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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02B |
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管理番号 | 1339610 |
審判番号 | 不服2017-7640 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-29 |
確定日 | 2018-05-08 |
事件の表示 | 特願2012- 57122「表示体」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月26日出願公開、特開2013-190629、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年3月14日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成27年11月26日付け :拒絶理由通知書 平成28年1月22日 :意見書、手続補正書の提出 平成28年6月29日付け :拒絶理由通知書 平成28年9月5日 :意見書、手続補正書の提出 平成29年2月22日付け :平成28年9月5日付け手続補正書でした補正の却下の決定、拒絶査定(以下、「原査定」とする。) 平成29年5月29日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定の拒絶の理由は、概略、 [A]本願の平成28年1月22日に手続補正がなされた請求項1から6、9及び10に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない、 [B]本願の平成28年1月22日に手続補正がなされた請求項1から10に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、 引用文献1:特開2011-118034号公報 引用文献2:特開2004-126326号公報 [C]本願の平成28年1月22日に手続補正がなされた請求項1から10に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない、というものである。 1.請求項1には、「1つの面において区分された複数の面」と記載されているが、「1つの面」及び「複数の面」における「面」について異同が不明であり、例えば、同一の「面」であれば、「1つ(単数)の面」と「複数の面」とは両立しないから、当該記載を含む請求項1に係る発明の内容を不明確にしている。 2.補正後の請求項3、5には、「文字,記号,絵柄などの少なくとも1種類のパターンを表す」と記載されているが、あいまいな表現である「など」を伴うために、「1種類のパターン」の示す範囲が不明であり、この結果、当該記載を含む請求項3、5に係る発明の内容を不明確にしている。 第3 本願発明 本願の請求項1から9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」から「本願発明9」という。)は、平成29年5月29日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1から9に記載された以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 表示体の面上に区分された複数の面を有する表示体であって、 前記複数の面はそれぞれ複数の単位画素が連なる単位画素群で構成され、 この単位画素群の中の複数の単位画素は、それぞれ斜面の向きが少なくとも一様な方向を持った微小凹凸で構成され、かつ、前記複数の面の各々に対応して前記微小凹凸の斜面の方向が定められ、 前記微小凹凸は、断面が鋸歯状の格子構造を有し、 前記微小凹凸のピッチは、3μm?100μmの範囲に含まれ、 ある方向から光が入射したとき、前記複数の面の各々から明るさの異なる光を射出して前記複数の面の各々から射出される光によって多面形状を表示するようにし、 前記単位画素群を構成する複数の単位画素に、前記微小凹凸の高さ(又は深さ)及び前記微小凹凸の繰り返しピッチの何れか一方又は両方の値が異なる変化画素を、パターン像を表すように配置したことを特徴とする表示体。 【請求項2】 請求項1に記載の表示体において、 前記各単位画素の大きさは、縦寸法及び横寸法とも300μm以下であることを特徴とする表示体。 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の表示体において、 前記パターン像が文字,記号,絵柄の少なくとも1種類を表すように配置することを特徴とする表示体。 