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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1339436
審判番号 不服2017-2063  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-13 
確定日 2018-04-11 
事件の表示 特願2012-180127「複合材料の目標エッチングプロセス特性を達成するためのガスクラスタイオンビームエッチングプロセス」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月21日出願公開,特開2013- 55336〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年8月15日(パリ条約による優先権主張2011年9月1日,アメリカ合衆国)の出願であって,平成27年4月27日に審査請求されるとともに補正書が提出され,同年12月28日付けで拒絶理由が通知され,平成28年6月3日に意見書と補正書が提出され,同年10月4日付けで拒絶査定がなされ,平成29年2月13日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに手続補正書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成29年2月13日に提出された手続補正書による補正を却下する。

[理 由]
1 補正の内容
平成29年2月13日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は,補正前の特許請求の範囲の請求項1-18を補正して,補正後の請求項1-18とするものであって,補正前後の請求項1は次のとおりである。

<補正前>
「【請求項1】
基板上の材料をエッチングする方法であり,前記方法は:
第1の材料,第2の材料,及び前記第1の材料と前記第2の材料のうちの少なくとも一を曝露する表面を持つ基板を保持するための基板ホルダ回りを減圧環境に維持する工程;
前記基板を前記減圧環境内に確実に保持する工程;並びに,
ガスクラスタイオンビーム(GCIB)を用いて前記第1の材料の少なくとも一部を除去するGCIBエッチングプロセスを実行する工程であって,前記第1の材料と前記第2の材料の両方が前記GCIBエッチングプロセスの開始時に曝露されていない場合に,前記第1の材料の少なくとも一部と前記第2の材料の少なくとも一部を除去する,工程;
前記実行する工程は:
前記GCIBエッチングプロセス用に目標エッチングプロセス特性を選択する工程であって,前記目標エッチングプロセス特性が,前記第1の材料と前記第2の材料との間のエッチング選択性,及び,前記第1の材料の表面粗度又は前記第2の材料の表面粗度のうちの少なくとも一を含む,工程;
前記GCIBエッチングプロセス用に1又はそれ以上のGCIB性質を設定する工程であって,前記GCIB性質は,プロセス組成物,該プロセス組成物中の少なくとも一種類の成分の流速,ビーム加速電位,及び,前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス圧力又は前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス流速のうちの少なくとも一方を含む,工程;
前記プロセス組成物を含む加圧ガスから前記GCIBを形成する工程であって,前記プロセス組成物は少なくとも1つのエッチングガスを含む,工程;
前記の設定されたGCIB性質に従って,前記減圧環境を通り抜ける前記GCIBを加速する工程;並びに,
前記基板の前記表面の少なくとも一部分に前記GCIBを照射して,前記第1の材料の少なくとも一部分を除去する工程,を含む方法。」

<補正後>
「【請求項1】
基板上の材料をエッチングする方法であり,前記方法は:
第1の材料,第2の材料,及び前記第1の材料と前記第2の材料のうちの少なくとも一を曝露する表面を持つ基板を保持するための基板ホルダ回りを減圧環境に維持する工程;
前記基板を前記減圧環境内に確実に保持する工程;並びに,
ガスクラスタイオンビーム(GCIB)を用いて前記第1の材料の少なくとも一部を除去するGCIBエッチングプロセスを実行する工程であって,前記第1の材料と前記第2の材料の両方が前記GCIBエッチングプロセスの開始時に曝露されていない場合に,前記第1の材料の少なくとも一部と前記第2の材料の少なくとも一部を除去する,工程;
前記実行する工程は:
前記GCIBエッチングプロセス用に目標エッチングプロセス特性を選択する工程であって,前記目標エッチングプロセス特性が,前記第1の材料と前記第2の材料との間のエッチング選択性,及び,前記第1の材料の表面粗度又は前記第2の材料の表面粗度のうちの少なくとも一を含む,工程;
前記GCIBエッチングプロセス用にGCIB性質を設定する工程であって,前記GCIB性質は,プロセス組成物,該プロセス組成物中の少なくとも一種類の成分の流速,ビーム加速電位,及び,前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス圧力又は前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス流速のうちの少なくとも一方を含む,工程;
前記プロセス組成物を含む加圧ガスから前記GCIBを形成する工程であって,前記プロセス組成物は少なくとも1つのエッチングガスを含む,工程;
前記の設定されたGCIB性質に従って,前記減圧環境を通り抜ける前記GCIBを加速する工程;並びに,
前記基板の前記表面の少なくとも一部分に前記GCIBを照射して,前記第1の材料の少なくとも一部分を除去する工程,を含む方法。」

2 補正事項の整理
本件補正の請求項1についての補正事項を整理すると次のとおりである。

・補正事項1
補正前の請求項1の「前記GCIBエッチングプロセス用に1又はそれ以上のGCIB性質を設定する工程であって,前記GCIB性質は,プロセス組成物,該プロセス組成物中の少なくとも一種類の成分の流速,ビーム加速電位,及び,前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス圧力又は前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス流速のうちの少なくとも一方を含む,工程」を補正して,補正後の請求項1の「前記GCIBエッチングプロセス用にGCIB性質を設定する工程であって,前記GCIB性質は,プロセス組成物,該プロセス組成物中の少なくとも一種類の成分の流速,ビーム加速電位,及び,前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス圧力又は前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス流速のうちの少なくとも一方を含む,工程」とすること。

3 新規事項追加の有無,発明の特別な技術的特徴の変更の有無,及び,補正の目的の適否についての検討
(1)補正事項1は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって,補正事項1は,特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たす。

(2)さらに,補正事項1による補正は,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。また,本願の願書に最初に添付した明細書を「当初明細書」という。)に記載されているものと認められるから,補正事項1は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって,補正事項1は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

(3)そして,補正事項1は,発明の特別な技術的特徴を変更するものではないと認められるから,特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものといえる。

(4)以上検討したとおりであるから,本件補正の補正事項1を含む請求項1についての補正は,特許法第17条の2第3項,第4項,及び,第5項に規定する要件を満たす。

4 独立特許要件についての検討
本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項1を含むから,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定によって,本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであることを要する。
そこで,本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,すなわち,本件補正がいわゆる独立特許要件を満たすものであるか否かについて,請求項1に係る発明について,更に検討を行う。

(1)補正後の発明
本件補正による補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明1」という。)は,本件補正により補正された明細書,特許請求の範囲又は図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるとおりのものである。
以下,再掲する。

「【請求項1】
基板上の材料をエッチングする方法であり,前記方法は:
第1の材料,第2の材料,及び前記第1の材料と前記第2の材料のうちの少なくとも一を曝露する表面を持つ基板を保持するための基板ホルダ回りを減圧環境に維持する工程;
前記基板を前記減圧環境内に確実に保持する工程;並びに,
ガスクラスタイオンビーム(GCIB)を用いて前記第1の材料の少なくとも一部を除去するGCIBエッチングプロセスを実行する工程であって,前記第1の材料と前記第2の材料の両方が前記GCIBエッチングプロセスの開始時に曝露されていない場合に,前記第1の材料の少なくとも一部と前記第2の材料の少なくとも一部を除去する,工程;
前記実行する工程は:
前記GCIBエッチングプロセス用に目標エッチングプロセス特性を選択する工程であって,前記目標エッチングプロセス特性が,前記第1の材料と前記第2の材料との間のエッチング選択性,及び,前記第1の材料の表面粗度又は前記第2の材料の表面粗度のうちの少なくとも一を含む,工程;
前記GCIBエッチングプロセス用にGCIB性質を設定する工程であって,前記GCIB性質は,プロセス組成物,該プロセス組成物中の少なくとも一種類の成分の流速,ビーム加速電位,及び,前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス圧力又は前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス流速のうちの少なくとも一方を含む,工程;
前記プロセス組成物を含む加圧ガスから前記GCIBを形成する工程であって,前記プロセス組成物は少なくとも1つのエッチングガスを含む,工程;
前記の設定されたGCIB性質に従って,前記減圧環境を通り抜ける前記GCIBを加速する工程;並びに,
前記基板の前記表面の少なくとも一部分に前記GCIBを照射して,前記第1の材料の少なくとも一部分を除去する工程,を含む方法。」

(2)引用例とその記載事項,及び,引用発明
ア 拒絶査定の理由で引用した,本願の優先権の主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特表2008-502150号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(なお,下線は,当合議体において付したものである。以下同じ。)

・「【請求項1】
二重ダマシン集積構造を製造する方法であって,
基板エッチングストップフィルム層上に多孔質の極めて低いk値を有する絶縁フィルム層を形成する工程;
前記多孔質絶縁フィルム層上にハードマスク層を形成する工程;
前記ハードマスク層の上に第一のマスキング材料層を適用する工程;
前記第一のマスキング材料層の中にヴィアパターンを形成する工程;
側壁を露出するとともに1以上のヴィアを形成するために,前記ハードマスク層および前記多孔質絶縁フィルム層を通して第一のマスキング材料層内のヴィアパターンをエッチングストップフィルム層まで転写させる工程,;
ガスクラスターイオンビームの照射によって前記多孔質な絶縁フィルム層内の1以上のヴィアの側壁の上に緻密化層を形成する工程;
前記第一マスキング材料層の残部を除去する工程;
1以上の形成されたヴィアを充填し,前記ハードマスク層の上に層を形成するために第二のマスキング材料層を適用する工程;
前記第二のマスキング材料層内にトレンチパターンを形成する工程;
露出された表面と側壁に1以上のトレンチを形成するために,前記ハードマスク層および少なくとも一部の前記多孔質絶縁フィルム層を通して前記第二のマスキング材料層内のトレンチパターンを転写させる工程;
前記第二マスキング材料層の残部を除去する工程;
1以上のトレンチの表面および側壁上に緻密化層を形成する工程;
ハードマスク層の一部もしくは全部を除去して,1以上のヴィアを基板エッチングストップ層に開けるためにガスクラスターイオンビームの照射によってエッチングする工程
とを含むことを特徴とする,二重ダマシン集積構造を製造する方法。
【請求項2】
前記転写させる工程が,反応イオンエッチングを用いて成される請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記転写させる工程が,ガスクラスターイオンビームの照射エッチングを用いて成される請求項1記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つの転写工程において,酸素およびフッ素を含有するガスのガスクラスターイオンビームを用いる請求項3記載の方法。
<途中省略>
【請求項13】
多孔質の極めて低いk値を有する絶縁フィルム層上の緻密化層が,実質的に閉塞された孔を含む請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記ヴィアパターンの転写工程が,緻密化層形成に用いるガスクラスターイオンビームの照射と同時に進行する請求項1記載の方法。」

