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審決分類 審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 G06K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1339531
審判番号 不服2017-12150  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-15 
確定日 2018-05-08 
事件の表示 特願2013-193550「ICカード、情報処理方法、情報記憶媒体、及び情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月30日出願公開、特開2015- 60406、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年9月18日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年 2月27日 手続補正書・上申書
平成28年 4月15日 審査請求
平成29年 2月 8日 拒絶理由通知
平成29年 4月17日 意見書・手続補正書
平成29年 5月15日 拒絶査定
平成29年 8月15日 審判請求・手続補正書
平成29年12月25日 拒絶理由通知(当審)
平成30年 3月12日 意見書・手続補正書

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

1 理由1(拡大先願)
この出願の請求項1ないし7に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記特許出願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

2 理由2(進歩性)
この出願の請求項1ないし7に係る発明は、下記引用文献2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特願2013-26322号(特開2014-154127号)
2.特開2006-18790号公報

第3 当審拒絶理由の概要
平成29年12月25日付けで当審より通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1ないし7に係る発明は、下記引用文献1ないし4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平1-229392号公報
2.特開2004-21776号公報
3.特開2010-176582号公報
4.特開2004-310681号公報

第4 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、平成30年3月12日付け手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載される事項により特定される、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
ICモジュール及び基材により構成されるICカードであって、
前記ICモジュールは、
設定される一連のデータの識別情報と長さ情報とを含むファイル構成を示す情報を事前に記憶する記憶手段と、
第1のコマンドを受信し、前記第1のコマンドの受信に対応して前記ファイル構成を示す第1の識別情報と第1の長さ情報とを含む情報を第1のレスポンスとして送信し、前記第1のレスポンスに含まれる前記第1の識別情報と前記第1の長さ情報から前記ファイル構成を示す情報が解析されて送信されるコマンドであって、前記第1の識別情報と前記第1の識別情報に対応する第1のデータを含む第2のコマンドを受信し、前記第2のコマンドの受信に対応して前記第1のデータを当該ICモジュールに設定する制御手段と、
を備えるICカード。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1のデータを設定し、現在の状態を発行完了状態へ変更する請求項1のICカード。
【請求項3】
前記制御手段は、第1のレスポンスに第2の識別情報と第2の長さ情報とを含む情報を含めて送信し、前記第1のレスポンスに対応して送信される第2の識別情報と第2の識別情報に対応する第2のデータを含む第3のコマンドを受信し、前記第3のコマンドに含まれる第2の識別情報に基づき、前記第3のコマンドに含まれる第2のデータを当該ICモジュールに設定する請求項1のICカード。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第2のデータを設定し、現在の状態を発行完了状態へ変更する請求項3のICカード。
【請求項5】
設定される一連のデータの識別情報と長さ情報とを含むファイル構成を示す情報を事前に記憶するICカードにおいて、
第1のコマンドを受信し、
前記第1のコマンドの受信に対応して前記ファイル構成を示す第1の識別情報と第1の長さ情報とを含む情報を第1のレスポンスとして送信し、
前記第1のレスポンスに含まれる前記第1の識別情報と前記第1の長さ情報から前記ファイル構成を示す情報が解析されて送信されるコマンドであって、前記第1の識別情報と前記第1の識別情報に対応する第1のデータを含む第2のコマンドを受信し、
前記第2のコマンドの受信に対応して前記第1のデータを当該ICカードに設定する情報処理方法。
【請求項6】
設定される一連のデータの識別情報と長さ情報とを含むファイル構成を示す情報を事前に記憶するICカードに対して、
第1のコマンドを送信する手順と、
前記第1のコマンドの送信に対応して前記ファイル構成を示す第1の識別情報と第1の長さ情報とを含む情報を第1のレスポンスとして受信する手順と、
前記第1のレスポンスに含まれる前記第1の識別情報と前記第1の長さ情報から前記ファイル構成を示す情報を解析して送信するコマンドであって、前記第1の識別情報と前記第1の識別情報に対応する第1のデータを含む第2のコマンドを送信する手順とをコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶したコンピュータ読取可能な情報記憶媒体。
【請求項7】
設定される一連のデータの識別情報と長さ情報とを含むファイル構成を示す情報を事前に記憶するICカードに対して、
第1のコマンドを送信する手順と、
前記第1のコマンドの送信に対応して前記ファイル構成を示す第1の識別情報と第1の長さ情報とを含む情報を第1のレスポンスとして受信する手順と、
前記第1のレスポンスに含まれる前記第1の識別情報と前記第1の長さ情報から前記ファイル構成を示す情報を解析して送信するコマンドであって、前記第1の識別情報と前記第1の識別情報に対応する第1のデータを含む第2のコマンドを送信する手順とをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項8】
前記制御手段は、端末から送信される前記第1のコマンドを受信し、前記端末へ前記第1のレスポンスを送信し、前記端末により受信される前記第1のレスポンスに含まれる前記第1の識別情報と前記第1の長さ情報から前記ファイル構成を示す情報が前記端末により解析されて、前記端末から送信される前記第2のコマンドを受信する請求項1乃至4の何れか一つのICカード。」

第5 引用文献及び引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
当審拒絶理由において引用された特開平1-229392号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(当審注.下線は参考のために当審において付したものである。以下において同じ。)
ア「[産業上の利用分野]
この発明はICカードに関し、詳しくは、ICカード発行処理が簡単で、高速にできるようなICカードにおけるデータ処理方式に関する。
[従来の技術]
ICカードの発行にあたっては、発行者の登録番号、所持者の登録番号、暗証番号等の多数の登録項目についてのデータ(以下登録データ)を書込むことが必要である。
このような登録データをICカードに書込む場合の従来の登録方式は、その登録項目毎に、ICカードへ書込みコマンドを発生して、このコマンドとと共に、登録データをICカードリーダ・ライタ(或いはホストコンピュータ)からICカード側に伝送し、その応答を待って、次の登録項目のデータを伝送するという方式を採っている。
[解決しようとする課題]
そのため、登録データが多くなると、1枚のICカードの発行処理を終えるまでに多くの時間を要する。そこで、一度に多数のICカードを発行する場合に多くの時間を費やす欠点がある。しかも、その設計上から1つの登録項目の内容を変更しようとすると他の登録項目との関係が問題となり、その変更が容易ではない。
この発明は、このような従来のICカード発行処理に多大の時間を費やしてしまうという欠点をなくし、発行処理を簡素化し、発行処理を高速化することかできるICカードを提供することを目的とする。」(2ページ上左欄14行ないし下左欄2行)
イ「[実施例]
以下、この発明の一実施例について図面を参照して詳細に説明する。
第1図は、この発明を適用したICカードの内部構成を示す一実施例のブロック図、第2図は、そのRAM及びデータ記憶用のEEPROMのメモリマップの説明図、第3図は、外部より送られてくる、ICカード発行処理コマンド及びそのデータ伝送フォーマットの説明図、第4図は、この発明による他のICカードの内部構成を示す一実施例のブロック図、第5図は、その外部より送信されてくる発行処理コマンドおよび一括データを示す図、第6図は、第4図に示されるデータ格納用EEPROMの詳細説明図である。
第1図において、10は、ICカードであって、演算処理部(MPU)7と作業用メモリのRAM5及びデータ記憶用のEEPROM6、そして通信制御部1とを有している。
MPU7は、その機能ブロックとして、ICカード内のデータ処理一般を行うデータ処理部2、発行時の各登録項目についての登録項目データ複数を一括して受信して、それを取込む一括データ受信・取込み処理部3、-括して取込まれた複数の登録項目データから各登録項目データをそれぞれ取出し、所定の位置へ登録する項目分割・登録処理部4とを備えている。なお、これら構成要素の一部或いは全部は、ハードウェアとして回路により実現されても、また、RAM5或いはMPU7に内蔵されたマスクROMに記憶された対応する各処理プログラムを実行することで実現されてもよい。さらにこれらは、ハードウェアとソフトウェアとの組合せで実現されてもよい。
ここで、MPU7は、作業用メモリのRAM5を使用して、データ記憶用のEEPROM6に登録する登録データをはじめとして各種のデータを一時的に記録をし、またその更新処理を行う。
EEPROM6は、項目分割・登録処理部4によって使用される参照テーブル41を格納する参照テーブルエリア61と、実際の登録データ等を記録する登録データエリア62とを有していて、参照テーブル41は、第2図の(b)に示すように、識別情報(ID)を検索項目として識別情報と登録データが格納されるEEPROM6の番地との関係を示すテーブルとなっている。
さて、ICカード10に対してICカードリーダ・ライタ或いはホストコンピュータ等の外部装置より送信されたデータブロックは、通信制御部1を介して受取られ、通信制御部1で受信されたデータブロックは、データ処理部2に送られる。データ処理部2では、受け取ったこのデータブロックを受けてその所定の位置におかれたコマンドをデコードし、識別する。なお、ここでのデータブロックの伝送フォーマットとしては、通常は、例えば、その最初に開始コード、次にコマンドコード又はレスポンスコード、そして送信データを置くか或いはモード識別情報を置いてその後に伝送データを置く構成からなり、最後には終了コードが置かれている。
しかし、コマンドが発行処理を指示するコマンドであったときには、そのフォーマット構成は前記とは異なり、第3図に示すような一括登録処理フォーマット17として外部装置からICカード10に伝送される。
すなわち、11は、その開始コードであり、12がコマンドコード、13が登録データのデータ長(L)、14が識別コード(ID)、そして15が登録データであり、データ長13と識別コード14,登録データ15とが1組となって、登録項目の数L_(1)?L_(n),ID_(1)?ID_(n)、登録データ_(1)から登録データ_(n)だけ繰り返される。そして、最後に終了コード16が置かれることになる。ここでは、識別コード14と登録データ15とが1組みとなって1つの登録項目データを構成していて、データ長13は、複数の登録項目データを区切るための区切り情報となっている。
そこで、外部装置から送出されたデータブロックのうちのコマンドが発行処理コマンド11であることをデータ処理部2が識別すると、データ処理部2は、その制御を一括データ受信・取込み処理部3に移す。-括データ受信・取込み処理部3は、-括登録処理フォーマット17の中の一括された登録項目データ及びその区切りデータ13,14,15,13,14,15・・・(コマンドコード12の後から終了コード16の前までのデータ)を受けとり、第2図の(a)に示すように、-旦、RAM5の中へ、これらデータを書込む。
そこで、送られてきた複数の登録項目データは、第2図の(a)で示すようにRAM5の中に一括データ51として、連続した形で一旦蓄えられる。これが終わると、-括データ受信・取込み処理部3は、その制御を項目分割・登録処理部4に移す。項目分割・登録処理部4ではRAM5から前記-括受信登録項目データ51を読出して、それに含まれる各項目のデータ長(L_(1)?L_(n))に従って各項目に分割する。なお,識別コード14の長さはあらかじめ一定のバイト長となっている。
こうして分割された各項目は、それぞれ識別番号(ID_(1)?ID_(n))をもっており、この識別番号によりEEPROM6の中に設けられた参照テーブルエリア61の参照テーブル41(第2図(b)参照)を参照してその中から一致する識別番号を探し、第2図(b)の登録データエリア62に示すように、それに対応するアドレスに、その登録データ_(1)?登録データ_(n)(登録項目対応のデータ)を順次記録して行く。すべての項目を記録し終わると項目分割・登録処理部4は、その制御をデータ処理部2に戻し、データ処理部2は、レスポンスコードの位置(コマンドコードの位置)に登録終了を意味するコードを挿入して、通信制御部1を介して外部装置に対して登録終了のレスポンスを返す。
このようにして、ICカード発行時にメモリ内に連続或いは散在して登録される複数の登録項目データを、1個のコマンドにより記録することができる。」(3ページ上左欄15行ないし4ページ下左欄9行)

