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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1339673
審判番号 不服2017-5538  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-18 
確定日 2018-05-15 
事件の表示 特願2015-232191「入力装置及び入力方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 8日出願公開、特開2017-102493、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年11月27日の出願であって、平成28年8月2日付けで拒絶理由通知がされ、同年10月17日付けで手続補正がされると共に意見書が提出され、同年11月4日付けで拒絶理由通知がされ、同年12月27日付けで意見書が提出され、平成29年1月18日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年4月18日に拒絶査定不服審判の請求がされ、平成30年1月16日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年3月12日付けで手続補正がされると共に意見書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年1月18日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(新規性)この出願の請求項1,5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記Aの刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の請求項1-5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記A-Bの刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
A.特開2010-147619号公報
B.特開平5-182559号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1.(新規性)この出願の請求項1,2,5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記1の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の請求項1-5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記1-4の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2009-85812号公報
2.特開2015-57822号公報
3.特開平5-182559号公報(拒絶査定時の引用文献B)
4.特開2005-100917号公報

第4 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、平成30年3月12日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-5は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
ユーザからの入力操作を受け付け、片持ち支持された操作部と、
前記片持ち支持された操作部に取り付けられた圧電素子と、
前記片持ち支持された操作部への入力操作に基づく前記圧電素子の伸縮に応じた出力を取得し、該出力に応じて、被制御装置に対して異なる制御を実行する制御部と、
を備える入力装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記圧電素子の伸縮に応じて出力される電圧の極性に応じて異なる制御を実行する、請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記電圧の大きさに応じて、前記被制御装置に対する制御の速度を決定する、請求項2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記圧電素子の伸縮に応じた出力を取得すると、前記圧電素子を伸縮させて前記ユーザに触感を呈示する、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項5】
ユーザからの入力操作を受け付け、片持ち支持された操作部と、該片持ち支持された操作部に取り付けられた圧電素子と、制御部とを備える入力装置における入力方法であって、
前記制御部が、前記片持ち支持された操作部への入力操作に基づく前記圧電素子の伸縮に応じた出力を取得するステップと、
前記出力に応じて、被制御装置に対して異なる制御を実行するステップと、
を含む入力方法。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
平成30年1月16日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

a)「【0024】
さらに、プリンタ1は、可撓性を有するシート状の基材20、及び、この基材20の表面に配置されて基材20の屈曲変形を検出する2つの屈曲検出部21,22(検出手段)とを有する入力装置14(屈曲検出装置)を備えている。図3(a)は、入力装置14の平面図、図3(b)は図3(a)のB-B線断面図である。図3(a),(b)に示すように、この入力装置14の基材20の表面には、それ全体として可撓性を有するディスプレイ13(表示部)が設けられており、このディスプレイ13は、基材20と一体的に屈曲変形可能となっている。このようなディスプレイ13としては、厚みが10分の数ミリ程度と、紙と同等の厚みであって、電圧印加等によってデータ表示及び消去が可能な、いわゆる、電子ペーパーを挙げることができる。尚、図1に示すように、入力装置14とディスプレイ13は、ケーブル15を介して、プリンタ本体6内に格納された制御装置4(図2参照)に接続されている。
【0025】
そして、ユーザーがディスプレイ13に表示させる画像を変更したい場合には、入力装置14の基材20は、ユーザーによって紙を曲げるように操作される。このとき、基材20に生じた屈曲変形は、基材20に設けられた2つの屈曲検出部21,22により検出される。そして、屈曲検出部21,22により検出された基材20の屈曲変形の態様に基づいて、制御装置4がディスプレイ13に表示させる画像を変更するように構成されている。
【0026】
以下、入力装置14について具体的に説明する。
図3(a)に示すように、基材20は、平面視で矩形状に形成されている。また、この可撓性の基材20としては、ポリイミドなどの合成樹脂材料からなる樹脂シート材、あるいは、アルミニウム合金やステンレスなどの金属材料からなる薄板等を用いることができる。
【0027】
この基材20の裏面(ディスプレイ13と反対側の面、図3の紙面向こう側の面)には、2つの屈曲検出部(第1屈曲検出部21、第2屈曲検出部22)が設けられている。2つの屈曲検出部21,22は、基材20の長手方向(図3(a)の左右方向)に関する中央部において、短手方向(図3(a)の上下方向)に並べて配置されている。また、屈曲検出部21,22として、本実施形態では、圧電素子の機械(歪み)-電気変換作用を利用したものが採用されている。即ち、各々の屈曲検出部21,22は、基材20の裏面に形成された圧電層23と、この圧電層23の基材20と反対側の面(裏面)に形成され、間隔を空けて互いに平行に延びる2種類の電極(第1電極24及び第2電極25)とを有する。」(下線は当審で付与。以下、同様。)

