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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
管理番号 1340123
異議申立番号 異議2017-700315  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-28 
確定日 2018-04-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6002672号発明「チャンバコンポーネントを接合するために使用される接着材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6002672号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の〔1-5〕、〔6-9〕について訂正することを認める。 特許第6002672号の請求項1?9に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6002672号の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成23年11月7日に出願され、平成28年9月9日にその特許権の設定登録がされ、平成29年3月28日に、その特許について、特許異議申立人福田旭洋により、特許異議の申立てがされ(以下、特許異議申立人を単に「申立人」ということもある。)、同年6月6日付けで取消理由が通知され、同年9月4日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して、同年10月4日に申立人から意見書が提出され、同年10月26日付けで取消理由が通知され、平成30年1月22日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して申立人から意見書は提出されなかったものである。
なお、平成29年9月4日の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、次のとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「ヤング率が300psi(=300lbf/in^(2)=2.07MPa)より低い接着材料を含み、前記接着材料は、伸びが150%を超える円盤形状の穴あきシートであり、前記接着材料は、セラミックス製ガス分配板と金属製導電性ベースプレートの間にガス通路を画定するように配置される、半導体チャンバコンポーネントを接合するのに適した接着材料。」を「ヤング率が300psi(=300lbf/in^(2)=2.07MPa)より低い接着材料を含み、前記接着材料は、伸びが150%を超える円盤形状の穴あきシートであり、前記接着材料は、セラミックス製ガス分配板と金属製導電性ベースプレートの間にガス通路を画定するように配置され、前記接着材料は、プラズマプロセス中における接合界面の熱膨張の不整合に起因する表面変動に順応することができ、前記穴あきシートは、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部と整列するように配置されている予め形成された複数の開口部を含み、前記複数の開口部は、中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部と、その周囲に規則的なパターンで配置されたガス通路のための複数の第2開口部とを含み、前記規則的なパターンは、グリッド、円形状配列、又は放射状パターンであり、前記セラミックス製ガス分配板の開口部、前記金属製導電性ベースプレートの開口部、及び前記穴あきシートの開口部は、直径が等しいか、又は前記穴あきシートの開口部の直径が、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び金属製導電性ベースプレートの開口部の直径よりも大きい、半導体チャンバコンポーネントを接合するのに適した接着材料。」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2?5も同様に訂正する。)。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6の「第2の表面に隣接して配置された第1の表面と、
前記第1の表面を前記第2の表面に接合する接着材料を含み、前記接着材料はヤング率が300psi(=300lbf/in^(2)=2.07MPa)よりも低く、前記接着材料は、伸びが150%を超える円盤形状の穴あきシートであり、前記第1の表面はセラミックス製ガス分配板であり、前記第2の表面は金属製導電性ベースプレートであり、前記接着材料は前記第1の表面と前記第2の表面の間にガス通路を画定するように配置される半導体チャンバコンポーネント。」を「第2の表面に隣接して配置された第1の表面と、
前記第1の表面を前記第2の表面に接合する接着材料を含み、前記接着材料はヤング率が300psi(=300lbf/in^(2)=2.07MPa)よりも低く、前記接着材料は、伸びが150%を超える円盤形状の穴あきシートであり、前記第1の表面はセラミックス製ガス分配板であり、前記第2の表面は金属製導電性ベースプレートであり、前記接着材料は前記第1の表面と前記第2の表面の間にガス通路を画定するように配置され、前記接着材料は、プラズマプロセス中における接合界面の熱膨張の不整合に起因する表面変動に順応することができ、前記穴あきシートは、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部と整列するように配置されている予め形成された複数の開口部を含み、前記複数の開口部は、中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部と、その周囲に規則的なパターンで配置されたガス通路のための複数の第2開口部とを含み、前記規則的なパターンは、グリッド、円形状配列、又は放射状パターンであり、前記セラミックス製ガス分配板の開口部、前記金属製導電性ベースプレートの開口部、及び前記穴あきシートの開口部は、直径が等しいか、又は前記穴あきシートの開口部の直径が、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部の直径よりも大きい半導体チャンバコンポーネント。」に訂正する。
(請求項6の記載を引用する請求項7?9も同様に訂正する。)。

ウ 訂正事項3
明細書段落0032の「図3は、穴あきシート300の形態の接着材料122を有する一実施形態のガス分配アセンブリ130の分解図を示している。穴あきシート300は、上述される接着材料122のような寸法的及び物理的特性を有することができる。穴あきシート300は、円盤形状を有することができ、実質的に、ガス分配板194と同じ直径を有することができる。穴あきシート300は、開口部134、154と整列するように配置されている予め形成された複数の開口部302を含む。複数の開口部302は、規則的なパターン(特に、グリッド、極座標配列、又は放射状パターンなど)で配置されることができる。開口部134、154、302の直径は、実質的に等しいか、又は開口部302の直径が開口部134、154の直径よりも僅かに大きく、これによってガス分配アセンブリ130を通過する流れは、最小の制限を有する。更に、開口部134、154、302は直径がほとんど又は全く違いのない同心円であるので、接着層を貫通する開口部の形状が、接着層が穴のあいた非シート形状ではないときに普及している楕円形又は他の非円形形状であるときにより可能性のある、開口部134、154、302が合うときにおける粒子やその他の潜在的な汚染物質の蓄積の可能性が最小となる。」を「図3は、穴あきシート300の形態の接着材料122を有する一実施形態のガス分配アセンブリ130の分解図を示している。穴あきシート300は、上述される接着材料122のような寸法的及び物理的特性を有することができる。穴あきシート300は、円盤形状を有することができ、実質的に、ガス分配板194と同じ直径を有することができる。穴あきシート300は、開口部134、154と整列するように配置されている予め形成された複数の開口部302を含む。複数の開口部302は、規則的なパターン(特に、グリッド、円形状配列、又は放射状パターンなど)で配置されることができる。開口部134、154、302の直径は、実質的に等しいか、又は開口部302の直径が開口部134、154の直径よりも僅かに大きく、これによってガス分配アセンブリ130を通過する流れは、最小の制限を有する。更に、開口部134、154、302は直径がほとんど又は全く違いのない同心円であるので、接着層を貫通する開口部の形状が、接着層が穴のあいた非シート形状ではないときに普及している楕円形又は他の非円形形状であるときにより可能性のある、開口部134、154、302が合うときにおける粒子やその他の潜在的な汚染物質の蓄積の可能性が最小となる。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
上記訂正事項1は、請求項1において、【0020】、【0028】、【0032】及び【図1】等の記載に基づき、
「接着材料」の特性について、「前記接着材料は、プラズマプロセス中における接合界面の熱膨張の不整合に起因する表面変動に順応することができ」と記載することで、「接着材料」の特性をさらに限定するものであり、「金属材料」の形態である「穴あきシート」について、「前記穴あきシートは、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部と整列するように配置されている予め形成された複数の開口部を含み、前記複数の開口部は、中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部と、その周囲に規則的なパターンで配置されたガス通路のための複数の第2開口部とを含み、前記規則的なパターンは、グリッド、円形状配列、又は放射状パターンであり、前記セラミックス製ガス分配板の開口部、前記金属製導電性ベースプレートの開口部、及び前記穴あきシートの開口部は、直径が等しいか、又は前記穴あきシートの開口部の直径が、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び金属製導電性ベースプレートの開口部の直径よりも大きい」と記載することで、「穴あきシート」の形態をさらに限定するものであるから、当該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正である。

イ 訂正事項2について
訂正事項には、請求項6において、【0020】、【0028】、【0032】及び【図1】等の記載に基づき、「接着材料」の特性について、「プラズマプロセス中における接合界面での熱膨張の不整合に起因する表面変動に順応することができ」る点を限定し、「穴あきシート」について、「前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部と整列するように配置されている予め形成された複数の開口部を含み、前記複数の開口部は、中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部と、その周囲に規則的なパターンで配置されたガス通路のための複数の第2開口部とを含み、前記規則的なパターンは、グリッド、円形状配列、又は放射状パターンであり、前記セラミックス製ガス分配板の開口部、前記金属製導電性ベースプレートの開口部、及び前記穴あきシートの開口部は、直径が等しいか、又は前記穴あきシートの開口部の直径が、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部の直径よりも大きい」との限定を加えるものであるから、当該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正である。

ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、明細書段落0032における「複数の開口部302」の配置である「規則的パターン」のうち、「極座標配列」を「円形状配列」と訂正するものである。
ここで、「極座標配列」という用語は、本件の原文明細書第10頁第17行(国際公開第2012/067883号の[0035]9行目))の「polar array」を翻訳したものと解される。
しかしながら、該「polar array」は、「a plurality of pre-formed apertures 302(複数の予め形成された開口部302)」の配置の一つを示す用語であるから、「極座標配列」という用語は、その開口部302の配置を、直接的に表現したものとはいえない。
一方、「polar array」という用語には、「円形状配列」という翻訳も存在する。
そうすると、「polar array」の翻訳である「極座標配列」という用語は、本来「円形状配列」と翻訳すべきものを「極座標配列」と誤訳して記載したものといえる。
したがって、当該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
そして、「極座標」とは、「xy座標平面の点Pを、原点(極)Oとの距離rと、OPがx軸となす角θとの組(r,θ)で表した座標。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」のことであり、訂正前の「複数の開口部302」の配置が、「極座標配列」であるとは、極座標〔xy座標平面の点Pを、原点(極)Oとの距離rと、OPがx軸となす角θとの組(r,θ)で表した座標〕において、距離rを一定にし、OPがx軸となす角θを複数設定することによって定められる配列、すなわち、円形状配列と解することができることから、訂正前の記載が訂正後の記載と同一の意味を表すものといえる。
そうすると、当該訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正である。

エ 一群の請求項について
訂正前の請求項1?5は、請求項2?5が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあり、訂正前の請求項6?9は、請求項7?9が、訂正の請求の対象である請求項6の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

(3)まとめ
上記「(2)ア?エ」より、上記訂正請求による訂正事項1?3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項で準用する同法第126条第4項から第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?5〕、〔6?9〕について訂正することを認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件特許の明細書の特許請求の範囲は、上記のとおり訂正が認められるから、本件特許の請求項1?9に係る発明(以下、項番に応じて、「本件特許発明1」などといい、まとめて「本件特許発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?9に記載された次のとおりのものである。なお、請求項1?9について、便宜的に分説して記載した。
「【請求項1】
A ヤング率が300psi(=300lbf/in^(2)=2.07MPa)より低い接着材料を含み、
B 前記接着材料は、伸びが150%を超える
C 円盤形状の穴あきシートであり、
D 前記接着材料は、セラミックス製ガス分配板と金属製導電性ベースプレートの間にガス通路を画定するように配置され、
X1 前記接着材料は、プラズマプロセス中における接合界面での熱膨張の不整合に起因する表面変動に順応することができ、
X2 前記穴あきシートは、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部と整列するように配置されている予め形成された複数の開口部を含み、
X3 前記複数の開口部は、中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部と、その周囲に規則的なパターンで配置されたガス通路のための複数の第2開口部とを含み、前記規則的なパターンは、グリッド、円形状配列、又は放射状パターンであり、
X4 前記セラミックス製ガス分配板の開口部、前記金属製導電性ベースプレートの開口部、及び前記穴あきシートの開口部は、直径が等しいか、又は前記穴あきシートの開口部の直径が、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部の直径よりも大きい、
E 半導体チャンバコンポーネントを接合するのに適した接着材料。
【請求項2】
F 前記接着材料はシリコーン系化合物である請求項1記載の材料。
【請求項3】
G 前記接着材料は熱応力が2MPa未満である請求項1記載の材料。
【請求項4】
H 前記接着材料は熱伝導率が0.1W/mK?5W/mKである請求項1記載の材料。
【請求項5】
I 前記接着材料は厚さが100μm?500μmである請求項1記載の材料。
【請求項6】
J 第2の表面に隣接して配置された第1の表面と、
K 前記第1の表面を前記第2の表面に接合する接着材料を含み、
L 前記接着材料はヤング率が300psi(=300lbf/in^(2)=2.07MPa)よりも低く、
M 前記接着材料は、伸びが150%を超える
N 円盤形状の穴あきシートであり、
O 前記第1の表面はセラミックス製ガス分配板であり、前記第2の表面は金属製導電性ベースプレートであり、
P 前記接着材料は前記第1の表面と前記第2の表面の間にガス通路を画定するように配置され
X11 前記接着材料は、プラズマプロセス中における接合界面での熱膨張の不整合に起因する表面変動に順応することができ、
X12 前記穴あきシートは、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部と整列するように配置されている予め形成された複数の開口部を含み、
X13 前記複数の開口部は、中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部と、その周囲に規則的なパターンで配置されたガス通路のための複数の第2開口部とを含み、前記規則的なパターンは、グリッド、円形状配列、又は放射状パターンであり、
X14 前記セラミックス製ガス分配板の開口部、前記金属製導電性ベースプレートの開口部、及び前記穴あきシートの開口部は、直径が等しいか、又は前記穴あきシートの開口部の直径が、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部の直径よりも大きい
Q 半導体チャンバコンポーネント。
【請求項7】
R 前記接着材料はシリコーン系化合物である請求項6記載の半導体チャンバコンポーネント。
【請求項8】
S 前記接着材料は熱応力が2MPa未満である請求項6記載の半導体チャンバコンポーネント。
【請求項9】
T 前記接着材料は熱伝導率が0.1W/mK?5W/mKであり、
U 厚さが100μm?500μmである請求項6記載の半導体チャンバコンポーネント。」

(2)訂正前の請求項に対する取消理由の概要
ア 平成29年6月6日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(ア)(進歩性)本件請求項1?9に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。



引用例1:特開2003-273202号公報(甲第1号証)
引用例2:国際公開第2009/078923号(甲第2号証)
引用例3:国際公開第2010/068635号(甲第3号証)
引用例4:特開2007-35878号公報(甲第4号証)

(イ)(サポート要件)本件請求項1?9に係る発明は、接着材料(122)のヤング率、伸び、熱応力、熱伝導率、厚さに関し、数値範囲を用いて規定された発明特定事項を含んでいる。
しかしながら、本件の発明の詳細な説明には、出願時の技術常識に照らしても、その数値の範囲内であれば課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は又は説明が記載されていないため、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
例えば、接着材料(122)のヤング率について、本件の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
「一実施形態では、接着材料122は、低ヤング率(例えば、300psi未満)を有するように選択される。低ヤング率を有する接着材料は、比較的適合しており、プラズマプロセス中における接合界面での表面変動に順応することができる。プラズマ処理中に、界面における表面は、プラズマ反応で発生した熱エネルギーにより膨張する可能性がある。したがって、2つの面204、206が2つの異なる材料(例えば、セラミックス製ガス分配板194と金属製導電性ベースプレート196)から構成される場合、界面に配置された接着材料122は、界面での熱膨張の不整合に順応するのに十分適合している。したがって、低ヤング率を有する接着材料122は、プラズマ処理中に低い熱応力を提供し、これによって界面での熱膨張の不整合に順応するために所望の適合性を提供する。一実施形態では、接着材料は、約2メガパスカル未満の熱応力を有するように選択される。」(【0028】)

