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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A47D
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A47D
審判 全部無効 1項2号公然実施  A47D
審判 全部無効 1項1号公知  A47D
管理番号 1339810
審判番号 無効2017-800073  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-05-31 
確定日 2018-05-02 
事件の表示 上記当事者間の特許第4373232号発明「乳児用椅子」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件の手続の経緯の概略は、以下のとおりである。

平成16年 1月29日 本件特許の出願(特願2004-21692号)
平成21年 9月11日 本件特許の登録(特許第4373232号)
平成29年 5月29日 本件審判請求
6月29日 上申書(請求人)
手続補正書(請求人)
9月 6日 審判事件答弁書
9月20日 審理事項通知
11月 1日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
11月 2日 口頭審理陳述要領書(請求人)
11月 9日 応対記録(ファクシミリ発信)
11月 9日 証拠説明書
11月17日 口頭審理
11月17日 上申書(請求人)
11月17日 上申書(被請求人)
12月 1日 上申書(請求人)、証拠説明書
12月 1日 上申書(被請求人)


第2 本件特許発明
本件特許第4373232号の請求項1乃至請求項6に係る発明は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
乳児の臀部を中心とする部位を載せる凹状の凹状座部と、該凹状座部に連設され凹状座部の外周部位で凹状座部を支持する支持部とを有した乳児用椅子であって、
上記凹状座部と支持部を、可撓性を有する材料で形成するとともに、
上記凹状座部の下方に、凹状座部に乗った乳児の荷重で凹状座部を変形させ、凹状座部の内壁面を内方へ変位させる変形許容空間を設けた
乳児用椅子。
【請求項2】
前記凹状座部の前方側部位に、乳児の脚を凹状座部から出すための2つの切欠部を形成するとともに、
これら切欠部間に、乳児の腹部に対向する腹対向部を立設した
請求項1に記載の乳児用椅子。
【請求項3】
前記支持部を、凹状座部の上端縁から下方に折り返して形成するとともに、
該支持部の下端に、接地面を形成し、
当該乳児用椅子を臼状に形成した
請求項1又は2に記載の乳児用椅子。
【請求項4】
前記支持部の高さを、乳児が凹状座部に座した時に乳児の足を上記接地面の高さより上に浮かす高さに設定した
請求項3に記載の乳児用椅子。
【請求項5】
前記凹状座部における腹対向部への連設面を、乳児の股間部が乗った時に変形し、腹対向部を乳児側に傾倒させる、凹状座部の他の部位よりも曲率の小さい緩斜面で形成した
請求項2から請求項4のうちのいずれか一項に記載の乳児用椅子。
【請求項6】
前記凹状座部の後方側部位に、乳児の頭部を支持する高さの背凭れ部を立設した
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の乳児用椅子。」(審決注:以下、請求項1乃至請求項6に係る各発明を、それぞれ、「本件特許発明1」乃至「本件特許発明6」といい、これらを総称して「本件特許発明」という。)


第3 請求人の主張
1.請求理由の要約(審判請求書の手続補正書1頁下から3行?2頁3行、13頁2?8行、15頁4?9行、16頁9行?17頁1行、18頁11?15行、20頁1?5行、20頁下から3行?21頁4行)
(1)理由1
本件特許発明1乃至本件特許発明5は、甲第1号証に記載された発明により、特許法第29条第1項第3号新規性要件を欠如する発明に該当し、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。
(2)理由2
本件特許発明1乃至本件特許発明5は、甲第2号証に開示の市販商品により、特許法第29条第1項第1号及び第2号の公知公用となった発明に該当し、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。
(3)理由3
本件特許発明1乃至本件特許発明5は、甲第1号証に記載された発明により、特許法第29条第2項進歩性要件を欠如する発明に該当し、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。
(4)理由4
本件特許発明1乃至本件特許発明5は、甲第2号証に開示の市販商品により、特許法第29条第2項進歩性要件を欠如する発明に該当し、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。
(5)理由5
本件特許発明6は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明により、特許法第29条第2項進歩性要件を欠如する発明に該当し、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。
(6)理由6
本件特許発明6は、甲第2号証に開示の市販商品及び甲第3号証に記載された発明により、特許法第29条第2項進歩性要件を欠如する発明に該当し、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。

2.証拠方法
請求人が本件審判請求にあたり提示した証拠方法は、以下のとおりである。
(1)平成29年6月29日付けの審判請求書の手続補正書及び同年12月1日付け上申書に添付されたもの
甲第1号証 :特表2002-542856号公報
甲第2号証 :商品「BUMBO^(登録商標)」が掲載されたT-REX公式ベビー用品サイト(http://www.coming-shop.co.jp/)の画面印刷(印刷日:平成29年5月29日)
甲第3-1号証:欧州特許出願公開第908124号明細書
甲第3-2号証:欧州特許出願公開第908124号明細書の部分翻訳
甲第4-1号証:商品「BUMBO^(登録商標)」の撮影写真(平成29年11月1日、庄司隆撮影)
甲第4-2号証:商品「BUMBO^(登録商標)」の撮影写真(商品に刻印された文字を着色したものを含む)(平成29年11月20日、庄司隆撮影)
甲第4-3号証:商品「BUMBO^(登録商標)」の梱包箱に描かれた画像の撮影写真(平成29年11月20日、庄司隆撮影)
甲第4-4号証:商品「BUMBO^(登録商標)」の発売15周年記念添付品の撮影写真(平成29年11月20日、庄司隆撮影)
甲第5号証 :「ポリウレタンフォームとは」(http://www.jufa-urethane.org/about_polyurethane_foam/characteristic.html)
甲第6号証 :「発泡ウレタンの歴史」(http://www.nengo-roots.jp/blog/archives/2012/04/post-470.html)
甲第7号証 :登録実用新案第3002967号公報


