項1に記載の硬化又は未硬化異方性導電性フィルムを備えることを特徴とする電子装置又はディスプレイ又は部品。
【請求項10】
前記電子装置は、一体化回路又はプリント回路であることを特徴とする請求項9に記載の電子装置又はディスプレイ又は部品。
【請求項11】
(a)接着剤層の表面に粒子の第1非ランダムアレイを転移するステップと、
(b)前記第1非ランダムアレイを第1深さに部分的に埋め込むステップと、
(c)前記接着剤層の前記表面に粒子の第2非ランダムアレイを転移するステップと、
(d)前記第2非ランダムアレイを第2深さに部分的に埋め込むステップとを備え、
前記第1深さを前記第2深さよりも深くすることを特徴とする多段異方性導電性フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記第1深さと前記第2深さとにおいてそれぞれ粒子の個数のピークを設けることを特徴とする請求項11に記載の多段異方性導電性フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記異方性導電性フィルムは、連続フィルム又はロールの形状であることを特徴とする請求項1に記載の異方性導電性フィルム。
【請求項14】
前記第1アレイ及び前記第2アレイは、前記連続フィルム又はロールの限定領域内に配置されることを特徴とする請求項13に記載の異方性導電性フィルム。」

3 申立理由の概要
(1)新規性進歩性
異議申立人は、証拠として国際公開第2007/125993号(以下「甲第1号証」という。)、特表2002-519473号公報(以下「甲第2号証」という。)及び特開2007-193972号公報(以下「甲第3号証」という。)を提出し、

ア 本件発明1及び5は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明である。
イ 本件発明1?8、13及び14は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件発明1は、甲第3号証に記載された発明であるか、又は、甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 本件発明9は、甲第1号証に記載された発明である。
オ 本件発明9及び10は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
カ 本件発明11及び12は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

上記ア?カのとおりであるから、本件発明1?14は、特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は、特許法第29条第2項の規定に違反するから、請求項1?14に係る本件特許を取り消すべき旨主張している。

(2)記載不備
ア 特許法第36条第4項第1号
異議申立人は、本件特許の明細書の段落【0009】【表1】には、本件発明1?14の実施により得られる効果に関し、「平均粒子密度」、「粒子補足率」、「接触抵抗」及び「剥離強度」の具体的データが示されているが、この具体的データを取得した条件(使用した異方性導電フィルムおよび異方性導電フィルムで接続する対象物やそれに備わっている端子や電極の具体的な構成(材料、形状、寸法等)、データ取得に用いた装置及びその操作条件等)について全く記載がなく、当業者は本件発明1?14の効果を確認することができないから、本件特許の明細書は、当業者が本件発明1?14を実施することができる程度に明確且つ十分に記載されたものではなく、特許法第36条第4項第1号の規定に違反して特許されたものであるから、請求項1?14に係る本件特許を取り消すべき旨主張している。

イ 特許法第36条第6項第1号
異議申立人は、本件特許の明細書の段落【0041】に「この様式において埋め込み深さを異ならせることにより、改良された耐性及び引っ張り強度が達成される。」との記載があり、接着剤中における導電粒子の深さ位置は、接着剤層を構成する樹脂組成や粘度や、接着剤層に対して異なる深さに配置された導電粒子の粒子径や個数密度、更に導電粒子間距離などの条件に影響を受けるはずであるから、本件特許の改良された耐性及び引っ張り強度の効果を達成するためには、請求項1?8、13及び14にそれらの条件が記載されるべきところ、そのような条件は記載されていないから、本件発明1?8、13及び14は、明細書の発明の詳細に記載されていない発明であり、請求項1?8、13及び14に係る本件特許は特許法第36条第6項第1号の規定に違反して特許されたものであるから、請求項1?8、13及び14に係る本件特許を取り消すべき旨主張している。

ウ 特許法第36条第6項第2号
異議申立人は、電子装置又はディスプレイ又は部品において、異方性導電フィルムが、その機能が発揮されるように当該電子装置又はディスプレイ又は部品の構成に取り込まれているかが不明であるから、本件発明9及び本件発明9に従属する本件発明10は不明確であり、請求項9及び10に係る本件特許は特許法第36条第6項第2号の規定に違反して特許されたものであるから、請求項9及び10に係る本件特許を取り消すべき旨主張している。

4 甲号証の記載
(1)甲第1号証・甲1発明
甲第1号証には、「導電粒子配置シート及び異方導電性フィルム」に関し、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。以下同様。

