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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B65D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
管理番号 1340073
異議申立番号 異議2017-700366  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-12 
確定日 2018-03-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6011585号発明「植物由来ポリエチレンを用いた包装材用シーラントフィルム、包装材用積層フィルム、および包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6011585号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正することを認める。 特許第6011585号の請求項1?3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6011585号(以下「本件特許」という。)の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成23年2月14日に出願した特願2011-28784号の一部を平成26年7月11日に新たな特許出願としたものであって、平成28年9月30日にその特許権の設定登録がされたものであり、その特許について、平成29年4月12日に特許異議申立人土田裕介(以下「申立人1」という。)により、平成29年4月19日に特許異議申立人ブラスケム エス.エー(以下「申立人2」という。)により、平成29年4月19日に特許異議申立人鈴木清司(以下「申立人3」という。)により、それぞれ特許異議の申立てがされ、当審において平成29年7月19日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成29年9月15日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされた。
この本件訂正請求について、平成29年10月23日に申立人1より、平成29年11月15日に申立人2より、平成29年10月26日に申立人3より、それぞれ意見書が提出され、当審において平成29年12月11日付けで訂正拒絶理由を通知し、その指定期間内である平成30年1月10日に意見書が提出されたものである。

第2 訂正の請求について
1.訂正の内容
本件訂正請求は、「特許第6011585号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?3について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正の内容は、本件特許に係る願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)及び特許請求の範囲を、次のように訂正するものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「包装材用シーラントフィルムであって、該シーラントフィルムは、植物由来ポリエチレン系樹脂と石油由来ポリエチレン系樹脂とからなる樹脂組成物であり、該植物由来ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度80?100%を有する、低密度ポリエチレン系樹脂、または、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であり、該低密度ポリエチレン系樹脂は、バイオエタノールを加熱して触媒存在下で分子内脱水反応により得られたエチレンを、重合触媒により重合させた樹脂であり、該直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、植物由来エチレンとα-オレフィンとを、メタロセン触媒の存在下において気相重合法により共重合させて得られた樹脂であり、前記シーラントフィルムは、上記樹脂組成物から形成された単層構成、または多層構成からなり、該多層構成は、中間層を前記樹脂組成物とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成であることを特徴とする包装材用シーラントフィルム。」を、
「包装材用シーラントフィルムであって、該シーラントフィルムは、植物由来ポリエチレン系樹脂と石油由来ポリエチレン系樹脂とからなる樹脂組成物から形成された単層構成、または、中間層を前記樹脂組成物とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成からなり、該植物由来ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度80?100%を有する、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であって、植物由来エチレンとα-オレフィンとを、メタロセン触媒の存在下において気相重合法により共重合させて得られた樹脂であることを特徴とする包装材用シーラントフィルム。」に訂正する。

(2)訂正事項2
本件特許明細書の【0029】の
「さらには、上記サトウキビ由来のポリエチレン系樹脂には、放射性炭素年代測定^(14)Cによるバイオマス度が、80?100%を有する例えば、87%のバイオマス度を有する直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂や、95%のバイオマス度を有する低密度ポリエチレン系樹脂が用いられる。」を、
「さらには、上記サトウキビ由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂には、放射性炭素年代測定^(14)Cによるバイオマス度が、80?100%を有するエチレン-α-オレフィン共重合体系樹脂が用いられる。」に訂正する。

2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア.訂正事項1のうち、「該シーラントフィルムは、植物由来ポリエチレン系樹脂と石油由来ポリエチレン系樹脂とからなる樹脂組成物から形成された単層構成、または、中間層を前記樹脂組成物とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成からなり、」とする訂正は、訂正前の請求項1の「前記シーラントフィルムは、上記樹脂組成物から形成された単層構成、または多層構成からなり、該多層構成は、中間層を前記樹脂組成物とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成である」との記載が、同じく訂正前の請求項1の「シーラントフィルムは、植物由来ポリエチレン系樹脂と石油由来ポリエチレン系樹脂とからなる樹脂組成物であり」との記載と整合せず、明瞭でない記載となっていたものを、整合するように整理して記載したものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、
訂正事項1のうち、「低密度ポリエチレン系樹脂」及び「該低密度ポリエチレン系樹脂は、バイオエタノールを加熱して触媒存在下で分子内脱水反応により得られたエチレンを、重合触媒により重合させた樹脂であり」との事項を削除する訂正は、植物由来ポリエチレン系樹脂に用いられる樹脂の選択肢を減らすものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ.訂正事項1は、植物由来ポリエチレン系樹脂と石油由来ポリエチレン系樹脂とからなる樹脂組成物から形成された単層構成については本件特許明細書の【0036】、中間層を前記樹脂組成物とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成については同じく【0038】に記載されており、また、「低密度ポリエチレン系樹脂、または、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂」の選択肢から、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂のみに選択肢を減らす訂正であるから、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ.また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について
ア.訂正事項2は、訂正事項1により訂正前の請求項1から「低密度ポリエチレン系樹脂」との事項が削除され、請求項1で「植物由来ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度80?100%を有する、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であって、植物由来エチレンとα-オレフィンとを、メタロセン触媒の存在下において気相重合法により共重合させて得られた樹脂である」と記載されることと整合させるために、「直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂」には、放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度80?100%を有し、植物由来エチレンとα-オレフィンとを、メタロセン触媒の存在下において気相重合法により共重合させて得られた「エチレン-α-オレフィン共重合体系樹脂」が用いられるものと訂正するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ.訂正事項2のうち、「エチレン-α-オレフィン共重合体系樹脂」とする訂正、及び、その「エチレン-α-オレフィン共重合体系樹脂」のバイオマス度が「80?100%を有する」とする訂正について、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものではないとの訂正拒絶理由を通知したので、以下に検討する。
この「エチレン-α-オレフィン共重合体系樹脂」とする訂正については、本件特許明細書の【0027】に、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂として「エチレン-α-オレフィン共重合体が用いられる」旨記載されるのみで、他に「エチレン-α-オレフィン共重合体」に類する樹脂について記載されておらず、本件特許明細書全体からみて、特許権者が、平成30年1月10日の意見書において主張するように、「エチレン-α-オレフィン共重合体系樹脂」とは、エチレンとα-オレフィンとを共重合させたもの、すなわち「エチレン-α-オレフィン共重合体」を意味すると理解することが相当であり、「エチレン-α-オレフィン共重合体系樹脂」との事項が、本件特許明細書に記載されていなかったものとはいえない。
また、「エチレン-α-オレフィン共重合体系樹脂」のバイオマス度が「80?100%を有する」とする訂正についても、訂正前の請求項1に「バイオマス度80?100%を有する」「直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂」と記載されていた上、本件特許明細書の【0024】には、石油由来のα-オレフィンを使用するとは記載されていないし、エチレンからα-オレフィンを製造する方法が広く知られた技術(乙5:山田侃他3名、「α-オレフィン製造触媒およびプロセズの開発と工業化」、石油学会誌、Vol.37、No.4、1994、337?346頁)であり、植物由来のエチレンからはα-オレフィンを製造できないとする理由もないから、「エチレン-α-オレフィン共重合体系樹脂」のバイオマス度が「80?100%を有する」との事項が、本件特許明細書に記載されていなかったものとはいえない。
よって、上記訂正拒絶理由には理由がなく、訂正事項2は、訂正事項1により訂正された請求項1の記載に整合させるものであるから、訂正事項2は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ.そして、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)一群の請求項について
訂正前の請求項2、3は、訂正前の請求項1を、直接又は間接に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する、一群の請求項ごとにされたものである。
また、訂正事項2による本件特許明細書の訂正に係る請求項は、請求項1、及びこの請求項1を直接又は間接に引用する請求項2、3であり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項に規定する、一群の請求項の全てについて行われたものである

