• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01B
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01B
管理番号 1340132
異議申立番号 異議2017-700968  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-10-11 
確定日 2018-04-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6113348号発明「インホイールモータ用動力ケーブルおよびその配線構造・選択方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6113348号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、7について訂正することを認める。 特許第6113348号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6113348号の請求項1乃至7に係る特許についての出願は、平成28年10月18日に特許出願され、平成29年3月24日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成29年10月11日に特許異議申立人白澤哲明より特許異議の申立てがされ、平成29年12月8日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年2月13日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人白澤哲明により平成30年3月26日付けで意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者は、特許請求の範囲の請求項1を以下の事項により特定されるとおりの請求項1として訂正することを請求する。(訂正事項1)なお、下線は訂正部分を示す。以下、同様。
「【請求項1】車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータ用動力ケーブルであって、導体部と、この導体部の外周を覆う絶縁体と、この絶縁体の外周を覆う中空のシールド線と、このシールド線の外周を覆うシースとを含み、前記導体部は、素線が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなり、かつ前記素線がスズメッキ軟銅線であり、前記絶縁体が軟質フッ素樹脂であり、前記シールド線が銅箔糸編組ケーブルであるインホイールモータ用動力ケーブル。」に訂正する。
なお、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?6も、請求項1の訂正に伴い連動して訂正されたことになる。
特許権者は、特許請求の範囲の請求項5を以下の事項により特定されるとおりの請求項5として訂正することを請求する。(訂正事項2)
「【請求項5】車輪内部に配置されてこの車輪を駆動するインホイールモータ駆動装置と、このインホイールモータ駆動装置を車体に上下振動の吸収を可能に連結するサスペンション装置と、一端が前記インホイールモータ駆動装置に設けられる動力線接続部に接続され、他端が前記車体まで延び、前記車体上のモータ電力供給源から前記インホイールモータ駆動装置へ電力を供給する屈曲可能な動力ケーブルとを備え、この動力ケーブルが、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のインホイールモータ用動力ケーブルであるインホイールモータ用動力ケーブルの配線構造。」
なお、請求項5の記載を引用する請求項6も、請求項5の訂正に伴い連動して訂正されたことになる。
特許権者は、特許請求の範囲の請求項7を以下の事項により特定されるとおりの請求項7として訂正することを請求する。(訂正事項3)
「【請求項7】車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータの動力ケーブルとして使用する電気ケーブルを、既存の、または新たに設計される電気ケーブルの中から選択する方法であって、次の各要件、導体部と、この導体部の外周を覆う絶縁体と、この絶縁体の外周を覆う中空のシールド線と、このシールド線の外周を覆うシースとを含む要件、前記導体部は、素線が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなる要件、前記素線がスズメッキ軟銅線である要件、前記絶縁体が軟質フッ素樹脂である要件、および、前記シールド線が銅箔糸編組ケーブルである要件、を全て充足する電気ケーブルを選択することを特徴とするインホイールモータ用動力ケーブルの選択方法。」
特許権者は、明細書の段落【0007】に記載された「この発明のインホイールモータ用動力ケーブルは、導体部と、」を、「この発明のインホイールモータ用動力ケーブルは、車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータ用動力ケーブルであって、導体部と、」に訂正することを請求する。(訂正事項4)
特許権者は、明細書の段落【0012】に記載された「前記車体部から前記インホイールモータ駆動装置へ」を、「前記車体上のモータ電力供給源からインホイールモータ駆動装置へ」に訂正することを請求する。(訂正事項5)
特許権者は、明細書の段落【0014】に記載された「この発明のインホイールモータ用動力ケーブルの選択方法は、インホイールモータ」を、「この発明のインホイールモータ用動力ケーブル選択方法は、車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータ」に訂正することを請求する。(訂正事項6)
特許権者は、明細書の段落【0016】に記載された「この発明のインホイールモータ用動力ケーブルは、導体部と、」を、「この発明のインホイールモータ用動力ケーブルは、車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータ用動力ケーブルであって、導体部と、」に訂正することを請求する。(訂正事項7)
特許権者は、明細書の段落【0017】に記載された「前記車体部から」を、「前記車体上のモータ電力供給源から」に訂正することを請求する。(訂正事項8)