・「【背景技術】
【0002】
半導体産業は,スケーリング(scaling)を用いることによって市場に費用対効果の高いチップ(chips)を供給することにより,すさまじい成功を収めた。スケーリングは装置や半導体プロセッサのフロントエンド(front end)に重要な役割を果たしたが,装置の配線はスケーリングに追随できず,内部抵抗や静電容量(キャパシタンス(capacitance))の低下を招いた。この問題を緩和するために,低抵抗コンダクタ(銅など)を使用したり,低いk値を持つ絶縁体を導入してキャパシタンスの問題を低減した。近年,非常に多孔性(30?50%)であることによって特徴的な超低k値(ULK;k<2.5)の絶縁体が発展した。これらの材料は他の湿性な化合物やガス(wet chemicals and gases)により汚染されやすいので集積が非常に難しい。」

・「【0008】
図2Eには,フォトレジスト層322に所望のトレンチパターンが描かれ,反応イオンエッチング(RIE)によりそのパターンが第三ハードマスク層,底部の反射防止膜316,第二ハードマスク層308,第一ハードマスク層306を通して,さらにULK絶縁層304の一部を通してトレンチ326が構成された,堆積層(構造304E)を示す。底部の反射防止膜316の材料は,ULK絶縁層304やヴィアの周囲に残るエッチングされていない突出部よりもやや早くRIEエッチングされることに注意すべきである。
【0009】
図2を参照すると,RIEは残ったフォトレジスト層322,反射防止膜320,第三ハードマスク層318,底部の反射防止層316,を除去し,基板エッチングストップフィルム302を開口させることにより,ヴィア324が完成し構造300Fが得られる。酸素RIE処理および必要なウェットクリーンが,多孔質なULK層304材料に浸透しあるいはこれを削取するので,こうして形成された回路の信頼性と機能が低下する原因となりうる。」

・「【0019】
RIEはULK絶縁層表面に多孔構造を残すので,これらの境界面が,後のバリアや成長層プロセスのために所望のALDやCVD技術を用いるのに際して,適合しなくなる。」

・「【0021】
これらの集積方式には多くの問題がある。第一に,これらのプロセスによって得られる最終的な構造には1以上のハードマスク層が残っている。これは,絶縁構造の効果的なk値を上げ,好ましくない。これらのハードマスク層の使用を最小にして他の材料を界面に用いると,リーク,層間剥離の他,信頼性の問題が生じる。トレンチおよびヴィア構造の表面をエッチングしてオープンにすることは,後の処理工程において汚染の問題がある。例えば,通常のウェットまたはドライストリッピングプロセスは,ULKフィルムの汚染が認められるのである。さらに,化学蒸着法(CVD)や原子層堆積(ALD)処理は,後の処理工程においてバリアフィルムを吸着させるために用いられるが,ALDやCVD処理によりRIEエッチングされた多孔質な側壁に侵入し,ULKフィルムのk値を上げてしまう。最後に,通常のRIEはトレンチの形や深さが様々に変化することでマイクロローディング効果を生じやすく,配線抵抗やキャパシタンスが安定しない。この配線抵抗やキャパシタンスが制御不能であると,半導体の設計においてはチップ機能に重大なマイナスとなる。」

・「【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は前記の多くの問題点を解決した,ガスクラスターイオンビーム(GCIB)処理を用いた新規な集積構造の形成方法に関する。
【0023】
表面処理にクラスターイオンビームを用いることは従来より公知である(例えば,米国特許5814194号,デグチら。本願にも参照している)。この記載の主体は,ガスクラスターが,通常の温度圧力下でガス状態である物質をナノサイズで集合させるものである。そのようなガスクラスターは,クラスターを形成するために数個から何千の分子が緩やかな結合により集合しているものである。このクラスターは電子衝撃または他の方法によりイオン化することができ,制御可能なエネルギーを有する直線的光線として形成することができる。そのようなエッチングには,q・e(eは電荷,qは1から数個の整数を表し,クラスターイオンの荷電状態を示す)で表される正電荷を運ぶ。イオン化されていないクラスターも無論,そのクラスターイオンビームの中に存在する。サイズの大きなクラスターイオンは,クラスターイオン当たりの搬送エネルギー能力の点でしばしば最も有用である。それらは分子当たりの適度なエネルギーである数エレクトロンボルトから数十エレクトロンボルトの,エネルギーを有するからである。クラスターは衝突により崩壊し,全クラスターイオンエネルギーのほんの一部を占める個々の分子に分解する。したがって,大きなクラスターイオンは相当の衝撃効果を有するが,表面から非常に浅い領域に限られる。従来のモノマーイオンビーム処理によると表面下深くまで損傷を与える傾向があったが,前記により各種の表面修飾処理に効果的なクラスターイオンが作られる。
【0024】
GCIBを加速する装置については既に文献(USP5814194)に記載されている。現在利用可能なクラスターイオン源は,サイズN(このNは,各クラスターイオン中の分子数を示す。アルゴンのような単原子ガスの場合,単原子ガスの原子は一つの分子としてみなされ,単原子ガスのイオン化された原子は一つの分子イオンまたはモノマーイオンとしてみなされる)が5000もしくはそれ以上の広い分散を有する。多くの有効な表面処理は,GCIBにより表面に衝突させることで得られる。この処理効果は,清浄化,平滑化,エッチング,ドーピング,フィルム形成,成長などがあり,これらに限定されるものではない
【0025】
この発明の目的は,低いk値を有する絶縁材料のGCIB処理方法を提供し,ハードマスクの使用を最小限に抑えて二重ダマシン集積構造を形成することである。
【0026】
他の目的は,低いk値を有する絶縁材料のGCIB処理方法を提供し,最終エッチング処理後の構造にハードマスクを含まない二重ダマシン集積構造を形成することである。
【0027】
また,別の目的は,すべてのエッチング表面を,緻密化し(densifying),シーリングする(sealing)方法を提供し,後のプロセスにおいて汚染される影響を減少させることである。
【0028】
さらに別の目的は,エッチングによるトレンチの深さと形を制御して,内部抵抗やキャパシタンスを安定化することである。
【0029】
またさらに別の目的は,改善されたULK集積構造の形成に際し,二重ダマシン形成プロセスにおいてハードマスクを使用しないかまたは減らすこと及び,最終のエッチング処理された構造には殆どハードマスクが残らないようにすることである。」

・「【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1には,以下に述べるGCIB処理装置100の典型的な基本構成が示されている。真空空間102は,三つの連結したチャンバに分けられ,ソースチャンバ104と,イオン化/加速化チャンバ106,処理チャンバ108を有する。三つのチャンバは真空ポンプシステム146a,146b,146cによって好適な操作圧力に調整されている。圧縮されたソースガス112(例えばアルゴンまたは窒素)がガス貯蔵容器111内に保存され,ガス供給管114とガスメータバルブ113を通ってスタグネーションチャンバ(stagnation chamber)116に送られ,適切な形状のノズル110を通って実質的にかなり低い圧力中へ放出される。その結果,超音速ガスジェット118が生じる。ジェット内に膨張することで冷却され,ガスジェット118の一部が,数個から数千の原子や分子が緩やかに結合したクラスターに凝縮する。ガススキマ開口部(gas skimmer aperture)120は,クラスタージェットから凝縮していないガス分子を部分的に分離し,高い圧力が好ましくない下流域(例えば,イオナイザ122,高電圧電極126,処理チャンバ108など)の圧力を最小にする。圧縮されたソースガス112としては,アルゴン,窒素,二酸化炭素,酸素,およびその他のガスまたはそれらの混合物が好ましいが,これらに限定されるものではない。
【0031】
ガスクラスターを含む超音速ガスジェット118が形成された後,クラスターはイオナイザ122でイオン化される。イオナイザ122は典型的には電子衝撃イオナイザであり,一つ以上の白熱フィラメント124から熱電子を生じる。ジェットがイオナイザ122を通過する際,加速され,ガスジェット118中のガスクラスターに直接電子を衝突させる。電子衝撃によりクラスターから電子を放出させ,クラスターの一部が正にイオン化される。いくらかのクラスターは一以上の電子が放出され,マルチイオン化される。好適なバイアス高電圧電極126がイオナイザからクラスターイオンを引き出し,ビームを形成させ,所望のエネルギー(典型的には数百Vから数十kVの加速ポテンシャル)に加速し,GCIB128を形成するように合焦させる。フィラメント電源136はイオナイザフィラメント124を加熱するためフィラメント電圧Vfを与える。アノード電源134はアノード電圧VAを与えて,フィラメント124から加速された熱電子を放出し,クラスターを含むガスジェット118に照射してイオンを生じさせる。抽出電源138は抽出電圧VEを与えて,高電圧電極をバイアスし,イオナイザ122のイオン化領域でイオンを抽出してGCIB128を形成する。加速化電源140は加速電圧V_(Acc)を与えて,高電圧電極をバイアスし,全GCIB加速化ポテンシャルをV_(Acc)と等しくする。一つ以上のレンズ電源(142および144として例示される)は,高電圧電極をバイアスし,焦点電圧(V_(L1),V_(L2))を与えてGCIB128を合焦させる。
【0032】
半導体ウエハや他の製品となるためにGCIB処理がなされる対象物152は,対象物ホルダ150に固定され,GCIBの通路上に保持される。従って,大きな対象物に適用して均一に処理するためには,GCIB128の通路を空間的に横切るようにスキャンすることで処理することができる。
【0033】
GCIB128は固定されており軸129に対して,対象物152を機械的に動かし,対象物152の表面全体にGCIB128処理の効果を均一に分散させる。
【0034】
Xスキャンアクチエータ202は,対象物ホルダ150を直線的に動かし,Xスキャン動作208(紙面に対して垂直方向)を行う。Yスキャンアクチエータ204は,対象物150を直線的に動かし,Xスキャン動作208に対して直交する方向にYスキャン動作210を行う。XスキャンとYスキャンを組み合わせて対象物を動かすことにより,対象物ホルダ150に保持された対象物152が動かされ,GCIB128を通してラスターの様な(raster(ブラウン管の走査線の交光点の軌跡)-like)なスキャン動作をすることにより,GCIB128による対象物152表面の均質な(もしくはプログラムされた)照射が行われる。対象物152をGCIB128の軸に対して傾斜して,対象物ホルダ150に保持することにより対象物152の表面に対するビーム入射角206を持たせる。ビーム入射角206は好適な角度でよく,典型的には90度または90度近辺である。Yスキャン処理の間に,対象物ホルダー150に保持された対象物152は152Aと150Aで示された位置を交互に移動する。これら2つの位置間での移動中に対象物152がGCIB128のスキャンを受け,両端の位置においてはGCIB128の通路から完全にはずれている(オーバースキャン)ことが分かる。図1には明確に示されてはいないけれども,Xスキャン動作の方向208(紙面に対して垂直方向)に対しても同様にスキャンおよびオーバースキャンがされているのである。
【0035】
ビーム電流センサ218はGCIB128の通路の対象物ホルダ150の後ろに設けられ,対象物ホルダ150がGCIB128の通路をスキャンアウトされたときGCIB128のサンプルをとらえる(intercept)。ビーム電流センサ218は典型的にはファラデーカップなどであり,ビームの入射口を除いて閉じられており,電気絶縁マウント212で真空容器102の壁に固定されている。
【0036】
マイコンベースのコントローラ220はXスキャンアクチュエータ202とYスキャンアクチュエータ204に電気的ケーブル216を介して接続され,両アクチュエーターを制御して対象物152がGCIB128の内外に出入りさせ,GCIB128に対して均一にスキャンし,GCIB128による対象物152の適切な処理を実現する。コントローラ220はリード214を介してビーム電流センサ218で集められるビーム電流のサンプルを受信し,GCIBをモニターし,所定のGCIB照射量が投射されたときにGCIB128から対象物152を取り除くことによりGCIBの照射量を制御する。
【0037】
半導体の集積各工程において,本発明のGCIB処理が有効である。これらには,エッチング処理,フォトレジストのアッシング,多孔質ULK絶縁体の緻密化,シーリングする工程が含まれる。
【0038】
表1は有用なガスおよび混合ガスの一例であるが,他のガスおよび混合ガスもまた,異なるエッチング処理において有効であり,本発明において表1に記載のガスおよび条件に限定されるものではない。最適なガスの流速はGCIB処理システムの特徴により異なる。表1に記載のガスの流速は,エピオンコーポレーション(マサチューセッツ州,ビルリカ)製のnFusion^(TM)型GCIB200処理システムまたはnFusion^(TM)型GCIB300処理システムを使用したときの最適条件の一例である。」

