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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1339901
審判番号 不服2017-6922  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-15 
確定日 2018-05-01 
事件の表示 特願2013- 73981「偏光板の製造方法、偏光板、光学フィルム、及び、画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月23日出願公開、特開2014-199284〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年3月29日の出願であって、平成28年9月6日付けの拒絶理由の通知に対し、同年12月26日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成29年3月9日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して同年5月15日に審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成28年12月26日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「ポリビニルアルコール系フィルムに、染色処理、架橋処理、及び、延伸処理を少なくとも施した後に、乾燥処理を施して偏光子を製造する工程、
前記偏光子の少なくとも片面に、活性エネルギー線硬化型接着剤層を介して透明保護フィルムを積層する工程を含む偏光板の製造方法であって、
前記乾燥処理が、染色処理、架橋処理、及び、延伸処理を少なくとも施したポリビニルアルコール系フィルムを複数のロールにより所定方向に搬送しながら加熱する処理であり、
前記ロール間の距離L_(1)と乾燥処理直前のポリビニルアルコール系フィルムの幅W_(1)の比(L_(1)/W_(1))が0.01以上0.4以下であることを特徴とする偏光板の製造方法。」(以下、「本願発明」という。)

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、[A]この出願の請求項1、2、4に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、[B]この出願の請求項1、2、4に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、[C]この出願の請求項3に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2012-14001号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-14001号公報(平成24年1月19日出願公開、以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。
なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。

(1)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、幅方向での収縮率を低減することができ、かつカールの発生を抑制することができる、偏光子を製造する方法を提供することを目的とする。」

(2)「【0011】
即ち、本発明は、
ポリビニルアルコール系フィルムに、染色工程、架橋工程および延伸工程を少なくとも施した後に、乾燥工程を施す偏光子の製造方法において、
前記乾燥工程は、前記各工程が施されたフィルムに、延伸することなく、フィルムの幅方向を拘束しながら乾燥する拘束乾燥工程を連続的にまたは断続的に有し、かつ、
前記乾燥工程の全乾燥時間を(T)、
前記乾燥工程の開始から前記拘束乾燥工程の開始までの時間を(T0)、
前記拘束乾燥工程の開始から終わりまでの時間を(T1)、
前記時間(T1)おいて前記拘束乾燥工程を施している時間を(T2)とした場合に、
(T0/T)=0?0.2、
(T2/T)=0.5?1、および、
(T2/T1)=0.8?1、を満足することを特徴とする偏光子の製造方法。」