ア「[0041]
以下、図1を参照しながら、本発明における基準面P1、P2と平均突出高さh1、h2の関係について説明する。
絶縁樹脂シートSは表裏の二つの相対する表面を有し、それらを基準面P1及び基準面P2と称する。但し、本発明の導電粒子配置シートにおいて、絶縁樹脂シートSの基準面P1からは導電粒子Eが突出しているものとし、また、基準面P1と、導電粒子Eの基準面P1に平行な接線であって該基準面P1から突出した突出部分に接する接線L1との間の距離の平均を平均突出高さh1(h1>0)とし、基準面P2と、導電粒子Eの基準面P2に平行な接線であって該導電粒子を挟んで接線L1とは反対側にある接線L2との間の距離の平均を平均突出高さh2とした場合、h1>h2の関係を満たすものとする。ここで、該接線L2が該絶縁樹脂シート内にある時はh2<0(図1右)、該接線L2が基準面P2上にある時はh2=0、該接線L2が該絶縁樹脂シート外にある時はh2>0(図1左)とする。」

イ「[0067]
本発明の導電粒子配置シートは、そのまま単独で接合材料として用いることもでき るし、絶縁性のフィルムと併用して用いることもでき、更に、導電粒子配置シートの少 なくとも片面に、絶縁性接着剤層4を積層した異方導電性フィルムとすることもできる( 図3(e)、(f))。異方導電性フィルムとする場合、延伸可能なシートと粘着剤の剥離は 、絶縁性接着剤の積層前に行ってもよいし、積層後に行ってもよい。絶縁性接着剤 の積層後に行う方が、作業性に優れるため、好ましい。 」

ウ「[0093][実施例1]
フェノキシ樹脂(InChem社製、商品名:PKHC)80質量部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:AER2603)20質量部、シランカップリング剤(日本ユニカー社製、商品名:A-187)0.25質量部、酢酸エチル300質量部を混合し、絶縁樹脂シート用ワニスを得た。絶縁樹脂シート用ワニスから溶剤を除去して得た絶縁樹脂シートの180℃溶融粘度は、1500Pa・sであった。
[0094]
100μm無延伸共重合ポリプロピレンフィルム上にブレードコーターを用いて酢酸エチルで樹脂分5質量%に希釈したアクリルポリマーを塗布、80℃で10分間乾燥し、厚さ1μmの粘着剤層を形成した。ここで用いたアクリルポリマーは、アクリル酸メチル62質量部、アクリル酸-2-エチルヘキシル30.6質量部、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル7質量部を酢酸エチル233質量部中で、アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を開始剤とし、窒素ガス気流中65℃で8時間重合して得られた重量平均分子量が95万のものである。なお、重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフ法(GPC)により測定した。
[0095]
この粘着剤剤上に、平均粒径4μmの導電粒子(積水化学社製、商品名:ミクロパールAU)を一面に充填し、0.2MPa圧のエアーブローにより粘着剤に到達していない導電粒子を排除した。その結果、充填率が74%の単層導電粒子層が形成された。その上に絶縁樹脂シート用ワニスを、ブレードコーターを用いて塗布、80℃で10分間乾燥し、厚さ7μmの絶縁樹脂シート層を形成し、導電粒子充填シートAを得た。
[0096]
次に導電粒子充填シートAを、試験用二軸延伸装置を用いて、135℃で、縦横共に10%/秒の比率で2.2倍まで延伸し、徐々に室温まで冷却、導電粒子が埋め込まれた絶縁樹脂シートからポリプロピレンフィルムと粘着剤を剥離し、導電粒子配置シートAを得た。
[0097]
導電粒子配置シートAを、走査型電子顕微鏡(日立製作所製:S-4700、以下同じ)を用いて観察したところ、導電粒子は絶縁樹脂シート中に存在し、導電粒子のない絶縁樹脂シート部は略平滑であり、導電粒子は絶縁樹脂シートの片面側に大きく突出し、その突出部は絶縁樹脂シートで被覆されていた。一方、反対面は小さく突出し、その突出部は導電粒子が露出していた。更に、導電粒子の中心を通る様に導電粒子配置シートAを切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ(図5)、絶縁樹脂シートの厚みは1.5μmであり、導電粒子の突出高さが大きい側の突出部頂部は、1.2μmの厚みの絶縁樹脂シートで被覆されていた。一方、突出高さが小さい側の突出高さを、レーザー顕微鏡(キーエンス製,VK-9500)を用い、0.01μm刻みで測定(以下同じ)した結果、その突出高さは0.1μmであった。以上より、導電粒子の突出高さの大きい側の突出高さは、2.4μmと算出された。
[0098]
更に、導電粒子配置シートAをマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、商品名:VHX-100、以下同じ)で観察した画像から、画像処理ソフト(旭化成株式会社製、商品名:A像くん、以下同じ)を用いて、導電粒子の中心間距離の平均値及びその変動係数を求めた結果、平均値が10.1μm、変動係数が0.29であった。また、導電粒子の面積率は15.1%であった。なお、導電粒子の中心間距離は、各粒子の中心点を用いたデローニ三角分割でできる三角形の辺の長さを使用し、導電粒子の観察は0.06mm^(2)内の粒子について行った。」

