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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1339832
審判番号 不服2017-9565  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-29 
確定日 2018-05-24 
事件の表示 特願2013- 98763「導電性発泡ゴムローラの製造方法および画像形成装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月20日出願公開、特開2014-219560、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年5月8日の出願であって、平成28年12月28日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年2月13日付けで手続補正がされ、同年3月22日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年6月29日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年3月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1-8に係る発明は、以下の引用文献1-7に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2005-47174号公報
2.特開2003-207992号公報
3.特開2006-30649号公報
4.特開2012-83438号公報
5.特開2008-165149号公報
6.特開2007-262387号公報
7.特開2008-90237号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1に、「切断時伸びが200%以上、230%以下」、「100%伸長時のモジュラスが500kPa以上」、「外径の最大値D_(max)と最小値D_(min)との差ΔDが0.15mm以下」という事項を追加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該補正は新規事項を追加するものではないかについて検討すると、上記の追加された事項は、それぞれ当初明細書の段落【0088】及び【0089】、【0026】、【0029】に記載されているから、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-6に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」などという。)は、平成29年6月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
導電性、架橋性、および発泡性を有するゴム組成物を連続的に筒状に押出成形する工程、押出成形した筒状体をカットせずに長尺のまま、マイクロ波架橋装置、次いで熱風架橋装置を通過させて連続的に発泡、および架橋させる工程、ならびに外周面を研磨する工程を経て、切断時伸びが200%以上、230%以下、100%伸長時のモジュラスが500kPa以上で、かつ外径の最大値D_(max)と最小値D_(min)との差ΔDが0.15mm以下である筒状の導電性発泡ゴムローラを製造することを特徴とする導電性発泡ゴムローラの製造方法。
【請求項2】
前記ゴム組成物は、ゴム分と、前記ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以上のカーボンブラックとを含み、可塑剤を除く請求項1に記載の導電性発泡ゴムローラの製造方法。
【請求項3】
前記ゴム分は、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、およびエチレンプロピレンジエンゴムを含む請求項2に記載の導電性発泡ゴムローラの製造方法。
【請求項4】
前記ゴム分は、さらにスチレンブタジエンゴムを含む請求項3に記載の導電性発泡ゴムローラの製造方法。
【請求項5】
外周面近傍の発泡セル径φ1、および内周面近傍の発泡セル径φ2の比φ1/φ2が0.5以上、2以下である導電性発泡ゴムローラを製造する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の導電性発泡ゴムローラの製造方法。
【請求項6】
前記請求項1ないし5のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された導電性ゴムローラを、転写ローラとして組み込む工程を含むことを特徴とする画像形成装置の製造方法。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア「【0001】
本発明は、プリンターや複写機などの電子写真装置に使用される、半導電性ゴム部材の製造方法に関し、詳しくは低硬度かつ非汚染性で、圧縮永久ひずみが小さく、研磨性に優れる半導電性ゴム部材の製造方法に関する。」

イ「【0034】
こうして調製したゴム組成物を成形及び架橋するための装置は、特に限定されない。例えば、一軸や多軸の押出機を使用して上記ゴム組成物を押し出してゴム層を成形した後(ゴムロールを成形する場合は、押し出して棒状のステンレス鋼製等の軸体を取り巻くようにゴム層を成形した後)、加熱して一次架橋する方法;射出成形機、押出ブロー成形機、トランスファー成形機、プレス成形機などを使用して金型でゴム層を成形し(ゴムロールを成形する場合は、軸体を取り囲むようにゴム層を成形し)、成形と同時に成形時の加熱で一次架橋する方法;などが挙げられる。中でも、押出機又は射出成形機を用いる方法が最も適している。成形方法、一次架橋方法、ゴム層の厚みなどに応じて、成形と一次架橋を同時に行うか、成形後に一次架橋するかを選択すればよい。
【0035】
上記のように、成形に続く加熱により、又は、成形時の加熱により、ポリエーテルゴムの側鎖のビニル基間が硫黄で架橋(一次架橋)される。成形における温度は好ましくは100℃以上、より好ましくは120?200℃である。一次架橋での加熱温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃?250℃である。一次架橋の温度が低すぎると架橋時間が長時間必要となったり、架橋密度が低くなったりするおそれがある。逆に、温度が高すぎると架橋が短時間で進行し、成形不良を起こす可能性がある。架橋時間は、架橋方法、架橋温度、ゴム層の厚みなどにより異なるので特に限定されないが、架橋密度と生産効率の面から1分?5時間の範囲で任意に選択すればよい。
【0036】
本発明方法においては、半導電性ゴム部材用ゴム組成物を成形及び一次架橋した後、空気存在下で、170?220℃、好ましくは170?210℃、より好ましくは175?200℃にて、0.5?48時間、好ましくは0.7?24時間、より好ましくは1?12時間加熱して二次架橋する。二次架橋を行わないと、架橋ゴムの圧縮永久ひずみが大きくなるおそれがある。二次架橋を真空下や窒素等不活性気体雰囲気下で、あるいはゴム層にテープ等を巻いた空気遮断状態で行うと硬度が高くなってしまったり、ブルームを起こしたりするおそれがある。
また、二次架橋の温度が低すぎると、ブルームが発生するおそれがあり、逆に、高すぎると得られる架橋物の表面に粘着が生じたりする可能性がある。
一次及び二次架橋の加熱方法としては、電熱加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、UHF(超高周波)加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に通常用いられる方法を適宜選択すればよい。」

