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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1339926
審判番号 不服2017-1506  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-02 
確定日 2018-05-29 
事件の表示 特願2016-148557「情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月 6日出願公開、特開2017-120617、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月28日に出願された特願2015-256812号の一部を、平成28年7月28日に新たな特許出願としたものであって、平成28年8月19日付けで拒絶理由通知がなされ、平成28年10月21日付けで手続補正がされ、平成28年11月4日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年2月2日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、当審において平成29年8月18日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年10月23日付けで手続補正がされ、平成30年1月31日付けで拒絶理由通知(最後)(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成30年4月2日付けで手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成28年11月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献A-Cに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2003-114136号公報
B.特開2014-56548号公報
C.特開2002-352054号公報


第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由(平成30年1月31日付け拒絶理由通知)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-7に係る発明は、以下の引用文献1-5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2015-33084号公報
2.特開2002-49823号公報
3.特開2006-309606号公報
4.特開2006-318294号公報
5.特開2014-56548号公報 (拒絶査定時の引用文献B)


第4 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、平成30年4月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-4は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
複数の発信機を識別する発信機識別情報と、ユーザを所定の場所に誘導するためのコンテンツとを関連付けて保持するコンテンツ保持手段と、
前記ユーザが携帯する携帯端末装置が前記複数の発信機に含まれる発信機から受信した近距離通信信号に含まれる、前記発信機を識別する発信機識別情報を、前記携帯端末装置から受信する識別情報受信手段と、
前記識別情報受信手段が受信した前記発信機識別情報と前記ユーザを識別するユーザ識別情報とを対応付けて蓄積する履歴蓄積部と、
複数のビジネスオーナーによって生成され登録された提供コンテンツ指示テーブルであって、前記ユーザに提供すべき複数のコンテンツを示す情報と、前記複数のコンテンツのそれぞれに対応する複数のコンテンツ提供条件とを対応付けて格納する提供コンテンツ指示テーブルと、
を含む蓄積手段と、
前記履歴蓄積部に蓄積された前記発信機識別情報の履歴が前記複数のコンテンツ提供条件のいずれかを満足する場合に、満足されたコンテンツ提供条件に対応する前記コンテンツを示す情報を用いて前記コンテンツ保持手段からコンテンツを取得し、前記携帯端末装置に提供するコンテンツ提供手段と、
を備え、
前記コンテンツ提供条件は、前記携帯端末装置が受信した前記発信機識別情報の順序が、特定の動線を示す順序であることを含み、
前記コンテンツ提供手段は、前記提供コンテンツ指示テーブルを参照して、少なくとも、前記携帯端末装置が受信した前記発信機識別情報の順序が、前記特定の動線を示す順序である場合に、所定のコンテンツを前記ユーザに提供する情報処理装置。
【請求項2】
ユーザが携帯する携帯端末装置が複数の発信機に含まれる発信機から受信した近距離通信信号に含まれる、前記発信機を識別する発信機識別情報を、前記携帯端末装置から受信する識別情報受信ステップと、
前記識別情報受信ステップにおいて受信した前記発信機識別情報と前記ユーザを識別するユーザ識別情報とを対応付けて、履歴蓄積部に蓄積するステップと、
複数のビジネスオーナーによって生成され登録された、前記ユーザに提供すべき複数のコンテンツを示す情報と、前記複数のコンテンツのそれぞれに対応する複数のコンテンツ提供条件とを対応付けて、提供コンテンツ指示テーブルに格納するステップと、
を含む蓄積ステップと、
前記履歴蓄積部に蓄積された前記発信機識別情報の履歴が前記複数のコンテンツ提供条件のいずれかを満足する場合に、満足されたコンテンツ提供条件に対応する前記コンテンツを示す情報を用いて、前記発信機識別情報とユーザを所定の場所に誘導するためのコンテンツとを関連付けて保持するコンテンツ保持手段からコンテンツを取得し、前記携帯端末装置に提供するコンテンツ提供ステップと、
を含み、
前記コンテンツ提供条件は、前記携帯端末装置が受信した前記発信機識別情報の順序が、特定の動線を示す順序であることを含み、
前記コンテンツ提供ステップにおいては、前記提供コンテンツ指示テーブルを参照して、少なくとも、前記携帯端末装置が受信した前記発信機識別情報の順序が、前記特定の動線を示す順序である場合に、所定のコンテンツを前記ユーザに提供する情報処理方法。
【請求項3】
ユーザが携帯する携帯端末装置が複数の発信機に含まれる発信機から受信した近距離通信信号に含まれる、前記発信機を識別する発信機識別情報を、前記携帯端末装置から受信する識別情報受信ステップと、
前記識別情報受信ステップにおいて受信した前記発信機識別情報と前記ユーザを識別するユーザ識別情報とを対応付けて、履歴蓄積部に蓄積するステップと、
複数のビジネスオーナーによって生成されて登録された、前記ユーザに提供すべき複数のコンテンツを示す情報と、前記複数のコンテンツのそれぞれに対応する複数のコンテンツ提供条件とを対応付けて、提供コンテンツ指示テーブルに格納するステップと、
を含む蓄積ステップと、
前記履歴蓄積部に蓄積された前記発信機識別情報の履歴が前記複数のコンテンツ提供条件のいずれかを満足する場合に、満足されたコンテンツ提供条件に対応する前記コンテンツを示す情報を用いて、前記発信機識別情報とユーザを所定の場所に誘導するためのコンテンツとを関連付けて保持するコンテンツ保持手段からコンテンツを取得し、前記携帯端末装置に提供するコンテンツ提供ステップと、
をコンピュータに実行させる情報処理プログラムであって、
前記コンテンツ提供条件は、前記携帯端末装置が受信した前記発信機識別情報の順序が、特定の動線を示す順序であることを含み、
前記コンテンツ提供ステップにおいては、前記提供コンテンツ指示テーブルを参照して、少なくとも、前記携帯端末装置が受信した前記発信機識別情報の順序が、前記特定の動線を示す順序である場合に、所定のコンテンツを前記ユーザに提供する情報処理プログラム。
【請求項4】
複数の発信機を識別する発信機識別情報と、ユーザを所定の場所に誘導するためのコンテンツとを関連付けて保持するコンテンツ保持手段と、
前記ユーザが携帯する携帯端末装置が前記複数の発信機に含まれる発信機から受信した近距離通信信号に含まれる、前記発信機を識別する発信機識別情報を、前記携帯端末装置からコンテンツの提供処理を行なう情報処理装置に通知する識別情報通知手段と、
前記識別情報通知手段により通知された前記発信機識別情報と前記ユーザを識別するユーザ識別情報とを対応付けて蓄積する履歴蓄積部と、
複数のビジネスオーナーによって生成され登録された提供コンテンツ指示テーブルであって、前記ユーザに提供すべき複数のコンテンツを示す情報と、前記複数のコンテンツのそれぞれに対応する複数のコンテンツ提供条件とを対応付けて格納する提供コンテンツ指示テーブルと、
を含む蓄積手段と、
前記履歴蓄積部に蓄積された前記発信機識別情報の履歴が前記複数のコンテンツ提供条件のいずれかを満足する場合に、満足されたコンテンツ提供条件に対応する前記コンテンツを示す情報を用いて前記コンテンツ保持手段からコンテンツを取得し、前記情報処理装置から前記携帯端末装置に提供するコンテンツ提供手段と、
を備え、
前記コンテンツ提供条件は、前記携帯端末装置が受信した前記発信機識別情報の順序が、特定の動線を示す順序であることを含み、
前記コンテンツ提供手段は、前記提供コンテンツ指示テーブルを参照して、少なくとも、前記携帯端末装置が受信した前記発信機識別情報の順序が、前記特定の動線を示す順序である場合に、所定のコンテンツを前記ユーザに提供する情報処理システム。」