特許権者は、明細書の段落【0018】に記載された「この発明のインホイールモータ用動力ケーブルの選択方法は、インホイールモータ」を、「この発明のインホイールモータ用動力ケーブルの選択方法は、車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータ」に訂正することを請求する。(訂正事項9)

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1?3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項4、7は、上記訂正事項1に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るためのものであるから、訂正事項4、7は、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項5、8は、上記訂正事項2に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るためのものであるから、訂正事項5、8は、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項6、9は、上記訂正事項3に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るためのものであるから、訂正事項6、9は、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、訂正前の請求項1?6は、請求項2?6が、訂正の対象である請求項1を直接または間接的に引用する関係にあり、請求項6が、訂正の対象である請求項5を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正事項1?9は、特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項[1?6]、7について訂正を認める。

3.本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?7に係る発明(以下、「本件発明1?7」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
本件発明1「車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータ用動力ケーブルであって、導体部と、この導体部の外周を覆う絶縁体と、この絶縁体の外周を覆う中空のシールド線と、このシールド線の外周を覆うシースとを含み、前記導体部は、素線が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなり、かつ前記素線がスズメッキ軟銅線であり、前記絶縁体が軟質フッ素樹脂であり、前記シールド線が銅箔糸編組ケーブルであるインホイールモータ用動力ケーブル。」
本件発明2「請求項1に記載のインホイールモータ用動力ケーブルにおいて、前記導体部の中心に、この動力ケーブルに作用する引っ張り力を負担する引張力負担部材を有するインホイールモータ用動力ケーブル。」
本件発明3「請求項1または請求項2に記載のインホイールモータ用動力ケーブルにおいて、前記導体部を成す前記複合撚線は、前記集合撚線が撚り合わされた内側複合撚線部と、この内側集合撚線部の外周に前記集合撚線が撚り合わされて並ぶ外側複合撚線部とでなる二重複合撚線であるインホイールモータ用動力ケーブル。」
本件発明4「請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のインホイールモータ用動力ケーブルにおいて、前記シースが軟質フッ素樹脂またはポリエステルエラストマーであるインホイールモータ用動力ケーブル。」
本件発明5「車輪内部に配置されてこの車輪を駆動するインホイールモータ駆動装置と、このインホイールモータ駆動装置を車体に上下振動の吸収を可能に連結するサスペンション装置と、一端が前記インホイールモータ駆動装置に設けられる動力線接続部に接続され、他端が前記車体まで延び、前記車体上のモータ電力供給源から前記インホイールモータ駆動装置へ電力を供給する屈曲可能な動力ケーブルとを備え、この動力ケーブルが、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のインホイールモータ用動力ケーブルであるインホイールモータ用動力ケーブルの配線構造。」
本件発明6「請求項5に記載のインホイールモータ用動力ケーブルの配線構造であって、前記サスペンション装置が、前記インホイールモータ駆動装置を、上下方向に延びる転舵軸線を中心として転舵可能に車体に連結するインホイールモータ用動力ケーブルの配線構造。」
本件発明7「車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータの動力ケーブルとして使用する電気ケーブルを、既存の、または新たに設計される電気ケーブルの中から選択する方法であって、次の各要件、導体部と、この導体部の外周を覆う絶縁体と、この絶縁体の外周を覆う中空のシールド線と、このシールド線の外周を覆うシースとを含む要件、前記導体部は、素線が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなる要件、前記素線がスズメッキ軟銅線である要件、前記絶縁体が軟質フッ素樹脂である要件、および、前記シールド線が銅箔糸編組ケーブルである要件、を全て充足する電気ケーブルを選択することを特徴とするインホイールモータ用動力ケーブルの選択方法。」

4.取消理由の概要
訂正前の請求項1?7に係る特許に対して平成29年12月8日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1乃至7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2?第6号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1乃至7に係る特許は、取り消されるべきものである。

5.甲号証の記載
ア.甲第1号証
甲第1号証(特開2016-19306号公報)には、図とともに以下の記載がある。(下線は当審にて付与した。以下、同様。)
a.
