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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02G
管理番号 1339485
審判番号 不服2017-11327  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-31 
確定日 2018-05-08 
事件の表示 特願2013-184985「電気接続箱」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月19日出願公開,特開2015- 53798,請求項の数(3)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年9月6日の出願であって,平成28年8月10日に審査請求がなされ,平成29年3月28日付けで拒絶理由が通知され,同年5月19日に意見書と手続補正書が提出され,同年6月7日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)され,同年7月31日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され,平成30年1月24日付けで当審から拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)を通知し,同年3月8日に意見書と手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の理由の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記(引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1
・引用文献等:1
・備考
引用文献1には,アッパカバー4(本願発明の「フレーム」)と,アッパカバー4の下面を覆うロアカバー5(ロアカバー)と,アッパカバー4内に取り付けられかつアッパカバー4の周壁7に沿った位置に配置される装着部12(ブロック)とを有し,装着部12に取り付けられた「ヒューズ19とリレー18」(部品)に電線16aが接続されている電気接続箱1(電気接続箱)において,電線16aが,アッパカバー4の内側に向かって装着部12から水平に引き出されている電気接続箱の発明が記載されている(特に段落[0041]-[0047],[図1]-[図2]を参照されたい)。
よって,請求項1に係る発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者であれば容易になし得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

・請求項2
・引用文献等:1
・備考
引用文献1(段落[0041]-[0047],[図1]-[図2])には,装着部12から複数の電線16aが引き出され,最も下方の位置から引き出される電線16aが,アッパカバー4の内側に向かって装着部12から水平に引き出されている構成が記載されている。
よって,請求項2に係る発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者であれば容易になし得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

・請求項3
・引用文献等:1
・備考
引用文献1(段落[0041]-[0047],[図1]-[図2])に記載の装着部12は,周壁7に沿って高さ方向に並べられて配置された複数の区画を有している。そして,これらの複数の区画のそれぞれを,個別の小ブロックに分割して配置することは,当業者が適宜なし得た設計的事項にすぎない。
よって,請求項3に係る発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者であれば容易になし得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2012-105508号公報
2.特開2000-92661号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-3
・引用文献1-5
・備考
・請求項1について
引例1の【0016】-【0024】,図1等の記載を特に参照されたい。
引例1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「4面からなる枠状の周壁13を有するケース11と,
該ケース11の上面を覆うアッパカバー12と,
前記前記ケース11の周壁13内に,位置決め溝15,カセットロック部29,被ロック部30により取り付けられかつ前記ケース11の周壁に沿った位置に配置される少なくとも一つの垂直リレーブロック22と,を有し,
前記垂直リレーブロック22に取り付けられたプラグインリレー42に電線W2が接続されている電気接続箱10において,
前記電線W2が,前記周壁13の内側に向かって前記垂直リレーブロック22の裏側面22cから水平に引き出されている電気接続箱。」
引用発明と本願の請求項1に記載された発明(以下「本願発明1」という。)とを比較すると,本願発明1が,4面からなる枠状の周壁を有するフレームと,該フレームの上面を覆うアッパカバーと,該フレームの下面を覆うロアカバーとを備えるのに対して,引用発明では,4面からなる枠状の周壁13を有するケース11と,該ケース11の上面を覆うアッパカバー12とを備える点で相違(相違点1)し,その余で一致する。
一方,4面からなる枠状の周壁を有するフレームと,該フレームの上面を覆うアッパカバーと,該フレームの下面を覆うロアカバーとを備えた構造は,引例2の図1,引例3の図1,引例4の図1,引例5の図2にも記載されているように周知である。
そして,引用発明において,ケース11が,底と周壁が一体である構造を有していることは,引用発明の課題解決における要点ではないから,引用発明において,ケース11の構造を,前記周知の構造,すなわち,4面からなる枠状の周壁を有するフレームと,ロアカバーとからなる構造とすることは当業者が適宜なし得たことである。また,そのこのような構造を採用したことによる効果も当業者が予測する範囲内のものと認められる。
・請求項2について
引例1の図1(A)を参照されたい。
・請求項3について
引例1の図1(A)を参照されたい。引例1には,水平リレーブロック21と,垂直リレーブロック22とが,高さ方向に並べられて配置されている。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2009-278800号公報
2.特開2011-125174号公報
3.特開2000-37017号公報
4.特開平7-131916号公報
5.特開2011-4531号公報

第4 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は,平成30年3月8日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されている事項により特定される発明であり,以下のとおりである。