第4 被請求人の主張
1.答弁の理由
(1)甲第1号証について
確かに、甲第1号証の段落【0006】には、
「椅子は、好ましく軟質でありながらも支持力のある材料により、好ましくは成形または一体的に形成される。これらの好ましい特質を満たす実例は、一体成形される適切な品質のポリウレタンである。」
と記載され、甲第5号証には、「軟質ウレタンフォーム」には、「復元性」の特性があることが記載されている。
確かに、甲第1号証に記載の乳児用支持椅子はポリウレタンで形成されていることが読み取れるが、「適切な品質のポリウレタン(【0006】参照)」又は、「適切に選定された品質のポリウレタン(【0010】参照)」とのみ記載されるだけで、請求人の主張するように「復元性」を有する「軟質性のポリウレタン」であるかどうかは不明である。請求人が例示するように、硬質、半硬質のウレタンフォームではないとする根拠も示されていない。
仮に、「復元性」を有する「軟質性のポリウレタン」であったとしたら、
ア.可撓性を有する材料で形成され、
イ.乳児の荷重で変形する
ことも結果的にはその通りかもしれない。
しかし、甲第1号証の段落【0010】には、
「座席は、この設計において、接触に対する一定の柔軟性を与えるだけでなく、乳児を支持するために十分な構造安定性を有するように、適切に選定された品質のポリウレタンにより一体成形される。この安定性のために、成形品はリブ(ribs)10を備える。ポリウレタンの成形技術において公知の通り、この材料は、閉鎖的スキン層(ciosed outer skin)と多孔性の内部領域を備えて成形されるという特質を有する。スキン層は効果的なクリーニングを可能にし、内部多孔性構造は、乳児にとって快適なしなやかさ(yielding property)または柔軟性を外面に付与する。」
と記載されている。
つまり、材料であるポリウレタンに記載されているのは、あくまで「十分な構造安定性」と、「表面の滑らかさ」と、「外面上の柔軟性」である。
甲第1号証のいずれかの記載も、本件特許に特有の作用効果であるところの「乳児の荷重で変形して、凹状座部が乳児を包み込むこと、座った乳児は自らでは抜け出すことはできない(段落【0016】参照)」ことを示すものではないことは明らかである。(平成29年11月17日差出の上申書4頁2行?5頁6行)
甲第1号証の図4に“座席1と座面17とが接していないことによる空間”が設定されているかもしれないが、係る空間を利用して凹状座部の内壁面を内方に変位させる記載は全くない。
仮に乳児の荷重で椅子全体が変位することがあったとしても、“凹状座部の内壁面を内方に変位させる”ことまで記載されているとは到底読み取れない。(平成29年11月17日差出の上申書5頁17?20行)
甲第1号証の座席1が、「柔らかくて復元性のある」軟質ポリウレタンで形成されている根拠は、甲第1号証には明らかに見当たらない。
そして、甲第1号証が目的としているポリウレタンの選定は、甲第1号証の記載から明らかなように、「十分な構造安定性」と、「表面の滑らかさ」と、「外面上の柔軟性」に起因するものである。
単に広い意味での同じ材料を用いただけで、『乳児が座すれば、固有的に下方空間側に変形、沈み込むことが当然に固有的に発揮され、これ以外にない。』と断定するにはあまりに根拠が薄く、仮に乳児の荷重で椅子全体が変位することや、請求人が主張するように『固有的に下方空間側に変形、沈み込むこと』があったとしても、本件特許発明に特有の構成である、“凹状座部の内壁面を内方に変位させる”ことまで記載され、又は想定されているとは到底考えられない。(平成29年11月17日差出の上申書6頁7?18行)

(2)甲第4号証について
甲第4号証写真4の商品が、本件特許の特許出願前に存在していた証拠はない。(平成29年11月17日差出の上申書5頁下から2?最下行)
確かに、甲第4号証には、「国際出願番号(PCT/ZA99/00030)」が記載されていることは間違いない。