・【0039】の【表1】は,「エッチング処理の為のGCIB処理条件(およその値)」を示すものであり,「有用なガス」として「O_(2),フッ素含有ガス(例えばCF_(4),CHF_(3),C_(2)F_(2),SF_(6),NF_(3))およびフッ素含有ガスとO_(2)との混合ガス(例えば1-10%のNF_(3),90-99%のO_(2))」が,「典型的なガス」として「5%NF_(3),95%O_(2)」が,「ガス流量(SCCM)」として「200?2000」が,「典型的なガス流量(SCCM)」として「500」が,「V_(Acc)レンジ(kV)」として「10?80」が,「典型的V_(Acc)(kV)」として「30」が記載されている。

・「【0040】
GCIBによるエッチング処理条件は,対象材料およびエッチングの深さにより決定されるが,典型的には1×10^(15)ions/cm^(2)オーダーである。ただし,一種以上の材料を同時期にエッチングしたり,エッチング処理速度を制御するために調整されることに留意すべきである。そうした場合,混合ガスを用いるのが特に効果的で,混合ガスの比率を制御するなどにより,異なる材料の異なるエッチング処理を制御可能である。例えば,1?10%のNF_(3)と,99?90%のO_(2)混合ガスが表1に記載されているが,この混合ガスを変化させることによりエッチング速度の制御に有効なのである。」

・「【実施例】
【0046】
図4Aを参照すると,本発明の第一実施例において,金属配線上(図には示されていないが,構造500Aのストップフィルム層502の下にある)に絶縁フィルムが堆積されることから始められる。絶縁堆積層はエッチングストップフィルム502,多孔質ULK絶縁層504,ハードマスク層506からなる。エッチングストップの材料は従来のプロセスで使用されていると同様のものであり典型的には,Si_(3)N_(4)またはSiCNよりなる。エッチングストップフィルム502は厚み約35nmである。多孔質のULK絶縁層504は厚み(実施例では)約300nmである。
【0047】
ハードマスク層506は,処理後の二重ダマシン構造には残留しない。従って,従来の集積法とは異なり,ハードマスク層として比較的高いk値を有するSiO_(2)や,Si_(3)N_(4)を用いることができる。SiO_(2)や,Si_(3)N_(4)は抗酸化性があり,フォトリワークが可能である。ハードマスク層506は厚み(実施例では)約40nmである。
【0048】
SiO_(2)や,Si_(3)N_(4)に加えて他の好適なハードマスク材料として,SiCOH,SiC,SiCNなどが挙げられるが,これらに限定されるものではない。ハードマスク層506が形成される前に,GCIB処理(表3に示す典型的な処理条件)により多孔質ULK絶縁層504の表面が緻密化およびシーリング処理される。
【0049】
図4Bは,反射防止膜508とフォトレジスト層510を公知の方法により堆積して,絶縁堆積層500Bを形成した状態を示す。反射防止膜508およびフォトレジスト510は共に公知の材料を適用できるが,反射防止膜の形成については必須ではない。反射防止膜508とフォトレジスト510はここでは“マスキング材料”として共通のものであり,同じ用語としてフォトレジスト単独層の場合にも使用する。反射防止膜508は(典型的には)約40nmの厚みを有し,フォトレジスト層510は,膜508の表面から(例えば)約200nmの厚みである。反射防止膜508は(限定するものではないが)“AR40Anti-Reflectant”より成り,フォトレジスト層510は(これも限定するものではないが)“Epic^(TM)2210ArF Photoresist”より成り,ロームアンドハースエレクトリックマテリアルズ社(アリゾナ州 フェニックス)より供給されている。
【0050】
図4Cには,レジストにヴィアパターンを描いた後,RIEまたは好ましくはGCIBエッチング処理(例えば表1に示す処理条件で)により反射防止膜508,ハードマスク層506,多孔質ULK絶縁層504を通して,エッチングストップフィルム502までパターンを転写させ,ヴィア512が形成された構造500Cが示されている。
【0051】
図4Dには,残るフォトレジスト層510と反射防止膜508が,酸素その他の混合気体による通常のプラズマまたはGCIBアッシング処理(例えば表2に示す処理条件で)され,得られる構造500Dが示されている。好ましい実施例として,多孔質ULK絶縁層504内のヴィア512の側壁を,GCIB処理(例えば表3に示す処理条件で)により清浄化,緻密化され,多孔質部分が表面に無い状態にすることができる。これによって,ウェットクリーン工程や,多孔質絶縁体のウェットプロセスによる汚染される機会を避けることができる。
【0052】
図4Eには,ウエハに次のパターンを形成するために,反射防止膜516とフォトレジスト層518より成る別のマスキング材料層が堆積した構造500Eが示されている。マスキング材料層の反射防止膜の一部はエッチングされたヴィア(ヴィア512として示される)を充填し,表面を平坦にした上にフォトレジストが形成される。反射防止膜516およびフォトレジスト層518は共に前記同様の材料より成る。ヴィア充填層を除いて,反射防止膜516は(例えば)約200nmの厚みを有する。フォトレジスト層518は(例えば)約200nmの厚みを有する。この構造は従来技術の2Dに示す構造よりもシンプルで改善されており,フォトリワーク(photo rework)を実行すれば,GCIBアッシング処理によりフォトレジストおよび反射防止膜を除去することができる。
【0053】
図4Fには,所望のトレンチパターンをレジストに描いた後,RIEまたはGCIBエッチング処理によって,反射防止膜516,ハードマスク層506,多孔質なULK絶縁層504の一部を除去して形成されたトレンチ520が示されている。反射防止膜516の材料は,多孔質ULK絶縁層504の材料よりもエッチング速度が速く,ヴィア512の上側周辺部にエッチングされない突出部“フェンス(fences)”が残らないようになっている。(例えば表1に示される処理条件では,反射防止膜516と多孔質ULK絶縁層504のエッチング速度がNF_(3)と,O_(2)の混合ガスの組成により制御される)図4Gには,アッシング処理,好ましくはGCIBアッシング処理(例えば表3に示す処理条件)により,半製品500Gの表面から残っているフォトレジスト層518,反射防止膜516を除去した状態が示されている。さらにRIEまたはGCIBエッチング処理(例えば表1に示す処理条件)によりハードマスク層506を除去し,基板エッチングストップフィルム502を開口してヴィア512が完成するまでが示されている。」

・「【0063】
GCIB処理の重要な効果は,GCIB処理は,エッチングされたULK絶縁材料の平滑化,緻密化,シーリングができることにより,多孔質ULK絶縁材料を覆うハードマスクの必要性を失くした事である。ULK絶縁材料のハードマスクをRIEにより除去すると,多孔質ULK絶縁材料の表面が荒らされる。ULK絶縁材料のハードマスクをCMPにより除去すれば平滑化は可能であるが,緻密化,孔のシーリングができないために,多孔質ULK絶縁材料にウェット化学物質が侵入するという問題がある。
【0064】
本発明の他の効果として,二重ダマシン構造の製造に際しハードマスクの使用数を最小にできること及び,最終のエッチングされた二重ダマシン構造からはハードマスクが除去されていることが挙げられる。従って,最終の二重ダマシン構造は十分に低いk値を有し,リークや層間剥離その他の関連する問題発生を最小にすることができるのである。多孔質なエッチングされたULK絶縁体の表面をすべて緻密化,シーリングすることで,後工程におけるCVDやALD処理中の汚染の影響を受け難くなる。最後に,GCIBエッチング処理は,マイクロローディング効果を受けることなく,トレンチの深さ,形状の制御が容易であり,共通の設計から抵抗とキャパシタンスのより正確な仕様が可能になる。」

イ 引用発明
引用例1の上記の記載から,引用例1には,以下の発明(以下「引用発明)という。)が記載されていると認められる。

「金属配線上に堆積された,エッチングストップフィルム502,多孔質ULK絶縁層504,ハードマスク層506,反射防止膜508及びフォトレジスト層510からなる絶縁堆積層500Bの前記フォトレジスト層510にヴィアパターンを描いた後,エッチング処理により前記反射防止膜508,前記ハードマスク層506,前記多孔質ULK絶縁層504を通して,前記エッチングストップフィルム502まで前記ヴィアパターンを転写させ,ヴィアを形成し,その後,残る前記フォトレジスト層510と反射防止膜508を,酸素その他の混合気体による通常のプラズマまたはGCIBアッシング処理し,さらに,ウエハに反射防止膜516とフォトレジスト層518より成る別のマスキング材料層を堆積して構造500Eを得た後に,前記フォトレジスト層518に所望のトレンチパターンを描いた構造に対して,
GCIBエッチング処理することで,前記反射防止膜516,前記ハードマスク層506,前記多孔質なULK絶縁層504の一部を除去してトレンチ520を形成する方法において,
前記GCIBエッチング処理は,
ソースチャンバと,イオン化/加速化チャンバ,処理チャンバを有するGCIB処理装置の,これら三つのチャンバを真空ポンプシステムによって好適な操作圧力に調整する工程と,
圧縮されたソースガスがガス貯蔵容器内に保存され,ガス供給管とガスメータバルブを通ってスタグネーションチャンバに送られ,適切な形状のノズルを通って実質的にかなり低い圧力中へ放出され,超音速ガスジェットが生じ,ジェット内に膨張することで冷却され,ガスジェットの一部が,数個から数千の原子や分子が緩やかに結合したクラスターに凝縮される工程と,
前記クラスターをイオナイザでイオン化する工程と,
好適なバイアス高電圧電極が前記イオナイザからクラスターイオンを引き出し,ビームを形成させ,所望のエネルギーに加速し,GCIBを形成するように合焦させる工程であって,加速化電源が加速電圧V_(Acc)を与えて,前記高電圧電極をバイアスし,全GCIB加速化ポテンシャルをV_(Acc)と等しくする工程と,
半導体ウエハや他の製品となるためにGCIB処理がなされる対象物は,対象物ホルダに固定され,GCIBの通路上に保持される工程であって,大きな対象物に適用して均一に処理するためには,GCIBの通路を空間的に横切るようにスキャンするために,対象物を機械的に動かし,対象物の表面全体にGCIB処理の効果を均一に分散させる工程と,
を含むものであり,
例えば表1に示される,「典型的なガス」として「5%NF_(3),95%O_(2)」,「典型的なガス流量(SCCM)」として「500」,「典型的V_(Acc)(kV)」として「30」という処理条件を用い,NF_(3)と,O_(2)の混合ガスの組成を制御することで,前記反射防止膜516の材料に対するエッチング速度を,前記多孔質ULK絶縁層504の材料に対するエッチング速度よりも速くして,前記ヴィア512の上側周辺部にエッチングされない突出部“フェンス(fences)”が残らないようにした,
トレンチ520を形成する方法。」