「【請求項1】
4面からなる枠状の周壁を有するフレームと,該フレームの上面を覆うアッパカバーと,該フレームの下面を覆うロアカバーと,前記フレーム内に取り付けられかつ前記周壁の一の面に沿った位置に配置されるとともに当該面に近接して配置される少なくとも一つのブロックと,を有し,前記ブロックに取り付けられた部品に電線が接続されている電気接続箱において,
前記電線が,前記周壁の一の面から離れる方向に向かって前記ブロックから水平に引き出されている
ことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記ブロックから複数の電線が引き出され,最も下方の位置から引き出される電線が,前記周壁の一の面から離れる方向に向かって前記ブロックから水平に引き出されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
複数のブロックが,前記周壁の一の面に沿って高さ方向に並べられて配置され,最も下方のブロックから引き出される電線が,前記周壁の一の面から離れる方向に向かって前記ブロックから水平に引き出されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気接続箱。」

第5 特許法第29条第2項(進歩性)について
1 引用文献,引用発明等
(1)引用文献1について
当審拒絶理由で引用した引用文献1(特開2009-278800号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。以下同じ。)
「【請求項1】
水平断面と比較して垂直断面を大とした深底のケース内に,その上部側に複数のリレー取付部あるいは/およびヒューズ取付部からなる電気部品取付面を水平方向に設けている水平ブロックを収容している一方,該水平ブロックの下部に空間をあけて,複数のリレー取付部あるいは/およびヒューズ取付部からなる電気部品取付面を垂直方向に設けている垂直ブロックを収容し,
前記垂直ブロックと前記ケースの外周壁との間,および前記垂直ブロックと水平ブロックとの間に空間を設け,該空間を,前記水平ブロックおよび垂直ブロックに取り付けたリレーあるいは/およびヒューズに接続した電線の挿通空間としていることを特徴とする車載用の電気接続箱。
【請求項2】
前記水平ブロックと垂直ブロックにそれぞれ取り付ける少なくとも各1個の電気部品をループ線で接続している請求項1に記載の車載用の電気接続箱。
【請求項3】
前記ケースの上部と下部に電線挿通口を設け,これら電線挿通口のいずれかから前記水平ブロックと垂直ブロックに接続された電線を挿通している請求項1または請求項2に記載の電気接続箱。」

