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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61J
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61J
管理番号 1340102
異議申立番号 異議2017-700692  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-07-12 
確定日 2018-04-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6082964号発明「薬剤取出装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6082964号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6082964号の請求項1-5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6082964号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成23年9月5日に特許出願され、平成29年2月3日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年7月12日に特許異議申立人 前田 雅史(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、平成29年11月30日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年2月1日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して申立人から平成30年3月6日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「薬剤が収納され、内部にロータが設けられ、前記ロータを回転させることで、薬剤を取出すことができるように構成されるカセットと、
前記ロータを回転させる回転動力源と、
前記回転動力源を制御する制御部とを備え、
前記ロータと前記回転動力源との間の動力伝達経路には、前記ロータと前記回転動力源との間に設定トルクを超えるトルクが生じると、前記回転動力源からの動力を遮断する動力遮断部が介在し、
しかも前記制御部は、前記ロータを、第一回転方向と、前記第一回転方向と反対の第二回転方向とに回転させるように、前記回転動力源を制御し、
前記制御部が、前記ロータを前記第一回転方向に回転させるように、前記回転動力源を制御しているときに、薬剤が詰まった場合、前記動力遮断部が、前記回転動力源からの動力を遮断し、この後、前記制御部が、前記ロータを前記第二回転方向に回転させるように、前記回転動力源を制御することで、薬剤の詰まりを解消する、薬剤取出装置。」とあるのを
「薬剤が収納され、内部にロータが設けられ、前記ロータを回転させることで、薬剤を取出すことができるように構成されるカセットと、
前記ロータを回転させるモータと、
前記モータを制御する制御部とを備え、
前記ロータと前記モータとの間の動力伝達経路には、前記ロータと前記モータとの間に設定トルクを超えるトルクが生じると、前記モータからの動力を遮断する動力遮断部が介在し、
しかも前記制御部は、前記ロータを、第一回転方向と、前記第一回転方向と反対の第二回転方向とに回転させるように、前記モータを制御し、
前記制御部が、前記ロータを前記第一回転方向に回転させるように、前記モータを制御しているときに、薬剤が詰まった場合、前記動力遮断部が、前記モータからの動力を遮断し、この後、前記制御部が、前記ロータを前記第二回転方向に回転させるように、前記モータを制御することで、薬剤の詰まりを解消する、薬剤取出装置。」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に、
「前記制御部は、前記ロータを、第一の時間、第一回転方向に回転させた後、第二の時間、第二回転方向に回転させるように、前記回転動力源を制御する、請求項1記載の薬剤取出装置。」とあるのを
「薬剤が収納され、内部にロータが設けられ、前記ロータを回転させることで、薬剤を取出すことができるように構成されるカセットと、
前記ロータを回転させるモータと、
前記モータを制御する制御部とを備え、
前記ロータと前記モータとの間の動力伝達経路には、前記ロータと前記モータとの間に設定トルクを超えるトルクが生じると、前記モータからの動力を遮断する動力遮断部が介在し、
しかも前記制御部は、前記ロータを、第一回転方向と、前記第一回転方向と反対の第二回転方向とに回転させるように、前記モータを制御し、
前記制御部が、前記ロータを、第一の時間、前記第一回転方向に回転させた後、第二の時間、前記第二回転方向に回転させるように、前記モータを制御して、前記ロータの回転方向を時間で切り換え、これによって、前記制御部が、前記ロータを前記第一回転方向に回転させるように、前記モータを制御しているときに、薬剤が詰まった場合、前記動力遮断部が、前記モータからの動力を遮断し、この後、前記制御部が、前記ロータを前記第二回転方向に回転させるように、前記モータを制御することで、薬剤の詰まりを解消する、薬剤取出装置。」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に、
「前記カセットから取り出されて落下する薬剤を検出する薬剤検出センサをさらに備え、
前記制御部は、前記ロータを、所定時間、第一回転方向に回転させても、薬剤検出センサによって薬剤を検出することができない場合、前記ロータを、前記第二回転方向に回転させる、請求項1記載の薬剤取出装置。」とあるのを
「前記カセットから取り出されて落下する薬剤を検出する薬剤検出センサをさらに備え、
前記制御部は、薬剤が詰まることで、前記薬剤検出センサによって薬剤を検出することができない場合であって、前記ロータを、前記第一回転方向に回転させても、前記ロータの前記第一回転方向への回転を開始してから、または、前記薬剤検出センサによって一つ前の薬剤を既に検出しているときはその薬剤を検出したときから、所定時間、前記薬剤検出センサによって薬剤を検出することができない場合、前記ロータを、前記第二回転方向に回転させる、請求項1記載の薬剤取出装置。」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項1ないし3につき、訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否を検討する。

(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、上位概念である「回転動力源」を下位概念である「モータ」に変更するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無
訂正事項1は、本件明細書における「【0024】モータ123は、ロータを回転させる回転動力源であり、ロータを、第一回転方向である正転方向および第一回転方向とは反対の第二回転方向である逆転方向に回転することが可能である。」の記載に基づいて導き出される事項といえる。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アに記載したとおり、訂正事項1は、請求項1を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正後の請求項4に記載された事項うち、訂正後の請求項1と重複する事項(訂正後の請求項1に記載された事項と同一の事項)は、訂正前の請求項4が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正であり、かつ、上位概念である「回転動力源」を下位概念である「モータ」に変更するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定する事項を目的とする訂正である。

また、訂正後の請求項4に記載された事項のうち「前記制御部が、前記ロータを、第一の時間、前記第一回転方向に回転させた後、第二の時間、前記第二回転方向に回転させるように、前記モータを制御して、前記ロータの回転方向を時間で切り換え、これによって」(上記の訂正後の請求項1と重複する事項を除く部分)は、訂正前の請求項4の「前記制御部は、前記ロータを、第一の時間、第一回転方向に回転させた後、第二の時間、第二回転方向に回転させるように、前記回転動力源を制御する」の記載について、上位概念である「回転動力源」を下位概念である「モータ」に変更し、訂正前の請求項1に記載された事項である「前記制御部が、前記ロータを前記第一回転方向に回転させるように、前記モータを制御しているときに、薬剤が詰まった場合、前記動力遮断部が、前記モータからの動力を遮断し、この後、前記制御部が、前記ロータを前記第二回転方向に回転させるように、前記モータを制御することで、薬剤の詰まりを解消する」との関係を明瞭にするとともに、表現を整えるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する事項を目的とする訂正である。