(2)引用発明
ア 引用発明1
上記(1)より、引用文献1には、下記の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「MPU7、RAM5、EEPROM6、及び通信制御部1を有するICカード10であって、
前記EEPROM6は、参照テーブル41を格納する参照テーブルエリア61と、実際の登録データ等を記録する登録データエリア62とを有していて、前記参照テーブル41は、識別情報(ID)を検索項目として識別情報と登録データが格納されるEEPROM6の番地との関係を示すテーブルとなっており、
前記MPU7は、発行処理コマンド、識別コード(ID)、及び登録データを含むデータブロックを受信し、当該登録データを前記EEPROM6の前記登録データエリア62に記録する、
ICカード10。」
イ 引用発明2
上記(1)より、引用文献1には、下記の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「MPU7、RAM5、EEPROM6、及び通信制御部1を有するICカード10であって、前記EEPROM6は、参照テーブル41を格納する参照テーブルエリア61と、実際の登録データ等を記録する登録データエリア62とを有していて、前記参照テーブル41は、識別情報(ID)を検索項目として識別情報と登録データが格納されるEEPROM6の番地との関係を示すテーブルとなっている、ICカード10において、
発行処理コマンド、識別コード(ID)、及び登録データを含むデータブロックを受信し、当該登録データを前記EEPROM6の前記登録データエリア62に記録する、
ICカード10のデータ処理方法。」
ウ 引用発明3
上記(1)より、引用文献1には、下記の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「MPU7、RAM5、EEPROM6、及び通信制御部1を有するICカード10であって、前記EEPROM6は、参照テーブル41を格納する参照テーブルエリア61と、実際の登録データ等を記録する登録データエリア62とを有していて、前記参照テーブル41は、識別情報(ID)を検索項目として識別情報と登録データが格納されるEEPROM6の番地との関係を示すテーブルとなっている、ICカード10に対して、
発行処理コマンド、識別コード(ID)、及び登録データを含むデータブロックを送信する、
データ処理方法。」

2 引用文献2
当審拒絶理由において引用された特開2004-21776号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、RF-IDや非接触型ICカード等の無線タグおよびこれを用いたシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、RF-IDや非接触型ICカード等の無線タグは、入退室を管理するシステム、物流における物品識別システム、食堂等での料金精算のシステム、CDやソフトウエア等の販売店での無断持ち出し防止システム等、多数のシステムで利用されている。これらのシステムでは、無線タグに書き込まれている固有のIDを利用して、物品の判別や所有者の判別等を行う。
【0003】
また、無線タグとリーダ・ライタの間の無線規格は、ISO14443、ISO15693、ISO18000等により標準化が進んでおり、これらの規格に従ったリーダ・ライタであれば、基本的にはどの製造者の無線タグでも、読み出しや書き込みができるはずである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、無線タグ内に記録されている情報の構造は、それぞれのシステム独自に定義されているため、同じ無線規格を持った無線タグであっても、無線タグ内のユーザデータ領域に書き込まれているデータ構造には、まったく互換性がない。
【0005】
従って、リーダ・ライタは、無線タグのユーザデータ領域のデータ構造に特化した読み出し/書き込みのコントロールをしなければならず、汎用的でない。
【0006】
本発明の目的は、無線タグ内に保持されているユーザデータの構造を上位のアプリケーションが意識すべき範囲を最小限に抑え、データ構造の異なる無線タグが通信エリア内に複数存在した場合においても、目的のデータ項目を正しく読み出すことができる無線タグシステム、質問器、無線タグおよびコンピュータプログラムを提供することにある。」
イ「【0031】
次に、図3、図4を用いて、データ構造規定情報とユーザデータの保持、読み出し方法のより具体的な例を説明する。
【0032】
図3は、データ構造規定情報とユーザデータの具体的な保持イメージを示すものであり、具体的には、リーダ・ライタ201の通信エリア内に無線タグ202、203、204が存在する状況を示している。無線タグ202は、人物テーブルの構造を示す情報(データ構造規定情報)が書き込まれた無線タグ(定義タグ)である。無線タグ203は、人物テーブルの一つのレコードが書き込まれた無線タグ(データタグ)である。無線タグ204は、製品テーブルの構造を示す情報及び一つのレコードが書き込まれた無線タグである。このような無線タグは定義タグ兼データタグ、すなわち、定義タグであると同時にデータタグでもある。図3に示したデータ構造規定情報は、任意の無線タグのユーザデータ領域に保持されており、データ構造記述言語によって記述されている。データ構造記述言語には例えば抽象構文記法(ASN.1)がある。他にもXML、HTML等多々存在するが、ここでは同等の機能を持つものであれば、これを限定するものではない。図の例では、データ構造規定情報を、各データ項目の名称(カラム名)に対して、その表記、データの属性(文字列、整数等の別)およびデータサイズを対応付けた表形式に示している。
【0033】
図4は、データ構造規定情報の読み出し、及びユーザデータ読み出しの処理手順を示している。これは、図3に示すような無線タグがリーダ・ライタの通信エリア周辺に存在した場合に、ソフトウエアが「人物テーブル」のカラム「NAME」の値を読み出すまでのシーケンスについて示したものである。
【0034】
今、リーダ・ライタ201のデータベース操作解釈部232が、ソフトウエア231から「人物テーブル」のカラム「NAME」の値を読み出す命令(図4の例では、SELECT NAME FROM TABLE_PERSON)を受け取った場合(S11)を例として説明する。データベース操作解釈部232は、まず、データ構造規定情報を取得するために、データ構造規定情報を保持した無線タグを検索するために「定義タグ検索」をハードウェア233に指示する(S21)。この指示に応じてハードウェア233は、定義タグ検索のためのコマンド送信を行う(S31)。これは図2で説明した「▲3▼データ構造読み出し」の一部に相当する。データ構造を保持した無線タグ202と204がこの定義タグ検索に応答して自己のタグIDを返送する(S41,S61)。
【0035】
データベース操作解釈部232は、このタグIDを取得し(S22)、当該タグIDの無線タグに対して読み出し(データ構造)をハードウェア233に指示する(S23)。これに応じてハードウェア233は、当該無線タグのIDを指定して、「データ構造読み出し」のコマンドを送信する(S33)。指定された無線タグは、「データ構造応答」として、自己が保持するデータ構造規定情報を読み出して自己のタグIDとともに返送する(S42,S62)。ハードウェア233は「読み出し応答」として、このデータ構造規定情報をデータベース操作解釈部232に渡す(S34)。
【0036】
図4の例では、複数の無線タグ202,204がデータ構造規定情報を保持しており、データベース操作解釈部232はこのようにして、「人物テーブル」及び「製品テーブル」のデータ構造を取得することができる。データベース操作解釈部232は、取得したデータ構造に基づいて、人物テーブルのカラム「NAME」が保持されたアドレスおよびサイズを求め、これを一時保持しておく(S24)。
【0037】
なお、ステップS42,S62のように、定義タグすべてからデータ構造規定情報を取得し、データベース操作解釈部232においてソフトウェア231から発行された命令に該当するテーブルを判定するようにしたが、無線タグの処理能力が許せば、ステップS21において定義タグ検索コマンドに目的のテーブル名を含め、無線タグ内でそのテーブル名を自己のテーブル名と比較し、一致した無線タグのみが応答を返すようにすることも可能である。
【0038】
次に、データベース操作解釈部232は「人物テーブル」構造を持つ無線タグを検索する指示をハードウェア233に与える。ハードウェア233はこれに応じて人物テーブルのタグ検索のコマンドを送信する(S35)。これに対して人物タグである無線タグ203が応答して自己のタグIDを返す(S51)。ハードウェア233はこのタグIDをデータベース操作解釈部232に渡す(S36)。このようにして、データベース操作解釈部232は人物テーブルのタグIDを取得する(S26)。
【0039】
ついで、データベース操作解釈部232は、受け取ったタグIDに対して、先に保持しておいたアドレスおよびサイズを指定し(S27)、読み出し(データ)の指示をハードウェア233に対して行う(S28)。これに応じてハードウェア233は当該タグIDを指定してそのデータの読み出しのコマンドを発信する(S37)。無線タグ203はこれに応答して、当該データを読み出して「読み出し応答」として返送する(S52)。もし「人物テーブル」構造を持つ無線タグが複数検索されている場合には、この操作をそれぞれの無線タグに対して実施する。
【0040】
このようにして、データベース操作解釈部232は「人物テーブル」のカラム「NAME」の値を読み出し、「SELECT応答」として、上位のソフトウエア231に対して値を返すことができる(S29)。
【0041】
尚、ここでは読み出し例のみ示したが、書き込みについても同等の操作で可能である。例えば、UPDATE文を用いればデータの追加や更新を行うことができる。UPDATE TABLE_PERSON NAME=”日本花子”という文では人物テーブルのNAMEという未入力データ項目に新たなデータを追加することができる。UPDATE TABLE_PRODUCT PRICE=9 WHERE PRICE=8という文では、製品テーブルのPRICEという既入力データ項目の値を8から9に書き換えることができる。このような書き込みの場合、ステップS26までのデータ構造の確認に関する処理は読み出しと同じである。以降のステップS27,S28,S37,S38,S52は読み出しではなく、書き込み関連の処理になり、S29はUPDATE応答になる。
【0042】
このように、データ構造規定情報を保持している無線タグが存在すれば、一つのデータ構造のみでなく、様々なデータ構造を持つ無線タグを自由に読み出し、書き込みが同時に実現できるようになる。」

3 引用文献3
当審拒絶理由において引用された特開2010-176582号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア「【0001】
発行処理を実行するICチップ及びICカード及び発行装置及び発行方法及び発行システムに関する。」
イ「【0023】
発行処理判断部14は、発行の処理が済んでいるか否かを判断する。ICカード1では、発行処理が完了している場合には図示しないメモリに発行処理の完了を示すフラグを記録する。発行処理判断部14は、当該メモリにフラグが書き込まれているか否によって発行処理が完了しているか未完了かを判断する。」
ウ「【0043】
また、データを受信したICカード1は、図5に示すように、受信したデータをEEPROM103に書き込む。ICカード1は、全ての書き込みが完了した際、特定のコマンド又はEEPROM103上の情報を書き換えることにより発行完了とし、以降は発行コマンドの受付を禁止する。ここで、ICカード1は、ROM101と、RAM102と、EEPROM103と、CPU104とが協調して動作することにより、上述した切替制御部13と、スイッチ部13aと、発行処理判断部14(発行処理判断手段)と、処理部15と、データ格納部17と、発行処理実行部18と、認証処理実行部19と、セキュリティフラグ書換部20とに係る機能が発揮される。」

