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審決分類 審判 判定 判示事項別分類コード:なし 属する(申立て成立) A41D
管理番号 1339217
判定請求番号 判定2017-600023  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 判定 
判定請求日 2017-05-31 
確定日 2018-03-23 
事件の表示 上記当事者間の特許第5065448号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びイ号説明書に示す「耐切創低圧手袋」は、特許第5065448号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、判定請求書によれば、イ号図面及びイ号説明書に示す「耐切創低圧手袋」(以下、「イ号物件」という。)は、特許第5065448号(以下、「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものと認める。

なお、判定請求書の「5 請求の趣旨」には、「イ号図面及びイ号説明書に示す「電気工事作業に使用する作業用手袋」は、特許第5065448号発明の技術的範囲に属する、との判定を求める。」と記載されているが、イ号説明書の1/3頁2行には「イ号は、ヨツギ株式会社製の商品名「耐切創低圧手袋」である。」と記載されていること、及び、判定請求書の「6 請求の理由」の「…イ号図面及びイ号説明書で示す商品名「耐切創低圧手袋」の電気工事作業に使用する作業用手袋…」との記載によれば「5 請求の趣旨」の「イ号図面及びイ号説明書に示す「電気工事作業に使用する作業用手袋」」はイ号説明書の「ヨツギ株式会社製の商品名「耐切創低圧手袋」」を意味していると解されることを踏まえて、判定を求めるイ号物件は、イ号図面及びイ号説明書に示す「耐切創低圧手袋」と認める。
また、判定請求書において、「5 請求の趣旨」には判定の対象となる請求項の記載はないものの、「6 請求の理由」には「本件特許発明の「電気工事作業に使用する作業用手袋」は、本件特許発明の明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。」と記載され、請求項1に係る発明とイ号物件との対比を行っていることから、判定を求める請求項が請求項1であることは明らかである。

第2 手続の経緯
本件に係る手続の経緯は、以下のとおりである。
平成22年 6月15日 本件出願(特願2010-135942号)
平成24年 8月17日 設定登録(特許第5065448号)
平成28年 8月15日 訂正審判請求(訂正2016-390105 号)
平成28年10月17日付け 審決(平成28年11月7日 審決送達、確 定)
平成29年 5月29日 本件判定請求
平成29年 6月14日付け 審尋(請求人)
平成29年 6月14日付け 判定請求書副本の送付(被請求人)
平成29年 6月21日 判定請求回答書(請求人)
平成29年 6月28日付け 判定請求回答書副本の送付(被請求人)
平成29年10月 2日付け 審尋(請求人)
平成29年11月 6日 判定請求回答書(請求人)
平成29年11月17日付け 判定請求回答書副本の送付(被請求人)

なお、判定請求回答書副本を送付するとともに、期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが、被請求人から答弁書の提出はなかった。

第3 本件特許発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、確定した上記訂正2016-390105号審決(甲第6号証)により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
弾性材料により形成された手袋基体と、アラミド繊維などの難燃性を有する素材によりなり、前記手袋基体の外側に装着して貼着されている手袋状に形成された所定の面積を有する生地体とを備える電気工事作業に使用する作業用手袋であって、
前記生地体は、前記手袋基体の掌部に貼着されている部位と、前記手袋基体の親指部及び人差し指部に貼着されている指袋状の部位とを少なくとも備え、
前記生地体を構成する繊維内に前記生地体の表面側から含浸し、かつ接着機能を有するコーティング材料により、前記生地体の表面に、同生地体の厚み以下に形成されたコーティング被膜を有し、
前記コーティング被膜は、前記生地体よりも摩擦係数が高く、
前記コーティング被膜により前記生地体の繊維や目部に沿って凹凸が形成されている
ことを特徴とする電気工事作業に使用する作業用手袋。」