以上により、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に規定する事項を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無
訂正事項2のうち「回転動力源」を「モータ」に変更した点については、上記(1)イのとおり、段落【0024】の記載に基づいて導き出される事項である。
また、訂正事項2の「前記ロータの回転方向を時間で切り換え、これによって、前記制御部が、前記ロータを前記第一回転方向に回転させるように、前記モータを制御しているときに、薬剤が詰まった場合、前記動力遮断部が、前記モータからの動力を遮断し、この後、前記制御部が、前記ロータを前記第二回転方向に回転させるように、前記モータを制御することで、薬剤の詰まりを解消する」(以下「発明特定事項ア」という。)を検討するに、発明特定事項アのうち、「前記ロータの回転方向を時間で切り換え」の部分(以下「発明特定事項A」という。)は、段落【0064】、【0065】、【0072】及び図24等の記載に基づいて導き出される事項であり、「前記制御部が、前記ロータを前記第一回転方向に回転させるように・・・前記モータを制御することで、薬剤の詰まりを解消する」の部分(以下「発明特定事項B」という。)は、段落【0066】、【0073】及び図25等の記載に基づいて導き出される事項である。
そして、発明特定事項アは、発明特定事項A及びBを「これによって」との表現で接続するものであるところ、かかる点は、本件明細書等の請求項1及び4の記載に基づいて導き出される事項であり、また、本件明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
以上のとおり、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アに記載したとおり、訂正事項2は、請求項4を独立形式に書き換え、請求項4を減縮し、かつ、明瞭でない記載を釈明するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、「薬剤を検出することができない場合」について、「薬剤が詰まることで、前記薬剤検出センサによって薬剤を検出することができない場合であって、前記ロータを、前記第一回転方向に回転させても、前記ロータの前記第一回転方向への回転を開始してから、または、前記薬剤検出センサによって一つ前の薬剤を既に検出しているときはその薬剤を検出したときから、所定時間、前記薬剤検出センサによって薬剤を検出することができない場合」であることを明瞭にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項3は、本件明細書における段落【0066】、【0073】及び図25等の記載に基づいて導き出される事項であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アに記載したとおり、訂正事項3は、明瞭でない記載を釈明するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

3 小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、これを認める。

第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認容されるので、本件訂正後の本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下「本件発明1」などという。また、これらをまとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
薬剤が収納され、内部にロータが設けられ、前記ロータを回転させることで、薬剤を取出すことができるように構成されるカセットと、
前記ロータを回転させるモータと、
前記モータを制御する制御部とを備え、
前記ロータと前記モータとの間の動力伝達経路には、前記ロータと前記モータとの間に設定トルクを超えるトルクが生じると、前記モータからの動力を遮断する動力遮断部が介在し、
しかも前記制御部は、前記ロータを、第一回転方向と、前記第一回転方向と反対の第二回転方向とに回転させるように、前記モータを制御し、
前記制御部が、前記ロータを前記第一回転方向に回転させるように、前記モータを制御しているときに、薬剤が詰まった場合、前記動力遮断部が、前記モータからの動力を遮断し、この後、前記制御部が、前記ロータを前記第二回転方向に回転させるように、前記モータを制御することで、薬剤の詰まりを解消する、薬剤取出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ロータの第一または第二回転方向の回転速度を変更することが可能である、請求項1記載の薬剤取出装置。
【請求項3】
前記第一回転方向の回転速度は、前記第二回転方向の回転速度よりも速い、請求項1記載の薬剤取出装置。
【請求項4】
薬剤が収納され、内部にロータが設けられ、前記ロータを回転させることで、薬剤を取出すことができるように構成されるカセットと、
前記ロータを回転させるモータと、
前記モータを制御する制御部とを備え、
前記ロータと前記モータとの間の動力伝達経路には、前記ロータと前記モータとの間に設定トルクを超えるトルクが生じると、前記モータからの動力を遮断する動力遮断部が介在し、
しかも前記制御部は、前記ロータを、第一回転方向と、前記第一回転方向と反対の第二回転方向とに回転させるように、前記モータを制御し、
前記制御部が、前記ロータを、第一の時間、前記第一回転方向に回転させた後、第二の時間、前記第二回転方向に回転させるように、前記モータを制御して、前記ロータの回転方向を時間で切り換え、これによって、前記制御部が、前記ロータを前記第一回転方向に回転させるように、前記モータを制御しているときに、薬剤が詰まった場合、前記動力遮断部が、前記モータからの動力を遮断し、この後、前記制御部が、前記ロータを前記第二回転方向に回転させるように、前記モータを制御することで、薬剤の詰まりを解消する、薬剤取出装置。
【請求項5】
前記カセットから取り出されて落下する薬剤を検出する薬剤検出センサをさらに備え、
前記制御部は、薬剤が詰まることで、前記薬剤検出センサによって薬剤を検出することができない場合であって、前記ロータを、前記第一回転方向に回転させても、前記ロータの前記第一回転方向への回転を開始してから、または、前記薬剤検出センサによって一つ前の薬剤を既に検出しているときはその薬剤を検出したときから、所定時間、前記薬剤検出センサによって薬剤を検出することができない場合、前記ロータを、前記第二回転方向に回転させる、請求項1記載の薬剤取出装置。」

第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1ないし5に係る特許に対して平成29年11月30日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

1 取消理由1
請求項1に係る発明は、甲第3号証(以下「甲3」という。他の証拠についても同じ。)に記載された発明であるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。