【請求項4】 請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の表示体において、 前記単位画素群を構成する各単位画素の微小凹凸の高さは、100nm?600nmの範囲であって、当該高さが異なる単位画素間では当該高さの比が1.5以上であることを特徴とする表示体。 【請求項5】 請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の表示体において、 前記表示体が、文字,記号,絵柄の少なくとも1つ以上のパターンを表す場合には20μm以下の同一ピッチの前記単位画素を配置することを特徴とする表示体。 【請求項6】 請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の表示体において、 前記単位画素群を構成する複数の単位画素は、前記斜面が少なくとも2種類の方向を有することを特徴とする表示体。 【請求項7】 請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載の表示体において、 前記複数の面の各々に対応させて前記鋸歯状の格子の方向を任意の方向に回転させて前記微小凹凸の斜面を設定することを特徴とする表示体。 【請求項8】 請求項1ないし請求項7の何れか一項に記載の表示体において、 前記単位画素の各微小凹凸は、直線構造となっていることを特徴とする表示体。 【請求項9】 請求項1ないし請求項8の何れか一項に記載の表示体において、 前記微小凹凸は、全部又は一部に反射層を設けたことを特徴とする表示体。」 第4 新規性、進歩性について 1.引用文献、引用発明等 (1)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2011-118034号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当合議体が付した。) ア 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 上述したように、従来、立体画像を再生する画像形成体として用いられているホログラムの場合には、照明光源の影響により像がぼけやすいという問題があり、レンチキュラーレンズを用いた画像形成体は、厚みが薄くできないため、セキュリティなどの用途で使用するのが困難であるという問題点があった。 【0009】 本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、画像形成体の厚みを十分な薄さにでき、照明光の影響による画質劣化の少ない、立体画像を再現する画像形成体を提供することを目的にしている。」 イ 「【0055】 また、図1(d)は、図1(a)の異方性拡散反射体12の表面を拡大した別の態様の拡大図である。図1(d)に示す例では、凹凸構造領域15に配列される凹部又は凸部RPは、二次元的に配列している。このような場合でも照明光を照射した際に特定の方向及び角度にのみ散乱光を射出することができる。 【0056】 複数の凹部又は凸部RPの配列は、例えば、正方格子、矩形格子又は三角格子に近い配列をなしている。これら凹部又は凸部RPの配列を制御することにより、凹凸構造領域15から射出される散乱光の射出角及び射出方向などをより精度良く調整することができる。図1(d)には、一例として、複数の凸部が、X方向及びY方向に二次元的に配列して矩形格子をなしている場合を描いている。なお、完全に規則的に並べると、この周期に対応した回折光が生じてしまうため、現実には、これらの位置から僅かな距離ランダムにずらして配置する必要がある。 【0057】 また、凹部又は凸部RPの各々は、種々の形状でありうる。凹部又は凸部RPの各々は、角錐、円錐及び半紡錘形状などの順テーパ形状を有していることが好ましく、特に半紡錘形状であることが好ましい。半紡錘形状を採用することによって、散乱光が射出される特定の方向及び角度をさらに限定することも可能である。また、順テーパ形状を有していることにより、凹凸構造領域15を法線方向から観察した場合に、凹凸構造領域15の正反射光の反射率をより小さくすることもできる。 【0058】 今回図示はしないが、凹部又は凸部RPを、角錐、円錐及び半紡錘形状とした場合でも、凹部又は凸部RPの長辺長さや短辺長さ、高さやピッチにバラツキがあっても良く、照明光を照射した際に特定の方向及び角度にのみ散乱光を射出することができれば良い。複数の溝の格子定数、方位、及び深さなどを制御することにより、凹凸構造領域15から射出される回折光及び散乱光の射出角及び射出方向などを任意に調整することができる。 【0059】 なお、凹凸構造領域15に配列される凹部又は凸部RPの長辺の長さは3μm以上10μm以下が好ましく、凹凸構造領域の隣接する凸部間又は凹部間のピッチは1?2μm程度が好ましい。