(3)「【0014】
前記偏光子の製造方法において、前記拘束乾燥工程は、前記フィルムを熱ロールに接触させることにより行なうことができる。」

(4)「【発明の効果】
【0019】
上記本発明の偏光子の製造方法では、ポリビニルアルコール系フィルムに、染色工程、架橋工程および延伸工程を施すことにより得られたフィルムについて、乾燥工程を施すにあたり、延伸することなく、幅方向を拘束しながら乾燥する拘束乾燥工程を、時間を制御した所定の条件で施すことで、得られる偏光子の幅方向での収縮およびカールを抑制することができる。
【0020】
一般に、フィルムの乾燥を、フィルムが非拘束の状態において熱風等のみにより行う非拘束乾燥は、フィルムの端部で自由収縮が生じる。即ち、非拘束乾燥によりフィルムから水分が除去されるとフィルムの端部での収縮率がフィルムの中央部の収縮率よりも大きくなり、フィルムの端部と中央部とで収縮率の差が大きくなる。その結果、フィルムの幅方向で寸法変化が大きくなり、カールが発生する。カールの発生は、偏光子(偏光板等)等の光学フィルムを液晶パネル等に貼り合せる際の歩留まりを低下させ、環境試験での耐久性(例えば耐クラック性等)の低下、打抜き時の歩留まりの低下を招く。さらには、上記のように、非拘束乾燥では、フィルムの幅方向での収縮が起こるため、得られる偏光子の外観劣化が見られ、また、面積歩留まりが低下する点からも好ましくない。
【0021】
一方、本発明の乾燥工程において採用している拘束乾燥は、フィルムの幅方向を拘束しながら乾燥が行なわれるため、フィルムから水分を除去する乾燥時においてはフィルムの幅方向に張力がかかった状態にあり、フィルム端部での収縮が抑制される。そのため、フィルムの端部と中央部との収縮率の差を小さく制御することができ、フィルムの幅方向での寸法安定性が高くなる。また、前記拘束乾燥は、幅方向に張力がかかった状態にはあるが、幅方向に延伸が施されているものではなく、また、本発明の乾燥工程は、フィルムの走行方向にも延伸することなく行なっているため、乾燥工程の延伸に起因して収縮が生じることもない。
【0022】
また本発明では、乾燥工程においてフィルム端部での収縮の大きさが熱伝導係数(即ち、フィルム中の水分率)に依存していることを見出し、特に、フィルム中の水分率が多い、乾燥の初期段階で、フィルム端部で収縮が生じることを見出した。なお、乾燥工程の初期段階に比べてフィルムの水分率が低下している、後期段階では、水分の乾燥は、フィルム内の水拡散係数(cm^(2)/sec)に依存しており、偏光子の幅方向の収縮に及ぼす影響は少ないことも見出した。そこで、本発明では、前記拘束乾燥を乾燥工程の初期段階から施し、しかも、初期段階から全乾燥工程の時間の1/2以上の時間になるように、拘束乾燥を長時間に亘って行なっている。乾燥条件(乾燥温度、時間等)は、乾燥工程が施されるフィルムの水分率と得られる偏光子の水分率から設定されるが、本発明のように乾燥工程の初期段階において拘束乾燥を長時間施すことで、フィルム端部での収縮を乾燥の初期段階で抑えることにより、フィルムの元幅を維持して、広幅で寸法安定性の良好な偏光子を得ることができる。」

(5)「【0060】
また、図1Cでは、時間(T1)を、非拘束工程の時間(T4)と各拘束乾燥工程の時間(T2´)で表しているが、非拘束工程の時間(T4)とその前後の各拘束乾燥工程の時間(Lの前をT2´-1、後をT2´-2とする)の時間は、(T4)/{(T2´-1)+(T2´-2)}の値が、0.4以下、好ましくは0.3以下の関係を満足することが、実質的に、時間(T1)における、非拘束乾燥工程の影響を小さくすることができる。」

(6)「【0065】
以下では、拘束乾燥工程を、熱ロールにより行なう場合において、図1Cに示されるように各時間を設定する場合について、図2を参照しながら説明する。図2では、熱ロールR1?R5が連続して設けられている。上流側の熱ロールR1の前にはガイドロールG1が、下流側の熱ロールR6の後にはガイドロールG2が、それぞれ設けられている。図1では、5つの熱ロールが設けられているが、熱ロールの数に特に制限はない。熱ロールは、通常、1?40個程度、さらには4?30個であるのが好ましい。また熱ロール数は、フィルムの両面を均等に乾燥できるように偶数個であるのが好ましい。また、熱ロールは、オーブン等の加熱炉内に設けることができる。図2では、連続して設けられた、熱ロールR1?R5がオーブンA内に設置されており、オーブンAの内壁(上下)には、各熱ロールを通過するフィルムFの表面に向けて熱風を吹き付けることができる複数の熱風口Bが設けられている。
【0066】
図2において、上流側のフィルム(偏光子)Fは、前記各工程が施されたフィルムである。当該フィルムFが、オーブン内への入口a1に導入され、出口a2から取り出されるまでの時間が、乾燥工程の全乾燥時間(T)に該当する。当該フィルムFが、オーブン内への入口a1から、熱ロールR1への最初に接する点r11までに要する時間が、乾燥工程の開始から前記拘束乾燥工程の開始までの時間(T0)に該当する。図2では、拘束乾燥工程が熱ロールR1?R5を通過して行なわれる。各熱ロールR1?R5にフィルムFが接している時間が、図1Cにおける拘束乾燥工程を施している時間(T2´)に該当する。例えば、熱ロールR1の前記点r11と熱ロールR1からフィルムFが離れる点r12において、フィルムFが、熱ロールR1に接している時間が時間(T2´)に該当する。他の熱ロールR2乃至R5においても同様である。また、フィルムFが、熱ロールR1への最初に接する点r11から、熱ロールR5からフィルムFが離れる点r52までの時間が、拘束乾燥工程の開始から終わりまでの時間を(T1)に該当する。また、熱ロールR1の点12と熱ロールR2の点21の間のフィルムFの空走距離(L)に要する時間が、非拘束工程の時間(T4)に該当する。なお、フィルムFが、熱ロールR5から離れる点r52から出口a2までの時間が時間(T3)に係わり、図2では、時間(T3)は、非拘束乾燥工程として表されている。」