第5 引用文献・引用発明等
(1)引用文献1
平成30年1月31日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審において付加した。以下、同様。)

ア.「【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る情報提供システム1の構成例を示す図である。
情報提供システム1は、例えば、店舗端末10、ユーザ端末20、サーバ30で構成される。店舗端末10及びユーザ端末20は、インターネット等のネットワークを介してサーバ30と接続可能である。
また、店舗端末10とユーザ端末20は、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)の無線通信モジュールを具備する。
【0025】
図1に示すように、店舗端末10は、サーバ30に店舗を一意に識別可能な店舗IDまたは端末IDをサーバ30に送り((1)問合せ)、サーバ30は、BLE無線通信のアドバタイジング情報を作成し、店舗端末10に回答する((2)回答)。アドバタイジング情報には、店舗識別情報が含まれる。また、サーバ30は作成したアドバタイジング情報をデータベースに格納しておく。
店舗端末10は、サーバ30からの回答((2)回答)を元にアドバタイジング情報を構成し、BLEのアドバタイズ機能によりアドバタイジング情報を配信する((3)アドバタイジング)。
【0026】
店舗端末10が配信するBLE無線通信を受信可能な範囲にあるユーザ端末20がバックグラウンド処理としてBLEの無線通信を受信可能な状態にしていると、ユーザ端末20はアドバタイジング情報を受信し、店舗識別情報に紐づくアプリケーションがユーザ端末20に登録してあれば起動して、サーバ30への問合せを可能にする。
【0027】
ユーザ端末20のアプリケーションによりサーバ30へアクセスすると((4)問合せ)、アドバタイジング情報とユーザを識別する情報がサーバ30へ送られ、サーバ30は、データベースに格納されているアドバタイジング情報と一致した場合には、店舗識別情報に紐づく情報をユーザ端末20に送る((5)情報提供)。
【0028】
店舗識別情報に紐づく情報は、例えば、おすすめ情報等の広告や、店舗の位置情報、転送先のURL、クーポン等のお得情報等である。
また、サーバ30は、情報提供((5)情報提供)の他に、例えば、サーバ30が管理している当該店舗の来店ポイントを加算するサービスや、顧客の会員認証を行うサービスを実行するようにしてもよい。」

イ.「【0044】
サーバ30は、例えば、複数の店舗の管理センター等に設置される汎用コンピュータである。サーバ30の構成は、図2に示す通りであり、詳細な説明は省略する。
サーバ30の通信制御部34は、インターネット等のネットワークによる通信を制御する通信制御装置、通信ポート等であり、BLE無線通信機能を備える必要はない。」