甲3:特開2006-230763号公報

2 取消理由2
請求項1?3及び5に係る特許は、以下のとおり、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
(1)請求項1に係る発明は、甲1記載の発明及び甲2記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、又は、先行技術(甲1ないし10)の単なる寄せ集めであり、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内でなされたものである。
(2)請求項2に係る発明は、甲1記載の発明並びに甲2及び甲4記載の事項に基づいて、又は、甲3記載の発明及び甲4記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)請求項3に係る発明は、甲1記載の発明並びに甲2及び甲5記載の事項に基づいて、又は、甲3記載の発明及び甲5記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)請求項5に係る発明は、甲1記載の発明、甲2及び甲4記載の事項に基づいて、又は、甲3記載の発明及び甲4記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

甲1:国際公開第03/042042号
甲2:特開2000-103404号公報
甲3:特開2006-230763号公報
甲4:国際公開第01/60726号
甲5:特許第4574749号公報
甲6:特開2007-82622号公報
甲7:特開2001-233306号公報
甲8:特開2006-240738号公報
甲9:特開2011-41789号公報
甲10:特開2011-79642号公報

3 取消理由3
請求項4及び5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第5 取消理由1についての判断
1 甲3の記載
(1)甲3に記載された事項
甲3には、「錠剤充填装置」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】
錠剤が収容されるカセット本体内に、錠剤を保持する溝を形成されたロータを回転可能に設け、前記溝に保持した錠剤を排出する排出口を前記カセット本体に形成し、前記カセット本体の底から突出する前記ロータの軸に固定したギアと噛合するウォームギアを前記カセット本体に設けた錠剤カセットと、
錠剤容器を保持して取り出すべき錠剤が収容された錠剤カセットに接近し、前記ウォームギアに係合して前記ギアを介して前記ロータを回転させる駆動軸を備えた搬送部材とを備えた錠剤充填装置であって、
前記ウォームギアをその軸方向に移動可能に設け、
前記搬送部材により錠剤容器を前記錠剤カセットまで搬送し、錠剤の払出途中で、前記ロータの回転が停止した場合、前記搬送部材の駆動軸により前記ウォームギアを軸方向に移動させて前記ロータを逆回転させることを特徴とする錠剤充填装置。」

イ 「【0004】
そこで、本発明は、メンテナンスを行う前に、自動的に錠剤の詰まりを解消することのできる錠剤充填装置を提供することを課題とする。」

ウ 「【0016】
錠剤フィーダ11は、図6に示すように、錠剤カセット12内にロータ13を収容したものである。ロータ13を回転させると、収容した錠剤を1錠ずつ払い出すことが可能となっている。」

エ 「【0044】
前記制御装置63は、ホストコンピュータ等から入力される処方データ(医師によって処方箋に記載された内容や患者に関するデータ等)に基づいて、容器供給ユニット1、ラベリングユニット2、錠剤供給ユニット3、キャッピングユニット4、搬送部材5、及び、取出ユニット6を駆動制御する。」

オ 「【0049】
続いて、進退用モータ49を駆動し、水平スライダ45を前進させる(ステップS12)。これにより、ロッド45dが前進してカバー10bを開放し、突片45cが係合部16aに係合する。またこのとき、ロッド50も前進し、その係止ピン51が錠剤フィーダ11のウォームギア23に形成した係止受部27に係止する。ガイド溝28は螺旋状に形成されているため、係止ピン51はスムーズにガイド溝28に進入し、係止受部27に位置決めされる。ここで、ロッド50を回転し、ウォームギア23、中間ギア22、従動ギア33を介してロータ13を回転させる(ステップS13)。これにより、ロータ13の溝内で仕切部材21のブラシ部21aによって分離された下方側に位置する錠剤が錠剤排出口19を介して落下する。・・・」

カ 「【0050】
ところで、錠剤フィーダ11からバイアル瓶9への錠剤充填作業中に、錠剤が詰まる等の不具合によりロータ13の回転が停止することがある。この場合、錠剤には、錠剤排出口19の内縁とロータ13の溝との間に挟まれる等により力が作用する。しかしながら、ウォームギア23がスプリング26で付勢された状態で軸方向にスライド移動可能となっている。このため、錠剤が損傷に至る前にウォームギア23が移動し、錠剤に作用する力が緩和される。またこのとき、モータに過電流が流れ、ロータ13の回転が停止したことが検出される。そこで、この検出信号に基づいて(ステップS18)、水平スライダ45を移動させてロッド50を後退させることにより、ウォームギア23をスプリング26の付勢力に抗して移動させる(ステップS19)。これにより、ウォームギア23の移動分に応じて中間ギア22を介して従動ギア33及びロータ13が逆回転し、錠剤の詰まりが解消される。・・・」

(2)甲3に記載された発明
上記記載事項ア?カを、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて、本件発明1に照らして整理すると、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。

「錠剤が収納され、内部にロータ13が設けられ、前記ロータ13を回転させることで、錠剤を払い出すことができる錠剤カセット12と、
前記ロータ13を回転させるロッド50と、
前記ロッド50を制御する制御装置63とを備え、
前記ロータ13と前記ロッド50との間の動力伝達経路には、錠剤に錠剤排出口19の内縁と前記ロータ13の溝との間に挟まれる等により力が作用すると、スプリング26で付勢された状態で軸方向にスライド移動するウォームギア23が介在し、
しかも前記制御装置63は、前記ロータ13を、錠剤が排出されるときの前記ロータ13の回転方向と、前記ロータ13の逆回転方向とに回転させるように、前記ロッド50を制御し、
錠剤フィーダ11からバイアル瓶9への錠剤充填作業中に、錠剤が詰まった場合、前記ウォームギヤ23がスプリング26で付勢された状態で軸方向にスライド移動し、前記ロータ13を前記逆回転方向に回転させるように、前記ロッド50を後退させることで、錠剤の詰まりを解消する、錠剤充填装置。」

2 本件発明1と甲3発明との対比・判断
本件発明1と甲3発明を対比すると以下のとおりである。
甲3発明の「錠剤」が本件発明1の「薬剤」に相当することは技術常識に照らして明らかであり、以下同様に、それぞれの機能及び技術常識を踏まえれば、「錠剤を払い出すことができる錠剤カセット12」は「薬剤を取出すことができるように構成されるカセット」に、「制御装置63」は「制御部」に、「錠剤が排出されるときの前記ロータ13の回転方向」は「第一回転方向」に、「ロータ13の逆回転方向」は「第一回転方向と反対の第二回転方向」に、「錠剤充填装置」は「薬剤取出装置」に相当することも明らかである。

