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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
管理番号 1340089
異議申立番号 異議2017-700010  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-01-05 
確定日 2018-03-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5945558号発明「平らなガラス繊維を用いた強化ポリアミド成形材料およびポリアミド成形材料によって作製された射出成形部品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5945558号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-33〕について訂正することを認める。 特許第5945558号の請求項1ないし16、18、19及び21ないし33に係る特許を維持する。 特許第5945558号の請求項17及び20に係る特許についての申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯等

本件特許第5945558号(以下、「本件特許」という。)に係る出願(特願2014-20119号)は、平成19年12月27日に出願した特願2007-337938号の一部を平成26年2月5日に新たな特許出願としたものであって、平成28年6月3日にその特許権の設定登録がされ、同年7月5日に特許公報が発行され、その後、その特許に対して、平成29年1月5日付け(受理日:同年1月10日)で特許異議申立人、平居 博美(以下、単に「異議申立人」という。)により特許異議の申立て(以下、単に「特許異議の申立て」という。)がされた。
当審において平成29年3月23日付けで特許権者に対して取消理由を通知し、同年6月26日に特許権者により意見書及び訂正請求書が提出され、当審において同年7月11日付けで異議申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)をしたが、異議申立人により意見書が提出されなかった。
当審において平成29年9月13日付けで特許権者に対して訂正拒絶理由が通知され、それに対し同年11月8日に特許権者により意見書が提出された。
当審において平成29年12月14日付けで特許権者に対して取消理由(決定の予告)を通知し、平成30年1月12日に特許権者により意見書及び訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。「本件訂正請求書」による訂正を「本件訂正」という。)が提出され、当審において同年1月19日付けで異議申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)をしたが、異議申立人により意見書が提出されなかった。
なお、平成29年6月26日に提出した訂正請求書による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。



第2 訂正の適否について

1 訂正の内容
本件訂正における請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし33について訂正することを求める、というものである。
本件訂正の内容は以下のとおりである。なお、下線は当審において付しており、訂正個所である。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「ポリアミドおよび強化媒体としての平坦なガラス繊維を含有する強化ポリアミド成形材料であって、
上記ポリアミド成形材料は、ポリアミド基質および充填成分を含んでおり、
上記ポリアミド基質は、以下の成分(A)および成分(B)の少なくとも一方を含み、成分(A)と成分(B)の合計が20?60質量%であり、成分(A)と成分(B)の混合物を含む場合には、当該混合物中に、混合物100質量%に対し少なくとも50質量%の成分(A)が存在し、
上記充填成分は、炭素繊維を含まずに、以下の成分(C)、又は成分(C)と成分(D)を含み、
上記ポリアミド成形材料は、(E)5質量%以下の更なる添加剤を含有してもよく、
成分(A)?成分(E)の合計が100質量%であるポリアミド成形材料。
(A)0?60質量%の、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有する、
脂肪族であり、部分的に結晶性である少なくとも1つのポリアミド
(B)0?60質量%の、脂肪族、脂環式もしくは芳香族であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸を基本とする、少なくとも1つのポリアミドであり、
上記成分(B)の少なくとも1つのポリアミドは、
(i) m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有している少なくとも1つの非晶質のポリアミド、
(ii) m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有している少なくとも1つの微小結晶性のポリアミド、または、
(iii) 上記(i)及び(ii)に記載のポリアミドの混合物であり、
(C)40?80質量%の、非円形の断面を有し、かつ第2の断面軸に対する主要な断面軸の大きさの比率が3?5である、細長い形状を有する平坦なガラス繊維
(D)0?40質量%の、粒子状または層状の充填剤」
とあるのを、
「ポリアミドおよび強化媒体としての平坦なガラス繊維を含有する強化ポリアミド成形材料であって、
上記ポリアミド成形材料は、ポリアミド基質および充填成分を含んでおり、
上記ポリアミド基質は、以下の成分(A)および成分(B)の少なくとも一方を含み、成分(A)と成分(B)の合計が20?60質量%であり、成分(A)と成分(B)の混合物を含む場合には、当該混合物中に、混合物100質量%に対し少なくとも50質量%の成分(A)が存在し、
上記充填成分は、炭素繊維を含まずに、以下の成分(C)を含み、
上記ポリアミド成形材料は、(E)5質量%以下の更なる添加剤を含有してもよく、
成分(A)?成分(C)及び成分(E)の合計が100質量%であるポリアミド成形材料。
(A)0?60質量%の、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有する、
脂肪族であり、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1212、ポリアミド1112、並びにこれらの混合物、ブレンドおよびアロイからなる群から選択される部分的に結晶性である少なくとも1つのポリアミド
(B)0?60質量%の、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有する、脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸を基本とする、少なくとも1つの非晶質のポリアミド
(C)40?80質量%の、非円形の断面を有し、かつ第2の断面軸に対する主要な断面軸の大きさの比率が3?5である、細長い形状を有する平坦なガラス繊維」
に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項5ないし33も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「ポリアミドおよび強化媒体としての平坦なガラス繊維を含有する強化ポリアミド成形材料であって、
上記ポリアミド成形材料は、ポリアミド基質および充填成分を含んでおり、
上記ポリアミド基質は、以下の成分(A)および成分(B)を含み、成分(A)と成分(B)の混合物を含む場合には、当該混合物中に、混合物100質量%に対し少なくとも50質量%の成分(A)が存在し、
上記充填成分は、炭素繊維を含まずに、以下の成分(C)、又は成分(C)と成分(D)を含み、
上記ポリアミド成形材料は、(E)5質量%以下の更なる添加剤を含有してもよく、
成分(A)?成分(E)の合計が100質量%であるポリアミド成形材料。
(A)20?60質量%の、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有する、
脂肪族であり、部分的に結晶性である少なくとも1つのポリアミド
(B)0?50質量%の、脂肪族、脂環式もしくは芳香族であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸を基本とする、少なくとも1つのポリアミドであり、
上記成分(B)の少なくとも1つのポリアミドは、
(i) m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有している少なくとも1つの非晶質のポリアミド、
(ii) m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有している少なくとも1つの微小結晶性のポリアミド、または、
(iii) 上記(i)及び(ii)に記載のポリアミドの混合物であり、
(C)40?80質量%の、非円形の断面を有し、かつ第2の断面軸に対する主要な断面軸の大きさの比率が3?5である、細長い形状を有する平坦なガラス繊維
(D)0?40質量%の、粒子状または層状の充填剤」
とあるのを、
「ポリアミドおよび強化媒体としての平坦なガラス繊維を含有する強化ポリアミド成形材料であって、
上記ポリアミド成形材料は、ポリアミド基質および充填成分を含んでおり、
上記ポリアミド基質は、以下の成分(A)および成分(B)を含み、成分(A)と成分(B)の混合物を含む場合には、当該混合物中に、混合物100質量%に対し少なくとも50質量%の成分(A)が存在し、
上記充填成分は、炭素繊維を含まずに、以下の成分(C)を含み、
上記ポリアミド成形材料は、(E)5質量%以下の更なる添加剤を含有してもよく、
成分(A)?成分(C)及び成分(E)の合計が100質量%であるポリアミド成形材料。
(A)20?60質量%の、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有する、
脂肪族であり、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1212、ポリアミド1112、並びにこれらの混合物、ブレンドおよびアロイからなる群から選択される部分的に結晶性である少なくとも1つのポリアミド
(B)0?50質量%の、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有する、脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸を基本とする、少なくとも1つの非晶質のポリアミド
(C)40?80質量%の、非円形の断面を有し、かつ第2の断面軸に対する主要な断面軸の大きさの比率が3?5である、細長い形状を有する平坦なガラス繊維」
に訂正する(請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3ないし33も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項12に、
「成分(A)の脂肪族であり、部分的に結晶性である少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.8未満である溶液粘度を有する請求項1?11のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
とあるのを、
「前記成分(A)の少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.8未満である溶液粘度を有する請求項1?11のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
に訂正する(請求項12の記載を直接又は間接的に引用する請求項13、14、18、19、21ないし33も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項13に、
「成分(A)の脂肪族であり、部分的に結晶性である少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.7未満である溶液粘度を有する請求項1?12のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
とあるのを、
「前記成分(A)の少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.7未満である溶液粘度を有する請求項1?12のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
に訂正する(請求項13の記載を直接又は間接的に引用する請求項14、18、19、21ないし33も同様に訂正する。)。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項14に、
「成分(A)の脂肪族であり、部分的に結晶性である少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη^(rel)が1.4を超えて1.7未満である溶液粘度を有する請求項1?13のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
とあるのを、
「前記成分(A)の少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.4を超えて1.7未満である溶液粘度を有する請求項1?13のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
に訂正する(請求項14の記載を直接又は間接的に引用する請求項18、19、21ないし33も同様に訂正する。)。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項15に、
「成分(A)の脂肪族であり、部分的に結晶性である少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.35を超えて1.9未満である溶液粘度を有する請求項1?11のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
とあるのを、
「前記成分(A)の少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.35を超えて1.9未満である溶液粘度を有する請求項1?11のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
に訂正する(請求項15の記載を直接又は間接的に引用する請求項18、19、21ないし33も同様に訂正する。)。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項16に、
「成分(A)の脂肪族であり、部分的に結晶性である少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.4を超えて1.9未満である溶液粘度を有する請求項1?11のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
とあるのを、
「前記成分(A)の少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.4を超えて1.9未満である溶液粘度を有する請求項1?11のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
に訂正する(請求項16の記載を直接又は間接的に引用する請求項18、19、21?33も同様に訂正する。)。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項17を削除する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項18に、
「成分(B)は、ポリアミド6I、ポリアミド6I/6T、ポリアミドMXDI/6I、ポリアミドMXDI/MXDT/6I/6T、ポリアミドMXDI/12I、ポリアミドMXDI、ポリアミドMACM 9-18、ポリアミドMACMI/12、ポリアミドMACMI/MACMT/12、ポリアミド6I/MACMI/12、ポリアミド6I/6T/MACMI/MACMT、ポリアミド6I/6T/MACMI/MACMT/12、ポリアミドMACM6/11、ポリアミドMACMI/MACM12を基本とするホモポリアミド及び/又はコポリアミドの群から選択され、
MACMは55mol%を超えてPACMに置き換えられている請求項1?17のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
とあるのを、
「前記成分(B)は、ポリアミドMACM 9-18、ポリアミドMACM6/11、ポリアミドMACMI/MACM12を基本とするホモポリアミド及び/又はコポリアミドの群から選択され、
MACMは55mol%を超えてPACMに置き換えられている請求項1?16のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
に訂正する(請求項18の記載を直接又は間接的に引用する請求項19、21?33も同様に訂正する。)。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項20を削除する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項21に、
「前記成分(B)の脂肪族、脂環式もしくは芳香族であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸が、6?36個の炭素原子を有する請求項1?20のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
とあるのを、
「前記成分(B)の脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸が、6?36個の炭素原子を有する請求項1?16、18及び19のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
に訂正する(請求項21の記載を直接又は間接的に引用する請求項22?33も同様に訂正する。)。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項22に、
「前記成分(B)が、脂肪族、脂環式もしくは芳香族であるジアミン、及び脂肪族もしくは芳香族であるジカルボン酸を基本とする、少なくとも1つのポリアミドである請求項1?21のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
とあるのを、
「前記成分(B)が、脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、及び脂肪族であるジカルボン酸を基本とする、少なくとも1つの非晶質のポリアミドである請求項1?16、18、19及び21のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
に訂正する(請求項22の記載を直接又は間接的に引用する請求項23?33も同様に訂正する。)。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項23に、
「ガラス繊維を60質量%以上含み、30kJ/m^(2)以上の切り欠き衝撃強度(ISO 179/2-1 eAによる23℃におけるシャルピーにしたがって測定された)を有する請求項1?22のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
とあるのを、
「ガラス繊維を60質量%以上含み、30kJ/m^(2)以上の切り欠き衝撃強度(ISO 179/2-1 eAによる23℃におけるシャルピーにしたがって測定された)を有する請求項1?16、18、19、21及び22のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
に訂正する(請求項23の記載を直接又は間接的に引用する請求項26?33も同様に訂正する。)。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項24に、
「ガラス繊維を50?60質量%以上含み、25kJ/m^(2)以上を超える切り欠き衝撃強度(ISO 179/2-1 eAによる23℃におけるシャルピーにしたがって測定された)を有する請求項1?22のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
とあるのを、
「ガラス繊維を50?60質量%含み、25kJ/m^(2)以上を超える切り欠き衝撃強度(ISO 179/2-1 eAによる23℃におけるシャルピーにしたがって測定された)を有する請求項1?16、18、19、21及び22のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
に訂正する(請求項24の記載を直接又は間接的に引用する請求項26?33も同様に訂正する。)。