「【背景技術】
【0002】
近年、自動車の電装化やロボットの普及などにともない、屈曲を繰り返し受ける場所に電気ケーブルを取り付けるケースが多くなっている。例えば、次世代の自動車において、インバータとインホイールモータといった2つの相対的に移動する電気機器を電気ケーブルで接続することが提案されている。この場合、電気ケーブルの一端部はインバータに接続され、電気ケーブルの他端部はインホイールモータに接続される。また、インバータは自動車の車体側に実装され、インホイールモータは自動車のバネ下に位置する車輪側に実装される。このため、インバータとインホイールモータとを接続する電気ケーブルは車体の外(以下、「車外」ともいう。)に露出した状態で取り付けられ、その露出した部分が、車輪の上下動(バウンド、リバウンドなど)によって繰り返し屈曲することになる。よって、屈曲を繰り返し受ける場所に取り付けられる、すなわち2つの相対的に移動する電気機器を接続する電気ケーブルにおける導体には、高い屈曲耐久性が求められる。」
b.「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、インバータとインホイールモータとを接続する電気ケーブルなどは、車外に露出して取り付けられる。このため、自動車の走行中に飛び石などが電気ケーブルにぶつかる可能性がある。実際に飛び石が電気ケーブルにぶつかると、そのときの衝撃によって電気ケーブルが急激に変形することがある。
【0006】
これに対して、電気ケーブルの両端部には、それぞれ固定金具のスリーブにかしめによって取り付けられており、さらに、これら固定金具はそれぞれインバータの筐体とインホイールモータの筐体とに取り付けられている。このため、自動車の走行中に飛び石などがぶつかって電気ケーブルが急激に変形すると、電気ケーブルに大きな引張力が加わる。電気ケーブルは、相対的に伸びにくい導体と、相対的に伸びやすいシースと、によって構成されている。このため、電気ケーブルに引張力が加わると、相対的に伸びにくい導体に対して、より大きな負荷(引張応力)がかかってしまう。これに起因して、屈曲を繰り返し受ける場所に取り付けられる電気ケーブルにおいては、屈曲耐久性が著しく低下してしまうという問題があった。
【0007】
本発明の主な目的は、相対的に移動する2つの電気機器を接続する電気ケーブルに何らかの原因で引張力が加わった場合に、その引張力によって導体にかかる負荷を軽減することができ、もって屈曲耐久性の向上が可能な電気ケーブルの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
導体と、該導体の外側に設けられたシースと、を有する電気ケーブルの両端部にそれぞれ固定具を固定して固定具付電気ケーブルとし、相対的に移動可能に配置された2つの電気機器のうち、一方の電気機器の筐体に前記固定具を用いて前記電気ケーブルを取り付け、他方の電気機器の筐体に前記固定具を用いて前記電気ケーブルを取り付けた、電気ケーブルの取付構造であって、
前記電気ケーブルは、前記シースに対して前記導体が前記電気ケーブル長さ方向に相対的に移動自在に構成され、
前記固定具は、前記シースに対する前記導体の相対移動を許容する状態で前記シースの端部を把持するスリーブを有し、
前記電気ケーブル長さ方向の少なくとも一方側では、前記シースの端部よりも前記導体の端部が前記電気機器の筐体内に突出して配置されるとともに、前記筐体内で前記導体が弛みを付けて曲げられている
電気ケーブルの取付構造である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、相対的に移動する2つの電気機器を接続する電気ケーブルに何らかの原因で引張力が加わった場合に、その引張力によって導体にかかる負荷を軽減することができ、もって屈曲耐久性の向上が可能である。」
c.