ウ.「【0055】
アドバタイジング情報43は、図1において説明したように、サーバ30において作成される。
サーバ30に装備された乱数生成ソフトウエア又はハッシュ生成ソフトウエアを使用して、サーバ30の制御部31が発生した乱数もしくはハッシュ値の一部57と、店舗端末10から送信される店舗端末を一意に識別する情報を元にした事業者コード51と端末番号53からなる店舗識別コード55を合体してデバイス名47を構成する。
【0056】
サーバ30は、乱数もしくはハッシュ値の一部57を所定の間隔ごとに変更してデバイス名47を構成する。所定の間隔は例えば1時間である。
1時間ごとに乱数もしくはハッシュ値の一部57が変更されることにより、ユーザ端末20からの問合せ(図1の(4))時にユーザ端末20から送られるアドバタイジング情報43の作成時刻を1時間単位で特定することが可能である。
【0057】
これにより、例えば、ユーザ端末20から送られるアドバタイジング情報43が、何時間も前にサーバ30により作成されたものであった場合には、サーバ30からの情報提供(図1の(5))を行わないようにすることができる。
【0058】
図7は、本実施の形態の情報提供システム1による情報提供サービスの処理の流れを示すフローチャートである。
【0059】
店舗端末10の制御部31は、アドバタイジングを開始するためのアプリケーションを起動する(ステップ101)。
そして、店舗端末10の制御部31は、端末ID(又は店舗ID)をサーバ30に送り、アドバタイジング情報43の作成を依頼する問合せを行う(ステップ102)。
【0060】
サーバ30の制御部31は、店舗端末10からの問合せを受信し、アドバタイジング情報43を構成するためのサービスID45及びデバイス名47を発行する(ステップ111)。
【0061】
すなわち、端末ID又は店舗IDから事業者コード51と端末番号53から成る店舗識別コード55を作成し、更に、乱数又はハッシュ発生ソフトウエアを起動して乱数又はハッシュ値の一部57を求め、店舗識別コード55と合体させてデバイス名47を作成する(図6(b))。
このとき、乱数又はハッシュ発生ソフトウエアは、例えば1時間等の所定の時間ごとに発生させるようにすればよい。
【0062】
サービスID45は、当該店舗が提供するサービスを特定するための識別情報であり、例えば、情報提供、ポイント付与、会員認証のサービスを識別可能な情報である。
【0063】
次に、サーバ30の制御部31は、発行したサービスID45とデバイス名47を記憶部32等に構成されたデータベース39に格納する(ステップ112)。
図8は、データベース39の構成例を示す図である。
【0064】
データベース39には、サービスID45、デバイス名47とともに、日時61及び店舗ID63が格納される。
デバイス名47の乱数又はハッシュ値の一部57は、例えば1時間等の所定の時間ごとに変更されるので、サービスID45が同じであっても、時刻によって、デバイス名47は変わることになる。
【0065】
次に、サーバ30の制御部31は、作成したサービスID45及びデバイス名47を店舗端末10へ回答する(ステップ113)。
【0066】
店舗端末10の制御部31は、サーバ30からの回答を受信し、サービスID45及びデバイス名47を取得する(ステップ103)。
店舗端末10が取得するデバイス名47は、所定の時間間隔ごと(例えば1時間ごと)に変わる。
【0067】
店舗端末10の制御部31は、取得したサービスID45及びデバイス名47を元にアドバタイズ・パケット41を生成し(ステップ104)、通信制御部34を介してBLE無線通信のアドバタイズ機能によりアドバタイズ・パケット41を配信する(ステップ105)。
【0068】
一方、ユーザ端末20は、予め、バックグラウンド・サービスを起動し(ステップ121)、BLE無線通信のスキャンを開始させておく(ステップ122)。
【0069】
BLE無線通信のスキャンをバックグラウンドで稼働させているユーザ端末20が、店舗端末10から配信されているBLE無線通信の電波到達範囲内に入ると、ユーザ端末20の制御部31は、店舗端末10から配信されるアドバタイズ・パケット41を検知する(ステップ123)
【0070】
ユーザ端末20の制御部31は、アドバタイズ・パケット41から、アドバタイジング情報43を取得する(ステップ124)。アドバタイジング情報43は、サービスID45、デバイス名47であり、このほか、ユーザ端末20の制御部31は、BLE無線通信の受信電波強度を取得するようにしてもよい。
【0071】
バックグラウンドでBLE無線通信をスキャンすると、ユーザ端末20は、多くの場所でアドバタイズ・パケット41を検知する可能性がある。
しかしながら、BLE無線通信ではマスター側(ユーザ端末20)とスレーブ側(店舗端末10)が同じサービス・プロファイルを実装している必要があるので、ユーザ端末20の制御部31は、取得したアドバタイジング情報43のサービスID45がユーザ端末20に実装されていない場合には、当該アドバタイズ・パケット41を無視するフィルタリングをすることが可能である。
当該アドバタイズ・パケット41を無視した場合には、ユーザ端末20の制御部31は、ステップ122に戻り、更にBLEのスキャンを継続する。
【0072】
ユーザ端末20(マスター側)に当該サービスIDが実装されている場合には、ユーザ端末20の制御部31は、デバイス名47の店舗識別コード55または事業者コード51を抽出し、ユーザ端末20の記憶部32に当該店舗識別コード55または事業者コード51が格納されているか否かを判定し、格納されている場合には、当該受信履歴を記憶部32に保存し、サーバ30へアクセスするためのアプリケーションの選択画面を表示する(ステップ125)。これにより、サーバ30へアクセスするか否かをユーザが選択可能にする。
【0073】
ユーザがアプリケーションの起動を選択すると、ユーザ端末20の制御部31は、アドバタイジング情報43と当該アプリケーションのユーザIDをサーバ30に送信し、問い合わせる(ステップ126)。このほか、アドバタイズ・パケット41の受信(検知)日時をサーバ30に送るようにしてもよい。
【0074】
サーバ30の制御部31は、ユーザ端末20から送信されたアドバタイジング情報43を、データベース39に格納されている情報と照合し、店舗ID63を特定する(ステップ114)。
【0075】
このとき、ユーザ端末20から送信されたアドバタイジング情報43を構成するデバイス名47と一致するデバイス名47がデータベース39にない場合には、故意にデバイス名47が改ざんされたか、あるいは、何らかの原因でデバイス名47が変化したものと判断して処理を終了する。
【0076】
また、ユーザ端末20から送信されたアドバタイジング情報43を構成するデバイス名47と一致するデバイス名47がデータベース39に存在した場合であっても、その日時61が所定の日時よりも前の古いものである場合には、情報又はサービスの提供をせずに処理を終了する。
【0077】
サーバ30の制御部31は、ユーザ端末20から送信されたアドバタイジング情報43を構成するデバイス名47と一致するデバイス名47がデータベース39に存在し、その日時が所定の日時以降の新しいものである場合には、データベース39に格納されている当該店舗IDに紐づいた広告等の情報をユーザ端末20に送信する(ステップ115)。
このとき、送信する情報は、店舗IDと紐付けて、予めデータベース39に格納しておく。
【0078】
ユーザ端末20の制御部31は、サーバ30から送信された情報を受信し、表示部36に表示する(ステップ127)。
店舗IDに紐づく情報は、例えば、店舗広告等のコンテンツであり、タイトル、内容、店舗の位置情報、転送先のURL、クーポン情報等で構成される。」