4 引用文献4
当審拒絶理由において引用された特開2004-310681号公報(以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ICカードの技術に係り、特にICカード発行時のICカードへのプログラム書き込み方法に関するものである。」
イ「【0029】
次に、制御部4がデータ書き込みコマンドを実行して、データ領域内の各ファイルに各種情報を書きこむ。(5)は各ファイルへ各種情報を書き込んだ状態を示す図である。そして、各種情報の書き込みが完了すると、情報書き込み装置が書き込み完了を示すデータ書き込み完了コマンド(データ書き込み完了情報)をICカード1に送信する。そして、ICカード1の送受信部5がデータ書き込み完了コマンドを受信する。そして制御部4がそのデータ書き込み完了コマンドの送受信部5から転送を受けて実行し、データメモリ部2のシステム領域におけるメモリ状態識別データのアドレスb2を0から1に変更する。これにより、ICカード1への各種情報の書きこみが完了し、ICカード1が、例えば、クレジットカードとして完成する。(6)は各種情報の書き込みが完了した状態を示す図である。そして、ICカードがクレジットカードの利用者などに配布される。」

5 引用文献5
原査定において引用された特開2006-18790号公報(以下、「引用文献5」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア「【0001】
本発明は、社員証や各種免許証等のIDカードを作成するIDカード作成システム及びIDカード作成方法に関するものである。」
イ「【0039】
[第1の実施の形態]
まず、第1の実施の形態の構成を説明する。
図1は、本第1の実施の形態におけるIDカード作成システム100のシステム構成を示す概念図である。図1に示すように、IDカード作成システム100は、ホスト1、ファイルサーバ2、登録装置3、撮影装置4、IDカード作成装置5等を備えて構成されている。
(・・・中略・・・)
【0087】
以下に、図5を参照してIDカード作成装置5の要部構成を詳細に説明する。図5に示すように、IDカード作成装置5は、CPU51、表示部52、入力部53、通信部54、RAM55、記憶部56、カードホッパー57、プリント部58、IC R/W59、OCR50等から構成されている。

ウ「【0124】
図11を参照して、IDカード作成装置5により実行されるIDカード発行処理について説明する。図11は、IDカード発行処理を示すフローチャートである。
(・・・中略・・・)
【0128】
図12を参照して、CPU51により実行される記録処理について説明する。
(・・・中略・・・)
【0132】
図12に戻り、IDカードに記憶された輸送鍵が照合されると(ステップS52;YES)、輸送鍵が解除され、IDカードのカード内蔵メモリに格納される全てのディレクトリにおいてデータの書換えが可能な状態となる。続いて、CPU51は、カード識別情報を読み取り(ステップS53)、読み取ったカード識別情報に対応する対応表を記憶部56から取得し、対応表に従って記録データの編集を行う(ステップS54)。ここで、カード識別情報とは、カードの種別を特定するための情報である。また、対応表は、カード種別毎に、識別符号とディレクトリ名、ファイル名の並び順を定義するファイルであり、複数の対応表がカード識別情報に応じて記憶部56に格納されているものとする。図14を参照して、対応表について説明する。
【0133】
図14は、対応表561のデータ構成例を示す図である。図14に示すように、対応表561には、識別符号毎に、対応するディレクトリ名及びファイル名の並び順が定義されている。例えば、対応表561には、並び順として最上位に識別符号1が定義され、識別符号1の格納先として、ディレクトリ1及びファイル1aが定義されている。従って、CPU51は、記録データを対応表561に定義される並び順に並び替えて、指定されたディレクトリに記録するための編集を行う。
【0134】
図12に戻り、CPU51は、読み取ったカード識別情報に基づいて、カード種別に応じたプロセスを選択する(ステップS5)。IDカード作成システム100において利用されるIDカードは、複数種のカードが利用されるため、カード種別に応じて実行されるプロセスが異なる。例えば、IDカードAは、セキュリティーステータスの変更を要しないカードであり、IDカードBは、セキュリティーステータスの変更を要するカードであって、メモリ容量が比較的大きいカードであり、IDカードCは、セキュリティーステータスの変更を要するカードであって、メモリ容量が比較的小さいカードであるものとした場合、セキュリティーステータスの変更に係るプロセスがカードの種別に応じて異なることとなる。また、カード種別が異なることにより、データ書き込みの際の通信速度、バッファーサイズ等が異なることとなる。
【0135】
そこで、カード識別情報に基づいてカード種別を判別した結果、カード種別がIDカードAであった場合(ステップS55;A)、CPU51は、書き込みを行うファイルを選択し(ステップS56)、カード識別情報に応じた通信速度、バッファーサイズにて記録データを選択したファイルに書き込む(ステップS57)。そして、記録データの書き込みが終了したか否かを判別し(ステップS58)、記録データの書き込みが終了した場合(ステップS58;YES)、全ての処理を終了したか否かを確認し(ステップS59)、全ての処理を終了した場合(ステップS59;YES)、ステップS71に移行する。
【0136】
一方、カード識別情報に基づいてカード種別を判別した結果、カード種別がIDカードBであった場合(ステップS55;B)、CPU51は、書き込みを行うファイルを選択し(ステップS60)、カード識別情報に応じた通信速度、バッファーサイズにて記録データを選択したファイルに書き込む(ステップS61)。そして、記録データの書き込みが終了したか否かを判別し(ステップS62)、記録データの書き込みが終了した場合(ステップS62;YES)、セキュリティーステータスの変更を行う(ステップS63)。ここで、IDカードBは、メモリ容量が比較的大きいカードであるため、1回の工程でセキュリティーデータの変更が行えるものとする。そして、CPU51は、全ての処理を終了したか否かを確認し(ステップS59)、全ての処理を終了した場合(ステップS59;YES)、ステップS71に移行する。
【0137】
さらに、カード識別情報に基づいてカード種別を判別した結果、カード種別がIDカードCであった場合(ステップS55;C)、CPU51は、書き込みを行うファイルを選択し(ステップS65)、カード識別情報に応じた通信速度、バッファーサイズにて記録データを選択したファイルに書き込む(ステップS66)。そして、記録データの書き込みが終了したか否かを判別し(ステップS63)、記録データの書き込みが終了した場合(ステップS62;YES)、セキュリティーステータスの変更を行う(ステップS64,S65)。ここで、IDカードCは、メモリ容量が比較的小さいカードであるため、2回の工程に分割してセキュリティーデータの変更が必要であるものとする。そして、CPU51は、全ての処理を終了したか否かを確認し(ステップS59)、全ての処理を終了した場合(ステップS69;YES)、ステップS71に移行する。
【0138】
記録データの書き込みの終了が確認された場合、CPU51は、輸送鍵を閉塞させて、カード内蔵メモリにおける一括的なデータの書換えを禁止する(ステップS71)。そして、CPU51は、IDカードとIC R/W59との通信を切断させて(ステップS72)、本記録処理を終了し、IDカード発行処理に移行する。
(・・・中略・・・)
【0143】
以上のように、本実施の形態におけるIDカード作成システム100は、一連のIDカード作成処理において送受信されるIDカード作成のための情報を、IDカードの券面に印刷する印刷データと、IDカードの内蔵メモリに記録する記録データに分別して生成し、印刷処理又は記録処理に応じたデータに基づいて各種処理を行う。これにより、IDカードを発行するIDカード作成装置5において、印刷データ及び記録データの分別、生成を行う必要がなく、効率良くかつ迅速にIDカードを発行することができる。
(・・・中略・・・)
【0152】
また、IDカード作成システム100は、IDカード作成装置5においてIDカードを発行する際に、カード識別情報に含まれるカード種別に応じて記録データのデータ構成を編集したり、IDカードを記録するプロセスを変更するため、複数の異なるカード種別が混在するシステムにおいても対応する処理が可能であり、汎用性の高いシステムを提供することができる。また、他のIDカード作成システムにおいて作成されたIDカードを継続して利用することが可能となる。」

