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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06K
管理番号 1339638
審判番号 不服2017-34  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-04 
確定日 2018-04-18 
事件の表示 特願2014-539088「NFCトランシーバにおける適応型信号スケーリング」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月 2日国際公開、WO2013/063514、平成26年12月 8日国内公表、特表2014-532927〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2012年10月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年10月26日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年5月27日付けで拒絶理由通知がなされ、平成27年10月2日付けで意見書と手続補正書が提出され、平成28年1月15日付けで拒絶理由通知がなされ、平成28年4月19日付けで意見書が提出され、平成28年8月23日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成29年1月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、当審において平成29年7月18日付けで拒絶理由通知がなされ、平成29年10月25日付けで意見書と手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年10月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
タグモードにおける負荷変調用に構成されたプログラム可能な負荷変調要素と、
前記タグモードにおいてトランシーバによって適応的に減衰された入力信号から取得された電力量を測定するための検知要素と、前記適応的に減衰された入力信号が前記適応的に減衰された入力信号の振幅と最大閾値振幅との比較に応じて変化する、
前記プログラム可能な負荷変調要素及び前記検知要素の各々に結合され、測定された前記取得された電力量を最小取得電力閾値と比較し、測定された前記取得された電力量と前記最小取得電力閾値との比較に応じて前記プログラム可能な負荷変調要素の負荷変調度を調整するように構成されたコントローラとを備える、トランシーバ。」


3.引用発明・引用文献の技術
(1)引用文献1
当審で通知した平成29年7月18日付け拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2009-272697号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。(下線は当審において付加した。以下同じ)

ア.「【0029】
<本発明の一実施形態>
本発明の一実施形態について説明する。本実施形態は、非接触通信する通信装置に関し、特に、アンテナ端電圧を検知し、その検知結果に応じてアンテナ特性を変化させることで通信不可領域の発生を回避する技術に関する。当該技術は、所定の閾値に基づいてアンテナ特性が制御される点に1つの特徴を有する。
【0030】
[通信装置100の機能構成]
まず、図1を参照しながら、本実施形態に係る通信装置100の機能構成について説明する。図1は、本実施形態に係る通信装置100の機能構成を示す説明図である。
【0031】
図1に示すように、通信装置100は、主に、アンテナ102と、電圧検知部104と、抵抗付加部106と、特性制御部108と、記憶部110と、通信部112とにより構成されている。例えば、この通信装置100は、通信部12とアンテナ14とを備える他の通信装置10との間で非接触通信することが可能である。
【0032】
上記の他、図1の通信装置100には、保護素子を記載した。この保護素子は、アンテナ端から入力される電圧が高い場合に装置内部の回路を保護するものである。保護素子としては、例えば、バリスタ、ツェナーダイオードやサージ用保護回路が用いられる。但し、本実施形態に係る通信装置100は、後述する特性制御部108の構成により、この保護素子を設けなくてもよい。この場合、保護素子を設けない分だけ回路構成が簡略化されると共に、回路面積、及び製造コストが低減される。
【0033】
以下では、通信装置100のアンテナ102と他の通信装置10のアンテナ14との間の距離dを非接触通信距離と呼ぶことにする。尚、通信装置100は、例えば、非接触ICカードにより構成されうる。一方、他の通信装置10は、例えば、非接触ICカードとの間で通信することが可能なリーダ/ライタにより構成されうる。
【0034】
(電圧検知部104)
電圧検知部104は、アンテナ102のアンテナ端電圧を検知する手段である。電圧検知部104は、通信装置100がアンテナ102を介して搬送波又は変調波を受信した際に、そのアンテナ102のアンテナ端電圧を検知する。電圧検知部104により検知されたアンテナ端電圧は、特性制御部108に入力される。
【0035】
(抵抗付加部106)
抵抗付加部106は、アンテナ102の負荷を変化させる手段である。抵抗付加部106は、例えば、特性制御部108から入力された制御信号に応じて、アンテナ102に対して抵抗を付加し、或いは、付加した抵抗を削除して、アンテナ102の負荷を切り替える。つまり、抵抗付加部106は、アンテナ102の特性を変更するための変更手段である。また、抵抗付加部106は、通信部112から取得した返信信号に応じてアンテナの負荷を切り替えることで、アンテナ102から発生する磁場を変調する。この変調された磁場により返信信号が送信される。尚、ここで言う返信信号とは、他の通信装置10から送信された送信信号に応じて返信される信号のことを意味する。
【0036】
但し、抵抗付加部106は、負荷変調により返信信号を送信するための負荷の切り替えと、アンテナ102の特性を変更するための負荷の増減とを行う。返信信号を送信する場合、抵抗付加部106は、所定の抵抗値を有する負荷をON/OFFし、アンテナ102の端部に接続された容量によるインピーダンスを切り替えて返信信号を送信する。一方、アンテナ102の特性を変更するための負荷の増減を行う場合、抵抗付加部106は、上記の容量に対して並列に接続された負荷の大きさを増減させることで、当該容量によるインピーダンスの周波数特性を変化させる。
【0037】
(特性制御部108、記憶部110)
特性制御部108は、電圧検知部104により検知されたアンテナ102のアンテナ端電圧に応じてアンテナ102の特性を制御する制御手段である。特に、特性制御部108は、記憶部110に記録された一又は複数の閾値に基づいてアンテナ102の特性を制御する。このとき、特性制御部108は、抵抗付加部106によりアンテナ102の抵抗値を増減させることでアンテナ102の特性を制御する。尚、記憶部110には、一又は複数の閾値(例えば、第1閾値th1、第2閾値th2)が予め記録されている。これらの閾値については後述する。
【0038】
(通信部112)
通信部112は、返信信号を生成し、当該返信信号に応じて抵抗付加部106を制御することで信号を送信する手段である。例えば、通信部112は、抵抗付加部106を介してアンテナ102の負荷を繰り返し切り替えることで、アンテナ102から発生する磁場の強度を周期的に変化させることができる。そのため、通信部112は、アンテナ102の負荷を切り替えて搬送波にASK(Amplitude Shift Keying)方式の信号変調を施すことができる。」