(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項25に、
「ガラス繊維を40質量%を超えて含み、200mmを超える流動長を有する請求項1?22のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
とあるのを、
「ガラス繊維を40質量%を超えて含み、200mmを超える流動長を有する請求項1?16、18、19、21及び22のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
に訂正する(請求項25の記載を直接又は間接的に引用する請求項26?33も同様に訂正する。)。

(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項26に、
「更なる添加剤(E)が、無機の安定剤、有機の安定剤、潤滑剤、染料、金属顔料、金属の装飾剤、金属に覆われた粒子、ハロゲン含有難燃剤、ハロゲン非含有難燃剤、衝撃緩和剤、帯電防止剤、導電付加剤、離型剤、蛍光増白剤、天然の層状ケイ酸塩、合成の層状ケイ酸塩、およびこれらの混合物の群から選択される請求項1?25のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
とあるのを、
「更なる添加剤(E)が、無機の安定剤、有機の安定剤、潤滑剤、染料、金属顔料、金属の装飾剤、金属に覆われた粒子、ハロゲン含有難燃剤、ハロゲン非含有難燃剤、衝撃緩和剤、帯電防止剤、導電付加剤、離型剤、蛍光増白剤、天然の層状ケイ酸塩、合成の層状ケイ酸塩、およびこれらの混合物の群から選択される請求項1?16、18、19及び21?25のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
に訂正する(請求項26の記載を直接又は間接的に引用する請求項27?33も同様に訂正する。)。

(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項27に、
「上記第2の断面軸に対する上記主要な断面軸の長さの比が、3?4である請求項1?26のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
とあるのを、
「上記第2の断面軸に対する上記主要な断面軸の長さの比が、3?4である請求項1?16、18、19及び21?26のいずれかに記載のポリアミド成形材料。」
に訂正する(請求項27の記載を直接又は間接的に引用する請求項28?33も同様に訂正する。)。

(18)訂正事項18
特許請求の範囲の請求項28に、
「容器の温度を240℃?320℃に設定した合成設備を用いて、成分(A)および(B)を溶融し、その後に、成分(C)および任意に成分(D)を添加する、請求項1?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料を製造する方法。」
とあるのを、
「容器の温度を240℃?320℃に設定した合成設備を用いて、成分(A)および(B)を溶融し、その後に、成分(C)を添加する、請求項1?16、18、19及び21?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料を製造する方法。」
に訂正する。

(19)訂正事項19
特許請求の範囲の請求項29に、
「粒状の上記成分(A)および/または上記成分(B)と、粒状の上記充填剤(C)とを混合し、このとき、粒状の上記充填剤(D)および/または上記添加剤(E)をともに混合してもよく、
その後、追加量の、粒状の上記成分(A)および上記成分(B)を添加してもよく、
その後、これら粒状物を処理する、請求項1?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料を製造する方法。」
とあるのを、
「粒状の上記成分(A)および/または上記成分(B)と、粒状の上記充填剤(C)とを混合し、このとき、粒状の上記添加剤(E)をともに混合してもよく、
その後、追加量の、粒状の上記成分(A)および上記成分(B)を添加してもよく、
その後、これら粒状物を処理する、請求項1?16、18、19及び21?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料を製造する方法。」
に訂正する。

(20)訂正事項20
特許請求の範囲の請求項30に、
「25kJ/m^(2)以上の切り欠き衝撃強度(ISO 179/2-1 eAによる23℃におけるシャルピーにしたがって測定された)を有する請求項1?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料の、成形部品を製造するための使用。」
とあるのを、
「25kJ/m^(2)以上の切り欠き衝撃強度(ISO 179/2-1 eAによる23℃におけるシャルピーにしたがって測定された)を有する請求項1?16、18、19及び21?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料の、成形部品を製造するための使用。」
に訂正する。

(21)訂正事項21
特許請求の範囲の請求項31に、
「射出成形、押出し成形、引き抜き成形、またはブロー成形によって、請求項1?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料から成形部品を製造する方法。」
とあるのを、
「射出成形、押出し成形、引き抜き成形、またはブロー成形によって、請求項1?16、18、19及び21?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料から成形部品を製造する方法。」
に訂正する。

(22)訂正事項22
特許請求の範囲の請求項32に、
「請求項1?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料から得られる成形部品。」
とあるのを、
「請求項1?16、18、19及び21?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料から得られる成形部品。」
に訂正する。

