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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61K
管理番号 1339892
審判番号 不服2018-3175  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-05 
確定日 2018-05-22 
事件の表示 特願2013- 72814「フィラグリン遺伝子発現促進剤」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月27日出願公開、特開2014- 55127、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年3月29日(国内優先権主張 平成24年8月10日)の出願であって、1回目の拒絶理由通知に応答して平成29年1月27日付けで手続補正がなされ、2回目の拒絶理由に応答して平成29年8月25日付けで手続補正がなされ、3回目の平成29年9月7日付け拒絶理由通知に応答して平成29年11月10日付けで意見書が提出されたが、平成29年11月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成30年3月5日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年11月30日付け拒絶査定)の理由は、「本願の請求項1,2,4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」、及び、「本願の請求項1,2,4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いてその発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。」という理由を含むものであり、刊行物として特開2011-168555号公報(以下、「引用文献9」という。)及び特開2003-306438号公報(以下、「引用文献10」という。)を引用するものである。

第3 本願発明
本願請求項1,2,4に係る発明(以下、順に「本願発明1」、「本願発明2」、「本願発明4」ともいう。)は、平成29年8月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1,2,4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。なお、拒絶査定において拒絶の理由を発見しないと指摘されている請求項3,5についても併せて摘示する。
「【請求項1】
フィラグリン遺伝子発現量の生体リズムと、フィラグリン遺伝子発現促進剤の投与により生じるフィラグリン遺伝子発現量のリズムとが同期するタイミングで、当該フィラグリン遺伝子発現促進剤を投与されるように用いられることを特徴とする、サンショウエキスを含む、フィラグリン遺伝子発現促進剤。
【請求項2】
フィラグリン遺伝子発現量の生体リズムが乱れている対象において、フィラグリン遺伝子発現促進剤の投与により、フィラグリン遺伝子発現量のリズムを回復させるタイミングで、当該フィラグリン遺伝子発現促進剤を投与されるように用いられることを特徴とする、サンショウエキスを含む、フィラグリン遺伝子発現促進剤。
【請求項3】
サンショウエキス及び3-(1'-ピペリジン)-プロピオン酸を含む、フィラグリン遺伝子発現促進剤。
【請求項4】
フィラグリン遺伝子発現量の生体リズムと、サンショウエキスを含む、フィラグリン遺伝子発現促進剤の投与により生じるフィラグリン遺伝子発現量のリズムとが同期するタイミングで、当該フィラグリン遺伝子発現促進剤を投与する、美容方法。
【請求項5】
前記フィラグリン遺伝子発現促進剤が、サンショウエキス及び3-(1'-ピペリジン)-プロピオン酸を含む、請求項4に記載の美容方法。」

第4 本願発明1について

1.引用文献9を引用する拒絶理由について

引用文献9には、以下の事項が記載されている。下線は、当審で付した。
(9-i)「【請求項1】
刺激感受性の高い人のための肌状態を改善するために外用で投与すべき素材の鑑別方法であって、ヒトの皮膚乃至はヒトの皮膚細胞に対する、抗菌ペプチドの産生促進作用の度合いを計測し、該促進作用が大きい場合には、肌改善作用が大きい素材であると鑑別し、小さい場合には肌改善作用が低いと鑑別することを特徴とする、外用で投与すべき素材の鑑別方法。
【請求項2】
前記の抗菌ペプチドは、β-ディフェンシン1?4(hBD1?4:human β-defensin-1?4)、又は、LL-37であることを特徴とする、請求項1に記載の外用で投与すべき素材の鑑別方法。
【請求項3】
前記の抗菌ペプチドが、上皮細胞由来の抗菌ペプチドであることを特徴する、請求項1又は2に記載の外用で投与すべき素材の鑑別方法。
【請求項4】
前記の上皮系細胞が、表皮細胞であることを特徴とする、請求項1?3に記載の外用で投与すべき素材の鑑別方法。
【請求項5】
前記上皮系細胞由来の抗菌ペプチドが、β-ディフェンシン1(hBD1:human β-defensin-1)であることを特徴とする、請求項1?4の何れか一項に記載の外用で投与すべき素材の鑑別方法。
【請求項6】
前記hBD1の産生量が、hBD1産生遺伝子発現量で換算されることを特徴とする、請求項1?5の何れか一項に記載の外用で投与すべき素材の鑑別方法。
【請求項7】
前記外用で投与すべき素材が、表皮細胞におけるタイトジャンクション(TJ:Tight junction)の形成促進作用を更に有することを特徴とする、請求項1?6の何れか一項に記載の外用で投与すべき素材の鑑別方法。
【請求項8】
前記刺激感受性の高い人は、テ-プストリッピングで回収された角層において、皮膚における炎症を認めず、重層剥離が10%以上認められる人であることを特徴とする、請求項1?7何れか一項に記載の外用で投与すべき素材の鑑別方法 。
【請求項9】
請求項1?8に記載の 外用で投与すべき素材の鑑別方法であって、外用で投与すべき素材としての的確性を認められた素材を含有してなる組成物。
【請求項10】
化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
皮膚外用剤であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項12】
炎症を有しない人であって、肌荒れ状態が存在し、該肌荒れが無処置においては炎症を誘起すると印象を持った人が使用すべき皮膚外用剤であることを特徴とする、請求項9?11何れか1項に記載の組成物。
【請求項13】
肌に適した化粧料の選択方法であって、被験者からテ-プストリッピングにより採取された皮膚角層を顕微鏡で観察し、その形状より皮膚の刺激性感受性を判定し、感受性が高いと認められた場合に、請求項9?12の何れか一項に記載の組成物を選択することを特徴とする、化粧料の選択方法。」(特許請求の範囲)