エ「[0119][図1]本発明における基準面P1、P2と平均突出高さh1、h2の関係を示す概念図である。(省略)」

オ 上記記載事項ウの「平均粒径4μmの導電粒子」との記載(段落[0095]参照。)及び「導電粒子の突出高さの大きい側の突出高さは、2.4μm」との記載(段落[0097]参照。)並びに[図2]?[図5]の図示内容から、導電粒子は、前記粘着材層の表面に一定の深さで部分的に若しくは完全に埋め込まれていると認められる。

カ 上記記載事項ウの、充填率が74%の単層導電粒子層が形成された導電粒子充填シートAを試験用二軸延伸装置を用いて縦横共に2.2倍まで延伸して導電粒子配置シートAを製作した旨の記載(段落[0095]及び[0096]参照)に照らせば、[図5]からは、導電粒子配置シートAの複数の導電粒子は、単層導電粒子層を含むことが見て取れる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

[甲1発明]
「厚さ1μmのものを縦横共に2.2倍に二軸延伸した粘着材層と、
前記粘着材層に、単層で、中心間距離の平均値が10.1μmとなるよう充填された複数の導電粒子とを備え、
前記導電粒子は、前記粘着材層の表面に一定の深さで部分的に若しくは完全に埋め込まれた単層導電粒子層を含む、導電粒子配置シートAからなる異方導電性フィルム。」

(2)甲第2号証・甲2発明1及び2
甲第2号証には、「ファインピッチの異方導電性接着剤」に関し、次の事項が記載されている。

ア「【0016】
発明の概要
本発明の異方導電性接着剤は、特にファインピッチの回路(数百マイクロメートル以下の寸法の電極間隔および電極パッドを用いるもの)についてこうした問題に取り組むものである。本発明は、所定のパターンの導電性粒子を単一層で有する異方導電性接着剤を提供する。粒子の配置は、拡大した粒子ストリングが形成されないよう機械的に束縛されている。このように、回路電極間の間隔は、接着剤中の粒子サイズに近づく。さらに、粒子が規則配列パターンで構成されているため、粒子密度は非常に小さな電極パッドを収容するのに十分高いままとなる。
【0017】
一態様において、本発明は、ほぼ均一な厚さを有し、複数の導電性粒子を有する接着剤層からできた異方性接着剤を提供する。導電性粒子は接着剤層の厚さより少なくともやや小さいサイズを有する。粒子はそれぞれ接着剤層に接合して、粒子部位の周期的配列で構成されている。粒子部位の大部分が、所定の最大数の粒子以下であり、粒子は特定の粒子部位に近接するように構成されている。粒子部位の大部分はまた、少なくとも所定の最低数の粒子を含有しているのが好ましい。粒子部位の大部分は、同じ所定数の粒子を含有しているのがより好ましい。」

イ「【0021】
詳細な説明
A.異方導電性接着剤
第1の実施形態
図1(a)に、本発明の異方導電性接着剤の一実施形態の平面図を示す。異方導電性接着剤10には、接着剤層12と接着剤層12に接合した導電性粒子16が含まれる。導電性粒子16は、粒子部位14で構成されている。導電性粒子16以外、接着剤層12には導電性材料は実質的に含まれていない。
【0022】
各粒子部位14にはゼロかそれ以上の粒子が含まれている。2個以上の粒子が粒子部位にあるときは、粒子は他の粒子に近接して存在していて、好ましくは他の粒子に接触している。粒子部位14は、接着剤層12を跨ぐ周期的配列で構成されている。図1(a)の場合、粒子部位14はそれぞれ2個の近接粒子を含み、粒子部位は六角配列で構成されている。粒子部位を六角配列で構成し、1粒子部位当たりに2個の粒子を用いるのは単なる例示に過ぎず、本発明または請求項の範囲を限定するものではない。」