イ.「【0056】
(閾値の設定方法について)
図3?図6を参照しながら、本実施形態に係る閾値の設定方法について説明する。図3?図6は、本実施形態に係る閾値の設定方法を示す説明図である。尚、ここでは、説明の都合上、2つの閾値(第1閾値、第2閾値)を設定する方法について述べるが、本実施形態は、これに限定されるものではない。
【0057】
(図3:非接触ICカード側での負荷制御方法について)
まず、図3を参照しながら、非接触ICカード側での負荷制御方法について説明する。図3は、非接触ICカード(通信装置100)におけるアンテナ端電圧の変化と閾値の設定例とを示した説明図である。
【0058】
図3(a1)に示すように、非接触通信距離dが小さくなるにつれてアンテナ端電圧Vaは増加する。通信装置100は、電圧検知部104によりアンテナ端電圧Vaを検知している。アンテナ端電圧Vaが第1閾値(符号U)に到達すると、特性制御部108は、抵抗付加部106を介してアンテナ102の負荷を増加させる。すると、アンテナ端電圧Vaは所定幅Sdだけ低下する。
【0059】
もし、負荷を増加させなければ、図3(a2)に示すように、アンテナ端電圧Vaが増加し続けてしまう。しかし、負荷の増加によりアンテナ端電圧Vaが第1閾値以下に抑制されるため、過電圧状態にはならず、上記の保護素子が不要になるのである。
【0060】
既に述べた通り、アンテナ端に接続された容量によるインピーダンスは、この容量に対して並列に接続された負荷が増減することで変化する。つまり、対向するリーダ/ライタ側から見たインピーダンスの周波数特性(図2A等を参照)は、非接触ICカード側の容量に対して並列に接続された負荷の増減により変化する。例えば、この負荷が大きい場合、非接触ICカードの容量によるインピーダンスへの影響が小さくなり、非接触ICカード側の共振系がインピーダンスへ与える影響が小さくなる。そのため、負荷が増加されると、リーダ/ライタ側から見たインピーダンスの周波数特性の、アンテナ間結合によるピークのシフト量及びQ値の変化量が抑えられる。その結果、図2C、図2D、図2Fに示したようなインピーダンスの周波数特性の状態を回避することが可能になるのである。
【0061】
尚、所定幅Sdは、アンテナ102を含めた周辺回路等のインピーダンスにより決定される値である。従って、理論計算、或いは、実験等により予め推定することも可能である。特性制御部108によるアンテナ102の負荷増加は、非接触通信距離dを大きくするのと実質的に同一の効果を奏する。ここで言う負荷増加は、上記の負荷変調でON/OFFされる負荷に対して並列接続された負荷の増加を意味している点に注意されたい。
【0062】
特性制御部108によりアンテナ102の負荷が増加された後、非接触通信距離dを大きくすると、図3(b1)に示すようにアンテナ端電圧Vaは減少する。アンテナ端電圧Vaが第2閾値(符号L)に到達すると、特性制御部108は、抵抗付加部106を介してアンテナ102の負荷を低減させる。すると、アンテナ端電圧Vaは所定幅Suだけ増加する。もし、負荷を低減させなければ、図3(b2)に示すように、アンテナ端電圧Vaが減少し続けてしまう。しかし、負荷の低減によりアンテナ端電圧Vaが第2閾値以上に維持される。その結果、電力伝送の不足が発生せずに済む。
【0063】
尚、所定幅Suは、上記の所定幅Sdと同様にアンテナ102を含めた周辺回路等のインピーダンスにより決定されるため、理論計算、或いは、実験等により予め推定することが可能である。特性制御部108によるアンテナ102の負荷低減は、非接触通信距離dを小さくするのと実質的に同一の効果を奏する。ここで言う負荷低減は、上記の負荷変調でON/OFFされる負荷に対して並列接続された負荷の低減を意味している点に注意されたい。
【0064】
さらに、特性制御部108によりアンテナ102の負荷が低減された後で非接触通信距離dを小さくすると、図3(c1)に示すようにアンテナ端電圧Vaは増加する。このように、受信側の通信装置100は、非接触通信距離dに応じて変化するアンテナ端電圧Vaを検知し、そのアンテナ端電圧Vaが所定の閾値に到達した段階でアンテナ102の負荷を変化させることにより、通信不可領域の発生を回避することができる。
【0065】
但し、第1閾値を通信不可領域におけるアンテナ端電圧よりも小さな値に設定している点が重要である。この設定により、通信不可領域の発生が回避されるのである。一方、第2閾値は、所定の最大通信可能距離を確保することが可能なアンテナ端電圧よりも大きな値に設定されている。このように第2閾値を設定しておくことで、最大通信可能距離を維持することが可能になる。つまり、上記の第1及び第2閾値を設定することで、最大通信可能距離を維持しながら、通信不可領域の発生を回避することができるようになる。」