凹部又は凸部RPが有する長辺および短辺において、長辺方向のピッチと短辺方向のピッチを比較して、長辺方向のピッチが長いほうが好ましい。」 ウ 「【図1】 」 エ 「【0083】 図5は、立体画像を表示する画像形成体の一例を示す概略図である。台形の異方性拡散反射体52と、台形の異方性拡散反射体53と、台形の異方性拡散反射体54と、台形の異方性拡散反射体55と、四角形の、等方性の拡散光を射出する等方性拡散反射体56を有し、異方性拡散反射体52の一辺と異方性拡散反射体53の一辺とが左上斜線151を介して隣接して配列され、異方性拡散反射体53の一辺と異方性拡散反射体54の一辺とが左下斜線152を介して隣接して配列され、異方性拡散反射体54の一辺と異方性拡散反射体55の一辺とが右下斜線153を介して隣接して配列され、異方性拡散反射体55の一辺と異方性拡散反射体52の一辺とが左上斜線154を介して隣接して配列されている。 【0084】 等方性拡散反射体は、複数の凹部又は凸部が二次元的に配列された凹凸構造領域を一方の主面に含む樹脂層と、前記一方の主面に支持され、凹凸構造領域の少なくとも一部を被覆する反射層を備えた構造を持ち、拡散光の拡がり方が方向によってほぼ一定である等方性の拡散光を射出する。例えば、本発明で異方性拡散反射体として用いられている、表面レリーフ構造において、ある方向の凸凹のピッチと、それと垂直な方向でのピッチがほぼ同じになるようにすることなどで実現できる。この場合に、反射層などの構成や、用いる材料などは、異方性拡散反射体と同じものを用いることができる。 【0085】 さらに、等方性拡散反射体56の一辺と異方性拡散反射体52の一辺とが上横線155を介して隣接して配列され、等方性拡散反射体56の一辺と異方性拡散反射体53の一辺とが左縦線156を介して隣接して配列され、等方性拡散反射体56の一辺と異方性拡散反射体54の一辺とが下横線157を介して隣接して配列され、等方性拡散反射体56の一辺と異方性拡散反射体55の一辺とが右縦線158を介して隣接して配列されており、隣接した夫々の異方性拡散反射体の辺の長さが同一である構造となっている。 【0086】 つまり、図5における画像表示体50は、ピラミッド状の四角錐を底面に平行な面で切ったような画像を用いている。この図の、中央の面には等方性の拡散反射体56が、その周りの4つの各面には、それぞれ異なる方向に広く拡散するような異方性拡散反射体52、53、54、55が設置されている。 【0087】 この中で、中央の面に用いられている、等方拡散反射体56は、画像形成体の面に平行な光沢面に相当するため、光沢面の光方に相当する(1)?(5)の条件を満足している。一方、周りの異方性拡散反射体52、53、54、55についても同様に(1)?(5)の条件を満足している。また、等方拡散反射体は正反射方向近辺のみで明るく見え、異方性の反射体とは異なる明るさになるので(6)の条件も満足される。 【0088】 このため、このような構成の場合にも、奥行きが比較的小さく光沢が強くでるような多面体の持つ、明るさ分布をうまく表現することができる。このため、十分な立体感のある画像を得ることができる。なお、この例では、画像形成体面の面に平行な面を等方拡散面に置き換えているが、置き換える面は必ずしも平行な面である必要はない。また、本図では正方形を表現しているが、直方体やその他の四角形を表現しても良い。また上述の異方性拡散反射体の集合体をマトリクス状に複数配置して画像形成体としても良い。」 オ 「【図5】 」 (2)引用発明 上記引用文献1には、異方性拡散反射体が図1(d)に示される形状であって、【0057】の記載において特に好ましいとされる、凸部が半紡錘形状の順テーパ形状を有する図5に示される表示体に関する以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「異方性拡散反射体は、複数の凸部が、X方向及びY方向に二次元的に配列して矩形格子をなし、半紡錘形状の順テーパ形状を有し、凸部RPが有する長辺および短辺において、長辺方向のピッチと短辺方向のピッチを比較して、長辺方向のピッチが長く、矩形格子をなす位置から僅かな距離ランダムにずらして配置され、 台形の異方性拡散反射体52と、台形の異方性拡散反射体53と、台形の異方性拡散反射体54と、台形の異方性拡散反射体55と、四角形の、等方性の拡散光を射出する等方性拡散反射体56を有し、異方性拡散反射体52の一辺と異方性拡散反射体53の一辺とが左上斜線151を介して隣接して配列され、異方性拡散反射体53の一辺と異方性拡散反射体54の一辺とが左下斜線152を介して隣接して配列され、異方性拡散反射体54の一辺と異方性拡散反射体55の一辺とが右下斜線153を介して隣接して配列され、異方性拡散反射体55の一辺と異方性拡散反射体52の一辺とが左上斜線154を介して隣接して配列され、 