3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1.請求項1?3に係る発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1?3に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものであり、そのうち本件発明1は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
包装材用シーラントフィルムであって、該シーラントフィルムは、植物由来ポリエチレン系樹脂と石油由来ポリエチレン系樹脂とからなる樹脂組成物から形成された単層構成、または、中間層を前記樹脂組成物とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成からなり、該植物由来ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度80?100%を有する、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であって、植物由来エチレンとα-オレフィンとを、メタロセン触媒の存在下において気相重合法により共重合させて得られた樹脂であることを特徴とする包装材用シーラントフィルム。」

2.取消理由の概要
本件発明1?3に対して、特許権者に通知した取消理由の概要は以下のとおりである。

理由1)本件発明1?3は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2)本件発明1?3は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由3)本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

[理由1、2]
甲1:特開2012-167172号公報
甲2:「低密度ポリエチレングリーン-ホモポリマー」の安全データシート、ブラスケム社、2013年2月22日、p.1?9
甲3:「ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準A 確認証明書」、ポリオレフィン等衛生協議会、平成26年2月27日
甲5:特開平10-114037号公報
甲6:リニアポリエチレンカタログ「SUMIKATHENE-L○R スミカセン-L○R」、住友化学工業株式会社、1992年3月
甲7:高圧法ポリエチレンカタログ「SUMIKATHENE○R スミカセン○R」、住友化学工業株式会社、2001年3月
甲8:特開平6-32946号公報
甲9:杉山英路ら、「地球環境に優しい『サトウキビ由来のポリエチレン』」、コンバーテック、株式会社加工技術研究会、2009年8月15日、第37巻、第8号、通巻437号、p.63?67
甲10:杉山英路、「新しいバイオマスプラスチックスの可能性?『サトウキビ由来ポリエチレン』の製品化から?」、Polyfile、株式会社大成社、2009年12月10日、Vol.46、No.550、p.28?30
甲11:特開2008-265115号公報
甲12:特開2009-149013号公報
甲13の1:国際公開第2009/070858号
甲13の2:特表2011-506628号公報
甲14:プラスチックフィルム・レジン材料総覧2008、株式会社加工技術研究会、2008年1月31日、目次-4?5、p.324?327、334、335、382?387
甲15:特開2007-137920号公報
(当審注:「○R」は、登録商標を示す「R」を○で囲んだものを代用表記したもの。)

(1)本件特許は、特願2011-28784号(以下「原出願」という。)の一部を平成26年7月11日に新たな特許出願(以下「分割出願」という。)とされたものになされたものであるが、本件特許の請求項1の、直鎖状に限定されない「低密度ポリエチレン系樹脂」との事項は、原出願の出願当初の明細書等に記載された範囲内であるとはいえず、分割出願の出願日は、分割出願の現実の出願日である平成26年7月11日である。
すると、本件発明1?3の植物由来ポリエチレン系樹脂が「低密度ポリエチレン系樹脂」である場合には、本件発明1と、原出願の公開公報である甲1に記載された発明とは、「該植物由来ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度80?100%を有する、低密度ポリエチレン系樹脂」であり、「該低密度ポリエチレン系樹脂は、バイオエタノールを加熱して触媒存在下で分子内脱水反応により得られたエチレンを、重合触媒により重合させた樹脂」であるか否かで相違するが、甲2、甲3に示すように、分割出願の出願日である平成26年7月11日以前に、「低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE)」に分類される「SBC818」が、日本国内で食品包装用の材料として販売を開始されていたと認められ、石油代替のためバイオマス度の高い材料を用いようとする動機付けもあるから、本件発明1?3は、甲1に記載された発明において、食品包装用の材料として知られた「低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE)」に分類される「SBC818」を採用することは、当業者が容易になし得たものである。
また、植物由来ポリエチレン系樹脂が「直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂」である場合は、本件発明1?3と甲1に記載された発明との間に相違点はなく、本件発明1?3は、甲1に記載された発明である。

(2)仮に、分割出願の出願日が、原出願の出願日である平成23年2月14日であったとしても、本件発明1?3は、甲5に記載された発明及び甲6?15記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。

[理由3]
(1)本件発明1には、「植物由来ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度80?100%を有する、低密度ポリエチレン系樹脂、または、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂」である旨特定されているが、本件特許明細書には、植物由来ポリエチレン系樹脂が「直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂」である実施例等の記載はあるものの、「低密度ポリエチレン系樹脂」である実施例等については、何ら記載されていない。
原出願の出願日である平成23年2月14日の時点では、「低密度ポリエチレン系樹脂」をシーラントフィルムとして使用することが技術常識であったとはいえないから、植物由来ポリエチレン系樹脂が「低密度ポリエチレン系樹脂」であることを含み得る本件発明1は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるといえる。
よって、本件発明1?3は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

(2)請求項1には「該シーラントフィルムは、植物由来ポリエチレン系樹脂と石油由来ポリエチレン系樹脂とからなる樹脂組成物であり」と記載され、同じく請求項1には、「前記シーラントフィルムは、上記樹脂組成物から形成された単層構成、または多層構成からなり、該多層構成は、中間層を前記樹脂組成物とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成であること」とも記載されており、「樹脂組成物」が「シーラントフィルム」全体を構成するものと解される一方、多層構成のうち中間層のみを構成するものとも解されることとなり、「樹脂組成物」が、何を構成するものであるのか、明確ではない。

3.当審の判断
(1)理由3(特許法第36条)に係る取消理由についての判断
事案に鑑み、まず理由3について検討する。
ア.上記[理由3]の「(1)」の取消理由は、本件訂正請求により、請求項1の記載から「低密度ポリエチレン系樹脂」に係る事項が削除されたため、理由がないものとなった。
なお、申立人2は、平成29年11月15日の意見書(11?13頁「B.訂正後の特許請求の範囲にかかるサポート要件違反について」)において、本件特許明細書の実施例中に記載された「ブラスケム社C4LL-LL118」は、メタロセン触媒により製造されるものではなく、本件特許明細書には、「メタロセン触媒の存在下において気相重合法により共重合させて得られた樹脂」を用いるとする本件発明1?3についての実施例が記載されておらず、「サポート要件違反にかかる取消理由(取消理由3)によっても本件特許は取り消されるべき」旨主張するが、「ブラスケム社C4LL-LL118」自体が「メタロセン触媒の存在下において気相重合法により共重合させて得られた樹脂」ではないことをもってする上記主張は、申立人2の特許異議申立書に記載していない新たな取消理由の主張であり、時機に遅れてするものであるため、判断しない。
イ.また、上記[理由3]の「(2)」の取消理由も、本件訂正請求により、「該シーラントフィルムは、植物由来ポリエチレン系樹脂と石油由来ポリエチレン系樹脂とからなる樹脂組成物から形成された単層構成、または、中間層を前記樹脂組成物とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成からなり、」と訂正され、「樹脂組成物」が、単層構成または多層構成のうち中間層のみを構成するものであることが明確になったため、理由がないものとなった。
ウ.よって、本件発明1?3は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に違反するものではないから、本件発明1?3に係る特許は、特許法第113条第4号に該当しない。