ウ 拒絶査定で引用した,本願の優先権の主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特表2007-529876号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

・「【請求項14】
対象物をガスクラスターイオンビームで処理する方法であって,次の各工程
減圧チャンバ内のガスクラスターイオンビーム源からガスクラスターイオンビームを発生させる工程,
高エネルギーガスクラスターイオンビームを形成するために,ビーム通路を有するアクセラレータにより前記ガスクラスターイオンビームを加速する工程,
減圧チャンバ内に対象物を保持する工程,
アクセラレータと対象物の間に加圧領域を提供し,前記ビーム通路の少なくとも一部が前記加圧領域を通過する工程,
を含むことを特徴とする処理方法。
【請求項15】
さらに,
加圧ガス源を提供する工程,
ノズルを提供する工程,
加圧ガス源から減圧チャンバへ導入することによってガスクラスターを形成するために,加圧ガスをノズルから放出する工程,
イオナイザーを提供する工程,
ガスクラスターをガスクラスターイオンビームへイオン化する工程,
を含む請求項14記載の方法。
【請求項16】
さらに,
加圧領域内で圧力をコントロールするシステムを提供する工程,
前記システムにより加圧領域の圧力をコントロールする工程,
を含む請求項14記載の方法。」

・「【技術分野】
【0001】
本発明は,ガスクラスターイオンビームにより表面処理を行う方法および装置に関し,特に,表面処理効果が改善された,修飾ガスクラスターイオンビームの処理方法および装置に関する。」

・「【0011】
高強度GCIBsは多様な荷電状態のクラスターを含んでおり,加速電圧V_(Acc)(数kV程度)で加速すると,ビームに対してq値が加わり,q・V_(Acc)の増加したエネルギーをもつクラスターが生成する。一般的に,対象物の表面をGCIBを用いて処理すると得られる多くの有益な効果は,ビーム内のガスクラスターイオンのエネルギーに依存している。たとえば,表面のエッチングは,高いエネルギーのクラスターを用いればより早く進行する。GCIB処理の他の有利な適用としては,表面のスムージング(平滑化)があり,他の方法に比べて原子或いは近原子レベルで優れた効果を示す。ある種のビーム状態におけるGCIBによる表面処理は,例外的平滑面を生じるが,GCIB処理が表面を常に平滑にするとは限らないことに留意すべきである。事実,初期表面が比較的平滑であるときは,GCIB処理により却って表面を荒らす場合もある。表面のエッチングやスムージングは,状況に応じて実施する。処理条件を最適化する通常の技術(たとえば,クラスターガス源の選択や,加速電圧の選択,GCIB電流の選択,GCIB処理方法の選択など)を使用するとき,すでに平滑な表面に対する,適度なエッチング速度(同時に進行するスムージング速度)や表面を荒らさないようにする適当なGCIBビームの条件がしばしば見つからない。GCIB処理による進取的なエッチング速度は,通常高エネルギー,高強度のGCIB状態を必要とするが,表面を荒らさず平滑化するためには,低いエネルギーの(もしくはエッチングのためには実用的ではない状態の)ビームが望ましいことも知られているのである。そのような場合,所望の目的を達成するためにいくつかのGCIBステップを組み合わせることが必要であった。そのようなプロセスとしては,最初のビーム状態を進取的(aggressive)なエッチングができる条件,次いで最初のエッチングにより生じた荒さを減少させるようなエッチング条件,そしてエッチングが生じないがスムージングできるような条件による他のステップを適用する。そのようなステップの組み合わせもしくは複合化は,期待される最終的な結果には到達していないけれども,ある重要なプロセスにおいて低い生産性ではあるが技術的には知られている。たとえば,フェンナーらの米国特許6375790には,多段階の処理をGCIB処理装置に適用させて,そのような複合処理が可能であることを開示している。
【0012】
GCIBの形成にイオン化ガスクラスターの生産に有効なイオナイザーを適用すると,広い範囲のイオン化された状態のビームが得られるが,これらは対象物のGCIB処理による高生産性が求められる場合に必要な強力なビーム(式1で示すような)の生産条件では,特にマルチイオン化されたガスクラスターが含まれている。そのようなビームに,適度なエッチング速度を得るためのエネルギーを与えるのに十分な状態で加速されると,表面のスムージングだけでなく,表面を荒らす方向にも作用する。この問題は,GCIBプロセスの複合化または多段階化によって少なくとも軽減はされるが,所望の速度での生産性を上げてはいない。さらに,多くの異なるビーム状態を有する複合化処理であっても,究極レベルの平滑化は得られておらず,他の重要な処理方法が必要とされているのである。」

・「発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述の通り,本発明の目的は,良好なエッチング能力だけでなく良好なスムージング能力を有するビームを形成する特徴を有するGCIBの修飾方法を提供することを目的とする。」

・「【0025】
図2は本発明の具体例としてGCIB処理装置300の概略を示す。調節壁(baffle)302(複数の調節板を用いても良いが,例では簡略化するために一枚の板のみ示している)は分離された圧力チャンバ304を形成し,イオン化/加速化チャンバ106および処理チャンバ108の圧力よりも高い圧力を加えることができる。
【0026】
イオン化/加速化チャンバ106はGCIB128を圧力チャンバ304へ導入するためのイオン化/加速化チャンバ開口部306を有している。調節壁302は,圧力チャンバ304からGCIB128の出口となる圧力チャンバ開口部308を有する。圧力チャンバ304を通過するGCIB128は,その通路D1に沿った,長さd1を有する。また調節壁302は,処理チャンバ108に対して1以上の開口部310を有していてもよい。圧力チャンバから処理チャンバ108通じるこの圧力チャンバ開口部308および付加的な開口部310は,トータルのガスコンダクタンスCPを有する。イオン化/加速化チャンバ306のガスコンダクタンスはCAである。圧縮ガス314はガス保存シリンダ312内に保存されている。圧縮ガス314は好ましくは不活性ガスであり,好適にはアルゴンである。ガス計測バルブ316は好ましくはマスフローコントロールタイプの計測バルブであり,ガス供給チューブ318およびディフューザ320を通して圧力チャンバ304に圧縮ガス314を調整しつつ流している。圧力チャンバ304に導入されたガス314は,イオン化/加速化チャンバ106および処理チャンバ108の基礎圧力と比較して,圧力チャンバ304内を加圧する。
【0027】
QINはディフューザ320を通して圧力チャンバ304内に流れ込むガス流量を示す。
QAは圧力チャンバ304とイオン化/加速化チャンバ106の間のイオン化/加速化チャンバ開口部306を通る流量を示す。
QPは圧力チャンバ304と処理チャンバ108の間の圧力チャンバ開口部308および開口部310を通る流量を示す。
PCは圧力チャンバ304内の真空圧を示し,
PPは処理チャンバ108内の真空圧を示し,(図2には示されてはいないが)通常の真空圧ゲージを用いて測定した値であり,
PAはイオン化/加速化チャンバ106内の真空圧を示し,前記同様に測定した値である。
前記を用いて以下の式にて表すことができる。」

・「【0041】
図6および7についてはSiO_(2)のエッチングおよび平滑化について示した。しかし,同様な結果は他の材料であっても得られ,たとえば金属や,酸化物,セラミックス,半導体,などにおいても同様である。PDI(または圧力-通路長の積)が5×10^(-4)torr-cmより大きいと,(表面が荒らされることなしに)有意な平滑化が達成され,エッチング速度の減少も少ない。高いエッチング速度ならびに,優れた平滑化および/または表面が荒らされることのない処理は,従来のGCIB源の調整や,加速化電圧の調整によっては得られないことが多い。PDI値を高めることによって,エッチング速度が次第に低下するが,高度な平滑化が得られる。高いPDI値においては,従来のGCIB源の調整によっては得られなかったレベルの平滑化が多くの物質において得られるのである。」

(3)本願補正発明1の進歩性について
ア 本願補正発明1と引用発明との対比
(ア)引用発明は,「金属配線上に堆積された」「前記反射防止膜516,前記ハードマスク層506,前記多孔質なULK絶縁層504の一部」を「GCIBエッチング処理」することで「除去」して「トレンチ520」を形成する方法に係る発明であって,当該「前記反射防止膜516」は,「ウエハ」に堆積されたものであるから,引用発明は,「ウエハ」上に堆積された「反射防止膜516」,「前記ハードマスク層506」,「前記多孔質なULK絶縁層504」の一部を「エッチング処理」することで除去する発明であると理解される。
そうすると,引用発明は,以下の相違点1,2を除いて,「基板上の材料をエッチングする方法」である点で,本願補正発明1と一致する。