b)「【0059】
1)画像の拡大縮小
図4に示すように、ユーザーによって、矩形シート状の基材20が、その短手方向に平行な軸C1周りに、下方(ユーザーから見て向こう側)に凸となるように曲げられた場合(図8の項目A)には、圧電層23の下面部分が基材20の長手方向に伸びる。すると、第2屈曲検出部22の第1電極24と第2電極25の間の領域において、圧電層23に分極方向と逆方向(第1電極24から第2電極25に向かう方向)の電界が生じ、第2屈曲検出部22の第1電極24に正の電位が発生する。この信号を受けて、表示制御部32は、軸C1周りに、基材20が下方へ凸となるように曲げられたと判断し、表示制御部32は、現在表示されている画像をさらに小さく縮小した縮小画像を、ディスプレイ13に表示させる。
【0060】
また、図5に示すように、基材20が、その短手方向に平行な軸C1周りに、上方(ユーザーから見て手前側)に凸となるように曲げられた場合(図8の項目B)には、圧電層23の下面部分が基材20の長手方向に縮む。すると、第2屈曲検出部22の第1電極24と第2電極25の間の領域において、圧電層23に分極方向と同方向(第2電極25から第1電極24に向かう方向)の電界が生じ、第1電極24に負の電位が発生する。この信号を受けて、表示制御部32は、軸C1周りに、基材20が上方へ凸となるように曲げられたと判断し、表示制御部32は、現在表示されている画像の中央部を拡大した拡大画像を、ディスプレイ13に表示させる。
【0061】
つまり、ユーザーによって、基材20がユーザーから遠ざかるように、ユーザーから見て向こう側(下方)に凸となるように基材20が曲げられたときには、表示制御部32はディスプレイ13に表示されている画像を縮小させる。一方、基材20がユーザーに近づくように、ユーザーから見て手前側(上方)に凸となるように基材20が曲げられたときには、表示制御部32はディスプレイ13に表示されている画像を拡大させる。このように、基材20を近づける操作と画像の拡大が対応し、また、基材20を遠ざける動作と画像の縮小とが対応しているため、画像を拡大縮小させる際の基材20の屈曲操作をユーザーが感覚的に覚えやすいという利点がある。
【0062】
2)画像切り替え(画像の送り/戻し)
図6に示すように、ユーザーによって、矩形シート状の基材20が、その長手方向に平行な軸C2周りに、下方(ユーザーから見て向こう側)に凸となるように曲げられた場合には、圧電層23の下面部分が基材20の短手方向に伸びる。ここで、比較的ゆっくりした速度で基材20が下方に凸となるように曲げられた場合(図8の項目C)には、第1屈曲検出部21の第1電極24と第2電極25の間の領域において、圧電層23に分極方向と逆方向(第1電極24から第2電極25に向かう方向)の弱めの電界が生じ、第1屈曲検出部21の第1電極24に、電位の絶対値が所定値以下となる、比較的小さな正の電位が発生する。
【0063】
この信号を受けて、表示制御部32は、軸C1周りに、基材20がゆっくりした速度で下方へ凸となるように曲げられたと判断する。そして、画像データ記憶部31に順序づけされた状態で記憶されている複数の画像データの中から、現在ディスプレイ13に表示されている画像データよりも1つ後の画像データを選択し、ディスプレイ13に表示させる画像を、この選択した画像データの画像に切り替える。
【0064】
また、図7に示すように、ユーザーによって、矩形シート状の基材20が、その長手方向に平行な軸C2周りに、上方(ユーザーから見て手前側)に凸となるように曲げられた場合には、圧電層23の下面部分が基材20の短手方向に縮む。ここで、比較的ゆっくりした速度で基材20が上方に凸となるように曲げられた場合(図8の項目D)には、第1屈曲検出部21の第1電極24と第2電極25の間の領域において、圧電層23に分極方向と同方向(第2電極25から第1電極24に向かう方向)の弱めの電界が生じ、第1屈曲検出部21の第1電極24に、電位の絶対値が所定値以下となる、比較的小さな負の電位が発生する。
【0065】
この信号を受けて、表示制御部32は、軸C2周りに、基材20がゆっくりした速度で上方へ凸となるように曲げられたと判断する。このとき、表示制御部32は、画像データ記憶部31に順序づけされた状態で記憶されている複数の画像データの中から、現在ディスプレイ13に表示されている画像データよりも1つ前の画像データを選択し、ディスプレイ13に表示させる画像を、この選択した画像データの画像に切り替える。
【0066】
さらに、図6、図7において、基材20が下方又は上方へ凸となるように曲げられるときの屈曲速度が大きいほど、第1屈曲検出部21の第1電極24と第2電極25との間の圧電層23に生じる電界は大きくなり、第1電極24の電位の絶対値は大きくなる。そこで、第1電極24の電位の絶対値が所定値よりも大きいときには、表示制御部32は、基材20がかなり速い速度で曲げられたと判断する(図8の項目E,F)。このとき、表示制御部32は、ディスプレイ13に、先ほどの処理(図8の項目C,D)よりもさらに粗い間隔(大きな間隔)で表示画像の送り/戻しを行わせる。
【0067】
即ち、表示制御部32は、基材20がかなり速い速度で下方へ凸となるように曲げられたと判断したときには、ディスプレイ13に表示させる画像を、現在表示されている画像よりも5つ後の画像に切り替える。逆に、基材20がかなり速い速度で上方へ凸となるように曲げられたと判断したときには、表示制御部32は、ディスプレイ13に表示させる画像を、現在表示されている画像よりも5つ前の画像に切り替える。
【0068】
つまり、ユーザーは、現在表示されている画像が、表示させたい所望の画像から、順序的にかなりかけ離れた画像であることが分かっている場合には、基材20を速い速度で屈曲させて、ディスプレイ13に表示される画像が短い時間で所望の画像に近づくように、5つずつ画像を送り/戻しさせることができる。その後、表示画像が所望の画像に近づいていくと、今度は、基材20をゆっくりした速度で屈曲させて、表示された画像が所望の画像かどうかを確認しながら、1つずつ画像を送り/戻しさせるということが可能になる。」