しかし、これらの記載は、あくまで現在に存在する商品「BUMBO^(登録商標)」に過去の出願番号が記載されていることが確認できただけであり、本件特許の出願前に甲第4号証の商品「BUMBO^(登録商標)」が存在していたことを裏付けるものではない。
商品「BUMBO^(登録商標)」が現在の形状・性能のまま、本件特許の出願前に既に存在していたか否かは、請求人が主張するように、推測の域を出ないことは説明するまでもない。(平成29年12月1日付け上申書2頁9?19行)
商品「BUMBO^(登録商標)」に附属する記念品の包装袋に「15周年記念」との記載があることについては間違いない。
しかしこの記載は、現在に存在する商品「BUMBO^(登録商標)」が現在の形状・性能のまま、15年間製造販売されていたことを裏付けるものではない。
単に、商品「BUMBO^(登録商標)」を製造販売する会社が15年間存続しているだけかもしれないし、「BUMBO^(登録商標)」という名前を15年間使用し続けているだけかもしれない。
商品「BUMBO^(登録商標)」が現状の形状・性能のまま、本件特許の出願前に既に存在していたか否かは、請求人が主張するように、推測の域を出ないことは説明するまでもない。(平成29年12月1日付け上申書2頁21行?3頁5行)
商品「BUMBO^(登録商標)」の凹状座部、支持部、腹対向部が可撓性を有する材料で形成されていることは間違いない。
しかし、現在に存在する商品「BUMBO^(登録商標)」の凹状座部、支持部、腹対向部が可撓性を有する材料で形成されていることはその通りであるが、商品「BUMBO^(登録商標)」が現在の形状・性能のまま、本件特許の出願前に既に存在していたか否かは、請求人が主張するように、推測の域を出ないことは説明するまでもない。(平成29年12月1日付け上申書3頁7?13行)


第5 主な各甲号証に記載されている事項
1.甲第1号証
(1)「【請求項1】 座席、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体および、前方支持体と側方支持体との間で乳児の脚が座席から外方に突き出るようにする2つの溝を含み、椅子の座席が2つの溝の底部の水平面と等しいかまたはそれより低い水平面にあることを特徴とする、乳児用支持椅子。」
(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は乳児用椅子に関する。」
(3)「【0006】
椅子は、好ましく軟質でありながらも支持力のある材料により、好ましくは成形または一体的に形成される。これらの好ましい特質を満たす実例は、一体成形される適切な品質のポリウレタンである。乳児に怪我をさせたり不快を生じさせ得るような角や鋭いまたは角張ったいかなる突起または凸状の形状を特に回避するように、椅子は丸みのある輪郭を伴い適切に成形される。」
(4)「【0010】
座席は、この設計において、接触に対する一定の柔軟性を与えるだけでなく、乳児を支持するために十分な構造安定性を有するように、適切に選定された品質のポリウレタンにより一体成形される。この安定性のために、成形品はリブ(ribs)10を備える。ポリウレタンの成形技術において公知の通り、この材料は、閉鎖的スキン層(ciosed outer skin)と多孔性の内部領域を備えて成形されるという特質を有する。スキン層は効果的なクリーニングを可能にし、内部多孔性構造は、乳児にとって快適なしなやかさ(yielding property)または柔軟性を外面に付与する。ポリウレタンの品質の選定は、公知の規格および判定基準に従って行われる。」
(5)上記(3)、及び(4)より、椅子は、好ましく軟質でありながらも支持力のある材料であり、接触に対する一定の柔軟性を与えるだけでなく、乳児を支持するために十分な構造安定性を有するポリウレタンにより、一体的に形成される、といえる。
(6)図1、図2、及び図4より、座席、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体により、囲われる座席空間と、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体の上端縁から下方に折り返した乳児用椅子の外周部が看取できる。
(7)図4より、座席の下方に、空間が形成されていることが看取できる。

上記記載(1)?(7)から、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「座席、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体、及び前方支持体と側方支持体との間で乳児の脚が座席から外方に突き出るようにする2つの溝を含み、椅子の座席が2つの溝の底部の水平面と等しいかまたはそれより低い水平面にあり、
軟質でありながらも支持力のある材料であり、接触に対する一定の柔軟性を与えるだけでなく、乳児を支持するために十分な構造安定性を有するポリウレタンにより、一体的に形成され、
座席、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体により、囲われる座席空間と、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体の上端縁から下方に折り返した乳児用椅子の外周部を有し、
座席の下方に、空間が形成されている、乳児用支持椅子。」(以下「甲第1号証発明」という。なお、下線は審決で付した。以下同じ。)

2.甲第2号証及び甲第4号証
(1)ページ右下部の「【バンボ(Bumbo)公式】バンボ(Bumbo)マルチシートグレー|成長に合わせて使える¥11,880(税込)」の記載直上の画像より、座席、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体、及び前方支持体と側方支持体との間の2つの溝を含み、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体の上端縁から下方に折り返した乳児用椅子の外周部を有している、バンボ(Bumbo)マルチシートグレーが看取できる。
(2)「「BUMBO^(丸囲みR)」 おかげさまで、15周年を迎えることができました!」(ページ左中央部)
また、甲第2号証に掲載の商品「BUMBO^(登録商標)」の実物撮影写真である甲第4号証には以下の事項が示されている。
(3)甲4-2号証の写真1-2、写真4、及び写真8より、座席の裏面に「MATERIAL POLYURETHANE WORLD PATENT NO: PCT ZA/1999/00030」と刻印されていることが看取できる。
(4)甲4-2号証の写真1乃至写真12、及び甲4-3号証の写真1乃至写真3より、座席、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体、及び前方支持体と側方支持体との間で乳児の脚が座席から外方に突き出るようにする2つの溝を含み、椅子の座席が2つの溝の底部の水平面と等しいかまたはそれより低い水平面にあり、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体の上端縁から下方に折り返した乳児用椅子の外周部を有し、座席の下方に、空間が形成されている、商品「BUMBO^(登録商標)」が看取できる。
(5)甲4-4号証の写真1、及び写真2より、商品「BUMBO^(登録商標)」の発売15周年記念添付品の包装袋に「15th ANNIVERSARY NOVELTY PRESENT」と記載されていることが看取できる。
また、甲第2号証に掲載の商品「BUMBO^(登録商標)」について、平成29年11月17日付け第1回口頭審理において、次のことが確認された。
(6)「商品「BUMBO登録商標」に、「国際出願番号(PCT/ZA1999/00030)」が記載されていること、記念品の包装袋に「15周年記念」と記載されていること、及び商品「BUMBO登録商標」の凹状座部、支持部及び腹対向部が可撓性を有していることを確認した。」(「第1回口頭審理調書の審判長 3」参照。)
(7)なお、被請求人は、平成29年12月1日付け被請求人上申書で、商品「BUMBO^(登録商標)」の「凹状座部」、「支持部」、及び「腹対向部」は可撓性材料で形成されている、と認めている。