(2)理由1(特許法第29条第1項第3号)及び理由2(特許法第29条第2項)に係る取消理由についての判断
ア.甲1を主な引用例とする取消理由について
本件訂正請求により、請求項1の記載から「低密度ポリエチレン系樹脂」に係る事項が削除されたため、分割出願に係る本件特許の出願日は、原出願の出願日である平成23年2月14日に遡及する。
そうすると、甲1は、原出願の公開公報であり、本件特許の出願日の平成23年2月14日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物ではないから、その甲1を主な引用例とする、特許法第29条第1項第3号、あるいは、特許法第29条第2項に係る取消理由には、理由がない。
イ.甲5を主な引用例とする取消理由について
(ア)甲5(特に、【0001】、【0011】の実施例1の記載)には、
「シーラントフィルムの内外層として、引裂きの方向性がない直鎖状低密度ポリエチレン(宇部興産 (株)製1520F)のフィルム層、中間層として引裂きの方向性がある樹脂組成物(住友化学工業(株)製FA101-0:100重量部と住友化学工業(株)製F102-0:40重量部との混合物)からなる、包装袋用シーラントフィルム。」の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されている。
本件発明1と甲5発明を対比すると、シーラントフィルムの中間層について、本件発明1では「植物由来ポリエチレン系樹脂と石油由来ポリエチレン系樹脂とからなる樹脂組成物」から形成され、その「植物由来ポリエチレン系樹脂」は、「放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度80?100%を有する、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であって、植物由来エチレンとα-オレフィンとを、メタロセン触媒の存在下において気相重合法により共重合させて得られた樹脂」であるのに対し、甲5発明では「引裂きの方向性がある樹脂組成物(住友化学工業(株)製FA101-0:100重量部と住友化学工業(株)製F102-0:40重量部との混合物)」からなる点で、少なくとも相違する。
(イ)この相違点について検討する。
・甲6には、「住友化学工業(株)製FA101-0」がリニアポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂)に分類される製品であることが、
・甲7には、「住友化学工業(株)製F102-0」が高圧法ポリエチレンに分類され、主要用途が重包装であることが、
・甲8には、「住友化学工業(株)製F102-0」が低密度ポリエチレンであることが、
・甲9には、ポリエチレン原料を従来の石油系原料から再生可能なサトウキビ(バイオマス系)に置き換えることにより、植物の生育時のCO_(2)吸収と燃焼時の排出が同一(カーボンニュートラル)になり地球環境に優しいこと、Braskem社が製造するバイオマス系のLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂)について、石油系のLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂)と性能を比較したところ、樹脂特性(MFR、Density)、樹脂評価(成形性、品質、外観)の観点で、同等であることが確認されたこと、さらに、サトウキビ由来ポリエチレンのLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂)がインフレフィルム用であることが、
・甲10には、Braskem社が製造するバイオマス系のLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂)がインフレフィルム用であり、食品包装材が用途として想定されることが、
・甲11、甲12には、化石原料を使わずに植物由来原料を使用するために、ポリ乳酸樹脂を包装用シーラント材料に用いることが、
・甲13の1、甲13の2には、植物を原料として直鎖状低密度ポリエチレンをメタロセン触媒存在下で気相重合法により製造することが、
・甲14には、メタロセン触媒を利用した気相重合法により得られた石油由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造したものと比較して、強度、透明性、シール性が優れ、包装用途を中心に広く使用されていることが、
・甲15には、メタロセン触媒より製造されたエチレンとα-オレフィンとの共重合体からなるポリエチレン系樹脂組成物を、シーラントフィルムに用いることが、それぞれ記載されているものの、
いずれにも、シーラントフィルムに「植物由来ポリエチレン系樹脂」を用い、その「植物由来ポリエチレン系樹脂」を「放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度80?100%を有する、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であって、植物由来エチレンとα-オレフィンとを、メタロセン触媒の存在下において気相重合法により共重合させて得られた樹脂」とすることについては、記載も示唆もされていない。
確かに、甲9には、Braskem社が製造するバイオマス系のLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂)が、石油系のLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂)と、樹脂特性(MFR、Density)、樹脂評価(成形性、品質、外観)の観点で、同等であることが確認された旨記載されているが、本件発明1のシーラントフィルムのように、樹脂の性能評価で、シール強度(本件特許明細書の【0052】)について評価されたものではなく、甲9の記載からは、甲9のBraskem社が製造するバイオマス系のLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂)をシーラントフィルムに用いた場合に、「ヒートシール強度などの加工特性」(本件特許明細書の【0004】)が求められる水準を満たすものとなるかについて予測できるものではない、すると、甲9にバイオマス系のLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂)をインフレフィルムとして使用できることが記載されているとしても、シーラントフィルムとして使用できることまでが記載されているとはいえない。
仮に、甲9に記載されるバイオマス系のLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂)を、甲5発明に適用するとしても、甲5発明には、中間層に直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂の「住友化学工業(株)製FA101-0」が用いられるほか、シーラントフィルムの内外層として、「直鎖状低密度ポリエチレン(宇部興産 (株)製1520F)のフィルム層」が存在し、中間層の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂である「住友化学工業(株)製FA101-0」のみ、甲9のLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂)に換える動機付けがない。
よって、本件発明1は、甲5発明及び甲6?15記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に想到することができたものではない。
(ウ)なお、申立人3は、平成29年10月26日の意見書において、周知事項を示す参考資料1?3(参考資料:特開平10-119210号公報、参考資料2:特開平5-750号公報、参考資料3:特開2000-137010号公報)を新たに提出し、「参考資料1?3に記載されているように、本件原出願の出願時(平成23年2月14日)には、包装体の技術分野において、低温シール性や機械的強度を向上させるために、シーラントフィルムとしてメタロセン触媒によって重合された直鎖状低密度ポリエチレン(以下、メタロセンLLDPEという)からなる単層構成のフィルムを用いることは周知の事項にすぎない。・・・・そうすると、参考資料1?3に記載のシーラントフィルムのうち、たとえば、参考資料1記載のシーラントフィルムにおいて、コストの上昇を抑えつつCO_(2)排出量を削減する目的で、従来から使用されている石油由来のメタロセンLLDPEであるLL-118に置き換えてみる、すなわち、植物由来メタロセンLLDPEと石油由来メタロセンLLDPEとからなる樹脂組成物を使用してみることは、当業者にとって容易に想到することができたものにすぎない。」(申立人3の平成29年10月26日の意見書の2頁7行?末行)旨主張するが、この新たに提出した刊行物に記載された発明を基にした新たな取消理由の主張は、時機に遅れてするものであり、判断しない。
(エ)本件発明2、3は、本件発明1の全ての発明特定事項を有しており、上記のように、本件発明1は、甲5発明及び甲6?15記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に想到することができたものではないから、本件発明2、3についても、甲5発明及び甲6?15記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に想到することができたものではない。
ウ.よって、本件発明1?3は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反するものでもないから、本件発明1?3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。