上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用文献1には、入力装置として、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「可撓性を有するシート状の基材20、及び、この基材20の表面に配置されて基材20の屈曲変形を検出する屈曲検出部22とを有する入力装置14において、
基材20の表面には、それ全体として可撓性を有するディスプレイ13(表示部)が設けられており、
基材20の裏面には、第2屈曲検出部22が設けられ、
屈曲検出部22は、基材20の裏面に形成された圧電層23と、この圧電層23の基材20と反対側の面(裏面)に形成され、間隔を空けて互いに平行に延びる第1電極24とを有し、
ユーザーによって、矩形シート状の基材20が、その短手方向に平行な軸C1周りに、下方(ユーザーから見て向こう側)に凸となるように曲げられた場合には、圧電層23の下面部分が基材20の長手方向に伸び、第2屈曲検出部22の第1電極24に正の電位が発生し、この信号を受けて、表示制御部32は、軸C1周りに、基材20が下方へ凸となるように曲げられたと判断し、表示制御部32は、現在表示されている画像をさらに小さく縮小した縮小画像を、ディスプレイ13に表示させ、
基材20が、その短手方向に平行な軸C1周りに、上方(ユーザーから見て手前側)に凸となるように曲げられた場合には、圧電層23の下面部分が基材20の長手方向に縮み、第1電極24に負の電位が発生し、この信号を受けて、表示制御部32は、軸C1周りに、基材20が上方へ凸となるように曲げられたと判断し、表示制御部32は、現在表示されている画像の中央部を拡大した拡大画像を、ディスプレイ13に表示させる、入力装置14。」