上記記載(1)?(7)から、甲第2号証及び甲第4号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「座席、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体、及び前方支持体と側方支持体との間で乳児の脚が座席から外方に突き出るようにする2つの溝を含み、椅子の座席が2つの溝の底部の水平面と等しいかまたはそれより低い水平面にあり、
背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体の上端縁から下方に折り返した乳児用椅子の外周部を有し、
座席の下方に、空間が形成され、
「凹状座部」、「支持部」、及び「腹対向部」は可撓性材料で形成されている、商品「BUMBO^(登録商標)」。」(以下「甲第2号証発明」という。)

3.甲第3号証
(1)「Claims
1.Ergonomic infant sitting aid to be used during the first months of life, in which the infant can sit and play, the size of which is suitable for accomodating a small infant, which is directly placed on a supporting surface, and which is characterised by the fact that it consists of a monoblock comprising a base, two lateral armrests, a back placed between the said armrests, and an opposing element placed in the middle of the front side, the length of the above-said armrests being preferably 3/4 of the side length of the monoblock, the said back exceeding the height of the armrests by 1/3, and the said opposing element being approximately 2/3 of the armrests'height; the said elements, i.e. the base, the armrests, the back and the central opposing element, being made of a compressible but supporting material, possibly of different densities to obtain a pre-established degree of softness of the sitting aid;」
(乳児が座って遊ぶことができる生涯の最初の数ヵ月間に使用される人間工学的な幼児用座席補助具であり、そのサイズは支持面に直接置かれた小児の収容に適しており、モノブロックから成るベースに、2つの側方アームレストと、前記アームレストの間に配置された背もたれと、前側の中央に対向する要素と、が配置され、前記アームレストの長さは、モノブロックから成るベースの3/4で、前記背もたれは前記アームレストの高さを1/3超え、前記対向する要素は前記アームレストの高さの約2/3である、着座補助具の予め設定された程度の柔らかさを得るために、前記要素、すなわち、ベース、肘掛け、背もたれおよび中央の対向する要素が圧縮可能であるが支持材料でできてもよい。)
(括弧内の訳文は、当審が作成した。)

上記記載(1)から、甲第3号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「乳児が座って遊ぶことができる生涯の最初の数ヵ月間に使用される人間工学的な幼児用座席補助具であり、そのサイズは支持面に直接置かれた小児の収容に適しており、モノブロックから成るベースに、2つの側方アームレストと、前記アームレストの間に配置された背もたれと、前側の中央に対向する要素と、が配置され、前記アームレストの長さは、モノブロックから成るベースの3/4で、前記背もたれは前記アームレストの高さを1/3超え、前記対向する要素は前記アームレストの高さの約2/3である、着座補助具の予め設定された程度の柔らかさを得るために、前記要素、すなわち、ベース、肘掛け、背もたれおよび中央の対向する要素が圧縮可能であるが支持材料でできてもよい、幼児用座席補助具。」(以下「甲第3号証発明」という。)

4.甲第7号証
(1)「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】座ったとき腰の部分まで入るようにお尻の着く部分(2)を深くしたもので背もたれ(3)と足乗せ(4)を付けた浴用幼児座椅子。」
(2)「【図2】 本考案の使用中の側面図である。」
(3)上記(2)、及び図2より、使用中は、浴用乳児座椅子に座した時に幼児の足が地面より浮いていることが看取できる。

上記記載(1)?(3)から、甲第7号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「座ったとき腰の部分まで入るようにお尻の着く部分(2)を深くしたもので背もたれ(3)と足乗せ(4)を付け、
使用中は、浴用乳児座椅子に座した時に幼児の足が地面より浮いている、浴用幼児座椅子。」(以下「甲第7号証記載の技術事項」という。)