また、甲3発明の「ロッド50」は、本件発明1の「モータ」と「回転動力源」である限りにおいて共通する。
そうすると、甲3発明の「スプリング26で付勢された状態で軸方向にスライド移動するウォームギア23」であって「ロータ13を前記逆回転方向に回転させるように、前記ロッド50を後退させる」「ウォームギア23」は、その機能及び技術常識を踏まえれば、本件発明1の「モータからの動力を遮断する動力遮断部」と、「回転動力源からの動力を遮断する動力遮断部」である限りにおいて共通する。
また、動力遮断部に関して、甲3発明の「錠剤に錠剤排出口19の内縁と前記ロータ13の溝との間に挟まれる等により力が作用する」は、本件発明1の「前記ロータと前記モータとの間に設定トルクを超えるトルクが生じる」と、「前記ロータと前記回転動力源との間に設定トルクを超えるトルクが生じる」の限りにおいて共通する。
さらに、甲3発明の「錠剤フィーダ11からバイアル瓶9への錠剤充填作業中に」は、本件発明1の「前記制御部が、前記ロータを前記第一回転方向に回転させるように、前記モータを制御しているときに」と、「前記制御部が、前記ロータを前記第一回転方向に回転させるように、前記回転動力源を制御しているときに」である限りにおいて共通する。

したがって、本件発明1と甲3発明とは、以下の点で一致しているということができる。

<一致点>
「薬剤が収納され、内部にロータが設けられ、前記ロータを回転させることで、薬剤を取出すことができるように構成されるカセットと、
前記ロータを回転させる回転動力源と、
前記回転動力源を制御する制御部とを備え、
前記ロータと前記回転動力源との間の動力伝達経路には、前記ロータと前記回転動力源との間に設定トルクを超えるトルクが生じると、前記回転動力源からの動力を遮断する動力遮断部が介在し、
しかも前記制御部は、前記ロータを、第一回転方向と、前記第一回転方向と反対の第二回転方向とに回転させるように、前記回転動力源を制御し、
前記制御部が、前記ロータを前記第一回転方向に回転させるように、前記回転動力源を制御しているときに、薬剤が詰まった場合、前記動力遮断部が、前記回転動力源からの動力を遮断し、前記ロータを前記第二回転方向に回転させることで、薬剤の詰まりを解消する、薬剤取出装置。」

そして、本件発明1と甲3発明とは、以下の点で相違する。
<相違点>
本件発明1は、回転動力源がモータであり、薬剤の詰まりの解消につき、動力遮断部がモータからの動力を遮断し、この後、制御部がロータを前記第二回転方向に回転させるようにモータを制御するのに対して、
甲3発明は、回転動力源がロッド50であり、錠剤の詰まりの解消につき、ウォームギヤ23がスプリング26で付勢された状態で軸方向にスライド移動し、ロータ13を逆回転方向に回転させるように、ロッド50を後退させるものであって、ロッド50からの動力(第一回転方向)の遮断は、ロッド50の後退及びロータ13の逆回転方向(第二回転方向)への回転の結果としてなされる点。

以上のとおり、本件発明1は、甲3発明であるということはできない。

3 小括
よって、本件発明1に係る特許は、取消理由1によって取り消すことはできない。

第6 取消理由2についての判断
1 引用文献の記載
(1)甲1
(1-1)甲1に記載された事項
甲1には、「薬剤フィーダ」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 1ページ6?18行
「背景技術
従来、錠剤フィーダとして、モータが設けられるケース支持台と、このケース支持台に着脱可能な錠剤収容ケースとで構成されるものがある。この種の薬剤フィーダでは、前記モータを駆動すると、複数のギアを介して錠剤収容ケース内に配設したロータが回転し、そのポケットに保持した錠剤をケース支持台の排出部から排出可能である。
しかしながら、前記従来の構成では、錠剤が詰まってロータの回転が妨げられると、錠剤が損傷するか、あるいは、モータが焼損する恐れがある。
発明の開示
そこで、本発明は、簡単な構成であるにも拘わらず、薬剤等の詰まりが原因で発生する不具合を的確に防止することのできる薬剤フィーダを提供することを課題とする。」

イ 3ページ25行?4ページ5行
「薬剤フィーダ1は、図2に示すように、錠剤供給装置2に設けられるケース支持台3と、このケース支持台3に着脱自在な錠剤収容ケース4とから構成される。
ケース支持台3は、上面に所定間隔でガイド部5が並設されている。また、ケース支持台3の内部には、図示しない制御装置からの制御信号に基づいて駆動制御されるモータ6が収容されている。モータ6の回転軸は、ケース支持台3の上面に突出し、突出部分には駆動ギア7が一体化されている。また、ケース支持台3には排出通路3aが形成され、そこには通過する錠剤を検出するためのセンサ14が設けられている。
錠剤収容ケース4は、略箱状で、上面が蓋体8によって開閉可能となっている。錠剤収容ケース4の底壁上面は略円錐状に形成され、そこにはロータ9が配設されている。」

ウ 5ページ2?11行
「すなわち、モータ6を駆動すると、駆動ギア7を介して従動ギア13に動力が伝達される。従動ギア13から取付部材15へは、両部材の間に介在するリング部材17との摩擦力を介して動力が伝達される。したがって、駆動ギア7の回転により、リング部材17を介して取付部材15、従動ギア13及びロータ9が回転し、そのポケット部10に保持された錠剤が順次排出通路3aから排出される。・・・
ここで、例えば、錠剤が詰まってロータ9の回転が妨げられ、ロータ9に制動力が作用すると、取付部材15と従動ギア13との間に滑りが生じ、モータ6の駆動力が遮断される。」

