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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 産業上利用性  A61K
管理番号 1339208
異議申立番号 異議2017-701219  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-21 
確定日 2018-04-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第6150846号発明「1回当たり100?200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする、PTH含有骨粗鬆症治療/予防剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6150846号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6150846号の請求項1及び2に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成22年9月8日(優先権主張 平成21年9月9日)を国際出願日とする特願2011-530844号の一部を平成27年5月25日に新たな特許出願としたものであって、平成29年6月2日にその特許権の設定登録がなされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、平成29年12月21日に特許異議申立人櫻井洋(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
本件特許に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」という。また、これらをまとめて単に「本件発明」ということがある。)。

「【請求項1】
1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする、PTH(1-34)又はその塩を有効成分として含有する、増悪椎体骨折抑制のための骨粗鬆症治療ないし予防剤であって、下記(1)?(3)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者に投与されることを特徴とする、増悪椎体骨折抑制のための骨粗鬆症治療ないし予防剤;
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存椎体骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である、および/または、骨萎縮度が萎縮度I度以上である。

【請求項2】
PTH(1-34)又はその塩がヒトPTH(1-34)酢酸塩である、請求項1に記載の骨粗鬆症治療ないし予防剤。」

第3 申立理由の概要及び提出した証拠
1.申立理由の概要
申立人は、甲第1?16号証を提出し、本件特許は、以下の理由1?4により、取り消されるべきものである旨主張している。なお、以下では、各甲号証を指して、それぞれ、単に「甲1」?「甲16」という。

(1)申立理由1(進歩性)
(申立理由1-1)
・本件発明1及び2は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

・本件発明1及び2は、甲1に記載された発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(申立理由1-2)
・本件発明1及び2は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

・本件発明1及び2は、甲2に記載された発明並びに甲1、甲5及び甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)申立理由2(産業上の利用可能性)
本件発明1及び2は、特許法第29条第1項柱書における「産業上利用することができる発明」に該当せず、特許を受けることができるものでない。
よって、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3)申立理由3(実施可能要件)
本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1及び2に記載の発明を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(4)申立理由4(サポート要件)
本件発明1及び2は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

2.証拠方法
(1)甲第1号証:G.G.Crans et al.、Arthritis & Rheumatism、2004年、50巻、12号、4028?4034頁

(2)甲第2号証:Fujita T.et al.、Osteoporosis International、1999年、9巻、4号、296?306頁

(3)甲第3号証:D.M.Black et al.、J.Clin.Endocrinol.Metab.、2008年、93巻、6号、2166?2172頁

(4)甲第4号証:太田博明著、日本産科婦人科学会雑誌、2007年、59巻、10号、N624?N632頁

(5)甲第5号証:S.L.Greenspan et al.、American College of Physicians、2007年、146巻、5号、326?339頁

(6)甲第6号証:M.D.Moen and L.J.Scott、Drugs、2006年、66巻、18号、2371?2381頁

(7)甲第7号証:FORTEO(R)teriparatide(rDNA origin)injection 750mcg/3mL、文章改訂2008年2月27日、Eli Lilly and Company(米国))(決定注:「(R)」は丸囲い文字のRである。)

(8)甲第8号証:A.H.Tashjian Jr.and R.F.Gagel、Journal of Bone and Mineral Research、2006年、21巻、3号、354?365頁

(9)甲第9号証:「特許・実用新案審査基準」の「医薬発明」の審査基準、特許庁、2005年4月、1?21頁

(10)甲第10号証:折茂肇ら、日本骨代謝学会、日本骨代謝学会雑誌、2001年、18巻、3号、76?82頁

(11)甲第11号証:「特許・実用新案審査基準」の特定技術分野への適用例の「第3章医薬発明」、特許庁、2015年、1?9頁

(12)甲第12号証:「骨粗鬆症治療剤 テリボン(R) 皮下注用56.5μg(注射用テリパラチド酢酸塩)」添付文書、2017年改訂、旭化成ファーマ株式会社 (決定注:「(R)」は丸囲い文字のRである。)

(13)甲第13号証:「骨粗鬆症治療剤 フォルテオ(R) 皮下注キット600μg テリパラチド(遺伝子組換え)注射剤」添付文書、2014年改訂、日本イーライリリー株式会社(決定注:「(R)」は丸囲い文字のRである。)