ウ.「【0082】
[抵抗付加部106、特性制御部108等の具体的構成例]
次に、図7?図10を参照しながら、通信装置100が備える抵抗付加部106、及び特性制御部108等の具体的な回路構成の例について説明する。
【0083】
(図7:送信側の回路構成例)
図7は、受信側の通信装置100が備える抵抗付加部106、及び特性制御部108等の具体的な回路構成例を示す説明図である。当該回路構成は、アンテナ端電圧のフィードバックを利用した通信装置100における負荷制御回路の一例である。そこで、以下では、この回路構成を負荷制御回路と呼ぶことにする。
【0084】
図7に示すように、本実施形態に係る負荷制御回路は、例えば、負荷変調ブロック170と、特性制御ブロック180と、整流回路162と、コンパレータ164とを含む。
【0085】
(負荷変調ブロック170)
負荷変調ブロック170は、抵抗付加部106の一機能に対応し、通信部112による信号入力に応じて負荷変調を施すことで信号を送信する手段である。負荷変調ブロック170は、例えば、スイッチ154と、抵抗156とにより構成される。尚、スイッチ154と抵抗156とは直列に接続されている。スイッチ154は、通信部112による信号入力に応じてオン/オフが切り替えられ、アンテナ102の負荷を抵抗156の分だけ変調することができる。そのため、スイッチ154の切り替えに応じたアンテナ特性の変化を利用してASK方式の信号変調が実現される。
【0086】
(特性制御ブロック180、コンパレータ164)
特性制御ブロック180は、抵抗付加部106の一機能に対応し、コンパレータ164による入力信号に応じてアンテナ特性を切り替える手段である。特性制御ブロック180は、例えば、スイッチ158と、抵抗160とにより構成される。尚、抵抗160に代えてコンデンサを用いてもよい。また、スイッチ158と抵抗160とは直列に接続されている。さらに、特性制御ブロック180は、負荷変調ブロック170に対して並列に接続されている。
【0087】
コンパレータ164は、特性制御部108の一例である。まず、コンパレータ164は、整流回路162により直流に変換されたアンテナ端電圧と第1閾値とを比較し、そのアンテナ端電圧が第1閾値に達した場合(図3の符号U)、スイッチ158をオンに切り替える。スイッチ158がオンになると、アンテナ102の負荷は、抵抗160が付加された分だけ増加してアンテナ特性が変化する(図3の符号Sd)。さらに、コンパレータ164は、整流回路162により入力されたアンテナ端電圧と第2閾値とを比較し、そのアンテナ端電圧が第2閾値に達した場合(図3の符号L)、スイッチ158をオフに切り替える。スイッチ158がオフになると、アンテナ102の負荷は、抵抗160が離隔された分だけ減少してアンテナ特性が変化する(図3の符号Su)。
【0088】
(図8:変形例)
ここで、図8を参照しながら、本実施形態に係る負荷制御回路の変形例として、多段並列抵抗型の負荷制御回路について説明する。図8は、本実施形態に係る負荷制御回路の変形例を示す説明図である。尚、図7の構成と実質的に同一の構成要素については重複説明を避けるため、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0089】
図8に示すように、本変形例に係る負荷制御回路は、例えば、負荷変調ブロック170と、特性制御ブロック280と、整流回路162と、コンパレータ264とを含む。上記の負荷制御回路との相違点は、主に、特性制御ブロック280、及びコンパレータ264の構成の違いにある。
【0090】
(特性制御ブロック280、コンパレータ264)
特性制御ブロック280は、複数のスイッチ258(SW1?SWn)と、複数の抵抗260とにより構成されている。また、一のスイッチ258には、一の抵抗260が直列に接続されている。そして、スイッチ258と抵抗260との組は、互いに並列に接続されている。そのため、オンにするスイッチ258の個数を変えることで、アンテナ102に付加される負荷量を調整することが可能である。
【0091】
例えば、図5(A)又は図6(A)に示したように、一の閾値に達してアンテナ特性が切り替えられた直後に他の閾値を越えるような場合、オンに切り替えられた複数のスイッチ258の一部だけをオフに切り替えることで再び一の閾値を越えてしまう問題を回避することができる。或いは、一の閾値に達した際に、他の閾値を越えないように、他の閾値に達する直前までオンにするスイッチ258の数を徐々に増加させてもよい。
【0092】
また、コンパレータ264は、整流回路162から入力されるアンテナ端電圧を2以上の複数の閾値(第1閾値?第n閾値)と比較し、アンテナ特性の切り替え後のアンテナ端電圧が所定の閾値間に位置するように、オンに切り替えるスイッチ258の数を決定してもよい。尚、複数のスイッチ258は、所定の順序で切り替えられてもよいし、任意の順序で切り替えられてもよい。例えば、複数の抵抗260の抵抗値が互いに異なるような場合に、スイッチ258を切り替える組み合わせを適切に制御することで、より効率良くアンテナの負荷を切り替えることができる。
【0093】
上記のように、本実施形態に係る負荷制御回路は、例えば、スイッチ158、258と、抵抗160、260と、コンパレータ164、264とを組み合わせることで実現される。そして、アンテナ102の負荷制御は、主に、コンパレータ164、264から入力された信号に応じてスイッチ158、258が切り替わることで実現される。このとき、コンパレータ164、264は、図3、図5(A)、及び図6(A)を参照しながら説明した制御方法に基づいてスイッチ158、258を制御する。」

エ.「【0121】
以上、非接触通信装置の装置構成例について説明した。当該非接触通信装置は、例えば、携帯電話、携帯情報端末、各種の通信機器、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、或いは、ゲーム機や情報家電等であってもよい。また、上記の非接触通信装置が有する機能又は構成要素の一部又は全部を内蔵した各種の機器についても、上記実施形態の技術的範囲に含まれる。もちろん、上記の各構成要素が有する機能をコンピュータに実現させるためのプログラムや当該プログラムが記録された記録媒体についても上記実施形態の技術的範囲に含まれることは言うまでもない。」