そして、本件特許発明を、構成要件に分説し、符号A?Iを付して示すと、次のとおりである(以下、それぞれの構成要件を「構成要件A」等という。)。
A 弾性材料により形成された手袋基体と、
B アラミド繊維などの難燃性を有する素材によりなり、
C 前記手袋基体の外側に装着して貼着されている手袋状に形成された所定の面積を有する生地体と
D を備える電気工事作業に使用する作業用手袋であって、
E 前記生地体は、前記手袋基体の掌部に貼着されている部位と、前記手袋基体の親指部及び人差し指部に貼着されている指袋状の部位とを少なくとも備え、
F 前記生地体を構成する繊維内に前記生地体の表面側から含浸し、かつ接着機能を有するコーティング材料により、前記生地体の表面に、同生地体の厚み以下に形成されたコーティング被膜を有し、
G 前記コーティング被膜は、前記生地体よりも摩擦係数が高く、
H 前記コーティング被膜により前記生地体の繊維や目部に沿って凹凸が形成されている
I ことを特徴とする電気工事作業に使用する作業用手袋。

第4 イ号物件
1 イ号物件に関する資料
請求人は、イ号物件を説明する資料として、判定請求書に、イ号図面、イ号説明書及び甲第1?7号証を添付し、また、参考資料として、イ号物件そのものである検甲第1号証を提出している。
さらに、請求人は、平成29年11月6日の判定請求回答書に、参考資料1?6を添付して提出している。
なお、以下において、上記資料中の丸数字については便宜上「○1」等と代用表記する。

2 イ号図面
判定請求書に添付されたイ号図面から、以下の事項が看取できる。
(1)第1?3図から、イ号物件の外観に黄色の物が看取でき、第7図から、上記黄色の物が層状をなすこと、及び、上記黄色の物に接し層状をなすピンク色の物が看取できる。上記黄色の物、ピンク色の物を、以下それぞれ「黄色の外層」、「ピンク色の内層」という。
(2)第1?3図によれば、黄色の外層は、手袋状に形成され、所定の面積を有する。
(3)第4?6図によれば、黄色の外層は、編み地である。

3 甲第7号証
判定請求書に添付された甲第7号証(イ号物件の「包装袋に貼付されている製品説明ラベル」)には、次のように記載されている。
(1)上段に「耐切創低圧手袋(交流300V以下用)」と記載されている。
(2)中段に「■絶縁性と耐切創性の両立 耐切創機能と絶縁機能をもち、二種類の手袋を用意する必要が有りません。」、「■優れた耐久性 アラミド繊維の耐切創層と天然ゴムの絶縁層で構成されており、耐久性に優れます。」、「■高いフィット性 曲指構造と外層(耐切創層)・内層(絶縁層)の一体構造を有し、指先のフィット感に優れます。」と記載されている。

4 参考資料1
平成29年11月6日の判定請求回答書に添付された参考資料1から、以下の事項が看取できる。
(1)写真1-5,10によれば、ピンク色の内層は手袋状であって、掌部、親指部及び人差し指部を有する。
(2)写真1-1?10を併せ見ると、黄色の外層も手袋状であって、ピンク色の内層の掌部を覆う部位と、ピンク色の内層の親指部及び人差し指部を覆う部位とを少なくとも備える。

5 参考資料2
平成29年11月6日の判定請求回答書に添付された参考資料2から、以下の事項が看取できる。
(1)写真2-A1?3によれば、ピンク色の内層の掌部と、黄色の外層の該掌部を覆う部位とは、一体構造を有する。
(2)写真2-B1?3によれば、ピンク色の内層の親指部と、黄色の外層の該親指部を覆う部位とは、一体構造を有する。また、黄色の外層の該親指部を覆う部位は、指袋状である。
(3)写真2-C1?3によれば、ピンク色の内層の人差し指部と、黄色の外層の該人差し指部を覆う部位とは、一体構造を有する。また、黄色の外層の該人差し指部を覆う部位は、指袋状である。

