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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D03D
管理番号 1339210
異議申立番号 異議2017-701228  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-21 
確定日 2018-04-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第6162447号発明「高視認性重ね織物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6162447号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6162447号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成25年3月25日に特許出願され、平成29年6月23日にその特許権の設定登録がされた。
その後、平成29年12月21日に、請求項1ないし9に係る特許について、特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。

2.本件発明
特許第6162447号の請求項1ないし9の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3.申立理由の概要
申立人は、証拠として韓国公開特許第2001-0047456号公報(甲第1号証、以下「甲1」という。)、特開2005-23474号公報(甲第2号証、以下「甲2」という。)、特開2007-284598号公報(甲第3号証、以下「甲3」という。)、特開平11-93035号公報(甲第4号証、以下「甲4」という。)、ISO20471「高視認性衣服-試験方法及び要求事項」(英和対訳版),第1版,一般財団法人日本規格協会,2013年3月15日(甲第5号証、以下「甲5」という。)、特開平8-60563号公報(甲第6号証、以下「甲6」という。)、特開2007-77543号公報(甲第7号証、以下「甲7」という。)、特開2002-20942号公報(甲第8号証、以下「甲8」という。)、国際公開第2008/075505号(甲第9号証、以下「甲9」という。)、国際公開第2005/075724号(甲第10号証、以下「甲10」という。)を提出し、請求項1ないし9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法113条第2号に該当し、その特許を取り消すべきである旨主張している、

4.甲1ないし9の記載
(1)甲1には、「経糸および緯糸ともにポリエステル繊維によって構成される平織りに製織されたポリエステル生地であって、黄色、赤を着色した、安全のために遠くからでも識別が可能な高発色性のポリエステル生地」の発明が記載されている。
(2)甲2には、「疎水性合成繊維糸条としてポリエステル系合成繊維糸条が用いられ、親水性繊維を含む糸条としてセルロースアセテートトウを含む紡績糸が用いられた、多重織の快適作業衣」という技術的事項が記載されている。
(3)甲3には、「不活性粒子として二酸化チタンを0.1?5質量%含むポリエステル組成物」という技術的事項が記載されている。
(4)甲4には、「150デニール48フィラメント仮撚加工制電糸を2本揃え、撚数150T/Mで撚合わせた糸を表の経糸、および緯糸として用い、裏糸として通常のポリエステル100%の75デニール36フィラメント仮撚加工糸と25デニール5フィラメントのカーボンブラック入り導電糸(電気比抵抗:3×10^(3) Ω・cm)を撚数200T/Mで撚合わせた糸を用い、表組織2/2綾、裏組織1/3綾とした二重織物で、経糸は表糸26本に対し裏糸を1本配列し、緯糸は表糸19本に対し裏糸を1本配列した、表糸の経密度が75本/インチ、緯密度が53本/インチの生機を作製した。この生機を作業服地の通常の染色加工法で仕上げ、表の仕上経密度が90本/インチ、緯密度が65本/インチの織物」という技術的事項が記載されている。
(5)甲5には、「高視認性衣服の色度及び輝度が所定の値であること」という技術的事項が記載されている。
(6)甲6には、「経糸に綿、緯糸にポリエステルを用いた平織物」という技術的事項が記載されている。
(7)甲7には、「一方が平織である二重織織物」という技術的事項が記載されている。
(8)甲8には、「平織である二重織物」という技術的事項が記載されている。
(9)甲9には、「上下の地組織として平織等は採用された耐熱性接結2重織物」という技術的事項が記載されている。
(10)甲10には、「表組織と裏組織が平織組織からなる二重織りガラスクロス」という技術的事項が記載されている。