(7)「【0068】
なお、図2において、熱ロール(熱ロール)の温度測定は、接触式温度計により測定した値である。また、前記本発明の乾燥工程における各時間(T)、(T0)、(T1)、(T2)、(T3)、(T4)は、熱ロールへの前記フィルムの接触時間(合計の接触時間)等を考慮して、熱ロール直径、熱ロールの周速、熱ロール間の空走距離(L)等により制御できる。通常、熱ロール直径は、通常、200?2000mmである。熱ロールの回転速度は、通常、3?100m/minの範囲が好ましく、さらには6?100m/minの範囲が好ましく、さらには10?100m/minの範囲で設定するのが好ましい。熱ロール間の空走距離(L)は50?1000mmの範囲が好ましく、50?500mmとするのが好ましい。」

(8)「【図2】



(9)「【0080】
前記偏光子と透明保護フィルムとの接着処理には、接着剤が用いられる。接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。前記接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5?60重量%の固形分を含有してなる。上記の他、偏光子と透明保護フィルムとの接着剤としては、紫外硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等があげられる。電子線硬化型偏光板用接着剤は、上記各種の透明保護フィルムに対して、好適な接着性を示す。特に、接着性を満足することが困難であったアクリル樹脂に対しても良好な接着性を示す。また本発明で用いる接着剤には、金属化合物フィラーを含有させることができる。」