・上記ア.の段落【0036】には、抵抗付加部106は、負荷変調により返信信号を送信するための負荷の切り替えと、アンテナ102の特性を変更するための負荷の増減とを行うことが、また、上記ウ.の段落【0085】には、抵抗付加部106の、通負荷変調により返信信号を送信するための負荷の切り替える機能に対応した負荷変調ブロック170が、スイッチ154と、抵抗156とにより構成され、スイッチ154と抵抗156とは直列に接続され、スイッチ154は、通信部112による信号入力に応じてオン/オフが切り替えられ、アンテナ102の負荷を抵抗156の分だけ変調すること、また、段落【0086】には、抵抗付加部106の、アンテナ102の特性を変更するための負荷の増減を行う機能に対応した特性制御ブロック180が、スイッチ158と、抵抗160とにより構成され、スイッチ158と抵抗160とは直列に接続され、さらに、特性制御ブロック180は、負荷変調ブロック170に対して並列に接続されている、ことが記載されている。
さらに、段落【0088】-【0090】、図8には、特性制御ブロック180の変形例として、特性制御ブロック280を、複数のスイッチ258(SW1?SWn)と、複数の抵抗260とにより構成し、また、一のスイッチ258には、一の抵抗260が直列に接続され、スイッチ258と抵抗260との組は、互いに並列に接続され、オンにするスイッチ258の個数を変えることで、アンテナ102に付加される負荷量を調整することが可能である、ことが記載されている。
したがって、特性制御ブロックに関して上記変形例に注目すれば、引用文献1には、抵抗付加部106は、負荷変調により返信信号を送信するための負荷の切り替える負荷変調ブロック170、アンテナ102の特性を変更するための負荷の増減を行う特性制御ブロック280を有し、負荷変調ブロック170は、スイッチ154と、抵抗156とにより構成され、スイッチ154と抵抗156とは直列に接続され、スイッチ154は、通信部112による信号入力に応じてオン/オフが切り替えられ、アンテナ102の負荷を抵抗156の分だけ変調するものであって、特性制御ブロック280は、複数のスイッチ258(SW1?SWn)と、複数の抵抗260とにより構成され、一のスイッチ258には、一の抵抗260が直列に接続され、スイッチ258と抵抗260との組は、互いに並列に接続され、オンにするスイッチ258の個数を変えることで、アンテナ102に付加される負荷量を調整することが可能であって、さらに、負荷変調ブロック170に対して並列に接続されている、ことが記載されているといえる。
・上記ア.の段落【0037】には、特性制御部108は、電圧検知部104により検知されたアンテナ102のアンテナ端電圧に応じてアンテナ102の特性を制御する制御手段であって、記憶部110に記録された一又は複数の閾値に基づいてアンテナ102の特性を制御し、抵抗付加部106によりアンテナ102の抵抗値を増減させることでアンテナ102の特性を制御することが、また、上記ウ.の段落【0087】には、特性制御部108はコンパレータ164であって、コンパレータ164は、整流回路162により直流に変換されたアンテナ端電圧と第1閾値とを比較し、そのアンテナ端電圧が第1閾値に達した場合、スイッチ158をオンに切り替え、さらに、コンパレータ164は、整流回路162により入力されたアンテナ端電圧と第2閾値とを比較し、そのアンテナ端電圧が第2閾値に達した場合、スイッチ158をオフに切り替える、ことが記載されている。
したがって、引用文献1には、特性制御部108は、電圧検知部104により検知されたアンテナ102のアンテナ端電圧に応じてアンテナ102の特性を制御する制御手段であるコンパレータ164であって、コンパレータ164は、整流回路162により直流に変換されたアンテナ端電圧と第1閾値とを比較し、そのアンテナ端電圧が第1閾値に達した場合、スイッチ258をオンに切り替え、さらに、コンパレータ164は、整流回路162により入力されたアンテナ端電圧と第2閾値とを比較し、そのアンテナ端電圧が第2閾値に達した場合、スイッチ258をオフに切り替える、ことが記載されているといえる。
・上記ウ.の段落【0091】、図5(A)には、特性制御ブロック180を変形例の特性制御ブロック280とした際には、アンテナ端電圧Vaが第1閾値に達した際に、第2閾値を越えないように、第1閾値に達する直前までオンにするスイッチ258の数を徐々に増加させる、ことが記載されており、引用文献1の図6(A)には、アンテナ端電圧Vaが第2閾値に達した際には、第1閾値を越えないように、第1閾値に達する直前までオフにするスイッチ258の数を徐々に増加させる、ことが記載されているといえる。
また、上記ア.の段落【0033】には、非接触通信距離dは、通信装置100のアンテナ102と他の通信装置10のアンテナ14との間の距離であること、さらに、上記イ.の段落【0058】、【0062】には、非接触通信距離dが小さくなるにつれてアンテナ端電圧Vaは増加し、非接触通信距離dが大きくなるとアンテナ端電圧Vaは減少し、電圧検知部104により検知しているアンテナ端電圧Vaが第1閾値以上になると過電圧状態になり、第2閾値以下になると電力伝送の不足が発生する、ことが記載されている。
してみれば、引用文献1には、通信装置100のアンテナ102と他の通信装置10のアンテナ14との間の距離である非接触通信距離dに応じて、アンテナ端電圧Vaが変化し、電圧検知部104により検知しているアンテナ端電圧Vaが第1閾値以上になると過電圧状態になり、第2閾値以下になると電力伝送の不足が発生することから、特性制御部108は、アンテナ端電圧Vaが第2閾値に達した際に、第1閾値を越えないように、第1閾値に達する直前までオフにするスイッチ258の数を徐々に増加させる、ことが記載されているといえる。