6 先願6
(1)先願6の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載事項
原査定において引用された特願2013-26322号(特開2014-154127号)(以下、「先願6」という。)の明細書及び特許請求の範囲には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップ発行のための入力データに基づいて、ICチップに書き込むための発行データを出力するICチップ発行プログラムであって、
コンピュータが、ICチップの仕様に対応した個別データを有する前記入力データを記憶する記憶部を備え、
コンピュータを、
書き込み対象のICチップの仕様に対応した前記個別データを参照する個別データ参照手段と、
前記個別データ参照手段において参照した前記個別データに基づいた発行データを出力する発行データ出力手段と、
して機能させるためのICチップ発行プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載のICチップ発行プログラムにおいて、
コンピュータを、前記ICチップの記憶領域に記憶され前記ICチップの仕様を特定可能な仕様データを取得する仕様データ取得手段と、して機能させ、
前記個別データ参照手段を、前記仕様データ取得手段により取得した前記仕様データに基づき前記個別データを参照するように機能させること、
を特徴とするICチップ発行プログラム。
【請求項3】
請求項2に記載のICチップ発行プログラムにおいて、
前記仕様データ取得手段を、
前記仕様データを読み出す読出依頼データを出力する依頼データ出力手段と、
前記依頼データ出力手段が出力した前記読出依頼データに対応した前記仕様データを受け付ける仕様データ受付手段と、
して機能させること、
を特徴とするICチップ発行プログラム。
(・・・中略・・・)
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載のICチップ発行プログラムを記憶した記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記ICチップ発行プログラムを実行する制御部と、
前記記憶部に記憶させるための前記入力データを受け付ける入力データ受付部と、
を備えるICチップ発行制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載のICチップ発行制御装置と、
前記ICチップが載置されたICカードと、
前記ICチップ発行制御装置から前記発行データを受け付け、その発行データを使用して前記ICカードを発行するICカード発行機と、
を備えるICカード発行システム。」
イ「【0001】
本発明は、ICチップ発行プログラム、ICチップ発行制御装置及びICカード発行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICカードは、製造され、ICカードやそのICカードに載置されたICチップに必要な各種情報が書き込まれると、そのICカードの所有者である利用者が利用可能な状態になる。ICカードの発行を行う企業では、ICカードに対して0次発行から2次発行までの各発行処理を行う。発行処理は、ICチップにデータを書き込む処理である。その中の2次発行では、発行機により、利用者の個人情報の書き込みや、例えば、クレジットカード取引を行うためのパラメータの書き込みが行われる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-206765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ICチップは、製造メーカによって、また、用途に応じてICチップに記憶するアプリケーションの種類やそのバージョンによって、その仕様が異なる。また、例えば、クレジットカード会社等のICカード取扱企業は、リスク面を考慮して、複数のメーカのICチップを採用することが多い。そして、仕様が異なることで、発行処理手順が異なる場合がある。そのため、2次発行においては、ICチップの仕様ごとに、発行のための入力データを用意しなければならなかった。また、発行機を操作する操作者は、発行機に装着するICカードのICチップと、入力データとが同じ仕様であるかを識別しなければならず、発行作業が煩雑であった。
【0005】
図7は、従来のICチップの2次発行での問題点を説明するための図である。
従来は、2次発行をするICカードが、図7(a)のICチップAを有するICカード5Aから図7(b)のICチップBを有するICカード5Bに変更になった場合には、入力データを、ICカードA用の入力データから、ICカードB用の入力データに変更しなければならなかった。また、発行プログラムも、入力データに応じて入れ替えするか、又は入力データに対応するように書き換えなければならず、それぞれの入力データに対応したものにしなければならなかった。
【0006】
そこで、本発明は、ICカードの発行作業の作業性を向上できるICチップ発行プログラム、ICチップ発行制御装置及びICカード発行システムを提供することを目的とする。」
ウ「【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図を参照しながら説明する。なお、これは、あくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
(実施形態)
図1は、本実施形態に係るICカード発行システム100の全体構成及び各装置の機能ブロックを示す図である。
ICカード発行システム100は、発行制御装置1(ICチップ発行制御装置)を用いて、発行機3(ICカード発行機)に装着されたICカード5に対して、そのICチップ6の仕様に基づく2次発行処理をするシステムである。
ICカード発行システム100は、発行制御装置1と、発行機3と、暗号化装置4と、ICカード5とを備えている。発行制御装置1は、発行機3と、暗号化装置4との各々に対して通信可能に接続されている。
【0014】
発行制御装置1は、ICチップ6の様々な仕様に共通の入力データ7を処理して、発行機3に対してICチップ6に書き込むための出力データを出力する端末である。ここで、ICチップ6の様々な仕様とは、ICチップ6の製造メーカの違いによるものや、ICチップ6に書き込む動作のためのデータのアプリケーションの違い及びそのバージョンの違いによるものをいう。発行制御装置1は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)により実行できる。
発行制御装置1は、制御部10と、記憶部20と、端子部26(入力データ受付部)と、通信I/F(インタフェース)部29とを備える。
制御部10は、発行制御装置1の全体を制御するCPU(中央処理装置)である。制御部10は、記憶部20に記憶されているオペレーティングシステム(OS)や各種アプリケーションプログラムを適宜読み出して実行することにより、上述したハードウェアと協働し各種機能を実行する。
【0015】
制御部10は、仕様データ取得部11と、個別データ参照部14と、発行データ出力部15とを備える。
仕様データ取得部11は、ICチップ6の仕様を特定可能な使用データを取得する制御部である。仕様データ取得部11は、依頼データ出力部12と、仕様データ受付部13とを有する。
依頼データ出力部12は、発行機3に装着されたICカード5のICチップ6の仕様を確認するための依頼データを、発行機3に対して出力する制御部である。
仕様データ受付部13は、ICチップ6の仕様を確認可能な仕様データを、発行機3から受け付ける制御部である。
個別データ参照部14は、入力データ7のうち、ICチップ6の仕様にあった個別データを参照する制御部である。
発行データ出力部15は、個別データ参照部14において参照した個別データに基づいた発行データを、発行機3に対して出力する制御部である。
【0016】
記憶部20は、制御部10が各種の処理を実行するために必要なプログラム、データ等を記憶するためのハードディスク、半導体メモリ素子等の記憶領域である。
記憶部20は、ICチップ発行プログラム21と、入力データ記憶部22とを備える。
ICチップ発行プログラム21は、発行制御装置1の制御部10の各種機能を実行するためのプログラムである。
入力データ記憶部22は、入力データ7を記憶する記憶領域である。発行制御装置1は、入力データ7を、例えば、端子部26に接続された外部記憶装置から受け付ける。
端子部26は、例えば、USB(Universal Serial Bus)端子であり、USBメモリ等の外部記憶装置を装着する部品である。
通信I/F部29は、発行機3及び暗号化装置4との間の通信を行うためのインタフェース部であり、送信部及び受信部の役割を行う。
なお、発行制御装置1は、その他に、例えば、キーボード等の各種操作入力を行う操作部と、液晶パネル等で構成される表示部とを有する。
【0017】
発行機3は、この発行機3に装着されたICカード5のICチップ6に記憶されているデータを読み取ったり、ICチップ6にデータを書き込んだりして、ICカード5の2次発行処理を行う装置である。
発行機3は、制御部30と、記憶部35と、R/W(リーダライタ)部37と、通信I/F部39とを備える。
制御部30は、発行機3の全体を制御するCPUである。制御部30は、記憶部35に記憶されているOSやアプリケーションプログラムを適宜読み出して実行することにより、上述したハードウェアと協働し各種機能を実行する。
記憶部35は、制御部30が各種の処理を実行するために必要なプログラム、データ等を記憶するためのハードディスク、半導体メモリ素子等の記憶領域である。
R/W部37は、例えば、ICカード5と接触式又は非接触式で通信する装置である。R/W部37は、ICカード5のICチップ6に対して電源やクロック等を供給し、ICチップ6からデータを読み取り、また、ICチップ6にデータを書き込むためのデータの送受信をする。
通信I/F部39は、発行制御装置1との間の通信を行うためのインタフェース部であり、送信部及び受信部の役割を行う。
【0018】
暗号化装置4は、暗号化されたデータを、発行制御装置1から受け付けて復号し、復号したデータを、発行制御装置1に対して出力する装置である。
暗号化装置4は、制御部と、記憶部と、通信I/F部とを備える。
暗号化装置4の記憶部には、暗号化プログラムが記憶されている。暗号化装置4の制御部は、暗号化プログラムを実行して暗号化されたデータを復号する。
【0019】
ICカード5は、I/F部59と、CPU60と、RAM(Random Access Memory)62と、ROM(Read Only Memory)63と、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)64とを備える。ICチップ6は、CPU60と、RAM62と、ROM63と、EEPROM64からなる。
I/F部59は、接触端子やアンテナと、変調回路及び復調回路等のI/Oインタフェースとを備え、接触式又は非接触式で発行機3のR/W部37との間で通信を行い、CPU60及び発行機3の間の通信を媒介する部分である。
CPU60は、ICカード5の全体を制御する中央処理装置である。CPU60は、I/F部59を介してR/W部37から受信するコマンドに応じて、ROM63及びEEPROM64に記憶されている実行コード(プログラム)を実行する。
また、CPU60は、I/F部59が受信した命令に、EEPROM64に対する記憶処理命令が含まれていると判断した場合には、EEPROM64に書き込み対象データを記憶する処理を行う。
RAM62は、揮発性メモリであり、CPU60が処理を行う作業領域や、R/W部37とデータをやり取りするための送受信用のバッファ等として使用される。
ROM63は、不揮発性の読み出し専用のメモリであり、実行コードや、各種パラメータ等が記憶されている。
EEPROM64は、随時書き換え可能な不揮発性メモリであり、実行コードや固有情報(例えば、クレジットカード固有の番号や、会員番号等)を記憶する。
【0020】
次に、入力データ7を構成する3つのパターンについて説明する。図2は、本実施形態に係る入力データ7の入力データパターン及び発行データ8を説明するための図である。
(a)まず、入力データ7に基づいて出力する発行データ8について説明する。
発行データ8は、「タグ」「長さ」「値」(TLV(Tag-Length-value))の各項目からなるデータを連続させた連続データである。発行制御装置1は、入力データ7に基づいて、処理対象のICチップ6の仕様にあった発行データ8を、発行機3に対して出力する処理を行う。なお、入力データ7は、「値」に、発行するICカード5の利用者の個人情報や鍵情報を含む。
【0021】
(b)次に、入力データパターンについて説明する。発行データ8を出力するための入力データ7は、以下に説明する3つの入力データパターンのいずれかに該当する。なお、この例では、ICチップ6の仕様が各々異なるICチップAと、ICチップBとに対応する入力データ7を説明する。仕様が異なるICチップ6がさらに存在する場合には、それに対応するデータを追加した入力データ7を用意すればいい。
(1)は、パターン1を示す。パターン1では、入力データ7を、共通部と、各ICチップ6の優先部(個別優先部)とから構成する。そして、発行制御装置1において、まず、各ICチップ6の優先部のデータ(個別データ)を参照してから共通部を参照させることで、チップごとに固有の値の設定を可能とする。
この例は、「AA」という1つのタグに対する発行のための入力データ7である。入力データ7は、共通部には、アプリケーションIDと、“タグ「AA」、長さ「02」、値「9999」”というデータとを有し、ICチップAの優先部には、“親タグ「FF56」、タグ「AA」、長さ「02」、値「8888」”というデータを有し、ICチップBの優先部には、データを有さない。なお、アプリケーションIDとは、発行対象のアプリケーションを識別する識別情報であり、例えば、VISA(登録商標)カードのアプリケーションであることを表す。また、親タグとは、タグの上位のタグであり、例えば、ICチップ6の製造メーカごとに異なるものの1つである。このパターン1の入力データ7の場合には、発行制御装置1において、まず、優先部を参照する。ICチップAの場合(この例では、親タグが「FF56」である。)には、優先部にデータがある。よって、優先部のデータである“タグ「AA」、長さ「02」、値「8888」”を発行する。ICチップBの場合(例えば、親タグが「FF76」であり、「FF56」ではない。)には、優先部にデータがない。よって、共通部のデータである“タグ「AA」、長さ「02」、値「9999」”を発行する。
このように、入力データ7がパターン1の場合には、1つのタグに対する発行データを出力できる。
なお、入力データ7がパターン1の場合には、共通部と、各ICチップ6の優先部とに複数のタグに関する指定をしておけば、一度に複数のタグに対しても発行データを出力できる。
【0022】
(2)は、パターン2を示す。パターン2では、各ICチップ6用の発行データを、入力データ7内で独立させる。つまり、パターン2では、入力データ7を、ICチップA用データと、ICチップB用データという各個別データから構成する。そして、発行制御装置1において、判別した仕様に対応する個別データを参照して、チップごとに固有の値の設定を可能とする。
この例は、「AB」及び「AC」タグという2つのタグに対する発行のための入力データ7である。入力データ7は、ICチップA用データとして、アプリケーションIDと、“タグ「AB」、長さ「02」、値「9999」、タグ「AC」、長さ「02」、値「1234」・・・”というデータとを有し、ICチップB用データとして、アプリケーションIDと、“タグ「AB」、長さ「02」、値「9991」、タグ「AC」、長さ「02」、値「5678」・・・”というデータとを有する。このパターン2の入力データ7では、発行制御装置1において、ICチップAの場合(この例では、アプリケーションIDが「10100000」)には、ICチップA用のデータを発行し、ICチップBの場合(この例では、アプリケーションIDが「10100001」)には、ICチップB用のデータを発行する。
このように、入力データ7がパターン2の場合には、一度に複数のタグに対する発行データを出力できる。
【0023】
(3)は、パターン3を示す。パターン3では、入力データ7は、発行用タグを独自に定義するものである。つまり、パターン3の場合には、入力データ7は、「発行用タグ」「長さ」「値」からなる判定対象データ(個別データ)を有する。そして、発行制御装置1において、あるタグを指定して、そのタグに関する発行に、発行用タグを用いることで、チップごとに固有の値の設定を可能とする。
この例は、「AD」タグという1つのタグに対する発行のための入力データ7である。入力データ7は、判定対象データとして“タグ「AD」、長さ「02」、値「5555」、タグ「BD」、長さ「02」、値「7777」”というデータを有する。このパターン3の入力データ7の場合には、発行制御装置1において、タグ「AD」に対する発行の場合に、ICチップAでは、タグ「AD」を参照し、ICチップBでは、タグ「BD」を参照する。よって、ICチップAの場合には、“タグ「AD」、長さ「02」、値「5555」”を発行する。ICチップBの場合には、タグ「BD」を参照し、タグ「BD」の長さと値とをタグ「AD」に適用した“タグ「AD」、長さ「02」、値「7777」”を発行する。
【0024】
次に、発行制御装置1での発行データ出力処理について説明する。図3は、本実施形態に係るICカード発行システム100の発行データ出力処理のフローチャートである。図4は、本実施形態に係るICカード発行システム100のICチップ仕様確認処理のフローチャートである。図5は、本実施形態に係る発行制御装置1の入力データ処理のフローチャートである。
本処理開始の前提として、発行制御装置1は、図2(b)で説明した入力データパターンにより作成された入力データ7を、入力データ記憶部22に既に記憶させているものとする。また、発行機3には、2次発行処理を行うより前のICカード5が載置されているものとする。
図3のステップS(以下、「S」という。)1において、発行制御装置1の制御部10(仕様データ取得部11)は、ICチップ仕様確認処理を行う。
【0025】
ここで、ICチップ仕様確認処理を、図4に基づいて説明する。
図4のS11において、発行制御装置1の制御部10(依頼データ出力部12)は、ICチップ6の仕様を確認すべく、発行機3に対して依頼データを出力する。依頼データは、ICチップ6の仕様を確認するためのコマンドデータである。
S12において、発行機3の制御部30は、依頼データを受け付ける。
S13において、発行機3の制御部30は、依頼データに対応するICチップ6用のコマンドをICカード5に対して出力する。
S14において、ICカード5のCPU60は、コマンドを受け付ける。
S15において、ICカード5のCPU60は、コマンドを実行し、コマンドに対応する処理結果を取得して、発行機3に対して処理結果を出力する。実行するコマンドは、ICチップ6の仕様を確認するために、ICチップ6の全ての仕様に共通の呼び出しコマンドである。このコマンドにより、発行制御装置1は、CPLC(Card Production Life Cycle)を取得する。このCPLCには、製造日やメーカ名の識別情報を含むので、これにより、発行制御装置1は、ICチップ6の仕様を判断できる。
S16において、発行機3の制御部30は、処理結果を受け付ける。
S17において、発行機3の制御部30は、発行制御装置1に対して処理結果を出力する。
S18において、発行制御装置1の制御部10(仕様データ受付部13)は、処理結果を受け付ける。その後、制御部10は、図3のS2に処理を移す。
【0026】
図3に戻り、S2において、発行制御装置1の制御部10は、仕様決定処理を行い、2次発行を行うICチップ6の仕様を決定する。
S3において、制御部10は、決定されたICチップ6の仕様を、記憶部20に記憶させる。
S4において、制御部10は、入力データ7に対する処理を行うか否かを判断する。入力データ7に対する処理を行う場合(S4:YES)には、制御部10は、処理をS5に移す。他方、入力データ7に対する処理を行わない場合(S4:NO)には、処理をS6に移し、入力データ7を用いないその他の処理を行う。
S5において、制御部10は、入力データ処理を行う。その後、発行制御装置1の制御部10は、処理をS7に移す。
【0027】
ここで、入力データ処理について、図5に基づき説明する。
図5のS51において、発行制御装置1の制御部10は、入力データ記憶部22に記憶された入力データ7を読み込む。ここで読み込む入力データ7は、複数の入力データパターンを含む場合に、そのうち1つのデータパターンのデータである。
S52において、制御部10は、入力データ7を用いた処理が、発行データの出力処理であるか否かを判断する。発行データの出力処理である場合(S52:YES)には、制御部10は、処理をS53に移す。他方、発行データの出力処理ではない場合(S52:NO)には、制御部10は、処理をS54に移す。
S53において、制御部10は、入力データパターンに応じた発行データの出力処理(後述する、図6)を行い、その後、制御部10は、処理を図3のS7に移す。
S54において、制御部10は、ロジックに対応した処理を行う。ロジックに対応した処理として、例えば、ICチップ6の仕様に対応した処理がある。入力データ7には、そのデータ内容から、ICチップ6の種類やバージョン等のICチップ6の仕様を確認できるものがある。その場合には、制御部10は、入力データ7からICチップ6の仕様を確認でき、処理対象ロジックを分岐させることができる。その後、制御部10は、処理を図3のS7に移す。
【0028】
なお、入力データ7が暗号化されている場合には、発行制御装置1の制御部10は、入力データ7の読込(図5のS51)の後に、暗号化装置4に対して読み込んだ入力データ7を出力する。暗号化装置4では、制御部が、受け付けた暗号化されている入力データ7を復号して、発行制御装置1に出力する。よって、発行制御装置1の制御部10は、復号された入力データ7について、S52以降の処理を行えばよい。
【0029】
図3に戻り、S6において、発行制御装置1の制御部10は、その他の処理を行う。その他の処理とは、入力データ7を使用しない処理であり、例えば、ICチップ6の所定の領域に対するイニシャライズ処理等である。
S7において、制御部10は、処理を終了するか否かを判断する。処理を終了する場合とは、入力データ7を用いた処理が終了しており、その他の処理も終了している状態、つまり、1枚のICカード5に対する2次発行処理が終了した場合をいう。処理を終了する場合(S7:YES)には、制御部10は、本処理を終了する。他方、処理を終了しない場合(S7:NO)には、制御部10は、処理をS4に移す。
なお、ICカード発行システム100は、複数枚のICカード5について2次発行する場合には、図3の発行データ出力処理を繰り返し行えばよい。
【0030】
ここで、入力データパターンに応じた発行データの出力処理(図5のS53)について説明する。
図6は、本実施形態に係る発行制御装置の入力データパターンに応じた発行データの出力処理のフローチャートである。
S61において、発行制御装置1の制御部10は、読み込んだ入力データ7から、その入力データ7がパターン1(図2(b)(1)参照)であるか否かを判断する。パターン1である場合(S61:YES)には、制御部10は、処理をS62に移す。パターン1ではない場合(S61:NO)には、制御部10は、処理をS65に移す。
S62において、制御部10は、記憶部20に記憶したその仕様の優先部にデータ(個別データ)があるか否かを判断する。データがある場合(S62:YES)には、制御部10は、処理をS63に移す。他方、データがない場合(62:NO)には、制御部10は、処理をS64に移す。
S63において、制御部10(個別データ参照部14、発行データ出力部15)は、優先部のデータ(個別データ)から発行データを出力する。その後、制御部10は、処理を図3のS7に移す。
S64において、制御部10(発行データ出力部15)は、共通部のデータから発行データを出力する。その後、制御部10は、処理を図3のS7に移す。
【0031】
S65において、制御部10は、読み込んだ入力データ7から、その入力データ7がパターン2(図2(b)(2)参照)であるか否かを判断する。パターン2である場合(S65:YES)には、制御部10は、処理をS66に移す。パターン2ではない場合(S65:NO)には、その入力データ7は、パターン3(図2(b)(3)参照)であるので、制御部10は、処理をS67に移す。
S66において、制御部10(個別データ参照部14、発行データ出力部15)は、その仕様に対応したデータ(個別データ)から発行データを出力する。その後、制御部10は、処理を図3のS7に移す。
S67において、制御部10(個別データ参照部14、発行データ出力部15)は、判定対象ロジックに対応した、入力データ7の発行用タグで定義された個別データから発行データを出力する。その後、制御部10は、処理を図3のS7に移す。
【0032】
このように、本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)発行制御装置1で処理対象の入力データ7がICチップ6の仕様に対応した個別データを有するので、発行制御装置1は、発行対象のICチップ6の仕様がどのような仕様であっても、入力データ7を変えることなく、発行データを出力できる。よって、発行機3を操作する操作者は、ICチップ6の発行に際して、ICチップ6の仕様の確認作業が不要であり、例えば、ICチップ6の仕様に応じた仕分け作業やICチップ6の仕様ごとの在庫管理を行わずに済むので、発行作業の作業性を向上できる。
(2)ICカード発行システム100は、発行制御装置1の発行処理開始時に、ICチップ6の仕様を特定可能な仕様データを、ICチップ6に出力させ、その仕様データを用いることで、ICチップ6の仕様を特定できる。よって、発行制御装置1は、特定したICチップ6の仕様に対応した処理を行うことができる。また、発行制御装置1は、発行機3に変更を加えることなく、発行機3を介して、ICチップ6の仕様を特定できる。
【0033】
(3)ICカード発行システム100は、発行制御装置1が処理対象にする入力データ7を、共通部と、個別優先部とを有するものにすることで、ICチップ6の仕様による差を、そのまま個別優先部のデータにすることができる。よって、入力データ7の内容をみるだけで、仕様ごとの差が分かりやすいものにできる。また、仕様ごとの差を個別優先部のデータにすればいいので、入力データ7を作成しやすい。
例えば、共通部を最新の仕様に対応するものにし、古い仕様に対応するものを個別優先部にすることで、入力データ7から発行データを生成するプログラムの開発者がバージョン(履歴)の管理をしやすくできる。
(4)ICカード発行システム100は、発行制御装置1が処理対象にする入力データ7を、ICチップ6の仕様に対応した複数の個別データを有するものにすることで、ICチップ6の仕様ごとにデータを独立して用意するので、入力データ7から発行データを生成するプログラムを簡易なものにできる。
(5)ICカード発行システム100は、発行制御装置1が処理対象にする入力データ7を、発行用タグを定義した個別データを含むことで、例外的な処理を可能にできる。
【0034】
(6)ICカード発行システム100は、発行制御装置1が処理対象にする入力データ7が暗号化されたデータであっても、暗号化装置4を用いることで、復号でき、復号された入力データ7を使用して発行データを出力する処理ができる。よって、ICカード発行システム100内の閉じられた環境でのみ暗号化されたデータを復号して処理するので、セキュリティが保たれる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、上述した実施形態及び後述する変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0036】
(変形形態)
(1)本実施形態では、発行制御装置で処理する入力データは、3つのパターンのいずれも含む場合を説明したが、パターン1とパターン2を含む場合等、一部のパターンにより構成されるものであってもよい。
(2)本実施形態では、発行制御装置を、発行機とは別の装置として説明した。しかし、発行機に、発行制御装置の機能を持たせるようにしてもよい。
(3)本実施形態では、発行制御装置で処理する入力データを、USBメモリ等の外部記憶装置から受け付けるものとして説明した。しかし、入力データを、他のコンピュータから通信ネットワークを介して受け付けてもよいし、発行制御装置の操作部から入力してもよい。」

