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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08G
管理番号 1339938
審判番号 不服2017-6569  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-09 
確定日 2018-06-01 
事件の表示 特願2016- 8832「移動経路推定の方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月27日出願公開、特開2017-130038、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月20日の出願であって、平成28年9月28日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年11月25日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、平成29年2月7日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年5月9日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年2月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし4、6ないし11並びに13及び14に係る発明は、以下の引用文献1、2及び3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2015-10895号公報
2.特開2010-267000号公報
3.特開2013-130918号公報

第3 本願発明
本願請求項1ないし14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明14」という。)は、平成29年5月9日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
移動体の出発地から目的地までの移動の経路を推定する移動経路推定方法であって、
データ記憶部が、前記移動体の前記出発地から前記目的地までの行動に関する位置情報集合を格納するステップであって、前記移動体の前記行動は、移動と滞在を含む、ステップと、
経路候補決定部が、前記移動体の前記出発地から前記目的地までの複数の経路候補を決定するステップであって、前記移動体の行動区間を分類するステップを含み、該ステップは、
前記移動体の前記出発地から前記目的地までの行動のうち、滞在に関する位置情報を識別するステップと、
格納された前記位置情報集合から前記滞在に関する位置情報を除いて移動のみに関する位置情報集合を生成するステップと、
を含む、ステップと、
経路選択部が、前記複数の経路候補を前記位置情報集合と比較することによって、前記複数の経路候補から1つの経路候補を前記移動体の推定経路として選択するステップと、
を含み、
滞在に関する位置情報を識別する前記ステップは、一連の位置情報のうちのある位置から次に隣接する位置への所与のベクトルの向きが、直前のベクトルおよび直後のベクトルの双方とあるしきい値角度以上変化するとき、前記所与のベクトルに関係する位置情報が滞在に関係すると識別するステップを含む、移動経路推定方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、推定経路として選択する前記ステップは、
前記位置情報集合と前記複数の経路候補の各々との間の誤差を検出するステップと、
検出した前記誤差を比較して前記誤差の最も小さい前記経路候補を前記推定経路として選択するステップと、
を含む、移動経路推定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、滞在に関する位置情報を識別する前記ステップは、
一連の位置情報のうちのある第1の位置から次に隣接する第2の位置への移動の速度が、あるしきい値速度未満のとき、前記第1の位置に関係する位置情報が滞在に関係すると識別するステップをさらに含む、移動経路推定方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の方法において、複数の経路候補を決定する前記ステップは、
i)前記出発地に最寄りの出発地駅と、前記目的地に最寄りの目的地駅とを、地図データから決定するステップと、
ii)前記出発地駅から前記目的地駅までの複数の経路候補を、前記出発地駅と前記目的地駅とに基づき、経路候補データを使用して選択するステップと、
を含む、移動経路推定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
前記出発地に最寄りの出発地駅と、前記目的地に最寄りの目的地駅とを、地図データから決定する前記ステップは、
前記出発地および前記目的地の人口密度を判定するステップと、
判定した前記人口密度に応じて、前記出発地の最寄り駅探索範囲および前記目的地の最寄り駅探索範囲を定めるステップと、
前記出発地の最寄り駅探索範囲および前記目的地の最寄り駅探索範囲にある駅を、それぞれ、前記出発地駅および前記目的地駅として特定するステップと
を含む、移動経路推定方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の方法において、
前記位置情報集合は、前記移動体に関係する時系列のポイントデータに含まれ、
各前記ポイントデータは、前記移動体の前記移動中に通過した基地局の位置情報を含む、移動経路推定方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載に経路推定方法をコンピュータに実行させるコンピュータ・プログラム。
【請求項8】
移動体の出発地から目的地までの移動の経路を推定する経路推定装置であって、
前記移動体の前記出発地から前記目的地までの行動に関する位置情報集合を格納するデータ記憶手段であって、前記移動体の前記行動は、移動と滞在を含む、データ記憶手段と、
前記移動体の前記出発地から前記目的地までの複数の経路候補を決定する経路候補決定手段であって、行動区間分類手段を含み、該行動区間分類手段は、
前記移動体の前記出発地から前記目的地までの行動のうち、滞在に関する位置情報を識別する滞在識別手段と、
受けた前記位置情報集合から前記滞在に関する位置情報を除いて移動のみに関する位置情報集合を生成する生成手段と、
を含む、経路候補決定手段と、
前記複数の経路候補を前記位置情報集合と比較することによって、前記複数の経路候補から1つの経路候補を前記移動体の推定経路として選択する経路選択手段と、
を含み、
前記滞在識別手段は、一連の位置情報のうちのある位置から次に隣接する位置への所与のベクトルの向きが、直前のベクトルおよび直後のベクトルの双方とあるしきい値角度以上変化するとき、前記所与のベクトルに関係する位置情報が滞在に関係すると識別することを行う、移動経路推定装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置において、前記経路選択手段は、
前記位置情報集合と前記複数の経路候補の各々との間の誤差を得る誤差検出手段と、
検出した前記誤差を比較して前記誤差の最も小さい前記経路候補を前記推定経路として選択する比較手段と、
を含む、移動経路推定装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の装置において、前記滞在識別手段は、
一連の位置情報のうちのある第1の位置から次に隣接する第2の位置への移動の速度が、あるしきい値速度未満のとき、前記第1の位置に関係する位置情報が滞在に関係すると識別することをさらに行う、移動経路推定装置。
【請求項11】
請求項8から10のいずれかに記載の装置において、前記経路候補決定手段は、経路候補抽出手段を含み、
該経路候補抽出手段は、
i)前記出発地に最寄りの出発地駅と、前記目的地に最寄りの目的地駅とを、地図データから決定する最寄り駅決定手段と、
ii)前記出発地駅から前記目的地駅までの複数の経路候補を、前記出発地駅と前記目的地駅とに基づき、経路候補データを使用して選択する経路候補選択手段と、
を含む、移動経路推定装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置において、
前記最寄り駅決定手段は、
前記出発地および前記目的地の人口密度を判定し、
判定した前記人口密度に応じて、前記出発地の最寄り駅探索範囲および前記目的地の最寄り駅探索範囲を定め、
前記出発地の最寄り駅探索範囲および前記目的地の最寄り駅探索範囲にある駅を、それぞれ、前記出発地駅および前記目的地駅として特定する
ように構成される、移動経路推定装置。
【請求項13】
請求項8から12のいずれかに記載の装置において、
前記位置情報集合は、前記移動体に関係する時系列のポイントデータに含まれ、
各前記ポイントデータは、前記移動体の前記移動中に通過した基地局の位置情報を含む、
移動経路推定装置。
【請求項14】
請求項8から13のいずれかに記載の移動経路推定装置としてコンピュータを機能させるコンピュータ・プログラム。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)