以上総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「アンテナ102と、電圧検知部104と、抵抗付加部106と、特性制御部108と、記憶部110と、通信部112とにより構成され、通信部12とアンテナ14とを備える他の通信装置10との間で非接触通信をすることが可能である通信装置100において、
前記電圧検知部104は、通信装置100がアンテナ102を介して搬送波又は変調波を受信した際に、そのアンテナ102のアンテナ端電圧Vaを検知するものであり、検知されたアンテナ端電圧Vaは、特性制御部108に入力されるものであり、
前記抵抗付加部106は、負荷変調により返信信号を送信するための負荷の切り替える負荷変調ブロック170と、アンテナ102の特性を変更するための負荷の増減を行う特性制御ブロック280からなり、
前記負荷変調ブロック170は、スイッチ154と、抵抗156とにより構成され、スイッチ154と抵抗156とは直列に接続され、スイッチ154は、通信部112による信号入力に応じてオン/オフが切り替えられ、アンテナ102の負荷を抵抗156の分だけ変調するものであり、
前記特性制御ブロック280は、複数のスイッチ258(SW1?SWn)と、複数の抵抗260とにより構成され、一のスイッチ258には、一の抵抗260が直列に接続され、スイッチ258と抵抗260との組は、互いに並列に接続され、オンにするスイッチ258の個数を変えることで、アンテナ102に付加される負荷量を調整することが可能であって、さらに、負荷変調ブロック170に対して並列に接続されており、
前記特性制御部108は、電圧検知部104により検知されたアンテナ102のアンテナ端電圧Vaに応じてアンテナ102の特性を制御する制御手段であるコンパレータ164であり、
前記コンパレータ164は、整流回路162により直流に変換されたアンテナ端電圧Vaと第1閾値とを比較し、そのアンテナ端電圧Vaが第1閾値に達した場合、スイッチ258をオンに切り替え、さらに、整流回路162により入力されたアンテナ端電圧と第2閾値とを比較し、そのアンテナ端電圧Vaが第2閾値に達した場合、スイッチ258をオフに切り替えるものであり、
前記記憶部110には、第1閾値、及び第2閾値が予め記録されるものであり、
前記通信部112は、返信信号を生成し、当該返信信号に応じて抵抗付加部106を制御することで信号を送信する手段であって、
通信装置100のアンテナ102と他の通信装置10のアンテナ14との間の距離である非接触通信距離dに応じて、アンテナ端電圧Vaが変化し、電圧検知部104により検知しているアンテナ端電圧Vaが第1閾値以上になると過電圧状態になり、第2閾値以下になると電力伝送の不足が発生することから、特性制御部108は、アンテナ端電圧Vaが第2閾値に達した際に、第1閾値を越えないように、第1閾値に達する直前までオフにするスイッチ258の数を徐々に増加させる、
通信装置100。」


(2)引用文献2
当審で通知した平成29年7月18日付け拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2007-288718号公報以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

ア.「【0002】
近年,非接触型IC(Integrated Circuit)カードや,RFID(Radio Frequency Identification)タグなど,無線通信を利用して読み書き装置(以下,「リーダ/ライタ」という。)と通信可能な,非接触型の情報処理端末が普及している。
【0003】
非接触型ICカードやRFIDタグは,装置自体に電源を有しておらず,リーダ/ライタが備える送受信アンテナとしての送信コイルに電流を流すことにより発生される磁界が,非接触型ICカードやRFIDタグ電圧が備える送受信アンテナとしての受信コイルを通過するときに,磁束に応じて発生される電圧(以下,「誘起電圧」という。)を電源として駆動する。すなわち,非接触型ICカードやRFIDタグは,リーダ/ライタの送信コイルから送られる磁界のエネルギーを受信コイルで受けて,駆動に必要な電力を得る。
【0004】
また,非接触型ICカードやRFIDタグは,非接触型ICカードやRFIDタグが備える負荷を有効化/無効化することにより,リーダ/ライタに対するインピーダンスを変動させる。ここで,上記のように負荷を有効化/無効化することにより,リーダ/ライタに対するインピーダンスを変動させることは,負荷変調と呼ばれる。
【0005】 ・・・中略・・・
【0006】
一般的に,リーダ/ライタと,非接触型ICカードやRFIDタグとの距離が離れる程,非接触型ICカードやRFIDタグの受信コイルが,リーダ/ライタから受ける磁界の強さは小さくなり,誘起電圧もまた小さくなる。
【0007】・・・中略・・・
【0008】・・・中略・・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら,情報処理端末が,リーダ/ライタから得る磁界のエネルギーが小さいとき,すなわち誘起電圧が小さいときや,搬送波として使用している特定の周波数で共振されず,誘起電圧が小さくなるときなど,情報処理端末が磁界から得た電力の大きさが小さいときに負荷変調を行った場合,負荷変調に係る抵抗などの負荷で電力を消費することにより,情報処理端末の駆動に必要な電力が得られず,情報処理端末が動作不能となることが起こりうる。この場合,リーダ/ライタと情報処理端末とが通信が不能となるだけでなく,通信に係るデータの破損や,予期しないデータがリーダ/ライタ側で認識されるなど,様々な問題が生じる可能性がある。
【0011】
以下,図6に基づいて,従来の情報処理端末における問題を説明する。図6は,従来の情報処理端末における負荷変調に係る回路を示す説明図である。
【0012】
図6を参照すると,従来の情報処理端末における負荷変調に係る回路は,固有の抵抗値Rをもつ抵抗Rfと,ハイレベルとローレベルとの2値化された信号である応答信号S5に基づいてオン/オフされるスイッチの役割を果たすN(Negative)チャネル型MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ(以下,「NMOSトランジスタ」という。)Tr2とから構成される。従来の情報処理端末における負荷変調に係る回路の一端には,誘起電圧V1が印加され,NMOSトランジスタTr2がオンの場合,すなわち,応答信号S5がハイレベルの信号の場合,もう一方の端がグランドGNDに接続され,誘起電圧V1と抵抗Rfの抵抗値Rに基づいて,従来の情報処理端末における負荷変調に係る回路に電流I4が流れる。また,NMOSトランジスタTr2がオフの場合,すなわち,応答信号S5がローレベルの信号の場合,従来の情報処理端末における負荷変調に係る回路は,オープンとなり,従来の情報処理端末における負荷変調に係る回路に電流I4は流れない。ここで,従来の情報処理端末における負荷変調に係る回路に流れる電流I4は,I4=V1/Rであり,従来の情報処理端末における負荷変調に係る回路で消費される消費電力P3は,P3=R(I4)^(2)=(V1)^(2)/Rとなる。
【0013】
応答信号S5がハイレベルの信号の場合,抵抗Rfの抵抗値Rが小さい程,抵抗Rfに流れる電流I4が大きくなり,消費電力P3もまた大きくなる。電流I4が大きければ,リーダ/ライタからみた従来の情報処理端末側のインピーダンスの変動が大きくなるため,従来の情報処理端末からリーダ/ライタへの信号伝達には有利に働く。しかしながら,このとき,消費電力P3もまた大きいため,誘起電圧V1が小さい場合は,従来の情報処理端末の駆動に必要な電力を確保できず,従来の情報処理端末が正常に駆動できないことが起こりうる。特に,情報処理端末が,ICカードである場合,自身に電源を有さないことが多々あり,駆動に必要な電力を確保できないことは,重大な問題となる。
【0014】
逆に,抵抗Rfの抵抗値Rを大きくすれば,抵抗Rfに流れる電流I4と消費電力P3とを小さくすることができる。この場合,従来の情報処理端末の駆動に必要な電力を確保できない状況が起こる可能性は低くなるが,誘起電圧V1の大小に関わらずリーダ/ライタからみた従来の情報処理端末側のインピーダンスの変動が小さくなるため,従来の情報処理端末からリーダ/ライタへの信号伝達には不利となる。
【0015】
そこで,本発明は,上記問題に鑑みてなされたものであり,本発明の目的とするところは,リーダ/ライタからの磁界のエネルギーが小さい場合においても,リーダ/ライタと確実に通信することが可能な,新規かつ改良された情報処理端末,ICカード,携帯型通信装置,無線通信方法,およびプログラムを提供することにある。」