(14)甲第14号証:不服2000-6873号、特許審決公報

(15)甲第15号証:平成13年(行ケ)第422号 審決取消請求事件、東京高等裁判所判決

(16)甲第16号証:「特許・実用新案審査基準」の「明細書及び特許請求の範囲の記載要件」の審査基準、特許庁、1?30頁

第4 甲号証の記載事項
甲1?8には、それぞれ以下の記載がある(下線は当合議体による。以下同様)。

なお、甲1?3、5?8は英文であるため、日本語訳文を記載する。

1.甲1
(1-1)(4028頁左欄1行?右欄19行)
「目的:椎体骨折の重篤度と健康に関連したクオリティーオブライフ(HRQOL)の関係を骨折予防試験における患者の部分集合体に関して調査した。我々は、椎体骨折の重篤度がHRQOLのスコアに関係するかどうか決定しようとした。このため、テリパラチド(ヒト組換えパラチロイドホルモン1-34)の、骨粗鬆症の閉経後の女性に強いインパクトを与える椎体骨折のグレードに与える効果を決定しようとした。
方法:椎体骨折の重篤度は、ビジュアル半定量(SQ)法により評価した。444人の患者の部分集合がベースラインのX線写真と共に骨粗鬆症評価アンケートを完成させた。ベースラインのHRQOLスコアは、年齢、骨密度、肥満指数、背痛の統制と同時に最大ベースライン椎体骨折グレードのモデルとした。
結果:ベースライン椎体骨折グレードのベースラインHRQOLに与える効果は統計的に有意であったが、椎体骨折グレードとその他の変数の間の相互作用は統計的に有意ではなかった。SQグレード3(SQ3)椎体骨折は、有意に低い全体のHRQOLスコア並びに有意に低い肉体機能、症候及び情動状態の次元スコアと関係していなかった。治療19か月の中間点以降、テリパラチド20μg/day投与群では444名中3名(0.7%)に新規又は増悪椎体骨折が生じたのに対して、プラセボ投与群では448名の患者中21名(4.7%)で生じた。新規又は増悪SQ3椎体骨折の発達リスクは、テリパラチド20μg/day投与処理の患者において、86%(p<0.001)減少した。
結論:重篤度の低い既存骨折と比べると、SQ3椎体骨折はHRQOLの低下と関連していた。テリパラチドによる処置は、新規又は増悪SQ3椎体骨折を有意に減少させた。これらの知見は、直接的に示したわけではないが、テリパラチドのHRQOLへの利点を示した。」

(1-2)(4029頁左欄31行?49行)
「試験グループ:骨折予防試験に用いた方法は既に報告した(23)。簡潔に記すと、閉経後5年以上経過した女性を無作為に、毎日カルシウム(1000mg)とビタミンD(400-1200IU)のサプリメントに加え、20μgのテリパラチド(n=541)、40μgのテリパラチド(n=552)及びプラセボ(n=544)を毎日皮下注射を受けるグループに振り分けた。処置期間の中央値は19か月であった。試験に際しては、患者は少なくとも2箇所のマイルドな外傷が無く拡散している椎体骨折か1箇所の緩和な外傷の無い椎体骨折を持つことを要件とした。試験の有効性のために、2箇所より少ない緩和な椎体骨折を持つ患者は、尻又は腰椎の骨密度が少なくとも白人の閉経前女性の平均値より1SD低いことを要求された。除外基準には、骨又はカルシウム代謝に影響すると知られている疾患の患者、過去2年以内に尿路結石症を患った者、血清クレアチニンレベルが2mg/dl以上の患者、アルコール中毒者、薬物乱用者、骨代謝に変化を与えることが知られている医薬品の利用者が挙げられた。」

(1-3)(4029頁右欄3行?23行)
「椎体骨折評価:全ての参加者の椎骨のX線写真をベースライン時及び試験完結時に撮影した。X線写真による評価は、治療グループの割り当てには無関係で、一時的な配置ではないX線撮影技師によりカリフォルニア大学サンフランシスコ分校、骨粗鬆症、関節炎研究所を中心として行われた。椎骨はビジュアルな半定量(SQ)法を用いて0-3のスケールにグレード分けされた(SQグレード0[SQ0]=骨折無し、SQ1=軽度骨折、SQ2=中度骨折、SQ3=重度骨折)(24)。軽度骨折とは、椎骨の高さの前部、中間部又は後部における20?25%の減少と規定した。中度及び重度骨折は、椎骨の高さの25?40%又は40%以上の減少と各々規定した。新規椎体骨折は、ベースライン時にはグレード0であった椎骨が、ポストベースラインのSQグレードが1、2又は3になったものと定義した。一方、増悪椎体骨折は、ベースライン時にSQグレードが1又は2であったものが、椎骨のSQグレードがポストベースライン時に増加しているものと定義した。椎骨の円背、骨強直、その他異常症はグレード分けしなかった。」

(1-4)(4030頁表1)




上記表1のタイトル部分の訳
「ベースライン被験者集計、ベースライン椎体骨折グレードにより重層化したX線及びOPAQ HRQOL、評価を伴う骨折予防試験における試験集団のベースライン人口統計」

(1-5)(4030頁左欄15行?23行)
「骨折予防試験における患者グループのベースライン時のOPAQにおいて、SQ3椎体骨折は最もHRQOLにインパクトを与えると認められたため、我々は骨折予防試験でベースライン時から継続的なX線写真映像を評価することにより、プラセボ(n=448)、テリパラチド20μg/day(n=444)、テリパラチド40μg/day(n=434)処置群における、新規又は増悪SQ3椎体骨折の発生率を比較した。」

(1-6)(4032頁図3)




上記図3の説明部分の訳
「骨折予防試験において、20μg/dayテリパラチド(TPTD20)投与群、40μg/dayテリパラチド(TPTD40)投与群又はプラセボ投与群に無作為に割り振られた患者群における新規又は増悪半定量グレード3(重度)椎体骨折患者数、RRR=相対リスク減少。」

(1-7)(4032頁左欄8行?26行)
「プラセボ群(n=448)においては、14名の患者が新規SQ3骨折を経験し、8名の患者が増悪SQ3骨折を経験した。なお、この中には1新規SQ3骨折と1増悪骨折を経験した患者が含まれる。20μg/dayテリパラチド投与群(n=444)においては、新規SQ骨折を経験した患者はおらず、3名の患者が増悪SQ3骨折を経験した。40μg/dayテリパラチド投与群(n=434)においては、3名の患者が新規SQ3骨折を経験し、4名の患者が増悪SQ3骨折を経験した。全般に、新規又は増悪SQ3椎体骨折は20μd/dayテリパラチド投与群では3名(0.7%)、40μg/dayテリパラチド投与群では7名(1.6%)生じることと比較して、プラセボ群においては21名(4.7%)も生じた(図3)。このように、プラセボと比較して、毎日テリパラチドを20μg又は40μg処置すると、新規又は増悪SQ3椎体骨折になるリスクが、各々86%(P<0.001)及び66%(P<0.001)と有意に減少した(図3)。」