6 参考資料3
平成29年11月6日の判定請求回答書に添付された参考資料3から、以下の事項が看取できる。
(1)10枚目の写真○12?○15によれば、黄色の外層から擦り取られた黄色の物質の下から、白色の繊維束がのぞいている。
(2)10?11枚目の写真○14、○18、○19によれば、白色の繊維束の繊維と繊維との間に、黄色の物質が入り込んでいる。
(3)11枚目の写真○18、○19によれば、ピンク色の内層側及び白色の繊維束側双方から引っ張ると、黄色の物質が双方に接して、伸長する。
(4)8枚目の写真○4?○5’によれば、黄色の外層の表面には、繊維(凸)や目部(凹)に対応する凹凸がある。
(5)2枚目の9?17行に「イ号物件を切断してシート状にした(写真○2)。シート状の部分をトルエンに浸漬し(写真○3、○4)、約10時間経過させたところ、シート状の部分は膨潤し、絶縁層と耐切創層に分離した(写真○5?○8)。分離して得た耐切創層の表面及び裏面を金属ヘラで擦ると(写真○9?○13)、黄色に着色された半透明のコーティング被膜が容易に擦り取れた(写真○14)。写真○15は左から絶縁層、耐切創層、コーティング被膜である。
なお、擦り取れたコーティング被膜については福岡県工業技術センターへ分析を依頼し、赤外分光分析(FT-IR)にて測定した結果、ポリイソプレン(天然ゴム)と推定されている(添付資料:試験成績書(福岡県工業技術センター、交付番号29工技 第3号-85内の1.赤外分光分析 依頼資料○3耐切創低圧手袋(ヨツギ)「コーティング層」より)。」と記載されている。
(6)3枚目の写真○2?○10、4枚目の写真○11?○14を踏まえれば、4枚目の写真○15には、左からピンク色の内層、黄色の物質が擦り取られた黄色の外層、黄色の外層から擦り取られた黄色の物質が並んでいる。
(7)参考資料3に添付された添付資料は、福岡県工業技術センターが作成した平成29年10月24日付けの「試験成績書」であって、その1枚目に
「1.赤外分光分析

依頼資料○1耐切創低圧手袋(ヨツギ)「絶縁層」
試験結果:別紙1
依頼資料○1は試験結果及び参考資料1よりポリイソプレン(天然ゴム)と推定される。

依頼資料○2耐切創低圧手袋(ヨツギ)「耐切創層」
試験結果:別紙2
依頼資料○2は試験結果及び参考資料2よりポリアミドと推定される。

依頼資料○3耐切創低圧手袋(ヨツギ)「コーティング層」
試験結果:別紙3
依頼資料○3は試験結果及び参考資料3よりポリイソプレン(天然ゴム)と推定される。」と記載されている。

7 参考資料5
平成29年11月6日の判定請求回答書に添付された参考資料5は、新東科学株式会社が作成した2017年11月6日付けの「受託試験結果報告書」であって、それには、次のように記載されている。
(1)2頁に「1.測定条件
使用装置:表面性測定機TYPE:14
測定子:Φ10mmボール圧子(SUJ-2ボール使用)
測定サンプル:貴社提供サンプル(2種類)
荷重変換器容量:2000gf
荷重範囲:400g
移動速度:75mm/min
移動距離:20mm
測定時間:約16sec
サンプリング速度:1KHz
フィルター:pass」と記載されている。
(2)4頁に「サンプル1:耐切創低圧手袋(ヨツギ)手袋表面(コーティングされた耐切創層)」の静摩擦係数μsの平均値が0.228、動摩擦係数μkの平均値が0.281であったこと、「サンプル2:耐切創低圧手袋(ヨツギ)手袋を溶剤膨潤させ、表面のコーティングを剥がし取った耐切創層」の静摩擦係数μsの平均値が0.168、動摩擦係数の平均値が0.147であったことが記載されている。