イ.「【0036】
(第1の実施形態)
図1は,本発明の第1の実施形態に係るリーダ/ライタ150と情報処理端末100とで構成される通信システムを示すブロック図である。
【0037】
図1を参照すると,リーダ/ライタ150は,送受信アンテナ160としての送信コイルL1と,リーダ/ライタ駆動部152とからなり,ホストコンピュータ(Host Computer)170と接続される。また,リーダ/ライタ駆動部152は,搬送波を送信するために送信コイルL1に交流の電流I1を流す送信回路154と,送信コイルL1に流れる電流I1を受ける受信回路156と,信号処理回路158とを備える。リーダ/ライタ150は,電流I1の変化分を検知し,その変化分を本発明の第1の実施形態に係る情報処理端末100からの応答としてとらえ,ホストコンピュータ170と連携して応答に応じた動作を行う。
【0038】
また,本発明の第1の実施形態に係る情報処理端末100は,データ送受信部102と,検波回路106としてのダイオードD1と,電圧レギュレータ(Voltage Regulator)110と,電源部112と,クロック生成部104と,DATA受信部114と,信号処理部116と,負荷変調部108とを備える。データ送受信部102は,リーダ/ライタ150から送信される搬送波を受信し,電磁誘導により交流の誘起電圧Vmを発生させる。検波回路106としてのダイオードD1は,誘起電圧Vmを直流の誘起電圧Vnに整流し,リーダ/ライタ150から送信された搬送波が含む信号を復調する。電圧レギュレータ110は,誘起電圧Vnを平滑,定電圧化し,電圧Vfを出力する。電源部112は,電圧Vfが入力され,情報処理端末100を駆動させる駆動電圧VDDを出力する。クロック生成部104は,駆動電圧VDDにより駆動し,誘起電圧Vmから矩形のクロック信号CLKを生成する。DATA受信部114は,駆動電圧VDDにより駆動し,誘起電圧Vnを増幅してハイレベルとローレベルとの2値化されたデータ信号DSを出力する。信号処理部116は,駆動電圧VDDにより駆動し,クロック信号CLKとデータ信号DSに基づいて,ハイレベルとローレベルとの2値化された応答信号S1を出力する。負荷変調部108は,応答信号S1に基づいて負荷変調を行い,電流I2が出力される。ここで,データ送受信部102は,搬送波を受信する受信コイルL2とコンデンサC1とからなり,一端がグランドGNDに接続される,特定の周波数で共振するように設定された共振回路である。また,負荷変調部108において負荷変調が行われることにより,リーダ/ライタ150からみた情報処理端末100のインピーダンスが変化するが,これを情報処理端末100からリーダ/ライタ150への信号の送信ととらえることができる。なお,情報処理端末100は,上記の構成要素を制御するコンピュータ(不図示)を備えてもよいし,上記いずれかの構成要素が,コンピュータとしての機能を代替することもできる。
【0039】
図2は,本発明の第1の実施形態に係る情報処理端末100の負荷変調部108の構成を詳細に示す説明図である。
【0040】
図2を参照すると,負荷変調部108は,抵抗値Rv1が変化することが可能な抵抗値可変回路118と,抵抗値可変回路118の抵抗値Rv1を変化させる負荷変動レベル制御回路120と,応答信号S1に基づいてオン/オフされるスイッチの役割を果たす,接続回路122としてのNMOSトランジスタTr1とから構成される。
【0041】
負荷変動レベル制御回路120は,少なくとも誘起電圧Vnを検知する電圧検知手段と,検知手段で検知した誘起電圧Vnに応じた抵抗値制御信号S2を出力する抵抗値制御信号出力手段とを備える。抵抗値制御信号出力手段としては,例えば,誘起電圧Vnと抵抗値制御信号S2との対応関係を示すテーブルを用いることなどが挙げられるが,誘起電圧Vnに基づいて抵抗値制御信号S2を出力することができれば,係る形態に限られない。
【0042】
また,抵抗値可変回路118は,例えば,固有の値をもつ抵抗が並列に接続された回路を,抵抗値制御信号S2に基づいてスイッチングする構成をとってもよいし,抵抗値制御信号S2に基づいて抵抗値を変化させることの可能な素子で構成されてもよい。抵抗値可変回路118は,コンデンサやコイルで構成することもできる。
【0043】
また,接続回路122としてのNMOSトランジスタTr1は,応答信号S1がハイレベルの信号の場合は,抵抗値可変回路118とグランドGNDとを接続し,応答信号S1がローレベルの信号の場合は,抵抗値可変回路118とグランドGNDとを非接続とするというように,応答信号S1に基づいて,抵抗値可変回路118を,グランドGNDに接続する。
【0044】・・・中略・・・
【0045】・・・中略・・・
【0046】・・・中略・・・
【0047】・・・中略・・・
【0048】・・・中略・・・
【0049】
したがって,本発明の第1の実施形態に係る情報処理端末100は,誘起電圧Vnが特に小さい場合,従来の情報処理端末と比べて,負荷変調に係る負荷としての抵抗値可変回路118で消費される消費電力P1を小さくすることができ,情報処理端末100の駆動に必要な電力を,従来の情報処理端末よりも多く確保することができる。すなわち,本発明の第1の実施形態に係る情報処理端末100は,リーダ/ライタ150と情報処理端末100とが通信が不能となったり,通信に係るデータの破損や,予期しないデータがリーダ/ライタ150側で認識されるなどの様々な問題が生じる可能性を,従来の情報処理端末よりも大幅に低くすることが可能となる。
【0050】・・・中略・・・
【0051】・・・中略・・・
【0052】
以上のように,本発明の第1の実施形態に係る情報処理端末100は,負荷変調部108において,誘起電圧Vnに基づいて負荷としての抵抗値可変回路118の抵抗値Rv1を変化させることにより,抵抗値可変回路118で消費される消費電力P1を調整する。負荷変調に係る負荷の値を変化させることにより,本発明の第1の実施形態に係る情報処理端末100は,誘起電圧Vnが小さい場合,リーダ/ライタ150と情報処理端末100とが通信が不能となったり,通信に係るデータの破損や,予期しないデータがリーダ/ライタ150側で認識されるなどの様々な問題が生じる可能性を,従来の情報処理端末よりも大幅に低くすることが可能となる。また,本発明の第1の実施形態に係る情報処理端末100は,誘起電圧Vnが大きい場合,情報処理端末100からリーダ/ライタ150へ,従来の情報処理端末よりもより強いデータ信号を送信することが可能となる。
【0053】
また,本発明の第1の実施形態として,情報処理端末100を挙げて説明したが,本発明の第1の実施形態は係る形態に限られず,ICカードや,携帯電話とPHS(Personal Handyphone System)とをはじめとする携帯型通信装置,およびRFIDタグなどの様々な装置に適用することができる。」