(3)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア.申立人1は、その特許異議申立書(「4.(4-5)(ア)○8(当審注:「○8」は、8を○で囲んだもの。)」)において、本件発明1のシーラントフィルムが単層構成である場合については、甲15に記載の「メタロセン触媒により製造された(I)エチレンとα-オレフィンとの共重合体」に代えて甲9に記載された植物由来のポリエチレン系樹脂を採用することは容易であり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、同法第113条第2号の規定により、本件発明1?3に係る特許を取り消すべき旨主張する。
しかし、甲15に記載されたシーラントフィルムは、「(I)エチレンとα-オレフィンとの共重合体」と「(II)エチレン重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体」とをドライブレンドして成形したものであるが、このうち、「(I)エチレンとα-オレフィンとの共重合体」のみを、甲9に記載された植物由来のポリエチレン系樹脂に代えて、植物由来のものと石油由来のものを混合してシーラントフィルムとする動機付けがなく、甲15及び甲9の記載から、本件発明1?3が、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、申立人1の上記申立理由は、採用することができない。
イ.申立人2は、その特許異議申立書(「4(4)ハ 本件特許発明と証拠に記載された発明との対比(進歩性の欠如)」)において、本件発明1?3は、特開2010-162748号公報(申立人2が提出した甲第1号証)に記載された発明、又は、米国特許出願公開第2009/0192270号(同じく甲第2号証)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、同法第113条第2号の規定により、本件発明1?3に係る特許を取り消すべき旨主張する。
しかし、上記(2)イ.(イ)で述べたものと同様に、申立人2が提出した上記刊行物にも、シーラントフィルムに「植物由来ポリエチレン系樹脂」を用い、その「植物由来ポリエチレン系樹脂」を「放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度80?100%を有する、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であって、植物由来エチレンとα-オレフィンとを、メタロセン触媒の存在下において気相重合法により共重合させて得られた樹脂」とすることについて、記載も示唆もされておらず、これらの刊行物に記載された発明から、本件発明1?3は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、申立人2の進歩性に係る上記申立理由は、採用することができない。
ウ.また、申立人2は、その特許異議申立書(「4(4)ニ サポート要件不備について」)において、本件特許明細書には、「ブラスケム社C4LL-LL118」以外の「低密度ポリエチレン系樹脂、または、直鎖低密度ポリエチレン系樹脂」について、あるいは、単層構成の包装材用シーラントフィルムについて、具体的に物性が確認されておらず、それらを含む本件発明1?3の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものであって、同法第113条第4号の規定により、本件発明1?3に係る特許を取り消すべき旨主張する。
しかし、本件特許明細書の実施例1により、植物由来の直鎖低密度ポリエチレン系樹脂である「ブラスケム社C4LL-LL118」は、石油由来のものと比べて、「引張破断強度や引裂強さが強く、腰やシール強度は同等の強度を有し、弾性率が低く柔軟であること」(【0051】)が確認され、この「ブラスケム社C4LL-LL118」以外の植物由来の直鎖低密度ポリエチレン系樹脂であっても、同様の物性を有することが、通常、予測できるものである。また、本件特許明細書の【0047】には、「なお、本願発明の樹脂組成物1からなるフィルムF1?F4や、これらフィルムF1?F4を用いた積層フィルム3を使用して、上述したスタンディングパウチに例示される包装袋6以外にも、ポリエチレン系樹脂を用いた樹脂組成物1から構成される、例えば、飲食品・化粧品・薬品・雑貨品などの内容物を収容するラミネートチューブ、液体紙容器などを含む容器や、容器の蓋材、あるいは容器のラベルなどを構成することができ、いっそう石油由来の使用比率を低下させるとともに、二酸化炭素排出量を大きく抑制することができる。」と、単層構成であるフィルム「F2」について、スタンディングパウチに例示される包装袋の他、種々の容器に使用し得ることが記載されているから、この記載からすれば、単層構成のものも、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるものである。
よって、申立人2のサポート要件に係る上記申立理由は、採用することができない。
エ.申立人3は、その特許異議申立書(「3(4)イ 記載不備の理由」)において、本件発明1の「植物由来ポリエチレン系樹脂と石油由来ポリエチレン系樹脂とからなる樹脂組成物」との記載のうち、「植物由来ポリエチレン系樹脂」と「石油由来ポリエチレン系樹脂」は、製造方法によって生産物を特定しようとする記載に該当するから、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2、3は、明確性要件違反に該当する旨主張する。
しかし、本件発明1の「植物由来ポリエチレン系樹脂」及び「石油由来ポリエチレン系樹脂」との記載は、それらの出発原料が「植物」なのか「石油」なのかにより、「放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度」が変わり、それぞれの物として特徴が区別でき、理解できるから、「植物由来ポリエチレン系樹脂」あるいは「石油由来ポリエチレン系樹脂」と記載されていることをもって、本件発明1?3が「明確性要件違反に該当する」とはいえない。
よって、申立人3の上記申立理由は、採用することができない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?3に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
植物由来ポリエチレンを用いた包装材用シーラントフィルム、包装材用積層フィルム、および包装袋
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリエチレン系樹脂からなるフィルムに関し、より詳細には、このポリエチレン系樹脂が、植物由来ポリエチレン系樹脂を含む包装材用シーラントフィルムおよび包装材用積層フィルム、これらのフィルムを用いた包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、シャンプーやリンスなどの詰め替えや、食品などの包材として用いられるパウチなどに代表される包装袋は、シーラントフィルムおよび基材フィルムからなる包装材料で構成されており、環境問題や石油など枯渇資源の節約に対応し、これら石油資源の包装材料への使用量低減のため、カーボンニュートラルな材料としてのポリ乳酸系樹脂に、エチレン-α-オレフィン共重合体およびエポキシ基を有する重合体をそれぞれ所定量含有させた生分解性の樹脂組成物を含む包装袋(例えば特許文献1)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-155516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような包装袋では、上述したように、包装袋を構成する樹脂組成物に石油由来原料以外の生分解性樹脂を含有させて石油由来原料の比率を下げているものの、石油系樹脂と比較して引裂強度やヒートシール強度などの加工適性が著しく劣り、生産性を向上させることができないという問題があった。
従って、この発明の目的は、再生可能資源である植物由来のポリエチレン系樹脂を原料に用いて、石油資源の節約を可能とするとともに、二酸化炭素の排出量削減による環境にやさしい包装材用シーラントフィルムおよび包装材用積層フィルム、ならびにこれらのフィルムを用いた加工適性に優れる包装袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明に係る包装材用シーラントフィルムは、ポリエチレン系樹脂からなるフィルムであって、前記ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度80?100%を有する植物由来ポリエチレン系樹脂を含む樹脂組成物であって、前記樹脂組成物による前記フィルムをヒートシール性フィルムとすることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の包装材用シーラントフィルムにおいて、前記植物由来ポリエチレン系樹脂を5?90モル%と、石油由来ポリエチレン系樹脂を10?95モル%とを含む前記樹脂組成物を使用して、下記の(A)または(B)あるいは(C)で構成してなることを特徴とする。
