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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1339962
審判番号 不服2017-2838  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-27 
確定日 2018-05-10 
事件の表示 特願2014- 3633「樹脂積層板及びタッチパネル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月23日出願公開,特開2015-132691〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特願2014-3633号(以下,「本件出願」という。)は,平成26年1月10日の出願であって,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成28年 5月31日付け:拒絶理由通知書
平成28年 8月 8日差出:意見書,手続補正書
平成28年 8月26日付け:拒絶理由通知書(最後の拒絶の理由)
平成28年10月31日差出:意見書,手続補正書
平成28年11月14日付け:補正の却下の決定(平成28年10月31日付け手続補正書による補正の却下),拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成29年 2月27日差出:審判請求書,手続補正書
平成29年11月28日付け:拒絶理由通知書(以下,この拒絶理由通知書の拒絶の理由を「当審拒絶理由」という。)
平成30年 2月 5日差出:意見書,手続補正書(以下,この手続補正書による補正を「本件補正」という。)

第2 本願発明について
1 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1?請求項7に係る発明は,平成30年2月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項7に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明は,次のとおりである(以下「本願発明」という。)。
「面内に複屈折を有する透明基材の一方の面上に,樹脂板が設けられた樹脂積層板であって,
前記面内に複屈折を有する透明基材は,8000nm以上のリタデーションを有し,
前記樹脂板は,ポリカーボネート樹脂層とアクリル樹脂層とを有する多層構造であり,共押出成形法により製造されたものであり,
タッチパネルの表面保護板として用いられる
ことを特徴とする樹脂積層板。」

2 当審拒絶理由
平成29年11月28日付け拒絶理由通知書による拒絶の理由のうち理由1は,概略,本件出願の請求項1?請求項8に係る発明は,その出願前に日本国内または外国において,頒布された刊行物である下記の引用例1に記載された発明,並びに,その出願前に日本国内または外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例2に記載されるような周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用例1.特開2010-182263号公報
引用例2.Daisuke Kobayashi,et.al.,A High-Retardation Polymer Film for Viewing Liquid Crystal Displays through Polarized Sunglasses without Chromaticity Change in the Image,Japanese Journal of Applied Physics,日本,2011.04.20発行,Vol.50,p.042602

第3 引用例
1 引用例1の記載
(1)引用例1には,以下の事項が記載されている。なお,下線は,当合議体が付したものであり,引用発明の認定に活用した箇所を示す。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂層の少なくともタッチされる側の表面にアクリル樹脂層が共押出成形により積層されてなることを特徴とするタッチパネル用積層押出樹脂板。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は,タッチパネルに使用される積層押出樹脂板および表面塗工板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばカーナビゲーションシステム,携帯情報端末,産業機械の操作パネル,パーソナルコンピューターの画面,携帯ゲーム機等には,透明電極が付いたタッチパネルが用いられている。タッチパネルに用いられる板としては,薄いガラスの他,樹脂製のものが挙げられる。タッチパネルには,例えば指で直接触れて操作するものやタッチペンによって操作するもの等があり,透明性,耐衝撃性,軽量性,表面の傷つき難さが重要視されている。このような要望に対し,薄いガラスは耐衝撃性,軽量性に劣るため,近時,樹脂製の板が多く使用されている。
・・・(略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は,表面に傷が付き難く,しかも製造が比較的容易なタッチパネル用積層押出樹脂板およびタッチパネル用表面塗工板を提供することである。」

ウ 「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は,上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果,以下の構成からなる解決手段を見出し,本発明を完成するに至った。
【0009】
(1)ポリカーボネート樹脂層の少なくともタッチされる側の表面にアクリル樹脂層が共押出成形により積層されてなることを特徴とするタッチパネル用積層押出樹脂板。
・・・(略)・・・
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層押出樹脂板は,表面に傷が付き難くいので,タッチパネル用途に好適に利用できる。また,前記積層押出樹脂板のタッチされる側の表面に硬化膜を被覆して表面塗工板とすれば,タッチペン等の先が尖ったものをタッチさせる用途に好適に利用できる。しかも,前記積層押出樹脂板は,共押出成形により得られるものであり,従来のように基板上に活性光線硬化層とハードコート層とを別々に積層する必要がないので,比較的容易に製造することができる。」