第6 当審の判断
1.請求理由1:特許法第29条第1項第3号(甲第1号証を主引例)
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲第1号証発明とを対比すると、
ア.後者の「乳児」、「乳児用支持椅子」、「『接触に対する一定の柔軟性を与える』、『ポリウレタン』」、及び「座席の下方の空間」は、それぞれ、前者の「乳児」、「乳児用椅子」、「可撓性を有する材料」、及び「空間」に相当する。
イ.後者の「座席空間」は、座席、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体により、囲われるものであるから、後者の「座席空間」と「座席空間」を囲う「座席、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体」は、「凹状の凹状座部」といえる。そして、椅子の座部に載せるのは、臀部を中心とする部位であることは、一般技術常識であるから、後者の「座席空間」と「座席空間」を囲う「座席、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体」は、「乳児の臀部を中心とする部位を載せる凹状の凹状座部」といえる。
ウ.上記イより、後者の「座席空間」と「座席空間」を囲う「座席、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体」は、「凹状の凹状座部」といえ、後者の「乳児用椅子の外周部」は、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体の上端縁から下方に折り返したものであって、座席の下方は、空間が形成されていて、外周部が、座席、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体を支持していることは明らかであるから、後者の「乳児用椅子の外周部」は、前者の「凹状座部に連設され凹状座部の外周部位で凹状座部を支持する支持部」に相当する。
エ.後者の「乳児用支持椅子」は、軟質でありながらも支持力のある材料であり、接触に対する一定の柔軟性を与えるだけでなく、乳児を支持するために十分な構造安定性を有するポリウレタンにより、一体的に形成されるものであるから、「凹状座部と支持部を、可撓性を有する材料で形成する」といえる。
オ.上記イより、後者の「座席空間」と「座席空間」を囲う「座席、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体」は、「凹状の凹状座部」といえるから、後者の「座席の下方の空間」は、前者の「凹状座部の下方」の「空間」に相当し、「空間を設けた」といえる。

したがって、両者は、
「乳児の臀部を中心とする部位を載せる凹状の凹状座部と、該凹状座部に連設され凹状座部の外周部位で凹状座部を支持する支持部とを有した乳児用椅子であって、
上記凹状座部と支持部を、可撓性を有する材料で形成するとともに、
上記凹状座部の下方に、空間を設けた
乳児用椅子。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本件特許発明1が、「凹状座部に乗った乳児の荷重で凹状座部を変形させ、凹状座部の内壁面を内方へ変位させる変形許容」空間を設けたものであるのに対し、甲第1号証発明は、その点が明らかでない点。

したがって、本件特許発明1が、甲第1号証に記載された発明であるということはできない。

なお、請求人は、
「要素4の「上記凹状座部の下方に、凹状座部に乗った乳児の荷重で凹状座部を変形させ、凹状座部の内壁面を内方へ変位させる変形許容空間を設けた」は、凹状座部13と設置面18の間に空間19が設けられていることを意味し、ここで凹状座部は使用部材の可撓性により、乳児の荷重で変形し、“内壁面を内方へ変位”は、その意味は必ずしも明確ではないが、本件特許明細書の図6及び7の内容からは、変形許容空間側への変位と想定される。甲第1号証には、その図4に示されるように“座席1と底面17とが接していないことによる空間”が設定されており、その座席に使用する部材は軟質ポリウレタンであることから、その空間側への変位は甲第1号証の座席においても当然に帰着する結果である。」(手続補正書12頁8?16行)
「支持力はあるが「柔らかくて復元性のある」軟質ポリウレタンで形成された甲第1号証の図4における符号1で示される座席部は、乳児が座席部に座し、乳児の重力が座席の形状に沿って負荷されるとき、その柔らかさにより、形状に沿って内側への変形が生じることが想定可能であります。そして、甲第1号証の図4における符号1で示される座席部の下方部は空間であり、座席部の変形を許容することが可能であることが理解されます。」(審判事件口頭審理陳述要領書12頁5行?12頁11行)
「甲第1号証の図4の符号1の座席は、明細書の記載から、軟質性のポリウレタンが使われ(段落0006)ており、その軟質性である、柔らかくて復元性のあるというその性状と、座席の下側には空間があるという形状構造が図4からあきらかであることから、乳児が符号1の座席に座すれば、その重みで、柔らかくて復元性のある座席は、下方空間側に変形、沈み込むことが当然に固有的に発揮される機能であり、それ以外にないと、主張するのである。」(審判事件口頭審理陳述要領書12頁24行?13頁4行)
「甲第1号証で開示の乳児用椅子は、その凹状座部に柔軟性があるが支持力のあるポリウレタンを使い、その凹状座部の下方には、変形許容空間が存在することは甲第1号証の図4から明らかであり、この甲第1号証の乳児用椅子に乳児が座すれば乳児の荷重が甲第1号証図4の座席1に掛かり、座席はその柔軟性と支持力から適宜乳児の重力方向である下方向に変形することは、まさに固有の性質・効果の追認・説明に過ぎない。」(平成29年12月4日付け審判事件上申書7頁21?26行)
と主張する。
確かに、甲第1号証発明の「乳児用支持椅子」は、「好ましく軟質でありながらも支持力のある材料であり、接触に対する一定の柔軟性を与えるだけでなく、乳児を支持するために十分な構造安定性を有するるポリウレタンにより、一体的に形成され」るものであるから、乳児の荷重で、何らかの変形が起こるものと推測される。
しかし、座席、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体を含む乳児用支持椅子の長さ、厚さ及び曲率は不明であるし、材料であるポリウレタンの硬度も不明であることから、乳児の荷重により、「乳児用支持椅子」のどの部分がどのように変形するかは、定かでない。
そうすると、甲第1号証発明が、「凹状座部に乗った乳児の荷重で凹状座部を変形させ、凹状座部の内壁面を内方へ変位させる変形許容」空間を設けたものとはいえない。

(2)本件特許発明2乃至5について
本件特許発明2乃至5は、何れも本件特許発明1を直接的もしくは間接的に引用して本件特許発明1を更に限定したものであって、上記のとおり、本件特許発明1が、甲第1号証に記載された発明とすることはできないから、同様に本件特許発明2乃至5は、甲第1号証に記載された発明であるとすることはできない。