ウ「【0039】
本発明方法により得られる半導電性ゴム部材の硬度(Duro type-A)は、通常、15?70、好ましくは20?65、より好ましくは25?60である。硬度が低すぎると研磨しにくくなり、表面粗さの制御が難しくなる等の問題が生じるおそれがある。逆に、硬度が高すぎると感光体の表層である感光層に破壊が生じる可能性がある。
また、半導電性ゴム部材用ゴム組成物を用いて発泡体を成形することも可能であり、その発泡体を使用したゴム部材の硬度(Duro type-E)は、通常、10?70、好ましくは15?65、より好ましくは20?60である。発泡体の硬度が低すぎると研磨しにくくなり、表面粗さの制御が難しくなる等の問題が生じるおそれがある。逆に、発泡体の硬度が高すぎると感光体の表層である感光層に破壊が生じる可能性がある。」

エ「【0041】
本発明方法により得られる半導電性ゴム部材は、プリンター用ゴムロールなどとして使用するため、ゴム層の表面を滑らかに研磨することが好ましい。研磨方法は、通常印刷用ゴムロールに用いられる方法であれば特に限定されない。例えば、砥石などの研磨材を架橋物表面に直接接触させて機械的に研磨する乾式研磨の方法や、研磨材とゴム層との間に水などの液体を介在させてゴム層を機械的に研磨する湿式研磨等の方法が挙げられる。
本発明方法により得られる半導電性ゴム部材は、研磨性が極めて良好である。それは、得られる一次架橋ゴムの伸び(JIS K6251による)が、好ましくは50?600%、より好ましくは100?500%と過度に大きくないことと密接な関係があると考えられる。」
引用文献1の上記記載事項を含め,引用文献1の全記載を総合すると,引用文献1には以下の事項(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「押出機を使用してゴム組成物を押し出して、特にゴムロールを成形する場合は、押し出して棒状のステンレス鋼製等の軸体を取り巻くようにゴム層を成形した後、加熱して一次架橋した後、二次架橋するものであって、一次及び二次架橋の加熱方法としては、電熱加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、UHF(超高周波)加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に通常用いられる方法を適宜選択でき、
半導電性ゴム部材用ゴム組成物を用いて発泡体を成形することも可能であり、
半導電性ゴム部材は、一次架橋ゴムの伸び(JIS K6251による)が、好ましくは50?600%、より好ましくは100?500%と過度に大きくないことと密接な関係があると考えられることで研磨性が極めて良好である、プリンターや複写機などの電子写真装置に使用される、半導電性ゴム部材の製造方法。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
オ「【0025】導電性弾性層1bの形態としては、上記弾性材料のソリッド体(無発泡)あるいは発泡体のどちらで形成しても構わない。」

カ「【0039】研磨加工する場合、使用する弾性材料の切断時伸び(EB、JIS K6251)を750%以下にすることが好ましい。切断時伸びが750%を超えると、研磨加工で導電性弾性層の表面粗さ、例えば十点平均粗さ(Rz)が大きくなったり、不均一になったりし易く、また研磨に時間を要し生産性が悪くなる傾向がある。切断時伸びは、JIS K6251に従って測定する。」