エ.「【0081】
図7のフローチャートでは、店舗IDに紐づく情報を提供する処理について説明したが、本実施の形態の情報提供システム1は、店舗に入店した顧客に来店ポイントを自動的に付与するサービスや、来店履歴を自動的に登録するサービス、顧客の会員認証を行うサービスを提供することも可能である。
【0082】
来店ポイント付与サービス、あるいは、来店履歴を登録するサービスについて、説明する。
この場合、まず、店舗への入店を認識可能になるように、店舗端末10またはBLE無線通信装置11から送信される電波強度を調整する。電波強度の調整は、例えば、ソフトウエアまたはアンテナ、筺体によって行うことが可能である。
【0083】
そして、店舗端末10によるアドバタイズ・パケットの配信処理を図7のステップ101?105、ステップ111?113と同様に行い、ユーザ端末20がステップ121?ステップ124によってアドバタイジング情報43を取得したら、ユーザ端末20は、サーバ30にアクセスするアプリケーションを起動し、サーバ30にユーザIDおよびアドバタイジング情報43、アドバタイズ・パケット41の検知(受信)日時を送る。サーバ30は、アドバタイジング情報43をデータベース39の情報と照合し(ステップ114)、予めサーバ30に設置されている店舗ID63に紐づく来店ポイント付与アプリケーション、あるいは、来店履歴登録アプリケーションを起動し、ユーザIDに紐づく来店ポイント情報のポイント加算、あるいは、ユーザIDに紐づく来店履歴情報にアドバタイズ・パケット41の検知日時を登録する。
【0084】
以上の処理により、店舗端末10が設置されている店舗への顧客の来店に伴い、自動的に来店ポイントを付与したり、来店履歴を登録することが可能になる。」

・上記エ.には、引用文献1の情報提供システムが、店舗IDに紐ずく情報の提供に加え、来店履歴を自動的に登録できるサービスを提供できることが記載されている。

・上記ア.の段落【0024】によれば、引用文献1には、店舗端末10、ユーザ端末20、サーバ30で構成される情報提供システム1における、インターネット等のネットワークを介して店舗端末10及びユーザ端末20と接続可能であるサーバ30、が記載されている。

・また、上記ア.の段落【0024】には、前記店舗端末10と前記ユーザ端末20は、Bluetooth Low Energy(BLE)の無線通信モジュールを具備する、ことが記載されている。

・上記ア.の段落【0025】、上記ウ.の段落【0059】-【0065】によれば、前記サーバ30の制御部31は、店舗端末10から、店舗を一意に識別可能な店舗IDが送られると、店舗IDに対応するデバイス名47とサービスID45からなるアドバタイジング情報を作成し、店舗端末10に回答し、アドバタイジング情報をサーバ30のデータベース39に格納する、ことが記載されているといえる。

・上記ア.の段落【0025】、上記ウ.の段落【0067】によれば、店舗端末10は、サーバ30からの回答を元にアドバタイジング情報を含むアドバタイジング・パケット41を構成し、BLEのアドバタイズ機能によりアドバタイジング・パケット41を配信する、ことが記載されているといえる。

・上記ア.の段落【0026】、上記ウ.の段落【0068】-【0070】、【0073】の記載によれば、ユーザ端末20は、バックグラウンド処理としてBLEの無線通信を受信可能な状態とすることで、店舗端末10が配信するBLE無線通信のアドバタイジング・パケット41を受信し、アドバタイジング・パケット41からアドバタイジング情報を取得し、アプリケーションが起動されると、アドバタイジング情報43と当該アプリケーションのユーザIDとアドバタイズ・パケット41の受信(検知)日時、をサーバ30に送信する、ことが記載されているといえる。

・上記ア.の段落【0027】-【0028】、上記ウ.の段落【0074】、【0077】の記載によれば、サーバ30は、ユーザ端末20のアプリケーションからアクセスされ、送信されたアドバタイジング情報が、データベース39に格納されているアドバタイジング情報と一致する場合、店舗IDに紐づく情報であるおすすめ情報等の広告や、店舗の位置情報、転送先のURL、クーポン等のお得情報等をユーザ端末20に送るものである。
さらに、上記エ.には、サーバ30は、来店履歴登録アプリケーションを起動し、ユーザIDに紐づく来店履歴情報にアドバタイズ・パケット41の検知日時を登録するものである。
したがって、引用文献1には、サーバ30は、ユーザ端末20のアプリケーションからアクセスされ、送信されたアドバタイジング情報が、データベース39に格納されているアドバタイジング情報と一致する場合、店舗IDに紐づく情報であるおすすめ情報の広告や、店舗の位置情報、転送先のURL、クーポン等のお得情報等をユーザ端末20に送り、さらに、来店履歴登録アプリケーションを起動し、ユーザIDに紐づく来店履歴情報にアドバタイズ・パケット41の検知日時を登録する、ことが記載されているといえる。