(3)小括
よって、上記(1)及び(2)のとおり、本件特許発明1乃至5は、本件の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明でないから、本件特許発明1乃至5についての特許は、請求理由1により無効とすることはできない。

2.請求理由2:特許法第29条第1項第1号及び第2号(甲第2号証を主引例)
(1)商品「BUMBO^(登録商標)」の公知・公用性について
上記第5 2.(2)及び(5)より、商品「BUMBO^(登録商標)」が、甲第2号証の印刷日である平成29年5月29日の15年前の平成14年5月29日以前に販売されていたと推定しうる。
また、上記第5 2. (4)より、商品「BUMBO^(登録商標)」が、甲第1号証に記載された技術を用いているものと推定しうる。
しかし、甲第2号証及び甲第4号証に掲載された商品「BUMBO^(登録商標)」が、いつ頒布されたかを示す証拠はないし、15年前の商品「BUMBO^(登録商標)」が甲第2号証及び甲第4号証に掲載された商品「BUMBO^(登録商標)」と同じ形状で、同じ材料を用い、同じ性能を示していたことを示す客観的な証拠は何ら示されていない。(「第1回口頭審理調書の(別紙)尋問事項【請求人に対して】1.」及び「平成29年12月1日付け請求人審判事件上申書2頁3?5行】参照。)
また、登録商標が同じであっても、その形状、材料、及び性能が変わることは、一般の商慣行に照らしてみても、普通に行われていることである。
以上のことから、甲第2号証及び甲第4号証に掲載された商品「BUMBO^(登録商標)」が、本件特許発明の出願時に公知・公用であったとはいえない。

なお、甲第2号証及び甲第4号証に掲載された商品「BUMBO^(登録商標)」の公知・公用性については、上記のとおりであるが、仮に、甲第2号証及び甲第4号証に掲載された商品「BUMBO^(登録商標)」が本件特許発明の出願前に公知・公用であったとして、以下、検討する。
(2)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲第2号証発明とを対比すると、
ア.後者の「乳児」、「背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体の上端縁から下方に折り返した乳児用椅子の外周部」、「商品「BUMBO^(登録商標)」」、及び「座席の下方の空間」は、それぞれ、前者「乳児」、「外周部位」、「乳児用椅子」、及び「空間」に相当する。
イ.後者の商品「BUMBO^(登録商標)」は、座席、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体を有し、前方支持体と側方支持体との間の2つの溝から乳児の脚が座席から外方に突き出るものであるから、後者の商品「BUMBO^(登録商標)」は、「乳児の臀部を中心とする部位を載せる凹状の凹状座部」を有するといえる。
ウ.後者の「外周部」は、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体の上端縁から下方に折り返したものであって、座席の下方は、空間が形成されていて、外周部が、座席、背もたれ、2つの側方支持体、前方支持体を支持していることは明らかであるから、後者の「乳児用椅子の外周部」は、前者の「凹状座部に連設され凹状座部の外周部位で凹状座部を支持する支持部」に相当する。
エ.上記イより、後者の商品「BUMBO^(登録商標)」は、「乳児の臀部を中心とする部位を載せる凹状の凹状座部」を有するといえるから、後者の「座席の下方の空間」は、前者の「凹状座部の下方」の「空間」に相当し、「空間を設けた」といえる。
オ.後者の本件特許発明の「凹状座部」、「支持部」、及び「腹対向部」に相当する部分は可撓性材料で形成したものであるから、「凹状座部と支持部を、可撓性を有する材料で形成する」といえる。

したがって、両者は、
「乳児の臀部を中心とする部位を載せる凹状の凹状座部と、該凹状座部に連設され凹状座部の外周部位で凹状座部を支持する支持部とを有した乳児用椅子であって、
上記凹状座部と支持部を、可撓性を有する材料で形成するとともに、
上記凹状座部の下方に、空間を設けた
乳児用椅子。」
の点で一致し、上記[相違点1]で相違している。

したがって、本件特許発明1が、甲第2号証発明であるということはできない。

(3)本件特許発明2乃至5について
本件特許発明2乃至5は、何れも本件特許発明1を直接的もしくは間接的に引用して本件特許発明1を更に限定したものであって、上記のとおり、本件特許発明1が、甲第2号証発明とすることはできないから、同様に本件特許発明2乃至5は、甲第2号証発明であるとすることはできない。

(4)小括
よって、上記(1)乃至(3)のとおり、本件特許発明1乃至5は、本件の出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明でもなく、また、公然実施された発明でもないから、本件特許発明1乃至5についての特許は、請求理由2により無効とすることはできない。

3.請求理由3:特許法第29条第2項(甲第1号証を主引例)
(1)本件特許発明1について
上記1.(1)のとおり、本件特許発明1と甲第1号証発明とを対比すると、両者は、
「乳児の臀部を中心とする部位を載せる凹状の凹状座部と、該凹状座部に連設され凹状座部の外周部位で凹状座部を支持する支持部とを有した乳児用椅子であって、
上記凹状座部と支持部を、可撓性を有する材料で形成するとともに、
上記凹状座部の下方に、空間を設けた
乳児用椅子。」
の点で一致し、上記[相違点1]で相違している。