・「【請求項1】
サーバ装置と複数の端末装置を備えた選択経路データベース生成システムにおいて、上記端末装置は、経路探索条件に基づく複数の候補経路を出力部に出力する候補経路出力手段を有し、上記サーバ装置または上記端末装置は、入力部からの入力情報に基づいて、上記候補経路出力手段により出力された上記複数の候補経路のうち、利用者が選択した選択経路を判定する選択経路判定手段を有し、上記サーバ装置は、上記選択経路判定手段により判定された、上記各利用者の上記選択経路の情報を記憶部に格納する選択経路格納手段を有することを特徴とする、選択経路データベース生成システム。」
・「【0022】
[選択経路データベース生成システムの構成]
まず、第1の実施形態における選択経路データベース生成システムの構成の一例について、図1を参照して以下に説明する。ここで、図1は、本実施形態における選択経路データベース生成システムの構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の選択経路データベース生成システムは、概略的に、経路探索や選択経路情報の収集等を行うサーバ装置200、および、単数または複数の端末装置100、を通信可能に接続して構成される。ここで、図1に示すように、通信には、一例として、ネットワーク300を介した有線・無線通信等の遠隔通信等を含む。また、これら選択経路データベース生成システムの各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。なお、ネットワーク300は、端末装置100とサーバ装置200と外部機器(例えば、外部のネットワークデータ提供サーバなど)等とを相互に接続する機能を有し、例えば、インターネット、電話回線網(携帯端末回線網および一般電話回線網等)、イントラネット、または、電力線通信(PLC)等であってもよい。
【0024】
そして、図1に示すように、本実施形態の選択経路データベース生成システムにおいて、概略的に、サーバ装置200は、制御部202と記憶部206とを少なくとも備えて構成されており、端末装置100は、位置取得部112と出力部114と入力部116と制御部102とを少なくとも備えて構成されている。
【0025】
[サーバ装置200の構成]
ここで、図1において、サーバ装置200は、端末装置100から送信される、経路探索条件を受信し、受信した経路探索条件に基づいて複数の候補経路を取得し、取得した複数の候補経路の情報を端末装置100に送信し、端末装置100から送信される、選択経路の情報を受信し、受信した選択経路の情報を記憶部206に格納する等の機能を有する。サーバ装置200は、通信制御インターフェース部204を介してネットワーク300を経由し、端末装置100等と相互に通信可能に接続されており、制御部202と記憶部206とを備える。」
・「【0033】
また、制御部202は、OS(Operating System)等の制御プログラムや、各種の処理手順等を規定したプログラム、および、所要データを格納するための内部メモリを有する。そして、制御部202は、これらのプログラム等により、種々の処理を実行するための情報処理を行う。制御部202は、機能概念的に、経路探索条件受信部202a、候補経路取得部202b、候補経路送信部202c、選択経路受信部202d、および、選択経路格納部202eを備えて構成される。
【0034】
このうち、経路探索条件受信部202aは、端末装置100から送信される、経路探索条件を受信する経路探索条件受信手段である。
【0035】
また、候補経路取得部202bは、経路探索条件受信部202aにより受信された経路探索条件に基づいて、複数の候補経路を取得する候補経路取得手段である。例えば、候補経路取得部202bは、ネットワークデータベース206aに記憶されたネットワークデータに基づいて、経路探索条件を満たす経路の経路探索を行う経路探索手段である。例えば、候補経路取得部202bは、少なくとも出発地と目的地を含む経路探索条件を満たす経路を、ネットワークデータベース206aに記憶された路線ネットワークデータや道路ネットワークデータ等を用いて探索し、探索した経路に関する経路データを生成してもよい。ここで、候補経路取得部202bは、所定の条件(所要時間が最短、距離が最短、乗換回数が最小、目的地に最も早く到着すること、料金が安いこと等)に基づいて、それぞれの条件に合う複数の候補経路を取得してもよい。例えば、候補経路取得部202bは、それぞれの条件を評価するため、(所要時間や距離等)を計算しながら、リンクコストが最小になるように経路探索を行ってもよい。なお、経路探索条件は、更に、経由地や、移動手段、出発時刻、経由時刻、到着時刻、および/または、日付等を含んでいてもよく、候補経路取得部202bは、これら条件を満たす経路を取得してもよい。ここで、出発時刻は、現在時刻であってもよい。なお、候補経路の情報は、探索した経路を示すリンクデータの組み合わせであってもよく、経路の位置情報や、当該経路を示す画像データ(例えば、ポリライン等)などを含んでいてもよい。なお、候補経路取得部202bは、取得した候補経路ごとに識別情報(経路ID等)を付与して、経路情報データベース206bに経路情報を格納してもよい。その際、候補経路取得部202bは、各候補経路が、どの条件(所要時間が最短、距離が最短、乗換回数が最小、目的地に最も早く到着すること、料金が安いこと等)を満たすものであったかという条件情報を経路情報に含めて経路情報データベース206bに格納してもよい。なお、候補経路取得部202bは、経路探索条件に対応付けて経路探索結果を格納してもよい。
【0036】
また、候補経路送信部202cは、候補経路取得部202bにより取得された複数の候補経路の情報を、端末装置100に送信する候補経路送信手段である。なお、候補経路送信部202cは、候補経路ごとに経路IDを対応付けて候補経路情報を送信してもよい。
【0037】
また、選択経路受信部202dは、端末装置100から送信される、選択経路の情報を受信する選択経路受信手段である。ここで、選択経路受信部202dは、選択経路の情報として選択経路の経路IDを受信してもよい。また、選択経路受信部202dは、選択経路として判定した根拠情報(端末装置100の位置取得部112により取得された位置情報に基づく判定か、端末装置100の入力部116を介した入力情報に基づく判定か等に関する情報)を受信してもよい。
【0038】
また、選択経路格納部202eは、選択経路受信部202dにより受信された各利用者の選択経路の情報を選択履歴データベース206cに格納する選択経路格納手段である。例えば、選択経路格納部202eは、選択経路の経路IDに対応付けて、選択経路として判定した根拠情報等を選択履歴データベース206cに格納してもよい。
【0039】
このほか、制御部202は、選択履歴データベース206cに記憶された選択経路の情報を分析してもよい。一例として、制御部202は、選択履歴データベース206cに記憶された選択経路の情報に基づいて、混雑予測や、経路探索エンジンのチューニングを行ってもよい。例えば、制御部202は、同一または類似の経路探索条件に基づく候補経路のうち、利用者が選択経路として選択した割合が所定の閾値以上であった経路の取得の条件(時間優先、距離優先、乗り換え時間優先等)を経路情報データベース206bを参照することにより判別して、当該条件を実際の利用者の要求を満たす条件であるとして、次回の候補経路取得部202bによる経路探索において重視されるよう設定してもよい。また、制御部202は、収集した選択経路を、情報の信頼度に応じて重み付けを行ってもよく、例えば、選択経路が、端末装置100の位置取得部112により取得された現在位置情報の履歴(位置ログ)に基づく判定である場合、この選択経路の選択結果が重視されるよう重み付けを行ってもよい。反対に、端末装置100の入力部116を介してカレンダー登録がなされた場合等には、実際に利用者がその選択経路を利用したか否か信頼度が低いと推定し、この選択経路の選択結果を重視しないように重み付けを行ってもよい。」
・「【0040】
[端末装置100の構成]
また、図1において、端末装置100は、経路探索条件をサーバ装置200に送信し、サーバ装置200から送信される、経路探索条件に基づく複数の候補経路の情報を受信し、受信した複数の候補経路の情報に基づいて、複数の候補経路を出力部114に出力し、入力部116からの入力情報に基づいて、出力された複数の候補経路のうち、利用者が選択した選択経路を判定し、判定された選択経路の情報をサーバ装置200に送信する等の機能を有する。端末装置100は、例えば、一般に市販されるデスクトップ型またはノート型のパーソナルコンピュータ等の情報処理装置、携帯電話やPHSやPDA等の携帯端末装置、および、走行経路案内等を行なうナビゲーション端末等である。ここで、端末装置100は、インターネットブラウザ等を搭載していてもよく、経路案内アプリケーションや乗換案内アプリケーション等を搭載していてもよい。また、端末装置100は、リアルタイムに現在位置取得が行えるよう、GPS機能やIMES機能等を有する位置取得部112を備えている。また、端末装置100は、出力部114と入力部116を備えている。ここで、出力部114は、経路探索結果に基づく表示案内データ等の表示画面を表示する表示手段(例えば、液晶や有機EL等から構成されるディスプレイやモニタ等)や、経路探索結果に基づく音声案内データ等を音声として出力する音声出力手段(例えば、スピーカ等)等である。また、入力部116は、経路探索条件の入力等を行う入力手段(例えば、キー入力部、タッチパネル、キーボード、マイク、利用者を撮像する撮像手段(インカメラなど)等)である。なお、後述する位置取得部112を「入力部」として用いてもよい。また、入出力制御インターフェース部108は、位置取得部112、出力部114、入力部116等の制御を行う。