(1-8)(4032頁右欄50行?4033頁左欄8行)
「全ての個体群における骨折予防試験において、新規椎体骨折になる相対リスクは患者への20μg/dayテリパラチド投与により65%減少する(P≦0.001)と報告されている(23)。HRQOLに与えるSQ3骨折のインパクトを理由として、我々は本試験においてプラセボ投与群とテリパラチド投与群における新規又は増悪SQ3椎体骨折の発生を分析した。テリパラチド20μg/day投与群、40μg/dayテリパラチド投与群は新規又は増悪SQ3椎体骨折の相対リスクを各々86%(P<0.001)及び66%(P<0.001)減少させた。」

2.甲2
(2-1)(296頁左欄1行?右欄7行)
「要約 骨粗鬆症治療における骨同化作用薬と考えられるヒトパラチロイドホルモンのアミノ末端ペプチド1-34(hPTH(1-34))の効果を試験するために、71施設における骨粗鬆症患者220名を無作為にhPTH(1-34)の50単位投与群(L群)、100単位投与群(M群)又は200単位投与群(H群)の3群に分け、hPTH(1-34)を毎週皮下に注射する二重盲検試験を行った。二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)で測定したところ、投与48週目には、腰椎骨密度(BMD)はL、M及びH群でそれぞれ、0.6%、3.6%及び8.1%増加した。また、M群とH群での薬物への応答はL群より有意に高かった(P<0.05、マン・ホイットニーのU検定)。腰椎測定の変動係数が1?2.5%にとどまることから、3.6%及び8.1%の増加は有意であると思われる。・・・試験期間中を通じて、重篤な副作用は見られなかった。hPTH(1-34)の間欠的毎週投与によって、骨粗鬆症で腰椎のBMDが増加し、骨粗鬆症治療に有用であることを示唆していた。」

(2-2)(297頁左欄27行?右欄5行)
「被験者
71施設が参加した多施設試験を実施した。試験は220人の年齢45才から95才までの厚生省により支援された委員会により提示された診断基準により、骨粗鬆症として定義された被験者に対して開始された。このシステムは、単に骨粗鬆症を非外傷性椎体骨折が存在する、または椎体骨折が2か所に存在するものとして定義するのではなく、複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義するものである。この試験では総合スコア4以上(骨粗鬆症として決定)を被験者の選択基準とした。日本の多くの医療実務家が、未だに骨粗鬆症の唯一の評価方法として脊椎のX線写真を用いていることから、X線撮影は骨粗鬆症の診断基準として実施せざるを得なかった。X線上の骨減少は、腰椎の側面X線写真での骨梁の薄化、つまり(1)横骨梁の減少の欠損による縦骨梁の明瞭化、(2)縦骨梁の粗雑化、及び(3)縦骨梁の減少が認められる場合とした。X線上の骨減少は、BMDで若年成人の平均値から20%減少又は2.5SDの減少に相当する。本試験では、例えば、腰椎BMDの平均値がLunar社性DPXデンシトメーターで測定した時に0.736g/cm^(2)、Hologic社製QDRデンシトメーターで測定した時に0.694g/cm^(2)、Norland社製デンシトメーターで測定した時に0.624g/cm^(2)を示す者を試験対象とした。なお、この基準は現在用いられている他の基準と一致している。X線画像による骨萎縮がI度からIII度又はBMDが若年成人の平均値から2.5SD未満である者をスコア3、1か所の脊椎骨折をスコア1、2か所あるいはそれ以上の椎体骨折をスコア2、尻部骨折をスコア3、遠位ラジアル骨折をスコア1として総合スコアを算定した。」

(2-3)(297頁右欄43行?53行)
「hPTH(1-34)(テリパラチド酢酸塩)の調製と投与方法
旭化成工業株式会社により合成されたhPTH(1-34)の基準値と生物学的効果を、国際基準のウシPTH(1-84)に対するラット腎臓の皮質膜によるサイクリックAMPの生成を指標として評価したところ、3300単位/mgを得た。各バイアルは、50、100又は200単位のテリパラチド酢酸塩を含むものとした。なお、これは約15、30及び60μgのペプチドに相当した。1回のバッチから3個のロットを調製し、50、100及び200単位を含むバイアルを作成した。」

(2-4)(300頁左欄11行?右欄末行)
「骨測定
hPTH(1-34)の48週間投与試験による腰椎BMDの変化率を図1に示したが、腰椎BMDは投与開始時と異なり24週から48週の間に用量依存的にL群(0.6%)、M群(3.6%)、H群(8.1%)と増加し、24週、48週の増加率はM群とH群の方がL群より大きく、48週においてH群はM群より有意(P<0.05)に増加率が大きかった。また、効果は64才以下と65才以上のサブグループ、49kg以下と50kg以上のサブグループ、閉経後10年以下、10?20年、20年以上のサブグループ、椎体骨折0回、1回、2回以上のサブグループ間でも同じであった。第2中手骨(皮質骨からなる)のX線写真上の骨密度には有意な差は何も認められず、皮質骨と各群のX線写真上の骨量減少が一定に保たれていることを示していた。L群では被験者3名、M群では5名及びH群で0名に椎体骨折が発生したが、各群間の差は有意ではなかった。



上記図1の説明部分の訳
「図1 腰椎BMD(平均値±SD)の治療週に対する変化率。点線で結ばれた□:50単位のPTHを投与した被験者(L群)のデータ、実線で結ばれた●:100単位のPTHを投与した被験者(M群)のデータ、破線で結ばれた○:200単位のPTHを投与した被験者(H群)のデータ。a:危険率p<0.05でのL群の値と比較した時の有意差、b:危険率p<0.05でのM群の値と比較した時の有意差、*:危険率p<0.05での基準値と比較して有意な増加(マン・ホイットニーのU検定による)。」