[相違点1]
本件特許発明1が、「凹状座部に乗った乳児の荷重で凹状座部を変形させ、凹状座部の内壁面を内方へ変位させる変形許容」空間を設けたものであるのに対し、甲第1号証発明は、その点が明らかでない点。

そして、上記[相違点1]が、当業者にとって、設計的事項とする根拠はない。

しかも、本件特許発明1は、上記[相違点1]に係る本件特許発明1の発明特定事項を具備することにより、「乳児を凹状座部に座らせると、凹状座部はその可撓性と変形許容空間の存在により沈降したり、湾曲が変わったりして変形する。凹状座部は可撓性を有するので、上記変形により、凹状座部の内壁面を内方へ変位させることができる。つまり凹状座部の内壁面は乳児を包み込むように変形する。このため、乳児が座っている限り、乳幼児は自らの力では椅子から降りることができない。」(【0010】)という作用効果を奏するものである。

なお、他の甲号証を見ても、上記[相違点1]に係る本件特許発明1の発明特定事項は記載されていない。

したがって、本件特許発明1は、甲第1号証発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)本件特許発明2乃至5について
本件特許発明2乃至5は、何れも本件特許発明1を直接的もしくは間接的に引用して本件特許発明1を更に限定したものであって、上記のとおり、本件特許発明1が、甲第1号証発明から容易に発明できたものであるとすることはできないから、同様に本件特許発明2乃至5は、甲第1号証発明から容易に発明できたものであるとすることはできない。

(3)小括
よって、上記(1)及び(2)のとおり、本件特許発明1乃至5は、本件の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明から容易に発明できたものではないから、本件特許発明1乃至5についての特許は、請求理由3により無効とすることはできない。

4.請求理由4:特許法第29条第2項(甲第2号証を主引例)
(1)本件特許発明1について
上記2.(1)のとおり、本件特許発明1と甲第2号証発明とを対比すると、両者は、
「乳児の臀部を中心とする部位を載せる凹状の凹状座部と、該凹状座部に連設され凹状座部の外周部位で凹状座部を支持する支持部とを有した乳児用椅子であって、
上記凹状座部と支持部を、可撓性を有する材料で形成するとともに、
上記凹状座部の下方に、空間を設けた
乳児用椅子。」
の点で一致し、上記[相違点1]で相違している。

そして、上記[相違点1]が、当業者にとって、設計的事項とする根拠はない。

しかも、本件特許発明1は、上記[相違点1]に係る本件特許発明1の発明特定事項を具備することにより、「乳児を凹状座部に座らせると、凹状座部はその可撓性と変形許容空間の存在により沈降したり、湾曲が変わったりして変形する。凹状座部は可撓性を有するので、上記変形により、凹状座部の内壁面を内方へ変位させることができる。つまり凹状座部の内壁面は乳児を包み込むように変形する。このため、乳児が座っている限り、乳幼児は自らの力では椅子から降りることができない。」(【0010】)という作用効果を奏するものである。

なお、他の甲号証を見ても、上記[相違点1]に係る本件特許発明1の発明特定事項は記載されていない。

したがって、本件特許発明1は、甲第2号証発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)本件特許発明2乃至5について
本件特許発明2乃至5は、何れも本件特許発明1を直接的もしくは間接的に引用して本件特許発明1を更に限定したものであって、上記のとおり、本件特許発明1が、甲第2号証発明から容易に発明できたものであるとすることはできないから、同様に本件特許発明2乃至5は、甲第2号証発明から容易に発明できたものであるとすることはできない。

(3)小括
よって、上記(1)及び(2)のとおり、本件特許発明1乃至5は、本件の出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明から容易に発明できたものではなく、また、公然実施された発明から容易に発明できたものではないから、本件特許発明1乃至5についての特許は、請求理由4により無効とすることはできない。

5.請求理由5:特許法第29条第2項(甲第1号証及び甲第3号証)
(1)本件特許発明6について
本件特許発明6は、本件特許発明1を直接的又は間接的に引用し、さらに、「前記凹状座部の後方側部位に、乳児の頭部を支持する高さの背凭れ部を立設した」と限定するものである。
そうすると、本件特許発明6と甲第1号証発明とを対比すると、両者は、上記1.(1)のとおり、
「乳児の臀部を中心とする部位を載せる凹状の凹状座部と、該凹状座部に連設され凹状座部の外周部位で凹状座部を支持する支持部とを有した乳児用椅子であって、
上記凹状座部と支持部を、可撓性を有する材料で形成するとともに、
上記凹状座部の下方に、空間を設けた
乳児用椅子。」
の点で一致し、上記[相違点1]に加え、少なくとも、以下の点で相違している。

[相違点2]
本件特許発明6が、「凹状座部の後方側部位に、乳児の頭部を支持する高さの背凭れ部を立設した」ものであるのに対し、甲第1号証発明は、そのようなものでない点。