(9-ii)「【0002】
皮膚には、熱や痛みなどの外部刺激を生体内に伝える働きに加え、水分の蒸散を防いだり、外部刺激や物理的刺激から体内を保護する皮膚バリア機能が存し、生体の機能維持に重要な役割を果たしている。皮膚バリア機能は、温度、湿度、過度の摩擦、生活リズムの変調、ストレスなどによりその機能が低下することが知られている。皮膚バリア機能が低下すると、皮膚の乾燥が進み、刺激に対し過敏になり、刺激を受け易くなる等の皮膚症状の悪化が生じる。この様な皮膚症状の悪化がさらに進行すると、体外からの細菌や有害物質の侵入による直接的な障害、アレルギ-反応などが生じ易くなり、アトピ-性皮膚炎、皮脂欠乏性湿疹等の皮膚障害の発症に繋がる。また、皮膚は、人目に触れ、見た目の美しさに直接影響するため、多くの人にとって大きな関心事である。肌状態を健康に保つことを目的とし、皮膚バリア機能改善剤(例えば、特許文献1を参照)、肌荒れ改善剤(例えば、特許文献2を参照)、セラミド合成促進剤(例えば、特許文献3を参照)等を含有する皮膚外用剤などの様々な試みがなされている。しかしながら、これらは何れもそれなりに効果を奏するものの、十分に満足のいく効果とは言い難く、新たな作用機序を有する皮膚バリア機能向上作用を有する成分の登場が望まれている。」(段落【0002】)

(9-iii)「【0004】
さらに、皮膚バリア機能が低下又は崩壊した後に生じる細菌又は微生物などに対する先天的な防御機構としては、生体における種々の抵抗因子産生による先天的な防除機構が知られている。この様な抵抗因子(非特許文献3を参照)としては、広い抗微生物活性を有し、ケモカイン様の働きをする抗菌ペプチドが知られている。抗菌ペプチドは、大きくは、好中球が主に産生する6種類のα-ディフェンシン(HNP1?6: human neutrophil peptide 1?6)、並びに、上皮系の細胞が主に産生する6種類のβ-ディフェンシン(hBD1?6: human β-defensin 1?6)に分類される。また、これ以外の抗菌ペプチドとしては、好中球及び上皮系の細胞などに広く産生が認められるLL-37、唾液中に存在し抗真菌活性を有するヒスタチン等が報告されている。抗菌ペプチドは、その名の通り、細菌・真菌等に対する抗菌活性を有しており、生体が細菌や炎症性サイトカインに暴露されたときに著しく誘導的に産生され、生体内における局所感染防御などの免疫系に関する生体防衛機構に深く関与している。僅かに知られている抗菌ペプチドの生物活性としては、β-ディフェンシン2が、歯周炎症原因菌抑制作用(例えば、特許文献4を参照)を示し歯周病炎症の予防又は治療に利用されていること、殺菌作用により炎症又は免疫反応を抑制し皮膚を保護することが知られている。しかしながら、抗菌ペプチドの免疫増強作用以外の生物活性は、ほとんど明らかにされておらず、この様な抗菌ペプチドが、皮膚の細胞形状や接合状態を変化させることにより皮膚バリア機能向上作用を有することは、全く知られていない。本発明者等は、抗菌ペプチドが、抗菌作用を示すと共に、TJ形成促進作用による皮膚バリア機能を向上させることを見出した。このことは、抗菌ペプチド、又は、抗菌ペプチド産生促進作用を有する成分が、TJ形成促進作用による皮膚バリア機能向上作用を有し、新たな肌改善剤として期待することが出来る。さらに、抗菌ペプチド産生促進作用を指標とした肌改善剤を鑑別する方法は、新たな作用機序を有する肌改善剤の鑑別方法として有効であることを意味している。また、この様な抗菌ペプチドには、従来の細菌や炎症等に対する免疫系生体防御反応も同時に期待出来るため、皮膚状態の悪化の前段階における皮膚バリア機能向上作用、悪化進行段階の抗菌作用を併せ持つことが期待される。特に、過敏な肌においては、細菌類が常に皮膚に刺激を与え、過敏性を亢進させていると言われている。このため、抗菌ペプチド産生促進作用を指標とした外用で投与される素材の鑑別方法は、過敏症などこれまで対象にし得なかった肌の改善に寄与すると共に、肌改善剤の鑑別方法として非常に有用である。」(段落【0004】)