キ「【0046】<2>本発明の画像形成装置
図1は本発明の帯電部材を用いた画像形成装置の構成を示す模式図である。」

ク「【0053】帯電部材1は、電子写真感光体2と接触配置しており、該帯電部材に接続されている外部電源3から印加される直流電圧と交流電圧の重畳電圧、あるいは直流電圧により、感光体2に対して帯電を行う。さらに、帯電部材1は、導電性支持体上1a上に少なくとも導電性弾性層1bと、該導電性弾性層を被覆してなる抵抗層1cから構成される。」

ケ【0066】の【表1】、【0069】の【表2】、【0072】の【表3】から、全ての実施例の「導電性弾性層の切断時伸び」は、510?750%の範囲に、全ての比較例の「導電性弾性層の切断時伸び」は、540?800%の範囲にあることが看て取れる。
引用文献2の上記記載事項を含め,引用文献2の全記載を総合すると,引用文献2には以下の事項(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「導電性支持体上1a上に少なくとも導電性弾性層1bと、該導電性弾性層を被覆してなる抵抗層1cから構成される画像形成装置の帯電部材であって、
発泡体で形成でき、
研磨加工で導電性弾性層の表面粗さ、例えば十点平均粗さ(Rz)が大きくなったり、不均一になったりし易く、また研磨に時間を要し生産性が悪くなる傾向があるため、弾性材料の切断時伸び(EB、JIS K6251)を750%以下にすることが好ましく、実施例においては510?750%の範囲にある導電性弾性層1b。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
コ「【0001】
本発明は電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の画像形成装置において、使用される導電性ゴムローラーに関し、特には感光体等の像担持体に電子写真プロセス、静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像による可転写画像を紙等の記録媒体、転写材に転写させる転写装置の転写ローラーに関するものである。」

サ「【0021】
押出し機(不図示)を用いてゴム組成物を押出し、未加硫のチューブ状の導電性ゴム成形物を得た後、加硫缶にて160℃×30分の加硫を行いチューブ状の導電性ゴム成形物を作成し、次いでφ4?10mmの導電性芯材を前記チューブ状の導電性ゴム成形物の内径部に圧入し、ローラー状の成形体を得た。この成形体を、研磨砥石GC80を取り付けた研磨機(不図示)にセットし、研磨条件として回転速度2000RPM、送り速度500m/分で外径がφ14.5mmになるように研磨し、導電性発泡ゴムローラーを作成した。」

シ「【0025】
(モジュラス)
(株)上島製作所のユニトロンTS-3013を用いて測定し、M_(100)の値によって100%モジュラスを判定した。ゴム材料の100%モジュラスが0.4MPa以上が本発明の導電性ゴムローラーとしては有用であり、これよりモジュラスの小さい場合は、ローラーのC.セット跡による白スジが画像上に現れるという問題が生じ易い。」

ス【0032】の【表2】の実施例3は、M100の欄が0.53MPaであるから、ゴム材料の100%モジュラスが0.53MPaであることが看て取れる。
引用文献3の上記記載事項を含め,引用文献3の全記載を総合すると,引用文献3には以下の事項(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「押出し機を用いてゴム組成物を押出し、未加硫のチューブ状の導電性ゴム成形物を得た後、加硫缶にて160℃×30分の加硫を行いチューブ状の導電性ゴム成形物を作成して、研磨することで導電性発泡ゴムローラーを作成するものであって、ゴム材料の100%モジュラスが0.4MPa以上、特には0.53MPaである、画像形成装置に使用される導電性ゴムローラー。」