(A)前記樹脂組成物と、前記石油由来のポリエチレン系樹脂とを混合した単層構成
(B)中間層を前記樹脂組成物とし、外層および内層を前記石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成
(C)中間層を前記樹脂組成物と、前記石油由来ポリエチレン系樹脂とを混合した層とし、外層および内層を前記石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成
【0007】
請求項3に記載の発明に係る包装材用積層フィルムは、請求項1または2に記載の包装材用シーラントフィルムを、基材フィルムと積層させたことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明に係る包装袋は、請求項3に記載の包装材用積層フィルムを用いてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ポリエチレン系樹脂からなるフィルムであって、ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度80?100%を有する植物由来ポリエチレン系樹脂を含む樹脂組成物であって、樹脂組成物によるフィルムをヒートシール性フィルムとするので、ポリエチレン系樹脂からなる包装材用シーラントフィルムの構成を、全て石油由来の樹脂組成物に依存する状態から、この石油由来のポリエチレン系樹脂に、石油由来のポリエチレン系樹脂と性能的に違いがなく、カーボンニュートラルなサトウキビなど植物由来のポリエチレン系樹脂を混成(置換)することで、石油資源の使用量を削減するとともに、フィルム製造および廃棄時の二酸化炭素排出量を抑制することができる。従って、環境負荷を低減させたポリエチレン系樹脂からなる包装材用シーラントフィルムを提供することができる。
【0010】
さらに、石油由来のポリエチレン系樹脂と物性的に違いがないため、既存の包装材用シーラントフィルム製造工程を用いることができ、包材の加工適性を損ねることなく原料を切替えることができる。従って、環境負荷の低減および生産効率に優れたポリエチレン系樹脂からなる包装材用シーラントフィルムを提供することができる。
【0011】
さらに、包装材用シーラントフィルムを構成するポリエチレン系樹脂の原料由来を、このバイオマス度を指標にして識別でき、フィルムの製造時から廃棄時まで由来原料を確認することができる。従って、原料由来の識別を可能としたポリエチレン系樹脂からなる包装材用シーラントフィルムを提供することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、植物由来ポリエチレン系樹脂を5?90モル%と、石油由来ポリエチレン系樹脂を10?95モル%とを含む樹脂組成物を使用して、下記の(A)または(B)あるいは(C)
(A)樹脂組成物と、石油由来のポリエチレン系樹脂とを混合した単層構成
(B)中間層を樹脂組成物とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成
(C)中間層を樹脂組成物と、石油由来ポリエチレン系樹脂とを混合した層とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成
で構成してなるので、包装材用シーラントフィルムを構成するポリエチレン系樹脂の石油由来の使用比率を低下させることができ、石油資源の使用量を削減するとともに、フィルム製造および廃棄時の二酸化炭素排出量を抑制することができる。加えて、(B)あるいは(C)のような包装材用シーラントフィルムを構成する内外層に石油由来ポリエチレン系樹脂を用いることで、既存の製造工程が有する特性でフィルムを製造することができる。従って、石油資源の節約および環境負荷を低減させたポリエチレン系樹脂からなる包装材用シーラントフィルムを提供することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、植物由来ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂からなる包装材用シーラントフィルム(請求項1または2に記載)を、基材フィルムと積層させた包装材用積層フィルムとするので、ヒートシールに用いるシーラントフィルムにおいても、このシーラントフィルムであるフィルムを構成するポリエチレン系樹脂の石油由来の使用比率を低下させることができ、石油資源の使用量を削減するとともに、包装材用積層フィルムの製造および廃棄時の二酸化炭素排出量を抑制することができる。従って、石油資源の節約および環境負荷を低減させたポリエチレン系樹脂からなる包装材用積層フィルムを提供することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、植物由来ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂からなる包装材用シーラントフィルム(請求項1または2に記載)を、基材フィルムと積層させた包装材用積層フィルム(請求項3に記載)を用いてなる包装袋であるので、包装袋を構成する包装材用積層フィルムにおけるポリエチレン系樹脂の石油由来の使用比率を低下させることができ、石油資源の使用量を削減するとともに、包装袋の製造および廃棄時の二酸化炭素排出量を抑制することができる。従って、石油資源の節約および環境負荷を低減させたポリエチレン系樹脂からなる包装袋を提供することができる。
【0015】
さらに、使い捨てとして世の中に数多く出回る包装袋を構成するポリエチレン系樹脂の石油由来の使用比率を低下させることができ、石油資源の使用量を削減するとともに、包装袋の製造および廃棄時の二酸化炭素排出量を抑制することができる。従って、石油資源の節約および環境負荷を低減させたポリエチレン系樹脂からなる包装袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】サトウキビ由来のポリエチレン製造の一例を示すフロー図である。
【図2】本願発明のサトウキビ由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂からなるフィルムを模式的に示す断面側面図である。
【図3】本願発明の樹脂組成物と、石油由来のポリエチレン系樹脂とを混合した単層構成のフィルムを模式的に示す断面側面図である。
【図4】本願発明の中間層を樹脂組成物とした多層構造からなるフィルムを模式的に示す断面側面図である。
【図5】本願発明の中間層を樹脂組成物および石油由来ポリエチレン系樹脂を混合した層とした多層構造からなるフィルムを模式的に示す断面側面図である。
【図6】本願発明の積層フィルムの一例を模式的に示す断面側面図である。
【図7】本願発明の積層フィルムを用いて形成した包装袋の一例としてのスタンディングパウチを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。食品や化粧品などに用いられるラミネートチューブなどに例示される容器や、シャンプーやリンスの詰め替えの包材として広く採用されているスタンディングパウチなどに例示される包装袋には、これら容器や包装袋が積層フィルムで構成されている。
【0018】
この積層フィルムには、基材フィルムに、ヒートシール材として積層フィルムの内面に使用するシーラントフィルムを積層させるものがあり、基材フィルムの材質として、例えばポリエチレン系樹脂などが用いられるとともに、シーラントフィルムの材質には、積層体として例えば中間層を挟んで直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂が用いられている。
【0019】