(9-iv)「【0018】
本発明の抗菌ペプチド産生促進剤としては、単純な化学物質、動植物由来の抽出物が好適に例示出来、かかる成分を唯1種のみ含有することも出来るし、2種以上を組み合わせて含有させることも出来る。ここで、動植物由来の抽出物とは、動物又は植物由来の抽出物、具体的には、抽出物自体、抽出物の画分、精製した画分、抽出物乃至は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。かかる成分の内、好ましいものとしては、ユキノシタ科アジサイ属、シソ科ムラサキバレンギク属、オトギリソウ科オトギリソウ属、オミナエシ科カノコソウ属、ミカン科サンショウ属、
・・中略・・
さらに好ましくは、シソ科ムラサキバレンギク属エチナシ、オトギリソウ科オトギリソウ属オトギリソウ、オミナエシ科カノコソウ属カノコソウ、ミカン科サンショウ属サンショウ、カバノキ科カバノキ属シラカバ、スイカズラ科スイカズラ属スイカズラ、シソ科アキギリ属セ-ジ、ミカン科ミカン属ダイダイ、ミカン科キハダ属キハダ、ショウガ科ショウガ属ショウガ、ドクダミ科ドクダミ属ドクダミ、セリ科ニンジン属ニンジン、シソ科ヤマハッカ属ヒキオコシ、ボタン科ボタン属ボタン、ナス科トウガラシ属トウガラシ、サルノコシカケ科チョレイマイタケの菌核(チョレイ)、キンポウゲ科オウレン属オウレンより得られる植物抽出物が好適に例示出来る。かかる植物抽出物は、優れた抗菌ペプチド産生促進作用、取り分け、ディフェンシン1産生遺伝子(hBD1mRNA)発現促進作用を有し、皮膚バリア機能向上作用を発現する。」(段落【0018】)

(9-v)「【0025】
また、前記の外用で投与すべき素材の鑑別方法により鑑別された素材の製剤化にあたっては、通常の食品、医薬品、化粧料などの製剤化で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、経口投与組成物であれば、例えば、乳糖や白糖などの賦形剤・・中略・・
【0026】
本発明の組成物としては、医薬品、化粧品、食品、飲料などが好適に例示出来、日常的に摂取出来ることから、食品、化粧品などに適応することが好ましい。その投与経路も、経口投与、経皮投与の何れもが可能であるが、関連臓器への到達効率のよい経皮投与を採用することが好ましい。
【0027】
また、前記の外用で投与すべき素材の鑑別方法により鑑別された素材を皮膚外用剤として使用する場合には、前記必須成分、任意成分を常法に従って処理し、ロ-ション、乳液、エッセンス、クリ-ム、パック化粧料、洗浄料などに加工することにより、本発明の皮膚外用剤は製造できる。皮膚に適応させることの出来る剤型であれば、いずれの剤型でも可能であるが、有効成分が皮膚に浸透して効果を発揮することから、皮膚への馴染みの良い、ロ-ション、乳液、クリ-ム、エッセンスなどの剤型がより好ましい。」(段落【0025】?【0027】)
(9-vi)「【実施例2】
【0032】
<試験例2: 抗菌ペプチド遺伝子(hBD1mRNA)発現量の測定>
以下の手順に従い、β-ディフェンシン1mRNA発現促進作用を評価した。本試験に用いた植物抽出物は、丸善製薬株式会社等より購入した植物抽出物を用いた。以下に試験手順を示す。
1)正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)(倉敷紡績株式会社)をHumedia-KG2(倉敷紡績株式会社)でサブコンフルエントになるまで培養した。
2)トリプシン処理により、NHEKを96well plateに1×10^(4)(cells/well)播種した。
3)被験物質(植物抽出液の固形分)をジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬工業株式会社)により溶解し、10(w/v%)、或いは0.1(w/v%)エキス液を作成した。それらを1.45M Ca^(2+) Humedia-KG2に1/1000量ずつ添加した培地を作成し、播種3日後にその培地と置換し、さらに48時間培養した(各被験物質の最終固形分濃度は1×10^(-2)(w/v%)、或いは1×10^(-4)(w/v%))。また、1.45M Ca^(2+) Humedia-KG2にDMSOのみを1/1000量添加した培地も作成し、それによって培養した細胞をベヒクルコントロール群とした。
4)FastLane Cell Multiplex Kit(QIAGEN社)を用い、mRNAを安定化したライセ-トを調製した。
5)前記4)にて調製したライセ-トをテンプレ-トとし、QuantiTect Multiplex RT-PCR Kit(QIAGEN社)を用いたリアルタイム(RT-PCR)により、各被験物質添加時のhBD1 mRNA発現量を検出し、ddCt法にて相対定量値を算出した。また、内在性コントロ-ルとしてTBP(TATA Binding Protein (TATA box結合因子で、ハウスキ-ピング遺伝子の一種))のmRNA発現量も同時に測定し、ddCt法にて相対定量値を算出した。結果を図3及び図4に
示す。
【0033】
図3及び図4の結果より、本発明の評価に用いた植物抽出物には、何れも顕著なhBD1mRNA発現促進作用が認められた。本発明の抗菌ペプチド産生促進作用を有する成分には、TJ等の細胞間接着構造体の形成促進作用による皮膚バリア機能向上作用が期待される。
【実施例3】
【0034】
<試験例3: 本発明の抗菌ペプチド産生促進作用を有する成分の皮膚バリア機能向上作用評価>
試験例1に記載の方法に従い、前記試験においてヒト抗菌ペプチド産生促進作用を有する成分に関し、TER値を測定することにより皮膚バリア機能を評価した。結果を図5?8に示す。
【0035】
図5?8の結果より、本発明の抗菌ペプチド産生促進作用を有する成分には、TER値の上昇が認められ、皮膚バリア機能向上作用が存することが判かった。このことは、抗菌ペプチド産生促進作用を指標とした外用で投与すべき素材の鑑別方法が、肌改善用の素材の鑑別方法として有用であることを示している。」(段落【0033】?【0035】)