以上総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「店舗端末10、ユーザ端末20、サーバ30で構成される情報提供システム1における、インターネット等のネットワークを介して店舗端末10及びユーザ端末20と接続可能であるサーバ30であって、
前記店舗端末10と前記ユーザ端末20は、Bluetooth Low Energy(BLE)の無線通信モジュールを具備し、
前記サーバ30の制御部31は、店舗端末10から、店舗を一意に識別可能な店舗IDが送られると、店舗IDに対応するデバイス名47とサービスID45からなるBLE無線通信のアドバタイジング情報を作成し、店舗端末10に回答し、アドバタイジング情報をサーバ30のデータベース39に格納し、
前記店舗端末10は、サーバ30からの回答を元にアドバタイジング情報を含むアドバタイジング・パケット41を構成し、BLEのアドバタイズ機能によりアドバタイジング・パケット41を配信し、
前記ユーザ端末20は、バックグラウンド処理としてBLEの無線通信を受信可能な状態とすることで、店舗端末10が配信するBLE無線通信のアドバタイジング・パケット41を受信し、アドバタイジング・パケット41からアドバタイジング情報を取得し、アプリケーションが起動されると、アドバタイジング情報43と当該アプリケーションのユーザIDとアドバタイズ・パケット41の受信(検知)日時、をサーバ30に送信し、
前記サーバ30は、ユーザ端末20のアプリケーションによりアクセスされ、送信されたアドバタイジング情報が、データベース39に格納されているアドバタイジング情報と一致する場合、店舗IDに紐づく情報であるおすすめ情報等の広告や、店舗の位置情報、転送先のURL、クーポン等のお得情報等をユーザ端末20に送り、さらに、来店履歴登録アプリケーションを起動し、ユーザIDに紐づく来店履歴情報にアドバタイズ・パケット41の検知日時を登録する、
サーバ30。」

(2)引用文献2
平成30年1月31日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0029】商品情報を確認および購入指示を繰り返している間、消費者は実際に商品を運ぶ必要はない。あくまで、携帯端末を用いた商品情報の確認および購入指示をするのみである。消費者が、商品情報の確認および購入指示を終了すると、商品引渡し所104にて、購入指示を出した商品を実際に確認し、決済所105にて料金を決済する。ここで、消費者が来店した日や購入した物などの履歴を記憶装置107に顧客固有情報として記憶する。この顧客固有情報は2度目の来店の際の広告に反映される。また、決済は、現金でもいいし、金融会社2を介して利用者IDで特定される利用者の口座から引き落とししてもいい。また、利用者が購入した金額をポイントとして記録し、ポイントが予め定められた値に達したら店から利用者に対して何かサービスをしてもよく、また、加入者毎にポイントの合計値を管理センタ3のデータベースに蓄積し、データベースに蓄積されたある加入者のポイント値が予め定められた値に達したら、管理センタ3を制御する制御装置(コンピュータ)が、その加入者に対し広告の配信を1件無料でサービスしたり、所定期間配信料金の割引を行うようにしてもよい。」

(3)引用文献3
平成30年1月31日付けの拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【要約】
【課題】 施術毎に設定される賞美期限と来店履歴情報に応じて、顧客に対して適切なタイミングで予約を勧誘する情報を配信する情報配信サーバ、情報配信方法および情報配信プログラムを提供する。
【解決手段】 情報配信サーバ1は、顧客データ記憶部15aと、予約情報記憶部17と、サービス効果が持続可能な持続可能期限値を格納するサービスメニュー記憶部16と、来店履歴データを顧客毎に作成する来店履歴登録機能部8と、日付順に並べられた来店履歴データの、隣り合う予約日同士の差を来店間隔値として算出し、持続可能期限値を基に得られる顧客の来店傾向値を、日付順が若いほど重要度が増すように重み付けし、重み付けされた来店傾向値の平均値をとり、平均値と持続可能期限値と乗算した値を最近の来店履歴データの予約日と加算した日付を次回来店予測日として算出するメール配信日設定機能部9とを備える。」

(4)引用文献4
平成30年1月31日付けの拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0021】
また、上記情報受信手段302は、各携帯電話機10の利用者が配信を希望する配信情報を特定するための配信希望情報を、携帯電話通信網20を介して各携帯電話機10や他のパソコン等の通信端末から受信する。この配信希望情報は、情報提供サーバ30にとっては、その利用者の嗜好を特定するための嗜好特定情報として用いられる。この配信希望情報によりその利用者が配信を希望する配信情報を特定できるので、この配信情報はその利用者の嗜好に合致した情報とみなすことができる。配信希望情報としては、例えば、特売に関する情報だけの配信を希望する旨の情報、イベントに関する情報だけの配信を希望する旨の情報、食べ物に関する情報だけの配信を希望する旨の情報、これらの情報の組合せなどが挙げられる。」