ウ「【0033】
第2の実施形態
他の実施形態において、本発明の異方導電性接着剤は、構造化剥離ライナを含む。図3(a)および(b)に、任意の剥離ライナ28および導電性粒子16と接着剤層12を有する導電性接着剤構造20を示す。
【0034】
任意の剥離ライナ28は、一表面に一連の凹部24を有するフィルムである。ライナ28に凹部24を形成するプロセスは、後のセクションBで述べる。図3(a)および(b)には、剥離ライナ上に周期的な矩形配列で構成された矩形凹部が示されているが、凹部は所望の形状とし、所望のパターンで構成してよい。示され、記載された凹部の形状およびパターンは単なる例示に過ぎず、本発明または請求の範囲を限定するものではない。しかしながら、以下で明らかとなる理由から、凹部は実質的に同じ深さを有することが重要である。剥離ライナ自身は、接着剤層から剥がすことができるよう可撓性であるのが好ましい。剥離ライナに剥離特性を与えるために、少なくとも、凹部を有する剥離ライナ面は低接着性表面で、好ましくは、剥離ライナの両面ともが低接着性表面である。
【0035】
導電性粒子16は、任意の剥離ライナ28の凹部24中に配置される。凹部間の剥離ライナの表面領域には、導電性粒子16やその他導電性材料が実質的にないのが好ましい。粒子は凹部において単一層で存在している。好ましくは、粒子のサイズは、凹部の深さとほぼ同じで、凹部に粒子の単一層が充填できるのみとする。導電性接着剤を用いて、対向する電極パッド間に電気的な接触を行うときには、複数の単一粒子経路が各電極接続に存在するものの、パッド間の各導電性経路は単一の導電性粒子となるように粒子の単一層とするのが望ましい。これにより、全体の導電性経路の抵抗を増加させる可能性のある1経路当たりの接触表面の数が減じる。」

エ「【0037】
接着剤層12は、任意の剥離ライナ28の上部に形成されて導電性粒子16と接触する。導電性粒子は個々に接着剤層に接合し、接着剤層が剥離ライナから除去されると、導電性粒子は図3(a)および(b)に示すように接着剤層に残る。接着剤層は、実質的に均一な厚さを有するのが好ましい。接着剤層は、少なくともやや流動可能か、または少なくとも導電性粒子よりも柔らかくし、回路層が、間にある導電性接着剤と共に押されたときに、導電性粒子が接着剤層を通じて押されて、最終的に両回路層上の電極と接触する。回路層ボンディング中に導電性粒子に浸透する接着剤を適切に軟化するために、接着剤層に熱を与えることが必要な場合と必要でない場合とがある。」

オ「【0046】
図5(a)から(c)に、本発明の異方導電性接着剤を用いた2枚の回路層の電気接続方法における様々な工程を示す。図5(a)に、任意のバッキングフィルム18に積層された接着剤層12に接合された導電性粒子16を有する本発明による異方導電性接着剤を示す。図5(a)に示された構造は例示として用いられる。図1?3に示したようなその他の構成もまた用いることができる。バッキングフィルムを有する構造を用いるのが便利であるが、かかる構造を用いる必要はない。
【0047】
次に、本発明の異方導電性接着剤を、図5(b)に示すように、回路層50の電極52aおよび52bと接触させる。導電性粒子は導電性接着剤に均一に分散されているため、接着剤を回路層の電極と位置合わせする必要がない。導電性接着剤のバッキングに圧力を加えてもよい。圧力を加えると、電極上に載っている導電性粒子が接着剤層に埋め込まれて、接着剤層が、電極表面と接触し、回路層および電極パターンの輪郭にやや沿うようになる。導電性接着剤を塗布すると、電極間に間隙56のような間隙領域が作られる。この時点で、もしバッキングフィルムがあれば除去する。」

カ 上記記載事項イに「粒子部位14は、接着剤層12を跨ぐ周期的配列で構成されている。」(段落【0022】参照。)と記載されており、粒子部位14が周期的配列を構成することは、導電性粒子16が周期的配列を構成することに等しいと認められる。

キ 【図1a】、【図1b】及び【図5a】からは、複数の導電性粒子16が接着剤層12の表面に部分的に埋め込まれた状態が見て取れる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容から、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明1」及び「甲2発明2」という。)が記載されていると認められる。

[甲2発明1]
「実質的に均一な厚さを有する接着剤層12と、
前記接着剤層12に個々に接合された複数の導電性粒子16とを備え、
前記導電性粒子16は、前記接着剤層12の表面に単一層で部分的に埋め込まれ周期的配列を構成する異方導電性接着剤10。」