(2)先願発明
ア 先願発明1
上記(1)より、先願6の明細書、特許請求の範囲及び図面には、下記の発明(以下、「先願発明1」という。)が記載されていると認められる。
「I/F部59と、ICチップ6とを備えるICカード5であって、
前記ICチップ6は、CPU60と、RAM62と、ROM63と、EEPROM64とからなり、
前記CPU60は、前記ICチップ6の仕様を確認するためのコマンドを受け付けて、当該コマンドを実行し、当該コマンドに対応する処理結果を取得して当該処理結果を出力し、前記EEPROM64に対する記憶処理命令を受信し、前記EEPROM64に書き込み対象データを記憶する処理を行う、
ICカード5。」
イ 先願発明2
上記(1)より、先願6の明細書、特許請求の範囲及び図面には、下記の発明(以下、「先願発明2」という。)が記載されていると認められる。
「I/F部59と、ICチップ6とを備えるICカード5であって、前記ICチップ6は、CPU60と、RAM62と、ROM63と、EEPROM64とからなる、ICカード5において、
前記ICチップ6の仕様を確認するためのコマンドを受け付けて、当該コマンドを実行し、当該コマンドに対応する処理結果を取得して当該処理結果を出力し、前記EEPROM64に対する記憶処理命令を受信し、前記EEPROM64に書き込み対象データを記憶する処理を行う、
方法。」
ウ 先願発明3
上記(1)より、先願6の明細書、特許請求の範囲及び図面には、下記の発明(以下、「先願発明3」という。)が記載されていると認められる。
「I/F部59と、ICチップ6とを備えるICカード5であって、前記ICチップ6は、CPU60と、RAM62と、ROM63と、EEPROM64とからなるICカード5に対して、前記ICチップ6の仕様を確認するためのコマンドを出力し、
前記コマンドにより、前記ICチップ6のCPLCを取得し、
前記CPLCに含まれる製造日やメーカ名の識別情報により、前記ICチップ6の仕様を判断し、
前記ICチップ6の仕様に対応した個別データに基づいて、『タグ』『長さ』『値』の各項目からなるデータを連続させた連続データである発行データを出力し、
前記発行データを使用して前記ICカード5を発行する処理を、コンピュータに実行させるICチップ発行プログラム。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1との対比・判断
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「MPU7、RAM5、EEPROM6、及び通信制御部1」は、本願発明1の「ICモジュール」に相当するといえる。
また、引用発明1の「ICカード10」は、後述する相違点1-1を除き、本願発明1の「ICカード」に相当するといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明1は、「ICモジュールにより構成されるICカード」である点において共通し、後述する相違点1-1において相違するといえる。
(イ)引用発明1の「EEPROM6」は、本願発明1の「記憶手段」に相当するといえる。
また、引用発明1の「参照テーブル41」及び「識別情報」は、後述する相違点1-2を除き、それぞれ、本願発明1の「ファイル構成を示す情報」及び「設定される一連のデータの識別情報」に相当するといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明1は、「ICモジュール」が「設定される一連のデータの識別情報を含むファイル構成を示す情報を事前に記憶する記憶手段」を備える点において共通し、後述する相違点1-2において相違するといえる。
(ウ)引用発明1の「MPU7」は、後述する相違点1-3を除き、本願発明1の「制御手段」に相当するといえる。
また、引用発明1の「データブロック」に含まれる「識別コード(ID)」及び「登録データ」は、それぞれ、本願発明1の「第1の識別情報」及び「第1の識別情報に対応する第1のデータ」に相当するといえる。
また、引用発明1の「発行処理コマンド、識別コード(ID)、及び登録データを含むデータブロック」は、後述する相違点1-3を除き、本願発明1の「第1の識別情報と前記第1の識別情報に対応する第1のデータを含む第2のコマンド」に相当するといえる。
さらに、引用発明1において「当該登録データを前記EEPROM6の前記登録データエリア62に記録する」ことは、本願発明1の「前記第2のコマンドの受信に対応して前記第1のデータを当該ICモジュールに設定する」ことに相当するといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明1は、「ICモジュール」が「第1の識別情報と前記第1の識別情報に対応する第1のデータを含む第2のコマンドを受信し、前記第2のコマンドの受信に対応して前記第1のデータを当該ICモジュールに設定する制御手段」を備える点において共通し、後述する相違点1-3において相違するといえる。
(エ)以上より、本願発明1と引用発明1とは、下記aにおいて一致し、下記bにおいて相違すると認める。
a 一致点
「ICモジュールにより構成されるICカードであって、
前記ICモジュールは、
設定される一連のデータの識別情報を含むファイル構成を示す情報を事前に記憶する記憶手段と、
第1の識別情報と前記第1の識別情報に対応する第1のデータを含む第2のコマンドを受信し、前記第2のコマンドの受信に対応して前記第1のデータを当該ICモジュールに設定する制御手段と、
を備えるICカード。」
b 相違点
・相違点1-1
本願発明1の「ICカード」は、「ICモジュール及び基材により構成される」のに対し、引用発明1は、「ICカード」(ICカード10)が「ICモジュール」(MPU7、RAM5、EEPROM6、及び通信制御部1)により構成されることは特定するものの、「基材」により構成されることは特定しない点。
・相違点1-2
本願発明1の「ファイル構成を示す情報」は「設定される一連のデータ」の「長さ情報」を含むのに対し、引用発明1は、「ファイル構成を示す情報」(参照テーブル41)が「設定される一連のデータ」の「長さ情報」を含むことは特定しない点。
・相違点1-3
本願発明1の「制御手段」は「第1のコマンドを受信し、前記第1のコマンドの受信に対応して前記ファイル構成を示す第1の識別情報と第1の長さ情報とを含む情報を第1のレスポンスとして送信」するものであり、また、「第2のコマンド」は、「前記第1のレスポンスに含まれる前記第1の識別情報と前記第1の長さ情報から前記ファイル構成を示す情報が解析されて送信されるコマンド」であるのに対し、引用発明1はこれらの構成を特定しない点。
イ 判断
相違点1-3について検討する。
引用文献1ないし5には、相違点1-3に係る構成のうち、「第2のコマンド」(すなわち、「第1の識別情報と第1の識別情報に対応する第1のデータを含」むコマンド)が「前記第1のレスポンスに含まれる前記第1の識別情報と前記第1の長さ情報から前記ファイル構成を示す情報が解析されて送信されるコマンド」である点については、記載も示唆もされていない。
なお、引用文献2の段落【0034】ないし【0041】には、リーダ・ライタのデータベース操作解釈部が、無線タグから取得したデータ構造規定情報(本願発明1の「ファイル構成を示す情報」に対応)に基づいて、人物テーブルのカラム「NAME」が保持されたアドレス及びサイズを求め、アドレス及びサイズを指定してデータの読み出し又は書き込みを行うことが記載されていると認められるが、データ構造規定情報を解析して、識別情報と長さ情報を含むコマンドを無線タグに送信することについては、記載も示唆もされておらず、引用発明1に対して引用文献2に記載された発明を適用したとしても、相違点1-3に係る構成を当業者が容易に導出することができたとはいえない。
そして、本願発明1は、相違点1-3に係る構成を備えることにより、「端末はICカードの内部の情報がわからなくても識別情報に従いデータを設定することが可能にな」るという、引用文献1ないし5に記載された発明からは予測することのできない、格別の効果を奏するものである。
したがって、相違点1-1及び1-2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)先願発明1との対比・判断
ア 対比
本願発明1と先願発明1とを対比する。
(ア)先願発明1の「I/F部59」及び「ICチップ6」は、本願発明1の「ICモジュール」に相当するといえる。
また、先願発明1の「ICカード5」は、後述する相違点1-4を除き、本願発明1の「ICカード」に相当するといえる。
そうすると、本願発明1と先願発明1は、「ICモジュールにより構成されるICカード」である点において共通し、後述する相違点1-4において相違するといえる。
(イ)先願発明1の「RAM62」、「ROM63」及び「EEPROM64」は、本願発明1の「記憶手段」に相当するといえる。
そうすると、本願発明1と先願発明1は、「ICモジュール」が「記憶手段」を備える点において共通し、後述する相違点1-5において相違するといえる。
(ウ)先願発明1の「CPU60」は、後述する相違点1-6を除き、本願発明1の「制御手段」に相当するといえる。
また、先願発明1の「ICチップ6の仕様を確認するためのコマンド」及び「コマンドに対応する処理結果」は、後述する相違点1-6を除き、それぞれ、本願発明1の「第1のコマンド」及び「第1のレスポンス」に相当するといえる。
さらに、先願発明1の「EEPROM64に対する記憶処理命令」に「書き込み対象データ」が付随することは明らかであり、当該「書き込み対象データ」及び「EEPROM64に対する記憶処理命令」は、後述する相違点1-6を除き、それぞれ、本願発明1の「第1のデータ」及び「第2のコマンド」に相当するといえる。
そして、先願発明1において、「前記EEPROM64に対する記憶処理命令を受信し、前記EEPROM64に書き込み対象データを記憶する処理を行う」ことは、本願発明1の「前記第2のコマンドの受信に対応して前記第1のデータを当該ICモジュールに設定する」ことに相当するといえる。
そうすると、本願発明1と先願発明1は、「ICモジュール」が、「第1のコマンドを受信し、前記第1のコマンドの受信に対応して第1のレスポンスを送信し、第1のデータを含む第2のコマンドを受信し、前記第2のコマンドの受信に対応して前記第1のデータを当該ICモジュールに設定する制御手段」を備える点において共通し、後述する相違点1-6において相違するといえる。
(エ)以上より、本願発明1と先願発明1とは、下記aにおいて一致し、下記bにおいて相違すると認める。
a 一致点
「ICモジュールにより構成されるICカードであって、
前記ICモジュールは、
記憶手段と、
第1のコマンドを受信し、前記第1のコマンドの受信に対応して第1のレスポンスを送信し、第1のデータを含む第2のコマンドを受信し、前記第2のコマンドの受信に対応して前記第1のデータを当該ICモジュールに設定する制御手段と、
を備えるICカード。」
b 相違点
・相違点1-4
本願発明1の「ICカード」は、「ICモジュール及び基材により構成される」のに対し、先願発明1は、「ICカード」(ICカード5)が「ICモジュール」(I/F部59及びICチップ6)により構成されることは特定するものの、「基材」により構成されることは特定しない点。
・相違点1-5
本願発明1では、「記憶手段」が「設定される一連のデータの識別情報と長さ情報とを含むファイル構成を示す情報を事前に記憶する」のに対し、先願発明1は、「記憶手段」(RAM62、ROM63、及びEEPROM64)が「設定される一連のデータの識別情報と長さ情報とを含むファイル構成を示す情報を事前に記憶する」ことは特定しない点。
・相違点1-6
本願発明1では、「第1のレスポンス」が「前記ファイル構成を示す第1の識別情報と第1の長さ情報とを含む情報」であり、また、「第2のコマンド」が「前記第1のレスポンスに含まれる前記第1の識別情報と前記第1の長さ情報から前記ファイル構成を示す情報が解析されて送信されるコマンド」であって「第1の識別情報」を含むのに対し、先願発明1はこれらの構成を特定しない点。
イ 判断
本願発明1は、相違点1-5及び1-6に係る構成を備えることにより、「端末はICカードの内部の情報がわからなくても識別情報に従いデータを設定することが可能にな」るという、先願発明1からは予測することのできない、格別の効果を奏するものである。
したがって、相違点1-5及び1-6が課題解決のための具体的手段における微差であるとはいえないから、相違点1-4について検討するまでもなく、本願発明1と先願発明1が同一であるとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものである。
そうすると、上記1(1)のとおり、本願発明1が引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本願発明2ないし4も、引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、上記1(2)のとおり、本願発明1が先願発明1と同一であるとはいえない以上、本願発明2ないし4も、先願発明1と同一であるとはいえない。