エ 7ページ3?11行(請求の範囲、請求項1)
「1 . ケース支持台に設けたモータを駆動し、複数のギアを介して前記ケース支持台に支持した薬剤収容ケース内のロータを回転させ、前記薬剤収容ケース内に収容した薬剤を、前記ロータの各ポケット部に保持して前記ケース支持台の排出部に移動させ、該排出部から薬剤を排出するようにした薬剤フィーダにおいて、前記ギアを、前記モータの回転軸に連結される駆動ギアと、該駆動ギアに噛合する従動ギアとで構成し、
前記モータから前記両ギアを介して前記ロータに至る動力伝達経路のいずれかに、前記ロータに所定値以上の制動力が作用すると、前記モータからの動力を遮断する動力遮断部を設けたことを特徴とする薬剤フィーダ。」

(1-2)甲1に記載された発明
上記記載事項ア?エを、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて、本件発明1に照らして整理すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「薬剤が収納され、内部にロータ9が設けられ、前記ロータ9を回転させることで、薬剤を取り出すことができるように構成される錠剤収容ケース4と、
前記ロータ9を回転させるモータ6と、
前記モータ6を制御する制御装置とを備え、
前記ロータ9と前記モータ6との間の動力伝達経路には、前記ロータ9に所定値以上の制動力が作用すると、前記モータ6からの動力を遮断する動力遮断部が介在し、
前記制御装置が、前記ロータ9を第一回転方向に回転させるように、前記モータ6を制御しているときに、薬剤が詰まった場合、前記動力遮断部が、前記モータ6からの動力を遮断する、薬剤フィーダ。」

(2)甲2
(2-1)甲2に記載された事項
甲2には、「薬剤供給装置」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来では前述の如く錠剤詰まりが生じた場合、異常表示を行って運転を停止するのみであったため、特に多数種の薬剤を供給するものでは、錠剤詰まりの発生する回数も多くなり、調剤運転効率が著しく悪化してしまう問題があった。
【0005】本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、調剤運転の効率を改善することができる薬剤供給装置を提供するものである。」

イ 「【0008】・・・薬剤詰まりが生じた場合には、モータを逆転させてから正転させるので、係るモータの逆転・正転によって排出ドラムを逆転・正転させ、引っかかった薬剤を落とすことができるようになる。」

ウ 「【0048】・・・薬剤供給装置1の制御装置76は、当該処方データに基づいて指定された薬剤が収納されたタブレットケース3或いは4のモータ61を制御回路77により正転させ、排出ドラム53を回転(正転)させて溝内の薬剤を一個ずつ通路30に排出する。」

エ 「【0051】・・・制御装置76は過電流検出回路78によりモータ61への通電電流から係るロック状態を検知する。そして、図15のタイミングチャートに示す如く、係るロック状態が発生した時点で制御回路77によりモータ61を短い期間で逆転させ、排出ドラム53を逆転させる。次に、同じく短い期間でモータ61を正転させ、排出ドラム53を正転させる。」

オ 「【0057】
【発明の効果】・・・薬剤詰まりが生じた場合には、モータを逆転させてから正転させるので、係るモータの逆転・正転によって排出ドラムを逆転・正転させ、引っかかった薬剤を落とすことができるようになる。」

(2-2)甲2事項
上記記載事項ア?オを、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、甲2には、次の事項(以下「甲2事項」という。)が記載されていると認められる。

「制御装置76は、排出ドラム53を正転方向と逆転方向とに回転させるようにモータ61を制御し、制御装置76が、排出ドラム53を逆転方向に回転させるようにモータ61を制御することで、薬剤の詰まりを解消する、薬剤供給装置。」

(3)甲3
甲3には、上記第5の1(2)に記載したとおりの発明が記載されている。

(4)甲4
(4-1)甲4に記載された事項
甲4には、「薬剤供給装置」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 1ページ21?26行
「本願の第1の目的は、タブレツ卜ケースからの薬剤排出時の異常検出である。なお、異常状態検出に関しては、特願平10-275656号にて、本願発明者が提案済みである。しかし、この出願では、異常状態である薬剤詰まリをモータに流れる通過電流に基づいて検出している。本願は、簡単な構成で異常状態を検出することを目的とする。」

イ 6ページ10?18行
「第2図、第3図において、赤外発光素子30は、受光素子31方向に赤外線を照射している。排出された薬剤が通過路32を通過すると、薬剤により赤外光が部分的に遮断され、受光素子31に到達する光量が減少する。錠剤15の通過により、受光素子31に到達する光が全て遮断されるわけではない。
従って、受光素子31から受光信号の出力レベルは、アナログ的に変化する。この受光信号は、第9図の制御基板部8に出力される。制御基板部8はこの受光信号レベルの変化を監視することにより、薬剤の通過(排出)を検知し、排出された薬剤の個数をカウン卜する。」

ウ 7ページ14?21行
「排出ドラム13は、速く回転させれば短い間隔で錠剤を排出し、遅く回転させれば長い間隔で錠剤を排出する。・・・
錠剤が排出ドラムに詰まり排出ドラムの回転が拘束された場合は、モータの逆転により、錠剤の詰まりが解消される可能性が高い。」

エ 10ページ3?10行(請求の範囲、請求項1)
「1 . 薬剤を収納する収納容器から薬剤を排出する排出ドラムを有するタブレットケース(1)と、前記排出ドラムを駆動するモータと、このモー夕の運転を制御する制御手段と、前記タブレツ卜ケース(1)からの薬剤の排出を検知する排出検知手段とを備える薬剤供給装置において、
前記制御手段は、薬剤を排出するために前記モータを回転させても前記排出検知手段が正常状態の薬剤排出を検出しない場合に、前記モータを逆転させることを特徴とする薬剤供給装置。」

(4-2)甲4事項
上記記載事項ウ及びエより、甲4には、次の事項(以下「甲4-1事項」という。)が記載されていると認められる。

「制御手段は、排出ドラム13の回転速度を変更することが可能であること。」

また、上記記載事項イ及びエより、甲4には、次の事項(以下「甲4-2事項」という。)が記載されていると認められる。

「タブレットケース1からの薬剤の排出を検知する排出検知手段を備え、制御手段は、薬剤を排出するためにモータを回転させても、前記排出検知手段が正常状態の薬剤排出を検出しない場合に、モータを逆転させること。」