エ 「【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の積層押出樹脂板(以下,押出樹脂板と言うことがある。)は,ポリカーボネート樹脂層の少なくともタッチされる側の表面にアクリル樹脂層が共押出成形により積層されてなり,タッチパネルに用いられるものである。」
・・・(略)・・・
【0027】
本発明の積層押出樹脂板は,ポリカーボネート樹脂層とアクリル樹脂層とを共押出成形で積層一体化することにより,好適に製造される。この共押出成形は,2基または3基の一軸または二軸の押出機を用いて,前述したポリカーボネート樹脂層の材料とアクリル樹脂層の材料とをそれぞれ溶融混練した後,フィードブロックダイやマルチマニホールドダイ等を介して積層することにより行うことができる。
【0028】
積層一体化されたシート状ないしフィルム状の溶融積層押出樹脂板を,例えばロールユニット等を用いて冷却固化し,本発明の積層押出樹脂板を得る。以下,本発明にかかる積層押出樹脂板の製造方法の一実施形態について,図面を参照して詳細に説明する。
・・・(略)・・・
【0040】
また,積層押出樹脂板11は,リタデーション値が200nm以下になる傾向がある。液晶パネル上にタッチパネルが装着されている場合,該タッチパネルを構成する積層押出樹脂板11のリタデーション値が200nm以下であれば,偏光メガネを着用していてもタッチパネルが着色して見える現象が起こらなくなる。前記リタデーション値は,後述するように,微小面積複屈折率計で測定して得られる値である。
・・・(略)・・・
【0056】
本発明の積層押出樹脂板は,そのアクリル樹脂層側を,そのまま指を用いたタッチ面として使うことも可能であるが,タッチペン等の先が尖ったものをタッチさせる場合には,表面に硬化膜を設けた方が耐久性の面で優れる。なお,ポリカーボネート層側については,基本的にタッチ面として使われないため,そのままであってもよいが,その表面に硬化膜を設けてもよい。
【0057】
本発明におけるタッチパネル用表面塗工板は,前記した本発明の積層押出樹脂板のタッチされる側の表面に硬化膜を被覆したものである。前記硬化膜としては,例えば熱硬化性樹脂,電離放射線硬化樹脂等が挙げられる。
・・・(略)・・・
【0070】
こうして得られる本発明の積層押出樹脂板および表面塗工板は,例えばカーナビゲーションシステムや携帯情報端末,産業機械の操作パネル,パーソナルコンピューターの画面,携帯ゲーム機等のタッチパネル用部材として使われる。
【0071】
また,本発明の積層押出樹脂板および表面塗工板をタッチパネルとして用いるには,例えば必要に応じて熱成形等の二次成形,印刷,穴あけ等の加工を行い,所定の形状ないし大きさに切断処理すればよい。そして,2層構造の積層押出樹脂板であれば,通常,アクリル樹脂層が表側(外側:操作する人が触れる側)となるように,タッチパネルを設置すればよい。また,3層構造の積層押出樹脂板であって,両アクリル樹脂層の厚みが互いに異なる場合には,厚みの大きい方のアクリル樹脂層が外側となるように,タッチパネルを設置するのがよい。本発明の積層押出樹脂板および表面塗工板からなるタッチパネルは,傷が付き難くいのが特徴である。」

(2)引用発明
引用例1には,請求項1に記載された発明として,以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「 ポリカーボネート樹脂層の少なくともタッチされる側の表面にアクリル樹脂層が共押出成形により積層されてなるタッチパネル用積層押出樹脂板。」