すなわち、本件の発明の詳細な説明には、低ヤング率を有する接着材料は、プラズマプロセス中における接合界面での表面変動に順応することができる、という課題を解決できる(作用効果がある)ことは記載されている。しかしながら、本件の発明の詳細な説明には、接着材料のヤング率の具体的な値を示した実施例や実験例は一切記載されていない。そのため、本件の発明の詳細な説明には、本件特許発明1?9に規定されたように、接着材料のヤング率を300psi(=300lbf/in^(2)=2.07MPa)より低いという数値範囲内とすれば課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていないことは明らかである。

上述した他の指標値の数値範囲についても、同様に、本件の発明の詳細な説明には、該数値範囲内とすれば課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていない。

以上のことから、本件請求項1?9に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。したがって、本件特許発明1?9はサポート要件(特許法第36条第6項第1号)を満たさない。

イ 平成29年10月26日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(ア)(進歩性)本件請求項1?9に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。



引用例1:特開2003-273202号公報(甲第1号証)
引用例2:国際公開第2009/078923号(甲第2号証)
引用例3:国際公開第2010/068635号(甲第3号証)
引用例4:特開2007-35878号公報(甲第4号証)
周知例1:特開2007-194320号公報(申立人の平成29年10月4日提出の意見書に添付された参考資料1)
周知例2:特開2003-133401号公報(同参考資料2)
周知例3:特開2010-16363(同参考資料3)

(イ)(サポート要件)本件請求項1?9に係る発明は、接着材料のヤング率、伸び、熱応力、熱伝導率、厚さに関し、数値範囲を用いて規定された発明特定事項を含んでいる。
しかしながら、本件の発明の詳細な説明には、出願時の技術常識に照らしても、その数値の範囲内であれば課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は又は説明が記載されていないため、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
例えば、接着材料(122)のヤング率について、本件の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
「一実施形態では、接着材料122は、低ヤング率(例えば、300psi未満)を有するように選択される。低ヤング率を有する接着材料は、比較的適合しており、プラズマプロセス中における接合界面での表面変動に順応することができる。プラズマ処理中に、界面における表面は、プラズマ反応で発生した熱エネルギーにより膨張する可能性がある。したがって、2つの面204、206が2つの異なる材料(例えば、セラミックス製ガス分配板194と金属製導電性ベースプレート196)から構成される場合、界面に配置された接着材料122は、界面での熱膨張の不整合に順応するのに十分適合している。したがって、低ヤング率を有する接着材料122は、プラズマ処理中に低い熱応力を提供し、これによって界面での熱膨張の不整合に順応するために所望の適合性を提供する。一実施形態では、接着材料は、約2メガパスカル未満の熱応力を有するように選択される。」(【0028】)

すなわち、本件の発明の詳細な説明には、低ヤング率を有する接着材料は、プラズマプロセス中における接合界面での表面変動に順応することができる、という課題を解決できる(作用効果がある)ことは記載されている。しかしながら、本件の発明の詳細な説明には、接着材料のヤング率の具体的な値を示した実施例や実験例は一切記載されていない。そのため、本件の発明の詳細な説明には、本件特許発明1?9に規定されたように、接着材料のヤング率を300psi(=300lbf/in^(2)=2.07MPa)より低いという数値範囲内とすれば課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていないことは明らかである。

上述した他の指標値の数値範囲についても、同様に、本件の発明の詳細な説明には、該数値範囲内とすれば課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていない。

以上のことから、本件請求項1?9に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。したがって、本件特許発明1?9はサポート要件(特許法第36条第6項第1号)を満たさない。

なお、請求項中に課題を解決できる(作用効果がある)との記載が追加されたとしても、あいかわらず、本件の発明の詳細な説明には、その数値の範囲内(例えば、ヤング率が300psiより低い)であれば課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていないため、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できないことには変わりがない。

(ウ)(明確性要件)
a 請求項1及び6に記載された「規則的パターン」について、規則的なパターンで配置され)における「規則的なパターン」との記載は、発明の詳細な説明に定義が記載されておらず、出願時の技術常識でもないため、「規則的なパターン」の意味内容を理解できない。

b 請求項1及び6に記載された「実質的に等しい」および「僅かに大きい」について
上記発明特定事項X4、X14(前記セラミックス製ガス分配板の開口部、前記金属製導電性ベースプレートの開口部、及び前記穴あきシートの開口部は、直径が実質的に等しいか、又は前記穴あきシートの開口部の直径が、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部の直径よりも僅かに大きい)における「実質的に等しい」および「僅かに大きい」との記載は、範囲を不確定とさせる表現であり、その結果、発明の範囲が不明確となっている。

c 上記a、bのとおり、請求項1及び6及び請求項1又は6を、それぞれ引用する請求項2?5、7?9の記載は明確性要件(特許法第36条第6項第2号)を満たさない。

(3)引用例・周知例の記載(下線は当審が付与した。)
ア 引用例1
引用例1には、「半導体支持装置」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【請求項1】半導体を支持する平面を有する半導体支持部材、金属部材、および前記半導体支持部材と前記金属部材とを接合する接合層を備えている半導体支持装置であって、前記接合層が接着シートからなり、前記接着シートが、樹脂マトリックスおよびこの樹脂マトリックス中に分散されているフィラーを含むことを特徴とする、半導体支持装置。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体支持装置に関するものである。」
「【0006】本発明の課題は、半導体を支持する平面を有する半導体支持部材、金属部材、および半導体支持部材と金属部材とを接合する接合層を備えている半導体装置において、半導体支持部材の表面の平面度を向上させるのと共に、ウエハー表面の温度を制御可能とすることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、半導体を支持する平面を有する半導体支持部材、金属部材、および半導体支持部材と金属部材とを接合する接合層を備えている半導体支持装置であって、接合層が接着シートからなり、接着シートが、樹脂マトリックスおよびこの樹脂マトリックス中に分散されているフィラーを含むことを特徴とする。」
「【0012】また、前記接着シートのヤング率が100MPa以下であることが好ましく、接着シートの伸びが100%以上であることが好ましく、さらに150%以上であることがより好ましい。このように、接着シートの伸縮性が高いので、半導体支持部材と金属部材との間の気密性を保つことができる。また、接着シートが伸びることにより熱応力を逃がすことができる。従って、熱応力により接合後にそりが大きくなったり、接合面が剥離したりするのを防ぐことができる。」
「【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面を適宜参照しつつ、本発明を更に説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態において使用する半導体支持部材1を概略的に示す断面図であり、図1(b)は金属部材7の断面図である。図2は、金属部材7に接合されている接着シート4の拡大図である。
【0015】半導体支持部材1は、静電チャックであり、セラミックス製の基体2と、基体2内に埋設された静電チャック電極3とを備えている。電極3には端子6が接続されている。基体2の吸着面2aに半導体ウエハーを支持し、吸着する。また、半導体支持部材1には、半導体ウェハーを冷却するために、金属部材から導入されるバックサイドガスを供給するガス供給孔甲18aが設けられている。
【0016】本例の金属部材7は、冷却機能を有する冷却フランジである。冷却フランジ7にはガス供給孔乙18bが設けられており、ガス供給孔乙18bからバックサイドガス、例えばアルゴンガスや窒素ガスを供給可能となっている。また、金属部材7には、端子6を外部電源と接続するための端子接続孔20が設けられている。また、冷却フランジ7および半導体支持部材1には、半導体ウエハーを持ち上げるためのリフトピン用の貫通孔を形成できる(図示せず)。
【0017】基体2の接合面2bと、金属部材7の接合面7aとのいずれか一方に、接着シート4を設ける。接合面4bが金属部材7と接合し、接合面4aが基体2と接合する。接合面4a、4bは、粘着性や接着性を有している。接着シート4は、樹脂マトリックス11およびこの樹脂マトリックス11中に分散されているフィラー10を有する。
【0018】樹脂マトリックス11を構成する樹脂は、伸縮性のある樹脂が好ましく、具体的には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂からなることが好ましい。アクリル樹脂の種類は特に限定されない。一般的には、アクリル樹脂は、アクリル酸およびアクリル酸の誘導体の重合体の総称であり、ホモポリマーとコポリマーとの両者を含み、架橋物、部分架橋物、未架橋物のいずれも含む。アクリル酸の誘導体は、アクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステルを含む。エポキシ樹脂の種類も特に限定されない。
【0019】熱伝導性を高めるという観点からは、接着シート4の厚さは200μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがさらに好ましい。また、接着シート4の厚さは伸び性を十分発揮させるために30μm以上であることが好ましい。
【0020】また、接着シート4を介して基体2および金属部材7を接合するときの熱サイクルにおいて発生する熱応力を低減させる観点からは、接着シート4のヤング率が100MPa以下であることが好ましい。また、接着シート4の伸びが100%以上であることが好ましく、さらに150%以上であることがより好ましく、さらに200%以上であることが一層好ましい。」
「【0026】半導体支持部材1の基体2を構成するセラミックスとしては、アルミナのような酸化物系セラミックス、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、窒化物セラミックスを例示できる。窒化物セラミックスとしては、窒化珪素およびサイアロンが、耐熱衝撃性の点で好ましい。また、窒化アルミニウムは、フッ素系腐食性ガスに対する耐蝕性、および熱伝導性の点で好ましい。
【0027】金属部材7の材質は特に制限はないが、ハロゲン系腐食性ガスに対して冷却装置がさらされる場合には、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケルまたはこれらの金属の合金を使用することが好ましい。」
「【0037】この結果、図4に示すような半導体支持装置12が得られる。図5は、図4の半導体支持装置12に含まれる接合層27の平面図であり、従って半導体支持部材1は図示省略してある。この装置12においては、基体2の接合面2bと金属部材7の接合面7aとが接合層27によって接合されている。」
「【0045】(実施例2)実施例1と同様にして、図4、図5に示す半導体支持装置12を製造した。ただし、接着シート4の厚さは130μmである。接着シート4中には、平均粒径10μmのアルミナ粒子からなるフィラーが、10vol%添加されている。接合時の温度は50℃とし、圧力は14kg/cm^(2)とした。測定結果を表1に示す。」
「【0050】
【表1】


「【0053】(実施例5)実施例4と同様にして、接合体を製造した。ただし、アクリルシートの厚さは130μmである。測定結果を表2に示す。」
「【0055】
【表2】