2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び一群の請求項
(1)訂正事項1について
訂正後の請求項1に係る発明では、成分(A)のポリアミドについて、訂正前の「脂肪族であり、部分的に結晶性である」との発明特定事項について、「脂肪族であり、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1212、ポリアミド1112、並びにこれらの混合物、ブレンドおよびアロイからなる群から選択される部分的に結晶性である」ことを特定している。
そうすると、訂正後の請求項1に係る発明では、成分(A)のポリアミドとして「ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1212、ポリアミド1112、並びにこれらの混合物、ブレンドおよびアロイからなる群から選択される」具体的なポリアミドに限定されることとなるから、訂正前の「成分(A)のポリアミド」を減縮するものといえる。
また、訂正後の請求項1に係る発明では、成分(B)のポリアミドについて、訂正前の「(B)0?50質量%の、脂肪族、脂環式もしくは芳香族であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸を基本とする、少なくとも1つのポリアミドであり、
上記成分(B)の少なくとも1つのポリアミドは、
(i) m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有している少なくとも1つの非晶質のポリアミド、
(ii) m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有している少なくとも1つの微小結晶性のポリアミド、または、
(iii) 上記(i)及び(ii)に記載のポリアミドの混合物」との発明特定事項について、「(B)0?60質量%の、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有する、脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸を基本とする、少なくとも1つの非晶質のポリアミド」と特定している。
そうすると、訂正後の請求項1に係る発明では、成分(B)のポリアミドとして「(i)の非晶質のポリアミド」のみに限定されるとともに、原料における「脂肪族、脂環式もしくは芳香族である」との発明特定事項について、「脂肪族もしくは脂環式である」と限定されることとなるから、訂正前の「成分(B)のポリアミド」を減縮するものといえる。
よって、訂正事項1は、上記の点において、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求項1において訂正前の「以下の成分(C)、又は成分(C)と成分(D)を含み」、「成分(A)?成分(E)の合計が」及び「(C)40?80質量%の、非円形の断面を有し、かつ第2の断面軸に対する主要な断面軸の大きさの比率が3?5である、細長い形状を有する平坦なガラス繊維
(D)0?40質量%の、粒子状または層状の充填剤」としていたものを、訂正後に「以下の成分(C)を含み」、「成分(A)?成分(C)及び成分(E)の合計が」及び「(C)40?80質量%の、非円形の断面を有し、かつ第2の断面軸に対する主要な断面軸の大きさの比率が3?5である、細長い形状を有する平坦なガラス繊維」とする訂正事項1は、「成分(D)」を用いる場合を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項2において訂正事項1と同様の訂正をしようとするものであるから、訂正事項1と同様に判断される。
そうすると、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(3)訂正事項3ないし7について
訂正事項3ないし7は、成分(A)について、訂正前の請求項12ないし16に係る発明では、「成分(A)の脂肪族であり、部分的に結晶性である少なくとも1つのポリアミド」と特定しているのを、訂正後では、「前記成分(A)の少なくとも1つのポリアミド」と特定しており、これは、請求項12ないし16が引用する請求項1及び請求項2において、それぞれ訂正事項1及び訂正事項2により成分(A)のポリアミドについて特定したことに伴い、成分(A)についての表現を改めるものである。
したがって、訂正事項3ないし7は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3ないし7は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項3ないし7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(4)訂正事項8について
訂正事項8は、特許請求の範囲の請求項17を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項8は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(5)訂正事項9について
訂正後の請求項18に係る発明では、成分(B)のポリアミドについて、訂正前の「ポリアミド6I、ポリアミド6I/6T、ポリアミドMXDI/6I、ポリアミドMXDI/MXDT/6I/6T、ポリアミドMXDI/12I、ポリアミドMXDI、ポリアミドMACM 9-18、ポリアミドMACMI/12、ポリアミドMACMI/MACMT/12、ポリアミド6I/MACMI/12、ポリアミド6I/6T/MACMI/MACMT、ポリアミド6I/6T/MACMI/MACMT/12、ポリアミドMACM6/11、ポリアミドMACMI/MACM12を基本とするホモポリアミド及び/又はコポリアミドの群から選択され」との発明特定事項について、「ポリアミドMACM 9-18、ポリアミドMACM6/11、ポリアミドMACMI/MACM12を基本とするホモポリアミド及び/又はコポリアミドの群から選択され」と特定している。
そうすると、訂正後の請求項18に係る発明では、成分(B)のポリアミドとして「ポリアミドMACM 9-18、ポリアミドMACM6/11、ポリアミドMACMI/MACM12を基本とするホモポリアミド及び/又はコポリアミドの群から選択され」るポリアミドに限定されることとなるから、訂正前の「成分(B)のポリアミド」を減縮するものといえる。
よって、訂正事項9は、上記の点において、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項9は、訂正事項8の訂正に伴って、引用する請求項17が削除されたことから、引用する請求項の関係を整理し、特許請求の範囲の記載の整合性を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項9は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(6)訂正事項10について
訂正事項10は、特許請求の範囲の請求項20を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項8は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(7)訂正事項11について
訂正後の請求項21に係る発明では、成分(B)のポリアミドについて、訂正前の「脂肪族、脂環式もしくは芳香族であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸が、6?36個の炭素原子を有する」との発明特定事項について、「脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸が、6?36個の炭素原子を有する」ポリアミドの原料に限定されることとなるから、訂正前の「成分(B)のポリアミド」を減縮するものといえる。
よって、訂正事項11は、上記の点において、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項11は、訂正事項8及び10の訂正に伴って、請求項21が引用する請求項17及び20が削除されたことから、引用する請求項の関係を整理し、特許請求の範囲の記載の整合性を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項11は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項11は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(8)訂正事項12について
訂正後の請求項22に係る発明では、成分(B)のポリアミドについて、訂正前の「脂肪族、脂環式もしくは芳香族であるジアミン、及び脂肪族もしくは芳香族であるジカルボン酸を基本とする、少なくとも1つのポリアミド」との発明特定事項について、「脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、及び脂肪族であるジカルボン酸を基本とする、少なくとも1つの非晶質のポリアミド」に限定されることとなるから、訂正前の「成分(B)のポリアミド」を減縮するものといえる。
よって、訂正事項12は、上記の点において、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項12は、訂正事項8及び10の訂正に伴って、請求項22が引用する請求項17及び20が削除されたことから、引用する請求項の関係を整理し、特許請求の範囲の記載の整合性を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項12は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項12は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(9)訂正事項13について
訂正事項13は、訂正事項8及び10の訂正に伴って、請求項23が引用する請求項17及び20が削除されたことから、引用する請求項の関係を整理し、特許請求の範囲の記載の整合性を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項13は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項13は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項13は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(10)訂正事項14について
訂正後の請求項24に係る発明では、ガラス繊維について、訂正前の「50?60質量%以上含み」との発明特定事項について、「50?60質量%含み」と特定している。これは、訂正前の「50?60質量%」の記載と「以上」の記載との関係が不明であったものを改めるものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
よって、訂正事項14は、上記の点において、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項14は、訂正事項8及び10の訂正に伴って、請求項24が引用する請求項17及び20が削除されたことから、引用する請求項の関係を整理し、特許請求の範囲の記載の整合性を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項14は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項14は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項14は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(11)訂正事項15ないし18について
訂正事項15ないし18は、訂正事項8及び10の訂正に伴って、請求項25ないし28が引用する請求項17及び20が削除されたことから、引用する請求項の関係を整理し、特許請求の範囲の記載の整合性を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的するものである。
したがって、訂正事項15ないし18は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項15ないし18は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項15ないし18は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(12)訂正事項19について
請求項29において訂正前の任意成分である「成分(D)」を削除する訂正事項19は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項19は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項19は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項19は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(13)訂正事項20ないし22について
訂正事項20ないし22は、訂正事項8及び10の訂正に伴って、請求項30ないし32が引用する請求項17及び20が削除されたことから、引用する請求項の関係を整理し、特許請求の範囲の記載の整合性を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項20ないし22は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項20ないし22は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項20ないし22は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(14) 一群の請求項
訂正前の請求項2は請求項1を引用するものではないが、訂正前の請求項32等は請求項1及び2を共に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし33は全てで一群の請求項である。
したがって、これらの訂正は、一群の請求項ごとに適法に請求されたものである。

3 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項1ないし33について訂正を認める。



第3 本件訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正の請求は認められるから、本件特許の請求項1ないし33に係る発明(以下、順に「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明33」といい、本件訂正発明1ないし16、18、19及び21ないし33を総称して「本件訂正発明」ということもある。)は、本件訂正請求書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし33に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
ポリアミドおよび強化媒体としての平坦なガラス繊維を含有する強化ポリアミド成形材料であって、
上記ポリアミド成形材料は、ポリアミド基質および充填成分を含んでおり、
上記ポリアミド基質は、以下の成分(A)および成分(B)の少なくとも一方を含み、
成分(A)と成分(B)の合計が20?60質量%であり、成分(A)と成分(B)の混合物を含む場合には、当該混合物中に、混合物100質量%に対し少なくとも50質量%の成分(A)が存在し、
上記充填成分は、炭素繊維を含まずに、以下の成分(C)を含み、
上記ポリアミド成形材料は、(E)5質量%以下の更なる添加剤を含有してもよく、
成分(A)?成分(C)及び成分(E)の合計が100質量%であるポリアミド成形材料。
(A)0?60質量%の、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有する、
脂肪族であり、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1212、ポリアミド1112、並びにこれらの混合物、ブレンドおよびアロイからなる群から選択される部分的に結晶性である少なくとも1つのポリアミド
(B)0?60質量%の、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有する、脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸を基本とする、少なくとも1つのポリアミドであり、
上記成分(B)の少なくとも1つの非晶質のポリアミド
(C)40?80質量%の、非円形の断面を有し、かつ第2の断面軸に対する主要な断面軸の大きさの比率が3?5である、細長い形状を有する平坦なガラス繊維
【請求項2】
ポリアミドおよび強化媒体としての平坦なガラス繊維を含有する強化ポリアミド成形材料であって、
上記ポリアミド成形材料は、ポリアミド基質および充填成分を含んでおり、
上記ポリアミド基質は、以下の成分(A)および成分(B)を含み、成分(A)と成分(B)の混合物を含む場合には、当該混合物中に、混合物100質量%に対し少なくとも50質量%の成分(A)が存在し、
上記充填成分は、炭素繊維を含まずに、以下の成分(C)を含み、
上記ポリアミド成形材料は、(E)5質量%以下の更なる添加剤を含有してもよく、
成分(A)?成分(C)及び成分(E)の合計が100質量%であるポリアミド成形材料。
(A)20?60質量%の、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有する、
脂肪族であり、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1212、ポリアミド1112、並びにこれらの混合物、ブレンドおよびアロイからなる群から選択される部分的に結晶性である少なくとも1つのポリアミド
(B)0?50質量%の、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有する、脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸を基本とする、少なくとも1つのポリアミドであり、
上記成分(B)の少なくとも1つの非晶質のポリアミド
(C)40?80質量%の、非円形の断面を有し、かつ第2の断面軸に対する主要な断面軸の大きさの比率が3?5である、細長い形状を有する平坦なガラス繊維
【請求項3】
成分(B)の量が、0?20質量%である請求項2に記載のポリアミド成形材料。
【請求項4】
成分(B)の量が、0?15質量%である請求項2に記載のポリアミド成形材料。
【請求項5】
成分(B)が、3?15質量%含まれる請求項1または2に記載のポリアミド成形材料。
【請求項6】
上記平坦なガラス繊維が、2?50mmの長さを有するチョップドガラスストランド形状を有している請求項1?5のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項7】
上記平坦なガラス繊維が、50?70質量%含まれている請求項1?6のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項8】
上記平坦なガラス繊維はチョップドガラスストランドとして加えられ、直径が6?40μmである主要な断面軸と、直径が3?20μmである第2の断面軸とを有している請求項1?7のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項9】
垂直な断面軸の比率が3?4である請求項1?8のいずれか記載のポリアミド成形材料。
【請求項10】
上記平坦なガラス繊維は、Eガラス繊維、Aガラス繊維、Cガラス繊維、Dガラス繊維、Mガラス繊維、Sガラス繊維、およびRガラス繊維、並びにこれらの混合物から選択され、アミノコーティングまたはエポキシコーティングを有していてもよい請求項1?9のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項11】
上記平坦なガラス繊維は、Eガラス繊維から選択される請求項1?10のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項12】
前記成分(A)の少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.8未満である溶液粘度を有する請求項1?11のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項13】
前記成分(A)の少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.7未満である溶液粘度を有する請求項1?12のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項14】
前記成分(A)の少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.4を超えて1.7未満である溶液粘度を有する請求項1?13のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項15】
前記成分(A)の少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.35を超えて1.9未満である溶液粘度を有する請求項1?11のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項16】
前記成分(A)の少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.4を超えて1.9未満である溶液粘度を有する請求項1?11のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項17】 (削除)
【請求項18】
前記成分(B)は、ポリアミドMACM 9-18、ポリアミドMACM6/11、ポリアミドMACMI/MACM12を基本とするホモポリアミド及び/又はコポリアミドの群から選択され、
MACMは55mol%を超えてPACMに置き換えられている請求項1?16のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項19】
MACMは60mol%を超えてPACMに置き換えられている請求項18に記載のポリアミド成形材料。
【請求項20】 (削除)
【請求項21】
前記成分(B)の脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸が、6?36個の炭素原子を有する請求項1?16、18及び19のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項22】
前記成分(B)が、脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、及び脂肪族であるジカルボン酸を基本とする、少なくとも1つの非晶質のポリアミドである請求項1?16、18、19及び21のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項23】
ガラス繊維を60質量%以上含み、30kJ/m^(2)以上の切り欠き衝撃強度(ISO 179/2-1 eAによる23℃におけるシャルピーにしたがって測定された)を有する請求項1?16、18、19、21及び22のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項24】
ガラス繊維を50?60質量%含み、25kJ/m^(2)以上を超える切り欠き衝撃強度(ISO 179/2-1 eAによる23℃におけるシャルピーにしたがって測定された)を有する請求項1?16、18、19、21及び22のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項25】
ガラス繊維を40質量%を超えて含み、200mmを超える流動長を有する請求項1?16、18、19、21及び22のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項26】
更なる添加剤(E)が、無機の安定剤、有機の安定剤、潤滑剤、染料、金属顔料、金属の装飾剤、金属に覆われた粒子、ハロゲン含有難燃剤、ハロゲン非含有難燃剤、衝撃緩和剤、帯電防止剤、導電付加剤、離型剤、蛍光増白剤、天然の層状ケイ酸塩、合成の層状ケイ酸塩、およびこれらの混合物の群から選択される請求項1?16、18、19及び21?25のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項27】
上記第2の断面軸に対する上記主要な断面軸の長さの比が、3?4である請求項1?16、18、19及び21?26のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項28】
容器の温度を240℃?320℃に設定した合成設備を用いて、成分(A)および(B)を溶融し、その後に、成分(C)を添加する、請求項1?16、18、19及び21?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料を製造する方法。
【請求項29】
粒状の上記成分(A)および/または上記成分(B)と、粒状の上記充填剤(C)とを混合し、このとき、粒状の上記添加剤(E)をともに混合してもよく、
その後、追加量の、粒状の上記成分(A)および上記成分(B)を添加してもよく、
その後、これら粒状物を処理する、請求項1?16、18、19及び21?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料を製造する方法。
【請求項30】
25kJ/m^(2)以上の切り欠き衝撃強度(ISO 179/2-1 eAによる23℃におけるシャルピーにしたがって測定された)を有する請求項1?16、18、19及び21?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料の、成形部品を製造するための使用。
【請求項31】
射出成形、押出し成形、引き抜き成形、またはブロー成形によって、請求項1?16、18、19及び21?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料から成形部品を製造する方法。
【請求項32】
請求項1?16、18、19及び21?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料から得られる成形部品。
【請求項33】
携帯電話機の筐体または携帯電話機の筐体部材である請求項32に記載の成形部品。」