「【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下,本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に,本発明の第一実施形態に係る車載用の電気接続箱10を示す。
【0017】
電気接続箱10は,図1(A)(B)および図2に示すように,水平断面よりも垂直断面を大とした上面開口で深底のケース11内に,電気部品取付面21aを上面に水平方向に設けた水平リレーブロック21と,電気部品取付面22aを側面に垂直方向に設けた垂直リレーブロック22とを収容している。
【0018】
前記水平リレーブロック21の電気部品取付面21aには,図2に示すように,リレー取付部23を複数設け,該リレー取付部23にプラグインリレー41を差し込み接続している。
前記垂直リレーブロックの電気部品取付面22aは,図1(B)に示すように,前記水平リレーブロック21の電気部品取付面21aよりも面積を大としてリレー取付部24を多数設け,図1(A)に示すように,該リレー取付部24にプラグインリレー42を差し込み接続している。
【0019】
前記ケース11は,図3(A)に示すように,周壁13の上部側内面に前記水平リレーブロック21を係止する突起14を突設している。水平リレーブロック21の側壁には凹部27を形成すると共に,該凹部27の下部にテーパー突起28を突設している。
前記水平リレーブロック21をケース11内に組み付けるときは,水平リレーブロック21を上方から挿入し,図3(B)に示すように,ケース11の前記突起14が前記テーパー突起28を乗り越えて前記凹部27に嵌合している。これにより,水平リレーブロック21をケース11の上側部に固定し,図2に示すように,ケース11の上面開口部全体を塞ぐように配置している。
【0020】
また,前記ケース11の周壁13の内面には,図4(A)に示すように,周壁13の上端から前記水平リレーブロック21の設置位置よりも下方位置まで延在する垂直リレーブロック22用の位置決め溝15を上下方向に形成している。
【0021】
前記垂直リレーブロック22には,電気部品取付面22aを形成していない対向する両側壁に,図4(B)に示すカセットロック部29を設けている。該カセットロック部29は両側部29aの連結片29bより係止片29cを設け,該係止片29cにロック爪29dを突設している。
【0022】
一方,ケース11の下部の周壁13の対向する内面に,前記カセットロック部29とロック結合する被ロック部30をそれぞれ設けている。該垂直リレーブロック22を固定する各被ロック部30は図4(B)に示すように,枠部30aの外面を可撓片30bとし,該可撓片30bに係止溝30cを設けている。
前記垂直リレーブロック21のカセットロック部29のロック爪29dを周壁13に設けた被ロック部30の係止溝30cに係止してロック固定している。
【0023】
前記ケース11内の,前記水平リレーブロック21の設置位置よりも下側の領域では,図1(A)に示すように,垂直リレーブロック22を固定した状態において,該垂直リレーブロック22の電気部品取付面22aの裏側面22cとケース11の周壁13の内面との間に空間S1をあけている。また,水平リレーブロック21の下面21bと垂直リレーブロック22の上面22dとの間にも空間S2をあけている。
【0024】
また,ケース11内の,前記水平リレーブロック21の設置位置よりも下側部の周壁13には,底壁16に近接した下方位置に第一電線挿通口19を,上方位置に第二電線挿通口20を設けている。水平リレーブロック21の下面21bから引き出された電線W1を前記空間S1に通して前記第一電線挿通口19から外部へと導出し,垂直リレーブロック22の裏側面22cから引き出された電線W2を,前記空間S1からS2へと配線して前記第二電線挿通口20から外部へと導出している。
【0025】
水平リレーブロック21と垂直リレーブロック22との間には,前記空間S1およびS2を利用してループ線W3を配線し,水平リレーブロック21に搭載した一つのリレー41aと垂直リレーブロック22に搭載した一つのリレー42aとを該ループ線W3で接続している。詳細には,水平リレーブロック21,垂直リレーブロック22内には電線端末の端子が挿入されるギャビティ(図示せず)が設けられている。ループ線W3は前記両ブロック21,22の電気部品取付面と反対側の裏面からループ線W3の端末の端子を前記キャビテイに挿入することでリレーと接続している。
なお,ループ線はリレー同士だけでなく,ヒューズとリレー,ヒューズ同士を接続してもよい。
【0026】
水平リレーブロック21と垂直リレーブロック22とを収容固定した前記ケース11の上面には,図1(A)(B)に示すように,アッパーカバー12を被せて水平リレーブロック21の上面に搭載されたリレー41を覆い,該アッパーカバー12とケース11とを互いにロック結合している。
【0027】
前記構成の電気接続箱10は,ケース11を深底として垂直リレーブロック22を収容し,ケース11の水平断面よりも垂直断面を大としているため,垂直リレーブロック22のリレー取付面22aを大きく確保でき,リレー42の搭載数を増やすことができる。従って,車両内の設置スペースが水平方向に狭い場合でも垂直方向のスペースを有効活用し,限られたスペースに電気部品を高密度に収容することができる。」

引用例1の図1には,引用例1の特許請求の範囲に記載された発明の第1の実施形態に係る電気接続箱の内部構成が示されており,上記摘記した明細書の記載事項を参酌すれば,側面断面図である同図(A),及び垂直リレーブロックのリレーを除いた正面視断面図である同図(B)から,以下の構造を見て取ることができる。

「水平断面と比較して垂直断面を大とした上面開口で深底のケースと,
前記ケースの上面に被さり,前記ケースと互いにロック結合するアッパーカバーと,
前記ケース内に収容される,その上部側に複数のリレー取付部あるいは/およびヒューズ取付部からなる電気部品取付面を水平方向に設けている水平ブロック,及び,該水平ブロックの下部に空間をあけて,複数のリレー取付部あるいは/およびヒューズ取付部からなる電気部品取付面を垂直方向に設けている垂直ブロックと,を有する車載用の電気接続箱であって,
前記上面開口で深底のケースは,底壁,並びに,前記垂直ブロックの前記電気部品取付面に対向する第1周壁,前記第1周壁に対向する第2周壁,周壁の上端から前記水平ブロックの設置位置よりも下方位置まで延在する垂直ブロック用の位置決め溝を上下方向に備えた第3周壁及び第4周壁の4面からなる周壁とを有し,
前記垂直ブロックの前記電気部品取付面には,リレー取付部が多数設けられ,該リレー取付部にはプラグインリレーが差し込み接続されており,
前記ケース内の,前記水平ブロックの設置位置よりも下側の領域には,前記垂直ブロックを固定した状態において,該垂直ブロックの電気部品取付面の裏側面と前記ケースの前記第2周壁の内面との間に空間S1を設け,前記水平ブロックの下面と前記垂直ブロックの上面との間にも空間S2を設け,
前記ケース内の,前記水平ブロックの設置位置よりも下側部の前記第1周壁の上方位置には第二電線挿通口が設けられており,
垂直ブロックの前記裏側面から引き出された電線は,前記空間S1から前記空間S2へと配線して前記第二電線挿通口から前記ケースの外部へと導出した車載用の電気接続箱。」