(9-vii)【図5】


これらの記載からみて、引用文献9には、サンショウなどの植物抽出物は、優れた抗菌ペプチド産生促進作用、とりわけ、ディフェンシン1産生遺伝子(hBD1mRNA)発現促進作用を有し、皮膚バリア機能向上作用を発現すること(摘示(9-iv)、(9-vi)、(vii)参照)、抗菌ペプチド又は抗菌ペプチド産生促進作用を有する成分がタイトジャンクション形成促進作用などによる皮膚バリア機能向上作用を有し、アトピー性皮膚炎等の肌改善剤として用いられること(摘示(9-i)?(9-iii)参照)、該組成物を医薬品、化粧料や飲食品等の態様で使用すること(摘示(9-v)参照)が理解できる。
そうすると、引用文献9には、肌改善剤などに用いられる、次の発明(以下、「引用文献9発明」ともいう。)が記載されていると認められる。

<引用文献9発明>
「サンショウの植物抽出物から得られるディフェンシン1産生遺伝子(hBD1mRNA)発現促進剤。」

本願発明1と引用文献9発明を対比する。
引用文献9発明の「サンショウの植物抽出物」は、本願発明1の「サンショウエキス」に相当する。
したがって、本願発明1と引用文献9発明は、「サンショウエキスを含む遺伝子発現促進剤。」である点で一致し、下記の相違点1、2で相違する。

<相違点1>
遺伝子発現促進剤について、本願発明1では、「フィラグリン遺伝子発現促進剤」と特定されているのに対し、引用文献9発明では、「ディフェンシン1産生遺伝子(hBD1mRNA)発現促進剤」である点。
<相違点2>
本願発明1では、遺伝子発現促進剤の用法について、「フィラグリン遺伝子発現量の生体リズムと、フィラグリン遺伝子発現促進剤の投与により生じるフィラグリン遺伝子発現量のリズムとが同期するタイミングで、当該フィラグリン遺伝子発現促進剤を投与されるように用いられる」と特定されているのに対し、引用文献9発明ではそのような特定を有していない点。

相違点1について検討する。
本願発明1の遺伝子発現促進剤と引用文献9発明の遺伝子発現促進剤は、発現を促進する遺伝子が、本願発明1は「フィラグリン遺伝子」であるのに対し、引用文献9発明は「ディフェンシン1産生遺伝子(hBD1mRNA)」である点で異なっているから、相違点1は、実質的な相違点である。
また、引用文献9には、引用文献9発明の「サンショウの植物抽出物」が「フィラグリン遺伝子」の発現を促進することについて記載も示唆もないのであるから、引用文献9発明において「ディフェンシン1産生遺伝子(hBD1mRNA)」を「フィラグリン遺伝子」に変えることは、当業者が格別の創意を要することなくなし得たことではない。

なお、原査定では、「しかしながら、本願発明は、アトピー性皮膚炎や乾燥肌、保湿、バリア等に関する医薬用途を発明とするものであるところ、該疾患への適用は、引用文献9、10に記載されていることである。そして、出願人の主張する、フィラグリン遺伝子のリピート配列が少ないアトピー患者に対して有用であることは、引用文献9、10に記載されたサンショウエキスの皮膚バリア機能や肌荒れに関与する医薬品、化粧料、食品等からも得られるものであり、それら患者に対して治療効果の得られなかったものでもないから、引用文献9、10に記載された発明と本願発明とで対象とされる患者群に違いがあるものではないし、対象患者群を区別して用いるものでもない。
すると、本願発明は、引用文献9、10に記載された発明に対して、新たな作用機序を特定したに過ぎず、その医薬用途に差異があるものではない。」と判断している。

原査定は、引用文献9に記載された発明として、「サンショウの植物抽出物を含むアトピー性皮膚炎などの疾患の治療のための医薬」(以下、「引用文献9医薬発明」という。)を認定するとともに、本願発明1について、「請求項に係る医薬発明の用途が、引用発明の医薬用途を新たに発見した作用機序で表現したに過ぎないものであり、両医薬用途が実質的に区別できないときは、請求項に係る医薬発明の新規性は否定される。」(審査ハンドブック、付属書B、第3章 医薬発明 2.2.2 新規性の判断の手法 (3-2-1)(d))に該当すると判断したものと解される。