(イ)引用発明は,「ウエハに反射防止膜516とフォトレジスト層518より成る別のマスキング材料層を堆積して構造500Eを得た後に,前記フォトレジスト層518に所望のトレンチパターンを描いた構造に対して,GCIBエッチング処理することで,前記反射防止膜516,前記ハードマスク層506,前記多孔質なULK絶縁層504の一部を除去してトレンチ520を形成する」ものである。
そうすると,「GCIBエッチング処理」の開始時において,「構造500E」の「フォトレジスト層518」には,「所望のトレンチパターン」が描かれ,「反射防止膜516」の表面の一部が,前記「所望のトレンチパターン」の形状で曝露する一方で,前記「多孔質なULK絶縁層504」は,その上に「反射防止膜516」が堆積されていることから,曝露しておらず,その後,当該「GCIBエッチング処理」によって,「反射防止膜516,前記ハードマスク層506,前記多孔質なULK絶縁層504の一部」が除去されるものと理解される。
他方,本願補正発明1は,「ガスクラスタイオンビーム(GCIB)を用いて前記第1の材料の少なくとも一部を除去するGCIBエッチングプロセスを実行する工程であって,前記第1の材料と前記第2の材料の両方が前記GCIBエッチングプロセスの開始時に曝露されていない場合に,前記第1の材料の少なくとも一部と前記第2の材料の少なくとも一部を除去する,工程」を含む発明である。
ここで,本願補正発明1の前記「前記第1の材料と前記第2の材料の両方が前記GCIBエッチングプロセスの開始時に曝露されていない場合」との記載は,文理上,(i)第1の材料と第2の材料の両方がGCIBエッチングプロセスの開始時に曝露されている場合,(ii)第1の材料と第2の材料のうちの少なくとも一方の少なくとも一部がGCIBエッチングプロセスの開始時に曝露されており,他方が暴露されていない場合,及び,(iii)第1の材料と第2の材料のいずれもがGCIBエッチングプロセスの開始時に曝露されていない場合のうちから,前記(i)第1の材料と第2の材料の両方がGCIBエッチングプロセスの開始時に曝露されている場合を除外するものと解されるところ,本願補正発明1は,「基板上の材料をエッチングする方法であり,前記方法は:第1の材料,第2の材料,及び前記第1の材料と前記第2の材料のうちの少なくとも一を曝露する表面を持つ基板を保持するための基板ホルダ回りを減圧環境に維持する工程;前記基板を前記減圧環境内に確実に保持する工程」を含むものと特定されており,当該特定によって前記「(iii)第1の材料と第2の材料のいずれもがGCIBエッチングプロセスの開始時に曝露されていない場合」が排除されることから,結局は,本願補正発明1の前記「前記第1の材料と前記第2の材料の両方が前記GCIBエッチングプロセスの開始時に曝露されていない場合」との記載は,「(ii)第1の材料と第2の材料のうちの少なくとも一方の少なくとも一部がGCIBエッチングプロセスの開始時に曝露されており,他方が暴露されていない場合」を特定することに等しいものと認められる。
すなわち,引用発明の「反射防止膜516」,「多孔質なULK絶縁層504」は,それぞれ,本願補正発明1の「第1の材料」,「第2の材料」に相当し,引用発明は,「ガスクラスタイオンビーム(GCIB)を用いて前記第1の材料の少なくとも一部を除去するGCIBエッチングプロセスを実行する工程であって,前記第1の材料と前記第2の材料の両方が前記GCIBエッチングプロセスの開始時に曝露されていない場合に,前記第1の材料の少なくとも一部と前記第2の材料の少なくとも一部を除去する,工程」を含む点で本願補正発明1と一致する。

(ウ)引用発明の「前記反射防止膜516,前記ハードマスク層506,前記多孔質なULK絶縁層504の一部を除去してトレンチ520を形成する方法」に係る「GCIBエッチング処理」は,「半導体ウエハや他の製品となるためにGCIB処理がなされる対象物は,対象物ホルダに固定され,GCIBの通路上に保持される工程であって,大きな対象物に適用して均一に処理するためには,GCIBの通路を空間的に横切るようにスキャンするために,対象物を機械的に動かし,対象物の表面全体にGCIB処理の効果を均一に分散させる工程」と,「ソースチャンバと,イオン化/加速化チャンバ,処理チャンバを有するGCIB処理装置の,これら三つのチャンバを真空ポンプシステムによって好適な操作圧力に調整する工程」とを含むものである。
そして,「半導体ウエハや他の製品となるためにGCIB処理がなされる対象物」が,「対象物ホルダ」に固定され,対象物を機械的に動かし得るためには,前記「対象物ホルダ」は,「GCIB処理がなされる対象物」を「確実に保持」するものであるといえる。
さらに,前記(イ)のとおり,「GCIBエッチング処理」の開始時において,「反射防止膜516」の表面は,前記「所望のトレンチパターン」の形状で曝露することが理解され,また,引用発明の「反射防止膜516」,「多孔質なULK絶縁層504」は,それぞれ,本願補正発明1の「第1の材料」,「第2の材料」に相当するといえる。
してみれば,本願補正発明1と,引用発明は,「第1の材料,第2の材料,及び前記第1の材料と前記第2の材料のうちの少なくとも一を曝露する表面を持つ基板を保持するための基板ホルダ回りを減圧環境に維持する工程」及び「前記基板を前記減圧環境内に確実に保持する工程」を含む点で一致する。

(エ)引用発明の「前記反射防止膜516の材料に対するエッチング速度を,前記多孔質ULK絶縁層504の材料に対するエッチング速度よりも速く」することで「ヴィア512の上側周辺部にエッチングされない突出部“フェンス(fences)”が残らないように」する工程と,本願補正発明1の「GCIBエッチングプロセス用に目標エッチングプロセス特性を選択する工程であって,前記目標エッチングプロセス特性が,前記第1の材料と前記第2の材料との間のエッチング選択性,及び,前記第1の材料の表面粗度又は前記第2の材料の表面粗度のうちの少なくとも一を含む,工程」とは,「GCIBエッチングプロセス用に目標エッチングプロセス特性を選択する工程であって,前記目標エッチングプロセス特性が,前記第1の材料と前記第2の材料との間のエッチング選択性を含む」点で一致する。

(オ)引用発明の「5%NF_(3),95%O_(2)」のガスは,本願補正発明1の「プロセス組成物」に相当する。また,引用発明において,ガス流量を「500」(SCCM)とするために,プロセス組成物中の少なくとも一種類の成分の流速を設定することが行われていることは明らかである。さらに,引用発明のV_(Acc)「30」(kV)は,本願補正発明1の「ビーム加速電位」に相当する。
そうすると,引用発明の「例えば表1に示される,『典型的なガス』として『5%NF_(3),95%O_(2)』,『典型的なガス流量(SCCM)』として『500』,『典型的V_(Acc)(kV)』として『30』という処理条件を用い,NF_(3)と,O_(2)の混合ガスの組成を制御する」工程と,本願補正発明1の「前記GCIBエッチングプロセス用にGCIB性質を設定する工程であって,前記GCIB性質は,プロセス組成物,該プロセス組成物中の少なくとも一種類の成分の流速,ビーム加速電位,及び,前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス圧力又は前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス流速のうちの少なくとも一方を含む,工程」とは,「前記GCIBエッチングプロセス用にGCIB性質を設定する工程であって,前記GCIB性質は,プロセス組成物,該プロセス組成物中の少なくとも一種類の成分の流速,ビーム加速電位,を含む」点で一致する。

(カ)引用発明の「NF_(3)」は,本願発明の「少なくとも1つのエッチングガス」に相当する。

(キ)引用発明は,「GCIBエッチング処理することで,前記反射防止膜516,前記ハードマスク層506,前記多孔質なULK絶縁層504の一部を除去してトレンチ520を形成する」のであるから,本願補正発明1と,引用発明とは,「前記基板の前記表面の少なくとも一部分に前記GCIBを照射して,前記第1の材料の少なくとも一部分を除去する工程,を含む」点で一致する。

したがって,上記の対応関係から,本願補正発明1と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりといえる。

<一致点>
「基板上の材料をエッチングする方法であり,前記方法は:
第1の材料,第2の材料,及び前記第1の材料と前記第2の材料のうちの少なくとも一を曝露する表面を持つ基板を保持するための基板ホルダ回りを減圧環境に維持する工程;
前記基板を前記減圧環境内に確実に保持する工程;並びに,
ガスクラスタイオンビーム(GCIB)を用いて前記第1の材料の少なくとも一部を除去するGCIBエッチングプロセスを実行する工程であって,前記第1の材料と前記第2の材料の両方が前記GCIBエッチングプロセスの開始時に曝露されていない場合に,前記第1の材料の少なくとも一部と前記第2の材料の少なくとも一部を除去する,工程;
前記実行する工程は:
前記GCIBエッチングプロセス用に目標エッチングプロセス特性を選択する工程であって,前記目標エッチングプロセス特性が,前記第1の材料と前記第2の材料との間のエッチング選択性を含む,工程;
前記GCIBエッチングプロセス用にGCIB性質を設定する工程であって,前記GCIB性質は,プロセス組成物,該プロセス組成物中の少なくとも一種類の成分の流速,ビーム加速電位を含む,工程;
前記プロセス組成物を含む加圧ガスから前記GCIBを形成する工程であって,前記プロセス組成物は少なくとも1つのエッチングガスを含む,工程;
前記の設定されたGCIB性質に従って,前記減圧環境を通り抜ける前記GCIBを加速する工程;並びに,
前記基板の前記表面の少なくとも一部分に前記GCIBを照射して,前記第1の材料の少なくとも一部分を除去する工程,を含む方法。」

<相違点>
・相違点1:一致点に係る構成である,GCIBエッチングプロセス用に目標エッチングプロセス特性を選択する工程が,本願補正発明1では,「前記第1の材料と前記第2の材料との間のエッチング選択性,及び,前記第1の材料の表面粗度又は前記第2の材料の表面粗度のうちの少なくとも一を含む」ものであるのに対して,引用発明では,「前記第1の材料の表面粗度又は前記第2の材料の表面粗度のうちの少なくとも一を含む」ことが明示されていない点。

・相違点2:一致点に係る構成である,GCIBエッチングプロセス用にGCIB性質を設定する工程が,本願補正発明1では,「前記GCIB性質は,プロセス組成物,該プロセス組成物中の少なくとも一種類の成分の流速,ビーム加速電位,及び,前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス圧力又は前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス流速のうちの少なくとも一方を含む」のに対して,引用発明では,「前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス圧力又は前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス流速のうちの少なくとも一方を含む」ことが特定されていない点。

イ 相違点についての判断
・相違点1について
(ア)引用例1の上記4(2)アの記載から,以下の事項を理解することができる。
・RIEはULK絶縁層表面に多孔構造を残すので,これらの境界面が,後のバリアや成長層プロセスのために所望のALDやCVD技術を用いるのに際して,適合しなくなること。

・通常のRIEはトレンチの形や深さが様々に変化することでマイクロローディング効果を生じやすく,配線抵抗やキャパシタンスが安定せず,この配線抵抗やキャパシタンスが制御不能であると,半導体集積回路の設計においてはチップ機能に重大なマイナスとなること。

・引用例1に記載された発明は前記の多くの問題点を解決した,ガスクラスターイオンビーム(GCIB)処理を用いた新規な集積構造の形成方法に関するものであること。

・大きなクラスターイオンは相当の衝撃効果を有するが,表面から非常に浅い領域に限られること。

・従来のモノマーイオンビーム処理によると表面下深くまで損傷を与える傾向があったのに対して,通常の温度圧力下でガス状態である物質の分子を,ナノサイズで集合させ,数個から何千の前記分子が緩やかな結合により集合しているガスクラスターを形成し,このガスクラスターを,電子衝撃または他の方法によりイオン化することにより各種の表面修飾処理に効果的なクラスターイオンが作られること。