2 引用例2の記載
引用例2には,以下の事項が記載されている。
(1)「We describe a high-retardation polymer film (HRPF) that enables liquid crystal displays (LCDs) to be viewed through polarized sunglasses at all rotation angles without any chromaticity changes in the image. We investigated the relationship between retardation and polymer interference color after developing a program that simulates the interference colors of polymers taking into consideration the polymer birefringence dispersion and LCD emission light spectrum. As a result, we confirmed that the retardation value required for our HRPF made of polyethylene terephthalate and applied to an LCD with white LED backlight was not less than 7832 nm. We also confirmed that the image quality was not degraded by attaching the HRPF to the LCD, and chromaticity change in the image observed through HRPF and polarized sunglasses was negligible compared to the LCD image.」(要約)
(日本語訳)
「偏光サングラスを通して液晶ディスプレイ(LCDs)を見た際に,全ての回転角で色度の変化なしに,画像を見ることを可能にする,高リタデーションポリマーフィルム(HRPF)が記述される。ポリマーの複屈折分散とLCDの放射光スペクトルを考慮に入れた,ポリマーの干渉色をシミュレートするプログラムを開発することにより,リタデーションとポリマーの干渉色の関係が調べられた。その結果,ポリエチレンテレフタレートからなり,白色LEDバックライトを備えたLCDに適用されるHRPFに求められるリタデーション値は,少なくとも7832nmであることを確認した。更に,画像の質が,HRPFをLCDに取り付けることにより劣化しないこと,並びに,HRPFと偏光サングラスを通して観察された画像の色度変化は,LCD画像と比較して無視しうることも確認された。」

(2)「1. Introduction
・・・(略)・・・However, if an LCD is viewed through polarized sunglasses, the display looks black at certain rotation angles, when the polarizers of the LCD and those of the sunglasses cross each other and the linearly polarized output light from the LCD cannot pass through the polarized sunglasses. This could be a serious safety issue if polarized sunglasses are worn when driving a car and the display on the navigation system or instrument panel cannot be clearly viewed. Therefore, a device is required that enables LCDs to be viewed through polarized sunglasses at all rotation angles without any chromaticity changes in the image.
・・・(略)・・・
High-retardation polymer film (HRPF) is another potential means for enabling LCDs to be viewed through polarized sunglasses without any chromaticity changes in the image. ・・・ This method focuses on the interference color of a polymer film, which is the color observed through a birefringent medium placed between crossed polarizers. As detail principle is referred in §2, at a sufficiently high retardation value, which is the product of the birefringence and thickness of a polymer film, the interference color becomes almost the same color as the light that transmits the first polarizer corresponding to the polarizer of the LCD on the panel side. Therefore, the HRPF enables the LCD to be viewed through polarized sunglasses without any chromaticity changes in the image. The interference color depends on the polymer because the color depends on the birefringence dispersion inherent in the polymer. Furthermore, the interference color also depends on the retardation value of the polymer film and the LCD backlight. However, the fabrication conditions for the HRPF have not yet been clarified because the detailed relationship between the various parameters remains unknown.」(042602-1頁左下欄1行,同欄9?19行,同欄25行?同頁右下欄5行)
(日本語訳)
「1.イントロダクション
・・・(略)・・・しかし,LCDが偏光サングラスを介してみられる場合には,ある回転角において,LCDの偏光子とサングラスのそれとが互いに交差し,LCDからの出力される直線偏光が偏光サングラスを通過しない際に,ディスプレイは黒く見える。これは,偏光サングラスを付けて車を運転し,ナビゲーションシステムや操作パネルが明瞭に見えない際に,深刻な安全上の問題となりうる。それ故,偏光サングラスを介して,いかなる回転角でも画像の色度変化なしに,LCDsを見ることを可能にするデバイスが求められる。
・・・(略)・・・
高リタデーションポリマーフィルム(HRPF)は,偏光サングラスを介して画像の色度変化なしにLCDsを見ることを可能にする,別の可能性ある手段である。この手段は,ポリマーフィルムの干渉色,すなわち,交差する偏光子間に配置された複屈折媒体を通して観察される色に着目する。詳細は§2で言及されるように,複屈折性とポリマーフィルムの厚さの積であるリタデーション値が十分に高い場合には,干渉色は,LCDのパネル側の偏光子であるところの,第1の偏光子を通過した光と,ほぼ同色となる。それ故,HRPFは,偏光サングラスを介して,いかなる色度変化を画像に与えることなく,LCDを見ることを可能にする。色はポリマー固有の複屈折分散に依存するから,干渉色はポリマーに依存する。更に,干渉色は,ポリマーフィルムのリタデーション値とLCDバックライトにも依存する。しかし,様々なパラメータの詳細な関係が不明であるため,HRPFの製造条件は未だ明らかでなかった。」