「【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
<電気ケーブルの用途及び取付環境>
本発明の実施の形態に係る電気ケーブルは、例えば産業ロボットや自動車の分野において、電源ケーブル、信号ケーブル、あるいはそれらを複合した複合ケーブルとして用いられる。また、電気ケーブルは、相対的に移動可能に配置された2つの電気機器を接続する場合に用いられる。ここで記述する「相対的に移動可能に配置」とは、一方の電気機器(以下、「第1の電気機器」ともいう。)が固定側に実装され、他方の電気機器(以下、「第2の電気機器」ともいう。)が可動側に実装された状態、あるいは、2つの電気機器がいずれも可動側に実装された状態をいう。産業ロボットや自動車の分野でいえば、2つの電気機器のうち少なくともいずれか一方の電気機器が、ロボットや自動車の可動部分に実装された状態をいう。
【0012】
電気ケーブルの用途について具体的に記述すると、産業ロボットの分野では、例えば、ロボットの本体部(固定側)に第1の電気機器を実装するとともに、ロボットのアーム部(可動側)に第2の電気機器を実装し、それら2つの電気機器を電気ケーブルで接続する場合が考えられる。自動車の分野では、例えば、自動車の車体部分(固定側)に第1の電気機器を実装するとともに、自動車の車輪部分(可動側)に第2の電気機器を実装し、それら2つの電気機器を電気ケーブルで接続する場合が考えられる。
【0013】
本実施の形態に係る電気ケーブルの取付構造は、特に、自動車の分野において、飛び石や雪の塊などがぶつかる可能性のある車体の外に電気ケーブルを露出させて取り付ける場合などに適用して好適なものである。電気ケーブルを車体の外(以下、「車外」ともいう。)に露出させて取り付ける場合とは、例えば上述したように、自動車の車体部分に実装した第1の電気機器と、自動車の車輪部分に実装した第2の電気機器とを、電気ケーブルで接続する場合である。
【0014】
具体的に記述すると、図1に示すように、ハイブリッド自動車などに実装されるインバータ(モータ駆動機器)1とインホイールモータ2とを、電気ケーブル3で接続する場合である。この場合、インバータ1は、自動車の車体4側に実装され、インホイールモータ2は、自動車のバネ5の下に位置する車輪6側に実装される。
【0015】
また、電気ケーブル3の両端部にはそれぞれ固定具の一例として固定金具7が固定されている。電気ケーブル3の一端部は、固定金具7を用いてインバータ1の筐体に取り付けられ、電気ケーブル3の他端部は、固定金具7を用いてインホイールモータ2の筐体に取り付けられる。また、電気ケーブル3の一部は自動車の車外に露出して配置され、この露出したケーブル部分が車体側に支持金具8で支持される。」
d.
「【0018】
<電気ケーブルの構成>
図2は本発明の実施の形態に係る電気ケーブルの取付構造に適用される電気ケーブルの構成例を示す断面図である。
図示した電気ケーブル3は、適度な可撓性を有するものであって、大きくは、電線部11と、この電線部11の外側に設けられた外層部12と、を備えた構成となっている。
本明細書においては、電気ケーブルの長さ方向を「ケーブル長さ方向」、電気ケーブルの直径方向を「ケーブル径方向」、電気ケーブルの中心軸周りの円周方向を「ケーブル円周方向」という。また、ケーブル径方向に関しては、電気ケーブルの中心(中心軸)に近い側を「内側」、電気ケーブルの中心から遠い側を「外側」という。
【0019】
(電線部)
電線部11は、断面が円形の導体13と、この導体13の外周面を覆う絶縁層14と、を有している。導体13は、電気ケーブル3が信号ケーブルであれば信号線路を形成し、電気ケーブル3が電源ケーブルであれば電源線路を形成するものである。
【0020】
(導体)
導体13は、電線部11の芯線として、電線部11の中心に配置されている。導体13は、例えば、スズめっき軟銅からなる線導体(一例として、導体断面積(SQ)=3mm2)を用いて形成することができる。導体13は、1本の線導体、又は複数本の線導体を撚り合わせてなる撚線によって構成することができる。また、導体13は、軟銅線、銀めっき軟銅線、スズめっき銅合金線等の金属線を用いて形成することもできる。
【0021】
(絶縁層)
絶縁層14は、導体13の外周の全面を覆うように、導体13と同心円状に形成されている。これにより、電線部11は、絶縁電線を構成している。絶縁層14の内周面は、ケーブル円周方向の全周にわたって導体13の外周面に接触している。絶縁層14は、一定の厚み寸法(例えば、0.7mm厚)で形成されている。絶縁層14は、例えば、架橋ポリエチレン(Cross-linked polyethylene:XLPE)によって形成することができる。また、絶縁層14は、ポリエチレン、発泡ポリエチレン、架橋発泡ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂等の樹脂材料によって形成することもできる。
【0022】
(外層部)
外層部12は、電線部11を保護するもので、電線部11を囲む状態に配置されている。外層部12は、筒状のシース16と、このシース16の内面を覆う補強編組層17と、を有している。
【0023】
(シース)
シース16は、電気ケーブル3の外被を構成するものである。シース16は、断面円形に形成されている。このため、外層部12は、全体的に円筒状(チューブ状)に形成されている。外層部12の筒内には、上述した電線部11が挿入されている。シース16は、ケーブル径方向において最も外側に位置している。このため、シース16の外周面は、電気ケーブル3の外周面を構成している。シース16は、絶縁材料によって形成されている。具体的には、シース16は、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム等のゴム材料を用いて、0.5mm程度の厚さで形成されている。シース16を形成するゴム材料は、耐熱性、耐候性、及び耐油性に優れた特性を発揮するゴム材料を用いることが好ましい。一例として、ブレーキホース用のゴム材料を用いることができる。」
e.