さらに、上記記載事項アより、甲4には、次の事項(以下「甲4-3事項」という。)が記載されていると認められる。

「発明の解決しようとする課題は、薬剤の詰まりを検出すること。」

(5)甲5
(5-1)甲5に記載された事項
甲5には、「薬剤フィーダ及び薬剤払出装置」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【請求項2】
前記逆転伝達経路は、正転伝達経路に比べ減速比が大であることを特徴とする請求項1に記載の薬剤フィーダ。」

イ 「【0004】
錠剤の詰まりの発生を検知した場合にその詰まり状態を解除する方法として、ロータを駆動する直流モータの電流が一定以上の過電流となったことを検知すると、これを錠剤の詰まりによってモータがロックしたと判断し、ロータを一時的に逆転させる方法が知られている(特許文献2)。」

ウ 「【0009】
そこで、この発明の課題は、薬剤フィーダ及びこれを搭載した薬剤払出装置において、払出カセットのロータを駆動する駆動装置に改良を加えることにより、錠剤の詰まりを検知した場合にモータを逆転させることなく、モータは正転のままロータのみを逆転させることによって錠剤の詰まりを解消できるようにすることである。」

エ 「【0040】
逆転伝達時においては、図10に示したように、第2中間歯車50の大径部50aを前段の第1中間歯車49に噛み合わせ、その小径部50bを後段の出力歯車44に噛み合わせていることにより、図8に示した正転伝達時に比べ、小径部50bとこれより大径の出力歯車44との噛み合いによる減速部が1段多くなる。このため、正転伝達時に比べ逆転伝達時の方が大きな減速比が得られ、同時に相対的に大きな逆転トルクが得られる。」

(5-2)甲5事項
上記記載事項ア及びエより、甲5には、次の事項(以下「甲5-1事項」という。)が記載されていると認められる。

「逆転伝達経路は、正転伝達経路に比べ減速比が大きいこと。」

また、上記記載事項イ及びウより、甲5には、次の事項(以下「甲5-2事項」という。)が記載されていると認められる。

「発明の解決しようとする課題は、薬剤の詰まりを解消すること。」

(6)甲6
甲6には、「錠剤供給装置」に関して、以下の事項が記載されている。

「【0002】
・・・薬剤詰まりが生じた場合、ロータを逆転させてから正転させることにより、この薬剤詰まりを解消するようにしている(例えば、特許文献1乃至4参照)。」

上記記載事項より、甲6には、次の事項(以下「甲6事項」という。)が記載されていると認められる。

「薬剤取出装置の分野において、薬剤の詰まりを解消するために、ロータを逆転すること。」

(7)甲7
甲7には、「薬剤供給装置及びタブレットケース収納装置」に関して、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】 薬剤を収納する収納容器から薬剤を排出する排出ドラムを有するタブレットケース(1)と、前記排出ドラムを駆動するモータと、このモータの運転を制御する制御手段と、前記タブレットケース(1)からの薬剤の排出を検知する排出検知手段とを備える薬剤供給装置において、
前記制御手段は、薬剤を排出するために前記モータを回転させても前記排出検知手段が薬剤の排出を検出しない場合に、前記モータを逆転させてから正転させることを特徴とする薬剤供給装置。」

上記記載事項より、甲7には、次の事項(以下「甲7事項」という。)が記載されていると認められる。

「薬剤取出装置の分野において、薬剤の詰まりを解消するために、ロータを逆転すること。」

(8)甲8
甲8には、「バイアル瓶キャッピング装置およびバイアルの瓶キャッピング方法」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【0009】
・・・ また、前記キャップ及びバイアル瓶の少なくとも一方を回転させる為の締め付けモータと前記キャップまたは前記バイアル瓶までの間にトルクリミッターを備えるとモータの損傷を防止できる。」

イ 「【0012】
また、前記装着モータから前記キャップまたは前記キャップ装着リングまでの回転伝達経路にトルクリミッターを備えると、キャップ装着リングにキャップを適切なトルクで装着でき、モータの損傷を防止できる。」

ウ 「【0020】
・・・トルクリミッターを備えれば、キャップを必要以上に締め付けてキャップを破損させたり、モータを焼損させることがない。」

上記記載事項ア?ウより、甲8には、次の事項(以下「甲8事項」という。)が記載されていると認められる。

「薬剤取出装置の分野において、動力伝達経路にトルクリミッタを設けること。」

(9)甲9
甲9には、「薬剤払出装置及び薬剤払出方法」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0076】
・・・モータ136から従動プレート141に至るまでの動力伝達経路のいずれかに(例えば、従動ギア139の回転軸)にトルクリミッター等を設けるようにするのが好ましい。これにより、駆動機構134により開閉扉102を閉鎖位置に回動させる際、カセット本体101側に必要以上の負荷が作用せず、損傷することを防止することができる。」

上記記載事項より、甲9には、次の事項(以下「甲9事項」という。)が記載されていると認められる。

「薬剤取出装置の分野において、動力伝達経路にトルクリミッタを設けること。」

(10)甲10
甲10には、「自動薬剤供給装置」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【0014】
また、前記開閉カバーに作用する開閉トルクが所定値以上になった場合に、前記開閉カバーへの前記開閉トルクの作用を中止するトルクリミッタが設けられていることを特徴としている。
この構成によれば、開閉カバーの開閉動作時に、開閉カバーと取出口との間に、万が一物等が挟まった場合であっても、開閉カバーがそれを噛み込んでしまったり、開閉カバーに過負荷がかかることで開閉カバーが故障したり、物が損傷したりすることもない。」

イ 「【0065】
また、開閉カバー68のモータにはトルクリミッタが連結されているため、シャフト78に作用するトルクが所定値以上になった場合に、モータが逆回転するようになっている。そのため、開閉カバー68の閉動作時に、開閉カバー68と薬剤取出口67との間に、万一物等が挟まった場合であっても、開閉カバー68がそれを噛み込んで、開閉カバー68に過負荷がかかることで開閉カバー68が故障したり、物が損傷したりすることがない。」