8 イ号物件の認定
上記2?7をふまえると、イ号物件について、以下の事項が把握できる。
(1)絶縁層について
上記3に示したとおり、甲第7号証はイ号物件の「包装袋に貼付されている製品説明ラベル」であるから、イ号物件についての情報が記載されていると理解でき、「■優れた耐久性 アラミド繊維の耐切創層と天然ゴムの絶縁層で構成されており、耐久性に優れます。」、「■高いフィット性 曲指構造と外層(耐切創層)・内層(絶縁層)の一体構造を有し、指先のフィット感に優れます。」との記載があるから、イ号物件のピンク色の内層は、天然ゴムの絶縁層であるといえる。そして、これは、上記6(5)?(7)に示した福岡県工業技術センターの試験結果である、イ号物件のピンク色の内層の素材はポリイソプレン(天然ゴム)であるとの推定とも整合する。
(2)耐切創層について
上記3に示したとおり、甲第7号証はイ号物件の「包装袋に貼付されている製品説明ラベル」であるから、イ号物件についての情報が記載されていると理解でき、「■優れた耐久性 アラミド繊維の耐切創層と天然ゴムの絶縁層で構成されており、耐久性に優れます。」、「■高いフィット性 曲指構造と外層(耐切創層)・内層(絶縁層)の一体構造を有し、指先のフィット感に優れます。」との記載があるから、イ号物件の黄色の外層は、アラミド繊維の耐切創層であるといえる。そして、これは、上記6(5)?(7)に示した福岡県工業技術センターの試験結果である、イ号物件の黄色の外層の素材はポリアミドであるとの推定とも整合する。
(3)アラミド繊維束について
上記(2)のとおり、イ号図面等で看取された黄色の外層は、アラミド繊維の耐切創層であるから、参考資料3で看取された、イ号物件の白色の繊維束は、アラミド繊維の束と解するのが相当である。
(4)コーティングについて
ア.コーティングの有無
参考資料3で看取された黄色の物質は、アラミド繊維(ポリアミド)とは異なる材料のポリイソプレンと推定(参考資料3の添付資料)され、また、参考資料3の11頁の写真○12?○15より、擦り取られる前は下地のアラミド繊維束を覆っていたと解されるから、上記黄色の物質は、耐切創層を構成するアラミド繊維束にコーティング被膜を形成していたコーティング材料と解するのが相当である。
イ.コーティング材料が耐切創層の「表面側から」適用される点
請求人は「耐切創層(編み地)の繊維束の繊維同士間には空気が存在している。…耐切創層の裏面側からコーティング材料を含浸させる場合、コーティング材料の浸入により押し出された空気は表面側へ移動し、繊維束外へ排出され、空気が存在していた部分はコーティング材料で満たされる。耐切創層の表面側からコーティング材料を含浸させる場合、空気の移動通路がなく、繊維束中にそのまま、あるいは、繊維束と絶縁層との間に押し出され、コーティング被膜固定後にも空気はそのまま残留することになる。」(参考資料3の5頁5?12行)と主張しているところ、参考資料3の9頁の写真○5、○5’、参考資料3の添付資料の別紙4をみると、耐切創層(編み地)と絶縁層との間に空洞を看取することができ、この空洞の存在は、上記主張と整合している。また、上記主張の内容を否定する技術常識を見出すこともできない。
さらに、参考資料5において、耐切創低圧手袋の手袋表面の耐切創層の静摩擦係数μs及び動摩擦係数μkが、コーティングを剥がし取る前後で変化していることからすれば、この変化の要因となったコーティング被膜は、耐切創層の表面に形成されていたと解される。そして、コーティング技術では、コーティング材料を、コーティング被膜を形成する面側から適用するのが通常であり、耐切創層の表面にコーティング被膜を形成するイ号物件のコーティング材料は、コーティング被膜を形成する耐切創層の表面側から適用されて繊維間に入り込んでいると解するのが相当である。
ウ.コーティング被膜の「膜厚」
薄いコーティング被膜を形成するコーティング技術では、対象物の表面形状に沿ったコーティング被膜が形成されるのが通常であって、対象物がイ号物件の耐切創層のように編み地であれば、編み地の表面形状、すなわち編み地表面の繊維(凸)や目部(凹)に沿ったコーティング被膜が形成されることは明らかである。そして、参考資料3の8枚目の写真○4?○5’によれば、耐切創層の表面に、繊維束に対応する凸部と目部に対応する凹部とが看取されるところ、その凹部には、耐切創層を超えるほど厚いコーティング被膜は存在していないから、イ号物件のコーティング被膜は、耐切創層の厚み以下に形成された、薄いコーティング被膜と解するのが相当である。