(10)「【0092】
実施例1
原反フィルムとして、厚さ75μm、幅400mmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度2400、ケン化度99.9モル%)を用いた。当該ポリビニルアルコールフィルムに、下記の順番にて、下記各工程を施した。
【0093】
(膨潤工程)
膨潤浴の処理液としては、純水を用いた。上記ポリビニルアルコールフィルムを膨潤浴に搬送し、30℃に調整した純水中に45秒間浸漬し、膨潤させながら2倍に一軸延伸した。
【0094】
(染色工程)
染色浴の処理液としては、ヨウ素:ヨウ化カリウム(重量比=0.5:8)の濃度0.3重量%のヨウ素染色溶液を用いた。上記膨潤処理されたポリビニルアルコールフィルムを染色浴に搬送し、30℃に調整した前記ヨウ素染色溶液に、46秒間浸漬しながら、元長に対して延伸倍率3倍まで、一軸延伸しながら、染色した。
【0095】
(架橋工程)
架橋浴の処理液としては、ホウ酸を3重量%、ヨウ化カリウムを3重量%含有するホウ酸水溶液を用いた。上記処理されたポリビニルアルコールフィルムを架橋浴に搬送し、30℃に調整した前記ホウ酸水溶液に、19秒間浸漬しながら、元長に対して総延伸倍率4倍まで、一軸延伸した。
【0096】
(延伸工程)
延伸浴の処理液としては、ホウ酸を4重量%、ヨウ化カリウムを5重量%含有するホウ酸水溶液を用いた。上記処理されたポリビニルアルコールフィルムを延伸浴に搬送し、60℃に調整したホウ酸水溶液に、13秒間浸漬しながら、元長に対して総延伸倍率6倍まで、一軸延伸した。
【0097】
(洗浄工程)
洗浄浴の処理液としては、ヨウ化カリウムを3重量%含有する水溶液を用いた。上記処理されたポリビニルアルコールフィルムを洗浄浴に搬送し、30℃に調整した当該水溶液に、10秒間浸漬した。洗浄工程を施した後に得られたフィルムの水分率は32重量%であり、幅220mmであった。
【0098】
(乾燥工程)
次いで、上記処理されたポリビニルアルコールフィルムを、図1(当合議体注:「図2」の誤記。)に示すような装置(オーブン)を用いて乾燥を行った。熱ロール(ロール直径500mm、周速を6m/min)を5個、図1(当合議体注:「図2」の誤記。)に示すように上下に交互に配置した。各熱ロール間の空走距離(L)は、全て105mmとした。各熱ロールのR1?R5の温度を70℃に設定した。またオーブン内には、送風手段として、温度75℃、風速19m/sを送風しながら行った。オーブン内の温度は70℃であった。
乾燥工程の全乾燥時間(T)は、90秒間、
乾燥工程の開始から前記拘束乾燥工程の開始までの時間(T0)は10秒間、
拘束乾燥工程の開始から終わりまでの時間(T1)は59.2秒間、
時間(T1)おいて拘束乾燥工程を施している時間を(T2´)の合計(T2)は55秒間、
ロール間の空走距離(L)における非拘束工程の時間(T4)は1.05秒間であり、非拘束工程の時間(T4)の合計(4箇所)は4.2秒間であった。
また、1番目の熱ロールR1を通過前の水分率は25重量%、であった。
上記乾燥により得られたフィルム(偏光子)の水分率は14重量%であった。また、当該フィルムは厚みは26μm、幅189mmであった。」

(11)「【0104】
実施例および比較例で得られた偏光子および当該偏光子から得られた偏光板について下記の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0105】
偏光板の作成は、偏光子の両面に接着剤により、30℃の温度条件下で、透明保護フィルムをロール貼合機で貼り合わせた後、60℃で4分間乾燥させることにより行って。透明保護フィルムとして、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムを用いた。接着剤は、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール樹脂(平均重合度1200、ケン化度98.5モル%、アセトアセチル化度5モル%)100重量部に対し、メチロールメラミン32重量部を、30℃の温度条件下に、純水に溶解し、固形分濃度3.2%になるように調整した接着剤水溶液を用いた。」

(12)「【0112】
【表1】



2 引用発明
上記1の記載から、引用文献1には、実施例1によって得られた偏光子を用いた偏光板の作成方法に関する以下の発明が記載されている。

「膨潤処理されたポリビニルアルコールフィルムを染色浴に搬送し、30℃に調整した前記ヨウ素染色溶液に、46秒間浸漬しながら、元長に対して延伸倍率3倍まで、一軸延伸しながら、染色し、
ポリビニルアルコールフィルムを架橋浴に搬送し、30℃に調整した前記ホウ酸水溶液に、19秒間浸漬しながら、元長に対して総延伸倍率4倍まで、一軸延伸し、
ポリビニルアルコールフィルムを延伸浴に搬送し、60℃に調整したホウ酸水溶液に、13秒間浸漬しながら、元長に対して総延伸倍率6倍まで、一軸延伸し、
ポリビニルアルコールフィルムを洗浄浴に搬送し、30℃に調整した当該水溶液に、10秒間浸漬し、得られたフィルムの水分率は32重量%、幅220mmであり、
ポリビニルアルコールフィルムを、連続して設けられた、熱ロールがオーブン内に設置されており、オーブンの内壁(上下)には、各熱ロールを通過するフィルムの表面に向けて熱風を吹き付けることができる複数の熱風口が設けられた装置(オーブン)を用いて乾燥を行い、熱ロール(ロール直径500mm、周速を6m/min)を5個、上下に交互に配置し、各熱ロール間の空走距離(L)は、全て105mmとし、各熱ロールの温度を70℃に設定し、またオーブン内には、送風手段として、温度75℃、風速19m/sを送風しながら行い、フィルム(偏光子)を得て、
偏光子の両面に接着剤により、30℃の温度条件下で、透明保護フィルムをロール貼合機で貼り合わせた後、60℃で4分間乾燥させることにより乾燥を行い、接着剤は、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール樹脂100重量部に対し、メチロールメラミン32重量部を、30℃の温度条件下に、純水に溶解し、固形分濃度3.2%になるように調整した接着剤水溶液を用いた、
偏光板の作成方法。」(以下、「引用発明」という。)