等方性拡散反射体は、拡散光の拡がり方が方向によってほぼ一定である等方性の拡散光を射出し、異方性拡散反射体として用いられている表面レリーフ構造において、ある方向の凸凹のピッチと、それと垂直な方向でのピッチがほぼ同じになるようにすることで実現され、 等方性拡散反射体56の一辺と異方性拡散反射体52の一辺とが上横線155を介して隣接して配列され、等方性拡散反射体56の一辺と異方性拡散反射体53の一辺とが左縦線156を介して隣接して配列され、等方性拡散反射体56の一辺と異方性拡散反射体54の一辺とが下横線157を介して隣接して配列され、等方性拡散反射体56の一辺と異方性拡散反射体55の一辺とが右縦線158を介して隣接して配列されており、隣接した夫々の異方性拡散反射体の辺の長さが同一である構造となり、 中央の面には等方性の拡散反射体56が、その周りの4つの各面には、それぞれ異なる方向に広く拡散するような異方性拡散反射体52、53、54、55が設置され、 ピラミッド状の四角錐を底面に平行な面で切ったような画像を用いた 画像表示体50。」 2.対比・判断 (1)本願発明1について ア 対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 引用発明は、「台形の異方性拡散反射体」52から55を有しており、これらは、本願発明1の「複数の面」に相当する。引用発明の「台形の異方性拡散反射体」52から55は、「画像表示体」に設けられ、複数の区域に分けられているのであるから、本願発明1の「複数の面」の「表示体の面上に区分された」との要件を満たす。 引用発明の「異方性拡散反射体」は、「複数の凸部」を有し、「複数の凸部が、X方向及びY方向に二次元的に配列して矩形格子をなし」、所定の方向に光を「広く拡散」している。よって、引用発明の「異方性拡散反射体」は、「凸部」により光を拡散しており、凸部が「微小」といえるのは技術常識であるから、引用発明の「異方性拡散反射体」と、本願発明1の「複数の面」とは、「微小凹凸で構成」されるとの点で共通する。 引用発明の「異方性拡散反射体52、53、54、55」は、「それぞれ異なる方向に広く拡散する」ため、本願発明1の「複数の面」の「ある方向から光が入射したとき、前記複数の面の各々から明るさの異なる光を射出」するとの要件を満たす。引用発明は、中央の面には等方性の拡散反射体56が、その周りの4つの各面には、それぞれ異なる方向に広く拡散するような異方性拡散反射体52、53、54、55が設置され、ピラミッド状の四角錐を底面に平行な面で切ったような画像を用い」ており、本願発明1の「前記複数の面」の「各々から射出される光によって多面形状を表示する」との要件を満たす。 したがって、引用発明と本願発明1は、上記の点で共通点を有する「表示体」といえる。 イ 一致点、相違点 以上の対比結果を踏まえると、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 一致点 「表示体の面上に区分された複数の面を有する表示体であって、 前記複数の面は微小凹凸で構成され、 ある方向から光が入射したとき、前記複数の面の各々から明るさの異なる光を射出して前記複数の面の各々から射出される光によって多面形状を表示するようにした 表示体。」 相違点 本願発明1は、「複数の面」が「それぞれ複数の単位画素が連なる単位画素群で構成され、この単位画素群の中の複数の単位画素は、それぞれ斜面の向きが少なくとも一様な方向を持った微小凹凸で構成され、かつ、前記複数の面の各々に対応して前記微小凹凸の斜面の方向が定められ」、「前記微小凹凸は、断面が鋸歯状の格子構造を有し」、「前記微小凹凸のピッチは、3μm?100μmの範囲に含まれ」、「前記単位画素群を構成する複数の単位画素に、前記微小凹凸の高さ(又は深さ)及び前記微小凹凸の繰り返しピッチの何れか一方又は両方の値が異なる変化画素を、パターン像を表すように配置」しているのに対し、 引用発明の「異方性拡散反射体」の「複数の凸部」は、半紡錘形状の順テーパ形状であり、矩形格子をなす位置から僅かな距離ランダムにずらして配置され、長辺方向にもピッチを有するため、必ずしも「断面が鋸歯状の格子構造を有」するとはいえず、「それぞれ斜面の向きが少なくとも一様な方向を持」ち、「前記複数の面の各々に対応して前記微小凹凸の斜面の方向が定められ」るともいえず、更に、引用発明は、凸部のピッチが不明であり、「前記単位画素群を構成する複数の単位画素に、前記微小凹凸の高さ(又は深さ)及び前記微小凹凸の繰り返しピッチの何れか一方又は両方の値が異なる変化画素を、パターン像を表すように配置」しているかも不明な点。 ウ 相違点についての判断 上記相違点について検討する。 