この判断について検討するに、上記審査ハンドブックにおける「医薬用途」は、「第3章 医薬発明」の冒頭に定義してあるとおり、「(ii)投与時間・投与手順・投与量・投与部位等の用法又は用量(以下「用法又は用量」という。)が特定された、特定の疾病への適用」を含むものであるところ、本願発明1は、用法又は用量について、「フィラグリン遺伝子発現量の生体リズムと、フィラグリン遺伝子発現促進剤の投与により生じるフィラグリン遺伝子発現量のリズムとが同期するタイミングで、当該フィラグリン遺伝子発現促進剤を投与されるように用いられる」と特定されているのに対し、引用文献9医薬発明は、そのような特定を有していないから、両者は、その医薬用途が異なるものであると認められる。
そうすると、本願発明1は、その医薬発明の用途が、引用発明の医薬用途を新たに発見した作用機序で表現したに過ぎないものであり、両医薬用途が実質的に区別できないときには該当しない。

効果について検討する。
本願明細書を検討すると、「フィラグリン遺伝子が約24時間周期のリズム性を持って発現が増減していることを初めて見出した」(段落【0008】)、「角化細胞の培養細胞系において、フィラグリン遺伝子は約24時間周期のリズムを持って発現が増減しており、培養角化細胞ではコルチゾールによる同調培養を開始してから約18時間後にフィラグリン遺伝子の発現量が最大となる」、「このリズムは概日リズムに相当すると考えられる」、「フィラグリン遺伝子の発現リズムは時計遺伝子PER3の発現リズムと同位相であり、BMAL1とは逆位相」である、「実際にヒトではPER3の発現ピークは午前5?11時、より具体的に午前6?10時、さらに具体的に午前7?9時頃であることが報告されている」、「図2に記載したPER3の発現ピーク時間とフィラグリン遺伝子の発現ピーク時間の比較から、ヒトでのフィラグリン遺伝子の発現ピークはPER3の発現ピークとほぼ同じであると推察される」(段落【0042】、図1、2)と記載されているとともに、実施例2の図3によれば、サンショウなどの各種フィラグリン遺伝子発現促進剤の投与後2時間目に比べ18時間後にはフィラグリンの発現量が大きく増加していることが理解できる。

そうすると、「フィラグリン遺伝子は、in vivoにおいても概日リズムに沿って発現の増減が行われてい」(段落【0022】)るところ、本願発明1は、フィラグリン遺伝子発現促進剤を「フィラグリン遺伝子発現量の生体リズムと、フィラグリン遺伝子発現促進剤の投与により生じるフィラグリン遺伝子発現量のリズムとが同期するタイミングで、当該フィラグリン遺伝子発現促進剤を投与されるように用い」ることによって、患者のフィラグリン遺伝子発現の最大期(患者の概日リズム)とフィラグリン遺伝子発現促進剤の投与によるフィラグリン遺伝子発現の増大効果が最大となるタイミング(投与によるリズム)を同期させることができるので、患者の概日リズムを維持しつつ(同期しない場合には、概日リズムを崩すことになる)、フィラグリン合成を促進することができるものであると理解できる。
そして、本願発明1が奏する上記効果は、「フィラグリン遺伝子は、in vivoにおいても概日リズムに沿って発現の増減が行われてい」る点、及び、「フィラグリン遺伝子発現量の生体リズムと、フィラグリン遺伝子発現促進剤の投与により生じるフィラグリン遺伝子発現量のリズムとが同期するタイミングで、当該フィラグリン遺伝子発現促進剤を投与されるように用い」る点について記載も示唆もない引用文献9に基いて当業者が予測することができたものであるとはいえない。

したがって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献9に記載された発明ではないし、引用文献9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