・GCIBを加速する装置については既に文献(USP5814194)に記載されているところであり,清浄化,平滑化,エッチング等の多くの有効な表面処理の効果が,GCIBにより得られること。

・引用例1に記載された発明の目的は,低いk値を有する絶縁材料のGCIB処理方法を提供し,ハードマスクの使用を最小限に抑えて二重ダマシン集積構造を形成することであり,さらに別の目的は,エッチングによるトレンチの深さと形を制御して,内部抵抗やキャパシタンスを安定化することであること。

(イ)そうすると,引用例1に記載された発明は,通常のRIEがULK絶縁層表面に多孔構造を残し,これらの境界面が,後のバリアや成長層プロセスのために所望のALDやCVD技術を用いるのに際して,適合しなくなり,しかも,RIEではトレンチの形や深さが様々に変化するのでマイクロローディング効果を生じやすく,配線抵抗やキャパシタンスが安定しないものとなり,半導体集積回路の設計において重大なマイナスがあったという課題を解決するために,前記RIEに替えて,清浄化,平滑化,エッチング等の多くの有効な表面処理効果を有するGCIBエッチングを用いることによって,トレンチの深さと形を制御する等の効果を得ることで,内部抵抗やキャパシタンスを安定化したことにあると認められる。

(ウ)すなわち,引用発明は,GCIBの清浄化,平滑化,エッチング等の表面処理効果を利用することによって,後のバリアや成長層プロセスのための所望のALDやCVD技術を用いるのに際して適合しなくなるULK絶縁層表面の多孔構造,及び,マイクロローディング効果を生じやすい様々に変化するトレンチの形や深さの生成を抑制することを目的とした発明といえる。
そして,ULK絶縁層表面の前記「多孔構造」,トレンチの形や深さの様々な「変化」は,ULK絶縁層に形成されたトレンチの表面の凹凸の程度,すなわち,表面粗度によって評価される特性であると認められる。

(エ)してみれば,引用発明において,前記反射防止膜516の材料に対するエッチング速度を,前記多孔質ULK絶縁層504の材料に対するエッチング速度よりも速くして,前記ヴィア512の上側周辺部にエッチングされない突出部“フェンス(fences)”が残らないように,GCIBエッチング処理の条件を,例えば表1のように,ガス,ガス流量,及びV_(Acc)とする設定にあたっては,形成される多孔質ULK絶縁層504のトレンチ表面の多孔構造における孔の大きさや,前記トレンチの幅のバラツキの大きさ,深さのバラツキの大きさが,過大なものとならないような配慮,すなわち,多孔質ULK絶縁層504にエッチングによって形成されたトレンチ表面の表面粗度を小さくする配慮が,前記の発明の解決すべき課題に照らして,当然になされているものと認められる。

(オ)すなわち,引用発明における,例えば表1に示される,「典型的なガス」として「5%NF_(3),95%O_(2)」,「典型的なガス流量(SCCM)」として「500」,「典型的V_(Acc)(kV)」として「30」という処理条件の設定が,「前記反射防止膜516の材料に対するエッチング速度を,前記多孔質ULK絶縁層504の材料に対するエッチング速度よりも速くして,前記ヴィア512の上側周辺部にエッチングされない突出部“フェンス(fences)”が残らないように」するという単一の目標のみを達成することを目的としたものではなく,形成されるトレンチ520の表面の特性,すなわち表面粗度が小さなものとなるような配慮をも併せて達成すべき目的として設定された条件であるということは,引用発明において,RIEではなく,GCIBエッチング処理を用いることで解消しようとした課題に照らして明らかといえる。

(カ)したがって,引用発明は,GCIBエッチングプロセス用に目標エッチングプロセス特性を選択する工程において,目標エッチングプロセス特性が,第1の材料と第2の材料との間のエッチング選択性,及び,前記第1の材料の表面粗度又は前記第2の材料の表面粗度のうちの少なくとも一を含むものである点で,本願補正発明1と一致する。
したがって,相違点1は実質的なものとは認められない。

・相違点2について
(ア)引用例2の上記4(2)ウの記載から,以下の事項を理解することができる。
・高強度GCIBsは多様な荷電状態のクラスターを含んでいること。

・一般的に,対象物の表面をGCIBを用いて処理すると得られる多くの有益な効果は,ビーム内のガスクラスターイオンのエネルギーに依存しており,表面のエッチングは,高いエネルギーのクラスターを用いればより早く進行し,さらに,GCIB処理の他の有利な適用としては,表面のスムージング(平滑化)があり,他の方法に比べて原子或いは近原子レベルで優れた効果を示すこと。

・ある種のビーム状態におけるGCIBによる表面処理は,例外的平滑面を生じるが,GCIB処理が表面を常に平滑にするとは限らず,事実,初期表面が比較的平滑であるときは,GCIB処理により却って表面を荒らす場合もあること。

・処理条件を最適化するための,たとえば,クラスターガス源の選択や,加速電圧の選択,GCIB電流の選択,GCIB処理方法の選択等の通常の技術の使用では,すでに平滑な表面に対する,適度なエッチング速度(同時に進行するスムージング速度)や表面を荒らさないようにする適当なGCIBビームの条件がしばしば見つからない場合があること。

・GCIBの形成にイオン化ガスクラスターの生産に有効なイオナイザーを適用すると,適度なエッチング速度を得るためのエネルギーを与えるのに十分な状態で加速されると,表面のスムージングだけでなく,表面を荒らす方向にも作用すること。

・引用例2に記載された発明の目的は,良好なエッチング能力だけでなく良好なスムージング能力を有するビームを形成する特徴を有するGCIBの修飾方法を提供することであって,
引用例2に記載された発明のGCIB処理装置は,イオン化/加速化チャンバ106および処理チャンバ108の圧力よりも高い圧力を加えることができる圧力チャンバ304が形成されており,
イオン化/加速化チャンバ106はGCIB128を圧力チャンバ304へ導入するためのイオン化/加速化チャンバ開口部306を有し,分離された圧力チャンバ304を形成する調節壁302は,圧力チャンバ304からGCIB128の出口となる圧力チャンバ開口部308を有し,GCIB128は圧力チャンバ304を通過するものであって,
好ましくはマスフローコントロールタイプの計測バルブであるガス計測バルブ316は,ガス供給チューブ318およびディフューザ320を通して圧力チャンバ304に圧縮ガス314を調整しつつ流すことで,圧力チャンバ304に導入されたガス314が,イオン化/加速化チャンバ106および処理チャンバ108の基礎圧力と比較して,圧力チャンバ304内を加圧するものであって,
PDI値(または圧力-通路長の積)を高めることによって,エッチング速度が次第に低下するが,高度な平滑化が得られ,高いPDI値においては,従来のGCIB源の調整によっては得られなかったレベルの平滑化が多くの物質において得られること。

(イ)一方,上記「相違点1について」(ウ)のとおり,引用発明は,後のバリアや成長層プロセスのための所望のALDやCVD技術を用いるのに際して適合しなくなるULK絶縁層表面の多孔構造,及び,マイクロローディング効果を生じやすい様々に変化するトレンチの形や深さの生成を抑制することを目的とした発明といえる。

(ウ)しかも,以下の周知例1,及び,周知例2にも記載されているように,エッチングの際に表面の荒れを抑えることは周知の課題であったことが技術常識として認められる。

・周知例1:特開2006-245268号公報
・「【0003】
さらに,微細化等に伴う配線遅延を回避するためには,配線間容量の低減を目的として,ビアやCu配線が埋め込み形成される層間絶縁膜を従来の酸化膜よりも誘電率が低いLow-k材料を用いて形成することも行われている。Low-k材料は,無機系と有機系の2種類に大別されるが,各デバイスの要求特性を満たすように使い分けられるのが一般的である。なお,Low-k材料を用いて形成される絶縁膜(Low-k絶縁膜)は,従来の酸化膜に比べて膜密度が低く機械的強度が弱いため,エッチングするとそのエッチング処理表面が荒れた状態になりやすいことが知られている。」

・「【0010】
上記のように近年の半導体装置のCu配線は微細化が進んでおり,微細なビアやCu配線の開口パターンにできるだけ多くのCuを埋め込むためには,Low-k絶縁膜に形成したビアホールおよび配線溝の底や側壁に形成するバリアメタルの膜厚を非常に薄くしなければならない。ところが,表面荒れを起こして凹凸状になっている溝底等に薄いバリアメタルを形成すると,そのバリアメタルも凹凸状になってしまい,また,凹凸の程度によってはバリアメタルの膜厚が他の部分に比べて極端に薄い部分が生じたりバリアメタルが形成されない部分が生じたりする場合もある。
【0011】
このようにバリアメタルが凹凸状に形成されてしまうと,熱ストレス等によってCu配線にストレスマイグレーションが発生した場合に,バリアメタル-Cu配線間に大きなストレスがかかってバリアメタルの薄い箇所が破れ,そこからCuが吹き出してCu配線が断線してしまうといったことが起こり得る。
【0012】
さらに,Cu配線を形成する際には,まずバリアメタル上にシードCuを形成してからCuメッキを行って開口パターンをCuで埋め込む。しかし,バリアメタルが凹凸状に形成されている場合には,シードCuも凹凸状になるため,メッキCuの配向性が悪化してしまう。そのようにして形成されるCu配線に大電流が流れた場合には,配向性の悪い部分で電流の流れが悪くなり,過度なストレスがかかることでエレクトロマイグレーションが起こり,Cu配線が断線してしまうといったことが起こり得る。
【0013】
このように,Low-k絶縁膜の表面荒れは,バリアメタルのバリア性の悪化やCu配線の配向性の悪化を引き起こす可能性があり,半導体装置の信頼性を低下させる一因となり得る。
【0014】
従来,このようなLow-k絶縁膜の表面荒れを抑制することを目的とした提案もいくつかなされてはいるが,デュアルダマシン法を用いて形成される多層配線構造を備えた信頼性の高い半導体装置を実現するためには,Low-k絶縁膜の表面荒れを確実に抑制する方法が必要になる。」

・周知例2:特開2009-176886号公報
・「【0003】
たとえば,近年,配線材料として比抵抗値の小さい銅が用いられるようになっているが,銅配線の形成過程でも配線溝やビアホールの溝パターン側壁の荒れが問題となっている。銅多層配線は,以下に説明するダマシンプロセス(damascene process)で形成される。まず,半導体基板上に絶縁膜(層間絶縁膜)を形成する。つづいて,絶縁膜に配線溝またはビアホールを形成する。次いで,配線溝またはビアホールにバリアメタル膜を形成する。その後,配線溝またはビアホールにシード銅膜を形成する。つづいて,シード銅膜をシードとして電解めっき法等により,配線溝またはビアホールを銅膜で埋め込む。次いで,配線溝またはビアホール外に露出した余剰の銅膜,シード銅膜,およびバリアメタル膜を化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)により除去する。この工程を繰り返すことにより,銅多層配線が形成される。
【0004】
しかし,絶縁膜に溝パターンを形成する際に,溝パターンにラインエッジラフネス(Line Edge Roughness:LER)またはストライエーション(striation)と呼ばれる荒れが生じることがある。これにより,配線間隔が設計寸法よりも短くなる箇所ができて,そこでの配線間の漏洩電流の増加や絶縁耐性の低下が生じるという問題がある。」