(2)引用発明
上記の記載から,上記引用文献1には,次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「水平断面と比較して垂直断面を大とした上面開口で深底のケースと,
前記ケースの上面に被さり,前記ケースと互いにロック結合するアッパーカバーと,
前記ケース内に収容される,その上部側に複数のリレー取付部あるいは/およびヒューズ取付部からなる電気部品取付面を水平方向に設けている水平ブロック,及び,該水平ブロックの下部に空間をあけて,複数のリレー取付部あるいは/およびヒューズ取付部からなる電気部品取付面を垂直方向に設けている垂直ブロックと,を有する車載用の電気接続箱であって,
前記上面開口で深底のケースは,底壁,並びに,前記垂直ブロックの前記電気部品取付面に対向する第1周壁,前記第1周壁に対向する第2周壁,周壁の上端から前記水平ブロックの設置位置よりも下方位置まで延在する垂直ブロック用の位置決め溝を上下方向に備えた第3周壁及び第4周壁の4面からなる周壁とを有し,
前記垂直ブロックの前記電気部品取付面には,リレー取付部が多数設けられ,該リレー取付部にはプラグインリレーが差し込み接続されており,
前記ケース内の,前記水平ブロックの設置位置よりも下側の領域には,前記垂直ブロックを固定した状態において,該垂直ブロックの電気部品取付面の裏側面と前記ケースの前記第2周壁の内面との間に空間S1を設け,前記水平ブロックの下面と前記垂直ブロックの上面との間にも空間S2を設け,
前記ケース内の,前記水平ブロックの設置位置よりも下側部の前記第1周壁の上方位置には第二電線挿通口が設けられており,
垂直ブロックの前記裏側面から引き出された電線は,前記空間S1から前記空間S2へと配線して前記第二電線挿通口から前記ケースの外部へと導出した車載用の電気接続箱。」

(3)引用文献2ないし7について
ア 当審拒絶理由で引用した引用文献2(特開2011-125174号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】
箱本体と,該箱本体の下側に嵌合するロアカバーと,前記箱本体に形成されるフレームに組み付けられる回路ブロックとを備えるとともに,該回路ブロックを組み付けた状態にて前記箱本体の下部から前記ロアカバー側に数多くの電線が引き出される電気接続箱において,
前記回路ブロックに少なくとも一つ,前記引き出された数多くの電線の中から突出する柱状コネクタキャビティを設ける
ことを特徴とする電気接続箱。」

「【0039】
箱本体31の組み付けが完了した後,フレーム構造部32及び回路ブロック33の各下部が図1(c)に示す如く下側に向くように箱本体31を配置する。箱本体31は,この下部から数多くの電線が引き出された状態にある。そして,この後にリレー41やヒューズ42等を箱本体31の上側から装着してアッパーカバー43で覆い保護するとともに,箱本体31の下側からロアカバー44で覆い保護すると,電気接続箱45の組み付けが完了する。ワイヤハーネス37や電源線40は,ロアカバー44の電線引き出し口46から引き出される。」

上記記載から,引用文献2には,フレームと,該フレームの上面を覆うアッパーカバーと,該フレームの下面を覆うロアカバーとを備えた電気接続箱の構造が記載されていると認められる。

イ 当審拒絶理由で引用した引用文献3(特開2000-37017号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0009】電気接続箱1は,環状の接続箱本体2と,接続箱本体2の上部に覆う上カバー3と,接続箱本体2の下部に組み付けられる下カバー4とから成る。・・・」

上記記載から,引用文献3には,環状の接続箱本体(本願発明1の「フレーム」に相当。)と,該環状の接続箱本体の上面を覆う上カバー(本願発明1の「アッパカバー」に相当。)と,該接続箱本体の下面を覆う下カバー(本願発明1の「ロアカバー」に相当。)とを備えた電気接続箱の構造が記載されていると認められる。

ウ 当審拒絶理由で引用した引用文献4(特開平7-131916号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】 配線部材を収納する本体部と,この本体部の上面及び下面にそれぞれ被着される表カバー及び裏カバーとよりなる電気接続箱に,前記本体部より下面側に垂設される脚部を設け,その端部に係止部を設けて固定側に固着する取付け部を備えた電気接続箱の取付け構造において,前記裏カバーの前記取付け部に対応する位置に,前記脚部に係合し該脚部の倒れを矯正する係合部を設けたことを特徴とする電気接続箱の取付け構造。」