2.引用文献2について
平成30年1月16日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

c)「【0124】
そして、このタッチパネルセンサ501は、外部から押圧力が加わった場合、可視が容易ではない程度であるが、平板面(主面)が湾曲する。したがって、圧電素子512の圧電性シート5120も湾曲し、圧電素子512は湾曲量すなわち押圧力に応じた検出電圧を出力することができる。これにより、このタッチパネルセンサ501を用いれば、操作位置(押圧位置)を検出するとともに、この際の押圧力を同時に検出することができる。
【0125】
したがって、このタッチパネルセンサ501を、各種AV機器のリモコン装置に用いれば、押圧位置と押圧力に応じた制御を行うことができる。例えば、ボリューム調整位置が押圧された場合、押圧力に応じてボリューム調整速度を変化させることができる。また、早送りや巻き戻しの操作位置が押圧されれば、押圧力に応じた速度で早送りや巻き戻しをする制御を行うことができる。」

3.引用文献3について
平成30年1月16日付けの拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

d)「【0016】このように構成されたスイッチ装置において、オペレータがキートップ1の天面を手指にて押圧すると、この押圧力によって圧電素子3が歪み、圧電素子3から上記押圧力に応じた電圧が発生する。この電圧はコントローラ4に送られ、コントローラ4はこの電圧に基づいてホストコンピュータ5にオン信号を送出し、ホストコンピュータ5は特定のキートップ1が押圧されたことを検出する。一方、コントローラ4は、圧電素子3からの上記出力電圧に応じたパルス状の電圧を生成し、この電圧を圧電素子3に印加する。これによって圧電素子3が振動し、この振動は上方のキートップ1を介して手指にフィードバックされ、オペレータはキートップ1のスイッチング動作を手指に伝わる振動によって確認することができる。」

4.引用文献4について
平成30年1月16日付けの拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

e)「【0049】
図10(b)は、実施形態2の第二の変形例を示す図である。ズームキー66は、上記のズームキー31またはズームキー58に置き換わるものである。このズームキー66は、支点67の周りを揺動可能に本体部20に取り付けられたレバー68を有する。レバー68の下端部には、下向き解放のコの字状部69が設けられている。コの字状部69の両側はバネ70、71を介して本体部20に弾性支持されており、また、コの字状部69の開口には、本体部20(または本体部20と一体化された部材20b)に立設された圧電素子72の上端部が嵌合(当審注:「勘合」は「嵌合」の誤記と認める。)している。
【0050】
このような構成において、レバー68の上端部68aを前側(W側)に倒すと、レバー68のコの字状部69が図面の左側に移動する。このため、コの字状部69に先端を嵌合(当審注:「勘合」は「嵌合」の誤記と認める。)した圧電素子72も同方向(左側)に移動し、圧電素子72に変形を生じる。また、レバー68の上端部68aを後側(T側)に倒すと、レバー68のコの字状部69が図面の右側に移動する。このため、コの字状部69に先端を嵌合(当審注:「勘合」は「嵌合」の誤記と認める。)した圧電素子72も同方向(右側)に移動し、圧電素子72に変形を生じる。ここで、便宜的に圧電素子72の内部に書き込んだ小さな矢印の向きを分極方向とすると、圧電素子72が左側に変形したときは分極と同一方向の変形となり、圧電素子72が右側に変形したときは分極と逆向きの変形となるから、それぞれの変形方向ごとに逆極性の電気信号(たとえば、左側変形:正極性の電気信号、右側変形:負極性の電気信号)を取り出すことができる。
【0051】
したがって、圧電素子72が左側に変形したときの電気信号(正極性の電気信号)をW側操作信号S_(W)として利用すると共に、圧電素子72が右側に変形したときの電気信号(負極性の電気信号)をT側操作信号S_(T)として利用すれば、上記の例と同じ作用が得られる。
【0052】
すなわち、レバー68の上端部68aを前側(W側)に倒すと、その倒し量に応じた大きさの変形が圧電素子72に与えられる。このため、圧電素子72は変形量に対応した大きさの正極性信号(W側操作信号S_(W))を発生し、CPU45は、このW側操作信号S_(W)に従ってズーム駆動部34を制御し、ズームレンズ22の倍率を望遠側に変更する。また、レバー68の上端部68aを後側(T側)に倒すと、その倒し量に応じた大きさの変形が圧電素子72に与えられる。このため、圧電素子72は変形量に対応した大きさの負極性信号(T側操作信号S_(T))を発生し、CPU45は、このT側操作信号S_(T)に従ってズーム駆動部34を制御し、ズームレンズ22の倍率を広角側に変更する。その結果、レバー68の上端部68aを前側(W側)または後側(T側)に倒し、その倒し量を加減するだけで、所望のズーム倍率を得ることができる。しかも、このズームキー66も、圧電素子72の“圧電効果”を利用してW側操作信号S_(W)やT側操作信号S_(T)を生成しているため、やはり、これらの信号の生成に“電源電圧”は必要ない。それゆえ、無駄な電力消費を招かず、とりわけ、省電力性が求められる電子カメラ19にとって有益な技術を提供できる。また、この例では、圧電素子72の数を1個とすることができ、コストを削減できる。」