2. 引用文献10を引用する拒絶理由について

引用文献10には以下の事項が記載されている。下線は、当審で付した。

(10-i)「【請求項1】 ポンツクショウガ、セイヨウノコギリソウ、ヨモギ、サンショウ、タイム、オウバクから選ばれる一種または二種以上の植物抽出物を有効成分として配合することを特徴とするケモカイン発現阻害剤。
【請求項2】 ポンツクショウガ、セイヨウノコギリソウ、ヨモギから選ばれる一種または二種以上の植物抽出物を有効成分として配合することを特徴とするインターロイキン-8発現阻害剤。
【請求項3】 ポンツクショウガ、セイヨウノコギリソウ、ヨモギ、サンショウ、タイム、オウバクから選ばれる一種または二種以上の植物抽出物を有効成分として配合することを特徴とするエオタキシン発現阻害剤。
【請求項4】 ポンツクショウガ、セイヨウノコギリソウ、ヨモギ、サンショウ、タイム、オウバクから選ばれる一種または二種以上の植物抽出物を有効成分として配合することを特徴とするエオタキシン発現阻害に基づくアトピー性皮膚炎用外用剤。
【請求項5】 ポンツクショウガ、セイヨウノコギリソウ、ヨモギ、サンショウ、オウバクから選ばれる一種または二種以上の植物抽出物を有効成分として配合することを特徴とするランテス(RANTES)発現阻害剤。
【請求項6】 ポンツクショウガ、セイヨウノコギリソウ、ヨモギ、サンショウ、オウバクから選ばれる一種または二種以上の植物抽出物を有効成分として配合することを特徴とするランテス(RANTES)発現阻害に基づく抗アレルギー剤。
【請求項7】 ポンツクショウガ、セイヨウノコギリソウ、ヨモギ、サンショウ、タイム、オウバクから選ばれる一種または二種以上の植物抽出物を有効成分として配合することを特徴とするケモカイン発現阻害に基づく抗炎症剤。
【請求項8】 ポンツクショウガ、セイヨウノコギリソウ、ヨモギ、サンショウ、タイム、オウバクから選ばれる一種または二種以上の植物抽出物を有効成分として配合することを特徴とするケモカイン発現阻害に基づく肌荒れ改善用皮膚外用剤。
【請求項9】 下記化合物(1)?(4)の少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とするケモカイン発現阻害剤。
【化1】?【化4】・・・略・・・
【請求項10】 下記化合物(1)?(4)の少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とするインターロイキン-8発現阻害剤。
【化5】?【化8】・・・略・・・
【請求項11】 下記化合物(1)?(4)の少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とするエオタキシン発現阻害剤。
【化9】?【化12】・・・略・・・
【請求項12】 下記化合物(1)?(4)の少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とするエオタキシン発現阻害に基づくアトピー性皮膚炎用外用剤。
【化13】?【化16】・・・略・・・
【請求項13】 下記化合物(1)?(4)の少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とするランテス(RANTES)発現阻害剤。
【化17】?【化20】・・・略・・・
【請求項14】 下記化合物(1)?(4)の少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とするランテス(RANTES)発現阻害に基づく抗アレルギー剤。
【化21】?【化24】・・・略・・・
【請求項15】 下記化合物(1)?(4)の少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とするケモカイン発現阻害に基づく抗炎症剤。
【化25】?【化28】・・・略・・・
【請求項16】 下記化合物(1)?(4)の少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とするケモカイン発現阻害に基づく肌荒れ改善用皮膚外用剤。
【化29】?【化32】・・・略・・・」(特許請求の範囲)

(10-ii)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、ケモカインの遺伝子発現抑制作用に優れ、ケモカインの生理的作用に基づく炎症性・アレルギー性疾患の改善・予防に優れた効果を奏することが期待されると共に、肌荒れ改善作用に優れ、種々の皮膚疾患、肌荒れ等の改善・予防に優れた効果を有するケモカイン遺伝子発現抑制薬剤及びそれを有効成分として含む肌荒れ防止・改善用皮膚外用剤組成物を提供することにある。」(段落【0007】)

(10-iii)「【0034】本発明のケモカイン発現阻害剤を外用剤とした時には、医薬品、医薬部外品、化粧品を指し、例えば軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、浴用剤等、従来皮膚外用剤組成物とされているものであればいずれでもよく、剤型は特に問わない。」(段落【0034】)

(10-iv)「【0048】表1から分かるように、ポンツクショウガを適用した場合には、IL-8、RANTES、およびエオタキシンのいずれにも20%以上の遺伝子発現抑制効果があった。オウバクを適用した場合には、RANTES、およびエオタキシンに20%以上の遺伝子発現抑制効果があった。サンショウを適用した場合には、RANTES、およびエオタキシンに20%以上の遺伝子発現抑制効果があった。セイヨウノコギリソウを適用した場合には、IL-8、RANTES、およびエオタキシンのいずれにも20%以上の遺伝子発現抑制効果があった。タイムを適用した場合には、エオタキシンのみに20%以上の遺伝子発現抑制効果があった。ヨモギを適用した場合には、IL-8、RANTES、およびエオタキシンのいずれにも20%以上の遺伝子発現抑制効果があった。」(段落【0048】)

(10-v)【表1】



これらの記載から見て、引用文献10には、サンショウの抽出物がケモカイン発現阻害剤、エオタキシン発現阻害剤、ランテス(RANTES)発現阻害剤に使用でき、それらの阻害によって抗アレルギー、抗炎症、アトピー性皮膚炎や肌荒れ改善用の皮膚改善剤に使用すること(摘示(10-i),(10-iv)参照)、そして、医薬品、化粧品等の態様で使用すること(摘示(10-iii)参照)も記載されている。
そうすると、引用文献10には、アトピー性皮膚炎や肌荒れ改善用の皮膚改善剤として用いられる、次の発明(以下、「引用文献10発明」ともいう。)が記載されていると認められる。

<引用文献10発明>
「サンショウ抽出物を含むケモカイン、エオタキシン、ランテス(RANTES)の発現阻害剤。」

本願発明1と引用文献10発明を対比する。
引用文献10発明の「サンショウの抽出物」は、本願発明1の「サンショウエキス」に相当する。
したがって、本願発明1と引用文献10発明は、「サンショウエキスを含む剤。」である点で一致し、下記の相違点3、4で相違する。