イ.「【0041】
図6は、情報提供サーバ30が行う配信情報処理のフローチャートである。
まず、情報提供サーバ30の配信情報選定手段305は、配信情報記憶手段307に記憶されている配信情報を読み出し(S11)、その配信情報から場所情報を抽出する(S12)。次に、配信情報選定手段305は、位置履歴情報記憶手段(位置履歴データベース)301を参照し、抽出した場所情報が示す場所又はその近傍に繰り返し行ったことのある利用者を抽出する(S13)。具体的に説明すると、位置履歴情報記憶手段301には、上述したように、各利用者の位置履歴情報が利用者ごとに個別に記憶されている。配信情報選定手段305は、上記S12で抽出した場所情報が示す場所又はその近傍の場所に対応する施設位置情報、GPS位置情報及びエリア位置情報が時間を異にして複数個記憶されている利用者の利用者識別情報を読み出す。
【0042】
このようにして利用者を抽出したら、次に、配信情報選定手段305は、嗜好特定情報記憶手段(配信希望情報データベース)304から、上記S13で抽出した利用者の利用者識別情報に対応する配信希望情報を読み出す(S14)。そして、上記配信情報が配信希望情報に合致している利用者を更に抽出する(S15)。具体的には、配信情報選定手段305は、各利用者について、上記配信情報がその利用者の配信希望情報に合致しているか否かを判断し、合致していると判断された利用者のみを抽出する。これにより、配信情報選定手段305は、上記配信情報を配信する配信対象を、その配信情報に含まれる場所情報が示す場所に繰り返し行ったことのある利用者であって、その配信情報について配信を希望する者に絞り込むことができる。そして、配信情報選定手段305は、上記配信情報を情報送信手段306へ送り、その配信情報は、情報送信手段306により、このように絞り込まれた利用者に対してのみ送信される(S16)。すなわち、その他の利用者には送信されない。」

(5)引用例5
平成30年1月31日付けの拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0075】
[処理手順(コンテンツ選択処理)]
本発明の実施形態において、情報管理サーバ40で無線端末10の位置情報の履歴に基づき、提供するコンテンツが選択され、無線端末10に配信されるまでの処理手順について説明する。
【0076】
図16は、本発明の実施形態において、コンテンツ選択手段408によりコンテンツが選択される処理手順の一例を示すフローチャート図である。
【0077】
S11:情報管理サーバ40の位置情報受付・管理手段402は、位置情報通信I/F手段401を介して無線端末10から送信された無線端末10の識別情報を含む位置情報を受信する。
【0078】
S12:位置情報受付・管理手段402は、位置情報記憶手段403において受信した無線端末10の識別情報に対応する位置情報を更新(上書き)する。また、位置情報受付・管理手段402は、位置情報履歴記憶手段405において、受信した無線端末10の識別情報に対応する位置情報を追加する。
【0079】
S13:位置情報受付・管理手段402は、受信した無線端末10の位置情報が、配信場所記憶手段404に記憶されている位置情報に含まれるか否かを判定する。ここで、受信した無線端末10の位置情報が、配信場所記憶手段404に記憶されている位置情報に含まれない場合(S13においてNO)、処理は終了する。一方、受信した無線端末10の位置情報が、配信場所記憶手段404に記憶されている位置情報に含まれる場合(S13においてYES)、無線端末10がコンテンツの配信場所に位置するため、位置情報受付・管理手段402は、コンテンツ選択手段408にコンテンツの提供処理の実行を要求する。なお、配信場所は、例えば建物(ショッピングセンター等)の入口や各店舗の入口等、ユーザの動線を考慮して設定される。
【0080】
S14:コンテンツ選択手段408は、位置情報履歴記憶手段405に記憶された情報の中から無線端末10の識別情報に対応する履歴のデータを参照する。次いで、位置情報履歴記憶手段405に記憶される位置情報が、店舗情報記憶手段406に記憶される位置情報によって定義される店舗の領域内に含まれる場合は、その店舗名を一時的にRAM422等に記憶する。このようにして取得された店舗名が所定数(例えば10個)抽出されると、次の処理ステップS15が実行される。なお、店舗名を取得する所定数は任意であり、例えば情報処理サーバ40の処理負荷や位置情報履歴記憶手段405に記憶される履歴の数に応じて変更されるパラメータである。また、本発明の実施形態において、履歴は現在から過去に遡り、直近の情報が参照される。但し、履歴の対象とする期間は任意に設定可能である。
【0081】
S15:コンテンツ選択手段408は、店舗情報記憶手段407から抽出した所定数の店舗名に対応する店舗属性を抽出する。次いで、コンテンツ選択手段408は、抽出した店舗属性のうち最も多い店舗属性を特定する。なお、店舗属性の特定は、最も多いものを特定する方法に限らず、例えば、予め定めた所定の回数以上検出された店舗属性を特定してもよい。また、店舗属性の特定にあたり、例えば、同日に複数回の店舗属性が検出された場合、その店舗属性を一回とカウントしてもよい。これにより、例えば位置情報の更新周期(契機)に依存することなく、無線端末10のユーザが実際に店舗を訪問した回数を適切に反映することが可能となる。
【0082】
S16:コンテンツ選択手段408は、コンテンツ情報記憶手段407に記憶された情報の中から、特定された店舗属性に対応するコンテンツを選択する。次いで、コンテンツ選択手段408は、選択したコンテンツの配信処理をコンテンツ配信手段409に要求する。
【0083】
S17:コンテンツ配信手段409は、読み出されたコンテンツを、通信I/F手段401(ネットワーク99)を介し、配信場所において位置情報を送信した無線端末10に配信する。なお、ネットワーク99が、IEEE802.11規格に準拠する無線LANである場合は、無線端末10のIPアドレスを宛先アドレスとしてコンテンツを送信する。無線端末10のIPアドレスの取得にあたっては、例えば、情報管理サーバ40からネットワーク98及び無線ネットワーク97を介して、無線端末10にネットワーク99経由での情報管理サーバ40への接続を促す要求をする。または、無線端末10から送信する位置情報更新要求に、無線端末10のIPアドレスを設定し送信してもよい。または、無線端末10の電子メールアドレスを予め取得し、コンテンツを電子メールアドレスに送信してもよい。
【0084】
上述したステップS11?S17の処理により、情報管理サーバ40は、無線端末10の位置情報の履歴に基づく、効果的なコンテンツを無線端末10に配信できる。」