(2-5)(302頁右欄7行?16行)
リンジーら[32]は、ホルモン補充療法を受けている閉経後の女性17名を対象として、hPTH(1-34)25μgを連日皮下注射する3年の無作為対照試験を実施し、その結果をコントロールとしてホルモン補充療法単独を投与した女性17名と比較した、脊椎のBMDは投与群では13.0%増加したが、コントロール群では有意な増加はみられなかった。」

(2-6)(303頁右欄10行?23行)
「リンジーらの試験[32]では、例えば、hPTH(1-34)400単位(25μg)が使用されている。使用されている調剤の相違があるため、本試験の結果をhPTH(1-34)投与量の参考例として、従前の試験の結果と比較するのは難しいが、本試験で間欠的に毎週投与されたhPTH(1-34)の投与量はほとんどの従前行われた試験よりも少ない。hPTH(1-34)が中手骨(ほとんど皮質骨からなる)の骨密度を減少させることなく、腰椎BMD(主に海面骨からなる)を、48週という比較的短期間で有意に用量依存的に増加させたことから、骨粗鬆症におけるhPTH(1-34)の本治療価値はきわめて将来有望であると思われる。」

3.甲3
(3-1)(2166頁表題)
「骨密度とリモデリングにおける週1回の副甲状腺ホルモン(1-84)の無作為試験」

(3-2)(2166頁3?24行)
「目的:我々の目的は、PTHの投与頻度の減少が腰椎BMDを増加させる効果を持つかどうか決定することである。
参加者、デザイン、設定:45才?70才で大腿頸部BMDのTスコア-1.0から-2.0の閉経後の女性50名が二重盲検無作為化プラセボ比較試験をメイン州バンガローセントジョセフホスピタルで行った。
処置:被験者は1か月間毎日PTH(1-84)(100μg)又はプラセボの皮下注射を受けた後、11か月毎週1回PTH又はプラセボの投与を受けた。
・・・
結果:12か月目にPTHを投与した女性群はプラセボ投与群に対して、腰椎面積BMDが2.1%増加した(P=0.03)。PTHを投与した女性群はプラセボ投与群に対して、脊髄小柱状容積BMDが3.8%増加した(P=0.08)。・・・
結論:1か月間の毎日投与後の週1回のPTH投与は、閉経後女性の脊柱BMD、外側小柱骨及び骨形成マーカーを増加させた。・・・」

(3-4)(2171頁右欄36?46行)
「それにもかかわらず、我々は1か月間毎日初期投与の後に、毎週1回投与したPTHは骨格に対して同化作用を示すことを発見した。PTHの循環的使用に関する他の結果を勘案すると、これらの結果は、十分な同化効果の利益を受けるためには、拡張期間においてPTHを毎日使用する必要はない可能性を示すと共に、投与頻度を減らすか投与期間を短縮したPTHの使用が、骨を強化し、骨折リスクを減少させる点で、2年間にわたるPTHの毎日の使用よりも同等かあるいはそれ以上の好ましい結果を示すことを示唆している。将来の試験は、骨の強度を増加させ、究極的に骨折のリスクを減らすことができる、PTHの最適の投与頻度及び期間を決定するためのものであることの根拠となる。」

4.甲4
(4-1)(N-624頁図C-22-1)




5.甲5
(5-1)(326頁左欄4行?右欄21行)
「目的:PTHの安全性とその骨粗鬆症の閉経後の女性における椎体骨折の効果を決定するために行った。・・・
処置:女性には100μgの組換えヒトPTH又はプラセボを毎日皮下注射した。全員がカルシウム700mg/dayとビタミンD_(3)400U/dayの給与を受けた。
・・・
結論:パラチロイドホルモン(1-84)は、骨粗鬆症の閉経後の女性が新規又は増悪骨折になるリスクを全般的に低下させた。・・・」

(5-2)(327頁17行?20行)
「もし、BMD Tスコアが-2.5以下で椎体骨折を持たない場合、もしBMD Tスコアが-2.0以下で1?4個の椎体骨折がある場合、我々は、55才又はそれ以上の閉経後の女性も含めることにした。」

(5-3)(331頁表2)



上記表2のタイトル部分の訳
「骨折結果」

6.甲6
(6-1)(2371頁1行?13行)
「全長パラチロイドホルモン(PTH)1-84は、ヒトPTHの組換えバージョンである。これは、高い骨折リスクを持つ骨粗鬆症の女性の治療薬としてEUで承認されている。1日1回のPTH(1-84)の皮下投与は新しい骨形成を刺激し、骨量を増加させる。
重要な、無作為の二重盲検、多施設の、2532名の骨粗鬆症の閉経後の女性を用いた、18か月TOP試験において、PTH(1-84)100μg/day投与は、有意に新規又は増悪椎体骨折の発生をプラセボ(主要評価項目)と対比して有意に減少させた。」

(6-2)(2374頁右欄3?19行)
「TOP試験は、閉経後1年以上、55才以上で、大腿骨頸部又は股関節BMDのTスコアが-2.5以下(又は椎体骨折がある場合は-2.0以下)の女性、45?54才でBMDのTスコアが-3.0以下(又は椎体骨折がある場合は-2.5以下)の女性を登録して行った。既に椎体骨折を有している女性の比率はプラセボ群とPTH(1-84)投与群の間で差が無いようにした(両グループで19%付近))。処置を完了した者、早めに中止した者全てを、PTH(1-84)処置の最大総合期間24か月を伴う延長期間の試験(OLES)で有効とした。TOP試験でプラセボ群であった被験者は18か月以上のPTH(1-84)処置群にスイッチした。」