【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


イ 引用例2について
引用例2には、「FILM ADHESIVE FOR SEMICONDUCTOR VACUUM PROCESSING APPARATUS」(当審仮訳(以下同じ。):半導体真空処理装置のためのフィルム状接着剤)(発明の名称)について、次の記載がある。
「[0007] In an embodiment, a bonded component assembly for use in a plasma processing apparatus for processing of semiconductor substrates is provided. The bonded component assembly comprises a support member having at least one load bearing surface to support a component. The component supported on the at least one load bearing surface has at least one surface exposed to a plasma. An elastomeric sheet adhesive joint between mating surfaces of the at least one load bearing surface and the component allows movement in a lateral direction of the component relative to the support member during temperature cycling due to mismatch of thermal expansion of the support member and the component. (一実施形態において、半導体基板の処理を行うプラズマ処理装置で用いられる結合されたコンポーネント・アセンブリが提供される。結合されたコンポーネント・アセンブリは、コンポーネントを支持する少なくとも一つの耐荷重面を有する支持部材を備える。少なくとも一つの耐荷重面上に支持された部品は、プラズマに対して露出した少なくとも一つの表面を有する。少なくとも一つの耐荷重面とコンポーネントの合わせ面との間のエラストマーシート状接着剤の結合部は、温度サイクル中の、支持部材とコンポーネントの熱膨張の差に起因する、支持部材に対する横方向の移動を可能にする。)」
「[0028] ・・・Additionally, because component assemblies can contain gas passages or other close tolerances, it is essential that the flow of the bonding material be controlled, such that the gas passages remain unobstructed by the bonding material. Methods for joining components of a plasma processing apparatus are provided that can reduce contamination originating from the bonding material and precisely control bonding material placement. (また、コンポーネント・アセンブリにはガス流路やその他精密な公差部分が含まれるため、結合材によってガスの通過が妨害されないように、結合材の流れを制御する必要がある。本発明は、結合材由来の汚染を抑制し、結合材の配置を正確に制御可能な、プラズマ処理装置のコンポーネント結合方法を提供する。)」
「[0033] FIGS. IA and IB illustrate exemplary embodiments of component assemblies for a plasma processing apparatus in which semiconductor substrates, e.g., silicon wafers, are processed. ・・・The components can also comprise an electrostatic chucking device 124 secured to the lower electrode 132 as a support member.(図1A及び図1Bは、シリコンウェハー等の半導体基板を処理するプラズマ処理装置用のコンポーネント・アセンブリの実施例を示す。・・・さらに、コンポーネントとして、支持部材として機能する下部電極132に固定される静電チャックデバイス124を備えるようにしてもよい。)」
「[0034] Ceramic, quartz, and silicon (e.g., single crystal and polycrystalline silicon and compounds such as silicon carbide and silicon nitride) are preferred materials for plasma exposed surfaces of the components in the component assemblies.(コンポーネント・アセンブリにおけるコンポーネントのプラズマ露出面の材料としては、セラミック、石英及びシリコン(たとえば、単結晶シリコン及び多結晶シリコン並びに炭化ケイ素および窒化ケイ素等の化合物)が好ましい。)」
「[0035] ・・・Exemplary suitable materials that can be used to make the support member include aluminum, aluminum alloys, graphite, a dielectric, a semiconductor and SiC. (支持部材の形成に適した材料の例としては、アルミニウム、アルミニウム合金、グラファイト、誘電体物質、半導体及びSiCが挙げられる。)」
「[0036] The component 116/118/124 can be attached to the support member 120/138/132 with a suitable thermally and/or electrically conductive elastomeric bonding material that accommodates thermal stresses, and transfers heat and/or electrical energy between the component and the support member. (熱応力を保持し、熱及び/又は電気エネルギーをコンポーネントと支持部材との間で伝達可能な、適当な熱伝導性及び/又は電気伝導性エラストマー結合材を用いて、コンポーネント116/118/124を、支持部材120/138/132に取り付けるようにしてもよい。)当審注:符号「124」は「静電チャックデバイス(基板支持部)」を表し、符号「132」は「下部電極(基板支持部)」を表す([0033]、[0047])。」
「[0037] In an embodiment the elastomeric joint is an elastomeric sheet adhesive. ・・・Polymeric bonding materials ・・・include ・・・ silicone, and rubber.(エラストマー結合部の一例として、エラストマーシート状接着剤が挙げられる。・・・ポリマー結合材としては・・・シリコーン及びゴムが挙げられる。)」
「[0038] Preferably, the sheet adhesive is a thermally conductive silicone adhesive bonding an aluminum support member to a ceramic or quartz component. (シート状接着剤として熱伝導性シリコーン接着剤を用いて、セラミック又は石英コンポーネントにアルミニウム支持部材を結合させる構成が望ましい。)」
「[0040] When the aluminum support member and silicon, ceramic or quartz component thermally expand at different rates, the adhesive used to bond the two parts together couples the loads between the two parts. In contrast, when the adhesive is soft (low shear stress at a given strain according to an embodiment), the two parts will not induce stresses or diaphragm deflections into each other. (アルミニウム支持部材とシリコン、セラミック、又は石英コンポーネントとが異なる膨張率で熱膨張すると、これら2つのパーツを結合するために用いた接着剤により、2つのパーツ間に荷重がかかる。一方、接着剤が柔らかい(低いせん断応力で所定レベルの歪みを生じる)場合には、2つのパーツ間に応力又はダイヤフラムたわみは生じない。)」
「[0045]・・・Preferably the elastomeric sheet adhesive has a low strength, can withstand a high shear strain and has a high thermal conductivity. Preferably, the thermal conductivity is at least 0.2 W/mK, more preferably at least 1.0 W/mK and most preferably at least 1.5 W/mK (e.g., 0.2 - 2.0 W/mK, 0.75-1.5 W/mK). (エラストマーシート状接着剤は、望ましくは、強度が低く、高せん断歪みに耐えられ、熱伝導率が高い。熱伝導率は、0.2W/mK以上が望ましく、1.0W/mK以上がより望ましく、1.5W/mK以上が最も望ましい(たとえば、0.2?2.0W/mKや0.75?1.5W/mK)。)」
「[0046] In order to stay within the elastic limits of the finally formed joint, a suitable bond thickness can be used. That is, too thin of a sheet adhesive joint could tear during thermal cycling whereas too thick a sheet adhesive joint could reduce the thermal conductivity between the parts to be joined. (最終的に形成される結合部の弾性限界を超えないように、接着剤の厚みを適当な厚さに調節ようにしてもよい。すなわち、シート状接着剤の結合部があまりに薄いと、熱サイクルの間に破れる可能性がある。一方、シート状接着剤の結合部があまりに厚いと、結合対象となるパーツ間の熱伝導度が低下する。)」
「[0047] FIGS. 2A-2C show an embodiment of an electrostatic chucking device bonded to a lower electrode. In the illustrated embodiment, the support member comprises an electrode 132 and intermediate layer 134.( 図2A?図2Cに、下部電極に結合される静電チャックデバイスの実施例を示す。図示した実施例では、支持部材は、電極132と中間層134とを備え、コンポーネントは、結合材122により支持部材中間層134に結合される基板支持部124を備える。)」
「[0062]・・・However, in another embodiment the sheet adhesive can be a single sheet having a spider web geometric shape to precisely match to bonding regions while leaving unbonded regions. Regions can be left unbonded, for example, for gas passages, bolt holes or lifting pins. FIG. 7 shows an embodiment of a single sheet 122 in plan view for bonding, for example, mating surfaces of substrate support component 124 and support member intermediate layer 134. Accordingly, spaces 78 in the sheet adhesive 122 can correspond to unbonded regions.(別の実施例において、シート状接着剤を、非結合領域を残して、結合領域に正確に一致する「クモの巣形」幾何学的形状を有する一枚のシートで構成してもよい。ガス通路、ボルト穴又はリフトピン用の領域等を非結合領域として残す。図7に、たとえば、基板支持コンポーネント124と支持部材中間層134の合わせ面を結合するために用いられる一枚のシート状接着剤122の実施例の平面図を示す。シート状接着剤122における空間78は、非結合領域に対応する。)」
「[0069] The sheet adhesive has additional advantages over liquid, gel and paste adhesives. For example, as shown in FIGS. 9A and 9B, when the component assembly parts to be joined contain passages 32 and/or 44 (that is, component 24 may have passages 32 and/or support member 34 may have passages 44), the flow of liquid or paste uncured elastomeric material 50 must be controlled when the components are pressed together before the elastomer is cured. Passages 32 and 44 can be bolt holes, gas passages, lift pin openings, expansion joints, etc. When the uncured paste 50 is applied between two components and pressed, it is difficult to control the flow of the uncured elastomer material. As shown in FIG. 9B, the uncontrolled flow of the uncured elastomeric material 50 can result in the obstruction or blockage of the passages 32 and/or 44. As a result, additional cleaning or machining can be required to clear the obstructed or blocked passages 32 and/or 44. The sheet adhesive elastomeric material can avoid such problems since the sheet adhesive 52 can be placed between the component assembly parts to be joined with much finer tolerances than a liquid or paste elastomeric material as shown in FIG. 1OA. The sheet adhesive can be configured to exhibit good volume control so as to not ooze or flow into undesired areas. As such, the sheet adhesive elastomeric material 52 can be located closer than the liquid, paste or gel, to the passages 32/44 without risk of obstruction or blockage of the passages 32/44.(シート状接着剤は、液状接着剤、ゲル状接着剤及びペースト状接着剤と比べて利点がある。たとえば、図9A及び図9Bに示すように、結合対象であるコンポーネント・アセンブリのパーツが通路32及び/又は44を備える(すなわち、コンポーネント24が通路32を備え、及び/又は、支持部材34が通路44を備える)場合、エラストマーが硬化する前にコンポーネント同士を押し付ける際に、未硬化の液状又はペースト状エラストマー結合材50の動きを制御する必要がある。通路32及び44は、たとえば、ボルト穴、ガス通路、リフトピン開口部、伸縮継ぎ手等である。2つのコンポーネントの間に未硬化のペースト50を塗布して押し付ける際に、未硬化のエラストマー結合材の動きを制御することは難しい。未硬化のエラストマー結合材50の動きを制御しなければ、図9Bに示すように、通路32及び/又は44を塞ぐ、又は、封鎖する結果となる。したがって、塞がれた、又は、封鎖された通路32及び/又は44をきれいにするために、余分な洗浄又は機械加工が必要となる。一方、図10Aに示すように、液状又はペースト状エラストマー結合材と比べて、エラストマーシート状接着剤52は、結合対象であるコンポーネント・アセンブリのパーツ間に、少ない公差で配置することができるため、このような問題は生じない。シート状接着剤は、体積制御が容易であるため、不要な領域に滲み出たり流れ出したりということがない。このように、エラストマーシート状接着剤52は、通路32/44を塞いだり封鎖したりする恐れがなく、液状、ペースト状又はゲル状の接着材よりも通路32/44の近くに配置することができる。)」
「[0070] When the component 24 and the support member 34 are composed of materials with different coefficients of thermal expansion, the thickness of the elastomer material can be varied to accommodate the differences in thermal expansion. (コンポーネント24と支持部材34とを異なる熱膨張係数を有する材料から形成する場合、エラストマー結合材の厚みを変えることにより熱膨張の差に対応することができる。)」
「[0080]As illustrated in FIGS. 1OA and 1OB, support member 34 is joined to component 24 such that the first passages 32 of the component 24 and the second passages 44 of the support member 34 are in fluid communication. To enhance adhesion, a primer 46 can also be applied to load bearing surface 38 of the support member 34 in the same predetermined pattern as applied to the bonding surface 28 of component 24. In alternative embodiments, support member 34 or component 24 may contain plenums to distribute one or more gases for temperature control or process gas supplies in a desired gas distribution pattern.(図10A及び10Bに示すように、支持部材34は、コンポーネント24に結合されたコンポーネント24の第1通路32及び支持部材34の第2の通路44とが流体連通している。接着性を高めるために、コンポーネント24の結合面28に適用されたプライマー46は同じ所定パターンで、支持部材34の耐荷重面38にも適用することができる。別の実施例において、支持部材34又はコンポーネント24がプレナムを備えるようにして、温度制御のために一種類または複数種類のガスを分配させるようにしてもよいし、所望のガス分配パターンで供給処理ガスを分配させるようにしてもよい。)」
「[0081] In a preferred embodiment, the sheet adhesive bonds the bonding surface of the component 28 to the load bearing surface of the support member 38 such that there is a 51 to 381 μm (0.002 to 0.015 in) gap therebetween in unbonded regions. ・・・However, the support member load bearing surface and the component bonding surface can be bonded by the sheet adhesive without a recess. (好適な実施例において、非結合領域で両者の間に51?381μm(0.002?0.015インチ)の間隔をあけるように、シート状接着剤を用いて、コンポーネント28の結合面を支持部材38の耐荷重面に結合させる。・・・ただし、凹部を設けることなく、シート状接着剤により、支持部材の耐荷重面とコンポーネントの結合面とを結合するようにしてもよい。)」
FIG.1A(図1A)

FIG.2A(図2A)

FIG.2B(図2B)

FIG.7(図7)

FIG.10A(図10A)

FIG.10B(図10B)


ウ 引用例3について
引用例3には、「FILLED POLYMER COMPOSITION FOR ETCH CHAMBER COMPONENT(エッチングチャンバーコンポーネントのための充填ポリマー組成物)」(発明の名称)について、次の記載がある。
「[0013] ・・・In an embodiment, the filled polymer composition is utilized as a bonding adhesive for electrostatic chuck, a bonding adhesive for shower head, a bonding adhesive for liner, a sealing material, an O-ring, or a plastic component.(一実施形態では、充填ポリマー組成物は、静電チャック用接着剤、シャワーヘッド用接着剤、ライナー用接着剤、シール材、Oリング、又はプラスチック部品として利用される。)」
「[0015] The polymer matrix can be a variety of materials. For example, the polymer matrix may be fluorinated carbon based, polyimide based, ether ketone based, and silicon based including partially and fully fluorinated silicon. In an embodiment, the polymer matrix is a perfluoroelastomer, thermosetting silicone, a thermoplastic acrylic, or poly(etheretherketone) (PEEK).(ポリマーマトリックスは、様々な材料であり得る。例えば、ポリマーマトリックスは、フッ化炭素ベース、ポリイミドベース、エーテルケトンベース、及び部分的に及び完全にフッ化シリコンを含むシリコンベースが可能である。一実施形態では、ポリマーマトリックスは、パーフルオロエラストマー、熱硬化性シリコーン、熱可塑性アクリル、又はポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)である。)」
「[0017] In an embodiment where the filled polymer composition is employed as a bonding adhesive, for example, for an electrostatic chuck, shower head, and/or liner, it may be preferable to adjust the materials properties of the filled polymer composition to minimize the coefficient of thermal expansion (CTE) mismatch between a metal and a ceramic. In an embodiment, a higher tensile elongation %, higher tensile strength, and lower Young's Modulus are desirable for electrostatic chuck bonding application. For example, the filled polymer composition may exhibit a tensile elongation % above 190 %, a tensile strength above 2.2 MPa, and Young's Modulus below 2.0 MPa. (充填ポリマー組成物が、例えば、静電チャック、シャワーヘッド、及び/又はライナー用の接着剤として利用される一実施形態では、充填ポリマー組成物の材料特性を調整し、これによって金属とセラミックスとの間の熱膨張係数(CTE)の不一致を最小化することが好ましいかもしれない。一実施形態では、より高い引張伸び%、より高い引張強さ、及びより低いヤング率が、静電チャックの接合アプリケーションに対しては望ましい。例えば、充填ポリマー組成物は190%を超える引張伸び%、2.2MPaを超える引張強さ、及び2.0MPaを下回るヤング率を示すことができる。)」

エ 引用例4について
引用例4には、「ウェハ保持体およびその製造方法」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【0031】
以下、本発明のウェハ保持体1の実施の形態の一例として、ウェハを静電吸着する機能を備えた静電チャック10を例に説明する。」
「【0033】
このウェハ保持体1は、板状セラミック体2とベース部材4との間に介在層6を備えている。板状セラミック体2の一方の主面(上面)はウェハを載せるウェハ載置面3としてあり、他方の主面(下面)側に介在層6を介してウェハ載置面3を冷却する冷却用のベース部材4を備えている。」
「【0036】
ベース部材4は、アルミニウムや超硬合金等の金属材料、あるいはそれら金属材料とセラミック材料との複合材料からなり、ベース部材4は導電性を有することが好ましい。」
「【0037】
介在層6は、例えばシリコーン,ポリイミドまたはエポキシ等の樹脂接着剤、あるいはインジウム等による金属接合部材、あるいはシート状の樹脂またはロー材等からなり、介在層6の面内の一部に所望の形状や大きさの熱伝導率の異なる領域6bを備えている。」
「【0039】
本発明のウェハ保持体1は、上面をウェハ載置面3とした板状セラミック体2を、この板状セラミック体2を下面側から冷却するベース部材4の上面に、熱伝導率の異なる領域6bを有する介在層6を介して配置することでウェハ載置面3やウェハ面内の温度差を小さくすることができる。」
「【0045】
・・・本発明における介在層6は、図3に示すように熱伝導率の小さい領域6bを冷却通路5の配置に対向して配置することで、ベース部材4の温度の低い冷却通路5の上面からより多くの熱が伝わりこの領域に対向するウェハ載置面3の温度が低下する虞があるが、この領域に対向して熱伝導率の小さい領域があると熱伝達量が低下して温度の低い冷却通路5の形状が載置面に現れることがなく、ウェハ載置面の面内温度差を図4に示すように小さくすることができる。図4に示す領域104の温度は58.5?60℃で、領域105の温度は57?58.5℃となり、ウェハ載置面3の面内温度差が3℃以内と小さくなって、冷却通路5の影響によるウェハ載置面3内の温度差の発生を防止することができる。」
「【0069】
また、熱伝導率が0.53W/(m・K)のシリコンシートA(当審注:【0037】の「介在層6は、例えばシリコーン,ポリイミドまたはエポキシ等の樹脂接着剤」という記載から、「シリコンシートA」の「シリコン」は、「シリコーン」の誤記と認める。以下の「シリコンシートB」についても、同様に「シリコン」は、「シリコーン」の誤記と認める。)と、シリコンシートAの熱伝導率の約2分の1で、熱伝導率が0.27W/(m・K)のシリコンシートBを介在層として準備した。」
「【0070】
実験グループNo.1の試料No.10?19は、シリコンシートAを介在層6aとして、冷却通路5に対抗させて熱伝導率の小さなシリコンシートBを熱伝導率の小さい領域6bとして配置した。」

オ 周知例1について
周知例1には「静電チャック装置」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【0018】
図1は、本発明の一実施形態の静電チャック装置を示す断面図であり、この静電チャック装置1は、円板状の静電チャック部材2と、この静電チャック部材2の下方に配設され厚みのある円板状の温度調整用ベース部材3と、これら静電チャック部材2及び温度調整用ベース部材3を接合・一体化する接合層4とにより構成されている。
【0019】
静電チャック部材2は、上面がシリコンウエハ等の板状試料を載置する載置面11aとされたセラミックスからなる載置板11と、この載置板11を下方から支持するセラミックスからなる支持板12と、これら載置板11と支持板12との間に設けられた静電吸着用内部電極13及び環状の絶縁材14と、この静電吸着用内部電極13に接するように支持板12の固定孔15内に設けられた給電端子16とにより構成されている。
【0020】
これら載置板11、支持板12及び静電吸着用内部電極13には、その厚み方向に貫通する冷却ガス導入孔17が中心軸に対して回転対称となる位置に計4個形成され、この載置面11aには、シリコンウエハ等の板状試料を支持するための多数の突起が立設され(図示省略)、さらに、この載置面11aの周縁部には、He等の冷却ガスが漏れないように幅が1?5mm、高さが上記の突起と同じ高さの周縁壁が形成され(図示省略)、この周縁壁の内側が板状試料を静電吸着する吸着領域とされている。この冷却ガス導入孔17を介して載置面11aと突起頂面に載置された板状試料との隙間にHe等の冷却ガスが供給されるようになっている。」
「【0025】
温度調整用ベース部材3は、金属および/またはセラミックスからなる厚みのある円板状のもので、その躯体がプラズマ発生用内部電極を兼ねた構成とされ、その内部には、水、Heガス、N_(2)ガス等の冷却媒体を循環させる流路21が形成され、また、冷却ガス導入孔17及び固定孔15も、静電チャック部材2と同様に形成されている。
この温度調整用ベース部材3は、その躯体が外部の高周波電源22に接続され、また、固定孔15には、その外周が絶縁材料23により囲繞された給電端子16が絶縁材料23を介して固定され、この給電端子16は、外部の直流電源24に接続されている。」
【図2】