【0041】
ここで、位置取得部112は、例えば、位置発信装置500から発信される位置情報信号を受信する位置取得手段であってもよい。ここで、位置発信装置500は、位置情報信号(GPS信号)を発信するGPS装置であってもよく、また、GPS信号と類似した特徴を持つ位置情報信号を用いて屋内測位を可能とするIMES(Indoor Messaging System)技術を実現するIMES装置であってもよい。なお、IMES技術は測位衛星システムである準天頂衛星の枠組みから発案されたシステムである。また、位置発信装置500は、屋外で受信したGPS信号を屋内で発信するGPSリピータであってもよい。また、位置発信装置500は、建物(例えば、立体駐車場等)内の各フロアや地下構造物(例えば、トンネル、地下駐車場等)の各所に任意に設置される小型発信装置であってもよい。なお、この小型発信装置には、設置場所に応じた自己位置情報(位置ID等)が割り振られている。そして、端末装置100が通信可能範囲に入ると、端末装置100は、小型発信装置から送信される自己位置情報を位置情報信号として受信する。この際の通信方式は、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)タグシステムやBluetooth(登録商標)等の各種近距離無線方式や、赤外線通信方式等であってもよい。また、位置発信装置500は、無線LANのアクセスポイントであってもよい。本実施形態において、位置取得部112は、無線LAN信号等を受信して、アクセスポイントの識別情報を取得してもよい。そして、制御部102は、位置取得部112にて取得したアクセスポイント固有の識別情報からアクセスポイントの位置を特定して位置情報を取得してもよい。また、本実施形態において、制御部102は、位置取得部112にて取得された位置情報信号から、緯度、経度、および、高さ情報を含む位置情報を算出してもよい。ここで、位置情報は、緯度および経度により特定される絶対位置の他、基準となる位置からの相対位置を示すものであってもよい。
【0042】
また、位置取得部112は、例えば、方位センサにて検出した端末装置100の進行方向等の方位情報、距離センサにて検出した距離情報、および、地図データに基づいて端末装置100の利用者の現在位置を示す位置情報を取得してもよい。ここで、方位センサには、端末装置100の絶対走行方位を検出する地磁気センサおよび端末装置100の相対走行方位を検出する光ジャイロが使用されてもよい。また、方位センサは、地磁気センサと加速度センサを組み合わせることで方位や傾きに関する情報を取得できる電子コンパスであってもよい。
【0043】
また、通信制御インターフェース部104は、通信回線や電話回線等に接続されるアンテナやルータ等の通信装置(図示せず)に接続されるインターフェースであり、端末装置100とネットワーク300との間における通信制御を行う機能を有する。すなわち、通信制御インターフェース部104は、サーバ装置200等と通信回線を介してデータを通信する機能を有している。
【0044】
また、制御部102は、OS等の制御プログラムや、各種の処理手順等を規定したプログラム、および、所要データを格納するための内部メモリを有する。そして、制御部102は、これらのプログラム等により、種々の処理を実行するための情報処理を行う。制御部102は、機能概念的に、現在位置情報取得部102a、経路探索条件送信部102b、候補経路受信部102c、候補経路出力部102d、選択経路判定部102e、および、選択経路送信部102fを備えて構成される。
【0045】
また、現在位置情報取得部102aは、端末装置100にかかる移動体(利用者等)の現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段である。例えば、現在位置情報取得部102aは、位置取得部112にて位置発信装置500から受信した位置情報信号から算出した位置情報、および/または、位置取得部112の方位センサにて検出した端末装置100の進行方向等の方位情報を、現在位置情報として設定してもよい。また、現在位置情報取得部102aは、利用者により入力部116を介して入力された位置座標等を出発地や目的地や経由地として設定してもよい。ここで、利用者により入力部116を介して入力された出発地や目的地や経由地は、利用者が現実に存在する現在位置であってもよく、利用者により任意に選択された仮想の現在位置(一例として、東京にいる利用者により選択された大阪の駅や空港等の任意の地点)であってもよい。具体的には、現在位置情報取得部102aは、入力部116を介して利用者に出力部114に表示された地図の表示画面上で指定(例えば、タッチパネル方式の出力部114での指定操作等)させた座標、および/または、方位情報を出発地や目的地や経由地として設定してもよい。
【0046】
また、経路探索条件送信部102bは、経路探索条件をサーバ装置200に送信する経路探索条件送信手段である。経路探索条件送信部102bは、予め記憶部106に登録された経路探索条件を送信してもよく、利用者により入力部116等を介して設定された経路探索条件を送信してもよい。一例として、経路探索条件送信部102bにより設定される経路探索条件は、少なくとも出発地と目的地の情報を含み、更に、経由地の情報、出発時刻や、到着時刻等を含んでもよい。ここで、現在位置情報取得部102aは、経路探索条件の出発地として、現在位置情報取得部102aにより取得された端末装置100の現在位置情報を設定してもよい。
【0047】
また、候補経路受信部102cは、サーバ装置200から送信される、経路探索条件に基づく複数の候補経路の情報を受信する候補経路受信手段である。ここで、候補経路受信部102cは、受信した各利用者の候補経路の情報を記憶部106に格納してもよい。
【0048】
また、候補経路出力部102dは、候補経路受信部102cにより受信された候補経路の情報に基づいて、複数の候補経路を出力部114に出力する候補経路出力手段である。例えば、候補経路出力部102dは、受信された複数の経路について、少なくとも一の候補経路の詳細情報を表示させるために入力部116を介して利用者に選択させるよう制御し、選択された候補経路の詳細情報を出力部114に表示させてもよい。
【0049】
また、選択経路判定部102eは、入力情報に基づいて、候補経路出力部102dにより出力された複数の候補経路のうち、利用者が選択した選択経路を判定する選択経路判定手段である。本実施の形態において、入力情報とは、本端末装置100等のコンピュータに入力されるデータや情報等や、入力されるデータの間隔等の情報(例えば、データが入力されていない状態の時間情報等)であって、一例として、利用者のアクションにかかる情報や、利用者の不作為による非アクションの情報をも含む。なお、選択経路判定部102eは、一の候補経路を選択経路と判定することに限られず、複数の候補経路を選択経路と判定してもよい。例えば、選択経路判定部102eは、利用者が意図的に除外した候補経路を判定し、利用者が除外したと判定した候補経路以外の、複数の候補経路を選択経路として判定しもよい。また、入力情報は、入力部116等を介して入力された情報であって、入力履歴や操作ログを含む。例えば、選択経路判定部102eは、入力情報を監視して、特定のアクションが選択されたことを判断材料にして、選択経路を判定してもよい。一例として、選択経路判定部102eは、入力部116を介して利用者により複数の候補経路から少なくとも一の候補経路が出力部114に表示された場合において、表示時間または表示順序に基づき選択経路を判定してもよい。一例として、選択経路判定部102eは、(1)最も長い時間表示した候補経路、(2)最も短い時間表示した候補経路、(3)最初に表示した候補経路、または、(4)最後に表示した候補経路、を選択経路として判定してもよい。その他、選択経路判定部102eは、表示時間や表示順序で候補経路に重み付けをすることにより選択経路を判定してもよい。なお、「表示時間」は、一続きの時間に限られず、例えば、移動前の計画段階で表示した時間と、移動中に再確認のため表示した時間とを合算した時間等のように、合計の表示時間であってもよい。また、選択経路判定部102eは、インカメラ等の入力部116を介して撮像された利用者の視線の動きに基づいて、複数の候補経路から少なくとも一の候補経路を選択経路として判定してもよい。また、選択経路判定部102eは、複数の候補経路のうち、入力部116を介して利用者により入力された、ボタン操作(カレンダー登録や、ブックマーク、メール送信等の共有ボタン操作等)や音声入力操作等の選択操作にかかる少なくとも一の候補経路を選択経路として判定してもよい。また、選択経路判定部102eは、現在位置情報取得部102aにより取得される現在位置情報に基づく移動履歴から選択経路を判定してもよい。なお、選択経路判定部102eは、リアルタイムに入力情報に基づいて選択経路を判定してもよく、事後処理として入力情報に基づいて選択経路を判定してもよい。