(エ)そうすると,引用発明は,後のバリアや成長層プロセスのための所望のALDやCVD技術を用いるのに際して適合しなくなるULK絶縁層表面の多孔構造,及び,マイクロローディング効果を生じやすい様々に変化するトレンチの形や深さの生成を抑制するという課題を,RIEに替えてGCIBエッチング処理を採用し,例えば表1に示される,「典型的なガス」として「5%NF_(3),95%O_(2)」,「典型的なガス流量(SCCM)」として「500」,「典型的V_(Acc)(kV)」として「30」という処理条件を用いることで解決しようとする発明であるところ,引用例2の上記記載によれば,クラスターガス源の選択や,加速電圧の選択,GCIB電流の選択,GCIB処理方法の選択等の通常の技術の使用では,すでに平滑な表面に対する,適度なエッチング速度(同時に進行するスムージング速度)や表面を荒らさないようにする適当なGCIBビームの条件がしばしば見つからない場合があること,及び,イオン化/加速化チャンバおよび処理チャンバの圧力よりも高い圧力を加えることができる圧力チャンバを形成し,圧力チャンバに圧縮ガスを調整しつつ流し,PDI値(または圧力-通路長の積)を高めることで,従来のGCIB源の調整によっては得られなかったレベルの平滑化が多くの物質において得られることが理解される。

(オ)してみれば,引用発明と引用例2の記載に接した当業者であれば,引用発明において,後のバリアや成長層プロセスのための所望のALDやCVD技術を用いるのに際して適合しなくなるULK絶縁層表面の多孔構造,及び,マイクロローディング効果を生じやすい様々に変化するトレンチの形や深さの生成を抑制するという課題をより一層確実に解決するために,あるいは,エッチングの際に表面の荒れを抑えるという周知の課題をより一層解決するために,引用発明に引用例2に記載された,イオン化/加速化チャンバおよび処理チャンバの圧力よりも高い圧力を加えることができる圧力チャンバを形成し,圧力チャンバに圧縮ガスを調整しつつ流し,PDI値(または圧力-通路長の積)を高めることで,従来のGCIB源の調整によっては得られなかったレベルの平滑化を多くの物質において得るという発明を適用すること,すなわち,GCIBエッチングプロセス用にGCIB性質を設定する工程において,設定すべきGCIB性質として,「プロセス組成物,該プロセス組成物中の少なくとも一種類の成分の流速,ビーム加速電位」だけではなく,表面エッチングの精度を高めるために,「前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス圧力又は前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス流速のうちの少なくとも一方を含む」ものとすることで,従来のGCIB源の調整によっては得られなかったレベルの平滑化を多くの物質において得られるようにして,相違点2について,本願補正発明1の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

ウ 効果について
上記相違点1,2による効果は当業者が予測する範囲内のものである。そして,本願補正発明1が,相違点1,2に係る効果の寄せ集めを超える顕著な効果を奏するとは,本願明細書の記載からは認めることができない。

(4)むすび
本願補正発明1は,引用例1に記載された引用発明と引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願補正発明1は,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 補正の却下の決定のむすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであり,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年2月13日に提出された手続補正書による補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1-18に係る発明は,平成28年6月3日に提出された補正書によって補正された明細書,特許請求の範囲又は図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1-18に記載されている事項により特定されるとおりのものであるところ,そのうち請求項1に係る発明に係る発明(以下「本願発明1」という。)は,次のとおりである。

「【請求項1】
基板上の材料をエッチングする方法であり,前記方法は:
第1の材料,第2の材料,及び前記第1の材料と前記第2の材料のうちの少なくとも一を曝露する表面を持つ基板を保持するための基板ホルダ回りを減圧環境に維持する工程;
前記基板を前記減圧環境内に確実に保持する工程;並びに,
ガスクラスタイオンビーム(GCIB)を用いて前記第1の材料の少なくとも一部を除去するGCIBエッチングプロセスを実行する工程であって,前記第1の材料と前記第2の材料の両方が前記GCIBエッチングプロセスの開始時に曝露されていない場合に,前記第1の材料の少なくとも一部と前記第2の材料の少なくとも一部を除去する,工程;
前記実行する工程は:
前記GCIBエッチングプロセス用に目標エッチングプロセス特性を選択する工程であって,前記目標エッチングプロセス特性が,前記第1の材料と前記第2の材料との間のエッチング選択性,及び,前記第1の材料の表面粗度又は前記第2の材料の表面粗度のうちの少なくとも一を含む,工程;
前記GCIBエッチングプロセス用に1又はそれ以上のGCIB性質を設定する工程であって,前記GCIB性質は,プロセス組成物,該プロセス組成物中の少なくとも一種類の成分の流速,ビーム加速電位,及び,前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス圧力又は前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス流速のうちの少なくとも一方を含む,工程;
前記プロセス組成物を含む加圧ガスから前記GCIBを形成する工程であって,前記プロセス組成物は少なくとも1つのエッチングガスを含む,工程;
前記の設定されたGCIB性質に従って,前記減圧環境を通り抜ける前記GCIBを加速する工程;並びに,
前記基板の前記表面の少なくとも一部分に前記GCIBを照射して,前記第1の材料の少なくとも一部分を除去する工程,を含む方法。」

2 新規性について
(1)引用例及びその記載事項
原査定の拒絶理由に引用され,本願の優先権の主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である引用例1(特表2008-502150号公報)に記載されている事項は,上記「第2 4 (2)引用例とその記載事項,及び,引用発明」の項で指摘したとおりである。

(2)当審の判断
ア 本願発明1と引用発明との対比
(ア)引用発明は,「金属配線上に堆積された」「前記反射防止膜516,前記ハードマスク層506,前記多孔質なULK絶縁層504の一部」を「GCIBエッチング処理」することで「除去」して「トレンチ520」を形成する方法に係る発明であって,当該「前記反射防止膜516」は,「ウエハ」に堆積されたものであるから,引用発明は,「ウエハ」上に堆積された「反射防止膜516」,「前記ハードマスク層506」,「前記多孔質なULK絶縁層504」の一部を「エッチング処理」することで除去する発明であると理解される。
そうすると,引用発明は,以下の相違点1,2を除いて,「基板上の材料をエッチングする方法」である点で,本願発明1と一致する。

(イ)引用発明は,「ウエハに反射防止膜516とフォトレジスト層518より成る別のマスキング材料層を堆積して構造500Eを得た後に,前記フォトレジスト層518に所望のトレンチパターンを描いた構造に対して,GCIBエッチング処理することで,前記反射防止膜516,前記ハードマスク層506,前記多孔質なULK絶縁層504の一部を除去してトレンチ520を形成する」ものである。
そうすると,「GCIBエッチング処理」の開始時において,「構造500E」の「フォトレジスト層518」には,「所望のトレンチパターン」が描かれ,「反射防止膜516」の表面の一部が,前記「所望のトレンチパターン」の形状で曝露する一方で,前記「多孔質なULK絶縁層504」は,その上に「反射防止膜516」が堆積されていることから,曝露しておらず,その後,当該「GCIBエッチング処理」によって,「反射防止膜516,前記ハードマスク層506,前記多孔質なULK絶縁層504の一部」が除去されるものと理解される。
すなわち,引用発明の「反射防止膜516」,「多孔質なULK絶縁層504」は,それぞれ,本願発明1の「第1の材料」,「第2の材料」に相当し,引用発明は,「ガスクラスタイオンビーム(GCIB)を用いて前記第1の材料の少なくとも一部を除去するGCIBエッチングプロセスを実行する工程であって,前記第1の材料と前記第2の材料の両方が前記GCIBエッチングプロセスの開始時に曝露されていない場合に,前記第1の材料の少なくとも一部と前記第2の材料の少なくとも一部を除去する,工程」を含む点で本願発明1と一致する。

(ウ)引用発明の「前記反射防止膜516,前記ハードマスク層506,前記多孔質なULK絶縁層504の一部を除去してトレンチ520を形成する方法」に係る「GCIBエッチング処理」は,「半導体ウエハや他の製品となるためにGCIB処理がなされる対象物は,対象物ホルダに固定され,GCIBの通路上に保持される工程であって,大きな対象物に適用して均一に処理するためには,GCIBの通路を空間的に横切るようにスキャンするために,対象物を機械的に動かし,対象物の表面全体にGCIB処理の効果を均一に分散させる工程」と,「ソースチャンバと,イオン化/加速化チャンバ,処理チャンバを有するGCIB処理装置の,これら三つのチャンバを真空ポンプシステムによって好適な操作圧力に調整する工程」とを含むものである。
そして,「半導体ウエハや他の製品となるためにGCIB処理がなされる対象物」が,「対象物ホルダ」に固定され,対象物を機械的に動かし得るためには,前記「対象物ホルダ」は,「GCIB処理がなされる対象物」を「確実に保持」するものであるといえる。
さらに,前記(イ)のとおり,「GCIBエッチング処理」の開始時において,「反射防止膜516」の表面は,前記「所望のトレンチパターン」の形状で曝露することが理解され,また,引用発明の「反射防止膜516」,「多孔質なULK絶縁層504」は,それぞれ,本願発明1の「第1の材料」,「第2の材料」に相当するといえる。
してみれば,本願発明1と,引用発明は,「第1の材料,第2の材料,及び前記第1の材料と前記第2の材料のうちの少なくとも一を曝露する表面を持つ基板を保持するための基板ホルダ回りを減圧環境に維持する工程」及び「前記基板を前記減圧環境内に確実に保持する工程」を含む点で一致する。

(エ)引用発明の「前記反射防止膜516の材料に対するエッチング速度を,前記多孔質ULK絶縁層504の材料に対するエッチング速度よりも速く」することで「ヴィア512の上側周辺部にエッチングされない突出部“フェンス(fences)”が残らないように」する工程と,本願発明1の「GCIBエッチングプロセス用に目標エッチングプロセス特性を選択する工程であって,前記目標エッチングプロセス特性が,前記第1の材料と前記第2の材料との間のエッチング選択性,及び,前記第1の材料の表面粗度又は前記第2の材料の表面粗度のうちの少なくとも一を含む,工程」とは,「GCIBエッチングプロセス用に目標エッチングプロセス特性を選択する工程であって,前記目標エッチングプロセス特性が,前記第1の材料と前記第2の材料との間のエッチング選択性を含む」点で一致する。