上記記載事項ア及びイより、甲10には、次の事項(以下「甲10事項」という。)が記載されていると認められる。

「薬剤取出装置の分野において、動力伝達経路にトルクリミッタを設けること、またトルクが所定値以上になったときにモータを逆転させること。」

2 本件発明1について
(1)甲1発明との対比・判断
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると以下のとおりである。
甲1発明の「錠剤収容ケース4」が本件発明1の「カセット」に相当することは、その機能及び技術常識を踏まえれば明らかであり、以下同様に、「制御装置」は「制御部」に、「前記ロータ9に所定値以上の制動力が作用すると」は「前記ロータと前記モータとの間に設定トルクを超えるトルクが生じると」に、「薬剤フィーダ」は「薬剤取出装置」に相当することも明らかである。

したがって、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致しているということができる。

<一致点>
「薬剤が収納され、内部にロータが設けられ、前記ロータを回転させることで、薬剤を取出すことができるように構成されるカセットと、
前記ロータを回転させるモータと、
前記モータを制御する制御部とを備え、
前記ロータと前記モータとの間の動力伝達経路には、前記ロータと前記モータとの間に設定トルクを超えるトルクが生じると、前記モータからの動力を遮断する動力遮断部が介在し、
前記制御部が、前記ロータを前記第一回転方向に回転させるように、前記モータを制御しているときに、薬剤が詰まった場合、前記動力遮断部が、前記モータからの動力を遮断する、薬剤取出装置。」

そして、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1の制御部は、ロータを、第一回転方向と、第一回転方向と反対の第二回転方向とに回転させるように、モータを制御するものであるのに対して、甲1発明は、ロータ9を逆方向に回転させる構成を備えていないこと。

<相違点2>
本件発明1は、制御部が、ロータを第一回転方向に回転させるように、モータを制御しているときに、薬剤が詰まった場合、動力遮断部が、モータからの動力を遮断し、この後、制御部が、ロータを第二回転方向に回転させるように、モータを制御することで、薬剤の詰まりを解消するのに対して、
甲1発明は、薬剤が詰まった場合、動力遮断部が、モータ6からの動力を遮断するにとどまる点。

イ 相違点についての判断
(ア)本件発明の技術的意義
相違点1及び2の検討に先立って、本件発明の技術的意義について検討する。
まず、発明が解決しようとする課題について、本件明細書等のうち、特に、段落【0002】?【0008】【0011】【0069】の記載に照らせば、以下のものと認める。
すなわち、従来、モータを逆転させる構成(「錠剤の詰まりが解消される」)を備えた薬剤取出装置では、薬剤が「きつく詰まる」場合がある。また、動力遮断部(「薬剤の損傷等を防止」)を備えた薬剤取出装置では、薬剤が「きつく詰まる」ことを回避できる(当然に「薬剤の損傷」も回避できる。)が、一旦、薬剤の「詰まり」(「きつく詰まる」まで至らない軽度の詰まり)が発生した場合には、その「詰まり」そのものを解消することはできない。したがって、本件発明は、モータを逆転させる構成では必ずしも解消することのできない「きつく詰まる」ことを回避(防止)しつつ、薬剤の「詰まり」があった場合には、その「詰まり」を解消することとし、もって、薬剤の「詰まり」を「確実に解消する」ことができる薬剤取出装置を提供することを課題とする。
次に、課題解決手段について、本件明細書等の記載によれば、以下のとおりであると認める。
すなわち、本件発明は、回転動力源としてのモータと、モータから伝達される回転力が所定値を超えると回転力の伝達を制限するトルクリミッタと、トルクリミッタに接続されて回転することが可能なロータとを備え、ロータを第一回転方向及び第一回転方向と反対の第二回転方向とに回転させることが可能であるように構成された薬剤取出装置を前提構成とし、かかる前提構成において、
トルクリミッタにつき、薬剤が「詰まって」ロータの回転抵抗が大きくなったときに、薬剤が「きつく詰まる」ことを防止できるように構成するとともに、第一回転方向と反対の第二回転方向の回転につき、薬剤が「詰まった」場合にはロータを逆方向に回転させるようにすることを課題解決手段とする(段落【0009】?【0011】【0067】?【0069】)。
なお、薬剤取出装置の前提構成となる「ロータを第一回転方向及び第一回転方向と反対の第二回転方向とに回転させる」については、図24及び図25のフローチャートを用いて具体的に説明がなされている(段落【0064】?【0066】)。

以上を踏まえると、本件発明の技術的意義は、「前記ロータと前記モータとの間の動力伝達経路には・・・動力遮断部が介在し」「前記制御部は、前記ロータを、第一回転方向と、前記第一回転方向と反対の第二回転方向とに回転させるように、前記モータを制御」する「薬剤取出装置」において、「前記制御部が、前記ロータを前記第一回転方向に回転させるように、前記モータを制御しているときに、薬剤が詰まった場合、前記動力遮断部が、前記モータからの動力を遮断し、この後、前記制御部が、前記ロータを前記第二回転方向に回転させるように、前記モータを制御すること」によって、上記課題を解決することであると認められる。

(イ)相違点1及び2の容易想到性の総合的検討
上記(ア)における本件発明の技術的意義を踏まえ、相違点1及び2の容易想到性を総合的に検討する。
上記アのとおり、甲1には、薬剤が詰まった場合に、モータからの動力を遮断する動力遮断部が記載されているが、ロータを逆転させる構成は記載されていない。この点、甲2には、ロータを逆転させる構成は記載されているものの(甲2事項)、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は記載されていない。
そうすると、仮に甲1発明と甲2事項を組み合わせたとしても、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項には、到達することはない。