「【0030】
<電線部と外層部の関係>
次に、電線部11と外層部12の関係について説明する。
まず、従来の電気ケーブルについて簡単に説明する。従来の電気ケーブルでは、ケーブル全体の径をなるべく小さくするという発想から、電線部と外層部を互いに密着させて構成している。このため、従来の電気ケーブルでは、外層部と電線部とが一体化しており、外層部に対して電線部をケーブル長さ方向に相対的に移動させることができない構造になっている。
【0031】
これに対して、本実施の形態に係る電気ケーブル3では、電線部11と外層部12との間に空間18が設けられている。空間18は、電線部11の外径D1と外層部12の内径D2との関係をD1<D2に設定することにより、それらの寸法差に応じて、電気ケーブル3の内部に形成されている。空間18は、導体13とシース16とを同心円状に配置したときに、導体13を有する電線部11とシース16を有する外層部12との間に、ケーブル円周方向の全周にわたって一様な寸法Gmで形成される。また、電線部11の絶縁層14と外層部12の補強編組層17とは、寸法Gmの空間18を介して対向する状態に配置される。
【0032】
このように電気ケーブル3の内部に空間18を設けることにより、外層部12に対して電線部11がケーブル長さ方向に相対的に移動自在となる。ここで記述する「相対的に移動自在」とは、所要の長さの電気ケーブル3を真っ直ぐな姿勢に保持し、その状態で外層部12内の電線部11をケーブル長さ方向に引っ張ったときに、外層部12とは独立して電線部11を移動させることができる状態をいう。また、「所要の長さ」とは、第1の電気機器(例えば、インバータ1)と第2の電気機器(例えば、インホイールモータ2)とを接続するのに必要な長さをいう。また、電気ケーブル3の内部では、空間18の存在により、外層部12に対して電線部11がケーブル径方向にも相対的に移動自在(変位可能)となっている。
【0033】
なお、図2においては、説明の便宜上、電線部11と外層部12とを同心円状に配置しているが、電気ケーブル3内では電線部11がある程度自由に動ける状態になっている。このため、電気ケーブル3を取り付けたときの向きによって、ケーブル径方向における電線部11と外層部12の位置関係が変わる。例えば、電気ケーブル3を水平に取り付けた場合は、電線部11が自重で下側に片寄って配置される。
・・・中略・・・
【0037】
(インナースリーブ)
インナースリーブ21は、円筒状に形成されている。インナースリーブ21の一端部は連結部24の側面部につながっている。インナースリーブ21は、外層部12の内側に嵌り込む部分となる。インナースリーブ21は、連結部24の厚み方向の一方に突出する状態で形成されている。インナースリーブ21及びガイドスリーブ23の内側には、正面視円形の通し孔26が形成されている。通し孔26は、電線部11を通すための孔である。通し孔26の直径D4は、インナースリーブ21及びガイドスリーブ23の内径に相当する。このため、以降の説明では、通し孔26の直径D4を、インナースリーブ21の内径、あるいは、ガイドスリーブ23の内径とも称する。この直径D4は、電線部11の外径D1よりも大きく設定されている。このため、インナースリーブ21の内側に形成された通し孔26に電線部11を挿入しても、ケーブル長さ方向における電線部11の移動は阻害されることがない。」
f.