(6-3)(2375頁左欄28行?末行)
「・18か月間のTOP試験の後、椎体骨折(新規又は増悪)の発生率は、PTH(1-84)投与群(1.32%)が有意にプラセボ投与群(3.37%;P=0.001、図1)より低下した。この値は相対リスク(PR)に換算すると、PTH(1-84)投与群が61%減少していることになる。
・既存椎体骨折がないサブグループの女性では、新規椎体骨折発生率がPTH(1-84)投与群では0.67%であったのに対して、プラセボ群では2.08%であった(PR減少68%;95% CI0.14、0.75;P=0.006)既存椎体骨折を有するサブグループでは、椎体骨折発生率がPTH(1-84)投与群では4.24%であったのに対して、プラセボ群では8.94%であった(PR減少53%;95% CI0.23、0.98;P=0.04)。」

7.甲7
(7-1)(1頁表題)
「フォルテオ(R)テリパラチド(rDNA由来)注射剤750mcg/3mL」

(7-2)(1頁1行?3行)
「フォルテオ(R)[テリパラチド(rDNA由来)注射剤]は、84アミノ酸残基からなるヒトパラチロイドホルモンの34アミノ酸残基からなるN末端アミノ酸配列(生物学的に活性な領域)と同じ配列を持つ組換えヒトパラチロイドホルモン(1-34)(rhPTH(1-34))を含有している。」

(7-3)(2頁1行?6行)
「作用のメカニズム
内因性の84アミノ酸残基を持つパラチロイド(PTH)の生理作用は、腎臓及び骨におけるカルシウムとリン酸の代謝の主要調節因子である。PTHの生理学的作用は骨代謝の調節、尿細管におけるカルシウムとリン酸の再吸収及び腸管カルシウム吸収である。PTHとテリパラチドの生物学的活性は、共に細胞表面の高親和性受容体への結合により媒介される。テリパラチドとPTHのN末アミノ酸34残基は同じ親和力でこれらの受容体に結合し、骨や腎臓に同じ生理作用を示す。」

(7-4)(11頁1行?11行)
「適応症と用法
フォルテオは、閉経後の女性であって、骨折リスクの高い骨粗鬆症患者の治療に用いられる。これらの女性には骨粗鬆症骨折歴のある者、骨折の複合的なリスクファクターを持つ者、従前の骨粗鬆症の治療に失敗又は効果のない者が医師の評価に基づき含まれる。閉経後の骨粗鬆症を持つ女性に対して、フォルテオはBMDを増加させ、椎体及び非椎体骨折リスクを低下させる。フォルテオは性機能低下性の骨粗鬆症で骨折のリスクの高い男性の骨密度を増加させる。この中には骨粗鬆症性骨折の履歴を持つ者、骨折の複合的なリスクファクターを持つ者、従前の骨粗鬆症の治療に失敗又は効果の無い者が医師の評価に基づき含まれる。」

8.甲8
(8-1)(354頁左欄1?4行)
「2002年11月に米国食品医薬品局(FDA)は、テリパラチド(フォルテオ)を骨粗鬆症の治療に対して承認した。テリパラチドはヒトPTHの最初の34アミノ酸を含むものである。」

(8-2)(355頁左欄9?21行)
「2003年6月に欧州医薬品庁もテリパラチド(フォルテオ)を女性の骨粗鬆症の治療に用いることを承認している。現在、上市されてから2.5年以上経過した状況にある。2005年8月まで、テリパラチドで治療した患者は世界中で205,000人以上になると概算されている。米国中の15000件にのぼる開業薬局から集めたデータでは、90%にのぼる患者が女性で、平均年齢が68才(中央値71才)である。70才以上のグループは最も骨折リスクが高いことを表しており、最も恩恵を受けることが期待される。処方箋を査察した範囲では、テリパラチドを受ける患者の82%が1又は2箇所の既存骨折を持っている。」

第5 当審の判断
1.申立理由1-1(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 甲1に記載された発明
上記摘記事項(1-1)?(1-8)によれば、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「1回20μg又は40μgのテリパラチドを毎日投与する、テリパラチドを有効成分とする、増悪椎体骨折抑制効果のある、骨粗鬆症治療剤であって、閉経後5年以上経過した平均年齢で70.11±6.99才及び70.89±6.61才の年齢の女性であって、少なくとも、2箇所のマイルドな外傷がなく拡散している椎体骨折か1箇所の緩和な外傷のない椎体骨折を持ち、腰椎BMDのT-スコアの平均が-1.68±1.76及び-2.34±1.54であることを要件とする患者に投与される、骨粗鬆症治療剤。」(以下、「甲1発明」という。)

イ 対比及び判断
(ア)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
上記摘記事項(1-1)には、「テリパラチド(ヒト組換えパラチロイドホルモン1-34)」と記載されていることからみて、甲1発明の「テリパラチド」は本件発明1の「PTH(1-34)」に相当する。そうすると、両者は、「PTH(1-34)を有効成分として含有する、増悪椎体骨折抑制のための骨粗鬆症治療剤」である点で一致し、下記の点で相違する。

(相違点1-1)用法・用量が、本件発明1は「1回当たり200単位」を「週1回投与」であるのに対し、甲1発明は「1回20μg又は40μg」を「毎日投与」するものである点

(相違点1-2)投与対象が、本件発明1は「下記(1)?(3)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存椎体骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である、および/または、骨萎縮度が萎縮度I度以上である。」であるのに対し、甲1発明は「閉経後5年以上経過した平均年齢で70.11±6.99才及び70.89±6.61才の年齢の女性であって、少なくとも、2箇所のマイルドな外傷がなく拡散している椎体骨折か1箇所の緩和な外傷のない椎体骨折を持ち、腰椎BMDのT-スコアの平均が-1.68±1.76及び-2.34±1.54であることを要件とする患者」である点。