5.判断
(1)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と甲1に記載された発明(以下、「甲1発明」という。)とは少なくとも、以下の点で相違する。
《相違点》
請求項1に係る発明は、「表組織が経糸および緯糸ともにポリエステル繊維によって構成され、裏組織がセルロース系繊維を構成繊維として含んでなる重ね組織により構成される織物であり、表組織のカバーファクターが22以上」であるのに対し、甲1発明は、重ね組織により構成される織物ではなく、そのカバーファクターも不明である点。
上記相違点について検討する。
甲1には、上記「表組織が経糸および緯糸ともにポリエステル繊維によって構成され、裏組織がセルロース系繊維を構成繊維として含んでなる重ね組織により構成される織物であり、表組織のカバーファクターが22以上」とする点が記載されておらず、この点は甲2ないし甲10にも記載されていない。
そして、請求項1に係る発明は、上記の点により、「裏組織を構成するセルロース系繊維が表側より視認しやすくなり、視認性や耐光堅牢度の低下が懸念される」(本件特許明細書の段落【0018】を参照)ことを回避しつつ、「視認性に優れた蛍光色が長期間着用しても維持されており、かつ吸汗性や吸放湿性にも優れたものである」(同段落【0023】を参照)という格別な作用効果を奏するものである。
したがって、請求項1に係る発明は、甲1発明及び甲2ないし甲10に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

なお、申立人は、ア)カバーファクターが小さいほど糸間の空間が広く、カバーファクターが大きいほど糸間の空間が狭いことであるから、二重織物において表組織のカバーファクターが大きいほど裏地が視認しにくくなることは自明であること、イ)本件特許明細書の段落【0018】に記載されたカバーファクターの数値範囲には臨界的意義がなく単に好ましいカバーファクターを規定したにすぎないこと、ウ)甲4の段落【0016】には表地のカバーファクターが27.6である織物が記載されており、請求項1に係る発明のカバーファクターの範囲は、単なる公知のカバーファクターを規定しているにすぎないことからみて、請求項1に係る発明のカバーファクターの範囲となるように適宜織物設計をすることに関して困難性はない旨を主張している(異議申立書24頁12行ないし26頁3行を参照。)。
しかし、上記ア)に関し、甲1には、そもそも二重織物やカバーファクターに関する記載が全くなく、甲1発明において、織物を二重織物とした上で、その表組織のカバーファクターの値に着目すべき動機付けとなる事項が甲1には記載されていないし、これを示唆する記載もない。
また、上記ウ)に関し、そもそも、甲4には、カバーファクターに関する記載がなく、何らかの技術的課題を解決し所望の作用効果を得るためにカバーファクターを所定の値(例えば、27.6)とするとの技術的思想が記載されているわけではない。ゆえに、申立人のいう「甲4の段落【0016】には表地のカバーファクターが27.6である織物が記載されており」とは、上記段落【0016】に記載された織物のカバーファクターを申立人が計算したところ、その値が27.6となったということにすぎない。また、仮に、本件特許の請求項1に規定されたカバ-ファクターの範囲とすることを意図した織物が公知であったとしても、甲1発明の織物を二重織物に変更した上で、その表組織のカバーファクターの値を、本件特許の請求項1に規定されたカバ-ファクターの範囲とすることの動機付けとなる事項は、甲1ないし甲10には記載されていないし、これを示唆する記載もない。
そして、上記イ)に関し、本件特許明細書の段落【0025】ないし【0037】の記載をみると、カバーファクターが20.1の実施例(実施例3及び4)は、カバーファクターが23.3及び23.9の実施例(実施例1及び2)に比して、視認性(実施例3)や耐光堅牢度(実施例4)が劣っていたことが把握されるところ、上記視認性や耐光堅牢度の優劣に関する臨界点が、23.3から20.1の範囲中にあることが明らかであるから、請求項1に記載された「カバーファクターが22以上」という事項は、「単に好ましいカバーファクターを規定したにすぎない」とまではいえない。
したがって、申立人の上記主張は、その根拠ア)ないしウ)が当を得ておらず、採用できない。

(2)請求項2ないし9に係る発明について
請求項2ないし9に係る発明は、請求項1に係る発明の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備えるものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、甲1発明及び甲2ないし甲10に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(3)まとめ
以上のとおり、請求項1ないし9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第113条第2号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-04-13 
出願番号 特願2013-62173(P2013-62173)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (D03D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 長谷川 大輔  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 渡邊 豊英
西藤 直人
登録日 2017-06-23 
登録番号 特許第6162447号(P6162447)
権利者 ユニチカトレーディング株式会社
発明の名称 高視認性重ね織物  
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