第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対 比
本願発明1と引用発明とを対比すると次のことがいえる。

a.引用発明の「店舗端末10」は、「Bluetooth Low Energy(BLE)の無線通信モジュール」を備えるものであって、「店舗端末10」が複数あることは明らかであるから、本願発明1の「複数の発信機」に相当し、また、引用発明の「店舗ID」は、本願発明1の「発信機識別情報」に相当する。
さらに、引用発明の「おすすめ情報」は、「広告や、店舗の位置情報、転送先のURL、クーポン等のお得情報」であるから、本願発明1の「ユーザを所定の場所に誘導するためのコンテンツ」に相当する。
そして、引用発明の「サーバ30」の「データベース39」は、「店舗IDに紐づ」けて「おすすめ情報」を格納しているものであるから、引用発明の「データベース39」は、本願発明1の「複数の発信機を識別する発信機識別情報と、ユーザを所定の場所に誘導するためのコンテンツとを関連付けて保持するコンテンツ保持手段」に相当する。

b.引用発明の「ユーザ端末20」は、本願発明1の「ユーザが携帯する携帯端末装置」に相当する。
また、引用発明の「Bluetooth Low Energy(BLE)」は、本願発明1の「近距離通信信号」に相当する。
そして、引用発明の「ユーザ端末20」は、「店舗端末10が配信するBLE無線通信のアドバタイジング・パケット41を受信」するものであり、ここで、「アドバタイジング・パケット41」は、「店舗IDに対応するデバイス名47とサービスID45からなるBLE無線通信のアドバタイジング情報」を含むものであり、さらに、「ユーザ端末20」は、受信した「アドバタイジング情報43」を「サーバ30に送信」するものであるから、「サーバ30」は、上記「アドバタイジング情報43」を受信するための受信手段を有するものと認められる。
したがって、引用発明の該「受信手段」は、本願発明1の「前記ユーザが携帯する携帯端末装置が前記複数の発信機に含まれる発信機から受信した近距離通信信号に含まれる、前記発信機を識別する発信機識別情報を、前記携帯端末装置から受信する識別情報受信手段」に相当する。

c.引用発明の「ユーザID」は、本願発明1の「ユーザ識別情報」に相当する。
そして、引用発明の「サーバ30」は、「来店履歴登録アプリケーションを起動し、ユーザIDに紐づく来店履歴情報にアドバタイズ・パケット41の検知日時を登録する」ものであり、「来店履歴情報」は「店舗」の来店履歴であり、「来店履歴情報」には「店舗ID」が含まれているものと認められ、また、引用発明の「サーバ30」が上記「登録」を行うためには、「サーバ30」は履歴蓄積手段を有するものと認められることから、引用発明の該「履歴蓄積手段」は、本願発明1の「前記識別情報受信手段が受信した前記発信機識別情報と前記ユーザを識別するユーザ識別情報とを対応付けて蓄積する履歴蓄積部」に相当する。
さらに、引用発明の前記「履歴蓄積手段」と、本願発明1の「前記識別情報受信手段が受信した前記発信機識別情報と前記ユーザを識別するユーザ識別情報とを対応付けて蓄積する履歴蓄積部と、複数のビジネスオーナーによって生成され登録された提供コンテンツ指示テーブルであって、前記ユーザに提供すべき複数のコンテンツを示す情報と、前記複数のコンテンツのそれぞれに対応する複数のコンテンツ提供条件とを対応付けて格納する提供コンテンツ指示テーブルと、を含む蓄積手段」とは、「前記識別情報受信手段が受信した前記発信機識別情報と前記ユーザを識別するユーザ識別情報とを対応付けて蓄積する履歴蓄積部と、を含む蓄積手段」である点では共通する。

d.引用発明の「サーバ30」は、「データベース39に格納されている」「おすすめ情報」を「ユーザ端末20に送」るものであり、引用発明の「サーバ30」は「おすすめ情報」を「ユーザ端末20」に提供するための提供手段を有するものと認められることから、引用発明の該「提供手段」と、本願発明1の「前記履歴蓄積部に蓄積された前記発信機識別情報の履歴が前記複数のコンテンツ提供条件のいずれかを満足する場合に、満足されたコンテンツ提供条件に対応する前記コンテンツを示す情報を用いて前記コンテンツ保持手段からコンテンツを取得し、前記携帯端末装置に提供するコンテンツ提供手段」とは、「前記コンテンツ保持手段からコンテンツを取得し、前記携帯端末装置に提供する提供手段」である点では共通する。

e.引用発明の「サーバ30」は、本願発明1の「情報処理装置」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)

「複数の発信機を識別する発信機識別情報と、ユーザを所定の場所に誘導するためのコンテンツとを関連付けて保持するコンテンツ保持手段と、
前記ユーザが携帯する携帯端末装置が前記複数の発信機に含まれる発信機から受信した近距離通信信号に含まれる、前記発信機を識別する発信機識別情報を、前記携帯端末装置から受信する識別情報受信手段と、
前記識別情報受信手段が受信した前記発信機識別情報と前記ユーザを識別するユーザ識別情報とを対応付けて蓄積する履歴蓄積部と、
を含む蓄積手段と、
前記コンテンツ保持手段からコンテンツを取得し、前記携帯端末装置に提供するコンテンツ提供手段と、
を備える、
情報処理装置。」