第4 取消理由(決定の予告)の概要

取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりであり、特許異議の申立ての理由の一部とも一致するものである。
(理由1)本件特許発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反しており、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(理由2)本件特許発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。



第5 当合議体の判断

事案に鑑み、理由2から判断する。
1 理由2(特許法第36条第6項第2号)について
当合議体は、以下述べるように、本件訂正発明に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第113条第4号に該当するものではなく、取り消すことはできないと判断する。

(1)請求項1及び2において、成分(A)は、「脂肪族であり、部分的に結晶性である少なくとも1つのポリアミド」とされているが、「部分的に結晶性」とは、部分的であるとする判断・基準、その部分的の程度・範囲等が明らかでないから、成分(A)の技術的意味が不明であるとの取消理由について以下に検討する。
請求項1及び2において、成分(A)は、本件訂正により、「脂肪族であり、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1212、ポリアミド1112、並びにこれらの混合物、ブレンドおよびアロイからなる群から選択される部分的に結晶性である少なくとも1つのポリアミド」と訂正された。
そうすると、本件訂正により、当該成分(A)は、「ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1212、ポリアミド1112」という4種類(並びにこれらの混合物、ブレンドおよびアロイからなる群)から選択される具体的なポリアミドに限定されたことによって、斯かる「部分的に結晶性である」という意味は、あくまでもこれら4種類から選択される具体的なポリアミドについて特定するものであることが明確となり、これら4種類から選択される具体的なポリアミドの結晶性については技術常識(例えば、特許権者が提出した乙第2号証(Melvin I Kohan著「Nylon Plastics Handbook」,Hanser Publishers,1995年,564?566頁、576?579頁、582?585頁)を参照のこと。)から理解することができるものであるといえるから、その限りにおいてその技術的意味は明確であるといえる。
したがって、斯かる「部分的に結晶性である」という記載によって、成分(A)の技術的意味が不明であるとまではいえない。

(2)請求項1及び2において、成分(B)(ii)の「微小結晶性のポリアミド」は、本願明細書【0039】によれば、「微晶性ポリアミドは、4?25J/g(DSCにより測定)の範囲内の融解熱を有して」いるものと解されるが、成分(A)の技術的意味が不明であるから、成分(A)と成分(B)(ii)とを区別することができないとの取消理由については、本件訂正により、成分(A)が上記のとおり明確となるとともに、成分(B)(ii)が削除されたことから、解消している。

(3)請求項1及び2において、「成分(D)」の詳細について本件特許明細書には何の説明もなくその技術的意味が不明であるとの取消理由については、本件訂正により、請求項28及び29も含め、成分(D)が削除されたことから、解消している。

(4)請求項24において、「ガラス繊維を50?60質量%以上含み」との記載では、その含有量の下限の技術的意味が不明であるとの取消理由については、本件訂正により、「ガラス繊維を50?60質量%含み」と訂正されたことから、解消している。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明は明確である。
したがって、本件訂正発明に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第113条第4号に該当するものではなく、取り消すことはできない。

2 理由1(特許法第29条第2項)について
当合議体は、以下述べるように、本件訂正発明は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件訂正発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当するものではなく、取り消すべきものであるとはいえないと判断する。

甲1 :特開平4-23863号公報(平成29年1月5日付けの特許異議申立書(以下、単に「申立書」という。)に添付された甲第1号証)
甲2-1:特開2005-67149号公報(申立書に添付された甲第2-1号証)
甲2-2:特表2004-514044号公報(申立書に添付された甲第2-2号証)
甲3-1:山尾 忍 外3名、異形断面を有するGF強化樹脂の特性について、“成形加工 9月号”、社団法人 プラスチック成形加工学会、2003年9月20日、第15巻、第9号、p.612-615(申立書に添付された甲第3-1号証)
甲3-2:斉藤 純一、FRTPミニ特集 異形断面繊維<フラットファイバー>、”強化プラスチックス”、社団法人 強化プラスチック協会、平成18年9月15日、Vol.52、No.9、p.429-431、464(平成29年1月11日付け手続補正書(以下、「申立書の補正書」という。)に添付された甲第3-2号証)
甲3-3:特開2006-45390号公報(申立書に添付された甲第3-3号証)
甲4-1:特表2006-504833号公報(申立書に添付された甲第4-1号証)
甲4-2:特開2004-83858号公報(申立書に添付された甲第4-2号証)
甲4-3:特開平11-349806号公報(申立書に添付された甲第4-3号証)

(1)各刊行物に記載された事項
ア 甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている(以下、「甲1の記載事項」という。)。
(ア)「(1)脂肪族系結晶性ポリアミド樹脂95?60重量%と半芳香族非晶性ポリアミド樹脂5?40重量%の混合物100重量部、ガラス繊維25?150重量部より成る強化ポリアミド樹脂組成物。」(特許請求の範囲請求項1)

(イ)「(b).従来の技術
ポリアミド樹脂はその成形体の優れた機械的性質を有することから、特に機械部品、電機部品、自動車部品などに射出成形品の形で利用されている。特にポリアミドは、ガラス繊維を配合した場合、強度、剛性、耐熱性、耐衝撃性などが著しく向上する特性に優れている。」(1頁右下欄2?8行)

(ウ)「(C).発明が解決しようとする問題点
本発明者らは前述のような従来技術の制約を超え、耐衝撃性、強靭性、成形加工性の何れにも優れ、而も吸水による物性低下の少ないポリアミド樹脂組成物を鋭意研究した結果、本発明の組成物とその製造法を開発し、本発明を完成させたのである。」(2頁左上欄17行?右上欄3行)

(エ)「こゝでいう脂肪族系ポリアミドとは、主鎖にアミド結合をもつ重合体で、ジアミンと二塩基酸との重縮合、ラクタムの開環重合、アミノカルボン酸の重縮合などにより得られる直鎖状の高分子である。ポリアミドの例としては、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリへミサメチレンセバミド(ナイロン6.10)ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリウンデカノアミド(ナイロン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)などがある。本発明の配合物には、共重合体例えばナイロン6-66も含まれる。本発明のポリアミドは、材料の汎用性、価格、の点で、好ましくはポリカプロラクタム(ナイロン6)及びポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)である。」(2頁右上欄18行?左下欄12行)

(オ)「本発明で使用される半芳香族型非品性ポリアミド樹脂は、分子鎖に直鎖状脂肪族炭化水素、分岐脂肪族炭化水素、脂環状飽和炭化水素、芳香族炭化水素などを含む主鎖単位をアミド基で結合させた形態の分子構造を有する高分子であり、実質的に非品性の透明なポリアミドである。このポリアミドは融点を有せず、ガラス転移点(Tg)は100?200℃である。本発明で使用される非品性ポリアミドとしては、好ましくはガラス転移点が120?150℃の範囲のものである。
結晶性ポリアミド中にかゝる非品性ポリアミドを分散・配合する効果は、後述の実施例から明らかなように、配合物の物性が両成分の単純な加成性となるのではなく、少量の非品性ポリアミドの配合でも顕著な改良効果が発揮されるのは驚くべきことである。非品性ポリアミドはその原料組成の複雑さから必然的に結晶性ポリアミドよりも高価になるが、本発明の配向によれば、少量配合でも大きな効果を挙げ得るため、コストパーフォーマンス上極めて有利である。
かゝる効果を有効に発揮させる結晶性ポリアミドと非品性ポリアミドの比率は95/15乃至60/40重量比である。非品性ポリアミドの比率がこれより少ないと目的とする改良効果が顕著でなく、又これ以上非品性ポリアミドを配合しても改良効果は殆ど飽和状態であるため向上せず、而も成形品の表面状態が低下するため実用的ではない。」(2頁右下欄2行?3頁左上欄8行)

(カ)「本発明の組成物には繊維状強化材が配合される。強化材としては一般的な材料はガラス繊維であり、通常Eガラスと呼ばれるガラス質であり、繊維径5?15μ、長さ3?6mmのチョツプドストランドファイバーの形態で市販されている。他の材質としては、Sガラスを使用した高強度ガラス繊維がある。他の強化材として、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、MOS (MgSO_(4) ・5MgO・8H_(2) O)などがあり、これらをガラス繊維と併用して使用することも含まれる。配合するガラス繊維の量は、目的により樹脂ベース100重量部に対し最大150重量部である。」(3頁左上欄9行?右上欄1行)