上記記載から,引用文献4には,配線部材を収納する本体部(本願発明1の「フレーム」に相当。)と,該本体部の上面に被着される表カバー(本願発明1の「アッパカバー」に相当。)と,該本体部の下面側に被着される裏カバー(本願発明1の「ロアカバー」に相当。)とを備えた電気接続箱の構造が記載されていると認められる。

エ 当審拒絶理由で引用した引用文献5(特開2011-4531号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0029】
図2において,電気接続箱1は,合成樹脂製の防水ボックス11と,この防水ボックス11内に収容される機能部品12,13とを備えて構成されている。防水ボックス11内には,例えばアルミ電線を含む図示しないワイヤハーネスが引き込まれるようになっている。機能部品12,13は,リレー等の部品を含んでいる(リレー等の部品の図示は省略するものとする。図2には主にキャビティの図が示されている)。機能部品12におけるキャビティには,後述する内壁12aが設けられている。
【0030】
防水ボックス11は,機能部品12,13の収容部分となるボックス本体14と,このボックス本体14の上部開口を覆うアッパーカバー15(特許請求の範囲に記載したカバーに相当)と,ボックス本体14の下部に嵌合するロアーカバー16とを備えて構成されている。」

上記記載から,引用文献5には,ボックス本体と,該ボックス本体の上部開口を覆うアッパーカバーと,該ボックス本体の下部に嵌合するロアーカバーとを備えた電気接続箱の構造が記載されていると認められる。

オ 原査定で引用した引用文献6(特開2012-105508号公報:原査定の引用文献1)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】
箱本体と,
前記箱本体内に収容され,かつワイヤハーネスの複数の電線の端末と電気部品とが装着されるとともに,前記複数の電線と前記電気部品とを予め定められたパターン通りに接続する配線ユニットと,を備えた電気接続箱において,
前記箱本体が,幅と厚みとの双方よりも高さが大きく形成されていることを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記箱本体が,互いに重ねられて取り付けられるアッパカバーと,ロアカバーとを備え,
前記アッパカバーの高さが前記ロアカバーの高さよりも低く形成されているとともに,アッパカバーに前記配線ユニットが取り付けられるユニット取付部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記箱本体が,互いに重ねられて取り付けられるアッパカバーと,ロアカバーとを備え,
前記アッパカバーと前記ロアカバーの高さが略等しく形成されていることを特徴とする請求項1記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記配線ユニットが,絶縁性の材料で構成されかつ前記箱本体に収容される絶縁板と,前記絶縁板の幅方向の縁に設けられかつ前記電気部品と前記電線の端末が取り付けられる装着部と,導電性の板金で構成されかつ前記装着部に装着されるとともに前記装着部に装着されると前記装着部に取り付けられた前記電気部品に接続するバスバと,を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の電気接続箱。」