<相違点3>
「剤」について、本願発明1では、「フィラグリン遺伝子発現促進剤」と特定されているのに対し、引用文献10発明は、「ケモカイン、エオタキシン、ランテス(RANTES)の発現阻害剤」である点。
<相違点4>
本願発明1では、「フィラグリン遺伝子発現量の生体リズムと、フィラグリン遺伝子発現促進剤の投与により生じるフィラグリン遺伝子発現量のリズムとが同期するタイミングで、当該フィラグリン遺伝子発現促進剤を投与されるように用いられる」と特定されているのに対し、引用文献10発明ではそのような特定を有していない点。

相違点3について検討する。
本願発明1は、「フィラグリン遺伝子」の発現を「促進」する剤であるのに対し、引用文献10発明は「ケモカイン、エオタキシン、ランテス(RANTES)」の発現を「阻害」する剤であるから、両者は、剤を作用させる対象(前者はフィラグリン遺伝子であるのに対し、後者はケモカイン等である点。)、及び、効果(前者は促進であるのに対し後者は阻害である点。)が異なっている。
したがって、相違点3は、実質的な相違点である。
また、引用文献10には、引用文献10発明の「サンショウの植物抽出物」が「フィラグリン遺伝子」の発現を促進することについて記載も示唆もないのであるから、引用文献10発明において「ケモカイン、エオタキシン、ランテス(RANTES)の発現阻害剤」を「フィラグリン遺伝子発現促進剤」に変えることは、当業者が格別の創意を要することなくなし得たことではない。

なお、原査定では、「しかしながら、本願発明は、アトピー性皮膚炎や乾燥肌、保湿、バリア等に関する医薬用途を発明とするものであるところ、該疾患への適用は、引用文献9、10に記載されていることである。そして、出願人の主張する、フィラグリン遺伝子のリピート配列が少ないアトピー患者に対して有用であることは、引用文献9、10に記載されたサンショウエキスの皮膚バリア機能や肌荒れに関与する医薬品、化粧料、食品等からも得られるものであり、それら患者に対して治療効果の得られなかったものでもないから、引用文献9、10に記載された発明と本願発明とで対象とされる患者群に違いがあるものではないし、対象患者群を区別して用いるものでもない。
すると、本願発明は、引用文献9、10に記載された発明に対して、新たな作用機序を特定したに過ぎず、その医薬用途に差異があるものではない。」と判断している。

原査定は、引用文献10に記載された発明として、「サンショウ抽出物を含むアトピー性皮膚炎などの疾患の治療のための医薬」(以下、「引用文献10医薬発明」という。)を認定するとともに、本願発明1について、「請求項に係る医薬発明の用途が、引用発明の医薬用途を新たに発見した作用機序で表現したに過ぎないものであり、両医薬用途が実質的に区別できないときは、請求項に係る医薬発明の新規性は否定される。」(審査ハンドブック、付属書B、第3章 医薬発明 2.2.2 新規性の判断の手法 (3-2-1)(d))に該当すると判断したものと解される。

この判断について検討するに、上記審査ハンドブックにおける「医薬用途」は、「第3章 医薬発明」の冒頭に定義してあるとおり、「(ii)投与時間・投与手順・投与量・投与部位等の用法又は用量(以下「用法又は用量」という。)が特定された、特定の疾病への適用」を含むものであるところ、本願発明1は、用法又は用量について、「フィラグリン遺伝子発現量の生体リズムと、フィラグリン遺伝子発現促進剤の投与により生じるフィラグリン遺伝子発現量のリズムとが同期するタイミングで、当該フィラグリン遺伝子発現促進剤を投与されるように用いられる」と特定されているのに対し、引用文献9医薬発明は、そのような特定を有していないから、両者は、その医薬用途が異なるものであると認められる。
そうすると、本願発明1は、その医薬発明の用途が、引用発明の医薬用途を新たに発見した作用機序で表現したに過ぎないものであり、両医薬用途が実質的に区別できないときには該当しない。

効果について検討する。
本願明細書を検討すると、「フィラグリン遺伝子が約24時間周期のリズム性を持って発現が増減していることを初めて見出した」(段落【0008】)、「角化細胞の培養細胞系において、フィラグリン遺伝子は約24時間周期のリズムを持って発現が増減しており、培養角化細胞ではコルチゾールによる同調培養を開始してから約18時間後にフィラグリン遺伝子の発現量が最大となる」、「このリズムは概日リズムに相当すると考えられる」、「フィラグリン遺伝子の発現リズムは時計遺伝子PER3の発現リズムと同位相であり、BMAL1とは逆位相」である、「実際にヒトではPER3の発現ピークは午前5?11時、より具体的に午前6?10時、さらに具体的に午前7?9時頃であることが報告されている」、「図2に記載したPER3の発現ピーク時間とフィラグリン遺伝子の発現ピーク時間の比較から、ヒトでのフィラグリン遺伝子の発現ピークはPER3の発現ピークとほぼ同じであると推察される」(段落【0042】、図1、2)と記載されているとともに、実施例2の図3によれば、サンショウなどの各種フィラグリン遺伝子発現促進剤の投与後2時間目に比べ18時間後にはフィラグリンの発現量が大きく増加していることが理解できる。