上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用文献4には、レバーとして、以下の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されている。

「ズームキー66は、支点67の周りを揺動可能に本体部20に取り付けられたレバー68を有し、
レバー68の下端部には、下向き解放のコの字状部69が設けられ、コの字状部69の両側はバネ70、71を介して本体部20に弾性支持されており、また、コの字状部69の開口には、本体部20に立設された圧電素子72の上端部が嵌合し、
レバー68の上端部68aを前側(W側)に倒すと、レバー68のコの字状部69が左側に移動し、このため、コの字状部69に先端を嵌合した圧電素子72も同方向(左側)に移動し、圧電素子72に変形を生じ、また、レバー68の上端部68aを後側(T側)に倒すと、レバー68のコの字状部69が右側に移動し、このため、コの字状部69に先端を嵌合した圧電素子72も同方向(右側)に移動し、圧電素子72に変形を生じ、
圧電素子72が左側に変形したときは分極と同一方向の変形となり、圧電素子72が右側に変形したときは分極と逆向きの変形となるから、それぞれの変形方向ごとに逆極性の電気信号(たとえば、左側変形:正極性の電気信号、右側変形:負極性の電気信号)を取り出すことができ、
圧電素子72が左側に変形したときの電気信号(正極性の電気信号)をW側操作信号S_(W)として利用すると共に、圧電素子72が右側に変形したときの電気信号(負極性の電気信号)をT側操作信号S_(T)として利用すれば、レバー68の上端部68aを前側(W側)に倒すと、その倒し量に応じた大きさの変形が圧電素子72に与えられ、このため、圧電素子72は変形量に対応した大きさの正極性信号(W側操作信号S_(W))を発生し、このW側操作信号S_(W)に従ってズーム駆動部34を制御し、ズームレンズ22の倍率を望遠側に変更し、また、レバー68の上端部68aを後側(T側)に倒すと、その倒し量に応じた大きさの変形が圧電素子72に与えられ、このため、圧電素子72は変形量に対応した大きさの負極性信号(T側操作信号S_(T))を発生し、このT側操作信号S_(T)に従ってズーム駆動部34を制御し、ズームレンズ22の倍率を広角側に変更し、レバー68の上端部68aを前側(W側)または後側(T側)に倒し、その倒し量を加減するだけで、所望のズーム倍率を得ることができる
ズームキー66。」