カ 周知例2について
周知例2には、「静電チャック」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について説明する。
【0013】図1は本発明の静電チャックの一例を示す図で、(a)は平面図、(b)は断面図である。また図2は図1(b)のA部を拡大した断面図である。
【0014】この静電チャック1は、ウェハと略同じ大きさを有する円板状をした板状セラミック体2の一方の主面に、その外周部4を残して平面形状が円形をした凹部3を有し、上記外周部4の頂面を第二の保持面4aとするとともに、上記凹部底面の周縁部にガス溝5を備え、ガス溝5で囲まれた凹部底面を第一の保持面3aとしたもので、凹部底面下方の板状セラミック体2の他方の主面6には一対の半円状をした静電吸着用電極7を配置してある。
・・・(略)・・・
【0018】さらに、板状セラミック体2にはガス溝5に開口する複数個のガス導入孔8を穿孔してあり、これらのガス導入孔8よりガス溝5を介してヘリウムガス等の熱伝達性ガスをウェハと凹部3とで形成される空間に供給するようになっている。
【0019】また、この静電チャック1には、板状セラミック体2の他方の主面側にガラスや樹脂系接着剤からなる絶縁性の接合層14を介してアルミニウムやステンレス等の金属からなるベース部材9を接合してあり、このベース部材9には、板状セラミック体2のガス導入孔8とそれぞれ連通するガス供給孔10を備えるとともに、一対の静電吸着用電極7と電気的に接続された給電端子12を取り出すための電極取出孔11を備えている。なお、13は電極取出孔11内に設けられた絶縁管で、細長い給電端子12が金属製のベース部材9と接触し、短絡を起こすのを防止してある。」
【図1】

【図2】


キ 周知例3について
周知例3には、「ウエハ載置装置及びそれに用いる部品」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【実施例】
【0036】
[実施例1]
第1実施形態のウエハ載置装置20に相当する一具体例を以下の手順により作製した。まず、静電チャック22を次のようにして作製した。すなわち、窒化アルミニウム粉末を径380mm、厚さ5mmに一軸成形し、その上にモリブデン製メッシュ(径292mm)からなる内部電極28を設置し、さらにその上から窒化アルミニウム粉末を載せて成形し、全厚25mmの成形体を得た。これを一軸ホットプレス焼成炉内に黒鉛冶具とともに設置し、窒素雰囲気中、1850℃で1トンの圧力をかけて2時間焼成し、内部電極28を埋設した焼結体を得た。この焼結体を研削加工することにより静電チャック22を得た。なお、研削加工時に、内部電極28からウエハ載置面24までの厚みが1mm、ウエハ載置面24の直径が298mm、段差部26からウエハ載置面24までの高さが4mm、段差部26を含む焼結体の直径が376mm、底面から段差部26までの高さが4mm、焼結体の全厚が8mmとなるようにした。この静電チャック22のウエハ載置面24とは反対側の面から内部電極28に達する孔を穿孔し、その孔に内部電極28と接続する導電部材をロウ付けにより接合した。なお、図1?図7にはこうした導電部材の図示を省略した。
【0037】
冷却板40は、アルミニウム合金製で全厚が20mm、フランジ部44の厚みが12mm、冷却板本体42の直径(静電チャック22との接合面の直径)が376mm、フランジ部44を含めた直径が416mmで、PCD(ピッチ・サークル・ダイアミタ)が370mmの位置に等間隔で12個の直径2mmの貫通孔(冷却用ガス通路50の第1通路51)を有し、冷媒通路46が内蔵されたものを用いた。また、保護リング30は、シリコン金属製で外径が385mm、リング本体32の内径及び厚みがそれぞれ299mm及び5mm、スカート部34の内径及び高さが377mm及び12mmのものを用いた。なお、図1及び図2の保護リング30には切欠溝32aが形成されているが、実施例1では切欠溝32aの外径は301mmで深さ1.2mmとした。接着シート47は、シリコーン樹脂製で、外径が364mm、厚みが0.78mmのものを用いた。」
「【0041】
[比較例1]
図8のウエハ載置装置220に相当する一具体例を以下の手順により作製した。静電チャック22及び冷却板40は実施例1と同じものを用いた。但し、静電チャック22のPCD337mmの位置に等間隔で12個の直径2mmの貫通孔を厚み方向に平行に穿孔した。また、接着シート247は、実施例1の接着シート47と同様、外径が364mm、厚みが0.78mmのものを用いたが、更に、PCD337mmの位置に等間隔で12個の直径3mmの貫通孔を設けた。保護リング230は、シリコン金属製で外径が377mm、内径が299mm、厚みが5mmのものを用いた。図8の保護リング230には上面の内周側に切欠溝が形成されているが、比較例1では切欠溝の外径は301mmで深さ1.2mmとした。
【0042】
そして、冷却板40と静電チャック22とを接着シート247を用いて接合した。接合時、冷却板40の各貫通孔と接着シート247の各貫通孔と静電チャック22の各貫通孔とが一致するようにした。これにより、冷却用ガス通路150が完成した。この冷却用ガス通路150から導入される冷却用ガスは、保護リング230の裏面に当たる。最後に、静電チャック22の段差部26に保護リング230を載置し、比較例1のウエハ載置装置を得た。」
【図7】

【図8】


(4)引用発明の認定、引用例・周知例に記載された事項の認定
ア 引用例1に記載された発明(引用発明1a、1b)
(ア)引用例1には、半導体支持装置(【0001】)について、半導体を支持する平面を有する半導体支持部材、金属部材、および半導体支持部材と金属部材とを接合する接合層を備えている半導体装置において、半導体支持部材の表面の平面度を向上させるのと共に、ウエハー表面の温度を制御可能とした(【0006】)もので、半導体を支持する平面を有する半導体支持部材、金属部材、および半導体支持部材と金属部材とを接合する接合層を備えている半導体支持装置であって、接合層が接着シートからなり、接着シートが、樹脂マトリックスおよびこの樹脂マトリックス中に分散されているフィラーを含む(【0007】)ことが記載されている。

(イ)【0014】?【0038】には、該「半導体支持装置」の「一実施形態」について、【0016】の「本例の金属部材7は、冷却機能を有する冷却フランジである。冷却フランジ7にはガス供給孔乙18bが設けられており、ガス供給孔乙18bからバックサイドガス、例えばアルゴンガスや窒素ガスを供給可能となっている。」という記載及び【0015】の「また、半導体支持部材1には、半導体ウェハーを冷却するために、金属部材から導入されるバックサイドガスを供給するガス供給孔甲18aが設けられている。」という記載によれば、上記aの「該半導体支持部材」は、「一実施形態」において、「半導体支持部材1」として示され、該「半導体支持部材1」は、「セラミック製の基体2と、基体2内に埋設された静電チャック電極3とを備えている」(【0015】)から、「セラミック製の基体2」は、金属部材から導入されるバックサイドガスをガス供給孔甲18aを介して半導体ウェハー側に分配する、ガス分配機能を有するといえる。

(ウ)上記(イ)の「一実施形態」の具体例である実施例について、【0045】の実施例2には、接着シート4の厚さが130μmであり、【0053】の実施例5には、アクリルシートの厚さは130μmであることが記載されている。
また、【0055】の【表2】には、実施例4、実施例5及び比較例3の接着シートの熱伝導率(W/mK)は、それぞれ、25、14及び6であることが記載されていることから、熱伝導率が6?25(W/mK)が引用例1の接着シートの熱伝導率がとり得る値であるということができる。

(エ)図1?5から、次の点が看取できる。
「接着シート4(接合層27)は、基体2の接合面2bを、金属部材7の接合面7aに接合していること」(特に図1、4)
「接着シート4(接合層27)は、予め形成された複数の穴を有する円盤形状の穴あきシートであること」(特に図5)
「接着シート4(接合層27)は、基体2と金属部材7との間に、ガス通路〔基体2(半導体支持部材1)に形成されたガス供給孔甲18aと金属部材7に形成されたガス供給孔乙18bとを連通するガス通路〕を画定するように整列して配置されること」(特に図4、5)
「接着シート4(接合層27)の穴と接着対象部材の孔18a、18bとは、直径がほとんど違いのない同心円であること」、すなわち、「接着シート4(接合層27)の穴の直径は、セラミックス製の基体2のガス供給孔甲18a及び金属部材7のガス供給孔乙18bの直径と実質的に等しいこと」(特に図3、4、5)

(オ)引用例1の【0012】、【0020】には、接着シート4のヤング率が100MPa以下であることが記載され、【0020】には、接着シート4の伸びが、150%以上(さらに好ましくは、200%以上)であることが記載され、【0027】には、金属部材7は、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル等により形成されることが記載され、【0015】には、半導体支持部材1は静電チャックであることが記載され、【0020】には、基体2と金属部材7とを接着シート4を介して接合することが記載され、【0017】、【0018】には、接着シート4に含まれる樹脂マトリックス11を構成する樹脂は、伸縮性のある樹脂が好ましいことが記載され、【0019】には、接着シート4は厚さが30μm以上、200μm以下であることが好ましいことが記載され、【0053】には、接着シート4の厚さは、例えば、130μmであることが記載されている。

(カ)上記(ア)?(オ)によれば、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1a」という。)が記載されていると認められる。
「Al ヤング率が100MPa以下である接着シート4を含み、
B1 前記接着シート4は、伸びが150%以上(さらに好ましくは、200%以上)である
C1 予め形成された複数の穴を有する円盤形状の穴あきシートであり、
C2 該穴とセラミックス製の基体2のガス供給孔甲18a及び金属部材7のガス供給孔乙18bは、整列して配置され、
C3 該穴の直径は、セラミックス製の基体2のガス供給孔甲18a及び金属部材7のガス供給孔乙18bの直径と実質的に等しく、
D1 前記接着シート4は、ガス分配機能を有するセラミックス製の基体2と、例えばアルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル等により形成された金属部材7と、の間にガス通路を画定するように整列して配置され、
E1 半導体支持部材(静電チャック)1を接合するのに適し、
F1 接着シート4に含まれる樹脂マトリックス11を構成する樹脂は、伸縮性のある樹脂が好ましく、
H1 前記接着シート4は熱伝導率が6W/mK?25W/mKであり、
I1 前記接着シート4は厚さが30μm以上、200μm以下であることが好ましく、例えば130μmである接着シート4。」

(キ)また、上記(ア)?(オ)によれば、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1b」という。)も記載されていると認められる。
「J1 金属部材7の接合面7aに隣接して配置された基体2の接合面2bと、
Kl 前記基体2の接合面2bを前記金属部材7の接合面7aに接合する接着シート4を含み、
L1 前記接着シート4はヤング率が100MPa以下であり、
Ml 前記接着シート4は、伸びが150%以上(さらに好ましくは、200%以上)である
Nl 予め形成された複数の穴を有する円盤形状の穴あきシートであり、
N2 該穴とセラミックス製の基体2のガス供給孔甲18a及び金属部材7のガス供給孔乙18bは、整列して配置され、
N3 該穴の直径は、セラミックス製の基体2のガス供給孔甲18a及び金属部材7のガス供給孔乙18bの直径と実質的に等しく、
O1 前記基体2の接合面2bは、ガス分配機能を有するセラミックス製の基体2であり、前記金属部材7の接合面7aは、例えばアルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル等により形成された金属部材7であり、
P1 前記接着シート4は前記基体2の接合面2bと前記金属部材7の接合面7aとの間にガス通路を画定するように整列して配置され、
R1 接着シート4に含まれる樹脂マトリックス11を構成する樹脂は、伸縮性のある樹脂が好ましく、
T1 前記接着シート4は熱伝導率が6W/mK?25W/mKであり、
Ul 前記接着シート4は、厚さが30μm以上、200μm以下であることが好ましく、例えば130μmである
Ql 半導体支持部材(静電チャック)1。」

イ 引用例2に記載された発明(引用発明2a、2b)
(ア)[0062]の記載は、「シート状接着剤122が、基板支持コンポーネント124と(下部電極132の)支持部材中間層134との間にガス通路(非結合領域)を画定するように配置されること」と理解できる。
また、この記載によれば、基板支持コンポーネント124と(下部電極132の)支持部材中間層134との間にガス通路が設けられることから、引用例2には、基板支持コンポーネント124が該ガス通路から供給されるガスを分配するガス分配機能を有することが記載されていると認められる。

(イ)[0080]及び図10A、Bの記載によれば、引用例2には、シート状接着剤の結合対象であるコンポーネント24がガス分配機能を有することが記載されているといえることから、引用例2には、基板支持コンポーネント124がガス分配機能を有することが記載されていると認められる。

(ウ)[0081]の記載によれば、引用例2において、支持部材の耐荷重面とコンポーネントの結合面との間隔が51?381μmとなり、支持部材の耐加重面とコンポーネントの結合面がシート状接着材によって結合されるのであるから、支持部材の耐荷重面とコンポーネントの結合面とを結合するシート状接着剤の厚さも51?381μmとなることが理解でき、引用例2には、「シート状接着剤122の厚さが51μm?381μmであること」が記載されていると認められる。

(エ)図1A、2A、2Bから、「シート状接着剤122は、静電チャックデバイス(基板支持部)124の表面を、下部電極(基板支持部)132の中間層134の表面に接合していること」が看取され、[0062]には、「シート状接着剤を、非結合領域を残して、結合領域に正確に一致する「クモの巣形」幾何学的形状を有する一枚のシートで構成してもよい。ガス通路・・・の領域等を非結合領域として残す。・・・シート状接着剤122における空間78は、非結合領域に対応する。」と記載されていて、「ガス通路」を構成する「非結合領域」である「シート状接着剤122」の「空間17」は、「穴」と言い換えることができ、さらに、結合領域は、「クモの巣形」等の平面的に広がった幾何学的形状であるから、その「穴」は、複数あるということができるものであり、これらを踏まえれば、図7から、「シート状接着剤122は、予め形成された複数の穴を有する円盤形状の穴あきシートであること」が看取できる。