「【発明を実施するための形態】
【0040】
以下,本発明の第1の実施形態にかかる電気接続箱を図1ないし図9に基づいて説明する。本実施形態にかかる図1に示す電気接続箱1は,移動体としての自動車に搭載される。電気接続箱1は,図1及び図2に示すように,箱本体2と,配線ユニット3とを備えている。なお,本実施形態では,後述するアッパカバー4とロアカバー5とが互いに重なる方向を高さ方向Tとよび,この高さ方向Tに対して交差(図示例では直交)しかつ互いに交差(図示例では直交)する二方向を幅方向H及び厚み方向Aと呼ぶ。そして,本明細書では,前記高さ方向Tの寸法を高さとよび,幅方向Hの寸法を幅とよび,厚み方向Aの寸法を厚みと呼ぶ。
【0041】
箱本体2は,互いに重ねられて取り付けられるアッパカバー4と,ロアカバー5とを備えている。アッパカバー4及びロアカバー5は,絶縁性の合成樹脂からなり,周知の射出成形により成形される。アッパカバー4は,平坦な天井壁6と,この天井壁6の外縁それぞれから立設した四つの周壁7とを備えている。ロアカバー5は,平坦な底壁8と,この底壁8の外縁のうち図2中手前側の一つの外縁を除く三つの外縁から立設した三つの周壁9とを備えている。天井壁6と底壁8とが互いに間隔をあけて相対し,かつ,周壁7,9が囲む開口を互いに塞ぐ状態で,アッパカバー4とロアカバー5とは,互いに取り付けられる。
【0042】
箱本体2は,アッパカバー4とロアカバー5とが互いに重ねられて取り付けられると,前述した幅H1と厚みA1との双方よりも前述した高さT1が十分に大きく形成されて,厚み方向Aに扁平でかつ高さ方向Tに縦長に形成されている。こうして,箱本体2は,互いに交差(直交)する三方向の寸法のうちの一方向の寸法を他の二方向の寸法よりも十分に大きくして,一方向に長く他方には短い(薄い)扁平(柱)状の直方体状に形成されている。本実施形態では,箱本体2は,高さ方向Aが鉛直方向に沿う状態で自動車に搭載される。また,本実施形態では,図2に示すように,アッパカバー4の高さT1aと,ロアカバー5の高さT1bは,互いに略等しく形成されている。なお,本発明でいう略等しいとは,アッパカバー4とロアカバー5のうち高さの低い一方の高さが他方の高さの1/2よりも高いことをいう。
【0043】
配線ユニット3は,図3に示すように,絶縁板10と,ナット11と,二つの装着部12と,一つの電線カバー13と,二つのバスバ14とを備えている。絶縁板10は,絶縁性の合成樹脂で構成されかつ平板状に形成されている。絶縁板10は,前述した幅方向Hの両縁それぞれにはヒンジとしてのセルフヒンジ15が一体に連結されている。さらに,セルフヒンジ15には,装着部12が一体に連結されている。このために,絶縁板10は,幅方向Hの両縁それぞれにセルフヒンジ15を介して装着部12が連結されている。
【0044】
絶縁板10は,表面上に前記自動車に配索されるワイヤハーネス16(図8に示す)の各電線16aを位置付ける。絶縁板10の幅方向Hと高さ方向Tの中央には,丸孔17が貫通している。
【0045】
セルフヒンジ15は,絶縁板10と同一の絶縁性の合成樹脂で構成され,かつ,前述した高さ方向Tに沿って直線状に延在しているとともに,厚みが絶縁板10の厚みよりも薄く形成されて,可撓性を有している。このため,セルフヒンジ15は,装着部12と絶縁板10とを互いに前記高さ方向Tと平行な軸芯回りに回転自在に連結している。セルフヒンジ15により,図5に示す絶縁板10上に装着部12が重ねられる位置と,図4に示す絶縁板10から装着部12が離間する位置とに亘って変位自在に,装着部12と絶縁板10とは互いに回転自在に連結されている。なお,図示例では,ヒンジとして絶縁板10よりも厚みが薄くかつこの絶縁板10と装着部12との双方と一体に形成されたセルフヒンジ15を示しているが,本発明では,これに限定することなく,装着部12及び絶縁板10と別体の回転軸などを備えた所謂蝶番を用いてもよい。
【0046】
ナット11は,絶縁板10の図3中奥側即ち絶縁板10の装着部12が重なる面の裏側に位置する面に重ねられて,その一部が丸孔17内に通されて,そのねじ孔11aが露出する。
【0047】
装着部12は,それぞれ,高さ方向Tに縦長に形成されかつ内側が複数に区画された筒状に形成されている。装着部12は,前述したセルフヒンジ15を介して絶縁板10の両縁それぞれに一体に連結されている。装着部12内の空間は,装着部12が絶縁板10上に重ねられると,幅方向Hに沿って直線状に延在している。装着部12は,当該装着部12が絶縁板10上に重ねられた際に,幅方向Hの外側に位置する側にFL(ヒュージブルリンク)18(図8に示す)やヒューズ19(図8に示す)などの電気部品が装着される。また,装着部12は,当該装着部12が絶縁板10上に重ねられた際に,幅方向Hの内側に位置する互いに相対する側に前記自動車に配索されるワイヤハーネス16の各電線16aの端末が装着される。」

上記の記載から,上記引用文献6には,次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「互いに重ねられて取り付けられるアッパカバーとロアカバーとを備えた,幅と厚みとの双方よりも高さが大きく形成されている箱本体と,
前記箱本体内に収容され,かつワイヤハーネスの複数の電線の端末と電気部品とが装着されるとともに,前記複数の電線と前記電気部品とを予め定められたパターン通りに接続する配線ユニットと,を備えた電気接続箱において,
前記アッパカバーは,平坦な天井壁と,この天井壁の外縁それぞれから立設した四つの周壁とを備え,
前記ロアカバーは,平坦な底壁と,この底壁の外縁のうちの一つの外縁を除く三つの外縁から立設した三つの周壁とを備え,
前記アッパカバーと前記ロアカバーの高さは略等しく形成されているとともに,アッパカバーには,前記配線ユニットが取り付けられるユニット取付部が設けられ,
前記配線ユニットが,絶縁性の材料で構成されかつ前記箱本体に収容される絶縁板と,前記絶縁板の幅方向の縁に設けられかつ前記電気部品と前記電線の端末が取り付けられる装着部と,導電性の板金で構成されかつ前記装着部に装着されるとともに前記装着部に装着されると前記装着部に取り付けられた前記電気部品に接続するバスバと,を備えた電気接続箱。」