・上記(イ)の段落【0053】には、情報処理端末100をRFIDタグとすることができる、ことが記載されている。
・上記(ア)の段落【0003】には、従来の、RFIDタグは、装置自体に電源を有しておらず、リーダ/ライタの送信コイルから送られる磁界のエネルギーを受信コイルで受けて、駆動に必要な電力を得ていたことが、さらに、段落【0010】には、引用文献2は、そのような従来のものにおいて、磁界から得られる電力が小さいときの問題を課題としたものであることが記載されており、引用文献2の情報処理端末100は、装置自体に電源を有しておらず、リーダ/ライタの送信コイルから送られる磁界のエネルギーを受信コイルで受けて、駆動に必要な電力を得ているものと認められる。

上記引用文献2の記載事項及び図面、及び、この分野の技術常識を考慮すると、引用文献2には、次の技術事項が開示されていると認められる。

「データ送受信部102と、検波回路106としてのダイオードD1と、電圧レギュレータ(Voltage Regulator)110と、電源部112と、クロック生成部104と、DATA受信部114と、信号処理部116と、負荷変調部108とを備え、リーダ/ライタ150の送信コイルから送られる磁界のエネルギーを受信コイルで受けて、駆動に必要な電力を得るRFIDタグにおいて、
前記データ送受信部102は,リーダ/ライタ150から送信される搬送波を受信し、電磁誘導により交流の誘起電圧Vmを発生させるものであり、
前記検波回路106としてのダイオードD1は、誘起電圧Vmを直流の誘起電圧Vnに整流し、リーダ/ライタ150から送信された搬送波が含む信号を復調するものであり、
前記負荷変調部108は、抵抗値Rv1が変化することが可能な抵抗値可変回路118と、抵抗値可変回路118の抵抗値Rv1を変化させる負荷変動レベル制御回路120と、応答信号S1に基づいてオン/オフされるスイッチの役割を果たす、接続回路122としてのNMOSトランジスタTr1とから構成され、
前記負荷変動レベル制御回路120は、少なくとも誘起電圧Vnを検知する電圧検知手段と、検知手段で検知した誘起電圧Vnに応じた抵抗値制御信号S2を出力する抵抗値制御信号出力手段とを備えることで、
負荷変調部108において、誘起電圧Vnに基づいて負荷としての抵抗値可変回路118の抵抗値Rv1を変化させることにより、抵抗値可変回路118で消費される消費電力P1を調整し、負荷変調に係る負荷の値を変化させることにより、誘起電圧Vnが小さい場合でも、RFIDタグの駆動に必要な電力が得られず、RFIDタグが動作不能となることが起こらず、また、誘起電圧Vnが大きい場合、タグRFIDからリーダ/ライタ150へ、従来のタグよりもより強いデータ信号を送信することが可能となること。」