[甲2発明2]
「接着剤層12の表面に所望のパターンに配置された導電性粒子16を残すステップと、
前記所望のパターンに配置された導電性粒子16を前記接着剤層12に部分的に埋め込むステップとを備える異方導電性接着剤10の製造方法。」

(3)甲第3号証・甲3発明
甲第3号証には、「コネクター装置、回路基板検査装置および導電接続構造体」に関し、次の事項が記載されている。

ア「【0014】
コネクターユニット11における第1の異方導電性エラストマーシート12および第2の異方導電性エラストマーシート13の各々は、図3に示すように、絶縁性の弾性高分子物質中に、磁性を示す導電性粒子Pが、厚み方向に並ぶよう配向して連鎖が形成された状態で、かつ、当該導電性粒子Pによる連鎖が面方向に分散した状態で含有されてなるものである。
第1の異方導電性エラストマーシート12および第2の異方導電性エラストマーシート13の各々を形成する弾性高分子物質としては、架橋構造を有する高分子物質が好ましい。(省略)」

イ「【0021】
次いで、図6に示すように、加圧ロール38aおよび支持ロール38bよりなる加圧ロール装置38を用い、一面側成形部材35および他面側成形部材36によって導電性エラストマー用材料12Bを挟圧することにより、当該一面側成形部材35と当該他面側成形部材36との間に、所要の厚みの導電性エラストマー用材料層12Aを形成する。この導電性エラストマー用材料層12Aにおいては、図7に拡大して示すように、導電性粒子Pが均一に分散した状態で含有されている。
その後、一面側成形部材35の裏面および他面側成形部材36の裏面に、例えば一対の電磁石を配置し、当該電磁石を作動させることにより、導電性エラストマー用材料層12Aの厚み方向に平行磁場を作用させる。その結果、導電性エラストマー用材料層12Aにおいては、当該導電性エラストマー用材料層12A中に分散されている導電性粒子Pが、図8に示すように、面方向に分散された状態を維持しながら厚み方向に並ぶよう配向し、これにより、それぞれ厚み方向に伸びる複数の導電性粒子Pによる連鎖が、面方向に分散した状態で形成される。
そして、この状態において、導電性エラストマー用材料層12Aを硬化処理することにより、弾性高分子物質中に、導電性粒子Pが厚み方向に並ぶよう配向した状態で、かつ、当該導電性粒子Pによる連鎖が面方向に分散された状態で含有されてなる第1の異方導電性エラストマーシート12が製造される。」

上記記載事項から、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。

[甲3発明]
「所要の厚みの導電性エラストマー用材料層12Aを硬化処理した弾性高分子物質の層と、
前記弾性高分子物質の層に、厚み方向に並ぶように配向して連鎖し面方向に分散した状態で含有される複数の導電性粒子Pとを備える第1の異方導電性エラストマーシート12。」

5 判断
(1)新規性進歩性について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「厚さ1μmのものを縦横共に2.2倍に二軸延伸した粘着材層」は、本件発明1の「実質的に均一な厚さを有する接着剤層」に相当し、以下同様に、「中心間距離の平均値が10.1μmとなるよう充填された複数の導電粒子」は「前記接着剤層に個々に貼着された複数の導電性粒子」に、「粘着材層」と「導電粒子」とを備えた「導電粒子配置シートAからなる異方導電性フィルム」は「接着剤層」と「導電性粒子」とを備えた「異方性導電性フィルム」に、それぞれ相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「実質的に均一な厚さを有する接着剤層と、
前記接着剤層に個々に貼着された複数の導電性粒子とを備えた異方性導電性フィルム。」
である点で一致し、次の相違点1で相違する。

[相違点1]
本件発明1は、「前記導電性粒子は、前記接着剤層の表面に第1深さで部分的に若しくは完全に埋め込まれた粒子の第1非ランダムアレイと、前記接着剤層の前記と同じ表面に第2深さで部分的に若しくは完全に埋め込まれた導電性粒子の第2非ランダムアレイとを含み、前記第1深さは前記第2深さよりも深い」のに対し、甲1発明は、「導電粒子は、前記粘着材層の表面に一定の深さで部分的に若しくは完全に埋め込まれた単層導電粒子層を含む」点。

異議申立人は、甲第1号証の図1には、導電性粒子が異なる深さで埋め込まれている導電粒子配置シートが開示されている旨主張している(異議申立書第10ページ第21?22行)が、この甲第1号証の図1は、平均突出高さh1(あるいはh2)に、ばらつきがあることを示すための概念図(段落[0041]及び段落[0119]参照)であり、この図1に開示されている導電粒子配置シートは、本件特許の願書に添付された明細書及び図面の、段落【0028】及び【図3】に従来技術として示されている、単一様式分散を呈する1段固定アレイACF10に相当するものに過ぎない。