(5)イ号物件
上記(1)?(4)を踏まえてイ号物件を、本件特許発明の構成要件A?Iに対応させて整理すると、イ号物件は、以下の構成を具備するものと認められる(以下、それぞれの構成を「構成a」等という。)。
a.天然ゴムにより形成された手袋状の絶縁層と、
b.アラミド繊維によりなり、
c.絶縁層の外側に装着して一体構造とされている手袋状に形成された所定の面積を有する編み地の耐切創層と
d.を備え、耐切創機能と絶縁機能をもつ、耐切創低圧手袋(交流300V以下用)であって、
e.耐切創層は、絶縁層の掌部に一体構造とされている部位と、絶縁層の親指部及び人差し指部に一体構造とされている指袋状の部位とを少なくとも備え、
f.耐切創層を構成するアラミド繊維束の繊維と繊維との間に、耐切創層の表面側から入り込み、かつ絶縁層側及びアラミド繊維束側双方から引っ張ると、双方に接して伸長するコーティング材料により、耐切創層の表面に、耐切創層の厚み以下に形成されたコーティング被膜を有し、
g.手袋表面の静摩擦係数μsの平均値が0.228、動摩擦係数μkの平均値が0.281であり、表面のコーティングを剥がし取った耐切創層の静摩擦係数μsの平均値が0.168、動摩擦係数の平均値が0.147であり、
h.前記コーティング被膜により耐切創層のアラミド繊維束や目部に沿って凹凸が形成されている
i.耐切創低圧手袋(交流300V以下用)。

第5 構成要件の充足性について
1 構成要件Aについて
天然ゴムは一般的に弾性材料であり、本件特許明細書の段落【0033】にも「ここで、手袋基体を形成する弾性材料は、…例えば、天然ゴム、…等を挙げることができる。」と記載されているから、イ号物件の「天然ゴム」は本件特許発明の「弾性材料」に該当する。
また、イ号物件の「手袋状の絶縁層」は本件特許発明の「手袋基体」に該当する。
よって、イ号物件の構成aは、本件特許発明の構成要件Aを充足する。

2 構成要件Bについて
イ号物件の「アラミド繊維」は本件特許発明の「アラミド繊維などの難燃性を有する素材」に該当する。
よって、イ号物件の構成bは、本件特許発明の構成要件Bを充足する。

3 構成要件C、E、Hについて
本件特許発明の「貼着」とは、本件特許発明の段落【0059】「刷毛塗りやスプレーにより付着したコーティング液は、生地体の目部を介して手袋基体にも付着することとなり、手袋基体に生地体を貼着することができる。」、【0060】「浸漬とともにコーティング液は、生地体の目部を介して手袋基体に付着し、手袋基体に生地体を貼着することができる。」、【0071】「このコーティング被膜21は、コーティング材料としての天然ゴムラテックス系接着剤を付着させて形成したものであり、手袋基体10に編み地11を貼着する接着剤の役割を有している。」との記載から、手袋基体に生地体を接着して一体化することを意味していると解される。また、段落【0090】?【0094】、図6には、手袋基体の上に、手袋状に形成した生地体を被せてコーティング剤に浸漬し貼着した実施例3が示されていることから、本件特許発明の「貼着」が、板状、布状の生地体を広げて接着するようなものに限定されないことは明らかである。
そして、イ号物件の絶縁層と耐切創層との「一体構造」は、後述の「5 構成要件Fについて」に示すように、コーティング材料で接着したものと解されるから、イ号物件の「一体構造とされている」は、本件特許発明の「貼着されている」に該当する。
また、「編み地の耐切創層」は「生地体」に、「アラミド繊維束」は「繊維」に、それぞれ該当する。
よって、イ号物件の構成c、e、hは、本件特許発明の構成要件C、E、Hを充足する。