4.対 比
本願発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明の「通信装置100」は、「他の通信装置10との間で非接触通信」を行うものであって、「アンテナ102を介して搬送波又は変調波を受信し」、「通信部112」が「返信信号を生成し、当返信信号に応じて抵抗付加部106を制御することで信号を送信する」ものであるから、本願発明の「トランシーバ」に相当する。
また、引用発明の「通信装置100」は、「他の通信装置10」より「電力伝送」されるものであるから、引用発明の「通信装置100」は、本願発明の「タグモード」で動作するものと認められる。
b.引用発明の「アンテナ端電圧Va」は、「特性制御部108」が検知する「アンテナ端電圧Vaに応じて」「スイッチ258」をオン・オフ切り替え制御することで、「第1閾値」以下「第2閾値」以上に制御されものであるから、「アンテナ端電圧Va」は「第1閾値」及び「第2閾値」との比較に応じて変化するものと認められる。
また、引用発明において「アンテナ端電圧Vaが第2閾値に達した際に、第1閾値を越えないように、第1閾値に達する直前までオフにするスイッチ258の数を徐々に増加させる」際に、検知される「アンテナ端電圧Va」は複数の「スイッチ258」がオンとなった減衰された電圧と認められることから、引用発明の「第1閾値」は、本願発明の「最大閾値振幅」に相当し、さらに、引用発明の「アンテナ端電圧Va」は、本願発明の「適応的に減衰された入力信号」、及び「前記適応的に減衰された入力信号の振幅と最大閾値振幅との比較に応じて変化する」「適応的に減衰された入力信号」に相当する。
c.引用発明の「電圧検知部104」は、「アンテナ端電圧Vaを検知するもの」であるから、引用発明の「電圧検知部104」と、本願発明の「タグモードにおいてトランシーバによって適応的に減衰された入力信号から取得された電力量を測定するための検知要素」は、「タグモードにおいてトランシーバによって適応的に減衰された入力信号から取得される値を測定するための検知要素」の点では共通する。
d.引用発明の「負荷変調ブロック170」は、「スイッチ154と、抵抗156とにより構成され、スイッチ154と抵抗156とは直列に接続され、スイッチ154は、通信部112による信号入力に応じてオン/オフが切り替えられ、アンテナ102の負荷を抵抗156の分だけ変調するもの」であり、また、通信装置の構成要素をプログラムを用いて制御することは常套手段であるから、引用発明の「負荷変調ブロック170」は、本願発明の「タグモードにおける負荷変調用に構成されたプログラム可能な負荷変調要素」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)

「タグモードにおける負荷変調用に構成されたプログラム可能な負荷変調要素と、
前記タグモードにおいてトランシーバによって適応的に減衰された入力信号から取得される値を測定するための検知要素と、前記適応的に減衰された入力信号が前記適応的に減衰された入力信号の振幅と最大閾値振幅との比較に応じて変化する、
トランシーバ。」

(相違点1)
一致点の上記「検知要素」が測定する「値」が、本願発明では「電力量」であるのに対して、引用発明では、「電圧」である点。

(相違点2)
本願発明では、「プログラム可能な負荷変調要素及び前記検知要素の各々に結合され、測定された前記取得された電力量を最小取得電力閾値と比較し、測定された前記取得された電力量と前記最小取得電力閾値との比較に応じて前記プログラム可能な負荷変調要素の負荷変調度を調整するように構成されたコントローラ」を備えているのに対して、引用発明では、そのようなコントローラを備えていない点。


5.検討
上記相違点1、相違点2について検討する。
引用発明の通信装置100は、他の通信装置から電力を得て負荷変調を行うものであって、他の通信装置との距離等の変化によって供給される電力が変動しており、供給される電圧が低下した際に電力不足が生じることは明らかである。
この電力伝送の不足を引用発明においては「電圧」の測定によって、検出するものであるから、「検知要素」が測定する「値」を「電力量」とすること(相違点1)は、設計的事項に過ぎない。
一方、上記引用文献2には、上述したとおり、リーダ/ライタ150の送信コイルから送られる磁界のエネルギーを受信コイルで受けて、駆動に必要な電力を得るRFIDタグにおいて、得られる電力が小さい場合に、負荷変調で消費される電力によってRFIDタグが駆動に必要な電力が得られず動作不能とならないように、また、得られる電力が大きい場合に、タグRFIDからリーダ/ライタ150へ、従来のタグよりもより強いデータ信号を送信することが可能となるように、負荷変動レベル制御回路120の抵抗値制御信号出力手段(本願の「コントローラ」に相当。)が、電圧検知手段(本願の「検知要素」に相当。)が検知するリーダ/ライタ150からの誘起電圧Vnに基づいて、負荷変調の負荷としての抵抗値可変回路118(本願の「負荷変調要素」に相当。)の抵抗値Rv1を変化させる技術が記載されている。
ここで、抵抗値Rv1を変化すれば負荷変調度が変化することは明らかであり、また、引用文献2においても、上述したように、供給される電力を検出するために電圧を検出するものであり、電圧の検出に代え電力を検出することは設計的事項に過ぎない。
そして、引用文献2に記載の技術事項は、供給される電力が少ない場合でも、RFIDタグが動作不能とならようにするとともに、供給される電力が多い場合は、RFIDタグからリーダ/ライタ150へ、従来のタグよりもより強いデータ信号を送信するものであるから、タグの駆動に必要な電力(本願の「最小取得電力閾値」に相当。)を考慮し、タグの駆動に必要な電力以外をデータ信号の送信(負荷変調)に用いているものであり、タグの駆動に必要な電力との比較に応じて負荷変調度を調整しているものである。
してみれば、引用発明においても、電力不足によって通信装置が動作不能とならないように、引用文献2に記載の技術を適用して、負荷変調ブロック170を抵抗値可変なものとし、電圧検知部104が電力を検知するものとし、これらと接続するコンパレータ164を抵抗値制御信号出力手段とすることで、測定された取得された電力量を最小取得電力閾値と比較し、測定された取得された電力量と最小取得電力閾値との比較に応じてプログラム可能な負荷変調要素の負荷変調度を調整するように構成すること、即ち、「プログラム可能な負荷変調要素及び前記検知要素の各々に結合され、測定された前記取得された電力量を最小取得電力閾値と比較し、測定された前記取得された電力量と前記最小取得電力閾値との比較に応じて前記プログラム可能な負荷変調要素の負荷変調度を調整するように構成されたコントローラ」を備えた構成とすること(相違点2)は、当業者が容易に想到し得たことである。


そして、本願発明の効果も、引用発明、引用文献2に記載の技術事項から想到される構成から当業者が予想できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおりであって、本願発明は、上記引用発明、及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-11-20 
結審通知日 2017-11-21 
審決日 2017-12-04 
出願番号 特願2014-539088(P2014-539088)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡北 有平月野 洋一郎  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 山澤 宏
千葉 輝久
発明の名称 NFCトランシーバにおける適応型信号スケーリング  
代理人 岡田 貴志  
代理人 福原 淑弘  
代理人 井関 守三  
代理人 蔵田 昌俊  

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