(オ)引用発明の「5%NF_(3),95%O_(2)」のガスは,本願発明1の「プロセス組成物」に相当する。また,引用発明において,ガス流量を「500」(SCCM)とするために,プロセス組成物中の少なくとも一種類の成分の流速を設定することが行われていることは明らかである。さらに,引用発明のV_(Acc)「30」(kV)は,本願発明1の「ビーム加速電位」に相当する。
そして,本願発明1の「前記GCIBエッチングプロセス用に1又はそれ以上のGCIB性質を設定する工程であって,前記GCIB性質は,プロセス組成物,該プロセス組成物中の少なくとも一種類の成分の流速,ビーム加速電位,及び前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス圧力又は前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス流速のうちの少なくとも一方を含む」との発明特定事項は,「プロセス組成物」,「該プロセス組成物中の少なくとも一種類の成分の流速」,「ビーム加速電位」,及び「前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス圧力又は前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス流速のうちの少なくとも一方」という「GCIB性質」のなかから,前記GCIBエッチングプロセス用に,「1又はそれ以上のGCIB性質」を選択して設定する工程であると理解することが,本願の請求項の記載の解釈として自然といえる。
なお,このような理解は,本願の明細書の「【0045】14で,前記GCIBのためのGCIBプロセス条件の1つ又はそれ以上の性質が,目標エッチング特性の1つ又はそれ以上を達成するために設定される。」,「【0046】・・・前記GCIB性質の1つ又はそれ以上が,上述のGCIBエッチングプロセス特性の制御を達成するために選択され得る。さらに,前記GCIB性質の1つ又はそれ以上は,上述の目標エッチングプロセス特性の制御を達成するために変更され得る。」との記載とも整合するものである。
してみれば,本願発明1の「前記GCIBエッチングプロセス用に1又はそれ以上のGCIB性質を設定する工程」は,「前記GCIBエッチングプロセス用に1又はそれ以上のGCIB性質を設定する工程であって,前記GCIB性質は,プロセス組成物,該プロセス組成物中の少なくとも一種類の成分の流速,ビーム加速電位を含む」場合を包含するものといえる。
そうすると,引用発明の「例えば表1に示される,『典型的なガス』として『5%NF_(3),95%O_(2)』,『典型的なガス流量(SCCM)』として『500』,『典型的V_(Acc)(kV)』として『30』という処理条件を用い,NF_(3)と,O_(2)の混合ガスの組成を制御する」工程と,本願発明1の「前記GCIBエッチングプロセス用に1又はそれ以上のGCIB性質を設定する工程」とは,「前記GCIB性質は,プロセス組成物,該プロセス組成物中の少なくとも一種類の成分の流速,ビーム加速電位,及び前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス圧力又は前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス流速のうちの少なくとも一方を含む」点で一致する。

(カ)引用発明の「NF_(3)」は,本願発明1の「少なくとも1つのエッチングガス」に相当する。

(キ)引用発明は,「GCIBエッチング処理することで,前記反射防止膜516,前記ハードマスク層506,前記多孔質なULK絶縁層504の一部を除去してトレンチ520を形成する」のであるから,本願発明1と,引用発明とは,「前記基板の前記表面の少なくとも一部分に前記GCIBを照射して,前記第1の材料の少なくとも一部分を除去する工程,を含む」点で一致する。

したがって,上記の対応関係から,本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりといえる。

<一致点>
「基板上の材料をエッチングする方法であり,前記方法は:
第1の材料,第2の材料,及び前記第1の材料と前記第2の材料のうちの少なくとも一を曝露する表面を持つ基板を保持するための基板ホルダ回りを減圧環境に維持する工程;
前記基板を前記減圧環境内に確実に保持する工程;並びに,
ガスクラスタイオンビーム(GCIB)を用いて前記第1の材料の少なくとも一部を除去するGCIBエッチングプロセスを実行する工程であって,前記第1の材料と前記第2の材料の両方が前記GCIBエッチングプロセスの開始時に曝露されていない場合に,前記第1の材料の少なくとも一部と前記第2の材料の少なくとも一部を除去する,工程;
前記実行する工程は:
前記GCIBエッチングプロセス用に目標エッチングプロセス特性を選択する工程であって,前記目標エッチングプロセス特性が,前記第1の材料と前記第2の材料との間のエッチング選択性を含む,工程;
前記GCIBエッチングプロセス用に1又はそれ以上のGCIB性質を設定する工程であって,前記GCIB性質は,プロセス組成物,該プロセス組成物中の少なくとも一種類の成分の流速,ビーム加速電位,及び,前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス圧力又は前記GCIBが通過する増加圧力領域のバックグラウンドガス流速のうちの少なくとも一方を含む,工程;
前記プロセス組成物を含む加圧ガスから前記GCIBを形成する工程であって,前記プロセス組成物は少なくとも1つのエッチングガスを含む,工程;
前記の設定されたGCIB性質に従って,前記減圧環境を通り抜ける前記GCIBを加速する工程;並びに,
前記基板の前記表面の少なくとも一部分に前記GCIBを照射して,前記第1の材料の少なくとも一部分を除去する工程,を含む方法。」

<相違点>
・相違点1:一致点に係る構成である,GCIBエッチングプロセス用に目標エッチングプロセス特性を選択する工程が,本願発明1では,「前記第1の材料と前記第2の材料との間のエッチング選択性,及び,前記第1の材料の表面粗度又は前記第2の材料の表面粗度のうちの少なくとも一を含む」ものであるのに対して,引用発明では,「前記第1の材料の表面粗度又は前記第2の材料の表面粗度のうちの少なくとも一を含む」ことが明示されていない点。

イ 相違点についての判断
・相違点1について
(ア)引用例1の上記4(2)アの記載から,以下の事項を理解することができる。
・RIEはULK絶縁層表面に多孔構造を残すので,これらの境界面が,後のバリアや成長層プロセスのために所望のALDやCVD技術を用いるのに際して,適合しなくなること。

・通常のRIEはトレンチの形や深さが様々に変化することでマイクロローディング効果を生じやすく,配線抵抗やキャパシタンスが安定せず,この配線抵抗やキャパシタンスが制御不能であると,半導体集積回路の設計においてはチップ機能に重大なマイナスとなること。

・引用例1に記載された発明は前記の多くの問題点を解決した,ガスクラスターイオンビーム(GCIB)処理を用いた新規な集積構造の形成方法に関するものであること。

・大きなクラスターイオンは相当の衝撃効果を有するが,表面から非常に浅い領域に限られること。

・従来のモノマーイオンビーム処理によると表面下深くまで損傷を与える傾向があったのに対して,通常の温度圧力下でガス状態である物質の分子を,ナノサイズで集合させ,数個から何千の前記分子が緩やかな結合により集合しているガスクラスターを形成し,このガスクラスターを,電子衝撃または他の方法によりイオン化することにより各種の表面修飾処理に効果的なクラスターイオンが作られること。

・GCIBを加速する装置については既に文献(USP5814194)に記載されているところであり,清浄化,平滑化,エッチング等の多くの有効な表面処理の効果が,GCIBにより表面に衝突させることで得られること。

・引用例1に記載された発明の目的は,低いk値を有する絶縁材料のGCIB処理方法を提供し,ハードマスクの使用を最小限に抑えて二重ダマシン集積構造を形成することであり,さらに別の目的は,エッチングによるトレンチの深さと形を制御して,内部抵抗やキャパシタンスを安定化することであること。

(イ)そうすると,引用例1に記載された発明は,通常のRIEがULK絶縁層表面に多孔構造を残し,これらの境界面が,後のバリアや成長層プロセスのために所望のALDやCVD技術を用いるのに際して,適合しなくなり,しかも,RIEではトレンチの形や深さが様々に変化するのでマイクロローディング効果を生じやすく,配線抵抗やキャパシタンスが安定しないものとなり,半導体集積回路の設計において重大なマイナスがあったという課題を解決するために,前記RIEに替えて,清浄化,平滑化,エッチング等の多くの有効な表面処理効果を有するGCIBエッチングを用いることによって,トレンチの深さと形を制御する等の効果を得ることで,内部抵抗やキャパシタンスを安定化したことにあると認められる。

(ウ)すなわち,引用発明は,GCIBの清浄化,平滑化,エッチング等の表面処理効果を利用することによって,後のバリアや成長層プロセスのための所望のALDやCVD技術を用いるのに際して適合しなくなるULK絶縁層表面の多孔構造,及び,マイクロローディング効果を生じやすい様々に変化するトレンチの形や深さの生成を抑制することを目的とした発明といえる。
そして,ULK絶縁層表面の前記「多孔構造」,トレンチの形や深さの様々な「変化」は,ULK絶縁層に形成されたトレンチの表面の凹凸の程度,すなわち,表面粗度によって評価される特性であると認められる。

(エ)してみれば,引用発明において,前記反射防止膜516の材料に対するエッチング速度を,前記多孔質ULK絶縁層504の材料に対するエッチング速度よりも速くして,前記ヴィア512の上側周辺部にエッチングされない突出部“フェンス(fences)”が残らないように,GCIBエッチング処理の条件を,例えば表1のように,ガス,ガス流量,及びV_(Acc)とする設定にあたっては,形成される多孔質ULK絶縁層504のトレンチ表面の多孔構造における孔の大きさや,前記トレンチの幅のバラツキの大きさ,深さのバラツキの大きさが,過大なものとならないような配慮,すなわち,多孔質ULK絶縁層504にエッチングによって形成されたトレンチ表面の表面粗度を小さくする配慮が,前記の発明の解決すべき課題に照らして,当然になされているものと認められる。

(オ)すなわち,引用発明における,例えば表1に示される,「典型的なガス」として「5%NF_(3),95%O_(2)」,「典型的なガス流量(SCCM)」として「500」,「典型的V_(Acc)(kV)」として「30」という処理条件の設定が,「前記反射防止膜516の材料に対するエッチング速度を,前記多孔質ULK絶縁層504の材料に対するエッチング速度よりも速くして,前記ヴィア512の上側周辺部にエッチングされない突出部“フェンス(fences)”が残らないように」するという単一の目標のみを達成することを目的としたものではなく,形成されるトレンチ520の表面の特性,すなわち表面粗度が小さなものとなるような配慮をも併せて達成すべき目的として設定された条件であるということは,引用発明において,RIEではなく,GCIBエッチング処理を用いることで解消しようとした課題に照らして明らかといえる。

(カ)したがって,引用発明は,GCIBエッチングプロセス用に目標エッチングプロセス特性を選択する工程において,目標エッチングプロセス特性が,第1の材料と第2の材料との間のエッチング選択性,及び,前記第1の材料の表面粗度又は前記第2の材料の表面粗度のうちの少なくとも一を含むものである点で,本願発明1と一致する。
したがって,相違点1は実質的なものとは認められない。

第4 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,引用例1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
したがって,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-11-08 
結審通知日 2017-11-14 
審決日 2017-11-28 
出願番号 特願2012-180127(P2012-180127)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 将之  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 加藤 浩一
大嶋 洋一
発明の名称 複合材料の目標エッチングプロセス特性を達成するためのガスクラスタイオンビームエッチングプロセス  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
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