カ 原査定で引用した引用文献7(特開2000-92661号公報:原査定で周知技術を示す文献として引用された引用文献2)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0027】次に,電気接続箱の組立について説明する。・・・
【0028】次いで,ケース本体2の周壁における・・・
【0030】次いで,下カバー4に対して複数の電子部品9を搭載したプリント基板8を載置して,上記層間接続端子30により必要なブスバー6または電線7と接続した後,ケース本体2に組付けてねじ締めなどにより固定する。・・・
【0031】最後に,リレー用のコネクタ11に対してリレー16を接続し,また,ケース本体2の開口上部で前記ブスバー6のヒューズ用端子26,26′から成るヒューズ装着部28に対してヒューズ15を接続した後,上カバー3を被せて既知の構造のロック手段又はねじ止めにより固定することにより,組立ては完了する。ヒューズ15の有無はヒューズ挿入孔14から容易に確認することができる。リレー16の接続は上カバー3の取付け後に行ってもよく,また,ヒューズ15は上カバーのヒューズ挿入孔14から行ってもよい。」

上記の記載から,引用文献7には,周壁を有するケース本体(本願発明1の「フレーム」に相当。)と,該本体に被さる上カバー(本願発明1の「アッパカバー」に相当。)と,該本体に取り付けられる下カバー(本願発明1の「ロアカバー」に相当。)とを備えた電気接続箱の構造が記載されていると認められる。

2 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると,次のことがいえる。
(ア)引用発明1の「アッパーカバー」,「垂直ブロック」,「垂直ブロックの電気部品取付面に対向する第1周壁」,及び「プラグインリレー」は,それぞれ,本願発明1の「アッパカバー」,「少なくとも一つのブロック」,「周壁の一の面」,及び「部品」に相当する。

(イ)引用発明1の「『底壁,並びに,前記垂直ブロックの前記電気部品取付面に対向する第1周壁,前記第1周壁に対向する第2周壁,周壁の上端から前記水平ブロックの設置位置よりも下方位置まで延在する垂直ブロック用の位置決め溝を上下方向に備えた第3周壁及び第4周壁の4面からなる周壁とを有』する『上面開口で深底のケース』」と,本願発明1の「4面からなる枠状の周壁を有するフレーム」とは,「4面からなる周壁を有する部材」である点で一致する。

したがって,本願発明1と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「4面からなる周壁を有する部材と,該部材の上面を覆うアッパカバーと,前記部材内に取り付けられる少なくとも一つのブロックと,を有し,前記ブロックに取り付けられた部品に電線が接続されている電気接続箱。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1が,「4面からなる枠状の周壁を有するフレーム」の下面を覆う「ロアカバー」を有するのに対して,引用発明1は,そのような構成を備えていない点。

(相違点2)本願発明1の,ブロックに取り付けられた部品に接続されている電線が,「周壁の一の面に沿った位置に配置されるとともに当該面に近接して配置される少なくとも一つのブロック」から「前記周壁の一の面から離れる方向に向かって」「水平に引き出されている」のに対して,引用発明1は,そのような構成が特定されていない点。

イ 相違点についての判断
事案にかんがみ,相違点2を最初に検討する。
本願の明細書には以下の記載がある。
「【0021】
各ブロック5,6,7から引き出される電線9a,9b,9cのうち,フレーム2の周壁20に沿った位置に配置されると共に最も下方のブロック5から引き出される電線9aは,フレーム2の内側に向かってブロック5から水平に引き出される。この電線9aは,図1に示すように,ブロック5内の部分及びブロック5近傍の部分が水平であれば良く,ブロック5から離れた部分が下方に垂れ下がっていても良い。・・・」

本願明細書の上記記載から,本願発明1の「電線が・・・ブロックから水平に引き出されている」とは,電線がブロック内の部分及びブロック近傍の部分において水平であることを特定しようとするものであると理解される。

一方,引用発明1の,電気部品取付面にリレー取付部が多数設けられ,該リレー取付部にプラグインリレーが差し込み接続されている垂直ブロックの裏側面から引き出された電線は,垂直ブロックの電気部品取付面の裏側面とケースの第2周壁の内面との間に設けられた空間S1から,水平ブロックの下面と垂直ブロックの上面との間に設けられた空間S2へと配線され,垂直ブロックの電気部品取付面に対向する第1周壁に設けられた第二電線挿通口からケースの外部へと導出される。