そうすると、「フィラグリン遺伝子は、in vivoにおいても概日リズムに沿って発現の増減が行われてい」(段落【0022】)るところ、本願発明1は、フィラグリン遺伝子発現促進剤を「フィラグリン遺伝子発現量の生体リズムと、フィラグリン遺伝子発現促進剤の投与により生じるフィラグリン遺伝子発現量のリズムとが同期するタイミングで、当該フィラグリン遺伝子発現促進剤を投与されるように用い」ることによって、患者のフィラグリン遺伝子発現の最大期(患者の概日リズム)とフィラグリン遺伝子発現促進剤の投与によるフィラグリン遺伝子発現の増大効果が最大となるタイミング(投与によるリズム)を同期させることができるので、患者の概日リズムを維持しつつ(同期しない場合には、概日リズムを崩すことになる)、フィラグリン合成を促進することができるものであると理解できる。
そして、本願発明1が奏する上記効果は、「フィラグリン遺伝子は、in vivoにおいても概日リズムに沿って発現の増減が行われてい」る点、及び、「フィラグリン遺伝子発現量の生体リズムと、フィラグリン遺伝子発現促進剤の投与により生じるフィラグリン遺伝子発現量のリズムとが同期するタイミングで、当該フィラグリン遺伝子発現促進剤を投与されるように用い」る点について記載も示唆もない引用文献10に基いて当業者が予測することができたものであるとはいえない。

したがって、相違点4について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献10に記載された発明ではないし、引用文献10に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

第5 本願発明2について

本願発明2と引用文献9発明を対比すると、両発明は、「サンショウエキスを含む遺伝子発現促進剤。」である点で一致し、少なくとも、下記の相違点5で相違する。

<相違点5>
遺伝子発現促進剤について、本願発明2では、「フィラグリン遺伝子発現促進剤」と特定されているのに対し、引用文献9発明では、「ディフェンシン1産生遺伝子(hBD1mRNA)発現促進剤」である点。

相違点5は、相違点1と同じであるから、改めて検討するまでもなく、「第4 本願発明1について 1.引用文献9を引用する拒絶理由について」に説示したとおりである。
したがって、本願発明2は、引用文献9に記載された発明ではないし、引用文献9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。


本願発明2と引用文献10発明を対比すると、両発明は、「サンショウエキスを含む剤。」である点で一致し、少なくとも、下記の相違点6で相違する。

<相違点6>
「剤」について、本願発明2では、「フィラグリン遺伝子発現促進剤」と特定されているのに対し、引用文献10発明は、「ケモカイン、エオタキシン、ランテス(RANTES)の発現阻害剤」である点。

相違点6は、相違点3と同じであるから、改めて検討するまでもなく、「第4 本願発明1について 2.引用文献10を引用する拒絶理由について」に説示したとおりである。
したがって、本願発明2は、引用文献10に記載された発明ではないし、引用文献10に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。


第6 本願発明4について

本願発明4と引用文献9発明を対比すると、両発明は、「サンショウエキスを含む遺伝子発現促進剤」に係るものである点で一致し、少なくとも、下記の相違点7で相違する。

<相違点7>
遺伝子発現促進剤について、本願発明4では、「フィラグリン遺伝子発現促進剤」と特定されているのに対し、引用文献9発明では、「ディフェンシン1産生遺伝子(hBD1mRNA)発現促進剤」である点。

相違点7は、相違点1と同じであるから、改めて検討するまでもなく、「第4 本願発明1について 1.引用文献9を引用する拒絶理由について」に説示したとおりである。
したがって、本願発明4は、引用文献9に記載された発明ではないし、引用文献9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。


本願発明4と引用文献10発明を対比すると、両発明は、「サンショウエキスを含む剤」に係るものである点で一致し、少なくとも、下記の相違点8で相違する。

<相違点8>
「剤」について、本願発明4では、「フィラグリン遺伝子発現促進剤」と特定されているのに対し、引用文献10発明は、「ケモカイン、エオタキシン、ランテス(RANTES)の発現阻害剤」である点。

相違点8は、相違点3と同じであるから、改めて検討するまでもなく、「第4 本願発明1について 2.引用文献10を引用する拒絶理由について」に説示したとおりである。
したがって、本願発明4は、引用文献10に記載された発明ではないし、引用文献10に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願は、原査定の理由を検討してもその理由によつて拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-05-08 
出願番号 特願2013-72814(P2013-72814)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (A61K)
P 1 8・ 121- WY (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 大輔  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 穴吹 智子
淺野 美奈
発明の名称 フィラグリン遺伝子発現促進剤  
代理人 三橋 真二  
代理人 青木 篤  
代理人 津田 英直  
代理人 中島 勝  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 武居 良太郎  
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