3 本願発明5について
(1)引用発明2との対比・判断
ア 対比
本願発明5と引用発明2とを対比する。
(ア)引用発明2の「ICカード10」は、本願発明5の「ICカード」に相当するといえる。
また、引用発明2の「参照テーブル41」及び「識別情報(ID)」は、後述する相違点5-1を除き、それぞれ、本願発明5の「ファイル構成を示す情報」及び「設定される一連のデータの識別情報」に相当するといえる。
そうすると、本願発明5と引用発明2は、「設定される一連のデータの識別情報を含むファイル構成を示す情報を事前に記憶するICカード」における方法である点において共通し、後述する相違点5-1において相違するといえる。
(イ)引用発明2の「データブロック」に含まれる「識別コード(ID)」及び「登録データ」は、それぞれ、本願発明5の「第1の識別情報」及び「第1の識別情報に対応する第1のデータ」に相当するといえる。
また、引用発明2の「発行処理コマンド11、識別コード(ID)、及び登録データを含むデータブロック」は、後述する相違点5-2を除き、本願発明5の「第1の識別情報と前記第1の識別情報に対応する第1のデータを含む第2のコマンド」に相当するといえる。
そうすると、本願発明5と引用発明2は、「第1の識別情報と前記第1の識別情報に対応する第1のデータを含む第2のコマンドを受信」する点において共通し、後述する相違点5-2において相違するといえる。
(ウ)引用発明2において「当該登録データを前記EEPROM6の登録データエリア62に記録する」ことは、本願発明5の「前記第2のコマンドの受信に対応して前記第1のデータを当該ICカードに設定する」ことに相当するといえる。
(エ)引用発明2の「ICカード10のデータ処理方法」は、「情報処理方法」であるといえる。
(オ)以上より、本願発明5と引用発明2とは、下記aにおいて一致し、下記bにおいて相違すると認める。
a 一致点
「設定される一連のデータの識別情報を含むファイル構成を示す情報を事前に記憶するICカードにおいて、
第1の識別情報と前記第1の識別情報に対応する第1のデータを含む第2のコマンドを受信し、
前記第2のコマンドの受信に対応して前記第1のデータを当該ICカードに設定する情報処理方法。」
b 相違点
・相違点5-1
本願発明5の「ファイル構成を示す情報」は「設定される一連のデータ」の「長さ情報」を含むのに対し、引用発明2は、「ファイル構成を示す情報」(参照テーブル41)が「設定される一連のデータ」の「長さ情報」を含むことは特定しない点。
・相違点5-2
本願発明5は「第1のコマンドを受信」し、「前記第1のコマンドの受信に対応して前記ファイル構成を示す第1の識別情報と第1の長さ情報とを含む情報を第1のレスポンスとして送信」するものであり、また、「第2のコマンド」は、「前記第1のレスポンスに含まれる前記第1の識別情報と前記第1の長さ情報から前記ファイル構成を示す情報が解析されて送信されるコマンド」であるのに対し、引用発明2はこれらの構成を特定しない点。
イ 判断
相違点5-2について検討する。
引用文献1ないし5には、相違点5-2に係る構成のうち、「第2のコマンド」(すなわち、「第1の識別情報と第1の識別情報に対応する第1のデータを含」むコマンド)が「前記第1のレスポンスに含まれる前記第1の識別情報と前記第1の長さ情報から前記ファイル構成を示す情報が解析されて送信されるコマンド」である点については、記載も示唆もされていない。
そして、本願発明5は、相違点5-2に係る構成を備えることにより、「端末はICカードの内部の情報がわからなくても識別情報に従いデータを設定することが可能にな」るという、引用文献1ないし5に記載された発明からは予測することのできない、格別の効果を奏するものである。
したがって、相違点5-1について検討するまでもなく、本願発明5は、引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)先願発明2との対比・判断
ア 対比
本願発明5と先願発明2とを対比する。
(ア)先願発明2の「ICカード5」は、後述する相違点5-3を除き、本願発明5の「ICカード」に相当するといえる。
(イ)先願発明2の「ICチップ6の仕様を確認するためのコマンド」は、本願発明5の「第1のコマンド」に相当するといえる。
そうすると、本願発明5と先願発明2は、「第1のコマンドを受信し」との点において共通するといえる。
(ウ)先願発明2の「コマンドに対応する処理結果」は、後述する相違点5-4を除き、本願発明5の「第1のレスポンス」に相当するといえる。
そうすると、本願発明5と先願発明2は、「前記第1のコマンドの受信に対応して第1のレスポンスを送信し」との点において共通し、後述する相違点5-4において相違するといえる。
(エ)先願発明2の「EEPROM64に対する記憶処理命令」に「書き込み対象データ」が付随することは明らかであり、当該「書き込み対象データ」及び「EEPROM64に対する記憶処理命令」は、後述する相違点5-4を除き、それぞれ、本願発明5の「第1のデータ」及び「第2のコマンド」に相当するといえる。
そうすると、本願発明5と先願発明2は、「第1のデータを含む第2のコマンドを受信し」との点において共通し、後述する相違点5-4において相違するといえる。
(オ)先願発明2において、「前記EEPROM64に対する記憶処理命令を受信し、前記EEPROM64に書き込み対象データを記憶する処理を行う」ことは、本願発明5の「前記第2のコマンドの受信に対応して前記第1のデータを当該ICモジュールに設定する」ことに相当するといえる。
(カ)先願発明2の「方法」は、「情報処理方法」であるといえる。
(キ)以上より、本願発明5と先願発明2とは、下記aにおいて一致し、下記bにおいて相違すると認める。
a 一致点
「ICカードにおいて、
第1のコマンドを受信し、
前記第1のコマンドの受信に対応して第1のレスポンスを送信し、
第1のデータを含む第2のコマンドを受信し、
前記第2のコマンドの受信に対応して前記第1のデータを当該ICカードに設定する情報処理方法。」
b 相違点
・相違点5-3
本願発明5の「ICカード」は「設定される一連のデータの識別情報と長さ情報とを含むファイル構成を示す情報を事前に記憶する」のに対し、先願発明2は当該構成を特定しない点。
・相違点5-4
本願発明5では、「第1のレスポンス」が「前記ファイル構成を示す第1の識別情報と第1の長さ情報とを含む情報」であり、また、「第2のコマンド」が「前記第1のレスポンスに含まれる前記第1の識別情報と前記第1の長さ情報から前記ファイル構成を示す情報が解析されて送信されるコマンド」であって「第1の識別情報」を含むのに対し、先願発明2はこれらの構成を特定しない点。
イ 判断
本願発明5は、相違点5-3及び5-4に係る構成を備えることにより、「端末はICカードの内部の情報がわからなくても識別情報に従いデータを設定することが可能にな」るという、先願発明2からは予測することのできない、格別の効果を奏するものである。
したがって、相違点5-3及び5-4が課題解決のための具体的手段における微差であるとはいえないから、本願発明5と先願発明2が同一であるとはいえない。