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
セ「【0020】
<二次転写ローラの構成について>
次に、本実施例の画像形成装置における二次転写ローラ92について詳細に説明する。
図2(a)は、二次転写ローラ92の概略断面図であり、図2(b)は、本実施例の二次転写ローラ92の一例を試験した際の、伸度(横軸)と引張り応力(縦軸)の関係を示すグラフである。
【0021】
二次転写ローラ92は、直径が6[mm]の芯金92a上に発泡弾性層92bが設けられたローラである。発泡弾性層92bは、二次転写ローラ92の総直径が14[mm]になるように芯金軸側から約4[mm]の厚みで芯金92aを被覆している。なお、ソリッド弾性層を有するローラは、良好な転写ニップを確保するためのアスカーC硬度(500[g]荷重)である、30[°]?50[°]の値を得ようとするとオイル成分等の染み出しが生じるため、発泡弾性層を有するローラが用いられる。
二次転写ローラの抵抗値は106?108[Ω]の範囲内のものである。この抵抗値の測定方法は、測定対象のローラを直径30[mm]のアルミ製シリンダに対して従動回転させながら、Advantest社製R8340超高抵抗計を用いて測定するものである。測定条件は、印加電圧;2kV、印加時間;30秒、当接圧;9.8[N]、二次転写ローラ92の回転周速;115.5[mm/s]である。」

ソ「【0023】
ここで、本実施例の二次転写ローラ92は、発泡弾性層の引張り強度が2[MPa]以上のものであることを特徴とする。引張り強度は、JISK6251法に準拠した以下の方法により測定される。
転写ローラの発泡弾性層から、ダンベル形状(3号)の試験片を切り出す。そして、本試験片を所定の試験装置を用いて伸ばし、破断に至った際の引張り力(単位:N)を計測する。なお、引張り力を試験片の断面積で除したものが引張り応力(単位:[MPa])であり、破断に至った際の引張り応力が転写ローラの引張り強度(単位:[MPa])と定義される。図2(b)に示すグラフより、試験に使用した二次転写ローラの引張り強度が約2.4[MPa]であることが読み取れる。本ローラから複数の試験片を採取して測定を繰り返すことで、引張り強度2.0?2.5[MPa]の範囲内の値が得られた。本測定値のばらつきは、発泡弾性層強度の、ローラの部分におけるばらつきであると考えられる。」
引用文献4の上記記載事項を含め,引用文献4の全記載を総合すると,引用文献4には以下の事項(以下,「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「芯金92a上に発泡弾性層92bが設けられ、発泡弾性層の引張り強度が2[MPa]以上、特に引張り強度2.0?2.5[MPa]の範囲内の値である画像形成装置における二次転写ローラ92。」

5.引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
タ「【0001】
本発明は、電子写真法や静電記録法等による電子写真装置の画像形成装置に使用される導電性ゴムローラーの製造方法や、これにより得られる電子写真装置用ローラー、好ましくは電子写真装置用の転写ローラーに関する。」

チ「【0014】
更に未加硫ゴム成分として、その他の未加硫ゴム成分、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)等を含んでいてもよい。これらの含有量としては未加硫ゴム成分中、30質量部以下であることが好ましい。」
引用文献5の上記記載事項を含め,引用文献5の全記載を総合すると,引用文献5には以下の事項(以下,「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。
「未加硫ゴム成分として、その他の未加硫ゴム成分、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)等を含む画像形成装置に使用される導電性ゴムローラー。」

6.引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。
ツ「【0001】
本発明は、コピー機、プリンター等に使用される電子写真用プロセスの帯電、現像、転写等のローラー、ベルトや、自動車部品等に使用されるパッキング、オイルシール、燃料ホース等に用いられる、エピクロルヒドリン系重合体ゴムを用いたゴム組成物及びその組成物を加硫してなる加硫ゴム成形体に関するものである。」

テ【0092】の【表1】から、実施例1乃至7は、ポリエステル系可塑剤を含まないことが看て取れる。
引用文献6の上記記載事項を含め,引用文献6の全記載を総合すると,引用文献6には以下の事項(以下,「引用発明6」という。)が記載されていると認められる。
「ポリエステル系可塑剤を含まないコピー機、プリンター等に使用される電子写真用プロセスの帯電、現像、転写等のローラー。」

7.引用文献7について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7には、図面とともに次の事項が記載されている。
ト「【0001】
本発明は電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の画像形成装置において使用することのできる導電性ゴムローラの製造方法に関する。また、感光体等の像担持体に電子写真プロセス、静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像による可転写画像を紙等の記録媒体、転写材に転写させて画像を形成する電子写真装置に用いられる転写ローラ等の電子写真装置用ローラに関する。」