このように、積層フィルムの材質には、プラスチック樹脂であるポリエチレン系樹脂が多く用いられているが、従来、このポリエチレン系樹脂は、出発原料を石油とする石油化学由来により製造されており、例えば、上述した直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、原油の精製などにより得られたエチレンと、コモノマー種としてのα-オレフィンとを、メタロセン触媒の存在下、気相において、120℃以上などの高温で共重合させたものである。なお、α-オレフィンは、一般式R-CH=CH_(2)(式中、Rは炭素数1以上のアルキル基)で表される、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、オクタデセンなど例示することができる。また、メタロセン触媒は特に限定しないが、例えば、シクロペンタジエニル基、置換基を有するシクロペンタジエニル基(置換シクロペンタジエニル基)、インデニル基、置換インデニル基から選ばれる1種類の基と、フルオレニル基、置換フルオレニル基から選ばれる1種類の基が、架橋基により架橋された配位子を有する周期表第4族の遷移金属化合物を挙げることができ、その代表例としてジフェニルメチレン(1-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3-メチル-1-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1-シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1-インデニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(4-フェニル-1-インデニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(4-フェニル-1-インデニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド等のジクロル体および上記メタロセン化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体等を例示するメタロセン化合物を主成分として含むメタロセン触媒が用いられる。また、メタロセン触媒は、例えば、シクロペンタジエニル基、置換基を有するシクロペンタジエニル基(置換シクロペンタジエニル基)、インデニル基、置換インデニル基から選ばれる1種類の基と、フルオレニル基、置換フルオレニル基から選ばれる1種類の基が、架橋基により架橋された配位子を有する周期表第4族の遷移金属化合物を挙げることができ、その代表例としてジフェニルメチレン(1-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3-メチル-1-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1-シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1-インデニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(4-フェニル-1-インデニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(4-フェニル-1-インデニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド等のジクロル体および上記メタロセン化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体などを例示するメタロセン化合物を主成分とするものである。
【0020】
しかしながら、石油など枯渇資源の節約志向とともに、二酸化炭素排出量の増加による地球温暖化など環境問題の意識が高まる中で、上述したような石油由来によるポリエチレン系樹脂では、石化製品の製造から廃棄に至るまでの間に、石油原料の持つ固定化した二酸化炭素が大量に排出されてしまうため、上記志向に沿うことができない。
【0021】
このような問題を踏まえ、近年、プラスチック類を、カーボンニュートラルで再生可能資源である植物から製造する技術の開発が進んでおり、その中でも、プラスチック類中で最も多く生産されているポリエチレンを、バイオマス系のサトウキビを出発原料として生産する技術が確立した。(加工技術研究会編、コンバーテック2009.9、P63?67)なお、カーボンニュートラルとは、植物の生育時の二酸化炭素吸収量と、燃焼時の二酸化炭素排出量とが略同一であることをいう。
【0022】
図1は、サトウキビ由来のポリエチレン製造の一例を示すフロー図、図2は本願発明のサトウキビ由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂からなるフィルムを模式的に示す断面側面図である。
【0023】
この図1に示すように、畑より刈り取ったサトウキビをから取り出した糖液を加熱濃縮して結晶化させた粗糖と廃糖密とを遠心分離機で分離する。次いで、廃糖密を適切な濃度まで水で希釈し、酵母菌により発酵させてエタノールを生成する。そして、このバイオエタノールを加熱して触媒存在下で分子内脱水反応により得られたエチレンを、重合触媒により重合させてポリエチレンが得られる。なお、植物由来のエチレンおよびポリエチレンは、石油由来のエチレンおよびポリエチレンと品質同等性が確認されている。
【0024】
そこで、本願発明のフィルムに用いる直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、上記のような出発原料を植物由来としたエチレンから生成するものであるが、この生成方法としては、石油由来のエチレンから直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を生成する場合と同じように、植物由来エチレンと、α-オレフィンとを、メタロセン触媒の存在下において気相重合法により共重合させることで得ることができる。
【0025】
本願発明では、上記のようにして得られた植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を用いて容器や包装袋を構成した積層フィルムを形成するフィルムを製造することにより、積層フィルムに用いられる樹脂組成物(直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂など)において、石油由来樹脂組成物の使用比率を低下させて、石油資源の節約を可能とするとともに、二酸化炭素の排出量削減による環境向上に貢献するものである。
【0026】
本願では、上記気相重合法にて得られたサトウキビ(サトウキビに限定されず、その他直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂の製造原料となる植物であればよい)由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂からなる樹脂組成物1を用いて、図2に示すようなフィルムF1とすることができる。
【0027】
また、上記サトウキビ由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂と同様に、コモノマー種がブテン-1(C4)、密度が910?925kg/m^(3)、メルトフローレート(MFR)が0.5?4.0g/10分の範囲、より好ましくは0.7?3.5g/10分とした各物性を有することができ、そのエチレン-α-オレフィン共重合体が用いられる。このようなサトウキビ由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂からなる樹脂組成物を石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂に対して90モル%を上限に適宜割合で含有させるものである。
【0028】
なお、上記物性評価では、密度(d、単位:kg/m^(3))として、150℃でプレス成形して得られた厚さ1mmのシートを用い、JIS K 6760(1981)に従って測定を行ったものである。また、メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)は、JIS K 7210(1995)に準じ、試験温度190℃の条件にて、試験荷重21.18Nで測定したものである。
【0029】
さらには、上記サトウキビ由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂には、放射性炭素年代測定^(14)Cによるバイオマス度が、80?100%を有するエチレン-α-オレフィン共重合体系樹脂が用いられる。
【0030】
ここで、植物(バイオマス)由来と石油由来の樹脂組成物は、分子量や機械的性質・熱的性質のような物性に差を生じない。そこで、これらを区別するためには、一般的にバイオマス度が用いられている。このバイオマス度では、石油由来の樹脂組成物の炭素には、^(14)C(放射性炭素14、半減期5730年)が含まれていないことから、この^(14)Cの濃度を加速器質量分析により測定し、樹脂組成物において、植物由来樹脂組成物の含有割合の指標にするものである。従って、植物由来の樹脂組成物を用いたフィルムであれば、そのフィルムのバイオマス度を測定すると、植物由来樹脂組成物の含有量に応じたバイオマス度が生じる。