4 構成要件D、Iについて
イ号物件の「耐切創機能と絶縁機能をもつ」「耐切創低圧手袋(交流300V以下用)」は、感電や切創の危険がある環境下での使用が想定されたものといえるところ、電気工事作業は一般的にそのような環境に該当する。また、本件特許発明の「電気工事作業」は、電圧について何ら限定されていないから、交流300V以下の電気工事作業も、本件特許発明の「電気工事作業」に該当することは明らかである。したがって、イ号物件の「耐切創低圧手袋(交流300V以下用)」は本件特許発明の「電気工事作業に使用する作業用手袋」に該当する。
よって、イ号物件の構成d、iは、本件特許発明の構成要件D、Iを充足する。

5 構成要件Fについて
イ号物件のコーティング材料は、参考資料3の10?11枚目の写真○14、○18、○19によれば、白色のアラミド繊維束の繊維と繊維との間に入り込んでいるところ、本件特許明細書の段落【0047】「フィラメント糸の場合では…いくつかの繊維を集合もしくは引き揃えたりすること…により、繊維が複雑化した構造となり、コーティング材料を溜める空間ができやすく、繊維内にコーティング材料を含浸しやすくすることができる。」との記載を踏まえれば、このような、繊維束の繊維と繊維との間に入り込んだ態様も、本件特許発明における「繊維内に…含浸し」たことに該当する。したがって、イ号物件のコーティング材料が「アラミド繊維束の繊維と繊維との間に…入り込」んでいることは、本件特許発明のコーティング材料が「繊維内に…含浸し」ていることに該当する。
さらに、本件特許発明のコーティング材料が有する「接着機能」とは、本件特許発明の段落【0071】「このコーティング被膜21は、…手袋基体10に編み地11を貼着する接着剤の役割を有している。」との記載から、手袋基体と生地体とを接着する役割のことと解される。そして、イ号物件の絶縁層と耐切創層とは一体構造であって、この一体化は、参考資料3の11枚目の写真○18、○19において、ピンク色の絶縁層と、白色のアラミド繊維束とを引っ張ると、両者の間で、黄色のコーティング材料が伸長していることからみて、コーティング材料の接着によるものと解するのが相当である。そうすると、イ号物件の「絶縁層側及びアラミド繊維束側双方から引っ張ると、双方に接して伸長するコーティング材料」は、本件特許発明の「接着機能を有するコーティング材料」に該当する。
よって、イ号物件の構成fは、本件特許発明の構成要件Fを充足する。

6 構成要件Gについて
参考資料5における摩擦係数の測定条件(上記第4の7(1))は、本件特許明細書の段落【0097】に記載された測定条件と、使用装置や測定子において合致している。また、他の条件(荷重範囲など)についても、妥当なものでないと解すべき技術常識を見出すことはできない。
そして、上記測定条件で測定したイ号物件の静摩擦係数及び動摩擦係数はいずれも、コーティングを剥がし取ると低下しているのだから、イ号物件のコーティング被膜の静摩擦係数及び動摩擦係数が、その下地である耐切創層を構成するアラミド繊維束の静摩擦係数及び動摩擦係数よりも高いことは明らかである。したがって、イ号物件の「手袋表面の静摩擦係数μsの平均値が0.228、動摩擦係数μkの平均値が0.281であり、表面のコーティングを剥がし取った耐切創層の静摩擦係数μsの平均値が0.168、動摩擦係数の平均値が0.147であ」ることは、本件特許発明の「前記コーティング被膜は、前記生地体よりも摩擦係数が高」いことに該当する。
よって、イ号物件の構成gは、本件特許発明の構成要件Gを充足する。

7 小括
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の構成要件を全て充足する。

第6 むすび
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の構成要件を全て充足するから、本件特許の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2018-03-14 
出願番号 特願2010-135942(P2010-135942)
審決分類 P 1 2・ - YA (A41D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 北村 龍平白土 博之  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 渡邊 豊英
小野田 達志
登録日 2012-08-17 
登録番号 特許第5065448号(P5065448)
発明の名称 電気工事作業に使用する作業用手袋  
代理人 市川 泰央  
代理人 松尾 憲一郎  
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