(イ)相違点1-1についての検討
a 相違点1-1について、申立人は、甲2には、テリパラチド200単位を毎週投与する試験を行ったところ、腰椎BMDが増加したことが記載されており、甲3には、PTH(1-84)を1か月間毎日投与した後、11か月間毎週1回投与した試験を行ったところ、脊柱BMD、外側小柱骨及び骨形成マーカーが増加したことが記載されていることから、甲1発明における「1回20μg又は40μgのテリパラチドを毎日投与する」との投与方法を、「1回当たり200単位のテリパラチドを週1回投与する」との投与方法に変更することは動機付けられる旨主張する。

b しかしながら、甲1の摘記事項(1-6)?(1-8)の記載によれば、PTH(1-34)の1回の投与量に関し、20μgの方がより用量の多い40μgよりも新規又は増悪椎体骨折になるリスクが減少していることからみて、甲1において示されているPTH(1-34)による増悪椎体骨折抑制効果は、用量依存的なものであるとはいえないことが理解できる。
このような甲1の記載を考慮すると、甲1発明において、1回の投与量を20μg又は40μgよりも多量となる200単位としてみること(甲2の摘記事項(2-3)によると、テリパラチド酢酸塩200単位は60μgに相当することが記載されているところ、テリパラチド酢酸塩の分子量は、4418であり(甲12 4頁右欄)、テリパラチドの分子量は4118であることから、テリパラチド200単位は、約55μgに相当する。)、及びそうすることにより、増悪椎体骨折抑制効果が見込まれることまでは、当業者といえども具体的に想起し得たとはいえない。ましてや、投与頻度に関して、甲1発明は毎日投与であるところ、より少ない頻度である週1回投与としても、PTH(1-34)の有効血中濃度が維持されて、増悪椎体骨折抑制効果がもたらされることを推測することは、当業者といえども容易になし得なかったというほかはない。
また、甲3は、1回当たり100μgのPTH(1-84)を投与するものであり、甲1とは、使用する薬理成分及び用量が異なるものであり、また、増悪椎体骨折抑制効果などには何の言及もなされていないから、甲1発明において、甲3の用法を採用することも、当業者が通常行うこととはいえない。
したがって、甲2、甲3のいずれを参酌しても、甲1のテリパラチドの用法・用量に代えて、1回当たり200単位を週1回投与とすることにより、投与頻度が少ないにもかかわらず、増悪椎体骨折抑制効果がもたらされることを当業者が推測するに足りる記載を見出すことはできない。

(ウ)本件発明1により奏される効果について
本件明細書の段落【0118】には、「増悪骨折に対して被験薬は有効であることが示された。」と記載され、表20には、被験薬投与群は、対象薬投与群よりも増悪椎体骨折発生率が減少したことが示されていることから、本件発明1は、上記相違点1に係る用法・用量を具備することにより、甲1発明で採用されているよりも少ない投与頻度であっても、増悪椎体骨折抑制効果をもたらすという予測できない効果を奏するものである。

申立人は、本件明細書の表20においては、患者のグレード分類もされておらず、そのような条件下で他の新規椎体骨折評価の解析に用いた患者と同一の患者を分母にして、増悪椎体骨折発生率を算出しているが、通常当業者は、新規又は増悪椎体骨折の発生率として報告するデータであって、結果の解析手法、表現方法に疑義があり、予期せぬ効果を主張し得ないものである旨主張する。
しかしながら、仮に、表20における261名の被験薬投与対象者にグレード1及び2以外の者が含まれたとしても、当該被験薬投与対象者261例中、骨折発生例数はただ1例であり、当該被験薬投与対象者全体として、増悪椎体骨折の発生が十分に抑制されたことが示されている。そして、本件明細書の表15?17、24のPTHの被験薬投与群と対照薬投与群における種々の分布が均等であることからも理解されるとおり、薬理試験の性質上、当該被験薬投与対象者のグレード分布を故意に偏らせたとは考えられないことから、本件発明1に係る医薬が対照薬群と比較して、増悪椎体骨折を抑制するという効果を有することは十分に把握できるものである。
よって、上記申立人の主張は採用できない。

また、申立人は、甲5及び甲6には、PTH(1-84)を有効成分とする骨粗鬆症治療剤が新規又は増悪椎体骨折予防効果をもつことが記載されていることから、本件発明の増悪椎体骨折抑制効果は当業者にとり予想される効果である旨主張する。
しかしながら、甲5及び甲6は、使用する薬理成分はPTH(1-84)であり、その投与頻度も1日1回であって、少なくとも、これらの点で本件発明1と異なるものであるから、甲5及び甲6の記載から、PTH(1-34)の1回当たり200単位を週1回の頻度で投与した場合に、増悪椎体骨折抑制効果が奏されることを当業者が予測できるとはいえない。

(エ)結論
以上のとおりであるから、相違点1-2については検討するまでもなく、本件発明1は、甲5及び甲6に記載の事項を参酌しても、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2について
本件発明2は本件発明1をさらに限定する発明であるから、本件発明2もまた、上記(1)で説示した本件発明1についての判断と同様の理由により、甲5及び甲6に記載の事項を参酌しても、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)小括
よって、申立理由1-1について、本件発明1及び2が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

2.申立理由1-2(特許法第29条第2項)について
(1)本件発明1について
ア 甲2に記載された発明
上記摘記事項(2-1)?(2-6)によれば、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。
「PTH(1-34)の200単位を毎週皮下注射する、PTH(1-34)を有効成分として含有する骨粗鬆症治療剤であって、厚生省による委員会が提唱した診断基準で骨粗鬆症と定義された、年齢範囲が45歳から95歳の被験者のうち、複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義し、スコアの合計が4以上である場合の患者に投与される、骨粗鬆症治療剤。」(以下、「甲2発明」という。)