第6 対比・判断
1.引用発明1との対比・判断
(1)本願発明1について
(1-1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。

ア.引用発明1の「矩形シート状の基材20」は、第2屈曲検出部22が設けられ、ユーザーによって曲げられた場合、第2屈曲検出部22の第1電極24に電位が発生し、この信号を受けて、表示制御部32は、軸C1周りに、基材20が下方へ凸となるように曲げられたと判断し、表示制御部32は、現在表示されている画像を制御するものであるから、本願発明1の「ユーザからの入力操作を受け付け、片持ち支持された操作部」と「ユーザからの入力操作を受け付ける操作部」である点では共通するといえる。

イ.引用発明1の「圧電層23」は、基材20の面に配置されているから、本願発明1の「前記片持ち支持された操作部に取り付けられた圧電素子」と「前記操作部に取り付けられた圧電素子」である点では共通するといえる。

ウ.引用発明1の「表示制御部32」は、基材20が下方に凸となるように曲げられ、圧電層23の下面部分が基材20の長手方向に伸びたときに、現在表示されている画像をさらに小さく縮小した縮小画像をディスプレイ13に表示させ、基材20が上方に凸となるように曲げられ、圧電層23の下面部分が基材20の長手方向に縮んだときに、現在表示されている画像の中央部を拡大した拡大画像を、ディスプレイ13に表示させるから、本願発明1の「前記片持ち支持された操作部への入力操作に基づく前記圧電素子の伸縮に応じた出力を取得し、該出力に応じて、被制御装置に対して異なる制御を実行する制御部」と「前記操作部への入力操作に基づく前記圧電素子の伸縮に応じた出力を取得し、該出力に応じて、被制御装置に対して異なる制御を実行する制御部」である点では共通するといえる。

エ.引用発明1の「入力装置14」は、以下の相違点を除き、本願発明1の「入力装置」に相当する。

したがって、両者は以下の一致点と相違点とを有する。

〈一致点〉
「ユーザからの入力操作を受け付ける操作部と、
前記操作部に取り付けられた圧電素子と、
前記操作部への入力操作に基づく前記圧電素子の伸縮に応じた出力を取得し、該出力に応じて、被制御装置に対して異なる制御を実行する制御部と、
を備える入力装置。」

〈相違点〉
「操作部」が、本願発明1は、「片持ち支持された」ものであるのに対し、引用発明1は、「矩形シート状の基板20」からなるものである点。

(1-2)相違点についての判断
上記「第5」の「2.」-「4.」に摘記されるように、引用文献2-4には、圧電素子を歪ませることにより、入力操作に応じた信号を出力することは記載されているものの、相違点にかかる本願発明1の「操作部」を「片持ち支持された」ものとするという構成は、上記引用文献1-4には記載されていない。
また、「ユーザーによって紙を曲げるように操作される」(【0025】)ものである引用発明1を、「片持ち支持された」構成に変更する動機付けも見出しがたい。
したがって本願発明1は、引用発明1ではないし、また、当業者であっても引用発明1、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明2-4について
本願発明2-4は、本願発明1を直接または間接的に引用するものであり、上記「(1)請求項1について」にて述べたのと同様の理由により、本願発明2は、引用発明1ではないし、また、本願発明2-4は、引用発明1及び引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)本願発明5について
本願発明5は、実質的に、本願発明1を入力方法として記載したものであるから、上記「(1)請求項1について」にて述べたのと同様の理由により、本願発明5は、引用発明1ではないし、また、引用発明1及び引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.引用発明4との対比・判断
(1)本願発明1について
(1-1)対比
本願発明1と引用発明4とを対比する。

ア.引用発明4の「レバー66」は、上端部68aを前側(W側)または後側(T側)に倒し、その倒し量を加減するだけで、所望のズーム倍率を得るものであるから、本願発明1の「ユーザからの入力操作を受け付け、片持ち支持された操作部」と「ユーザからの入力操作を受け付ける操作部」である点では共通するといえる。