ナ「【0008】
本発明により、導電性芯材上に発泡体ゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法において、
エピクロルヒドリンゴムおよびアクリロニトリルブタジエンゴムの少なくとも一方とp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドとを含む発泡体ゴム層形成用材料を、マイクロ波加硫炉を用いてマイクロ波照射及び加熱空気によって加熱して加硫する加硫工程を有し、該加硫工程において、該発泡体形成用ゴム材料を、マイクロ波加硫炉内部を通過する時間が0.5分間以上2.0分間以下で、マイクロ波加硫炉排出時の該発泡体形成用ゴム材料の温度が100℃以上250℃以下になるように昇温し、かつこの間に発生するガスの量を2.0ml/g以上20.0ml/g以下とする。」

ニ「【0040】
上記リボン状に成形した発泡体ゴム層形成用材料を、上記マイクロ波を用いた連続加硫による電性ゴムローラ製造装置の押出機11に投入し、チューブ状に押し出した。
【0041】
押出機11よりチューブ状に成形され押出されたゴムチューブは、押出機11より押し出された直後にマイクロ波加硫装置(UHF)12内に搬送される。ここでマイクロ波照射と加熱空気によって、発泡体ゴム層形成用材料は、マイクロ波加硫炉内の通過時間が0.5?2.0分間で、マイクロ波加硫炉排出時の発泡体ゴム層形成用材料の温度が100?250℃になるように昇温され、この時のガス発生量が2.0?20.0ml/gになるように加熱される。これによって発泡体ゴム層形成用材料は、加硫、発泡される。本例では、表1に示すように、マイクロ波(出力1.0kW)を0.5分間照射してゴムチューブを加熱した。ゴムチューブの温度は100℃となった。
【0042】
つづいて、このゴムチューブを熱風加硫装置(HAV)13の熱風炉内に搬送し、ここで加硫を完了させ、チューブ状の導電性ゴム成形物を作成した。熱風炉による処理は必要に応じて行えばよく、例えば1?5分間で150?250℃加熱を行うことができる。本実施例では、熱風炉における加熱は2.3分間で200℃とした。
【0043】
この後、ゴムチューブが巻引取機14より排出された直後に、ゴムチューブを定尺切断機15により所望の寸法に切断し、チューブ状の導電性ゴム成形物(発泡体ゴム成形物)を作成した。」

ヌ「【0049】
(チューブ内外径の縦横比測定方法)
チューブを任意の場所で切断し、その断面を投影機(ニコン社製、商品名:プロファイルプロジェクターV-12B)にて、内外径各々の最大部(a)と最小部(b)を測定し、その比(a/b)を測定した。このときa/bが1に近いことが好ましい。」
引用文献7の上記記載事項を含め,引用文献7の全記載を総合すると,引用文献7には以下の事項(以下,「引用発明7」という。)が記載されていると認められる。
「発泡体ゴム層形成用材料をマイクロ波を用いた連続加硫による電性ゴムローラ製造装置の押出機11に投入し、チューブ状に押し出し、
押し出された直後にマイクロ波加硫装置(UHF)12内に搬送されて発泡体ゴム層形成用材料は、加硫、発泡され、
さらに、ゴムチューブを熱風加硫装置(HAV)13の熱風炉内に搬送して加硫を完了させ、
該ゴムチューブが巻引取機14より排出された直後に、ゴムチューブを定尺切断機15により所望の寸法に切断して、チューブ状の導電性ゴム成形物(発泡体ゴム成形物)を作成するものであって、
該チューブを任意の場所で切断し、その断面を投影機にて、内外径各々の最大部(a)と最小部(b)を測定し、その比(a/b)が1に近いことが好ましい、電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の画像形成装置において使用することのできる導電性ゴムローラ。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
後者において「半導電性ゴム部材用ゴム組成物を用いて発泡体を成形することも可能」であり、「架橋」も行っているところから、後者の「ゴム組成物」は、前者の「導電性、架橋性、および発泡性を有するゴム組成物」に相当する。
後者の「押出機を使用してゴム組成物を押し出して、特にゴムロールを成形する場合は、押し出して棒状のステンレス鋼製等の軸体を取り巻くようにゴム層を成形」することは、前者の「ゴム組成物を連続的に筒状に押出成形する工程」に相当し、後者の成形された「ゴムロール」は、前者の「筒状の導電性発泡ゴムローラ」に相当することになるのは自明である。
後者において「一次及び二次架橋の加熱方法としては、電熱加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、UHF(超高周波)加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に通常用いられる方法を適宜選択」でき、「一次及び二次架橋」の過程でゴム組成物が発泡することは技術常識であるから、後者は前者の「マイクロ波架橋装置、次いで熱風架橋装置を通過させて連続的に発泡、および架橋させる工程」に相当する構成を有していることは自明である。
後者の「研磨」の工程については、技術常識を踏まえると発泡、および架橋させる工程の後であることは明らかであるから、後者は前者の「(発泡、および架橋させる工程、ならびに)外周面を研磨する工程」を備えていることは自明である。
したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「導電性、架橋性、および発泡性を有するゴム組成物を連続的に筒状に押出成形する工程、押出成形した筒状体を、マイクロ波架橋装置、次いで熱風架橋装置を通過させて連続的に発泡、および架橋させる工程、ならびに外周面を研磨する工程を経て、筒状の導電性発泡ゴムローラを製造する導電性発泡ゴムローラの製造方法。」