したがって、本件発明1は甲1発明と同一とはいえない。

(イ)本件発明1と甲2発明1とを対比すると、甲2発明1の「実質的に均一な厚さを有する接着剤層12」は、本件発明1の「実質的に均一な厚さを有する接着剤層」に相当し、以下同様に、「前記接着剤層12に個々に接合された複数の導電性粒子16」は「前記接着剤層に個々に貼着された複数の導電性粒子」に、「接着剤層12」と「導電性粒子16」とを備えた「異方導電性接着剤10」は、「接着剤層」と「導電性粒子」とを備えた「異方性導電性フィルム」に、それぞれ相当する。

そうすると、本件発明1と甲2発明1とは、

「実質的に均一な厚さを有する接着剤層と、
前記接着剤層に個々に貼着された複数の導電性粒子とを備えた異方性導電性フィルム。」
である点で一致し、次の相違点2で相違する。

[相違点2]
本件発明1は、「前記導電性粒子は、前記接着剤層の表面に第1深さで部分的に若しくは完全に埋め込まれた粒子の第1非ランダムアレイと、前記接着剤層の前記と同じ表面に第2深さで部分的に若しくは完全に埋め込まれた導電性粒子の第2非ランダムアレイとを含み、前記第1深さは前記第2深さよりも深い」のに対し、甲2発明1は、「前記導電性粒子16は、前記接着剤層12の表面に単一層で部分的に埋め込まれ周期的配列を構成する」点。

異議申立人は、甲第2号証の図5bには、異なる深さで複数の導電粒子が押し込まれている異方導電性フィルムが開示されている旨主張している(異議申立書第11ページ第27行?第12ページ第1行)が、この甲第2号証の図5bは、図5aに記載されている異方導電性接着剤を、回路層50の電極52a、52bに接触させた工程(段落【0047】等参照。)を開示しているのであり、図5aに記載されている異方導電性接着剤は、一定の深さで複数の導電粒子が単一層として埋め込まれた異方導電性接着剤に過ぎない。

したがって、本件発明1は甲2発明1と同一とはいえない。

(ウ)相違点1及び2について検討すると、(ア)及び(イ)で述べたとおり、甲第1号証及び甲第2号証のいずれにも、導電性粒子を接着剤層中の異なる深さに埋め込むことは記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明を相違点1に係る本件発明1の構成とすること、及び甲2発明1を相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、甲第1、2号証に基いて当業者が容易になし得たこととはいえない。

(エ)本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「所要の厚みの導電性エラストマー用材料層12Aを硬化処理した弾性高分子物質の層」は、本件発明1の「実質的に均一な厚さを有する接着剤層」と、「実質的に均一な厚さを有する層」である限りにおいて共通する。
甲3発明の「前記弾性高分子物質の層に、」「含有される複数の導電性粒子P」は、本件発明1の「前記接着剤層に個々に貼着された複数の導電性粒子」と、「前記層に含有された複数の導電性粒子」である限りにおいて共通する。
甲3発明の「第1の異方導電性エラストマーシート12」は、本件発明1の「異方性導電性フィルム」と、「異方性導電性のシート」である限りにおいて共通する。
そうすると、本件発明1と甲3発明とは、
「実質的に均一な厚さを有する層と、
前記層に含有された複数の導電性粒子とを備えた異方性導電性のシート。」である点で一致し、次の相違点3及び4で相違する。

[相違点3]
「実質的に均一な厚さを有する層」、「前記層に含有された複数の導電性粒子」及び「異方性導電性のシート」が、本件発明1では「接着剤層」、「前記接着剤層に個々に貼着された複数の導電性粒子」及び「異方性導電性フィルム」であるのに対し、甲3発明は「導電性エラストマー用材料層12Aを硬化処理した弾性高分子物質の層」、「前記弾性高分子物質の層に、」「含有される複数の導電性粒子P」及び「第1の異方導電性エラストマーシート12」である点。

[相違点4]
導電性粒子について、本件発明1は「前記接着剤層の表面に第1深さで部分的に若しくは完全に埋め込まれた粒子の第1非ランダムアレイと、前記接着剤層の前記と同じ表面に第2深さで部分的に若しくは完全に埋め込まれた導電性粒子の第2非ランダムアレイとを含」むのに対し、甲3発明は「厚み方向に並ぶように配向して連鎖し面方向に分散した状態で含有される」点。