4 本願発明6について
(1)引用発明3との対比・判断
ア 対比
本願発明6と引用発明3とを対比する。
(ア)引用発明3の「ICカード10」は、本願発明6の「ICカード」に相当するといえる。
また、引用発明3の「参照テーブル41」及び「識別情報(ID)」は、後述する相違点6-1を除き、それぞれ、本願発明6の「ファイル構成を示す情報」及び「設定される一連のデータの識別情報」に相当するといえる。
そうすると、本願発明6と引用発明3は、「設定される一連のデータの識別情報を含むファイル構成を示す情報を事前に記憶するICカード」に対する処理に係る発明である点において共通し、後述する相違点6-1において相違するといえる。
(イ)引用発明3の「データブロック」に含まれる「識別コード(ID)」及び「登録データ」は、それぞれ、本願発明6の「第1の識別情報」及び「第1の識別情報に対応する第1のデータ」に相当するといえる。
また、引用発明3の「発行処理コマンド、識別コード(ID)、及び登録データを含むデータブロック」は、後述する相違点6-2を除き、本願発明6の「第1の識別情報と前記第1の識別情報に対応する第1のデータを含む第2のコマンド」に相当するといえる。
そうすると、本願発明6と引用発明3は、「第1の識別情報と前記第1の識別情報に対応する第1のデータを含む第2のコマンドを送信」する点において共通し、後述する相違点6-2において相違するといえる。
(ウ)本願発明6と引用発明3は、「ICカード」に対する処理に係る発明である点において共通し、後述する相違点6-3において相違するといえる。
(エ)以上より、本願発明6と引用発明3とは、下記aにおいて一致し、下記bにおいて相違すると認める。
a 一致点
「設定される一連のデータの識別情報を含むファイル構成を示す情報を事前に記憶するICカードに対して、
第1の識別情報と前記第1の識別情報に対応する第1のデータを含む第2のコマンドを送信する手順
に係る発明。」
b 相違点
・相違点6-1
本願発明6の「ファイル構成を示す情報」は「設定される一連のデータ」の「長さ情報」を含むのに対し、引用発明3は、「ファイル構成を示す情報」(参照テーブル41)が「設定される一連のデータ」の「長さ情報」を含むことは特定しない点。
・相違点6-2
本願発明6は「第1のコマンドを送信」し、「前記第1のコマンドの送信に対応して前記ファイル構成を示す第1の識別情報と第1の長さ情報とを含む情報を第1のレスポンスとして受信」するものであり、また、「第2のコマンド」は、「前記第1のレスポンスに含まれる前記第1の識別情報と前記第1の長さ情報から前記ファイル構成を示す情報を解析して送信するコマンド」であるのに対し、引用発明3はこれらの構成を特定しない点。
・相違点6-3
本願発明6は「手順」を「コンピュータに実行させるためのプログラムを記憶したコンピュータ読取可能な情報記憶媒体」であるのに対し、引用発明3は「データ処理方法」である点。
イ 判断
相違点6-2について検討する。
引用文献1ないし5には、相違点6-2に係る構成のうち、「第2のコマンド」(すなわち、「第1の識別情報と第1の識別情報に対応する第1のデータを含」むコマンド)が「前記第1のレスポンスに含まれる前記第1の識別情報と前記第1の長さ情報から前記ファイル構成を示す情報を解析して送信するコマンド」である点については、記載も示唆もされていない。
そして、本願発明6は、相違点6-2に係る構成を備えることにより、「端末はICカードの内部の情報がわからなくても識別情報に従いデータを設定することが可能にな」るという、引用文献1ないし5に記載された発明からは予測することのできない、格別の効果を奏するものである。
したがって、相違点6-1及び6-3について検討するまでもなく、本願発明6は、引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)先願発明3との対比・判断
ア 対比
本願発明6と先願発明3とを対比する。
(ア)先願発明3の「ICカード5」は、後述する相違点6-4を除き、本願発明6の「ICカード」に相当するといえる。
そうすると、本願発明6と先願発明3は、「ICカード」に対する処理に係る発明である点において共通し、後述する相違点6-4において相違するといえる。
(イ)先願発明3の「ICチップ6の仕様を確認するためのコマンド」は、本願発明6の「第1のコマンド」に相当するといえる。
そうすると、本願発明6と先願発明3は、「第1のコマンドを送信する」点において共通するといえる。
(ウ)先願発明3の「CPLC」は、後述する相違点6-5を除き、本願発明6の「第1のレスポンス」に相当するといえる。
そうすると、本願発明6と先願発明3は、「前記第1のコマンドの送信に対応して第1のレスポンスを受信する」点において共通し、後述する相違点6-5において相違するといえる。
(エ)以上より、本願発明6と先願発明3とは、下記aにおいて一致し、下記bにおいて相違すると認める。
a 一致点
「ICカードに対して、
第1のコマンドを送信する手順と、
前記第1のコマンドの送信に対応して第1のレスポンスを受信する手順と、
をコンピュータに実行させるためのプログラムに係る発明。」
b 相違点
・相違点6-4
本願発明6では、「ICカード」が「設定される一連のデータの識別情報と長さ情報とを含むファイル構成を示す情報を事前に記憶する」のに対し、先願発明3は当該構成を特定しない点。
・相違点6-5
本願発明6では、「第1のレスポンス」が「前記ファイル構成を示す第1の識別情報と第1の長さ情報とを含む情報」であり、また、「前記第1のレスポンスに含まれる前記第1の識別情報と前記第1の長さ情報から前記ファイル構成を示す情報を解析して送信するコマンドであって、前記第1の識別情報と前記第1の識別情報に対応する第1のデータを含む第2のコマンドを送信する手順」を有するのに対し、先願発明3はこれらの構成を特定しない点。
・相違点6-6
本願発明6は「プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な情報記憶媒体」であるのに対し、先願発明3は「ICチップ発行プログラム」である点。
イ 判断
本願発明6は、相違点6-4及び6-5に係る構成を備えることにより、「端末はICカードの内部の情報がわからなくても識別情報に従いデータを設定することが可能にな」るという、先願発明3からは予測することのできない、格別の効果を奏するものである。
そうすると、相違点6-4及び6-5が課題解決のための具体的手段における微差であるとはいえないから、相違点6-6について検討するまでもなく、本願発明6と先願発明3が同一であるとはいえない。