【0050】
また、選択経路送信部102fは、選択経路判定部102eにより判定された選択経路の情報(経路ID等)をサーバ装置200に送信する選択経路送信手段である。」

・段落【0034】ないし【0036】、段落【0045】ないし【0049】及び図1には、端末装置100の経路探索条件送信部102bは利用者により設定された経路探索条件をサーバ装置200に送信し、前記経路探索条件は少なくとも出発地と目的地の情報を含み(段落【0046】)、前記サーバ装置200の経路探索条件受信部202a、候補経路取得部202b、候補経路送信部202cにより、端末装置100(経路探索条件送信部102b)から送信される経路探索条件を受信し(段落【0034】)、受信された経路探索条件に基づいて複数の候補経路を取得し(段落【0035】)、前記取得された複数の候補経路の情報を端末装置100に送信し(段落【0036】)、端末装置100の選択経路判定部102eにより、入力情報に基づいて複数の候補経路のうち利用者が選択した選択経路を判定すること(段落【0049】)、が記載されている。よって、引用文献1には、利用者により設定された出発地と目的地の情報を含む経路探索条件に基づいて取得された複数の候補経路のうち利用者が選択した選択経路を判定する選択経路の判定方法が記載されていることが理解できる。
・引用文献1には、端末装置100にかかる移動体(利用者等)の現在位置情報を取得する現在位置情報取得部102aにより取得される現在位置情報に基づく移動履歴から選択経路を判定することが記載されており(段落【0045】及び段落【0049】)、現在位置情報に基づく移動履歴から選択経路を判定していることから、現在位置情報に基づく移動履歴を記憶するための履歴記憶部を備えることは明らかである。よって、引用文献1には、選択経路の判定方法において、履歴記憶部が、端末装置100にかかる移動体(利用者等)の現在位置情報を取得する現在位置情報取得部102aにより取得される現在位置情報に基づく移動履歴を格納するステップを有することが記載されていることが理解できる。
・引用文献1には、候補経路取得部202bは、端末装置100から送信される経路探索条件を受信する経路探索条件受信部202aにより受信された経路探索条件に基づいて、複数の候補経路を取得することが記載されており(段落【0034】及び【0035】)、また、経路探索条件は少なくとも出発地と目的地の情報を含むことから(段落【0046】)、引用文献1には、選択経路の判定方法において、候補経路取得部202bは、利用者により設定された出発地と目的地の情報を含む経路探索条件に基づいて、複数の候補経路を取得するステップを有することが記載されていることが理解できる。
・引用文献1には、候補経路受信部102cは、サーバ装置200から送信される、経路探索条件に基づく複数の候補経路の情報を受信すること(段落【0047】)、候補経路出力部102dは、候補経路受信部102cにより受信された候補経路の情報に基づいて、複数の候補経路を出力部114に出力すること(段落【0048】)、選択経路判定部102eは、入力情報に基づいて、候補経路出力部102dにより出力された複数の候補経路のうち、利用者が選択した選択経路を判定すること(段落【0049】)が記載されている。また、選択経路判定部102eは、現在位置情報取得部102aにより取得される現在位置情報に基づく移動履歴から選択経路を判定することから(段落【0049】)、前記入力情報は現在位置情報取得部102aにより取得される現在位置情報に基づく移動履歴を含むものと解することができる。よって、引用文献1には、選択経路の判定方法において、選択経路判定部102eは、現在位置情報取得部102aにより取得される現在位置情報に基づく移動履歴に基づいて、サーバ装置200から送信された経路探索条件に基づく複数の候補経路の情報に基づいて複数の候補経路を出力部114に出力する候補経路出力部102dにより出力された複数の候補経路のうち、利用者が選択した選択経路を判定するステップを有することが記載されていることが理解できる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明1>
「利用者により設定された出発地と目的地の情報を含む経路探索条件に基づいて取得された複数の候補経路のうち利用者が選択した選択経路を判定する選択経路の判定方法であって、
履歴記憶部が、端末装置100にかかる移動体(利用者等)の現在位置情報を取得する現在位置情報取得部102aにより取得される現在位置情報に基づく移動履歴を格納するステップと、
候補経路取得部202bは、利用者により設定された出発地と目的地の情報を含む経路探索条件に基づいて、複数の候補経路を取得するステップと、
選択経路判定部102eは、現在位置情報取得部102aにより取得される現在位置情報に基づく移動履歴に基づいて、サーバ装置200から送信された経路探索条件に基づく複数の候補経路の情報に基づいて複数の候補経路を出力部114に出力する候補経路出力部102dにより出力された複数の候補経路のうち、利用者が選択した選択経路を判定するステップと、を含む選択経路の判定方法。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)

・「【請求項9】
車両に搭載された車載機とネットワークを介して接続され、前記車両の位置に基づき、前記車両の出発地点から到着地点までの走行経路を推定する経路推定装置に適用される経路推定方法であって、
前記車載機から送信されてきた、前記車両の位置を示す位置情報を、所定の時間間隔で取得する取得ステップと、
道路および交差点の位置を含む地図情報を記録する記録ステップと、
前記取得ステップにより取得された位置情報が示す前記車両の位置と、前記記録ステップにより記録された前記道路および前記交差点の位置との位置関係に基づき、前記道路ごとに、前記車両が走行した可能性を示す道路別通過確率を判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより判定された前記道路別通過確率に基づき、前記車両の走行経路を推定する経路推定ステップと、を有する経路推定方法。」
・「【0023】
図1は、本発明の一実施形態の経路推定装置10が適用される経路推定システムの構成の一例を示す図である。
【0024】
本実施形態の経路推定システムは、各車両に搭載された車載機1-1?1-N(以下、車載機1と称する)と、車載機1と無線ネットワーク2を介して接続される経路推定装置10と、を有する。
【0025】
車載機1は、所定の時間間隔で、車両の位置情報や進行方向などの情報を取得し、情報を取得した時刻と、取得した位置情報や進行方向などの情報とを対応つけた車両情報データを、無線ネットワーク2を介して、経路推定装置10に送信する。
【0026】
経路推定装置10は、無線ネットワーク2を介して、車載機1から送信されてきた車両情報データに基づき、その車載機1が搭載された車両の走行経路を推定する。
【0027】
次に、経路推定装置10の構成について説明する。
【0028】
図2は、経路推定装置10の構成の一例を示すブロック図である。
【0029】
図2に示す経路推定装置10は、車両情報データ取得部11と、車両情報データ記録部12と、道路ネットワークデータ記録部13と、トリップ系列データ作成部14と、マップマッチング部15と、経路推定部16と、移動時間算出部17と、を有する。
【0030】
車両情報データ取得部11は、車載機1から無線ネットワーク2を介して送信されてきた車両情報データを取得し、取得した車両情報データを車両情報データ記録部12に出力する。
【0031】
車両情報データ記録部12は、車両情報データ取得部11から出力された車両情報データを記録する。
【0032】
道路ネットワークデータ記録部13は、車両が走行する道路(リンク)および道路が交差する交差点(ノード)の位置を含む地図情報である道路ネットワークデータを記録する。
【0033】
トリップ系列データ作成部14は、車両ごとに、車両情報データ記録部12に記録された車両情報データを、車両情報データに含まれる情報を取得した時刻の順序で時系列に並べてグループ化したトリップ系列データ作成する。
【0034】
なお、トリップ系列データ作成部14は、位置情報が示す車両の位置に変化がない時間帯がある場合には、その時間帯の車両情報データを除いて、トリップ系列データを作成する。
【0035】
所定の時間以上、位置情報が示す車両の位置に変化がない場合、その車両は、駐停車している可能性が高いと考えられる。車両が駐停車している時間帯における車両情報データをトリップ系列データから除くことで、後述する車両の移動時間の算出において、正確な移動時間を算出することができる。
【0036】
そして、トリップ系列データ作成部14は、車両ごとに作成したトリップ系列データを、マップマッチング部15と移動時間算出部17に出力する。
【0037】
マップマッチング部15は、道路ネットワークデータ記録部13に記録された道路ネットワークデータと、トリップ系列データ作成部14から出力されたトリップ系列データとに基づき、道路ネットワークデータに含まれる道路ごとに、車両が通過した確率を示す道路別通過確率を判定する。
【0038】
具体的には、マップマッチング部15は、トリップ系列データに含まれる位置情報が示す車両の位置を、道路ネットワークデータに基づき特定する。