(相違点)
(相違点1)
本願発明1は、押出成形した筒状体を「カットせずに長尺のまま」、発泡、および架橋させる工程に送り込んでいるのに対し、引用発明1は、押出成形されたものをどのような状態で発泡、および架橋させる工程に送り込んでいるのか不明な点。
(相違点2)
本願発明1は、外周面を研磨する工程を経て「切断時伸びが200%以上、230%以下」であるのに対して、引用発明1は、「一次架橋ゴムの伸び(JIS K6251による)が、好ましくは50?600%、より好ましくは100?500%」である点。
(相違点3)
本願発明1は、外周面を研磨する工程を経て「100%伸長時のモジュラスが500kPa以上」であるのに対して、引用発明1は、当該数値限定については不明である点。
(相違点4)
本願発明1は、外周面を研磨する工程を経て「外径の最大値D_(max)と最小値D_(min)との差ΔDが0.15mm以下」であるのに対して、引用発明1は、当該数値限定については不明である点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
引用発明2には「弾性材料の切断時伸び(EB、JIS K6251)を750%以下にすることが好ましく、実施例においては510?750%の範囲にある導電性弾性層1b」が記載されているが、「750%以下」の特定とは数値範囲の下限を定めない限定にすぎず、実施例における具体的な数値範囲は、本願発明1の数値範囲と大きく異なっており、本願発明1の「200%以上、230%以下」の範囲を具体的に示すものではない。
つまり、引用発明2における「切断時伸びを750%以下にする」との開示が、本願発明1の数値限定の範囲と一部重複するとしても、本願発明1は、切断時伸びが当該数値限定の範囲をとることによって、「導電性発泡ゴムローラ1の靭性と、それによる研磨の力に対する耐性とを向上して、研磨によって粗く削れられるのを抑制できるため、研磨後の外周面4のがさつきを極力小さくできる(【0024】)」、「320%以下、特に300%以下であるのが好ましい。切断時伸びがこの範囲を超える場合には、却って研磨後の外周面4のがさつきが大きくなってしまうおそれがある。(【0025】)」という顕著な効果を奏するものであるため、当業者にとって、引用発明2から本願発明1の数値限定の範囲とすることは容易であるとは認められない。
そして、他の引用文献3乃至7には、上記数値限定の範囲については記載も示唆もなく、上記数値限定の範囲が本願出願前において周知技術であるともいえないし,当業者にとって設計的事項とする根拠もない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1乃至7に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2乃至6について
請求項2乃至6はいずれも,本願発明1である請求項1に係る発明を引用しており,本願発明1が引用発明1乃至7に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上,請求項2乃至6に係る発明も,引用発明1乃至7に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第7 原査定について
1.理由3(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1乃至6は「切断時伸びが200%以上、230%以下」という発明特定事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1乃至7に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由3を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-05-14 
出願番号 特願2013-98763(P2013-98763)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 孝幸  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 荒井 隆一
吉村 尚
発明の名称 導電性発泡ゴムローラの製造方法および画像形成装置の製造方法  
代理人 特許業務法人あい特許事務所  
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