(オ)[0028][0062][0069]の記載によれば、引用例2では、非結合領域を有するシート状接着剤(すなわち、穴あきシート)を採用することにより、結合対象であるコンポーネント・アセンブリのパーツ間に少ない公差で配置することができ、不要な領域に滲み出たり流れ出したりということがなく、ガス通路32/44を塞いだり封鎖したりする恐れがなく、液状、ペースト状又はゲル状の接着材よりもガス通路32/44の近くに配置することができる、という効果を得ることができるとされている。

(カ)[0035]には、支持部材が、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等により形成されることが記載され、[0037]、[0038]には、シート状接着剤の材質として、シリコーンが用いられることが記載され、[0045]には、シート状接着剤の熱伝導率が、0.2?2.0W/mKや0.75?1.5W/mKであることが記載されている。

(キ)以上の(ア)?(カ)によれば、引用例2には次の発明(以下、「引用発明2a」いう。)が記載されていると認められる。
「C2(シート状接着剤122は)予め形成された複数の穴を有する円盤形状の穴あきシートであり、
D2 シート状接着剤122は、ガス分配機能を有するセラミックス製の静電チャックデバイス(基板支持コンポーネント)124と、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等により形成された下部電極132の支持部材中間層134と、の間にガス通路を画定するように配置され、
E2 静電チャックデバイス(基板支持コンポーネント)124を接合するのに適し、
F2 前記シート状接着剤122はシリコーン系化合物であり、
H2 前記シート状接着剤122は熱伝導率がたとえば0.2?2.0W/mKや0.75?1.5W/mKであり、
I2 前記シート状接着剤122は厚さが51μm?381μmであるシート状接着剤122。」

(ク)また、以上の(ア)?(カ)によれば、引用例2には以下の発明(以下、「引用発明2b」という。)も記載されていると認められる。
「J2 下部電極132の支持部材中間層134の表面に隣接して配置された静電チャックデバイス(基板支持コンポーネント)124の表面と、
K2 前記静電チャックデバイス124の表面を前記下部電極132の支持部材中間層134の表面に接合するシート状接着剤122を含み、
N2 (前記シート状接着剤122は)予め形成された複数の穴を有する円盤形状の穴あきシートであり、
O2 前記静電チャックデバイス124の表面は、ガス分配機能を有するセラミックス製の静電チャックデバイス124であり、前記下部電極132の支持部材中間層134の表面は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等により形成された下部電極132の支持部材中間層134であり、
P2 前記シート状接着剤122は前記静電チャックデバイス124の表面と前記下部電極132の支持部材中間層134の表面との間にガス通路を画定するように配置され、
R2 前記シート状接着剤122はシリコーン系化合物であり、
T2 前記シート状接着剤122は熱伝導率がたとえば0.2?2.0W/mKや0.75?1.5W/mKであり、
U2 厚さが51μm?381μmである、
Q2 コンポーネント・アセンブリ。」

ウ 引用例3に記載された事項
引用例3には、「充填ポリマー組成物を静電チャックやシャワーヘッド用の接着剤として利用する場合、金属とセラミックスとの間の熱膨張係数の不一致を最小化するために、充填ポリマー組成物の引張伸び%をより高く(例えば190%を超えるように)、また、充填ポリマー組成物のヤング率をより低く(例えば2.0MPaを下回るように)、調整することが好ましいこと」が記載されていると認められる。

エ 引用例4に記載された事項
【0069】及び【0070】の記載によれば、引用例4には、介在層6(介在層6a、領域6b)の熱伝導率が0.27W/(m・K)(領域6b)?0.53W/(m・K)(介在層6a)の範囲内のいずれかの値であることが記載されているといえる。

そうすると、引用例4には、「ウェハ保持体1(例えば静電チャック10)は、板状セラミック体2と、金属製の導電性のベース部材4との間に、例えばシート状の樹脂接着剤(例えばシリコーン)からなる介在層6を備えており、介在層6の熱伝導率を0.27W/(m・K)?0.53W/(m・K)の範囲内のいずれかの値とすることにより、ウェハ載置面3やウェハ面内の温度差を小さくすることができること」が記載されていると認められる。

オ 周知例1に記載された事項
【0018】には、「静電チャック装置1」は、「静電チャック部材2」と、「温度調整用ベース部材3」と、「これら静電チャック部材2及び温度調整用ベース部材3を接合・一体化する接合層4」とにより構成されることが記載され、【0020】には、「これら載置板11、支持板12及び静電吸着用内部電極13には、その厚み方向に貫通する冷却ガス導入孔17が中心軸に対して回転対称となる位置に計4個形成され」ることが記載され、【0019】には、「支持板12」が「セラミックからな」り、「載置板11を下方から支持する」ものであることが記載され、【0025】には、「温度調整用ベース部材3は、金属および/またはセラミックスからなる」ことが記載されている。
そして、「温度調整用ベース部材3」は、「その躯体がプラズマ発生用内部電極を兼ねた構成とされ」(【0025】)るから、金属であるといえ、また、「静電チャック部材2」の最も下の部材は、「支持板12」であるといえるから、周知例1には、セラミック製部材(支持板12)と金属製部材(温度調整用ベース部材3)とを接着する接着材料(接合層4)に複数(4個)の開口部(冷却ガス導入孔17)を規則的なパターン(回転対称)で配置することが開示されていると認められる。

カ 周知例2に記載された事項
【0019】には、「静電チャック1には、板状セラミック体2の他方の主面側にガラスや樹脂系接着剤からなる絶縁性の接合層14を介してアルミニウムやステンレス等の金属からなるベース部材9を接合してあ」り、「このベース部材9には、板状セラミック体2のガス導入孔8とそれぞれ連通するガス供給孔10を備え」たものであることが記載され、【図1】からは、「ガス導入口8」は、円周上に等間隔に設けたものであることが看取される。

したがって、周知例2には、セラミック製部材(板状セラミック体2)と金属製部材(ベース部材9)とを接着する接着材料(接合層14)に複数の開口部(ガス導入孔8)を規則的なパターン(円周上に等間隔)で配置することが開示されていると認められる。

キ 周知例3に記載された事項
【0036】には、「静電チャック22」は、「窒化アルミニウム粉末」を「焼成し」た「焼結体を研削加工することにより」得ることが、【0037】には、「冷却板40は、アルミニウム合金製で」、「等間隔で12個の直径2mmの貫通孔(冷却用ガス通路50の第1通路51)を有」するものであることが、【0038】には、「冷却板40と静電チャック22とを接着シート47を用いて接合」することが、それぞれ記載されている。
また、【0042】には、「冷却板40と静電チャック22とを接着シート247を用いて接合した。接合時、冷却板40の各貫通孔と接着シート247の各貫通孔と静電チャック22の各貫通孔とが一致するようにした。」ことが記載されている。

そうすると、「静電チャック22」は、セラミック(窒化アルミニウムの焼結体)であり、「冷却板40」は金属製(アルミニウム合金製)といえるから、周知例3には、セラミック製部材(静電チャック22)と金属製部材(冷却板40)とを接着する接着材料(接着シート247)に複数(12個)の開口部(冷却用ガス通路50の第1通路51)を規則的なパターン(等間隔)で配置することが開示されていると認められる。

(5)判断
ア 取消理由通知に記載した取消理由について
(ア)進歩性(29条2項)について
[引用発明1a、1bを主引用発明とした場合]
a 本件特許発明1について
本件特許発明1と引用発明1aとを対比する。
(a)引用発明1aにおける「接着シート4」は、本件特許発明1における「接着材料」に相当する。
(b)引用発明1aにおける「前記接着シート4は、伸びが150%以上(さらに好ましくは200%以上)である」(発明特定事項B1)構成は、本件特許発明1における「前記接着材料は、伸びが150%を超える」(発明特定事項B)構成に相当する。
(c)引用発明1aの「予め形成された複数の穴を有する円盤形状の穴あきシートであ」(発明特定事項C1)る構成の「予め形成された複数の穴」は、本件特許発明1における「予め形成された複数の開口部」(発明特定事項X2)に相当し、該構成は、本件特許発明1の「予め形成された複数の開口部を含」(発明特定事項X2)む「円盤形状の穴あきシートであ」(発明特定事項C)る構成に相当する。
また、引用発明1aの「穴あきシート」の「予め形成された複数の穴」(発明特定事項C1)は、「セラミックス製の基体2のガス供給孔甲18a」及び「金属部材7のガス供給孔乙18b」に対応して設けられたものであって、該「ガス供給孔甲18a」及び該「ガス供給孔乙18b」によってガス通路が形成されることから、該「ガス供給孔甲18a」及び該「ガス供給孔乙18b」間にある引用発明1aの「予め形成された複数の穴」(発明特定事項C1)は、ガス通路のための穴といえ、本件特許発明1の「ガス通路のための複数の第2開口部」(発明特定事項X3)に相当し、引用発明1aの「予め形成された複数の穴を有する」(発明特定事項C1)構成は、本件特許発明1の「前記複数の開口部は、」「ガス通路のための複数の第2開口部」「を含」(発明特定事項X3)む構成に相当する。
(d)引用発明1aにおける「ガス分配機能を有するセラミックス製の基体2」(発明特定事項D1)は、本件特許発明1における「セラミックス製ガス分配板」(発明特定事項D)に相当する。
(e)引用発明1aにおける「例えばアルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル等により形成された金属部材7」(発明特定事項D1)は、導電性であることは明らかであるから、本件特許発明1における「金属製導電性ベースプレート」(発明特定事項D)に相当する。
(f)引用発明1aにおける「前記接着シート4は、ガス分配機能を有するセラミックス製の基体2と、例えばアルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル等により形成された金属部材7と、の間にガス通路を画定するように整列して配置され」(発明特定事項D1)る構成は、本件特許発明1における「前記接着材料は、セラミックス製ガス分配板と金属製導電性ベースプレートの間にガス通路を画定するように配置され」る(発明特定事項D)構成及び「穴あきシート」の「開口部」が、「セラミックス製ガス分配板の開口部及び金属製導電性ベースプレートの開口部と整列するように配置され」(発明特定事項X2)る構成に相当する。
(g)引用発明1aにおける「半導体支持部材(静電チャック)1」(発明特定事項E1)は、本件特許発明1における「半導体チャンバコンポーネント」(発明特定事項E)に相当する。
(h)引用発明1aにおける「半導体支持部材(静電チャック)1を接合するのに適し」(発明特定事項E1)た構成は、本件特許発明1における「半導体チャンバコンポーネントを接合するのに適し」(発明特定事項E)た構成に相当する。
(i)引用発明1aにおける「該穴の直径は、セラミックス製の基体2のガス供給孔甲18a及び金属部材7のガス供給孔乙18bの直径と実質的に等し」い(発明特定事項C3)構成は、本件特許発明1の「セラミックス製ガス分配板の開口部、金属製導電性ベースプレートの開口部、及び前記穴あきシートの開口部は、直径が等しいか、又は前記穴あきシートの開口部の直径が、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び金属製導電性ベースプレートの開口部の直径よりも大きい」(発明特定事項X4)構成に相当する。

(j)上記(a)で述べたように、引用発明1aにおける「接着シート4」は、本件特許発明1における「接着材料」に相当するものであるから、引用発明1aは、「接着シート4」、すなわち、「接着材料」に関する発明であるといえる。
そうすると、上記(a)?(i)によれば、本件特許発明1と引用発明1aとは、次の一致点1-1で一致する。
(一致点1-1)
「B 前記接着材料は、伸びが150%を超える
C+X2 前記穴あきシートは、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部と整列するように配置されている予め形成された複数の開口部を含む円盤形状の穴あきシートであり、
X3’ 前記複数の開口部は、ガス通路のための複数の第2開口部を含み、
X4 前記セラミックス製ガス分配板の開口部、前記金属製導電性ベースプレートの開口部、及び前記穴あきシートの開口部は、直径が等しいか、又は前記穴あきシートの開口部の直径が、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部の直径よりも大きい、
E 半導体チャンバコンポーネントを接合するのに適した接着材料。」

そして、本件特許発明1と引用発明1aとは、次の相違点1-1?1-3で相違する。
(相違点1-1)
「接着材料」のヤング率について、本件特許発明1では、「300psi(=300lbf/in^(2)=2.07MPa)より低い」のに対し(発明特定事項A)、引用発明1aの「接着シート4」のヤング率は、「100MPa以下である」点。
(相違点1-2)
「接着材料」の特性について、本件特許発明1では、「プラズマプロセス中における接合界面での熱膨張の不整合に起因する表面変動に順応することができ」るのに対し、引用発明1aの「穴あきシート」は、このような特性を有しているか不明な点。
(相違点1-3)
「穴あきシート」の「複数の開口部」について、本件特許発明1は、「中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部」を含むのに対し、引用発明1aの「穴あきシート」は、そのような開口部は含まない点。
(相違点1-4)
「穴あきシート」の「複数の開口部」における「ガス通路のための複数の第2開口部」の配置について、本件特許発明1では、本件特許発明1は、「第1開口部」「の周囲に規則的なパターンで配置され」、「前記規則的なパターンは、グリッド、円形状配列、又は放射状パターンであ」るのに対し、引用発明1aの「穴あきシート」の「複数の穴」の配置は規定されていない点。

ここで、相違点について検討する。
事案に鑑み、まず、相違点1-3について検討する。
引用発明1aは、「E1 半導体支持部材(静電チャック)1を接合するのに適し」たものであるから、引用発明1aの「穴あきシート」は、載置された半導体を下から支持する部材において用いられるものといえる。
また、引用例1には、「穴あきシート」について、半導体支持部材以外の用途に用いるという記載は見出すことができない。

そうすると、半導体を下から支持する部材に、「中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部」を設けても、載置された半導体によって、該「第1開口部」が塞がれ、光監視システム用の通路として機能しなくなることは明らかであるから、引用発明1aの「穴あきシート」に、「中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部」を設けることには、阻害要因があるというべきである。

また、引用例2?4、周知例1?3のいずれにも、半導体を下から支持する部材に、「中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部」を設けることを示唆する記載は見出せない。