【0031】
このバイオマス度の測定は、測定対象試料を燃焼して二酸化炭素を発生させ、真空ラインで精製した二酸化炭素を、鉄を触媒として水素で還元し、グラファイトを生成させる。そして、このグラファイトをタンデム加速器をベースとした^(14)C-AMS専用装置(NEC社製)に装着して、^(14)Cの計数、^(13)Cの濃度(^(13)C/^(12)C)、^(14)Cの濃度(^(14)C/^(12)C)の測定を行い、この測定値から標準現代炭素に対する試料炭素の^(14)C濃度の割合を算出する。この測定では、米国国立標準局(NIST)から提供されたシュウ酸(HOxII)を標準試料とした。
【0032】
本願ではこのような樹脂組成物からなるフィルムの構成にすることで、全て石油由来の樹脂組成物に依存する状態から、この石油由来のポリエチレン系樹脂に、石油由来のポリエチレン系樹脂と性能的に違いがないサトウキビなど植物由来のポリエチレン系樹脂を混成(置換)することで、フィルム製造および廃棄時の二酸化炭素排出量を抑制することができる。
【0033】
また、本願発明の樹脂組成物1は、コモノマー種がブテン-1、密度が910?920kg/m^(3),メルトフローレートが0.70?1.30g/10分のエチレン-α-オレフィン共重合体であるので、石油由来のポリエチレン系樹脂と物性的に違いがないため、既存のフィルム製造工程を用いることができ、包材の加工適性を損ねることなく原料を切替えることができる。
【0034】
さらに、本願発明の樹脂組成物1は、放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度を有するエチレン-α-オレフィン共重合体であるので、フィルムを構成するポリエチレン系樹脂の原料由来を、このバイオマス度を指標にして識別でき、フィルムの製造時から廃棄時までの由来原料を確認することができる。
【0035】
次に、本願では、上述した樹脂組成物1と、後述する石油由来ポリエチレン系樹脂2とで、以下のようなフィルムに構成させることができる。図3は樹脂組成物と、石油由来のポリエチレン系樹脂とを混合した単層構成のフィルムを模式的に示す断面側面図、図4は中間層を樹脂組成物とした多層構造からなるフィルムを模式的に示す断面側面図、図5は中間層を樹脂組成物および石油由来ポリエチレン系樹脂を混合した層とした多層構造からなるフィルムを模式的に示す断面側面図である。
【0036】
この場合、上記樹脂組成物1を5?90モル%と、石油由来ポリエチレン系樹脂2を10?95モル%とを、下記の(A)または(B)あるいは(C)の要領にてフィルムを構成した。まず(A)のフィルムF2として、図3に示すように、樹脂組成物1と、石油由来のポリエチレン系樹脂2とを混合した単層構成にすることができる。
【0037】
また、(B)のフィルムF3として、図4に示すように、中間層を樹脂組成物1とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂2とした多層構成にすることもできる。
【0038】
さらに、(C)のフィルムF4として、図5に示すように、中間層を樹脂組成物1と、石油由来ポリエチレン系樹脂2とを混合した層とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂2とした多層構成にすることもできる。
【0039】
このような構成にすることで、フィルムF2?F4を構成するポリエチレン系樹脂2の石油由来の使用比率を低下させることができ、フィルム製造および廃棄時の二酸化炭素排出量を抑制することができる。加えて、(B)あるいは(C)のようなフィルムF3?F4を構成する内外層に石油由来ポリエチレン系樹脂2を用いることで、既存の製造工程が有する特性でフィルムF3?F4を製造することができる。
【0040】
次に、本願では、上記フィルムF1?F4を用いた積層フィルムにすることができる。図6は、積層フィルムの一例を模式的に示す断面側面図、図7は本願発明の積層フィルムを用いて形成した包装袋の一例としてのスタンディングパウチを示す斜視図である。
【0041】
まず、積層フィルム3は、この図6に示すように、上記フィルムF1?F4のいずれかをシーラントフィルム4として、基材フィルム5と積層させる。
【0042】
なお、基材フィルム5としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の各種樹脂フィルムまたはシートを使用することができる。
【0043】
このような構成にすることで、ヒートシールに用いるシーラントフィルム4においても、このシーラントフィルム4である各フィルムF1?F4を構成するポリエチレン系樹脂の石油由来の使用比率を低下させることができ、石油資源の節約とともに、積層フィルム3の製造および廃棄時の二酸化炭素排出量を抑制することができる。
【0044】
以上のような積層フィルム3を用い、積層フィルム3からなる2枚の側面シート7、8のシーラントフィルム4面同士を対向して配置し、積層フィルム3の下端部に少なくとも片面にシーラントフィルム4が積層された積層体からなる底面シート9を、シーラントフィルム4面を外面にして中央で山折りして挿入し、ガセット部を有する形式に形成されており、山折りされた底面シート9の両側下端近傍には、略半円形の底面シートの切り欠き部が設けられ、ガセット部が、周縁部を含む船底形の底部シール部でヒートシールされ底部が形成される。
【0045】
次いで、表裏の2枚の側面シート7、8の両側端縁部を側端縁シール部でヒートシールして胴部が形成され、上端部を残して内容物の充填口とする、図7に示すようなスタンディングパウチ形式に製袋されたパウチ(包装袋6)が形成される。そして、上端部の充填口に設けた上部シール部は、この部分から内容物を充填した後、例えば、脱気シールなどによりヒートシールして密封するものである。なお、図示しないが、胴部の上部などにレーザーにて開封用切れ目線を設けた注出口部を形成させてもよい。
【0046】
このような構成にすることで、包装袋6を構成する積層フィルム3におけるポリエチレン系樹脂の石油由来の使用比率を低下させることができ、石油資源の節約とともに、包装袋6の製造および廃棄時の二酸化炭素排出量を抑制することができる。特にこの包装袋6が、詰め替え用スタンディングパウチであるので、使い捨てとして普及するこのような包装袋を構成するポリエチレン系樹脂の石油由来の使用比率を低下させるとともに、二酸化炭素排出量を大きく抑制することができる。
【0047】
なお、本願発明の樹脂組成物1からなるフィルムF1?F4や、これらフィルムF1?F4を用いた積層フィルム3を使用して、上述したスタンディングパウチに例示される包装袋6以外にも、ポリエチレン系樹脂を用いた樹脂組成物1から構成される、例えば、飲食品・化粧品・薬品・雑貨品などの内容物を収容するラミネートチューブ、液体紙容器などを含む容器や、容器の蓋材、あるいは容器のラベルなどを構成することができ、いっそう石油由来の使用比率を低下させるとともに、二酸化炭素排出量を大きく抑制することができる。
【0048】
次に、本願発明の植物由来ポリエチレン系樹脂(樹脂組成物1)を用いて構成したフィルムの実施例を説明する。
【実施例1】
【0049】
スクリュー径30mmφ押出機を用いて、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(樹脂組成物1)であるブラスケム社C4LL-LL118(d=0.916、MFR=1.0g/10分)を200℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。次いで、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により、押出し温度200℃、回転数60rpmの加工条件において樹脂組成物を成形することで、厚み50μmの安定して外観の優れる図1に示すフィルムF1を製膜することができ、そのバイオマス度を測定すると、約88%であった。なお、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂に含まれるコモノマー種のブテン-1(C4)は石油由来のものであり、その含有量は1?15モル%(以下同様)である。
【0050】
これに対し、上記フィルムF1の比較例1として、石化由来C4LL直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を用いて、実施例1と同様にして、押出し温度200℃、回転数60rpmの加工条件で厚み50μmのフィルムに成形し、バイオマス度を測定すると、0%であった。
【0051】
実施例1の樹脂組成物について次の各物性評価試験を行い、得られた結果を以下に記す。
【表1】