(キ)「本発明のポリアミド組成物には、必要により従来から公知の安定剤、可塑剤、離型剤、滑剤などを配合することができる。」(3頁右上欄2?4行)

(ク)「(e).作用
本発明は、脂肪族系結晶性ポリアミド樹脂95?60重量%と半芳香族非晶性ポリアミド樹脂5?40重量%の混合物100量部、ガラス繊維30?150量部より成る強化ポリアミド樹脂組成物により、耐衝撃性、強度、剛性に優れ、而も吸水による物性低下の少ない点に於いて、従来の脂肪族系結晶製ポリアミドの性能を超え、且つ半芳香族型ポリアミドよりも成形加工性に優れ、コスト上も有利な優れた組成物を与えるものであり、その産業上の価値は大きいものである。」(3頁左下欄14行?右下欄4行)

(ケ)「(f).実施例
以下に実施例を挙げて本発明の構成を具体的に説明する。
(1)使用材料
脂肪族系結晶性ポリアミド6
c.宇部興産社製1013B
a.EMS社製A28GM
b.EMS社製A23FC
脂肪族系結晶性ポリアミド6-6
d.宇部興産社製2020B
半芳香族型非晶性ポリアミド
e.EMS社製G21
f.EMS社製XE3038
(2)ガラス繊維 日東紡績社製3PE -154」(3頁右下欄7?20行)

(コ)「実施例10?16、比較例4?5
表2に記した数量の結晶性ポリアミド、非晶性ポリアミド、及びガラス繊維をドラムブレンダで混合し日本国特許第1104727号に記載された混練機構を備えたスクリュー式射出成形機を使用し、成形を行った。成形品は、ASTMD63Bに規定する引張試験片及びASTMD790に規定する曲げ試験片(12.6mm幅、3.2mm肉厚、126mm全長)のセット取りで、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で成形を行った。成形した試験片は、実施例1?9と同様にして物性測定をおこなった。
この結果、実施例10?16は何れも物性調湿時の物性保持、外観に優れ、従来技術の強化ポリアミドの性能を大幅に改善することが実証された。」(4頁右上欄19行?左下欄13行)

(サ)「

」(5頁表-2)

イ 甲2-1に記載された事項
甲2-1には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0036】
また、以下の各実施例および比較例における原材料は下記のものを使用した。
熱可塑性樹脂としてポリアミド;数平均分子量13000のポリアミド6樹脂(宇部興産(株)製1013B)、無機充填材としてタルク(富士タルク工業(株)製LMS200F)」

ウ 甲2-2に記載された事項
甲2-2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0063】
成分(C)として、66.6wt%の6Iユニットと33.4wt%の6Tユニットとから構成されるEms-Chemie AG社からのアモルファスコポリアミド 6I/6T(グリボリ(Grivory、登録商標 G21)を使用する。0.5%m-クレゾール中で測定した相対粘度は1.5である。」

エ 甲3-1に記載された事項
甲3-1には、以下の事項が記載されている(以下、「甲3-1の記載事項」という。)。
(ア)「1.はじめに
ガラス繊維(GF)による熱可塑性樹脂の強化は多くの樹脂複合材料に一般的に用いられている手法である。この強化に用いられるガラス繊維(円形GF)は直径10?13μmの円形断面をした円柱形状をしており、樹脂中に長さ200?400μmの状態で分散している。ガラス繊維による熱可塑性樹脂強化は弾性率、強度の向上が図れるが、その反面、流動性の低下、そりの発生、表面外観の低下などの不良原因になることも多い。
今回、我々はGF断面が異形(扁平形状)のガラス繊維(扁平GF)により強化された熱可塑性樹脂について、その特性(力学特性、レオロジー特性)を通常の円形GF強化複合材料と比較した。GFの断面形状が扁平になることによりGF強化材料の特性が大きく変化し、GF強化材料が持つ問題点の多くが改善されることが明らかとなった。
2.異形断面(扁平断面)GFとは
(中略)今回、樹脂/異形断面GF複合材料特性の検討は図2で示した3種類のGFサンプル(円形GF1種類、GF断面が扁平な形状を持つ扁平GF2種類)を用いて実施した。
3.扁平GFによる成形品外観向上効果
扁平GF系材料の特長の第一番目として外観の向上が挙げられる。図3は径13μm円形GF、短径8μm、6μmの2種類の扁平GFをそれぞれ30wt%複合化したシンジオタクチックポリスチレン(SPS)を射出成形して得られた平板の表面のグロスおよびSEM写真をそれぞれ示したものである。」(612頁左欄1.?3.)

(イ)「



(ウ)「



(エ)「



(オ)「一般的にGF強化材料はGF未強化の材料に比べて表面にGFの浮きが発生し、外観が悪くなる傾向があるが、図3に示すように通常GF系のグロスに対して扁平GF系材料のそれは値が高く、短径の大きな扁平GFのその効果が大きかった。SEMによる成形品表面の観察により扁平GF系の成形品表面はGFが横に寝て配向しており、そのため表面の凹凸が小さくなり外観が向上していることがわかった。
4.成形性の向上
扁平GF系材料は円形GF系材料に対して同じGF含有量であれば成形性が向上する。図4に厚みが1mmおよび3mmの80mm角板を同じ充填時間条件で成形したときの成形圧力を示したが、円形GF(13μmφ)の材料に対して扁平GF系材料は成形圧力が低くなっており、扁平GF系材料の成形性が良いことを示している。さらに、扁平GF同士で比較すると、短径が大きいGFの方が成形性向上効果は大きかった。成形品形状が薄肉になる程、扁平GFによる成形性向上効果が大きくなることも判明した。
扁平GFによる成形性向上効果は扁平GFの樹脂流動場における配向がGF長さ方向とGF断面方向の2方向に発生する事による材料の溶融粘度低下が原因で発生する。」(613頁左欄)

(カ)「



(キ)「5.そり挙動
4項で述べた扁平GFの断面方向の配向は成形性向上に加えてそり低減の効果も発生する。形状の異なる試験片形状の成形金型を用い、成形品のそり挙動を比較した結果、特定の成形品形状において円形GF系と扁平GF系で大きくそり挙動が異なることがわかった。図7は平板形状の成形品のそり挙動を示した結果であるが、円形GF系では大きくそりが発生したのに対して、扁平GF系ではそりが大幅に低減する結果となった。
この成形品のGFの配向状態を観察した結果が図8である。円形GFがほぼMD方向にGFが配向してTD方向へ補強効果を持たない状態に対して、扁平GFの系ではGF断面の長径が成形品表面に平行に配向しており、GF長さ方向の補強効果に加えてGF断面方向の補強効果を生じることがわかった。この効果が平板成形品ぼそりを大きく低減させた理由と考えられる。
6.力学的物性
GFの断面形状は複合材料の力学物性にも大きく影響する。図9-1はGF30wt%、40wt%での扁平GF系(短径6μm品)の力学物性値と同GF量の円形GFの力学物性値の比を、(中略)示している。いずれの図においても各特性値が1より大きく、同じGF量の円形GF系に比べて扁平GF系は力学的物性が向上していることを示している。また力学物性の向上は同形状の扁平GF系においてGF量が多い40wt%系の方が、(中略)大きい結果となった。(中略)この結果から扁平GF系における力学物性の向上は円形状から扁平形状に変わることによるGF表面積量の増加によることがわかった。
7.緒言
扁平な断面を持つガラス繊維を用いた樹脂強化材料は、成形性(流動性)の向上、力学強度の向上、特定の形状成形品でのそり低減など従来の円形断面を持つガラス繊維系にはない特長を示すことが判明した。この効果は従来のGF/樹脂複合材料の欠点の多くを改善するものであり、GF/樹脂複合材料の適用限界を大きく変える可能性があるものと考えられる。」(614頁左欄5.?615頁右欄7.)

(ク)「



オ 甲3-2に記載された事項
甲3-2には、以下の事項が記載されている(以下、「甲3-2の記載事項」という。)。

(ア)「1.はじめに
ガラス繊維は、熱可塑性樹脂の強度向上を目的に広く用いられている。しかし、ガラス繊維を用いることにより、流動性の低下、反りの発生及び表面性の低下などの問題が生じることが多い。(中略)近年の成形品高精度化要求に伴う更なる反り低減の要望の高まりを受けて、まゆ形を発展させたフラットファイバーを開発して上市するに至った。ガラス繊維の断面は通常丸形であるが、まゆ型繊維の断面異形比が2(短径:長径=1:2)、それに対しフラットファイバーの異形比は4(短径:長径=1:4)になっている。フラットファイバーのSEM写真及び断面サイズを図1に示す。
2.異形断面繊維<フラットファイバー>の特長
1)流動性
流動性は、バーフローテストにより評価した。その結果を図2に示す。異形比を高くするに伴い、バーフロー量が長くなり流動性が向上している。特に、高ガラス含有率領域において顕著に現れる。
2)補強効果
引張強度並びにノッチ付きアイゾット衝撃強度結果とガラス含有率の関係を図3、4に示す。
丸形繊維を用いた成形品強度は、ガラス含有率が40%を超えると向上しない。耐衝撃強度においては低下する。一方、まゆ形繊維及びフラットファイバーでは、ガラス含有率が50%を超えても強度低下が見られない。これは、高ガラス含有率領域でも流動性低下が少ないのでガラス繊維の分散状態が良好であることに起因すると考えている。
3)反り特性
(中略)フラットファイバーを用いた成形品は、丸形繊維に比べて樹脂流れの垂直方向の収縮率が低く、流れ方向の収縮率との差が小さい。この挙動は、成形品内でのガラス繊維配向状態とフラットファイバー断面の長径方向の補強効果の影響が加わったためと考える。その結果、図7に示すように、異形比を高くすることで反りを抑制できるものと推定している。図8、9に反り評価した成形品写真を示す。
4)表面性
図10に成形品の表面粗さ測定結果を示す。特に、高ガラス含有率領域において、まゆ形繊維及びフラットファイバーの優位性が現れる。図11にフラットファイバーを用いた成形品断面写真を示す。成形品の表面で写真のように配向するために、ガラス繊維が表面に浮き出すことが少なくなる。それにより、外観表面性に優れた成形品が得られる。」(429頁)