(3)「2. Concept of the HRPF
・・・(略)・・・
When a birefringent polymer film is placed between crossed polarizers, the polarization state of linearly polarized light incident to the film changes due to birefringence and the light can pass through the polarizer on the observer's side, which corresponds to polarized sunglasses. The interference color is the color translated from the transmitted light spectrum, Q(λ), which is given by
Q(λ) = L(λ)H(λ)P(λ)T(λ). (1)
L(λ) is the transparency, which can be degraded by light loss through the film caused by reflection on the surface of the film and scattering inside the film;・・・. H(λ) is the transmittance characteristic of the polarizer;・・・. P(λ) is the light spectrum of the incident light to the film. T(λ) is the transmittance spectrum given by the ratio of the light intensity from the first polarizer, which corresponds to the polarizer of the LCD on the panel side, to that from the polarizer on the observer's side, and can be derived by the following calculation of the optical electric field.・・・(略)・・・

Therefore, transmittance spectrum T(λ) due to the birefringence depends on the retardation of the film Re(λ). Re(λ) can be written as a function of g(λ), which represents the birefringence dispersion of the polymers:
Re(λ) = g(λ)Re(λ_(0)), (8)
where Re(λ_(0)) is the retardation value at wavelength λ_(0) defined as g(λ_(0)) = 1. Since g(λ) is inherent in polymers, Re(λ) and T(λ) depend on the type of polymer used. Therefore, the interference color depends on the type of polymer. Figure 2 shows the results of calculating eq. (7) by substituting Re = 1000 and 10000 nm in the case of no birefringence dispersion [g(λ) = 1]. As seen in the figure, when retardation reaches a large value, the number of peaks of maximum transmittance increases. Therefore, the interference color of the HRPF, which has sufficiently large retardation, is expected to be almost the same as the color of light from the first polarizer, which corresponds to the polarizer of the LCD on the panel side.」(042602-1頁右下欄25行,同欄29行?042602-2頁左欄9行,同頁右欄10?28行)

「2.HRPFのコンセプト
・・・(略)・・・
交差する偏光子間に複屈折ポリマーフィルムが配置された際には,該フィルムに入射する直線偏光光の偏光状態は,複屈折により変化し,偏光サングラスに対応する観察者側の偏光子を通過することができる。干渉光は透過光スペクトルQ(λ)から求められる色で,Q(λ)は次式で与えられる。
Q(λ) = L(λ)H(λ)P(λ)T(λ). (1)
L(λ)は透明度で,フィルム表面の反射とフィルム内散乱による,フィルムを通した光損失によって低下する;・・・。H(λ)は偏光子の透過特性である;・・・。P(λ)はフィルムへの入射光の光スペクトルである。T(λ)は,LCDのパネル側偏光子に対応する第1の偏光子からの光強度の,観察者側偏光子からの光強度に対する比により求められる透過スペクトルであり,後述の光電場の計算により導かれる。・・・(略)・・・

それ故,複屈折による透過スペクトルT(λ)は,フィルムのリタデーションRe(λ)に依存する。Re(λ)は,複屈折分散を表すg(λ)の関数として次のように表される:
Re(λ) = g(λ)Re(λ_(0))dT, (8)
ここで,Re(λ_(0))は,g(λ_(0)) = 1で定義される波長λ_(0)でのリタデーション値である。g(λ)はポリマー固有であるから,Re(λ)及びT(λ)は,使用するポリマーのタイプに依存する。それ故,干渉色はポリマーのタイプに依存する。図2は,複屈折分散がない場合[g(λ) = 1]に,Re = 1000 and 10000 nmを代入して式(7)を計算した結果を示す。図から判るように,リタデーションが大きな値になると,最大透過率のピーク数は増加する。それ故,十分に大きなリタデーションを有するHRPFの干渉色は,LCDのパネル側偏光子に対応する第一の偏光子からの光の色とほぼ同じになる。」