してみれば,引用発明1において,垂直ブロックの裏側面から引き出された電線は,垂直ブロックの電気部品取付面の裏側面とケースの第2周壁の内面との間に設けられた空間S1から,水平ブロックの下面と垂直ブロックの上面との間に設けられた空間S2へと繋がる空間内において,垂直ブロックの電気部品取付面に対向する第1周壁から離れる方向に向かって引き出された後に,これと反対方向である前記第1周壁に近づく方向に向かって180度向きを変えて導出されるのであるから,前記電線は,弧を描くように配線されていると理解することが自然といえる。

すなわち,引用発明1において,垂直ブロックの裏側面から引き出された電線は,空間S1及び空間S2という狭隘な空間内において,弧を描くように配線されて,180度向きを変えて導出されるのであるから,引用発明1の前記電線が,垂直ブロック内の部分及び垂直ブロック近傍の部分において水平であると直ちには認められない。
そして,前記180度向きを変えて導出する配線を,上面開口で深底のケース内の,空間S1及び空間S2という狭隘な空間内において行わなければならないという空間的な制約に照らして,垂直ブロックの裏側面から引き出された前記電線を,垂直ブロック内の部分及び垂直ブロック近傍の部分において水平であるように,すなわち垂直ブロックから水平に引き出すことには,阻害要因が存在するといえる。
したがって,引用発明1において,電線は,垂直ブロック内の部分及び垂直ブロック近傍の部分において水平であるように引き出されているとは認められず,水平に引き出すことに阻害事由が存在する。

さらに,引用発明1の垂直ブロックは,その電気部品取付面に,リレー取付部が多数設けられ,該リレー取付部にはプラグインリレーが差し込み接続されたものである。
してみれば,当該垂直ブロックと,当該垂直ブロックの前記電気部品取付面に対向する第1周壁の内面との間には,少なくともリレー取付部と,該リレー取付部に差し込まれたプラグインリレーが介在するから,前記垂直ブロックと前記第1周壁とが,近接して配置されているともいえない。
しかも,引用例2ないし7に記載された技術的事項及び発明を参酌しても,引用発明1において,上記相違点2について本願発明1の構成を採用する動機を見いだすことはできない。

また,効果について検討すると,本願発明1は,前記相違点1及び相違点2を同時に満たすことによって,4面からなる枠状の周壁を有するフレームと該フレームの下面を覆うロアカバーを有する電気接続箱において,周壁の一の面に沿った位置に配置されるとともに当該面に近接して配置されるブロックに取り付けられた部品に接続された電線が,前記フレームと前記ロアカバーとの間に噛み込むことを防止できるという顕著な効果を奏するものと認められる。

してみれば,引用文献1ないし7に記載された発明及び技術的事項から,引用発明1において,上記相違点1及び2について本願発明1の構成となすことが当業者にとって容易であったとは認められない。
そうすると,本願発明1は,引用発明1及び引用文献1ないし7に記載された発明及び技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明2ないし3について
本願発明2ないし3は,いずれも上記相違点1及び2の構成を備えるから,上記「(1)本願発明1について」と同様の理由により,引用文献1ないし7に記載された発明及び技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定についての判断
原査定における引用文献1,2には,上記「第5 特許法第29条第2項(進歩性)について 1 引用文献,引用発明等」の,「原査定で引用した引用文献6(原査定の引用文献1)」ないし「原査定で引用した引用文献7(原査定の引用文献2)」において摘記した事項が記載されている。
一方,平成30年3月8日付けの手続補正書による補正により,補正後の請求項1ないし3は,いずれも,ブロックに取り付けられた部品に接続されている電線が,周壁の一の面に沿った位置に配置されるとともに当該面に近接して配置される少なくとも一つのブロックから前記周壁の一の面から離れる方向に向かって水平に引き出されているという技術的事項を有するものとなった。
そして,当該技術的事項は,原査定における引用文献1,2には記載されておらず,本願の出願日前における周知技術でもない。
したがって,本願発明1ないし3は,原査定における引用文献1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。

したがって,原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-04-17 
出願番号 特願2013-184985(P2013-184985)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H02G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤原 敬子中木 努  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 加藤 浩一
大嶋 洋一
発明の名称 電気接続箱  
代理人 福田 康弘  
代理人 瀧野 文雄  
代理人 津田 俊明  

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