したがって、相違点1-1、相違点1-2及び相違点1-4について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明1aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

b 本件特許発明6について
本件特許発明6と引用発明1bとを対比する。
(a)引用発明1bにおける「接着シート4」は、本件特許発明6における「接着材料」に相当する。
(b)引用発明1bにおける「ガス分配機能を有するセラミックス製の基体2」(発明特定事項O1)は、本件特許発明6における「セラミックス製ガス分配板」(発明特定事項O)に相当する。
(c)引用発明1bにおける「例えばアルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル等により形成された金属部材7」(発明特定事項O1)は、本件特許発明6における「金属製導電性ベースプレート」(発明特定事項O)に相当する。
(d)引用発明1bにおける「基体2の接合面2b」(発明特定事項J1)は、本件特許発明6における「第1の表面」(発明特定事項J)に相当する。
(e)引用発明1bにおける「金属部材7の接合面7a」(発明特定事項J1)は、本件特許発明6における「第2の表面」(発明特定事項J)に相当する。
そうすると、引用発明1bにおける「金属部材7の接合面7aに隣接して配置された基体2の接合面2bと」(発明特定事項J1)いう構成は、本件特許発明6における「第2の表面に隣接して配置された第1の表面と」(発明特定事項J)いう構成に相当する。
(f)引用発明1bにおける「前記基体2の接合面2bを前記金属部材7の接合面7aに接合する接着シート4を含」(発明特定事項Kl)む構成は、本件特許発明6における「前記第1の表面を前記第2の表面に接合する接着材料を含」(発明特定事項K)む構成に相当する。
(g)引用発明1bにおける「前記接着シート4は、伸びが150%以上(さらに好ましくは200%以上)である」(発明特定事項Ml)は、本件特許発明6における「前記接着材料は、伸びが150%を超える」(発明特定事項M)に相当する。
(h)引用発明1bにおける「円盤形状の穴あきシートであり」(発明特定事項N1)は、本件特許発明6における「円盤形状の穴あきシートであり」(発明特定事項N)に相当する。
また、引用発明1bの「予め形成された複数の穴」(発明特定事項N1)は、上記a(c)で述べたように、ガス通路のための穴といえ、本件特許発明6の「ガス通路のための複数の第2開口部」(発明特定事項X13)に相当し、引用発明1bの「予め形成された複数の穴を有する」(発明特定事項N1)構成は、本件特許発明6の「前記複数の開口部は、」「ガス通路のための複数の第2開口部」「を含」(発明特定事項X13)む構成に相当する。
(i)引用発明1bにおける「前記基体2の接合面2bは、ガス分配機能を有するセラミックス製の基体2であり、前記金属部材7の接合面7aは、例えばアルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル等により形成された金属部材7であり」(発明特定事項O1)は、本件特許発明6における「前記第1の表面はセラミックス製ガス分配板であり、前記第2の表面は金属製導電性ベースプレートであり」(発明特定事項O)に相当する。
(j)引用発明1bにおける「該穴とセラミックス製の基体2のガス供給孔甲18a及び金属部材7のガス供給孔乙18bは、整列して配置され」(発明特定事項N2)る構成及び「前記接着シート4は前記基体2の接合面2bと前記金属部材7の接合面7aとの間にガス通路を画定するように整列して配置され」(発明特定事項P1)る構成は、本件特許発明6における「前記接着材料は、セラミックス製ガス分配板と金属製導電性ベースプレートの間にガス通路を画定するように配置される」(発明特定事項P)構成及び「穴あきシート」の「開口部」が、「セラミックス製ガス分配板の開口部及び金属製導電性ベースプレートの開口部と整列するように配置され」(発明特定事項X12)る構成に相当する。
(k)引用発明1bにおける「半導体支持部材(静電チャック)1」(発明特定事項Q1)は、本件特許発明6における「半導体チャンバコンポーネント」(発明特定事項Q)に相当する。
(l)引用発明1bにおける「該穴の直径は、セラミックス製の基体2の開口部及び金属部材7の開口部の直径と実質的に等しい」(発明特定事項N3)構成は、本件特許発明6の「セラミックス製ガス分配板の開口部、金属製導電性ベースプレートの開口部、及び穴あきシートの開口部は、直径が等しいか、又は前記穴あきシートの開口部の直径が、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び金属製導電性ベースプレートの開口部の直径よりも大きい」(発明特定事項X14)構成に相当する。

(m)上記(a)?(l)によれば、本件特許発明1と引用発明1bとは、次の一致点1-2で一致する。
(一致点1-2)
「J 第2の表面に隣接して配置された第1の表面と、
K 前記第1の表面を前記第2の表面に接合する接着材料を含み、
M 前記接着材料は、伸びが150%を超える
N+X12 前記穴あきシートは、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部と整列するように配置されている予め形成された複数の開口部を含む円盤形状の穴あきシートであり、
X13’ 前記複数の開口部は、ガス通路のための複数の第2開口部を含み、
X14’ 前記セラミックス製ガス分配板の開口部、前記金属製導電性ベースプレートの開口部、及び前記穴あきシートの開口部は、直径が等しいか、又は前記穴あきシートの開口部の直径が、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部の直径よりも大きく、
O 前記第1の表面はセラミックス製ガス分配板であり、前記第2の表面は金属製導電性ベースプレートであり、
P 前記接着材料は前記第1の表面と前記第2の表面の間にガス通路を画定するように配置される
Q 半導体チャンバコンポーネント。」

そして、本件特許発明6と引用発明1bとは、次の相違点6-1?6-4で相違する。
(相違点6-1)
「接着材料」のヤング率について、本件特許発明6では「300psi(=300lbf/in^(2)=2.07MPa)より低」いのに対し、引用発明1bの「接着シート4」は「100MPa以下である」点。
(相違点6-2)
「接着材料」の特性について、本件特許発明6では、「プラズマプロセス中における接合界面での熱膨張の不整合に起因する表面変動に順応することができ」るのに対し、引用発明の「接着シート4」は、このような特性を有しているか不明な点。
(相違点6-3)
「穴あきシート」の「複数の開口部」について、本件特許発明6は、「中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部」を含むのに対し、引用発明1bの「円盤形状の穴あきシート」は、そのような開口部は含まない点。
(相違点6-4)
「穴あきシート」の「複数の開口部」の「ガス通路のための複数の第2開口部」の配置について、本件特許発明6では、「第1開口部」の「周囲に規則的なパターンで配置され」、「前記規則的なパターンは、グリッド、円形状配列、又は放射状パターンであ」るのに対し、引用発明1bでは、「穴あきシート」の「複数の穴」の配置は規定されていない点。

ここで、相違点について検討する。
事案に鑑み、まず、相違点6-3について検討する。
引用発明1bは、「Q1 半導体支持部材(静電チャック)1」であるから、引用発明1bの「円盤形状の穴あきシート」は、載置された半導体を下から支持する部材において用いられるものといえる。
また、引用例1には、「円盤形状の穴あきシート」について、半導体支持部材以外の用途に用いるという記載は見出すことができない。

そうすると、半導体を下から支持する部材に、「中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部」を設けても、載置された半導体によって、該「第1開口部」が塞がれ、光監視システム用の通路として機能しなくなることは明らかであるから、引用発明1bの「穴あきシート」に、「中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部」を設けることには、阻害要因があるというべきである。

また、引用例2?4、周知例1?3のいずれにも、半導体を下から支持する部材に、「中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部」を設けることを示唆する記載は見出せない。

したがって、相違点6-1、相違点6-2及び相違点6-4について検討するまでもなく、本件特許発明6は、引用発明1bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

c 本件特許発明2?5、7?9について
本件特許発明2?5は、本件特許発明1を引用し、さらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様な理由から、引用発明1aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件特許発明7?9は、本件特許発明6を引用し、さらに限定したものであるから、本件特許発明6と同様な理由から、引用発明1bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

[引用発明2a、2bを主引用発明とした場合]
d 本件特許発明1について
本件特許発明1と引用発明2aとを対比する。
(a)引用発明2aにおける「シート状接着剤122」は、本件特許発明1における「接着材料」に相当する。
(b)引用発明2aにおける「予め形成された複数の穴を有する円盤形状の穴あきシートであ」(発明特定事項C2)る構成は、本件特許発明1における「円盤形状の穴あきシートであ」(発明特定事項C)る構成及び「予め形成された複数の開口部」(発明特定事項X2)に相当する。
また、引用発明2aにおける「予め形成された複数の穴を有する円盤形状の穴あきシート」(発明特定事項C2)の「穴」は、「ガス通路を確定する」(発明特定事項D2)ものであるから、ガス通路のための穴といえ、本件特許発明1の「ガス通路のための複数の第2開口部」(発明特定事項X3)に相当し、引用発明2aの「予め形成された複数の穴を有する」(発明特定事項C2)構成は、本件特許発明1の「前記複数の開口部は、」「ガス通路のための複数の第2開口部」「を含」(発明特定事項X3)む構成に相当する。
(c)引用発明2aにおける「ガス分配機能を有するセラミックス製の静電チャックデバイス(基板支持コンポーネント)124」(発明特定事項D2)は、本件特許発明1における「セラミックス製ガス分配板」(発明特定事項D)に相当する。
(d)引用発明2aにおける「例えばアルミニウム、アルミニウム合金等により形成された下部電極132の支持部材中間層134」(発明特定事項D2)は、アルミニウム、アルミニウム合金が導電性であるから、本件特許発明1における「金属製導電性ベースプレート」(発明特定事項D)に相当する。
(e)引用発明2aにおける「シート状接着剤122は、ガス分配機能を有するセラミックス製の静電チャックデバイス(基板支持コンポーネント)124と、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等により形成された下部電極132の支持部材中間層134と、の間にガス通路を画定するように配置され」(発明特定事項D2)る構成は、本件特許発明1における「前記接着材料は、セラミックス製ガス分配板と金属製導電性ベースプレートの間にガス通路を画定するように配置される」(発明特定事項D)構成に相当する。
(f)引用発明2aにおける「静電チャックデバイス(基板支持コンポーネント)124」(発明特定事項E2)は、本件特許発明1における「半導体チャンバンポーネント」(発明特定事項E)に相当する。
(g)引用発明2aにおける「静電チャックデバイス(基板支持コンポーネント)124を接合するのに適し」(発明特定事項E2)た構成は、本件特許発明1における「半導体チャンバコンポーネントを接合するのに適し」(発明特定事項E)た構成に相当する。

(h)上記(a)?(g)によれば、本件特許発明1と引用発明2aとは、次の一致点2-1で一致する。
(一致点2-1)
「C 前記接着材料は円盤形状の穴あきシートであり、
D 前記接着材料は、セラミックス製ガス分配板と金属製導電性ベースプレートの間にガス通路を画定するように配置され、
X2’ 前記穴あきシートは、予め形成された複数の開口部を含み、
X3’ 前記複数の開口部は、ガス通路のための複数の第2開口部を含み、
E 半導体チャンバコンポーネントを接合するのに適した接着材料。」

そして、本件特許発明1と引用発明2aとは、次の相違点11、12及び12-1?12-3で相違する。
(相違点11)
「接着材料」のヤング率について、本件特許発明1では「300psi(=300lbf/in^(2)=2.07MPa)より低い」のに対し、引用発明2aの「シート状接着剤122」のヤング率は不明な点。
(相違点12)
「接着材料」の伸びについて、本件特許発明1では「150%を超える」のに対し、引用発明2aの「シート状接着剤122」の伸びは、不明な点。
(相違点12-1)
「接着材料」の特性について、本件特許発明1では「プラズマプロセス中における接合界面での熱膨張の不整合に起因する表面変動に順応することができ」るのに対し、引用発明2aの「シート状接着剤122」がそのような特性を備えているかどうかは、不明な点。
(相違点12-2)
「穴あきシート」の「穴」について、本件特許発明1は、「中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部」を含むのに対し、引用発明2aの「円盤形状の穴あきシート」は、そのような穴は含まない点。
(相違点12-3)
「穴あきシート」の「穴」の配置と大きさについて、本件特許発明1は、「セラミックス製ガス分配板の開口部及び金属製導電性ベースプレートの開口部と整列するように配置されている」「複数の開口部を含み、前記複数の開口部は、規則的なパターンで配置され」、「前記規則的なパターンは、グリッド、円形状配列、又は放射状パターンであり」、「前記セラミックス製ガス分配板の開口部、前記金属製導電性ベースプレートの開口部、及び前記穴あきシートの開口部は、直径が等しいか、又は前記穴あきシートの開口部の直径が、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部の直径よりも大きい」のに対し、引用発明2aの「円盤形状の穴あきシート」の「穴」の配置と大きさは、規定されていない点。

ここで、相違点について検討する。
事案に鑑み、まず、相違点12-2について検討する。
引用発明2aは、「E2 静電チャックデバイス(基板支持コンポーネント)124を接合するのに適し」たものであるから、引用発明2aの「円盤形状の穴あきシート」は、載置された基板を下から支持する部材において用いられるものといえる。
また、引用例2には、「静電チャックデバイス(基板支持コンポーネント)124」について、半導体支持部材以外の用途に用いるという記載は見出すことができない。

そうすると、基板を下から支持する部材に、「中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部」を設けても、載置された基板によって、該「第1開口部」が塞がれ、光監視システム用の通路として機能しなくなることは明らかであるから、引用発明2aの「円盤形状の穴あきシート」に、「中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部」を設けることには、阻害要因があるというべきである。

また、引用例1、3、4、周知例1?3のいずれにも、基板を下から支持する部材に、「中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部」を設けることを示唆する記載は見出せない。

したがって、相違点11、相違点12、相違点12-1及び相違点12-3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明2aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

e 本件特許発明6について
本件特許発明6と引用発明2bとを対比する。
(a)引用発明2bにおける「シート状接着剤122」は、本件特許発明6における「接着材料」に相当する。
(b)引用発明2bにおける「ガス分配機能を有するセラミックス製の静電チャックデバイス124」(発明特定事項O2)は、本件特許発明6における「セラミックス製ガス分配板」(発明特定事項O)に相当する。
(c)引用発明2bにおける「例えばアルミニウム、アルミニウム合金等により形成された下部電極132の支持部材中間層134」(発明特定事項O2)は、本件特許発明6における「金属製導電性ベースプレート」(発明特定事項O)に相当する。
(d)引用発明2bにおける「静電チャックデバイス(基板支持コンポーネント)124の表面」(発明特定事項J2)は、本件特許発明6における「第1の表面」(発明特定事項J)に相当する。
(e)引用発明2bにおける「下部電極132の支持部材中間層134の表面」(発明特定事項J2)は、本件特許発明6における「第2の表面」(発明特定事項J)に相当する。
したがって、引用発明2bにおける「下部電極132の支持部材中間層134の表面に隣接して配置された静電チャックデバイス(基板支持コンポーネント)124の表面と」(発明特定事項J2)いう構成は、本件特許発明6における「第2の表面に隣接して配置された第1の表面と」(発明特定事項J)いう構成に相当する。
(f)引用発明2bにおける「前記静電チャックデバイス124の表面を前記下部電極132の支持部材中間層134の表面に接合するシート状接着剤122を含」(発明特定事項K2)む構成は、本件特許発明6における「前記第1の表面を前記第2の表面に接合する接着材料を含」(発明特定事項K)む構成に相当する。
(g)引用発明2bにおける「予め形成された複数の穴を有する円盤形状の穴あきシートであ」(発明特定事項N2)る構成は、本件特許発明6における「(前記接着材料は)円盤形状の穴あきシートであ」(発明特定事項N)る構成及び「予め形成された複数の開口部」(発明特定事項X12)に相当する。
また、引用発明2bにおける「予め形成された複数の穴を有する円盤形状の穴あきシート」(発明特定事項N2)の「穴」は、「ガス通路を確定する」(発明特定事項P2)ものであるから、ガス通路のための穴といえ、本件特許発明6の「ガス通路のための複数の第2開口部」(発明特定事項X13)に相当し、引用発明2bの「予め形成された複数の穴を有する」(発明特定事項N2)構成は、本件特許発明6の「前記複数の開口部は、」「ガス通路のための複数の第2開口部」「を含」(発明特定事項X13)む構成に相当する。