(4)「3. Experiments
3.1 Analysis of retardation required for HRPF
3.1.1 Observation of interference color
・・・(略)・・・
As shown in Fig. 3, the PET film was attached diagonally between crossed polarizers and matching oil with a refractive index of 1.588 at a wavelength of 589 nm was used to fill the space between the surface of the LCD panel and PET film, and between the PET film and commercial polarizer to prevent the reflection of light at the film interface. Under these conditions, the interference color was observed in the case of an LCD with a white display.
3.1.2 Simulation of interference color
・・・(略)・・・
Furthermore, to reveal the retardation value required for the HRPF, we defined Re_(HRPF) as the minimum retardation of the polymer film having an interference color almost the same as the LCD image. To obtain Re_(HRPF), the color difference was calculated from L^(*)a^(*)b^(*) color system as

・・・(略)・・・
Next, the program calculated L^(*), a^(*), and b^(*) in the case of Re = 0-30000 nm by eq.(14) and ΔE_(ab)^(*) between the interference colors at two specific retardation values, Re_(1) and Re_(2), by eq.(13). In general, when the color difference is ΔE_(ab)^(*) < 1, it is difficult to distinguish the difference between two colors. Therefore, we defined Re_(HRPF) as the minimum Re_(1), which satisfied ΔE_(ab)^(*) < 1 at Re_(2) = Re_(1) + n (n = 1,2, . . . , 10000).
・・・(略)・・・
3.2 Evaluation of prepared HRPF
To evaluate the difference in the image viewed through the HRPF and polarized sunglasses compared to the LCD image, the following experiments were performed. The prepared HRPF and a commercial polarizer were attached to the surface of the LCD panel with white LED backlight, as shown in Fig. 3. Chromaticity u' and v' and luminance Y of the light through the HRPF and the polarizer from the LCD with a white display was measured using a luminance colorimeter (Topcon BM-7).」(042602-2頁右欄29?31行,042602-3頁左欄15?24行,042602-4頁左欄6?12行,同欄17?25行,同欄30?39行)
(日本語訳)
「3.実験
3.1 HRPFに求められるリタデーションの分析
3.1.1 干渉色の観察
・・・(略)・・・
図3のように,PETフィルムは交差する偏光子間に対角線上に貼り付けられ,波長589nmで屈折率が1.588のマッチングオイルが,LCDの表面とPETフィルムの間及びPETフィルムと市販偏光子の間の空間に用いられ,フィルム間での反射が抑制される。こうした条件下で,白表示させたLCDについて,干渉色が観察された。
3.1.2 干渉色のシミュレーション
・・・(略)・・・
更に,HRPFに求められるリタデーション値を明らかにするために,Re_(HRPF)が,干渉色がLCD画像とほぼ同色となるポリマーフィルムの最小リタデーションとして定義される。Re_(HRPF)を求めるために,L^(*)a^(*)b^(*)表色系で色の違いが以下のように計算される

・・・(略)・・・
次に,プログラムは,Re = 0-30000nmの場合にL^(*),a^(*),b^(*)を式(14)により計算し,2つの特定のリタデーション値Re_(1)とRe_(2)における干渉色間のΔE_(ab)^(*)を,式(13)により計算した。一般に,色の違いがΔE_(ab)^(*) < 1であれば,2つの色の違いを見分けることは難しい。それ故,Re_(HRPF)を,Re_(2) = Re_(1) + n (n = 1,2, . . . , 10000)においてΔE_(ab)^(*) < 1が満足される最小のRe_(1)として定義した。
・・・(略)・・・
3.2 用意したHRPFの評価
HRPFと偏光サングラスを通した画像とLCD画像の違いを評価するために,以下の実験が実施された。図3に示されるように,用意したHRPFと市販の偏光子が,白色LEDバックライトを備えたLCDの表面に貼り付けられた。白表示したLCDから,HRPFと偏光子を通過した光の,色度u'及びv'並びに輝度Yが輝度色度系(Topcon BM-7)を用いて測定された。」