本願発明1において、「単位画素群の中の複数の単位画素」は、「それぞれ斜面の向きが少なくとも一様な方向を持った微小凹凸で構成され、かつ、前記複数の面の各々に対応して前記微小凹凸の斜面の方向が定められ」、その「単位画素」に、「前記微小凹凸の高さ(又は深さ)及び前記微小凹凸の繰り返しピッチの何れか一方又は両方の値が異なる変化画素」を配置したものである。したがって、変化画素も、微小凹凸を有し、その斜面の向きが少なくとも一様な方向を持ったものといえる。 引用文献1には、特に、「斜面の向きが少なくとも一様な方向を持った微小凹凸で構成され」る異方性拡散反射体の区域内に、高さ(又は深さ)やピッチを変えた部分をパターン像を表すように配置することについては記載されていない。引用文献1には、「凸部RPの長辺長さや短辺長さ、高さやピッチにバラツキがあっても良」いとの記載はあるものの(【0058】)、引用発明は、上記のように必ずしも斜面の向きを一様にした格子構造ではなく、高さやピッチについては、特定の方向に散乱光を射出できる範囲であれば良いことを示した記載と考えられ、高さやピッチのバラツキをパターン像を表すように配置することについて記載されているとはいえない。 また、引用文献1には「複数の溝の格子定数、方位、及び深さなどを制御することにより、凹凸構造領域15から射出される回折光及び散乱光の射出角及び射出方向などを任意に調整することができる」(【0058】)、「各集合体の配列のピッチや密度を変化させることによってさらに複雑な立体画像を再現することも可能である。」(【0099】)との記載もあるが、これらも、あくまで異方性拡散反射体の区域内の射出される回折光及び散乱光の調整に関するものと考えられ、斜面の向きを一様にした単位画素群内でピッチ等を変えてパターン像を表すことを示唆したものとはいえず、引用文献1の記載を総合しても、引用発明について、「前記微小凹凸は、断面が鋸歯状の格子構造を有し」、「前記単位画素群を構成する複数の単位画素に、前記微小凹凸の高さ(又は深さ)及び前記微小凹凸の繰り返しピッチの何れか一方又は両方の値が異なる変化画素を、パターン像を表すように配置」することついて、動機付けや示唆があるとはいえない。 他方で、本願発明1は、「これにより、多面形状の擬似的な立体感と、各面の中に形成される変化画素6によるパターンとによる相互作用によって、多数のバリエーションを有する表示体1を増やすことが可能となる。」(【0063】)という、引用文献1に記載された効果とは異質な効果を奏しており、この効果は当業者といえども、引用文献1の記載全体や技術常識を勘案しても、容易に想到し得たものともいえない。 そして、引用文献1の他の例示等の記載、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2やその他の引用文献等を検討しても、本願発明1は、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 したがって、本願発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (2)本願発明2から9について 本願発明2から9は、本願発明1の「表示体」にさらなる限定を付加するものである。 したがって、本願発明2から9も、本願発明1と同様に、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第5 明確性について 本願発明1は、平成29年5月29日付けの手続補正書による補正により「表示体の面上に区分された複数の面を有する表示体」とされている。この補正により、「複数の面」が、「表示体の面上に区分された」ものとされ、区域などともいえる区分された面の集合であるとされており、不明確とはいえない。 本願発明3は、平成29年5月29日付けの手続補正書による補正により「文字,記号,絵柄の少なくとも1種類を表す」とされている。本願発明5は、平成29年5月29日付けの手続補正書による補正により「文字,記号,絵柄の少なくとも1つ以上のパターンを表す」とされている。これらの補正により、「パターン」が「文字,記号,絵柄」がいずれか(あるいは、その組み合わせ)であることがわかり、不明確とはいえない。 そして、本願発明1から9は、その他に不明確な記載はない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-04-24 |
出願番号 | 特願2012-57122(P2012-57122) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B) P 1 8・ 113- WY (G02B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小西 隆 |
特許庁審判長 |
鉄 豊郎 |
特許庁審判官 |
多田 達也 宮澤 浩 |
発明の名称 | 表示体 |