ここで、甲第3号証発明の「乳児」,及び「背もたれ」は、それぞれ、本件特許発明6の「乳児」、及び「背凭れ部」に相当する。
甲第3号証発明の「幼児用座席補助具」は、「サイズは支持面に直接置かれた小児の収容に適しており、実際には、ベースと、2つの側方アームレストと、前記アームレストの間に配置された背もたれと、前側の中央に配置された対向する要素とを含むモノブロックから成」るものであるから、「凹状座部」を有するといえる。
そして、甲第3号証発明の「背もたれ」は、「アームレストの高さを1/3超え」るものであり、その機能・作用から、「凹状座部の後方側部位に、乳児の頭部を支持する高さ」で立設したものといえる。
そうすると、上記[相違点2]に係る本件特許発明6の発明特定事項は、甲第3号証発明に記載されている。
そうすると、甲第1号証発明、及び甲第3号証発明は、いずれも、乳児用椅子という技術分野に属し、また、一般に乳児用椅子に関連する技術分野において、乳児を安全に座らせておくことは、自明の課題であるから、甲第1号証発明、及び甲第3号証発明においても、内在する自明の課題である。
そうすると、甲第1号証発明において、甲第3号証発明を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
よって、甲第1号証発明に、甲第3号証発明を適用して、上記相違点2に係る本件特許発明6の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

しかし、上記[相違点1]は、甲第1号証発明にも、甲第3号証発明にも記載されていないし、当業者にとって、設計的事項とする根拠はない。

しかも、本件特許発明1は、上記[相違点1]に係る本件特許発明6の発明特定事項を具備することにより、「乳児を凹状座部に座らせると、凹状座部はその可撓性と変形許容空間の存在により沈降したり、湾曲が変わったりして変形する。凹状座部は可撓性を有するので、上記変形により、凹状座部の内壁面を内方へ変位させることができる。つまり凹状座部の内壁面は乳児を包み込むように変形する。このため、乳児が座っている限り、乳幼児は自らの力では椅子から降りることができない。」(【0010】)という作用効果を奏するものである。

なお、他の甲号証を見ても、上記[相違点1]に係る本件特許発明6の発明特定事項は記載されていない。

したがって、本件特許発明6は、甲第1号証発明、及び甲第3号証発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)小括
よって、上記(1)のとおり、本件特許発明6は、本件の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明から容易に発明できたものではないから、本件特許発明6についての特許は、請求理由5により無効とすることはできない。

6.請求理由6:特許法第29条第2項(甲第2号証及び甲第3号証)
(1)本件特許発明6について
本件特許発明6は、本件特許発明1を直接的又は間接的に引用し、さらに、「前記凹状座部の後方側部位に、乳児の頭部を支持する高さの背凭れ部を立設した」と限定するものである。
そうすると、本件特許発明6と甲第2号証発明とを対比すると、両者は、上記2.(2)のとおり、
「乳児の臀部を中心とする部位を載せる凹状の凹状座部と、該凹状座部に連設され凹状座部の外周部位で凹状座部を支持する支持部とを有した乳児用椅子であって、
上記凹状座部の下方に、空間を設けた
乳児用椅子。」
の点で一致し、上記[相違点1]に加え、少なくとも、上記[相違点2]で相違している。

上記5.(1)のとおり、上記[相違点2]に係る本件特許発明6の発明特定事項は、甲第3号証発明に記載されている。
そうすると、甲第2号証発明、及び甲第3号証発明は、いずれも、乳児用椅子という技術分野に属し、また、一般に乳児用椅子に関連する技術分野において、乳児を安全に座らせておくことは、自明の課題であるから、甲第2号証発明、及び甲第3号証発明においても、内在する自明の課題である。
そうすると、甲第2号証発明において、甲第3号証発明を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
よって、甲第2号証発明に、甲第3号証発明を適用して、上記相違点2に係る本件特許発明6の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

しかし、上記[相違点1]は、甲第2号証発明にも、甲第3号証発明にも記載されていないし、当業者にとって、設計的事項とする根拠はない。

しかも、本件特許発明1は、上記[相違点1]に係る本件特許発明6の発明特定事項を具備することにより、「乳児を凹状座部に座らせると、凹状座部はその可撓性と変形許容空間の存在により沈降したり、湾曲が変わったりして変形する。凹状座部は可撓性を有するので、上記変形により、凹状座部の内壁面を内方へ変位させることができる。つまり凹状座部の内壁面は乳児を包み込むように変形する。このため、乳児が座っている限り、乳幼児は自らの力では椅子から降りることができない。」(【0010】)という作用効果を奏するものである。

なお、他の甲号証を見ても、上記[相違点1]に係る本件特許発明6の発明特定事項は記載されていない。

したがって、本件特許発明6は、甲第2号証発明、及び甲第3号証発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)小括
よって、上記(1)のとおり、本件特許発明6は、本件の出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明から容易に発明できたものではなく、また、公然実施された発明から容易に発明できたものではないから、本件特許発明6についての特許は、請求理由6により無効とすることはできない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては本件特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-21 
結審通知日 2018-02-26 
審決日 2018-03-23 
出願番号 特願2004-21692(P2004-21692)
審決分類 P 1 113・ 112- Y (A47D)
P 1 113・ 111- Y (A47D)
P 1 113・ 121- Y (A47D)
P 1 113・ 113- Y (A47D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平瀬 知明  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 森次 顕
藤本 義仁
登録日 2009-09-11 
登録番号 特許第4373232号(P4373232)
発明の名称 乳児用椅子  
代理人 大田 英司  
代理人 庄司 隆  
代理人 永田 元昭  
代理人 永田 良昭  
代理人 西村 弘  
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