イ 対比及び判断
(ア)対比
本件発明1と甲2発明を対比する。
両者は、「1回当たり200単位のPTH(1-34)が週1回投与されることを特徴とする、PTH(1-34)を有効成分として含有する、骨粗鬆症治療剤」である点で一致し、下記の点で相違する。

(相違点2-1)骨粗鬆症治療剤の用途が、本件発明1は「増悪椎体骨折抑制のための」ものであるのに対し、甲2発明にはそのような特定がなされていない点

(相違点2-2)投与対象が、本件発明1は「下記(1)?(3)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存椎体骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である、および/または、骨萎縮度が萎縮度I度以上である。」であるのに対し、甲2発明は「厚生省による委員会が提唱した診断基準で骨粗鬆症と定義された、年齢範囲が45歳から95歳の被験者のうち、複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義し、スコアの合計が4以上である場合の患者」である点。

(イ)相違点2-1及び本件発明1により奏される効果についての検討
相違点2-1について、申立人は、甲1には、平均年齢で、70.11才及び70.98才の年齢で、椎体骨折を持ち、T-スコアは-.1.68以下である患者に、1回20μg又は40μgのテリパラチドを毎日投与したところ、増悪椎体骨折抑制効果を示したことが記載されていること、及び甲2には、テリパラチドの週1回投与による治療価値は将来有望であるとの示唆がなされていることを考慮すると、甲1において示された増悪椎体骨折抑制効果という既知の効果を予測して、甲2発明における投与量、投与間隔によりその追試を行い、本件発明1を完成させることは動機付けられるものである旨主張する。

しかしながら、甲1に記載されるように、20μg又は40μgを毎日投与することにより、増悪椎体骨折抑制効果が奏せられるとしても、甲1の投与量よりも多量である200単位(約55μg)を、より頻度を少なくした週1回投与するという用法・用量を採用した場合にも、増悪椎体骨折抑制効果が奏せられるかどうかは、実際に実験を行うことなく予測することは困難であるといわざるを得ない。このことを踏まえると、甲2発明の用途を「増悪椎体骨折抑制のため」とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
そして、上記1.(1)イ(ウ)に説示したように、本件明細書において、本件発明1は増悪椎体骨折抑制効果をもたらすことが確認されており、当該効果は当業者が従来技術からは予測できないものである。

申立人は、甲5、甲6には、PTH(1-84)を有効成分とする骨粗鬆症治療剤が新規又は増悪椎体骨折予防効果を持つことが記載されていることから、本件発明の増悪椎体骨折抑制効果は当業者として予想される効果である旨主張するが、甲5及び甲6は、使用する薬理成分はPTH(1-84)であり、その投与頻度も1日1回であって、少なくとも、これらの点で本件発明1と異なるものであるから、甲5及び甲6の記載から、PTH(1-34)の200単位を週1回の頻度で投与した場合に、増悪椎体骨折抑制効果が奏されることが予測できるとはいえない。

(ウ)結論
以上のとおりであるから、相違点2-2については検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明並びに甲1、甲5及び甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2について
本件発明2は本件発明1をさらに限定する発明であるから、本件発明2もまた、上記(1)で説示した本件発明1についての判断と同様の理由により、甲2発明並びに甲1、甲5及び甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)小括
よって、申立理由1-2について、本件発明1及び2が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

3.申立理由2(産業上の利用可能性)について
(1)申立人は、申立理由2について、概略、以下のとおり主張する。
ア 甲7、甲8等が示すとおり、有効成分テリパラチドを含む骨粗鬆症治療剤は従前から市販されており、甲7、甲8、甲13には、当該製剤に関して、閉経後の骨折リスクの高い骨粗鬆症患者や骨粗鬆性骨折歴のある者、骨折の複合的なリスクファクターを持つ者、低骨密度、既存骨折、加齢、大腿骨頸部骨折の家族歴等の骨折の危険因子を有する患者を治療対象とすることや、処方箋を査察した範囲では、テリパラチドを受ける患者の82%が1又は2箇所の既存骨折を持っていることが記載されていることから、本件発明1の「増悪椎体骨折抑制のための骨粗鬆症治療剤ないし予防剤」という効能効果は、このような従前から市販されている先行製剤の効能効果の範囲内であり、本件発明1で規定する投与対象である(1)、(2)及び(3)の3要件を備えた患者は、先行製剤の投与対象となっていたから、本件発明1は先行製剤と物として区別ができず、このような特許が存在すると、医療行為上の障害が生じる。

イ 医薬発明において有効成分、効果効能、用法用量と無関係な要因で患者の特性を発明特定事項にすることは、実質上の治療方法の発明に該当し、産業上利用可能性がない。

(2)上記アの主張について検討する。
本件発明1及び2は、用途が「増悪椎体骨折抑制のための」ものであるのに対し、先行製剤には、その用途が増悪椎体骨折抑制のためのものであることは何ら記載されていないから、本件発明1及び2と先行製剤は、その用途において明らかに相違する。
したがって、本件発明1及び2は、先行製剤とは区別ができるものであるから、申立人の上記主張は理由がない。

上記イの主張について検討する。
本件発明1及び2は、「骨粗鬆症治療剤ないし予防剤」という医薬組成物に係る物の発明であるから、特許法第29条第1項柱書にいう「産業上利用することができる発明」に該当するものといえる。このことは患者の特性が発明特定事項に含まれることによって変わるものではないから、本件発明1及び2は人間を治療する方法の発明ではない。