【0039】
そして、マップマッチング部15は、特定した位置から所定の範囲内に存在する道路を、道路ネットワークデータから抽出する。
【0040】
そして、マップマッチング部15は、抽出した道路ごとに、道路別通過確率を判定し、判定した道路別通過確率を示す道路別通過確率データを、経路推定部16に出力する。
【0041】
経路推定部16は、道路ネットワークデータ記録部13に記録された道路ネットワークデータと、マップマッチング部15から出力された道路別通過確率データとに基づき、車両の走行経路を推定し、推定した走行経路を示す走行経路データを、移動時間算出部17に出力する。
【0042】
移動時間算出部17は、トリップ系列データ作成部14から出力されたトリップ系列データと、経路推定部16から出力された走行経路データとに基づき、走行経路データにより示される走行経路に含まれる各道路を、車両が走行するのに要した移動時間を算出する。
【0043】
そして、移動時間算出部17は、走行経路データと、走行経路データにより示される走行経路に含まれる各道路を車両が走行するのに要した時間を示す移動時間データを、道路の混雑状況を把握するための他の装置などに出力する。」
・「【0080】
次に、経路推定部16の動作について説明する。
【0081】
図6は、経路推定部16の動作の一例を示すフローチャートである。
【0082】
まず、経路推定部16は、道路ごとに、マップマッチング部15により判定された道路別通過確率に基づき、その道路を通過するたびに加算される、経路探索用のリンクコストを決定する(ステップS41)。
【0083】
具体的には、経路推定部16は、確定道路、候補道路、確定道路および候補道路以外の、その他の道路の順に、値が小さくなるリンクコストを決定する。
【0084】
本実施形態においては、例えば、確定道路のリンクコストを1、候補道路のリンクコストを2、その他の道路のリンクコストを5とする。
【0085】
なお、本実施形態においては、道路別通過確率にのみ基づき、各道路のリンクコストを決定する例を用いて説明しているが、これに限られるものではなく、例えば、道路の長さその道路の通過に必要な所要時間なども考慮して、リンクコストを決定することも可能である。
【0086】
次に、経路推定部16は、出発地点である出発道路から、確定道路を通過して、到着地点である到着道路までの経路に含まれる道路の、ステップS41で決定されたリンクコストの合計値を算出し、算出した合計リンクコストが最小となる経路を探索する(ステップS42)。
【0087】
合計リンクコストが最小となる経路の探索には、例えば、2地点間の最短経路を効率的に求めるアルゴリズムであるDijkstra法などが用いられる。
【0088】
なお、位置情報が示す車両の位置によっては、出発地点と到着地点に対応する出発道路と到着道路として、複数の道路が存在する場合がある。
【0089】
例えば、図5の例では、出発地点である位置aに対応する出発道路として、候補道路である道路ABと道路ACが存在している。
【0090】
この場合、経路推定部16は、道路ABから到着地点である道路EFまでの経路と、道路ACから到着地点である道路EFまでの経路との2つの、走行経路の候補である候補経路を探索する。
【0091】
図5の例では、道路ABを出発道路とした場合には、道路AB、道路BD、道路DE、道路EFの順に通過する経路が、合計リンクコストが7で最小となる。
【0092】
道路ACを出発道路とした場合には、道路AC、道路CE、道路EFの順に通過する経路が、合計リンクコストが8で最小となる。
【0093】
なお、図5の例では、到着地点である道路EFは確定道路であるため、道路ABから道路EFまでの経路と、道路ACから道路EFまでの経路の2つの経路だけを探索しているが、経路探索部16は、出発地点、出発道路と到着道路がともに複数存在する場合には、それぞれの組み合わせごとに、候補経路を探索する。
【0094】
また、出発地点から到着地点までの経路は、車両情報データに含まれる車両の進行方向の情報も考慮して探索される。
【0095】
次に、経路推定部16は、すべての出発道路と到着道路との組み合わせに対して、合計リンクコストが最小となる候補経路を探索したかを判定する(ステップS43)。
【0096】
すべての出発道路と到着道路との組み合わせに対して、候補経路を探索していない場合(ステップS43:NO)、経路推定部16は、ステップS42に戻り、すべての組み合わせに対して、候補経路の探索が終了するまで処理を繰り返す。
【0097】
すべての出発道路と到着道路との組み合わせに対して、候補経路を探索した場合(ステップS43:YES)、経路推定部16は、探索した候補経路の中から、車両の走行経路を推定する(ステップS44)。
【0098】
具体的には、経路推定部16は、出発道路と到着道路との組み合わせごとに探索した候補経路の走行距離と、トリップ系列データより求まる車両の走行時間とから、車両の平均走行速度を求める。そして、平均走行速度が、極端に速い、あるいは、極端に遅いなどの、明らかに異常がある候補経路を除外する。
【0099】
なお、上述したように、トリップ系列データにおいては、車両が駐停車していたと考えられる時間帯の車両情報データは削除されているので、駐停車による影響を受けずに、正確な平均走行速度を求めることができる。
【0100】
そして、経路推定部16は、候補経路ごとに、複数の位置情報が示す車両の各々の位置から、残った候補経路に含まれる道路までの最短距離を計算し、計算された最短距離の合計値が最小となる候補経路を、車両の走行経路と推定する。
【0101】
図5の例では、道路AB、道路BD、道路DE、道路EFの順に通過する経路の方が、道路AC、道路CE、道路EFの順に通過する経路よりも、位置情報の示す各位置から経路までの距離の合計値が小さいので、道路AB、道路BD、道路DE、道路EFの順に通過する経路を、車両の走行経路と推定する。」
・段落【0025】及び段落【0031】の記載から、経路推定方法において、車両情報データ記録部12は、車載機1から受信した、所定の時間間隔で、車両の位置情報や進行方向などの情報を取得し、情報を取得した時刻と、取得した位置情報や進行方向などの情報とを対応つけた車両情報データを記録するステップを有すると理解できる。
・段落【0093】の「経路探索部16は、出発地点、出発道路と到着道路がともに複数存在する場合には、それぞれの組み合わせごとに、候補経路を探索する」の「経路探索部16」に関し、図2には図面番号16として「経路推定部16」が記載され、また、上記記載以外に「経路探索部16」との記載もないことから、「経路探索部16」は「経路推定部16」の誤記と認められる。そして、段落【0088】及び段落【0093】の記載から、経路推定方法において、経路推定部16は、出発地点と到着地点に対応する出発道路と到着道路がともに複数存在する場合には、それぞれの組み合わせごとに、候補経路を探索するステップを有すると理解できる。
・段落【0033】及び【0034】の記載から、経路推定方法において、トリップ系列データ作成部14は、車両ごとに、車両情報データ記録部12に記録された車両情報データを、車両情報データに含まれる情報を取得した時刻の順序で時系列に並べてグループ化し、位置情報が示す車両の位置に変化がない時間帯がある場合には、その時間帯の車両情報データを除いて、トリップ系列データを作成するステップを有すると理解できる。
・段落【0097】及び【0100】の記載から、経路推定方法において、経路推定部16は、探索した候補経路の中から車両の走行経路を推定する際に、候補経路ごとに、複数の位置情報が示す車両の各々の位置から、残った候補経路に含まれる道路までの最短距離を計算し、計算された最短距離の合計値が最小となる候補経路を、車両の走行経路と推定するステップを有すると理解できる。

したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明2>
「車両の位置に基づき、車両の出発地点から到着地点までの走行経路を推定する経路推定装置に適用される経路推定方法であって、
車両情報データ記録部12は、車載機1から受信した、所定の時間間隔で、車両の位置情報や進行方向などの情報を取得し、情報を取得した時刻と、取得した位置情報や進行方向などの情報とを対応つけた車両情報データを記録するステップと、
経路推定部16は、出発地点と到着地点に対応する出発道路と到着道路がともに複数存在する場合には、それぞれの組み合わせごとに、候補経路を探索するステップと、
トリップ系列データ作成部14は、車両ごとに、車両情報データ記録部12に記録された車両情報データを、車両情報データに含まれる情報を取得した時刻の順序で時系列に並べてグループ化し、位置情報が示す車両の位置に変化がない時間帯がある場合には、その時間帯の車両情報データを除いて、トリップ系列データを作成するステップと、
経路推定部16は、探索した候補経路の中から車両の走行経路を推定する際に、候補経路ごとに、複数の位置情報が示す車両の各々の位置から、残った候補経路に含まれる道路までの最短距離を計算し、計算された最短距離の合計値が最小となる候補経路を、車両の走行経路と推定するステップ、を含む経路推定方法。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