(h)引用発明2bにおける「前記静電チャックデバイス124の表面は、ガス分配機能を有するセラミックス製の静電チャックデバイス124であり、前記下部電極132の支持部材中間層134の表面は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等により形成された下部電極132の支持部材中間層134であ」(発明特定事項O2)る構成は、本件特許発明6における「前記第1の表面はセラミックス製ガス分配板であり、前記第2の表面は金属製導電性ベースプレートであ」(発明特定事項O)る構成に相当する。
(i)引用発明2bにおける「前記シート状接着剤122は前記静電チャックデバイス124の表面と前記下部電極132の支持部材中間層134の表面との間にガス通路を画定するように配置され」(発明特定事項P2)る構成は、本件特許発明6における「前記接着材料は前記第1の表面と前記第2の表面の間にガス通路を画定するように配置される」(発明特定事項P)構成に相当する。
(j)引用発明2bにおける「コンポーネント・アセンブリ」(発明特定事項Q2)は、本件特許発明6における「半導体チャンバコンポーネント」(発明特定事項Q)に相当する。

(k)上記(a)?(j)によれば、本件特許発明6と引用発明2bとは、次の一致点2-2で一致する。
(一致点2-2)
「J 第2の表面に隣接して配置された第1の表面と、
K 前記第1の表面を前記第2の表面に接合する接着材料を含み、
N (前記接着材料は)円盤形状の穴あきシートであり、
X12’ 前記穴あきシートは、予め形成された複数の開口部を含み、
X13’ 前記複数の開口部は、ガス通路のための複数の第2開口部を含み、
O 前記第1の表面はセラミックス製ガス分配板であり、
前記第2の表面は金属製導電性ベースプレートであり、
P 前記接着材料は前記第1の表面と前記第2の表面の間にガス通路を画定するように配置される
Q 半導体チャンバコンポーネント。

そして、本件特許発明6と引用発明2bとは、次の相違点15、16、16-1、16-2及び16-3で相違する。
(相違点15)
「接着材料」のヤング率について、本件特許発明6では「300psi(=300lbf/in^(2)=2.07MPa)より低い」のに対し、引用発明2bの「シート状接着剤122」のヤング率は不明な点。
(相違点16)
「接着材料」の伸びについて、本件特許発明6では「150%を超える」のに対し、引用発明2bの「シート状接着剤122」の伸びは不明な点。
(相違点16-1)
「接着材料」の特性について、本件特許発明1では「プラズマプロセス中における接合界面での熱膨張の不整合に起因する表面変動に順応することができ」るのに対し、引用発明2bの「シート状接着剤122」がそのような特性を備えているかどうかは、不明な点。
(相違点16-2)
「穴あきシート」の「穴」について、本件特許発明6は、「中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部」を含むのに対し、引用発明2bの「円盤形状の穴あきシート」は、そのような穴は含まない点。
(相違点16-3)
「穴あきシート」の「穴」の配置と大きさについて、本件特許発明6では、「セラミックス製ガス分配板の開口部及び金属製導電性ベースプレートの開口部と整列するように配置されている」「複数の開口部を含み、前記複数の開口部は、」「規則的なパターンで配置され」、「前記規則的なパターンは、グリッド、円形状配列、又は放射状パターンであり」、「前記セラミックス製ガス分配板の開口部、前記金属製導電性ベースプレートの開口部、及び前記穴あきシートの開口部は、直径が等しいか、又は前記穴あきシートの開口部の直径が、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部の直径よりも大きい」のに対し、引用発明2bの「円盤形状の穴あきシート」の「穴」の配置と大きさは、規定されていない点。

ここで、相違点について検討する。
事案に鑑み、まず、相違点16-2について検討する。
引用発明2bは「K2 前記静電チャックデバイス124の表面を前記下部電極132の支持部材中間層134の表面に接合するシート状接着剤122を含」むものであるから、該「シート状接着剤122」は、「静電チャックデバイス124」に用いられたものであるから、引用発明2bの「円盤形状の穴あきシート」は、載置された基板を下から支持する部材において用いられるものといえる。
また、引用例2には、「静電チャックデバイス(基板支持コンポーネント)124」について、基板支持コンポーネント以外の用途に用いるという記載は見出すことができない。

そうすると、基板を下から支持する部材に、「中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部」を設けても、載置された基板によって、該「第1開口部」が塞がれ、光監視システム用の通路として機能しなくなることは明らかであるから、引用発明2bの「円盤形状の穴あきシート」に、「中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部」を設けることには、阻害要因があるというべきである。

また、引用例1、3、4、周知例1?3のいずれにも、基板を下から支持する部材に、「中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部」を設けることを示唆する記載は見出せない。

したがって、相違点15、相違点16、相違点16-1及び相違点16-3について検討するまでもなく、本件特許発明6は、引用発明2bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

f 本件特許発明2?5、7?9について
本件特許発明2?5は、本件特許発明1を引用し、さらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様な理由から、引用発明1aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件特許発明7?9は、本件特許発明6を引用し、さらに限定したものであるから、本件特許発明6と同様な理由から、引用発明1bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)サポート要件(特許法第36条第6項第1号)について
本件特許発明の課題は、「半導体処理チャンバ内の部品及び/又はコンポーネントを組み立てるために利用される強固な接着材料」(本件明細書【0004】)を提供することと解されるところ、本件特許発明1?9における「接着材料」について、「ヤング率が300psi(=300lbf/in^(2)=2.07MPa)より低い」点、「伸びが150%を超える」点、及び「プラズマプロセス中における接合界面での熱膨張の不整合に起因する表面変動に順応することができ」る点を発明特定事項に有している。

そして、「ヤング率が300psi(=300lbf/in^(2)=2.07MPa)より低い」ことは、低弾性を意味することは明らかである(必要であれば、特開2011-86191号公報の【0057】の「弾性部62としては、例えば発泡ウレタン系の材料を用いればよい。例えば発泡ポリウレタンは、発泡率により弾性率を変化させることができ、ヤング率2MPa以下の低弾性を実現可能である。」という記載を参照されたい。)。

そうすると、本件特許発明は、半導体チャンバ内の部品やコンポーネントが、プラズマプロセス中に加熱された場合であっても、それらの部品やコンポーネントの接合に用いられた接着材料が、低いヤング率であり、低弾性であり、十分伸びるものであって、接合界面での熱膨張の不整合に起因する表面変動に順応して、強固な接着材料となることができるものと、発明の詳細な説明の記載から、認識できるものであるといえる。

したがって、このような発明特定事項を有する「接着材料」によって、「半導体処理チャンバ内の部品及び/又はコンポーネントを組み立てるために利用される強固な接着材料」が得られるといえることから、請求項1?9の記載が特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない、ということはできない。

(ウ)明確性要件(特許法第36条第6項第2号)について
a 請求項1及び6に記載された「規則的パターン」について
請求項1、6において、「規則的なパターン」は、「グリッド、円形状配列、又は放射状パターン」と特定されており、「規則的なパターン」が不明確とはいえない。
b 請求項1及び6に記載された「実質的に等しい」及び「僅かに大きい」について 本件訂正請求によって訂正された特許請求の範囲には、「実質的に」及び「僅かに」という用語は用いられておらず、請求項の記載が不明確とはいえない。
c 以上のとおり、請求項1?9の記載が特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない、ということはできない。