上記結果から、サトウキビ(植物)由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(実施例1)は、石化由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(比較例1)に比べて、引張破断強度や引裂強さが強く、腰やシール強度は同等の強度を有し、弾性率が低く柔軟であることが分かる。このように、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、石化由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂と比較して同等以上の物性を有し、石化由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂の製造加工適性と遜色ないことが実証された。
【0052】
なお、引張破断強度(伸び)は、JIS-Z1702を参考にテンシロン万能試験機を用い、試験速度500mm/min. N=3 JIS-K7127試験片タイプ5(ダンベル片:最小平行巾6mm、チャック間距離80mm)で行った。
弾性率(引張)は、JIS-K7176参考にテンシロン万能試験機を用い、試験速度1mm/min. 1.5mm伸びた時の強度を測定したもので、N=3 JIS-K7127試験片タイプ2参考(短冊:巾15mm、チャック間距離150mm)で行った。
腰は、ループスティフネステスターを用い、ループ長さ60mm、サンプル巾15mm、N=3、押しつぶし距離17mm(目盛り3)で行った。
シール強度は、ヒートシールテスターTP-701Sを用い、片面加熱 1kgf/cm^(2)×1.0s PET12μmを評価サンプルの上に載せてシールし、テンシロン万能試験機において試験速度300mm/min. 巾15mm N=3 140℃で行った。
【実施例2】
【0053】
スクリュー径30mmφ押出機を用いて、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(樹脂組成物1)であるブラスケム社C4LL-LL118(d=0.916、MFR=1.0g/10分)を50モル%と、石油由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂2である宇部丸善ポリエチレンLDPE-F120N(d=0.920、MFR=1.2g/10分)50モル%を200℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。次いで、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により、押出し温度200℃、回転数60rpmの加工条件において樹脂組成物を厚み130μmの図3に示すフィルムF2に成形し、そのバイオマス度を測定すると、約44%であった。
【実施例3】
【0054】
第1層用および第3層用樹脂組成物として、スクリュー径30mmφ押出機を用いて、三井化学C6LL-エボリューSP2020(d=0.916、MFR=2.3g/10分)を200℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。同様に第2層用樹脂組成物として、スクリュー径30mmφ押出機を用いて、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であるブラスケム社C4LL-LL118(d=0.916、MFR=1.0g/10分)を200℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。なお、第1層:第2層:第3層の層比は1:1:1とした。次いで、二種三層の上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により、押出し温度200℃、回転数60rpmの加工条件において樹脂組成物を厚み130μmの図4に示すフィルムF3に成形し、そのバイオマス度を測定すると、約29%であった。
【実施例4】
【0055】
第1層用および第3層用樹脂組成物として、スクリュー径30mmφ押出機を用いて、三井化学C6LL-エボリューSP2020(d=0.916、MFR=2.3g/10分)を200℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。同様に第2層用樹脂組成物として、スクリュー径30mmφ押出機を用いて、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であるブラスケム社C4LL-LL118(d=0.916、MFR=1.0g/10分)50重量部と、宇部丸善ポリエチレンLDPE-F120N(d=0.920、MFR=1.2g/10分)50重量部とを200℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。なお、第1層:第2層:第3層の層比は1:2:1とした。次いで、二種三層の上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により、押出し温度200℃、回転数60rpmの加工条件において樹脂組成物を厚み130μmの図5に示すフィルムF4に成形し、このバイオマス度を測定すると、約22%であった。
【実施例5】
【0056】
外層に厚み25μmの、基材フィルム5としての二軸延伸ナイロンフィルム(ONy、東洋紡ハーデンN-1102)と、実施例4のフィルムF4とを用いて2液硬化型のウレタン系接着剤を使用し、ONy面に該接着剤を約4g/m^(2)塗布してポリエチレンのコロナ処理面をドライラミネーション法により貼合し、2層構成の図6に示す積層フィルム3を得、このバイオマス度を測定すると、約18%であった。
【0057】
そして、この積層フィルム3を使用し、レーザーにて開封用切れ目線を設けた注出口部付詰め替え用スタンディングパウチ(包装袋6)を作成し、この詰め替え用スタンディングパウチに内容物を入れて口部を密封したものについて、内容物の漏れ、転倒、座屈、胴部の折れを観察したが、認められなかった。さらに1mの高さから落下テストを5回行ったが、破袋、漏れなどは全く認められなかった。
【実施例6】
【0058】
外層に厚み25μmの、基材フィルム5としての二軸延伸ナイロンフィルム(ONy、東洋紡ハーデンN-1102)と、中間層に、片面にアルミニウム蒸着された厚さ12μmのVMPET(金属蒸着フィルムであり、ポリエチレンテレフタレートフィルムにアルミニウムを蒸着したもの)のアルミニウム蒸着面と積層し、さらにVMPETのポリエチレンテレフタレート面に2液硬化型のウレタン系接着剤を約4g/m^(2)塗布して、実施例4のフィルムF4のコロナ処理面とをドライラミネーション法により貼合し、3層構成の積層フィルム3を得た。そして、この積層フィルム3を使用し、レーザーにて開封用切れ目線を設けた注出口部付詰め替え用スタンディングパウチ(包装袋6)を作成し、バイオマス度を測定すると、約17%であった。
【0059】
作成した詰め替え用スタンディングパウチに内容物を入れて口部を密封したものについて、内容物の漏れ、転倒、座屈、胴部の折れを観察したが、認められなかった。さらに1mの高さから落下テストを5回行ったが、破袋、漏れ等は全く認められなかった。
【実施例7】
【0060】
上記実施例6の注出口部付詰め替え用スタンディングパウチにおける底材のみを、延伸ポリアミド(ONY)/LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)からなる石油由来フィルムを用いて作成した詰め替え用スタンディングパウチに内容物を入れて口部を密封したものについて、内容物の漏れ、転倒、座屈、胴部の折れを観察したが、認められなかった。さらに1mの高さから落下テストを5回行ったが、破袋、漏れ等は全く認められなかった。従って、本願発明のスタンディングパウチの底材には、胴部と同じ植物由来を含む積層フィルム3でも、石油由来のフィルムでもどちらを用いてもよい。
【実施例8】
【0061】
実施例1同様に、スクリュー径30mmφ押出機を用いて、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(樹脂組成物1)であるブラスケム社C4LL-LL318(d=0.918、MFR=2.7g/10分)を200℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。次いで、Tダイキャスト製膜機により、押出し温度220℃、回転数45rpmの加工条件において樹脂組成物を成形することで、厚み120μm(1種3層)の安定して外観の優れるフィルムを製膜することができ、そのバイオマス度を測定すると、約88%であった。
【実施例9】
【0062】
実施例1同様に、スクリュー径30mmφ押出機を用いて、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(樹脂組成物1)であるブラスケム社C4LL-LL318(d=0.918、MFR=2.7g/10分)と、三井化学C6LL-エボリューSP2020(d=0.918、MFR=3.8g/10分)とを7:3で200℃において混練溶融し、Tダイキャスト製膜機により、押出し温度220℃、回転数45rpmの加工条件において樹脂組成物を成形することで、厚み120μm(1種3層)の安定して外観の優れるフィルムを製膜することができ、そのバイオマス度を測定すると、約59%であった。
【0063】
以上詳述したように、この例のポリエチレン系樹脂からなるフィルムF1?F4は、気相重合法にて得られた直鎖状低密度の植物由来ポリエチレン系樹脂を含む樹脂組成物1からなるものである。また、これらフィルムF1?F4をシーラントフィルムとし、基材フィルム5と積層させた積層フィルム3とするとともに、包装袋6は、この積層フィルム3からなるものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
なお、この発明は、ポリエチレン系樹脂からなるフィルムおよび、このフィルムで構成された包装袋や容器など、ポリエチレン系樹脂を用いたあらゆる製品に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 樹脂組成物
2 石油由来ポリエチレン系樹脂
3 積層フィルム
4 シーラントフィルム
5 基材フィルム
6 包装袋
7,8 側面シート
9 底面シート
F1?F4 フィルム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装材用シーラントフィルムであって、該シーラントフィルムは、植物由来ポリエチレン系樹脂と石油由来ポリエチレン系樹脂とからなる樹脂組成物から形成された単層構成、または、中間層を前記樹脂組成物とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成からなり、該植物由来ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度80?100%を有する、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であって、植物由来エチレンとα-オレフィンとを、メタロセン触媒の存在下において気相重合法により共重合させて得られた樹脂であることを特徴とする包装材用シーラントフィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の包装材用シーラントフィルムを、基材フィルムと積層させたことを特徴とする包装材用積層フィルム。
【請求項3】
請求項2に記載の包装材用積層フィルムを用いてなることを特徴とする包装袋。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-14 
出願番号 特願2014-143712(P2014-143712)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B65D)
P 1 651・ 113- YAA (B65D)
P 1 651・ 121- YAA (B65D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小川 悟史山田 裕介  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 井上 茂夫
小野田 達志
登録日 2016-09-30 
登録番号 特許第6011585号(P6011585)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 植物由来ポリエチレンを用いた包装材用シーラントフィルム、包装材用積層フィルム、および包装袋  
代理人 竹林 則幸  
代理人 結田 純次  
代理人 吉住 和之  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 黒木 義樹  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  
代理人 結田 純次  
代理人 竹林 則幸  
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