本発明は、環境負荷軽減や健康促進のために、会員のクレジットカードに対してポイントを付与するサービスを提供するポイントシステム、ポイント提供方法に関する。」
・「【0017】
また、本発明のエコ貢献ポイントシステムは、さらに下記のような特徴をもつように構成してもよい。すなわち、前記移動経路計測部は、所定の間隔ごとに取得した位置情報から、前記位置情報の変化が所定値よりも小さい場合に前記会員携帯端末が静止状態であると判断し、前記静止状態から別の静止状態に至るまでを一つの移動単位とすることを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、例えば、建物の中や狭い範囲を頻繁に移動しているような場合は静止状態と見なし、静止状態から次の静止状態に移るまでを移動単位とするので、不要なデータの記録が必要なく、移動手段の推定処理も移動単位で行えば、移動ルートを特定するための処理が軽減される。」
・「【0031】
公衆通信網20は、携帯電話通信網(3G,LTE,WiMAXなど)、またはWi-Fi(Wireless Fidelity)などの公衆無線LAN網を介してインターネットに接続可能な通信網である。会員携帯端末10は、GPS(Global Positioning System)等の端末の位置情報取得手段を備えた位置情報取得部11,会員の移動経路を逐次計測する移動経路計測部12,会員の移動手段を推定する移動手段推定部13,会員の歩数を検知する歩数計14,外部の様々な近距離通信機器50(近距離通信チップを内蔵した装置)と交信する近隣センサ15,会員が操作する複数の操作ボタンと液晶表示装置等からなる操作部16,会員が移動した経路と移動手段の履歴情報をサーバにまとめて送るための移動履歴テーブルを生成する移動履歴テーブル生成部17,及び外部との無線通信を制御する無線通信部18を備えている。以上いずれの機能部も現在または近い将来の携帯端末に装備されるハードウェアに必要なアプリケーションソフトを追加することで容易に実現できる。」
・「【0048】
図4は、本発明の実施形態に係る移動履歴テーブルの例を示す図である。移動履歴テーブルは、会員携帯端末10の位置情報の時間変化に基づいて、一定時間毎(例えば1分毎)の位置情報、緯度・経度に対応する登録地名、移動距離、推定移動手段、歩数などをテーブル形式でまとめたものである。移動履歴テーブルに基づいて実際の移動ルートが求められる。ただし、移動履歴テーブルは、会員携帯端末10側で必ずしもすべて完成させる必要はなく、登録地名の判別、移動距離の計算、移動手段の推定は、サービス提供サーバ100側で行ってもよい。
【0049】
図4上段には、実際に通勤で自宅→A駅→B駅→勤務先まで移動した位置情報の変化を、図4下段には、休日に自宅→公園→図書館→加盟店→自宅までのジョギングを行った場合の位置情報の変化が示されている。図示するように、所定間隔毎の移動距離、歩数がともに非常に小さい場合には会員は静止していると判断され、静止状態から次の静止状態に移るまで、すなわち、位置情報がたえずある程度大きく変化している間は移動中と判断される。歩数がある程度大きいが、位置情報があまり変化しない場合には、同じ場所や建物内の移動(例えば、同じ店での買い物中や会社で勤務中)とみなし、この場合も静止状態とみなす。建物内の移動はエコルートとは認められないからである。移動中と判断された区間には、移動距離、移動速度、歩数計の値、及び必要なら会員からの入力に基づいて移動手段が推定される。つまり、静止状態から別の静止状態に至るまでを一つの移動単位とし、その移動単位ごとに移動手段が推定される。なお、この例では、会員携帯端末10が1分毎に位置情報を取得し、1分毎に歩数も記録するようにしたが、位置情報に所定の値以上の変化があったときのみ、すなわち、静止状態から移動状態に移った場合のみ歩数を記録するようにしてもよい。」

したがって、上記引用文献3には次の技術的事項(以下、「引用文献3記載技術」という。)が記載されていると認められる。
「会員のクレジットカードに対してポイントを付与するサービスを提供するポイント提供方法において、移動履歴テーブルは、会員携帯端末10の位置情報の時間変化に基づいて、一定時間毎(例えば1分毎)の位置情報、緯度・経度に対応する登録地名、移動距離、推定移動手段、歩数などをテーブル形式でまとめたものであり、会員の移動経路を逐次計測する移動経路計測部12は、所定の間隔ごとに取得した位置情報から、前記位置情報の変化が所定値よりも小さい場合に前記会員携帯端末10が静止状態であると判断するものであって、その際、前記静止状態から別の静止状態に至るまでを一つの移動単位とし、その移動単位ごとに移動手段が推定されること」

4.引用文献4について
前置報告において引用された特開2011-118777号公報(以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0002】
近年、ユーザが身に着けられるセンサであるウェアラブルセンサから得られる時系列データを用いてユーザの状態をモデル化して学習し、学習により得られたモデルを用いてユーザの現在の状態を認識する研究が盛んである(例えば、特許文献1,2、非特許文献1)。」
・「【0135】
<2.先願2の第2の構成例>
[先願2の第2の構成ブロック図]
図10は、先願2で提案した予測システムの第2の構成例を示すブロック図である。なお、図10において、上述した第1の構成例と対応する部分については同一の符号を付してあり、その説明は適宜省略する(その他の図についても同様)。
【0136】
図10の予測システム1は、位置取得部11、速度演算部50、時系列データ記憶部51、行動学習部52、行動認識部53、行動予測部54、目的地予測部55、操作部17、および表示部18により構成される。
【0137】
第1の構成例では、目的地はユーザが指定することとしたが、第2の構成例では、位置取得部11により取得される位置データの時系列データに基づいて、目的地も予測システム1が予測する。目的地は1つだけでなく、複数の目的地が予測されることもある。予測システム1は、予測した目的地について到達確率、経路、および到達時間を算出してユーザに提示する。
【0138】
目的地とされる自宅や勤務先、駅、買い物先、レストランなどでは、ユーザはその場所に所定時間滞在するのが一般的であり、ユーザの移動速度はほぼゼロに近い状態となる。一方、ユーザが目的地に移動している場合には、ユーザの移動速度は、移動手段に応じた特定のパターンで遷移する状態となる。従って、ユーザの移動速度の情報からユーザの行動状態、即ち、ユーザが目的地に滞在している状態(滞在状態)であるのか、または、移動している状態(移動状態)であるのかを認識し、滞在状態の場所を目的地として予測することができる。」
・「【0146】
1.移動速度vx_(k)およびvy_(k)のデータの分布は、緯度経度軸に対して偏りが生じるため、同じ移動手段(電車や徒歩など)であっても角度が異なった場合に識別できない可能性があるが、移動速度v_(k)であればそのような可能性が少ない。
2.移動速度の絶対的な大きさ(|v|)だけで学習すると、機器のノイズによって生じる|v|のため、徒歩と滞在を区別できない。進行方向の変化も考慮することで、ノイズの影響を軽減することができる。
3.移動している場合は進行方向の変化が少ないが、滞在している場合は進行方向が定まらないので、進行方向の変化を使うと移動と滞在の識別がしやすい。
【0147】
以上の理由から、速度演算部50は、移動速度のデータとして、式(6)で表される移動速度v_(k)と進行方向の変化θ_(k)を求め、位置データとともに、時系列データ記憶部12または行動認識部53に供給する。」

したがって、上記引用文献4には次の技術的事項(以下、「引用文献4記載技術」という。)が記載されていると認められる。
「センサから得られるユーザの状態をモデル化して学習し、学習により得られたモデルを用いてユーザの現在の状態を認識する方法において、ユーザの移動速度の情報からユーザの行動状態、即ち、ユーザが目的地に滞在している状態(滞在状態)であるのか、または、移動している状態(移動状態)であるのかを認識する際に、進行方向の変化を使うと移動と滞在の識別がしやすいこと」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)引用発明1を主引用発明とする場合について
ア.対比
本願発明1と、引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明1における「利用者」は、本願発明1における「移動体」に相当し、以下同様に「候補経路」は「経路候補」に相当する。
(イ)引用発明1において、選択経路は、利用者により設定された出発地と目的地の情報を含む経路探索条件に基づいて取得された複数の候補経路のうち利用者が選択した経路であることから、引用発明1における「利用者により設定された出発地と目的地の情報を含む経路探索条件に基づいて取得された複数の候補経路のうち利用者が選択した選択経路」は、本願発明1における「移動体の出発地から目的地までの移動の経路」に相当する。よって、引用発明1における「利用者により設定された出発地と目的地の情報を含む経路探索条件に基づいて取得された複数の候補経路のうち利用者が選択した選択経路を判定する選択経路の判定方法」は、本願発明1における「移動体の出発地から目的地までの移動の経路を推定する移動経路推定方法」に相当する。