異議申立人は、上記相違点4に係る構成に関して、甲第3号証の図3には、導電性粒子Pが、絶縁性弾性高分子物質層の表面に第1深さで完全に埋め込まれた粒子が第1非ランダムアレイ状に配置され、さらに第1深さより浅い第2深さで完全に埋め込まれた粒子が第2非ランダムアレイ状に配置されている異方導電性エラストマーシートが記載されている旨主張している(異議申立書第12ページ第20?23行)。
しかしながら、この甲第3号証の導電性粒子Pは、「当該導電性粒子Pによる連鎖が面方向に分散した状態で含有されてなるもの」(段落【0014】参照。)であり、「分散」による配置は磁場によるものであり、通常ランダムであると認められるから、甲第3号証の図3には、導電性粒子Pが第1非ランダムアレイ状あるいは第2非ランダムアレイ状に配置されていることが記載されているとはいえない。

そして、上述のとおり甲第3号証には、磁場により導電性粒子Pを配列することしか記載されていないので、少なくとも相違点4に係る本件発明1の構成とすることが当業者にとって容易に想到し得るとはいえない。

イ 本件発明2?4、9、10、13及び14について
本件発明2?4、9、10、13及び14は、本件発明1を更に減縮したものであるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、上記甲第1?3号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明5について
本件発明5は、本件発明1の「前記導電性粒子は、前記接着剤層の表面に第1深さで部分的に若しくは完全に埋め込まれた粒子の第1非ランダムアレイと、前記接着剤層の前記と同じ表面に第2深さで部分的に若しくは完全に埋め込まれた導電性粒子の第2非ランダムアレイとを含み、」との特定事項を「前記導電性粒子は、前記接着剤層の表面に第1深さで部分的に埋め込まれた粒子の第1非ランダムアレイと、前記接着剤層の前記と同じ表面に第2深さで部分的に埋め込まれた導電性粒子の第2非ランダムアレイとを含み、」に限定したものである。
そうすると、本件発明5と甲1発明、甲2発明1及び甲3発明それぞれとを対比すると、本件発明1の場合と同様に、少なくともそれぞれ相違点1、2及び4の点で相違し、この点は上記アで検討したとおり、甲1発明、甲2発明1又は甲3発明に基いて、当業者が容易に想到し得たと認められない。
したがって、本件発明5は、上記甲1発明、甲2発明1又は甲3発明と同一でなく、甲1発明、甲2発明1又は甲3発明から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

エ 本件発明6?8について
本件発明6?8は、本件発明5に係る発明を更に減縮したものであるから、本件発明5についての判断と同様の理由により、本件発明6?8に係る発明は、甲1発明、甲2発明1又は甲3発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ 本件発明11について
本件発明11と甲2発明2とを対比すると、甲2発明2の「接着剤層12の表面に所望のパターンに配置された導電性粒子16を残すステップ」及び「前記所望のパターンに配置された導電性粒子16を前記接着剤層12に部分的に埋め込むステップ」は、本件発明11の「接着剤層の表面に粒子の第1非ランダムアレイを転移するステップ」及び「記第1非ランダムアレイを第1深さに部分的に埋め込むステップ」に相当する。
そして、甲2発明2の「異方導電性接着剤10の製造方法」と本件発明11の「多段異方性導電性フィルムの製造方法」とは「異方性導電性フィルムの製造方法」という限りで共通する。

したがって、本件発明11と甲2発明2とは
「接着剤層の表面に粒子の第1非ランダムアレイを転移するステップと、
前記第1非ランダムアレイを第1深さに部分的に埋め込むステップとを備える異方性導電性フィルムの製造方法。」
である点で一致し、次の相違点5で相違する。

[相違点5]
本件発明11は「(c)前記接着剤層の前記表面に粒子の第2非ランダムアレイを転移するステップと、
(d)前記第2非ランダムアレイを第2深さに部分的に埋め込むステップとを備え、
前記第1深さを前記第2深さよりも深くすることを特徴とする多段異方性導電性フィルムの製造方法。」であるのに対し、甲2発明2は、このような構成ではない点。

そして、甲第2号証には、上記相違点5に係る本件発明11の構成について記載も示唆もされていないから、本件発明11は、甲2発明2から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

カ 本件発明12について
本件発明12は、本件発明11を更に減縮したものであるから、本件発明11についての判断と同様の理由により、本件発明12は、甲2発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

以上ア?カのとおりであるから、本件発明1及び5は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明ではなく、本件発明1?8、13及び14は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明でなく、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、本件発明9は、甲第1号証に記載された発明でなく、本件発明9及び10は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、本件発明11及び12は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。