(Fig.3は以下のとおりである)


(Fig.3のキャプションの日本語訳)
「図3(カラー)白色LEDバックライトを備えたLCDからPETフィルムと偏光子を通した干渉色の観察のための実験セットアップ。(a)正面図。(b)白表示したLCDからの光の偏光方向(青色両頭矢印),市販偏光子の透過軸方向(赤色両頭矢印)及びPETフィルムの延伸方向(緑色両頭矢印)の関係。」


(5)「4. Results and Discussion
4.1 Analysis of retardation required for HRPF
The validity of the developed program was confirmed by comparing the observed and simulated interference colors.
・・・(略)・・・
In particular, since the Re_(HRPF) of PET was 7832 nm, the retardation value required for HRPF made of PET and applied to the LCD with white LED backlight was not less than 7832 nm.
・・・(略)・・・
4.2 Evaluation of prepared HRPF
・・・(略)・・・
Luminance efficiency and chromaticity change by passing through the HRPF and polarized sunglasses are also listed in Table II. As shown, applying the HRPF allowed 41.2% of the light to transmit the polarizer on the observer's side in crossed polarizers. The transmittance value was almost 8% lower than the light transmission calculated as T_(all )= 49-51% in §4.2. The reason for this difference is due to the light loss through the HRPF, and the transmittance characteristics of the polarizer. Considering that the proportion of lower luminance caused by attaching the HRPF was just under 1.4% and transmittance of the used polarizer was 35-40% for the visible region, which is not less than 10% lower than the ideal value, the main reason for the difference was not light loss through the film, but rather the transmittance characteristics of the polarizer. Furthermore, chromaticity change in the image viewed through the HRPF and polarizer compared to the LCD image was confirmed to be negligible. Since Table II also shows that the chromaticity change Δu'v' between the light through the HRPF and the polarizer from the LCD and that from the LCD was Δu'v' = 0.007, which satisfied the condition of Δu'v' ≦ 0.02 defined by ISO 9241-303, the two colors can be seen as almost the same.
The demonstration of the prepared HRPF applied to the LCD with the color image is shown in Fig. 9. As shown, the images viewed through the HRPF and polarized sunglasses are almost the same for all rotation angles. Although the image through the HRPF and polarized sunglasses was bluish compared with the LCD image, the reason is the luminance of 41% compared with that of the LCD as described in §4.1, and not the chromaticity change by the HRPF referred to above. Hence, the HRPF prepared in this study successfully allowed the LCD with white LED backlight to be viewed through polarized sunglasses at all rotation angles without any chromaticity changes in the image.」(042602-4頁右欄11?14行,042602-5頁左欄10?13行,同頁右欄15行,同欄33行?042602-6頁右欄7行)
(日本語訳)
「4. 結果と議論
4.1 HRPFに求められるリタデーションの分析
開発されたプログラムの妥当性は,観察された干渉色とシミュレーションによる干渉色とを比較して確かめられた。
・・・(略)・・・
特に,PETのRe_(HRPF)が7832nmであったから,白色LEDバックライトを備えたLCDに適用されるPET製HRPFに要求されるリタデーションは,少なくとも7832nmであった。
・・・(略)・・・
4.2 準備したHRPFの評価
・・・(略)・・・
HRPFと偏光サングラスを通過した際の輝度効率及び色度変化が表2に示される。示されるように,HRPFの適用は,41.2%の光が,交差する偏光子の観察者側偏光子を通過できるようにする。この透過率は,§4.2で計算されたT_(all) = 49-51%に対して約8%低い。この差の理由は,HRPFを介した光損失と偏光子の透過特性による。HRPFを貼り付けたことによる輝度の低下率はたった1.4%未満であり,使用された偏光子の可視域での透過率は,理想値より少なくとも10%低い35-40%であることを踏まえると,前記差の主な理由は,フィルムによる光損失ではなく,偏光子の透過特性である。更に,HRPFと偏光子を通して見た画像の色度変化は,LCD画像と比べて無視できることが確認された。表2はLCDからHRPFと偏光子を通過した光と,LCDから偏光子を通過した光の色度変化 Δu'v'が,Δu'v' = 0.007であることも示すが,これは,ISO9241-303で定義された,2つの色がほぼ同じに見えるとされるΔu'v' ≦ 0.02の条件も満足する。
準備したHRPFをカラー表示したLCDに適用したデモンストレーションが,図9に示される。示されるように,HRPFと偏光子を通して観察された画像は,全ての回転角においてほぼ同じである。HRPFと偏光サングラスを通した画像は,LCD画像と比較して青みがかっているが,その理由は,§4.1に記したように,輝度がLCDのそれと比較して41%になるためであり,上述のHRPFによる色度変化ではない。したがって,本研究で準備されたHRPFは,白色LEDバックライトを備えたLCDを,全ての回転角において,画像のいかなる色度変化なしに,偏光サングラスを介して観察可能とすることに成功した。」