(相違点)
上記蓄積手段が、本願発明1は、「履歴蓄積部」と「複数のビジネスオーナーによって生成され登録された提供コンテンツ指示テーブルであって、前記ユーザに提供すべき複数のコンテンツを示す情報と、前記複数のコンテンツのそれぞれに対応する複数のコンテンツ提供条件とを対応付けて格納する提供コンテンツ指示テーブル」も含むものであり、「コンテンツ提供手段」は「前記履歴蓄積部に蓄積された前記発信機識別情報の履歴が前記複数のコンテンツ提供条件のいずれかを満足する場合に、満足されたコンテンツ提供条件に対応する前記コンテンツを示す情報を用いて前記コンテンツ保持手段からコンテンツを取得し、前記携帯端末装置に提供するコンテンツ提供手段」であって、さらに、「前記コンテンツ提供条件は、前記携帯端末装置が受信した前記発信機識別情報の順序が、特定の動線を示す順序であることを含み、前記コンテンツ提供手段は、前記提供コンテンツ指示テーブルを参照して、少なくとも、前記携帯端末装置が受信した前記発信機識別情報の順序が、前記特定の動線を示す順序である場合に、所定のコンテンツを前記ユーザに提供する」のに対して、
引用発明は、履歴蓄積部を含むものではあるが、そのような提供コンテンツ指示テーブルを含んでおらず、「コンテンツ提供手段」は「コンテンツ提供条件」に対応するコンテンツを提供するものではない点。


(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
上記引用文献2には、来店履歴を広告に反映させる技術事項が、引用文献3には、来店履歴から次回の来店日を予測する技術事項が、引用文献4及び引用文献5には、ユーザの位置の履歴からよく行く場所や店舗を特定する技術事項は記載されている。
しかしながら、本願発明1の上記相違点に係る発明特定事項、特に、携帯端末装置が受信した発信機識別情報の順序が、特定の動線を示す順序である場合に、所定のコンテンツをユーザに提供することは、いずれの文献にも記載も示唆もされておらず、また、本願優先日前において周知技術であったともいえない。
したがって、引用発明において、「蓄積手段」が「複数のビジネスオーナーによって生成され登録された提供コンテンツ指示テーブルであって、前記ユーザに提供すべき複数のコンテンツを示す情報と、前記複数のコンテンツのそれぞれに対応する複数のコンテンツ提供条件とを対応付けて格納する提供コンテンツ指示テーブル」を含み、「コンテンツ提供手段」が「前記履歴蓄積部に蓄積された前記発信機識別情報の履歴が前記複数のコンテンツ提供条件のいずれかを満足する場合に、満足されたコンテンツ提供条件に対応する前記コンテンツを示す情報を用いて前記コンテンツ保持手段からコンテンツを取得し、前記携帯端末装置に提供するコンテンツ提供手段」とし、さらに、「前記コンテンツ提供条件は、前記携帯端末装置が受信した前記発信機識別情報の順序が、特定の動線を示す順序であることを含み、前記コンテンツ提供手段は、前記提供コンテンツ指示テーブルを参照して、少なくとも、前記携帯端末装置が受信した前記発信機識別情報の順序が、前記特定の動線を示す順序である場合に、所定のコンテンツを前記ユーザに提供する」ことが当業者に容易に想到し得るとはいえない。

よって、本願発明1は、引用発明及び引用例2-5に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2-4について
本願発明2は、本願発明1に対応する情報処理方法の発明であり、本願発明3は、本願発明1に対応する情報処理プログラムの発明であり、本願発明2は、本願発明1に対応する情報処理システムの発明であり、本願発明1の「複数のビジネスオーナーによって生成され登録された提供コンテンツ指示テーブルであって、前記ユーザに提供すべき複数のコンテンツを示す情報と、前記複数のコンテンツのそれぞれに対応する複数のコンテンツ提供条件とを対応付けて格納する提供コンテンツ指示テーブル」、「前記履歴蓄積部に蓄積された前記発信機識別情報の履歴が前記複数のコンテンツ提供条件のいずれかを満足する場合に、満足されたコンテンツ提供条件に対応する前記コンテンツを示す情報を用いて前記コンテンツ保持手段からコンテンツを取得し、前記携帯端末装置に提供するコンテンツ提供手段」、及び「前記コンテンツ提供条件は、前記携帯端末装置が受信した前記発信機識別情報の順序が、特定の動線を示す順序であることを含み、前記コンテンツ提供手段は、前記提供コンテンツ指示テーブルを参照して、少なくとも、前記携帯端末装置が受信した前記発信機識別情報の順序が、前記特定の動線を示す順序である場合に、所定のコンテンツを前記ユーザに提供する」ことに対応する構成を備えるものであから、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用例2-5に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第8.原査定について
平成30年4月2日付けの補正により、補正後の請求項1-4は、「複数のビジネスオーナーによって生成され登録された提供コンテンツ指示テーブルであって、前記ユーザに提供すべき複数のコンテンツを示す情報と、前記複数のコンテンツのそれぞれに対応する複数のコンテンツ提供条件とを対応付けて格納する提供コンテンツ指示テーブル」、「前記履歴蓄積部に蓄積された前記発信機識別情報の履歴が前記複数のコンテンツ提供条件のいずれかを満足する場合に、満足されたコンテンツ提供条件に対応する前記コンテンツを示す情報を用いて前記コンテンツ保持手段からコンテンツを取得し、前記携帯端末装置に提供するコンテンツ提供手段」、及び「前記コンテンツ提供条件は、前記携帯端末装置が受信した前記発信機識別情報の順序が、特定の動線を示す順序であることを含み、前記コンテンツ提供手段は、前記提供コンテンツ指示テーブルを参照して、少なくとも、前記携帯端末装置が受信した前記発信機識別情報の順序が、前記特定の動線を示す順序である場合に、所定のコンテンツを前記ユーザに提供する」という技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献A-Cには記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-4は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Cに基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。


第9.むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-05-16 
出願番号 特願2016-148557(P2016-148557)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 北川 純次新田 亮  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 稲葉 和生
山澤 宏
発明の名称 情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム  
代理人 加藤 卓士  

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