(ウ)引用発明1における「現在位置情報に基づく移動履歴」と、本願発明1における「前記移動体の前記出発地から前記目的地までの行動に関する位置情報集合」とは、いずれも「移動体の行動に関する位置情報集合」である点で共通する。よって、引用発明1における「履歴記憶部が、端末装置100にかかる移動体(利用者等)の現在位置情報を取得する現在位置情報取得部102aにより取得される現在位置情報に基づく移動履歴を格納するステップ」と、本願発明1における「データ記憶部が、前記移動体の前記出発地から前記目的地までの行動に関する位置情報集合を格納するステップ」とは、いずれも「データ記憶部が、移動体の行動に関する位置情報集合を格納するステップ」である点で共通する。
(エ)引用発明1において、候補経路取得部202bにより利用者の出発地と目的地とを含む経路探索条件に基づいて、複数の候補経路が取得されることから、引用発明1における「候補経路取得部202b」は、本願発明1における「経路候補決定部」に相当する。よって、引用発明1における「候補経路取得部202bは、利用者により設定された出発地と目的地の情報を含む経路探索条件に基づいて、複数の候補経路を取得するステップ」は、本願発明1における「経路候補決定部が、移動体の出発地から目的地までの複数の経路候補を決定するステップ」に相当する。
(オ)引用発明1において、選択経路判定部102eは、現在位置情報取得部102aにより取得される現在位置情報に基づく移動履歴に基づいて、候補経路出力部102dにより出力された複数の候補経路のうち、利用者が選択した選択経路を判定することから、引用発明1における「複数の候補経路のうち、利用者が選択した選択経路を判定する」ことは、本願発明1における「複数の経路候補から1つの経路候補を移動体の推定経路として選択する」ことに相当し、また、引用発明1における「選択経路判定部102e」は、本願発明1における「経路選択部」に相当する。よって、引用発明1における「選択経路判定部102eは、現在位置情報取得部102aにより取得される現在位置情報に基づく移動履歴に基づいて、サーバ装置200から送信された経路探索条件に基づく複数の候補経路の情報に基づいて複数の候補経路を出力部114に出力する候補経路出力部102dにより出力された複数の候補経路のうち、利用者が選択した選択経路を判定するステップ」と、本願発明1における「経路選択部が、前記複数の経路候補を前記位置情報集合と比較することによって、前記複数の経路候補から1つの経路候補を前記移動体の推定経路として選択するステップ」とは、いずれも「経路選択部が、位置情報集合に基づいて、複数の経路候補から1つの経路候補を移動体の推定経路として選択するステップ」である点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「移動体の出発地から目的地までの移動の経路を推定する移動経路推定方法であって、
データ記憶部が、前記移動体の行動に関する位置情報集合を格納するステップと、
経路候補決定部が、前記移動体の前記出発地から前記目的地までの複数の経路候補を決定するステップと、
経路選択部が、前記位置情報集合に基づいて、前記複数の経路候補から1つの経路候補を前記移動体の推定経路として選択するステップを含む、移動経路推定方法。」
<相違点1-1>
移動体の行動に関する位置情報集合に関し、本願発明1では前記移動体の「前記出発地から前記目的地までの」行動に関する位置情報集合であるのに対し、引用発明1では移動体の出発地から目的地までの行動に関する位置情報集合ではない点。
<相違点1-2>
移動体の行動に関し、本願発明1では前記移動体の前記行動は、「移動と滞在を含む」のに対し、引用発明1では移動と滞在を含まない点。
<相違点1-3>
本願発明1では「経路候補決定部が、前記移動体の前記出発地から前記目的地までの複数の経路候補を決定するステップであって、前記移動体の行動区間を分類するステップを含み、該ステップは、前記移動体の前記出発地から前記目的地までの行動のうち、滞在に関する位置情報を識別するステップと、格納された前記位置情報集合から前記滞在に関する位置情報を除いて移動のみに関する位置情報集合を生成するステップと、を含む」のに対し、引用発明1では、経路候補決定部が、前記移動体の出発地から目的地までの複数の経路候補を決定するステップを有するものの、かかる経路候補決定部が、移動体の行動区間を分類するステップを備えていない点。
<相違点1-4について>
「経路選択部が、前記位置情報集合に基づいて、前記複数の経路候補から1つの経路候補を前記移動体の推定経路として選択するステップに関し、前記位置情報集合に基づいて」が、本願発明1では「前記複数の経路候補を前記位置情報集合と比較すること」によるのに対し、引用発明1では現在位置情報に基づく移動履歴に基づくものである点。
<相違点1-5について>
本願発明1では「滞在に関する位置情報を識別する前記ステップは、一連の位置情報のうちのある位置から次に隣接する位置への所与のベクトルの向きが、直前のベクトルおよび直後のベクトルの双方とあるしきい値角度以上変化するとき、前記所与のベクトルに関係する位置情報が滞在に関係すると識別するステップを含む」のに対し、引用発明1では、かかる滞在に関する位置情報を識別するステップを備えていない点。

イ.相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点1-5について先に検討すると、引用文献4記載技術には、「ユーザの移動速度の情報からユーザの行動状態、即ち、ユーザが目的地に滞在している状態(滞在状態)であるのか、または、移動している状態(移動状態)であるのかを認識する際に、進行方向の変化を使うと移動と滞在の識別がしやすいこと」という技術的事項が記載されている。
しかしながら、滞在に関する位置情報の識別に関し、引用文献4記載技術は、「進行方向の変化を使うと移動と滞在の識別がしやすいこと」を記載しているのみであり、上記相違点1-5に係る本願発明1の技術的事項のうち、「一連の位置情報のうちのある位置から次に隣接する位置への所与のベクトルの向きが、直前のベクトルおよび直後のベクトルの双方とあるしきい値角度以上変化するとき、前記所与のベクトルに関係する位置情報が滞在に関係すると識別する」という技術的事項を備えていない。
また、当該技術的事項は、上記引用文献2及び3にも記載されておらず、本願出願前において周知技術であるともいえない。
そして、当該技術的事項により、本願発明1は移動と滞在の識別精度の向上という格別の効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、相違点1-1ないし1-4を検討するまでもなく、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)引用発明2を主引用発明とする場合について
ア.対比
本願発明1と、引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明2における「車両」は、本願発明1における「移動体」に相当し、以下同様に「出発地点」は「出発地」に、「到着地点」は「到着地」に、「走行経路」は「移動の経路」に、「経路推定方法」は「移動経路推定方法」に、「車両情報データ記録部12」は「データ記憶部」に、「記録」は「格納」に、「候補経路」は「経路候補」にそれぞれ相当する。
(イ)引用発明2では、車両の位置に基づき車両の出発地点から到着地点までの走行経路を推定していることから、引用発明2における「車両情報データ」には、車両の出発地点から到着地点までの位置情報が記録されていることは明らかである。また、引用発明2では、トリップ系列データ作成部14により位置情報が示す車両の位置に変化がない時間帯がある場合には、その時間帯の車両情報データを除いてトリップ系列データが作成されることから、引用発明2における「車両情報データ」には、位置情報が示す車両の位置に変化がある時間帯である移動と、車両の位置情報が示す車両の位置に変化がない時間帯である滞在とが含まれることも明らかである。よって、引用発明2における「車載機1から受信した、所定の時間間隔で、車両の位置情報や進行方向などの情報を取得し、情報を取得した時刻と、取得した位置情報や進行方向などの情報とを対応つけた車両情報データ」は、本願発明1における「移動体の出発地から目的地までの行動に関する位置情報集合」であって、「移動体の行動は、移動と滞在を含む」ものに相当する。よって、引用発明2における「車両情報データ記録部12は、車載機1から受信した、所定の時間間隔で、車両の位置情報や進行方向などの情報を取得し、情報を取得した時刻と、取得した位置情報や進行方向などの情報とを対応つけた車両情報データを記録するステップ」は、本願発明1における「データ記憶部が、移動体の出発地から目的地までの行動に関する位置情報集合を格納するステップであって、前記移動体の前記行動は、移動と滞在を含む、ステップ」に相当する。
(ウ)引用発明2において、経路推定部16は、出発地点と到着地点に対応する出発道路と到着道路がともに複数存在する場合には、それぞれの組み合わせごとに、候補経路を探索し、探索した候補経路の中から車両の走行経路を推定しており、経路推定部16が出発地点から到着地点までの複数の候補経路を決定していることは明らかであることから、引用発明2における「候補経路を探索」は、本願発明1における「経路候補を決定」に相当し、引用発明2における「経路推定部16」は、本願発明1における「経路候補決定部」に相当する。よって、引用発明2における「経路推定部16は、出発地点と到着地点に対応する出発道路と到着道路がともに複数存在する場合には、それぞれの組み合わせごとに、候補経路を探索するステップ」は、本願発明1における「経路候補決定部が、移動体の出発地から目的地までの複数の経路候補を決定するステップ」に相当する。