(Table IIは以下のとおりである。)


(Table II(表2)の日本語訳)
「表2 白色LEDバックライトを備えたLCDを白表示させた際の,HRPF及び偏光子がある場合とない場合のLCD光の間,並びに,HRPFがある場合とない場合のLCD光の間,計算された輝度効率ΔY及びカラーシフトΔu'v'。
--------------------------------
ΔY(%) Δu'v'
--------------------------------
HRPFがある場合とない場合のLCD光間 98.6 0.000
HRPF及び偏光子がある場合とない場合のLCD光間 41.2 0.007
--------------------------------」

(Fig.9は以下のとおりである。)


(Fig.9のキャプションの日本語訳)
「図9(カラー)白色LEDバックライトを備えたLCD及びカラー画像を,PET製HRPF及び偏光サングラスを通して見た際の写真。(a)LCDの元のカラー画像。(b)Re = 16000nmのPETフィルムからなるHRPFと偏光サングラスを通して見られた画像。」

第4 対比
1 本願発明と引用発明とを対比すると,以下のとおりとなる。
(1)引用発明は,「ポリカーボネート樹脂層」「の表面にアクリル樹脂層が共押出成形により積層されてなる」から,引用発明と本願発明とは,ポリカーボネート樹脂層とアクリル樹脂層とを有する多層構造であり,共押出成形法により製造されたものを含む点で一致する。

(2)引用発明は,「ポリカーボネート樹脂層の」「タッチされる側の表面にアクリル樹脂層が共押出成形により積層されてなる」ものである。それに加えて,引用例1の段落【0007】に記載されている,「表面に傷が付き難」い「タッチパネル用積層押出樹脂板」「を提供する」という課題に基づけば,引用発明の「タッチパネル用積層押出樹脂板」は,タッチパネルの表面を保護するために用いられることは明らかであるから,本願発明の「タッチパネルの表面保護板として用いられる」との構成を備えるとともに,本願発明の「樹脂積層板」に対応付けられるものである。

2 一致点及び相違点
(1)一致点
上記1を踏まえると,本願発明と引用発明は,次の構成で一致する。
「ポリカーボネート樹脂層とアクリル樹脂層とを有する多層構造であり,共押出成形法により製造されたものを含み,
タッチパネルの表面保護板として用いられる
樹脂積層板。」

(2)相違点
本願発明と引用発明とは,以下の点で相違する。
(相違点)
本願発明の「樹脂積層板」は,「ポリカーボネート樹脂層とアクリル樹脂層とを有する多層構造であり,共押出成形法により製造されたもの」である「樹脂板」が,「面内に複屈折を有する透明基材の一方の面上に」「設けられ」,「前記面内に複屈折を有する透明基材は,8000nm以上のリタデーションを有」するものであるのに対して,引用発明は,このような透明基材の上に,「ポリカーボネート樹脂層」「の表面にアクリル樹脂層が共押出成形により積層されてなる」ものを設けたものではない点。