なお、他の甲号証については、甲4、5、6及び7には、ロータを逆転させる構成が、甲8及び9には、動力遮断部がそれぞれ記載されているにとどまる。
また、甲3については、動力遮断部(ロッド50を後退させるウォームギア23)及びロータを逆転させる構成の両方を備える構成が記載されているものの(上記第5の1(2))、上記第5の2で示したとおり、甲3発明は、回転動力源たるロッド50からの動力(第一回転方向)の遮断は、ロッド50の後退及びロータ13の逆回転方向(第二回転方向)への回転の結果としてなされるものであって、制御部たる制御装置63により、動力遮断の後に、ロータを逆回転するように制御するものではないから、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とは異なるものである。
さらに、甲10については、単に、動力遮断部とロータを逆転させる構成が記載されているにとどまる。
そうすると、甲1ないし甲10をどのように組み合わせたとしても、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項には、到達することはない。

よって、相違点1及び2に係る本件発明1の発明特定事項を想到容易とすることはできない。

ウ 小括
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)先行技術の単なる寄せ集め
上記(1)イ(イ)のとおり、甲1ないし甲10をどのように組み合わせたとしても、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項には、到達することはない。
したがって、本件発明1は、先行技術(甲1ないし10)の単なる寄せ集めであるとはいえない。

(3)まとめ
よって、本件発明1に係る特許は、取消理由2によって取り消すことはできない。

3 本件発明2について
本件発明2は、実質的に、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に「前記制御部は、前記ロータの第一または第二回転方向の回転速度を変更することが可能である」との限定を付すものである。
そして、本件発明1に係る特許を取消理由2によって取り消すことができないことは、上記2で説示したとおりである。したがって、本件発明2に係る特許も、取消理由2によって取り消すことはできない。

4 本件発明3について
本件発明3は、実質的に、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に「前記第一回転方向の回転速度は、前記第二回転方向の回転速度よりも速い」との限定を付すものである。
そして、本件発明1に係る特許を取消理由2によって取り消すことができないことは、上記2で説示したとおりである。したがって、本件発明3に係る特許も、取消理由2によって取り消すことはできない。

5 本件発明5について
本件発明5は、実質的に、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に「薬剤検出センサ」に係る事項についての限定を付すものである。
そして、本件発明1に係る特許を取消理由2によって取り消すことができないことは、上記2で説示したとおりである。したがって、本件発明5に係る特許も、取消理由2によって取り消すことはできない。

6 申立人の意見について
申立人は、平成30年3月6日付け意見書にて、主として、本件発明が進歩性を有していない旨主張しているところ、当該主張は、上記第4の取消理由2と実質的に相違せず、また、上記第6で示したとおり、当該取消理由によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
したがって、申立人の上記主張は、当審の判断を左右するものではない。

第7 取消理由3についての判断
本件訂正請求による訂正により、制御部による回転動力源の制御につき、ついて、訂正前における請求項1と請求項4との関係が明瞭になるとともに、訂正前における「薬剤を検出することができない場合」の内容が明瞭になったことから、取消理由3は解消した。

第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が収納され、内部にロータが設けられ、前記ロータを回転させることで、薬剤を取出すことができるように構成されるカセットと、
前記ロータを回転させるモータと、
前記モータを制御する制御部とを備え、
前記ロータと前記モータとの間の動力伝達経路には、前記ロータと前記モータとの間に設定トルクを超えるトルクが生じると、前記モータからの動力を遮断する動力遮断部が介在し、
しかも前記制御部は、前記ロータを、第一回転方向と、前記第一回転方向と反対の第二回転方向とに回転させるように、前記モータを制御し、
前記制御部が、前記ロータを前記第一回転方向に回転させるように、前記モータを制御しているときに、薬剤が詰まった場合、前記動力遮断部が、前記モータからの動力を遮断し、この後、前記制御部が、前記ロータを前記第二回転方向に回転させるように、前記モータを制御することで、薬剤の詰まりを解消する、薬剤取出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ロータの第一または第二回転方向の回転速度を変更することが可能である、請求項1記載の薬剤取出装置。
【請求項3】
前記第一回転方向の回転速度は、前記第二回転方向の回転速度よりも速い、請求項1記載の薬剤取出装置。
【請求項4】
薬剤が収納され、内部にロータが設けられ、前記ロータを回転させることで、薬剤を取出すことができるように構成されるカセットと、
前記ロータを回転させるモータと、
前記モータを制御する制御部とを備え、
前記ロータと前記モータとの間の動力伝達経路には、前記ロータと前記モータとの間に設定トルクを超えるトルクが生じると、前記モータからの動力を遮断する動力遮断部が介在し、
しかも前記制御部は、前記ロータを、第一回転方向と、前記第一回転方向と反対の第二回転方向とに回転させるように、前記モータを制御し、
前記制御部が、前記ロータを、第一の時間、前記第一回転方向に回転させた後、第二の時間、前記第二回転方向に回転させるように、前記モータを制御して、前記ロータの回転方向を時間で切り換え、これによって、前記制御部が、前記ロータを前記第一回転方向に回転させるように、前記モータを制御しているときに、薬剤が詰まった場合、前記動力遮断部が、前記モータからの動力を遮断し、この後、前記制御部が、前記ロータを前記第二回転方向に回転させるように、前記モータを制御することで、薬剤の詰まりを解消する、薬剤取出装置。
【請求項5】
前記カセットから取り出されて落下する薬剤を検出する薬剤検出センサをさらに備え、
前記制御部は、薬剤が詰まることで、前記薬剤検出センサによって薬剤を検出することができない場合であって、前記ロータを、前記第一回転方向に回転させても、前記ロータの前記第一回転方向への回転を開始してから、または、前記薬剤検出センサによって一つ前の薬剤を既に検出しているときはその薬剤を検出したときから、所定時間、前記薬剤検出センサによって薬剤を検出することができない場合、前記ロータを、前記第二回転方向に回転させる、請求項1記載の薬剤取出装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-27 
出願番号 特願2011-192798(P2011-192798)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A61J)
P 1 651・ 121- YAA (A61J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 智弥  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 平瀬 知明
熊倉 強
登録日 2017-02-03 
登録番号 特許第6082964号(P6082964)
権利者 株式会社タカゾノテクノロジー
発明の名称 薬剤取出装置  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
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