よって、本件発明1及び2が特許法第29条第1項柱書きの規定に違反するものであるとする申立理由2には理由がない。

4.申立理由3(実施可能要件)について
(1)申立人は、申立理由3について、概略、以下のとおり主張する。
医薬品発明は、当業者がその発明を実施することができるように発明の詳細な説明を記載するためには、通常、一つ以上の代表的な実施例が必要であり、医薬用途を裏付ける実施例として、通常、薬理試験結果の記載が求められる。本件明細書には、「具体的には、Grade0からGrade1、2、3への変化が認められた場合には新規骨折と診断され、Grade1からGrade2または3、Grade2からGrade3への変化が認められた場合には増悪骨折とみなすことができる。」(段落【0047】)と記載されているところ、本件明細書において増悪骨折に対する被験薬の有効性を確認した試験及び試験結果(段落【0118】及び表20)には、ベースライン時の被験者のグレードによる分類、増悪椎体骨折と判断した患者のグレードの分類は記載されていないだけでなく、被験者が増悪骨折の効果を判断するグレード1又はグレード2の患者で揃えられているかどうか疑義があり、増悪椎体骨折の抑制効果を示した結果ということはできないから、「増悪椎体骨折抑制のための骨粗鬆症治療剤ないし予防剤」の医薬用途を裏付ける実施例としての薬理試験結果が実質上記載されていない発明であって、実施可能要件に違反する。

(2)上記(1)の主張について検討する。
本件発明1に関し、本件明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
「【0098】
(実施例2)
原発性骨粗鬆症と診断された男女の高リスク患者に対して、Takaiの方法(特許文献4?5、非特許文献11)により調製した被験薬(1バイアル;1バイアルにテリパラチド酢酸塩200単位を含む注射用凍結乾燥製剤)または対照薬(1バイアル;1バイアルにテリパラチド酢酸塩を実質的に含まないプラセボ製剤)をそれぞれ生理的食塩水1mLで用時溶解して72週間にわたり週に1回の頻度で間欠的に皮下投与した。」

「【0118】
(F)増悪骨折に対する被験薬の有効性
増悪骨折に対する被験薬の有効性を試験した。その結果、下記の表のように、増悪骨折に対して被験薬は有効であることが示された。
【表20】



「【表15】



「【表16】



「【表17】



「【表24】



本件明細書の段落【0118】には、実施例2の(F)の項において、増悪骨折に対する被験薬の有効性が試験されたことが記載されている。そして、段落【0098】の記載からみて、当該試験は、PTH(1-34)酢酸塩の200単位を週1回の頻度で、原発性骨粗鬆症と診断された高リスク患者に対して皮下投与したものである。さらに、その具体的な試験結果として表20が記載され、被験薬投与群は対象薬投与群と比較して、増悪椎体骨折発生率が抑制されたことが明確に示されていることが認められる。
そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1に係る「増悪椎体骨折抑制のための骨粗鬆症治療剤ないし予防剤」の医薬用途を裏付ける実施例としての薬理試験結果が記載されているといえるから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。

申立人は、被験者が増悪骨折の効果を判断するグレード1又はグレード2の患者で揃えられているかどうか疑義があるため、薬理試験効果に相当する記載がない旨主張するが、仮に、表20における261名の被験薬投与対象者にグレード1及び2以外の者が含まれたとしても、当該被験薬投与対象者261例中、骨折発生例数はただ1例であり、当該被験薬投与対象者全体として、増悪椎体骨折の発生が十分に抑制されたことが示されている。そして、本件明細書の表15?17、24の被験薬投与群と対照薬投与群における種々の分布が均等であることからも理解されるとおり、薬理試験の性質上、当該被験薬投与対象者のグレード分布を対照薬投与群と比較して故意に偏らせたとは考えられないことから、本件発明1に係る医薬が対照薬群と比較して、増悪椎体骨折を抑制するという効果を有することは十分に把握できるものである。
そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1に係る「増悪椎体骨折抑制のための骨粗鬆症治療剤ないし予防剤」の医薬用途を裏付ける実施例としての薬理試験結果が記載されているといえるから、上記申立人の主張は理由がない。

また、本件発明2は、本件発明1において、「PTH(1-34)又はその塩」が「ヒトPTH(1-34)酢酸塩」であることを限定したものであるところ、本件明細書の実施例2で採用されている有効成分はヒトPTH(1-34)酢酸塩であるから、本件発明2もまた、本件発明1と同様、当業者がその発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。

(3)小括
よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものであるとする申立理由3には理由がない。

5.申立理由4(サポート要件)について
(1)申立人は、上記4.と同じ理由で、本件明細書には、「増悪椎体骨折抑制のための骨粗鬆症治療剤ないし予防剤」の医薬用途を裏付ける実施例としての薬理試験結果が実質上記載されていないから、本件発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨主張する。

(2)上記(1)の主張について検討する。
本件発明1及び2の解決しようとする課題は、その記載からみて、本件発明1及び2に記載のとおりの増悪椎体骨折抑制のための骨粗鬆症治療ないし予防剤の提供であると認められる。
そして、上記4.(2)で説示したとおり、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1及び2に係る医薬組成物が増悪椎体骨折の発生を抑制することを示す薬理試験が記載されている。
そうすると、本件発明1及び2は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が上記発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、本件発明1及び2は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
よって、本件発明1及び2が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであるとする申立理由4には理由がない。

6.むすび
以上のとおりであるから、申立人が主張する申立理由によっては、本件発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-03-28 
出願番号 特願2015-105265(P2015-105265)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (A61K)
P 1 651・ 537- Y (A61K)
P 1 651・ 14- Y (A61K)
P 1 651・ 121- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 天野 貴子  
特許庁審判長 田村 聖子
特許庁審判官 井上 明子
冨永 みどり
登録日 2017-06-02 
登録番号 特許第6150846号(P6150846)
権利者 旭化成ファーマ株式会社
発明の名称 1回当たり100?200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする、PTH含有骨粗鬆症治療/予防剤  
代理人 特許業務法人平木国際特許事務所  
代理人 細田 芳徳  
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