(エ)特許異議申立人の意見について
申立人は、本件訂正請求に対し、意見書を提出しなかった。

イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由によっては、本件請求項1?9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
チャンバコンポーネントを接合するために使用される接着材料
【発明の背景】
【0001】
(発明の分野)
本発明の実施形態は、概して、半導体処理チャンバに関しており、より具体的には、半導体処理チャンバコンポーネントを接合するのに適した接着材料に関する。
【0002】
(関連技術の説明)
半導体処理には、多くの異なる化学的及び物理的処理が含まれ、これによって微細な集積回路が基板上に作られる。集積回路を構成する材料の層は、化学蒸着、物理蒸着、エピタキシャル成長等によって作られる。材料の層のいくつかは、フォトレジストマスク及びウェット又はドライエッチング技術を用いてパターニングされる。集積回路を形成するために利用される基板は、シリコン、ガリウムヒ素、リン化インジウム、ガラス、又は任意の他の好適な材料が可能である。
【0003】
典型的な半導体処理チャンバは、多数のコンポーネントを有する場合がある。いくつかのコンポーネントは、処理ゾーンを画定するチャンバ本体と、処理ゾーン内にガス供給部から処理ガスを供給するように適合されたガス分配アセンブリと、処理ゾーン内で処理ガスを励起するために利用されるガス励起装置(例えば、プラズマ発生器)と、基板支持アセンブリと、ガス排気装置を含む。いくつかのコンポーネントは、部品の組立体で構成することができる。例えば、シャワーヘッドアセンブリは、セラミックス製ガス分配板に接着接合された導電性ベースプレートを含むことができる。部品の有効的な接合は、適切な接着剤及び優れた接合技術が要求され、これによって熱膨張の不一致を補償し、いかなる界面欠陥をも逆に作成することなく、部品が互いにしっかりと付くことを保証する。
【0004】
従って、半導体処理チャンバ内の部品及び/又はコンポーネントを組み立てるために利用される強固な接着材料が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、半導体処理チャンバコンポーネントの接合に適した強固な接着材料を提供する。一実施形態では、半導体チャンバコンポーネントの接合に適した接着材料は、ヤング率が300psiよりも低い接着材料を含む。
【0006】
別の一実施形態では、半導体チャンバコンポーネントは、第2の表面に隣接して配置された第1の表面と、第1の表面を第2の表面に接合する接着材料であって、接着材料はヤング率が300psiよりも低い接着材料を含む。
【0007】
更に別の一実施形態では、半導体処理チャンバコンポーネントを接合するための方法は、第1のコンポーネントの表面上に、ヤング率が300psiよりも低い接着材料を塗布する工程と、第1のコンポーネントの表面に接着材料との接触を介して第2のコンポーネントを接合する工程と、第1及び第2のコンポーネントを接合する接着剤層を熱処理する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の上述した構成を詳細に理解することができるように、上記に簡単に要約した本発明のより具体的な説明を、実施形態を参照して行う。実施形態のいくつかは添付図面に示されている。
【図1】本発明に係る接合材料を用いた処理チャンバの一実施形態の断面図を示す。
【図2】本発明に係る接着材料によって接合される基板の一実施形態の断面図を示す。
【図3】本発明に係る接着材料の穴あきシートによって接合される基板の一実施形態の分解断面図を示す。
【0009】
しかしながら、添付図面は本発明の典型的な実施形態を示しているに過ぎず、従って、この範囲を制限していると解釈されるべきではなく、本発明は他の等しく有効な実施形態を含み得ることに留意すべきである。
【0010】
理解を促進するために、図面に共通する同一の要素を示す際には可能な限り同一の参照番号を使用している。一実施形態の要素を更なる説明なしに他の実施形態に有利に使用してもよいと理解される。
【詳細な説明】
【0011】
本発明の実施形態は、本発明の接着材料によって接合される半導体処理チャンバ内で使用される部品や処理チャンバコンポーネントを接合するための強固な接着材料及びそれらの部品やコンポーネントの製造方法を提供する。一実施形態では、強固な接合材料は、ガス分配アセンブリ又は半導体処理チャンバの他の異なるアセンブリ内の接合部に対して良好な接合界面を提供するような、特定の所望の接着材料特性を有するシリコーン系材料である。接着材料は、過酷なプラズマエッチング環境内等で利用されるコンポーネント間で強固な接合を提供するように、所望の範囲の熱膨張係数、熱応力、伸び、及び熱伝導率を有する。
【0012】
図1は、本発明に係る接合材を利用した少なくとも1つのコンポーネントを有する半導体処理チャンバ100の一実施形態の断面図である。好適な処理チャンバ100の一例は、カリフォルニア州サンタクララのアプライドマテリアルズ社(Applied Materials, Inc.)から入手可能な、CENTURA(商標名) ENABLER(商標名)エッチングシステムが可能である。なお、本明細書に開示される本発明の技法の1以上から恩恵を受けるように、他の処理チャンバを使用可能であることが理解される。
【0013】
処理チャンバ100は、内部容積106を囲むチャンバ本体102及び蓋104を含む。チャンバ本体102は、典型的には、アルミニウム、ステンレス鋼又は他の好適な材料から作られる。チャンバ本体102は、一般的に側壁108及び底部110を含む。基板アクセスポート(図示せず)は、一般的に側壁108内に画定されており、スリットバルブによって選択的に封止され、これによって処理チャンバ100からの基板144の出し入れを促進する。チャンバ本体102の側壁108に接して、外側ライナ116を配置することができる。プラズマ又はハロゲン含有ガスに耐性のある材料で、外側ライナ116を製造する及び/又はコーティングすることができる。一実施形態では、外側ライナ116は、酸化アルミニウムから製造される。別の一実施形態では、外側ライナ116は、イットリウム、イットリウム合金又はそれらの酸化物から製造される又はコーティングされる。更に別の一実施形態では、外側ライナ116は、バルクY_(2)O_(3)から製造される。
【0014】
排気口126は、チャンバ本体102内に画定され、内部容積106をポンプシステム128に結合する。ポンプシステム128は、一般的に処理チャンバ100の内部容積106の圧力を排気して調節するために利用される1以上のポンプ及びスロットルバルブを含む。一実施形態では、ポンプシステム128は、典型的に約10mTorr?約20Torrの動作圧力で内部容積106内の圧力を維持する。
【0015】
蓋104は、チャンバ本体102の側壁108上で密閉して支持される。蓋104は、処理チャンバ100の内部容積106への過剰量を許容するために開くことができる。蓋104は、オプションとして、光処理監視を促進する窓142を含むことができる。一実施形態では、窓142は、光監視システム140によって利用される信号を透過する石英又は他の好適な材料から構成される。本発明から利益を得るように利用可能な1つの光監視システムは、カリフォルニア州サンタクララのアプライドマテリアル社から入手可能なEyeD(商標名)フルスペクトル干渉計測モジュールである。
【0016】
ガスパネル158は処理チャンバ100に結合され、これによって内部容積106へ処理ガス及び/又はクリーニングガスを供給する。処理ガスの例としては、ハロゲン含有ガス(特に、C_(2)F_(6)、SF_(6)、SiCl_(4)、HBr、NF_(3)、CF_(4)、Cl_(2)、CHF_(3)、CF_(4)、SiF_(4)など)、及び他のガス(O_(2)又はN_(2)Oなど)を含むことができる。キャリアガスの例としては、N_(2)、He、Ar、処理に対して不活性な他のガス、及び非反応性ガスを含む。図1に示される実施形態では、入口ポート132’、132’’(総称してポート132)が蓋104内に提供され、これによってガスパネル158からガス分配アセンブリ130を介して処理チャンバ100の内部容積106へとガスを送出することができる。
【0017】
ガス分配アセンブリ130は、蓋104の内面114に結合されている。ガス分配アセンブリ130は、導電性ベースプレート196に結合されたガス分配板194を含む。導電性ベースプレート196は、RF電極として機能することができる。一実施形態では、導電性ベースプレート196は、アルミニウム、ステンレス鋼、又は他の好適な材料で作ることができる。ガス分配板194は、ハロゲン含有化学物質に対する耐性を提供するために、セラミックス材料(例えば、炭化ケイ素、バルクイットリウム、又はその酸化物)から作ることができる。あるいはまた、ガス分配板194は、ガス分配アセンブリ130の寿命を延ばすために、イットリウム又はその酸化物でコーティングしてもよい。
【0018】
導電性ベースプレート196は、本発明に係る接着材料122によって、ガス分配板194に接合されている。接着材料122は、導電性ベースプレート196の下面又はガス分配板194の上面に塗布され、これによってガス分配板194を導電性ベースプレート196に機械的に接合することができる。一実施形態では、接着材料122は、ガス分配板194と導電性ベースプレート196との間に強固な接合界面を提供する、特定の所望の特性を有するシリコーン系材料である。接着材料122は、導電性ベースプレート196とガス分配板194を確実に接合するのに十分な接合エネルギーを提供する。接合材料122は更に、プラズマ処理中に加熱したときに、ガス分配板194と導電性ベースプレート196との間の熱膨張の不整合に起因する層間剥離を防止するのに十分に対応して、ガス分配板194と導電性ベースプレート196との間に良好な熱伝達を提供するのに十分な熱伝導性も提供する。接着材料122はまた、ガス分配アセンブリ130を組み立てるために利用される他の部品及び/又はコンポーネントを接合するためにも使用可能であることが理解される。一実施形態では、接着材料122の層は、必要に応じて、複数の接着リング及び/又は複数の接着ビード(玉縁)又は溝を含み、これによってガス分配板194を通してガス送出の独立したゾーンを分離する。
【0019】
一実施形態では、接着材料122は、図2を参照して更に後述する接合コンポーネント間の接合エネルギーを促進するために選択された所望の特性を有する、熱伝導性ペースト、接着剤、ゲル、又はパッドであることができる。接着材料は、接着リング、接着ビード、又はそれらの組み合わせの形態の界面に塗布することができる。ガス分配板194は、基板144に向かって面するガス分配板194の下面に形成された複数の開口部134を有する平坦な円盤であることができる。ガス分配板194の開口部134は、導電性ベースプレート196を貫通して形成された対応する開口部154と整列しており、これによって入口ポート132(132’、132’’として図示される)から1以上のプレナム(127、129として図示される)を通って処理チャンバ100の内部容積106内へと、チャンバ100内で処理されている基板144の表面全域に亘って所定の分布でガスを流すことができる。
【0020】
ガス分配アセンブリ130は、蓋104と導電性ベースプレート196との間に配置され、内側プレナム127と外側プレナム129を画定する仕切り125を含むことができる。ガス分配アセンブリ130内に形成された内側プレナム127及び外側プレナム129は、ガスパネルから供給されるガスがガス分配板194を通過する前に混合するのを防止することを助けることができる。仕切り125が使用される場合、対応する接着層122が、ガス分配板194と導電性ベースプレート196との間に配置され、これによってガス分配板194を通過して内部容積106に入る前に、各入口ポート132’、132’’から供給されるガスを隔離する。更に、ガス分配アセンブリ130は、光監視システム140が内部容積106及び/又は基板支持アセンブリ148上に配置された基板144を見ることができるように透過した領域又は適した通路138を更に含むことができる。通路138は、通路138からガス漏れを防止するための窓142を含む。
【0021】
基板支持アセンブリ148は、ガス分配アセンブリ130の下方の処理チャンバ100の内部容積106内に配置されている。基板支持アセンブリ148は、処理中に基板144を保持する。基板支持アセンブリ148は、一般的に支持アセンブリ148から基板144を持ち上げ、従来の方法でロボット(図示せず)による基板144の交換を促進するように構成される貫通配置された複数のリフトピン(図示せず)を含む。内側ライナ118は、基板支持アセンブリ148の周囲にコーティングしてもよい。内側ライナ118は、外側ライナ116用に用いる材料と実質的に同様のハロゲン含有ガスに耐性のある材料であってもよい。一実施形態では、内側ライナ118は、外側ライナ116と同じ材料から作ることができる。内側ライナ118は、温度を調節するために流体源124から供給される熱伝導流体を通す内部導管120を含むことができる。
【0022】
一実施形態では、基板支持アセンブリ148は、取付板162、ベース164、及び静電チャック166を含む。取付板162は、チャンバ本体102の底部110に結合され、ベース164及びチャック166へユーティリティ(特に、流体、電力線、及びセンサのリード線等)をルーティングするための通路を含む。
【0023】
ベース164又はチャック166の少なくとも1つは、少なくとも1つのオプションの組込ヒーター176、少なくとも1つのオプションの組込アイソレータ174、及び複数の導管168、170を含み、これによって支持アセンブリ148の横方向の温度プロファイルを制御することができる。導管168、170は、温度調節流体を循環させる流体源172に流体結合される。ヒーター176は、電源178によって調節される。導管168、170、及びヒーター176は、ベース164の温度を制御するために利用され、これによって静電チャック166を加熱及び/又は冷却する。静電チャック166及びベース164の温度は、複数の温度センサ190、192を用いて監視することができる。静電チャック166は、更に、例えば、静電チャック166の基板支持面内に形成され、熱伝達(又は裏面)ガス(Heなど)の供給源に流体結合された複数の通路(溝など、図示せず)を更に含むことができる。動作時には、裏面ガスが圧力を制御してガス通路内に供給され、これによって静電チャック166と基板144との間の熱伝達を高める。
【0024】
静電チャック166は、チャッキング電源182を使用して制御される少なくとも1つのクランプ電極180を含む。電極180(又はチャック166又はベース164内に配置された他の電極)は、処理チャンバ100内で処理ガス及び/又は他のガスから形成されたプラズマを維持するために、整合回路188を介して1以上のRF電源184、186に更に結合することができる。電源184、186は、一般的に約50kHz?約3GHzの周波数と、約10,000ワットまでの電力を有するRF信号を生成することができる。
【0025】
ベース164は、ガス分配アセンブリ130内でガス分配板194と導電性ベース196を接合するために利用される接合材料122と実質的に類似又は同一であるかもしれない接合材料136によって静電チャック166に固定されている。上述したように、接合材料136は、静電チャック166とベース164との間の熱エネルギー交換を促進し、それらの間の熱膨張の不整合を補償する。例示的な一実施形態では、接合材料136は、静電チャック166をベース164に機械的に接合する。なお、接合材料136はまた、基板支持アセンブリ148を組み立てるために利用される他の部品及び/又はコンポーネントを接合する(例えば、ベース164を取付板162に接合する)のに使用可能であることが理解される。
【0026】
図2は、第1の表面204を第2の表面206に接合するために使用される接着材料122(又は材料136)の一実施形態の断面図を示す。表面204、206は、必要に応じて、ガス分配アセンブリ130内に形成されたガス分配板194及び導電性ベースプレート196の表面に、基板支持アセンブリ148内で使用される他のコンポーネントの表面に、又は他のチャンバコンポーネントの表面に画定されることができる。一実施形態では、接着材料122は、図1に示されるように、ガス分配アセンブリ130内で導電性ベースプレート196にガス分配板194を接合するために利用される接着材料122であってもよい。
【0027】
接着材料122は、ゲル、接着剤、パッド又はペーストの形態であることができる。好適な接着材料のいくつかの例としては、アクリル系及びシリコーン系化合物を含むが、これらに限定されない。別の一実施形態では、好適な例としては、アクリル、ウレタン、ポリエステル、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、PEVA、PBMA、PHEMA、PEVAc、PVAc、ポリN-ビニルピロリドン、ポリ(エチレンビニルアルコール)、樹脂、ポリウレタン、プラスチック又は他のポリマー接着材料を含むことができる。
【0028】
一実施形態では、接着材料122は、低ヤング率(例えば、300psi未満)を有するように選択される。低ヤング率を有する接着材料は、比較的適合しており、プラズマプロセス中における接合界面での表面変動に順応することができる。プラズマ処理中に、界面における表面は、プラズマ反応で発生した熱エネルギーにより膨張する可能性がある。従って、2つの面204、206が2つの異なる材料(例えば、セラミックス製ガス分配板194と金属製導電性ベースプレート196)から構成される場合、界面に配置された接着材料122は、界面での熱膨張の不整合に順応するのに十分適合している。従って、低ヤング率を有する接着材料122は、プラズマ処理中に低い熱応力を提供し、これによって界面での熱膨張の不整合に順応するために所望の程度の適合性を提供する。一実施形態では、接着材料は、約2メガパスカル未満の熱応力を有するように選択される。
【0029】
更に、接着材料122は、高い伸び率(例えば、約150%を超える)及び高い熱伝導率(例えば、約0.1W/mK?約5.0W/mK)を有するように選択される。接着材料122の伸びは、引張試験により測定することができる。接着材料122の高い熱伝導率は、セラミックス製ガス分配板194と金属製導電性ベースプレート196の間の熱エネルギーの伝達を助け、これによってガス分配アセンブリ130の全域に亘って均一な熱伝達を維持することができる。また、接着材料122の高い熱伝導率も、処理チャンバ100の内部容積106への熱エネルギーの伝達を助け、これによって内部容積106内に均一な温度勾配を提供し、処理中にプラズマの均一な分布を助けることができる。
【0030】
一実施形態では、接着材料122は、第1の表面204と第2の表面206が確実に接合できるのに十分に選択された厚さを有する。一実施形態では、接着材料122の厚さは、約100μm?約500μmの間で選択される。接合したコンポーネント間の最終的なギャップは、約25μm?約500μmに制御することができる。50μm未満の平坦度を有するシートとして接着材料122を塗布して、これによって表面204、206間の小さな公差と良好な平行度を確保することができる。
【0031】
一実施形態では、図1を参照して上述したように、接着材料122は、必要に応じて、穴あきシート材料で、異なる寸法を有する円形リング、同心円リング、又はメッシュの形であることができる。第1の表面204と第2の表面206が、接着材料122によって接合された後に、熱処理(例えば、ベーキング、アニーリング、熱浸漬、又は他の好適な熱処理)を行い、これによって第1の表面204と第2の表面206との間の接着材料122の接合を助けることができる。接着層によって接合した後、第1の表面204と第2の表面206の界面は、100μm未満の表面均一性プロファイルを有する実質的平面となる。
【0032】
図3は、穴あきシート300の形態の接着材料122を有する一実施形態のガス分配アセンブリ130の分解図を示している。穴あきシート300は、上述される接着材料122のような寸法的及び物理的特性を有することができる。穴あきシート300は、円盤形状を有することができ、実質的に、ガス分配板194と同じ直径を有することができる。穴あきシート300は、開口部134、154と整列するように配置されている予め形成された複数の開口部302を含む。複数の開口部302は、規則的なパターン(特に、グリッド、円形状配列、又は放射状パターンなど)で配置されることができる。開口部134、154、302の直径は、実質的に等しいか、又は開口部302の直径が開口部134、154の直径よりも僅かに大きく、これによってガス分配アセンブリ130を通過する流れは、最小の制限を有する。更に、開口部134、154、302は直径がほとんど又は全く違いのない同心円であるので、接着層を貫通する開口部の形状が、接着層が穴のあいた非シート形状ではないときに普及している楕円形又は他の非円形形状であるときにより可能性のある、開口部134、154、302が合うときにおける粒子やその他の潜在的な汚染物質の蓄積の可能性が最小となる。
【0033】
上記は本発明の実施形態を対象としているが、本発明の他の及び更なる実施形態は本発明の基本的範囲を逸脱することなく創作することができ、その範囲は以下の特許請求の範囲に基づいて定められる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤング率が300psi(=300lbf/in^(2)=2.07MPa)より低い接着材料を含み、前記接着材料は、伸びが150%を超える円盤形状の穴あきシートであり、前記接着材料は、セラミックス製ガス分配板と金属製導電性ベースプレートの間にガス通路を画定するように配置され、前記接着材料は、プラズマプロセス中における接合界面での熱膨脹の不整合に起因する表面変動に順応することができ、前記穴あきシートは、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部と整列するように配置されている予め形成された複数の開口部を含み、前記複数の開口部は、中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部と、その周囲に規則的なパターンで配置されたガス通路のための複数の第2開口部とを含み、前記規則的なパターンは、グリッド、円形状配列、又は放射状パターンであり、前記セラミックス製ガス分配板の開口部、前記金属製導電性ベースプレートの開口部、及び前記穴あきシートの開口部は、直径が等しいか、又は前記穴あきシートの開口部の直径が、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部の直径よりも大きい、半導体チャンバコンポーネントを接合するのに適した接着材料。
【請求項2】
前記接着材料はシリコーン系化合物である請求項1記載の材料。
【請求項3】
前記接着材料は熱応力が2MPa未満である請求項1記載の材料。
【請求項4】
前記接着材料は熱伝導率が0.1W/mK?5W/mKである請求項1記載の材料。
【請求項5】
前記接着材料は厚さが100μm?500μmである請求項1記載の材料。
【請求項6】
第2の表面に隣接して配置された第1の表面と、
前記第1の表面を前記第2の表面に接合する接着材料を含み、前記接着材料はヤング率が300psi(=300lbf/in^(2)=2.07MPa)よりも低く、前記接着材料は、伸びが150%を超える円盤形状の穴あきシートであり、前記第1の表面はセラミックス製ガス分配板であり、前記第2の表面は金属製導電性ベースプレートであり、前記接着材料は前記第1の表面と前記第2の表面の間にガス通路を画定するように配置され、前記接着材料は、プラズマプロセス中における接合界面での熱膨張の不整合に起因する表面変動に順応することができ、前記穴あきシートは、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部と整列するように配置されている予め形成された複数の開口部を含み、前記複数の開口部は、中央部に光監視システム用の通路のための第1開口部と、その周囲に規則的なパターンで配置されたガス通路のための複数の第2開口部とを含み、前記規則的なパターンは、グリッド、円形状配列、又は放射状パターンであり、前記セラミックス製ガス分配板の開口部、前記金属製導電性ベースプレートの開口部、及び前記穴あきシートの開口部は、直径が等しいか、又は前記穴あきシートの開口部の直径が、前記セラミックス製ガス分配板の開口部及び前記金属製導電性ベースプレートの開口部の直径よりも大きい半導体チャンバコンポーネント。
【請求項7】
前記接着材料はシリコーン系化合物である請求項6記載の半導体チャンバコンポーネント。
【請求項8】
前記接着材料は熱応力が2MPa未満である請求項6記載の半導体チャンバコンポーネント。
【請求項9】
前記接着材料は熱伝導率が0.1W/mK?5W/mKであり、厚さが100μm?500μmである請求項6記載の半導体チャンバコンポーネント。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-26 
出願番号 特願2013-538813(P2013-538813)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C09J)
P 1 651・ 121- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松原 宜史  
特許庁審判長 國島 明弘
特許庁審判官 井上 能宏
川端 修
登録日 2016-09-09 
登録番号 特許第6002672号(P6002672)
権利者 アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
発明の名称 チャンバコンポーネントを接合するために使用される接着材料  
代理人 安齋 嘉章  
代理人 安齋 嘉章  

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