(2)記載不備について
ア 特許法第36条第4項第1号
異方性導電フィルムや、異方性導電フィルムで接続する対象物や、それに備わっている端子や電極は、本件特許の出願前から多数知られていて、具体的な構成(材料、形状、寸法等)やデータ取得に用いる装置及びその操作条件等は、当業者が通常知り得る範疇のものに過ぎない。
したがって、当業者であれば、単一面形態(従来技術)の異方性導電フィルムを用意するにあたって、「平均粒子密度」が本件特許の明細書の段落【0009】【表1】と同様となるもの(約17,000/mm^(2))を用意し、その異方性導電フィルムの「粒子補足率」、「接触抵抗」及び「剥離強度」を測定することは容易である。

そして、前記単一面形態(従来技術)の異方性導電フィルムの材料などを流用して、「平均粒子密度」が前記単一面形態(従来技術)の異方性導電フィルムより少し低くなる(約16,000/mm^(2))とともに、第1深さで埋め込まれた粒子の第1非ランダムアレイと、第2深さで埋め込まれた導電性粒子の第2非ランダムアレイとを含み、前記第1深さは前記第2深さよりも深い構成の、2段形態の異方性導電フィルムを、第1深さ及び第2深さを変えて複数用意することも、当業者にとって容易であると認められる。

さらに、前記単一面形態(従来技術)の異方性導電フィルムと比較して、「粒子補足率」、「接触抵抗」及び「剥離強度」の測定結果の大小関係が当該【表1】と同様になるものが前記複数用意したものの中にあることを確認することも、当業者にとって容易であると認められる。

そうであれば、本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1?14を実施することができる程度に明確且つ十分に記載されたものであるといえる。

イ 特許法第36条第6項第1号
本件発明1?8、13及び14は、短絡のおそれがなく超微細ピッチ結合が可能である異方性導電フィルムにおいて、十分な導電性又はインピーダンス特性を確保することを課題としていると認められる。(明細書の段落【0003】及び【0005】参照。)
そして、本件特許の明細書の段落【0009】【表1】によれば、本件発明1?8、13及び14に共通する、第1深さで埋め込まれた粒子の第1非ランダムアレイと、第2深さで埋め込まれた導電性粒子の第2非ランダムアレイとを含み、前記第1深さは前記第2深さよりも深い構成の、2段形態の異方性導電フィルムであれば、従来の単一面形態(従来技術)の異方性導電フィルムに比べて、「粒子補足率」及び「接触抵抗」が優れていて、十分な導電性又はインピーダンス特性が確保されるととともに、「剥離強度」が優れていて耐性及び引っ張り強度が十分であることが確認できる。

そうすると、本件発明1?8、13及び14は、異方性導電フィルムにおいて、上述の第1非ランダムアレイ及び第2非ランダムアレイを設けることにより課題を達成するものだから、耐性及び引っ張り強度の改善のために接着剤中における導電粒子の深さ位置を定めることや、接着剤層を構成する樹脂組成や粘度や、接着剤層に対して異なる深さに配置された導電粒子の粒子径や個数密度、更に導電粒子間距離などの諸条件は、発明を特定するために必要な事項とは認められない。
そうであれば、本件発明1?8、13及び14は、明細書の発明の詳細に記載された発明であるといえる。

ウ 特許法第36条第6項第2号
本件発明9は「請求項1に記載の硬化又は未硬化異方性導電性フィルムを備えることを特徴とする電子装置又はディスプレイ又は部品。」であり、本件発明10は「前記電子装置は、一体化回路又はプリント回路であることを特徴とする請求項9に記載の電子装置又はディスプレイ又は部品。」であり、本件発明1の「異方性導電性フィルム」を備える電子装置又はディスプレイ又は部品であることは明確に理解でき、電子装置等への適用箇所が具体的に特定されていないことで、発明が明確でないとまではいえない。
そうすると、本件発明9及び本件発明9に従属する本件発明10は明確である。

以上のとおり、本件特許の明細書は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たし、本件特許の特許請求の範囲は特許法第36条第6項1号及び第2号の規定を満たしている。

6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-04-10 
出願番号 特願2015-542733(P2015-542733)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01R)
P 1 651・ 537- Y (H01R)
P 1 651・ 536- Y (H01R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前田 仁  
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 内田 博之
小関 峰夫
登録日 2017-05-19 
登録番号 特許第6144353号(P6144353)
権利者 トリリオン サイエンス インコーポレイテッド
発明の名称 多段部分的埋込粒子形態を有する改良固定アレイ異方性導電フィルム及びその製造方法  
代理人 末成 幹生  
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