(イ)「



(ウ)「



(エ)「



(オ)「編集後記
本号では、自動車・電機・事務機・光学機器部品などとして、いまや熱硬化性樹脂FRPの需要をはるかに超える市場を形成するに至ったガラス繊維強化熱可塑性プラスチック(FRTP)の概要を紹介する『FRTPミニ特集』を企画した。執筆を打診した10数社のメーカーのうちポリアミド、ポリカーボネート、PBT、GMTの各1編(中略)を除いて、他の樹脂についての執筆が得られなかったため、満足できる内容で紹介することが叶わなかったことは残念である。」(464頁左欄)

カ 甲3-3に記載された事項
甲3-3には、以下の事項が記載されている(以下、「甲3-3の記載事項」という。)。
(ア)「【請求項1】
熱可塑性樹脂からなるペレット中に、
断面が扁平な扁平ガラス繊維フィラメントを、該フィラメントの両端面が前記ペレット表面に達するように、複数一方向に配列させた、扁平ガラス繊維含有ペレット。」

(イ)「【0007】
そこで、本発明の目的は、熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂を用いた場合であっても、引張強度に優れるのみならず、衝撃強度に優れ、反りの発生が抑制されており、表面平滑性も向上したガラス繊維含有熱可塑性樹脂成型物及びその製造方法を提供することにある。本発明の目的はまた、このようなガラス繊維含有熱可塑性樹脂成型物を製造するために用いられる、ガラス繊維及び熱可塑性樹脂を含む原料、並びにその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、熱可塑性樹脂からなるペレット中に、断面が扁平な扁平ガラス繊維フィラメントを、該フィラメントの両端面が前記ペレット表面に達するように、複数一方向に配列させた、扁平ガラス繊維含有ペレットを提供する。」

(ウ)「【0010】
扁平ガラス繊維フィラメントは繊維長2?50mmであり、ペレット中に配列させる前記扁平ガラス繊維フィラメントの数は500?8000本であることが好ましい。このような構成を採用することにより、上記効果を顕著に発揮させることができる。」

(エ)「【0021】
扁平ガラス繊維フィラメントについては、短径が3?20μm(更には4?15μm)で、長径が6?100μm(更には15?80μm)で、且つ扁平率が2?10(更には3?8)の範囲のものが好適である。ここで、図4を参照して「短径」、「長径」及び「扁平率」を説明する。図4に示すように、「長径」及び「短径」は、扁平ガラス繊維フィラメント20に外接する最小面積の長方形Rを想定したときに、その長方形Rの長辺Raの長さA(繊維断面の最長寸法に相当)、及び、短辺Rbの長さBにそれぞれ相当する。また、「扁平率」は、長辺の長さと短辺の長さの比(A/B)で示される。」

(オ)「【0024】
扁平ガラス繊維フィラメント20の繊維長は2?50mmが好ましく、5?30mmがより好ましい。扁平ガラス繊維フィラメント20の繊維長が2mm未満である場合は、製造する扁平ガラス繊維含有熱可塑性樹脂成型物がガラス繊維により強化される程度が低くなる場合があり、50mmを超す場合は繊維長が長すぎて、射出成型機の供給ホッパーでブリッジを起こしやすく、成型時の熱可塑性樹脂中における流動性が不均一になり、成型不良を起こす場合がある。なお、扁平ガラス繊維フィラメント20はその両端がペレット10の表面に達しているために、扁平ガラス繊維フィラメント20の繊維長と扁平ガラス繊維含有ペレットのペレット長は略等しくなる。例えば、扁平ガラス繊維フィラメント20の繊維長が10mmである場合は、扁平ガラス繊維含有ペレットのペレット長は略10mmとなる。」

(カ)「【0025】
扁平ガラス繊維フィラメント20を構成するガラスの種類としては、Eガラス、Sガラス、低誘電ガラス、Cガラスが挙げられ、繊維化が容易であるという点からEガラスが好適である。」

(キ)「【0037】
このようにして得られた扁平ガラス繊維含有ペレットは、公知の射出成型機のフィーダに投入して、用いた熱可塑性樹脂の種類に応じて加熱溶融させて所望の形状に射出成型することができる。射出成型機のフィーダには扁平ガラス繊維含有ペレットの他、当該ペレットに用いたのと同種又は異種の熱可塑性樹脂ペレットを添加することができ、その他射出成型に一般に用いられる添加剤(帯電防止剤、離形剤等)を添加することもできる。」

(ク)「【0040】
(実施例1)
<ペレットの作製>
短径8μm、長径31μm(扁平率3.8、換算繊維径17μm)のEガラス組成の扁平ガラス長繊維(長尺扁平ガラス繊維フィラメント)を、ウレタン系集束剤で被覆処理し、4000本集束して、扁平ガラス繊維束を得た。この扁平ガラス繊維束を、熱溶融したナイロン(登録商標)6,6(旭化成(株)製 レオナ1300S)中に導入し溶融含浸して、円形の貫通孔を有するダイスを通過させた後、長さ10mmに切断し、ガラス含有率40質量%の実施例1のペレットを作製した。ここで、「換算繊維径」とは扁平ガラス繊維と同等の断面積を有する丸断面繊維の直径をいう。
<射出成型品の作製>
実施例1のペレットを、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、射出圧4MPaで射出成型し、実施例1の試験片A及び試験片Bを作製した。試験片Aは長さ方向の両側につかみしろ部を有する長さ100mm、幅12mm、厚さ3mmの試験片であり、試験片Bは厚さ1mmの80mm角の平板の試験片である。
【0041】
(比較例1)
<ペレットの作製>
短径7μm、長径27μm(扁平率3.8、換算繊維径15μm)のEガラス組成の扁平ガラス長繊維を、ウレタン系集束剤で被覆処理し、1600本集束して、扁平ガラス繊維束を得た。この扁平ガラス繊維束を、長さ3mmに切断し、扁平ガラス繊維チョップドストランドを得た。得られた扁平ガラス繊維チョップドストランドを実施例1と同様のナイロン6,6と温度280℃で溶融混練し、直径5mmの円形の貫通孔を有するダイスから押し出し、長さ4mmに切断し、ガラス含有率40質量%の比較例1のペレットを作製した。比較例1のペレットにおいては、扁平ガラス繊維フィラメントが一方向に配列していなかった。なお、長さ10mmの扁平ガラス繊維チョップドストランドを用いてペレットを作製しようとしたが、チョップドストランドがスクリューに投入できず溶融混練できなかった。
<射出成型品の作製>
比較例1のペレットを用いた他は実施例1と同様の方法で、比較例1の試験片A及び試験片Bを作製した。
【0042】
(比較例2)
直径17μmの円形断面のガラス繊維を用いた他は実施例1と同様の方法で、比較例2のペレット、試験片A、試験片Bを作製した。
【0043】
(比較例3)
直径11μmの円形断面のガラス繊維を用いた他は比較例1と同様の方法で、比較例3のペレット、試験片A、試験片Bを作製した。」

(ケ)「【0047】
【表1】



キ 甲4-1に記載された事項
甲4-1には、以下の事項が記載されている(以下、「甲4-1の記載事項」という。)。
(ア)「【請求項5】
前記部分的結晶線状ポリアミドa)は、PA6、PA66、PA12、PA6T、PA6T12、PA12Tから選ばれ、テレフタル酸(T)は、イソフタル酸(I)またはアジピン酸、あるいはそれらの混合物によって部分的に代替可能であることを特徴とする、請求項1乃至4の少なくとも一つに記載のポリアミド成形材料。」

(イ)「【請求項10】
前記非晶質ポリアミドc)は、PA MACM12、PA PACM12またはそれらの混合物/コポリアミド、およびPA6I、PAMXDI、PA6I/MXDIから選ばれ、イソフタル酸(I)は、テレフタル酸(T)またはアジピン酸により部分的に代替可能であり、MXDAは、PXDAにより部分的に代替可能であることを特徴とする、請求項1乃至9の少なくとも一つに記載のポリアミド成形材料。」

ク 甲4-2に記載された事項
甲4-2には、以下の事項が記載されている(以下、「甲4-2の記載事項」という。)。
(ア)「【請求項2】
前記ポリアミドが以下:
A.50重量%未満のトランス,トランス-異性体を有するPACM[ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン]30?70モル%とMACM[ビス-(4-アミノ-3-メチルシクロへキシル)メタン]70?30モル%とを有するジアミン混合物100モル%と、
B.ドデカン二酸(DDS)またはセバシン酸(SS)またはアゼライン酸(AS)またはそれらの混合物100モル%と、
で構成されることを特徴とする、請求項1に記載の透明ポリアミド成形材料。
【請求項3】
前記ポリアミドが以下:
A.50重量%未満のトランス,トランス-異性体を有するPACM[ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン]40?70モル%とMACM[ビス-(4-アミノ-3-メチルシクロへキシル)メタン]60?30モル%とを有するジアミン混合物100モル%と、
B.ドデカン二酸100モル%と、
で構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の透明ポリアミド成形材料。
【請求項4】
前記ポリアミドが以下:
A.50重量%未満のトランス,トランス-異性体を有するPACM[ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン]50?70モル%とMACM[ビス-(4-アミノ-3-メチルシクロへキシル)メタン]50?30モル%とを有するジアミン混合物100モル%と、
B.ドデカン二酸100モル%と、
で構成されることを特徴とする、請求項1?3のいずれか1項に記載の透明ポリアミド成形材料。
【請求項5】
前記ポリアミドが以下:
A.商品名4,4’-ジアミノシクロヘキシルメタン(CAS番号1761-71-3)を有するジシカン型の、50重量%未満のトランス,トランス-異性体を有するPACM[ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン]50?70モル%と商品名3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(CAS番号6864-37-5)を有するラロミンC260型のMACM[ビス-(4-アミノ-3-メチルシクロへキシル)メタン]50?30モル%とを有するジアミン混合物100モル%と、
B.ドデカン二酸100モル%と、
で構成されることを特徴とする、請求項1?4のいずれか1項に記載の透明ポリアミド成形材料。」

ケ 甲4-3に記載された事項
甲4-3には、以下の事項が記載されている(以下、「甲4-3の記載事項」という。)。
(ア)「【請求項6】 前記プレポリマーポリアミドが、PA6、PA66、PA6I/6T、PA6T/6I、PA6T/66、PA6/6T、PA6T/6I/66、PA6I/66、PAMACMT/6Iまたはそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項7】 前記プレポリマーポリアミドが、PA12、PA612、PA912、PA1012、PA1212、PA610、PA12/6T、PA8T、PA9T、PA12T、PAN12、PANI/6Tまたはそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項8】 前記プレポリマーポリアミドが、PAMACMI、PAMACM10、PAMACM12、PAPACM12、PAPACP12、PAMXD6、PAMXDI、PAMACMT、PA12/MACMI、PA12/MACMT、PA12/MACMI、PANDT、PANDI、PAIPDI/IPDT、PATMHMDA,T、およびPA12/PACM,T/PACM,Iまたはそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。」