5 本願発明7について
(1)引用発明3との対比・判断
ア 対比
本願発明7と引用発明3とを対比する。
(ア)引用発明3の「ICカード10」は、本願発明7の「ICカード」に相当するといえる。
また、引用発明3の「参照テーブル41」及び「識別情報(ID)」は、後述する相違点7-1を除き、それぞれ、本願発明7の「ファイル構成を示す情報」及び「設定される一連のデータの識別情報」に相当するといえる。
そうすると、本願発明7と引用発明3は、「設定される一連のデータの識別情報を含むファイル構成を示す情報を事前に記憶するICカード」に対する処理に係る発明である点において共通し、後述する相違点7-1において相違するといえる。
(イ)引用発明3の「データブロック」に含まれる「識別コード(ID)」及び「登録データ15、それぞれ、本願発明7の「第1の識別情報」及び「第1の識別情報に対応する第1のデータ」に相当するといえる。
また、引用発明3の「発行処理コマンド、識別コード(ID)、及び登録データを含むデータブロック」は、後述する相違点7-2を除き、本願発明7の「第1の識別情報と前記第1の識別情報に対応する第1のデータを含む第2のコマンド」に相当するといえる。
そうすると、本願発明7と引用発明3は、「第1の識別情報と前記第1の識別情報に対応する第1のデータを含む第2のコマンドを送信」する点において共通し、後述する相違点7-2において相違するといえる。
(ウ)本願発明7と引用発明3は、「ICカード」に対する処理に係る発明である点において共通し、後述する相違点7-3において相違するといえる。
(エ)以上より、本願発明7と引用発明3とは、下記aにおいて一致し、下記bにおいて相違すると認める。
a 一致点
「設定される一連のデータの識別情報を含むファイル構成を示す情報を事前に記憶するICカードに対して、
第1の識別情報と前記第1の識別情報に対応する第1のデータを含む第2のコマンドを送信する手順
に係る発明。」
b 相違点
・相違点7-1
本願発明7の「ファイル構成を示す情報」は「設定される一連のデータ」の「長さ情報」を含むのに対し、引用発明3は、「ファイル構成を示す情報」(参照テーブル41)が「設定される一連のデータ」の「長さ情報」を含むことは特定しない点。
・相違点7-2
本願発明7は「第1のコマンドを送信」し、「前記第1のコマンドの送信に対応して前記ファイル構成を示す第1の識別情報と第1の長さ情報とを含む情報を第1のレスポンスとして受信」するものであり、また、「第2のコマンド」は、「前記第1のレスポンスに含まれる前記第1の識別情報と前記第1の長さ情報から前記ファイル構成を示す情報を解析して送信するコマンド」であるのに対し、引用発明3はこれらの構成を特定しない点。
・相違点7-3
本願発明7は「手順」を「コンピュータに実行させるためのプログラム」であるのに対し、引用発明3は「データ処理方法」である点。
イ 判断
相違点7-2について検討する。
引用文献1ないし5には、相違点7-2に係る構成のうち、「第2のコマンド」(すなわち、「第1の識別情報と第1の識別情報に対応する第1のデータを含」むコマンド)が「前記第1のレスポンスに含まれる前記第1の識別情報と前記第1の長さ情報から前記ファイル構成を示す情報を解析して送信するコマンド」である点については、記載も示唆もされていない。
そして、本願発明7は、相違点7-2に係る構成を備えることにより、「端末はICカードの内部の情報がわからなくても識別情報に従いデータを設定することが可能にな」るという、引用文献1ないし5に記載された発明からは予測することのできない、格別の効果を奏するものである。
したがって、相違点7-1及び7-3について検討するまでもなく、本願発明7は、引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)先願発明3との対比
ア 対比
本願発明7と先願発明3とを対比する。
(ア)先願発明3の「ICカード5」は、後述する相違点7-4を除き、本願発明7の「ICカード」に相当するといえる。
そうすると、本願発明7と先願発明3は、「ICカード」に対する処理に係る発明である点において共通し、後述する相違点7-4において相違するといえる。
(イ)先願発明3の「ICチップ6の仕様を確認するためのコマンド」は、本願発明7の「第1のコマンド」に相当するといえる。
そうすると、本願発明7と先願発明3は、「第1のコマンドを送信する」点において共通するといえる。
(ウ)先願発明3の「CPLC」は、後述する相違点7-5を除き、本願発明7の「第1のレスポンス」に相当するといえる。
そうすると、本願発明7と先願発明3は、「前記第1のコマンドの送信に対応して第1のレスポンスを受信する」点において共通し、後述する相違点7-5において相違するといえる。
(エ)以上より、本願発明7と先願発明3とは、下記aにおいて一致し、下記bにおいて相違すると認める。
a 一致点
「ICカードに対して、
第1のコマンドを送信する手順と、
前記第1のコマンドの送信に対応して第1のレスポンスを受信する手順と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。」
b 相違点
・相違点7-4
本願発明7では、「ICカード」が「設定される一連のデータの識別情報と長さ情報とを含むファイル構成を示す情報を事前に記憶する」のに対し、先願発明3は当該構成を特定しない点。
・相違点7-5
本願発明7では、「第1のレスポンス」が「前記ファイル構成を示す第1の識別情報と第1の長さ情報とを含む情報」であり、また、「前記第1のレスポンスに含まれる前記第1の識別情報と前記第1の長さ情報から前記ファイル構成を示す情報を解析して送信するコマンドであって、前記第1の識別情報と前記第1の識別情報に対応する第1のデータを含む第2のコマンドを送信する手順」を有するのに対し、先願発明3はこれらの構成を特定しない点。
イ 判断
本願発明7は、相違点7-4及び7-5に係る構成を備えることにより、「端末はICカードの内部の情報がわからなくても識別情報に従いデータを設定することが可能にな」るという、先願発明3からは予測することのできない、格別の効果を奏するものである。
そうすると、相違点7-4及び7-5が課題解決のための具体的手段における微差であるとはいえないから、本願発明7と先願発明3が同一であるとはいえない。

6 本願発明8について
本願発明8は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものである。
そうすると、上記1(1)のとおり、本願発明1が引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本願発明8も、引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、上記1(2)のとおり、本願発明1が先願発明1と同一であるとはいえない以上、本願発明8も、先願発明1と同一であるとはいえない。

7 対比・判断のまとめ
以上のとおり、本願発明1ないし8は、引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明1ないし8は、先願発明1ないし3と同一であるとはいえない。

第7 原査定についての判断
上記のとおり、本願発明1ないし8は、先願発明1ないし3と同一であるとはいえないから、原査定の理由1によっては、本願を拒絶することはできない。
また、上記のとおり、本願発明1ないし8は、引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、原査定の理由2によっては、本願を拒絶することはできない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第8 当審拒絶理由についての判断
上記のとおり、本願発明1ないし8は、引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第9 結言
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-04-16 
出願番号 特願2013-193550(P2013-193550)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
P 1 8・ 161- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 須藤 竜也
小田 浩
発明の名称 ICカード、情報処理方法、情報記憶媒体、及び情報処理プログラム  
代理人 野河 信久  
代理人 峰 隆司  
代理人 鵜飼 健  
代理人 河野 直樹  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 直樹  
代理人 野河 信久  
代理人 鵜飼 健  
代理人 蔵田 昌俊  
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