第5 対比
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1) 引用発明の「ポリビニルアルコールフィルム」は、本願発明の「ポリビニルアルコール系フィルム」に相当する。
引用発明の「ポリビニルアルコールフィルム」を「染色浴に搬送し、30℃に調整した前記ヨウ素染色溶液に、46秒間浸漬しながら、元長に対して延伸倍率3倍まで、一軸延伸しながら、染色」することは、本願発明の「染色処理」に相当する。引用発明の「ポリビニルアルコールフィルム」を「架橋浴に搬送し、30℃に調整した前記ホウ酸水溶液に、19秒間浸漬しながら、元長に対して総延伸倍率4倍まで、一軸延伸」することは、本願発明の「架橋処理」に相当する。引用発明の「ポリビニルアルコールフィルム」を「延伸浴に搬送し、60℃に調整したホウ酸水溶液に、13秒間浸漬しながら、元長に対して総延伸倍率6倍まで、一軸延伸」することは、本願発明の「延伸処理」に相当する。引用発明の「ポリビニルアルコールフィルム」を「各熱ロールを通過するフィルムの表面に向けて熱風を吹き付けることができる複数の熱風口が設けられた装置(オーブン)を用いて乾燥を行」うことは、本願発明の「乾燥処理」に相当する。

(2) 引用発明の「フィルム(偏光子)」は、本願発明の「偏光子」に相当する。引用発明は、上記(1)の工程を順に行って、「フィルム(偏光子)を得」ており、この各工程は、本願発明の「ポリビニルアルコール系フィルムに、染色処理、架橋処理、及び、延伸処理を少なくとも施した後に、乾燥処理を施して偏光子を製造する工程」に相当する。
そして、引用発明の「各熱ロール」は、本願発明の「複数のロール」に相当する。引用発明の「乾燥処理」は、「周速を6m/min」とした「各熱ロールを通過するフィルムの表面に向けて熱風を吹き付け」ることによって行っており、本願発明の「複数のロールにより所定方向に搬送しながら加熱する処理」との要件を満たす。したがって、引用発明の「乾燥処理」は、本願発明の「染色処理、架橋処理、及び、延伸処理を少なくとも施したポリビニルアルコール系フィルムを複数のロールにより所定方向に搬送しながら加熱する処理」との要件を満たす。

(3) 引用発明の「透明保護フィルム」及び「偏光板」は、それぞれ、本願発明の「透明保護フィルム」及び「偏光板」に相当する。引用発明の「接着剤」と、本願発明の「活性エネルギー線硬化型接着剤」とは、「接着剤」である点で一致する。引用発明は、「偏光子の両面に接着剤により」、「透明保護フィルムをロール貼合機で貼り合わせ」て、「偏光板の作成」を行っており、接着剤によりフィルムを貼り合わせると、接着剤層を介してフィルムが積層されることとなることは技術常識であるから、これらの工程は、本願発明の「前記偏光子の少なくとも片面に」、「接着剤層を介して透明保護フィルムを積層する工程」及びその工程「を含む偏光板の製造方法」に相当する。