(2)甲1に記載された発明
甲1には、甲1の摘示(1)ア(ア)?(サ)、特に実施例14の記載からみて、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

「脂肪族系結晶性ポリアミド6である宇部興産社製1013Bを1350g、半芳香族型非晶性ポリアミドであるEMS社製G21を150g、ガラス繊維である日東紡績社製3PE-154を1500gを、ドラムブレンダで混合し日本国特許第1104727号に記載された混練機構を備えたスクリュー式射出成形機を使用し、成形を行った成形品に用いられる材料。」

(3)本件訂正発明1について
本件訂正発明1と甲1発明とを以下に対比・判断する。
ア 甲1発明の「成形品に用いられる材料」は、本件訂正発明1の「強化ポリアミド成形材料」に相当する。
甲1発明の「脂肪族系結晶性ポリアミド6である宇部興産社製1013B」と本件訂正発明1の「(A)脂肪族であり、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1212、ポリアミド1112、並びにこれらの混合物、ブレンドおよびアロイからなる群から選択される部分的に結晶性である少なくとも1つのポリアミド」とは、「脂肪族であるポリアミド」である限りにおいて一致している。
甲1発明の「半芳香族型非晶性ポリアミドであるEMS社製G21」と本件訂正発明1の「(B)m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有する、脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸を基本とする、少なくとも1つのポリアミド」とは、「ポリアミド」である限りにおいて一致している。
甲1発明の「ガラス繊維である日東紡績社製3PE-154」と本件訂正発明1の「(C)平坦なガラス繊維」とは、「細長い形状を有するガラス繊維」である限りにおいて一致している。
ここで、甲1発明の「成形品に用いられる材料」は、「脂肪族系結晶性ポリアミド6である宇部興産社製1013B」、「半芳香族型非晶性ポリアミドであるEMS社製G21」、「ガラス繊維である日東紡績社製3PE-154」からなり、それらの質量が、それぞれ、1350g、150g、1500gであって、質量の合計が3000gであることから、甲1発明の「成形品に用いられる材料」(100質量%)における前記各成分の割合は、45質量%、5質量%、50質量%と計算される。
そして、甲1発明において、「成形品に用いられる材料」における「脂肪族系結晶性ポリアミド6である宇部興産社製1013B」と「半芳香族型非晶性ポリアミドであるEMS社製G21」の合計が50質量%(=45質量%+5質量%)と計算され、「脂肪族系結晶性ポリアミド6である宇部興産社製1013B」と「半芳香族型非晶性ポリアミドであるEMS社製G21」の混合物中に、混合物100質量%に対し90質量%(=1350g/(1350g+150g)×100)と計算される。

イ したがって、本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、
<一致点>
「ポリアミドおよび強化媒体としてのガラス繊維を含有する強化ポリアミド成形材料であって、
上記ポリアミド成形材料は、ポリアミド基質および充填成分を含んでおり、
上記ポリアミド基質は、以下の成分(A)および成分(B)を含み、成分(A)と成分(B)の合計が50質量%であり、成分(A)と成分(B)の混合物を含む場合には、当該混合物中に、混合物100質量%に対し90質量%の成分(A)が存在し、
上記充填成分は、炭素繊維を含まずに、以下の成分(C)を含み、
成分(A)?成分(C)の合計が100質量%であるポリアミド成形材料。
(A)45質量%の、脂肪族であるポリアミド
(B)5質量%の、ポリアミド
(C)50質量%の、細長い形状を有するガラス繊維」

次の相違点1ないし5で相違する。
<相違点1>
成分(A)の種類について、本件訂正発明1は「脂肪族であり、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1212、ポリアミド1112、並びにこれらの混合物、ブレンドおよびアロイからなる群から選択される部分的に結晶性である」と特定しているのに対して、甲1発明は「脂肪族系結晶性ポリアミド6である宇部興産社製1013B」である点。

<相違点2>
成分(A)の溶液粘度について、本件訂正発明1は「m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である」と特定しているのに対して、甲1発明の「脂肪族系結晶性ポリアミド6である宇部興産社製1013B」の溶液粘度が不明である点。

<相違点3>
成分(B)の種類について、本件訂正発明1は「脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸を基本とする、少なくとも1つのポリアミド」と特定しているのに対して、甲1発明は「半芳香族型非晶性ポリアミドであるEMS社製G21」である点。

<相違点4>
成分(B)の溶液粘度について、本件訂正発明1は「m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である」と特定しているのに対して、甲1発明の「半芳香族型非晶性ポリアミドであるEMS社製G21」の溶液粘度が不明である点。

<相違点5>
ガラス繊維の形状について、本件訂正発明1は「非円形の断面を有し、かつ第2の断面軸に対する主要な断面軸の大きさの比率が3?5である」「平坦なガラス繊維」と特定しているのに対して、甲1発明の「ガラス繊維である日東紡績社製3PE-154」の形状が不明である点。

ウ 事案に鑑み、まず上記相違点3について検討する。
甲1発明の「半芳香族型非晶性ポリアミドであるEMS社製G21」は、半芳香族型ポリアミドであって、これは甲1の「本発明で使用される半芳香族型非品性ポリアミド樹脂は、分子鎖に直鎖状脂肪族炭化水素、分岐脂肪族炭化水素、脂環状飽和炭化水素、芳香族炭化水素などを含む主鎖単位をアミド基で結合させた形態の分子構造を有する高分子であり、実質的に非品性の透明なポリアミドである。」(摘示(1)ア(オ))との記載からすると、芳香族基を含む主鎖単位をアミド基で結合させた形態の分子構造を有する高分子を意味するものであって、実際、「EMS社製G21」は、甲2-2から「66.6wt%の6Iユニットと33.4wt%の6Tユニットとから構成されるコポリアミド6I/6T」(摘示(1)ウ(ア))、すなわち、ポリアミド6I/6Tであると認められ、これは、イソフタル酸(I)及びテレフタル酸(T)という芳香族の原料を用いて合成されたポリアミドで、フェニレン基という芳香族基を骨格に含むポリアミドである。
そうすると、甲1発明の「半芳香族型非晶性ポリアミドであるEMS社製G21」は、本件訂正発明1の成分(B)である「脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸を基本とする、少なくとも1つのポリアミド」と、芳香族のポリアミド原料の有無において相違していることは明らかである。したがって、相違点3は実質的な相違点である。
そして、甲1は、「半芳香族型非晶性ポリアミド」であることについて特許請求の範囲でも特定されているとおり(摘示(1)ア(ア))必須とされているものである。また、ポリアミド6I/6Tなどの「半芳香族型非晶性ポリアミド」に代えて「脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸を基本とするポリアミド」を使用することが当業者の技術常識であるともいえない。
そうすると、甲1発明において、「半芳香族型非晶性ポリアミドであるEMS社製G21」を甲1に記載のない「脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸を基本とするポリアミド」に変更しようという動機付けが見当たらないどころか、甲1の特徴点である「半芳香族型非晶性ポリアミド」を超えて、それに代えて、芳香族基を有さないポリアミドを採用することには阻害要因があるといえる。したがって、相違点3は、当業者が容易に想到できるものとはいえない。

エ 次に、上記相違点1について検討する。
甲1発明の「脂肪族系結晶性ポリアミド6である宇部興産社製1013B」は、ポリアミド6であって、本件訂正発明1の成分(A)であるポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1212、ポリアミド1112(並びにこれらの混合物、ブレンドおよびアロイ)からなる群から選択されるポリアミドとは、ポリアミドの種類が相違していることは明らかであるから、相違点1は実質的な相違点である。
そして、甲1には、「脂肪族系結晶性ポリアミド」について、「こゝでいう脂肪族系ポリアミドとは、主鎖にアミド結合をもつ重合体で、ジアミンと二塩基酸との重縮合、ラクタムの開環重合、アミノカルボン酸の重縮合などにより得られる直鎖状の高分子である。ポリアミドの例としては、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリへミサメチレンセバミド(ナイロン6.10)ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリウンデカノアミド(ナイロン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)などがある。」(摘示(1)ア(エ))と記載されてはいるものの、「本発明のポリアミドは、材料の汎用性、価格、の点で、好ましくはポリカプロラクタム(ナイロン6)及びポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)である。」(摘示(1)ア(エ))とも記載されており、実施例でもポリカプロラクタム(ナイロン6)及びポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)が記載されているに留まるものであって、「ポリカプロラクタム(ナイロン6)」あるいは「ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)」に代えて「ポリウンデカノアミド(ナイロン11、ポリアミド11と同じ。)」や「ポリラウリルラクタム(ナイロン12、ポリアミド12と同じ。)」を使用することが、他の甲号証をみても当業者の技術常識であるともいえない。
そうすると、甲1発明において、「脂肪族系結晶性ポリアミド6である宇部興産社製1013B」を甲1で好ましいとされていない「ポリウンデカノアミド(ナイロン11)やポリラウリルラクタム(ナイロン12)」に敢えて変更しようという動機付けが見当たらない。したがって、相違点1は、当業者が容易に想到できるものとはいえない。

オ そして、本件訂正発明1において、優れた切り欠き衝撃強度を有する成形品を得ることができ、優れた流動長を有するという効果が奏されていることは、本件特許明細書の記載から明らかである。

カ 以上のとおりであるから、たとえ、甲2-1ないし甲2-2、甲3-1ないし3-3、甲4-1ないし甲4-3の記載事項を総合することにより、ガラス繊維による熱可塑性樹脂強化は、種々の樹脂において、流動性の低下、そりの発生、表面外観の低下等の課題があり、その課題を解決するために、ガラス繊維として、扁平な断面を持つガラス繊維を用いることで、円形断面のガラス繊維に比較して、成形品外観向上効果、成形性(流動性)の向上、成形品の引張強度、引張伸び、IZOD(衝撃強度)、曲げ強度等の力学強度の向上、そり低減などを達成することができるといえたとしても、本件特許発明1は、甲1発明及び他の甲号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件訂正発明1に係る特許は、同法第113条第2号に該当するものではなく、取り消すべきものであるとはいえない。