(エ)引用発明2において、トリップ系列データ作成部14は、車両ごとに、車両情報データ記録部12に記録された車両情報データを、車両情報データに含まれる情報を取得した時刻の順序で時系列に並べてグループ化し、位置情報が示す車両の位置に変化がない時間帯がある場合には、その時間帯の車両情報データを除いて、トリップ系列データを作成することから、トリップ系列データ作成部14により、時系列に並べてグループ化された車両情報データのうち、位置情報が示す車両の位置に変化がない時間帯(滞在)の車両情報データを識別し、時系列に並べてグループ化された車両情報データから位置情報が示す車両の位置に変化がない時間体(滞在)の車両情報データを除いて、車両情報が示す車両の位置に変化がある時間体(移動)の車両情報データのみに関するトリップ系列データを作成するものであるといえる。よって、引用発明1における「トリップ系列データ作成部14は、車両ごとに、車両情報データ記録部12に記録された車両情報データを、車両情報データに含まれる情報を取得した時刻の順序で時系列に並べてグループ化し、位置情報が示す車両の位置に変化がない時間帯がある場合には、その時間帯の車両情報データを除いて、トリップ系列データを作成するステップ」と、本願発明1における「経路候補決定部が、前記移動体の前記出発地から前記目的地までの複数の経路候補を決定するステップであって、前記移動体の行動区間を分類するステップを含み、該ステップは、前記移動体の前記出発地から前記目的地までの行動のうち、滞在に関する位置情報を識別するステップと、格納された前記位置情報集合から前記滞在に関する位置情報を除いて移動のみに関する位置情報集合を生成するステップと、を含む、ステップ」とは、「移動体の行動区間を分類するステップを含み、該ステップは、移動体の出発地から目的地までの行動のうち、滞在に関する位置情報を識別するステップと、格納された位置情報集合から、滞在に関する位置情報を除いて移動のみに関する位置情報集合を生成するステップと、を含むステップ」である点で共通する。
(オ)引用発明2では、経路推定部16は、候補経路ごとに、複数の位置情報が示す車両の各々の位置から、残った候補経路に含まれる道路までの最短距離を計算し、計算された最短距離の合計値が最小となる候補経路を、車両の走行経路と推定しており、複数の候補経路を複数の位置情報(車両情報データ)と比較することによって、複数の候補経路から計算された最短距離の合計値が最小となる1つの候補経路を車両の走行経路として選択しているといえるから、引用発明2における「車両の走行経路と推定」は本願発明1における「移動体の推定経路として選択」に相当し、引用発明2における「経路推定部16」は本願発明1における「経路選択部」に相当する。よって、引用発明2における「経路推定部16は、探索した候補経路の中から車両の走行経路を推定する際に、候補経路ごとに、複数の位置情報が示す車両の各々の位置から、残った候補経路に含まれる道路までの最短距離を計算し、計算された最短距離の合計値が最小となる候補経路を、車両の走行経路と推定するステップ」は、本願発明1における「経路選択部が、複数の経路候補を位置情報集合と比較することによって、複数の経路候補から1つの経路候補を移動体の推定経路として選択するステップ」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「移動体の出発地から目的地までの移動の経路を推定する移動経路推定方法であって、
データ記憶部が、前記移動体の前記出発地から前記目的地までの行動に関する位置情報集合を格納するステップであって、前記移動体の前記行動は、移動と滞在を含む、ステップと
経路候補決定部が、前記移動体の前記出発地から前記目的地までの複数の経路候補を決定するステップと、
前記移動体の行動区間を分類するステップを含み、該ステップは、前記移動体の前記出発地から前記目的地までの行動のうち、滞在に関する位置情報を識別するステップと、格納された前記位置情報集合から、前記滞在に関する位置情報を除いて移動のみに関する位置情報集合を生成するステップと、を含むステップと、
経路選択部が、前記複数の経路候補を前記位置情報集合と比較することによって、前記複数の経路候補から1つの経路候補を前記移動体の推定経路として選択するステップを含む、移動経路推定方法」
<相違点2-1>
移動体の行動区間を分類するステップに関し、本願発明1は、「経路候補決定部が、前記移動体の前記出発地から前記目的地までの複数の経路候補を決定するステップであって、前記移動体の行動区間を分類するステップを含」むのに対し、引用発明2は、経路候補決定部ではなく、トリップ系列データ作成部14が移動体の行動区間を分類している点。
<相違点2-2>
滞在に関する位置情報を識別するステップに関して、本願発明1は、当該ステップが、「一連の位置情報のうちのある位置から次に隣接する位置への所与のベクトルの向きが、直前のベクトルおよび直後のベクトルの双方とあるしきい値角度以上変化するとき、前記所与のベクトルに関係する位置情報が滞在に関係すると識別するステップを含む」のに対し、引用発明2には、滞在に関する位置情報を識別するステップを備えているものの、それ以上の特定はなされていない点。

イ.相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2-2について先に検討すると、上記第5 1.(1)イ.で述べたのと同様の理由により、引用文献4記載技術には、上記相違点2-2に係る本願発明1の技術的事項のうち、「一連の位置情報のうちのある位置から次に隣接する位置への所与のベクトルの向きが、直前のベクトルおよび直後のベクトルの双方とあるしきい値角度以上変化するとき、前記所与のベクトルに関係する位置情報が滞在に関係すると識別する」という技術的事項を備えていない。
また、当該技術的事項は、上記引用文献1及び3にも記載されておらず、本願出願前において周知技術であるともいえない。
そして、当該技術的事項により、本願発明1は移動と滞在の識別精度の向上という格別の効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、相違点2-1を検討するまでもなく、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)小括
したがって、本願発明1は、引用文献1ないし4に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7も、本願発明1の「一連の位置情報のうちのある位置から次に隣接する位置への所与のベクトルの向きが、直前のベクトルおよび直後のベクトルの双方とあるしきい値角度以上変化するとき、前記所与のベクトルに関係する位置情報が滞在に関係すると識別する」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1ないし4に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

3.本願発明8ないし14について
本願発明8ないし14は、本願発明1ないし7に対応する装置の発明であり、本願発明1の「一連の位置情報のうちのある位置から次に隣接する位置への所与のベクトルの向きが、直前のベクトルおよび直後のベクトルの双方とあるしきい値角度以上変化するとき、前記所与のベクトルに関係する位置情報が滞在に関係すると識別する」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用文献1ないし4に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし14は「一連の位置情報のうちのある位置から次に隣接する位置への所与のベクトルの向きが、直前のベクトルおよび直後のベクトルの双方とあるしきい値角度以上変化するとき、前記所与のベクトルに関係する位置情報が滞在に関係すると識別する」という事項を有するものとなっており、拒絶査定において引用された引用文献1ないし3に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-05-22 
出願番号 特願2016-8832(P2016-8832)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G08G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 倉橋 紀夫  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 山村 和人
佐々木 芳枝
発明の名称 移動経路推定の方法および装置  
代理人 中西 基晴  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 宮前 徹  
代理人 鳥居 健一  
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