イ.引用発明4のレバー68の下端部には、下向き解放のコの字状部69が設けられ、コの字状部69の開口には、本体部20に立設された圧電素子72の上端部が嵌合されているから、引用発明4「圧電素子72」は、本願発明1の「前記片持ち支持された操作部に取り付けられた圧電素子」と「前記操作部に取り付けられた圧電素子」である点では共通するといえる。

ウ.引用発明4は、レバー68の上端部68aを前側(W側)または後側(T側)に倒し、その倒し量を加減するだけで、所望のズーム倍率を得ることができるものであるから、本願発明1の「前記片持ち支持された操作部への入力操作に基づく前記圧電素子の伸縮に応じた出力を取得し、該出力に応じて、被制御装置に対して異なる制御を実行する制御部」と「前記操作部への入力操作に基づく前記圧電素子の伸縮に応じた出力を取得し、該出力に応じて、被制御装置に対して異なる制御を実行する制御部」である点では共通する構成を有することは明らかである。

エ.引用発明4の「ズームキー66」は、以下の相違点を除き、本願発明1の「入力装置」に相当する。

したがって、両者は以下の一致点と相違点とを有する。

〈一致点〉
「ユーザからの入力操作を受け付ける操作部と、
前記操作部に取り付けられた圧電素子と、
前記操作部への入力操作に基づく前記圧電素子の伸縮に応じた出力を取得し、該出力に応じて、被制御装置に対して異なる制御を実行する制御部と、
を備える入力装置。」

〈相違点〉
「操作部」が、本願発明1は、「片持ち支持された」ものであるのに対し、引用発明4は、「支点67の周りを揺動可能に本体部20に取り付けられ」、「下端部には、下向き解放のコの字状部69が設けられ、コの字状部69の両側はバネ70、71を介して本体部20に弾性支持されており、また、コの字状部69の開口には、本体部20に立設された圧電素子72の上端部が嵌合」した「レバー68」からなるものである点。

(1-2)相違点についての判断
上記「第5」の「1.」-「3.」に摘記されるように、引用文献1-3には、圧電素子を歪ませることにより、入力操作に応じた信号を出力することは記載されているものの、相違点にかかる本願発明1の「操作部」を「片持ち支持された」ものとするという構成は、上記引用文献1-4には記載されていない。
また、「支点67の周りを揺動可能に本体部20に取り付けられたレバー68を有」し「レバー68の下端部には、下向き解放のコの字状部69が設けられ」「コの字状部69の開口には、本体部20に立設された圧電素子72の上端部が嵌合」する(【0049】)ものである引用発明4を、「片持ち支持された」構成に変更する動機付けも見出しがたい。
したがって本願発明1は、当業者であっても引用発明4、引用文献1,2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)請求項2-4について
本願発明2-4は、本願発明1を直接または間接的に引用するものであり、上記「1.請求項1について」にて述べたのと同様の理由により、引用発明4、引用文献1,2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)請求項5について
本願発明5は、実質的に、本願発明1を入力方法として記載したものであるから、上記「(1)請求項1について」にて述べたのと同様の理由により、引用発明4、引用文献1,2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について
1.理由1(特許法第29条第1項第3号)について
平成30年3月12日付けの補正により、補正後の請求項1-5は、「片持ち支持された操作部」という技術的事項を有するものとなった。当該「片持ち支持された操作部」は、原査定における引用文献Aには記載されておらず、本願発明1,5は、原査定における引用文献Aに記載された発明であるとはいえない。
したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

2.理由2(特許法第29条第2項)について
平成30年3月12日付けの補正により、補正後の請求項1-5は、「片持ち支持された操作部」という技術的事項を有するものとなった。当該「片持ち支持された操作部」は、原査定における引用文献A,Bには記載されておらず、本願発明1-5は、当業者であっても、原査定における引用文献A,Bに基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由2を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-05-01 
出願番号 特願2015-232191(P2015-232191)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菊池 智紀佐伯 憲太郎池田 聡史  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 稲葉 和生
山田 正文
発明の名称 入力装置及び入力方法  
代理人 杉村 憲司  
代理人 太田 昌宏  

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