(4)本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1において、成分(A)および成分(B)を含むものであるが、甲1発明との比較において、新たな相違点を生じるものではないから、本件訂正発明1と同様に判断される。
よって、本件訂正発明2は、甲1発明及び他の甲号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件訂正発明2に係る特許は、同法第113条第2号に該当するものではなく、取り消すべきものであるとはいえない。

(5)本件訂正発明3ないし16、18、19及び21ないし33について
本件訂正発明3ないし16、18、19及び21ないし33は、本件訂正発明1又は本件訂正発明2を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正発明1と同様に、甲1発明及び他の甲号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件訂正発明3ないし16、18、19及び21ないし33に係る特許は、同法第113条第2号に該当するものではなく、取り消すべきものであるとはいえない。

3 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由について
(1)特許法第36条第4項第1号について
特許異議申立人は、特許異議の申立ての理由として、さらに、本件訂正発明29に係る特許は、本件特許明細書の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨も主張する。
しかしながら、本件特許明細書の記載を検討したが、本件特許明細書の記載は、当業者が本件訂正発明29を実施することができる程度に記載されているものといえる。
したがって、本件訂正発明29に係る特許は、明細書の発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第113条第4号に該当するものではなく、取り消すことはできない。

(2)特許法第36条第6項第1号について
特許異議申立人は、特許異議の申立ての理由として、さらに、本件訂正発明に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨も主張する。
しかしながら、本件特許明細書の記載を検討したが、本件特許請求の範囲の記載は、特定された範囲についてまで本件訂正発明に係る課題を解決することができると当業者が認識できるものといえる。
したがって、本件訂正発明に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第113条第4号に該当するものではなく、取り消すことはできない。

(3)特許法第36条第6項第2号について
特許異議申立人は、特許異議の申立ての理由として、さらに、本件訂正発明に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨も主張する。
しかしながら、本件特許明細書の記載を検討したが、本件特許請求の範囲の記載は、明確であるといえる。
したがって、本件特許発明に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第113条第4号に該当するものではなく、取り消すことはできない。



第6 むすび

以上のとおりであるから、取消理由及び異議申立人が主張する特許異議の申立ての理由によっては、本件訂正発明1ないし16、18、19及び21ないし33に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正発明1ないし16、18、19及び21ないし33に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件訂正発明17及び20に係る特許に対して異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドおよび強化媒体としての平坦なガラス繊維を含有する強化ポリアミド成形材料であって、
上記ポリアミド成形材料は、ポリアミド基質および充填成分を含んでおり、
上記ポリアミド基質は、以下の成分(A)および成分(B)の少なくとも一方を含み、成分(A)と成分(B)の合計が20?60質量%であり、成分(A)と成分(B)の混合物を含む場合には、当該混合物中に、混合物100質量%に対し少なくとも50質量%の成分(A)が存在し、
上記充填成分は、炭素繊維を含まずに、以下の成分(C)を含み、
上記ポリアミド成形材料は、(E)5質量%以下の更なる添加剤を含有してもよく、
成分(A)?成分(C)及び成分(E)の合計が100質量%であるポリアミド成形材料。
(A)0?60質量%の、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有する、
脂肪族であり、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1212、ポリアミド1112、並びにこれらの混合物、ブレンドおよびアロイからなる群から選択される部分的に結晶性である少なくとも1つのポリアミド
(B)0?60質量%の、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有する、脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸を基本とする、少なくとも1つの非晶質のポリアミド
(C)40?80質量%の、非円形の断面を有し、かつ第2の断面軸に対する主要な断面軸の大きさの比率が3?5である、細長い形状を有する平坦なガラス繊維
【請求項2】
ポリアミドおよび強化媒体としての平坦なガラス繊維を含有する強化ポリアミド成形材料であって、
上記ポリアミド成形材料は、ポリアミド基質および充填成分を含んでおり、
上記ポリアミド基質は、以下の成分(A)および成分(B)を含み、成分(A)と成分(B)の混合物を含む場合には、当該混合物中に、混合物100質量%に対し少なくとも50質量%の成分(A)が存在し、
上記充填成分は、炭素繊維を含まずに、以下の成分(C)を含み、
上記ポリアミド成形材料は、(E)5質量%以下の更なる添加剤を含有してもよく、
成分(A)?成分(C)及び成分(E)の合計が100質量%であるポリアミド成形材料。
(A)20?60質量%の、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有する、
脂肪族であり、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1212、ポリアミド1112、並びにこれらの混合物、ブレンドおよびアロイからなる群から選択される部分的に結晶性である少なくとも1つのポリアミド
(B)0?50質量%の、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.9未満である溶液粘度を有する、脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸を基本とする、少なくとも1つの非晶質のポリアミド
(C)40?80質量%の、非円形の断面を有し、かつ第2の断面軸に対する主要な断面軸の大きさの比率が3?5である、細長い形状を有する平坦なガラス繊維
【請求項3】
成分(B)の量が、0?20質量%である請求項2に記載のポリアミド成形材料。
【請求項4】
成分(B)の量が、0?15質量%である請求項2に記載のポリアミド成形材料。
【請求項5】
成分(B)が、3?15質量%含まれる請求項1または2に記載のポリアミド成形材料。
【請求項6】
上記平坦なガラス繊維が、2?50mmの長さを有するチョップドガラスストランド形状を有している請求項1?5のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項7】
上記平坦なガラス繊維が、50?70質量%含まれている請求項1?6のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項8】
上記平坦なガラス繊維はチョップドガラスストランドとして加えられ、直径が6?40μmである主要な断面軸と、直径が3?20μmである第2の断面軸とを有している請求項1?7のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項9】
垂直な断面軸の比率が3?4である請求項1?8のいずれか記載のポリアミド成形材料。
【請求項10】
上記平坦なガラス繊維は、Eガラス繊維、Aガラス繊維、Cガラス繊維、Dガラス繊維、Mガラス繊維、Sガラス繊維、およびRガラス繊維、並びにこれらの混合物から選択され、アミノコーティングまたはエポキシコーティングを有していてもよい請求項1?9のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項11】
上記平坦なガラス繊維は、Eガラス繊維から選択される請求項1?10のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項12】
前記成分(A)の少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.8未満である溶液粘度を有する請求項1?11のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項13】
前記成分(A)の少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.3を超えて1.7未満である溶液粘度を有する請求項1?12のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項14】
前記成分(A)の少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.4を超えて1.7未満である溶液粘度を有する請求項1?13のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項15】
前記成分(A)の少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.35を超えて1.9未満である溶液粘度を有する請求項1?11のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項16】
前記成分(A)の少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾール(0.5質量%)において測定されたη_(rel)が1.4を超えて1.9未満である溶液粘度を有する請求項1?11のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項17】 (削除)
【請求項18】
前記成分(B)は、ポリアミドMACM 9-18、ポリアミドMACM6/11、ポリアミドMACMI/MACM12を基本とするホモポリアミド及び/又はコポリアミドの群から選択され、
MACMは55mol%を超えてPACMに置き換えられている請求項1?16のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項19】
MACMは60mol%を超えてPACMに置き換えられている請求項18に記載のポリアミド成形材料。
【請求項20】 (削除)
【請求項21】
前記成分(B)の脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸が、6?36個の炭素原子を有する請求項1?16、18及び19のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項22】
前記成分(B)が、脂肪族もしくは脂環式であるジアミン、及び脂肪族であるジカルボン酸を基本とする、少なくとも1つの非晶質のポリアミドである請求項1?16、18、19及び21のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項23】
ガラス繊維を60質量%以上含み、30kJ/m^(2)以上の切り欠き衝撃強度(ISO 179/2-1 eAによる23℃におけるシャルピーにしたがって測定された)を有する請求項1?16、18、19、21及び22のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項24】
ガラス繊維を50?60質量%含み、25kJ/m^(2)以上を超える切り欠き衝撃強度(ISO 179/2-1 eAによる23℃におけるシャルピーにしたがって測定された)を有する請求項1?16、18、19、21及び22のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項25】
ガラス繊維を40質量%を超えて含み、200mmを超える流動長を有する請求項1?16、18、19、21及び22のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項26】
更なる添加剤(E)が、無機の安定剤、有機の安定剤、潤滑剤、染料、金属顔料、金属の装飾剤、金属に覆われた粒子、ハロゲン含有難燃剤、ハロゲン非含有難燃剤、衝撃緩和剤、帯電防止剤、導電付加剤、離型剤、蛍光増白剤、天然の層状ケイ酸塩、合成の層状ケイ酸塩、およびこれらの混合物の群から選択される請求項1?16、18、19及び21?25のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項27】
上記第2の断面軸に対する上記主要な断面軸の長さの比が、3?4である請求項1?16、18、19及び21?26のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項28】
容器の温度を240℃?320℃に設定した合成設備を用いて、成分(A)および(B)を溶融し、その後に、成分(C)を添加する、請求項1?16、18、19及び21?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料を製造する方法。
【請求項29】
粒状の上記成分(A)および/または上記成分(B)と、粒状の上記充填剤(C)とを混合し、このとき、粒状の上記添加剤(E)をともに混合してもよく、
その後、追加量の、粒状の上記成分(A)および上記成分(B)を添加してもよく、
その後、これら粒状物を処理する、請求項1?16、18、19及び21?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料を製造する方法。
【請求項30】
25kJ/m^(2)以上の切り欠き衝撃強度(ISO 179/2-1 eAによる23℃におけるシャルピーにしたがって測定された)を有する請求項1?16、18、19及び21?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料の、成形部品を製造するための使用。
【請求項31】
射出成形、押出し成形、引き抜き成形、またはブロー成形によって、請求項1?16、18、19及び21?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料から成形部品を製造する方法。
【請求項32】
請求項1?16、18、19及び21?27のいずれかに記載のポリアミド成形材料から得られる成形部品。
【請求項33】
携帯電話機の筐体または携帯電話機の筐体部材である請求項32に記載の成形部品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-27 
出願番号 特願2014-20119(P2014-20119)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08J)
P 1 651・ 537- YAA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大村 博一  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 小野寺 務
守安 智
登録日 2016-06-03 
登録番号 特許第5945558号(P5945558)
権利者 エムス-ヒェミー アクチエンゲゼルシャフト
発明の名称 平らなガラス繊維を用いた強化ポリアミド成形材料およびポリアミド成形材料によって作製された射出成形部品  
代理人 特許業務法人平和国際特許事務所  
代理人 特許業務法人平和国際特許事務所  

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