第5 判断
1 相違点について判断する。
(1)液晶ディスプレイを偏光サングラスを通して見た場合に,液晶ディスプレイの偏光子と偏光サングラスの偏光子の偏光軸の関係に応じて表示画像が暗くなること(以下「ブラックアウト」という。),並びに,液晶ディスプレイの観察側に存在する樹脂層の複屈折に起因する色度の変化(以下「色度変化」という。)が生じることは,本件出願の出願時に,例を挙げるまでもなく,広く知られていた課題である。

(2)引用例2に記載されるように,上記(1)で指摘した周知の2つの課題を解決する手段として,液晶パネルの観察面側,すなわち,液晶パネルと偏光サングラスの間に,十分に高いリタデーションを有する樹脂フィルムを配置することは,周知の技術である(以下「周知技術」という。)。また,引用例2には,前記十分に高いリタデーションの具体的な値として,当該樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレートからなる場合には,少なくとも7832nmであると記載されている(042602-5頁左欄10?13行参照。)。

(3)引用例1には,段落【0040】に,「偏光メガネを着用していてもタッチパネルが着色して見える現象が起こらなくなる。」と記載されている。すなわち,引用発明は,偏光メガネを着用した状態で視認するという使い方が想定されている。そのような用途においては,引用例1に記載された色度変化ばかりでなく,ブラックアウトの課題が生じることは,当業者が容易に把握できたことである。そうしてみると,引用発明において,これらの課題を解決するために上記周知技術を採用して,相違点に係る本願発明の構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして,本願発明はブラックアウト及びニジムラの発生を高度に抑制できるという効果を有するところ,ニジムラの発生は上記色度変化に起因するものと解されるから,本願発明が有する効果は,上記周知技術が有する効果である。すなわち,本願発明が,引用発明並びに上記周知技術が有する効果と比較して,顕著な効果を備えているとはいえない。

2 請求人の主張について
(1)平成30年2月5日付け意見書中で請求人は,引用例1では,積層押出樹脂板のリタデーション値を所定の値以下とすることにより,タッチパネルの着色を抑制したものであるから,リタデーション値が8000nm以上である複屈折性高分子フィルムを用いる引用例2とは,反対の技術的思想であり,組み合わせることが容易であるとは到底考えられない,と主張する。
しかし,上記1(1)及び(2)で述べたように,上記周知技術は色度変化の課題に加えて,ブラックアウトの課題も解決できるものであり,当該ブラックアウトの課題は当業者に広く知られた課題である。そうしてみると,当業者であれば,引用発明において色度変化という課題とともに,ブラックアウトという課題をも解決するために,上記周知技術を採用することには,動機付けがあるといえる。

(2)上記意見書で請求人は,その5頁目左欄10行目以降及びFig.3を引用して,引用例2には,最表面側(視認側)に偏光板を有し,それより液晶セル側に複屈折性高分子フィルムを配置した構成が記載されているから,当該複屈折性高分子フィルムを表面保護板として用いていないと主張する。
しかし,請求人が指摘する引用例2の上記箇所に記載されているのは,液晶ディスプレイの表面側偏光子より外側に,高リタデーション値を有する複屈折性高分子フィルムを取り付けた際に,偏光サングラスを介してどのように観察されるかを調べるための実験上の構成であって,視認側最表面に配置されている偏光子は,偏光サングラスに対応するものである。したがって,請求人の上記主張は引用例2の記載を正解しないものであって,これを採用することはできない。

第6 まとめ
以上のとおりであるから,本願発明1は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。したがって,他の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本件出願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-09 
結審通知日 2018-03-13 
審決日 2018-03-26 
出願番号 特願2014-3633(P2014-3633)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植野 孝郎  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 佐藤 秀樹
清水 康司
発明の名称 樹脂積層板及びタッチパネル  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  
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