(4) したがって、本願発明と引用発明とは、上記(1)ないし(3)の点で共通する「偏光板の製造方法」であるといえる。

2 一致点及び相違点
以上のことから、本願発明と引用発明とは、
「ポリビニルアルコール系フィルムに、染色処理、架橋処理、及び、延伸処理を少なくとも施した後に、乾燥処理を施して偏光子を製造する工程、
前記偏光子の少なくとも片面に、接着剤層を介して透明保護フィルムを積層する工程を含む偏光板の製造方法であって、
前記乾燥処理が、染色処理、架橋処理、及び、延伸処理を少なくとも施したポリビニルアルコール系フィルムを複数のロールにより所定方向に搬送しながら加熱する処理である、
偏光板の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(1)相違点1
「接着剤」について、本願発明は、「活性エネルギー線硬化型」接着剤を用いているのに対し、引用発明は、「アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール樹脂100重量部に対し、メチロールメラミン32重量部を、30℃の温度条件下に、純水に溶解し、固形分濃度3.2%になるように調整した接着剤水溶液」を用いている点。

(2)相違点2
本願発明は「前記ロール間の距離L_(1)と乾燥処理直前のポリビニルアルコール系フィルムの幅W_(1)の比(L_(1)/W_(1))が0.01以上0.4以下」であるのに対し、引用発明は、「ポリビニルアルコールフィルムを洗浄浴に搬送し、30℃に調整した当該水溶液に、10秒間浸漬し、得られたフィルム」、すなわち、乾燥処理直前のフィルムの「幅」は「220mm」であり、「各熱ロール間の空走距離(L)は、全て105mm」であるため、前記「L_(1)/W_(1)」を計算すると、「0.01以上0.4以下」の範囲を上回る点。

第6 判断
1 相違点1について
引用文献1の【0080】には、「偏光子と透明保護フィルムとの接着剤としては、紫外硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等があげられる。電子線硬化型偏光板用接着剤は、上記各種の透明保護フィルムに対して、好適な接着性を示す。」と記載されている。
したがって、上記記載に基づいて、引用発明において、接着剤として、「電子線硬化型偏光板用接着剤」などの「活性エネルギー線硬化型」のものを用いることは、当業者が容易に想到し得た事項である。

2 相違点2について
引用文献1の【0020】には、「フィルムが非拘束の状態において熱風等のみにより行う非拘束乾燥」により、「フィルムの幅方向で寸法変化が大きくなり、カールが発生する」ため、「貼り合わせる際の歩留まりの低下」や「偏光子の外観劣化」が見られ、好ましくないことが記載されている。また、引用文献1の【0022】には、乾燥工程の特に初期段階で端部で収縮が生じるため、「初期段階から全乾燥工程の時間の1/2以上の時間になるように、拘束乾燥を長時間に亘って行なっている」ことが記載されている。そして、引用文献1の【0068】には、「熱ロール間の空走距離(L)」を調整することも記載されている。
したがって、上記記載に基づいて、引用発明において、乾燥工程の非拘束乾燥の時間を短くするため、「熱ロール間の空走距離(L)」を、【0068】に記載の「50?500mm」のうち、例えば50mmとすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。その場合、結果として、「前記ロール間の距離L_(1)と乾燥処理直前のポリビニルアルコール系フィルムの幅W_(1)の比(L_(1)/W_(1))」は「0.01以上0.4以下」となる。
よって、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

3 そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、非拘束乾燥の時間を短くすることにより、偏光子の幅方向での収縮や変形を抑制した引用発明から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-23 
結審通知日 2018-03-09 
審決日 2018-03-20 
出願番号 特願2013-73981(P2013-73981)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 裕勝野田 定文  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 多田 達也
河原 正
発明の名称 偏光板の製造方法、偏光板、光学フィルム、及び、画像表示装置  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
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