「【0052】
<他の実施の形態>
図7は本発明の他の実施の形態において、電気ケーブルと固定金具との結合関係を示す側断面図である。
本発明の他の実施の形態においては、先に述べた実施の形態と比較して、電気ケーブル3の構成が異なる。具体的には、電線部11を構成する絶縁層14の外周がシールド編組層15によって覆われている。シールド編組層15の端部は、固定金具7のインナースリーブ21とアウタースリーブ22との間に、外層部12とともに挿入されている。シールド編組層15は、かしめ部30によりインナースリーブ21に接触した状態で配置されている。また、シールド編組層15の端部は、外層部12の端部で上側に折り返されている。
【0053】
(シールド編組層)
シールド編組層15は、電気的なシールド機能を有するもので、絶縁層14の外周面を覆うように形成されている。シールド編組層15は、導体13を芯として絶縁層14と同心円状に形成されている。シールド編組層15の内周面は、絶縁層14の外周面に接触している。シールド編組層15は、繊維又は糸からなる芯の周囲に銅箔が設けられた銅箔糸を用いて形成することができる。シールド編組層15は、複数の銅箔糸を交差させて編み込む、いわゆる編み組によって形成されている。」

g.
図1によれば、「車輪6側に実装されるインホイールモータ2」は、車体に「バネ5」を含むサスペンション装置により連結されていることは明らかである。

以上の記載(特に、下線部)によれば、甲第1号証には、電気ケーブル3について以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「自動車の車体4側に実装されたインバータ1と車体にバネ5を含むサスペンション装置により連結されているインホイールモータ2とを、接続する電気ケーブル3であって、
電気ケーブル3は、適度な可撓性を有するものであって、電線部11と、この電線部11の外側に設けられた外層部12と、を備えた構成となっており、電線部11は、導体13と、この導体13の外周面を覆う絶縁層14と、を有し、電線部11と外層部12との間に空間18が設けられており、電気ケーブル3の内部に空間18を設けることにより、外層部12に対して電線部11がケーブル長さ方向に相対的に移動自在となり、
導体13は、電気ケーブル3が信号ケーブルであれば信号線路を形成し、電気ケーブル3が電源ケーブルであれば電源線路を形成するものであり、電線部11の芯線として、電線部11の中心に配置され、1本の線導体、又は複数本の線導体を撚り合わせてなる撚線によって構成することができ、導体13は、例えば、スズめっき軟銅からなる線導体を用いて形成することができ、また、軟銅線、銀めっき軟銅線、スズめっき銅合金線等の金属線を用いて形成することもでき、
絶縁層14は、導体13の外周の全面を覆うように、導体13と同心円状に形成され、絶縁層14は、例えば、架橋ポリエチレンによって形成することができ、また、ポリエチレン、発泡ポリエチレン、架橋発泡ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂等の樹脂材料によって形成することもでき、
外層部12は、電線部11を保護するもので、電線部11を囲む状態に配置された筒状のシース16と、このシース16の内面を覆う補強編組層17と、を有し、
シース16は、電気ケーブル3の外被を構成するものであり、絶縁材料によって形成され、シース16を形成するゴム材料は、耐熱性、耐候性、及び耐油性に優れた特性を発揮するゴム材料を用いることが好ましく、
電線部11を構成する絶縁層14の外周がシールド編組層15によって覆われており、シールド編組層15は、電気的なシールド機能を有するもので、絶縁層14の外周面を覆うように形成されている。シールド編組層15は、導体13を芯として絶縁層14と同心円状に形成され、シールド編組層15の内周面は、絶縁層14の外周面に接触し、繊維又は糸からなる芯の周囲に銅箔が設けられた銅箔糸を用いて形成することができる、電気ケーブル3。」

イ.甲第2号証
甲第2号証(5訂 電線・ケーブルハンドブック,日立電線株式会社編,山海堂,平成2年5月15日,p32-33)には、次の記載がある。
「(4)より線
大容量の電流を流すための導体はサイズが大きなものが必要であるが,この場合単線を使うと,硬く曲げにくいばかりでなく1条の長さがきわめて制限される。したがって、大サイズの導体,または小サイズでも特に可とう性を必要とする場合にはより線が使用される。より線の方式としては,同心より,集合より及び複合よりがある。
(a)同心より
最も多く使われるもので,硬銅線,スズメッキ硬銅線または軟銅線の素線1本ないし数本を中心とし,その上に各層を同心状により合わせる方式・・・中略・・・
(b)集合より
細い心線・・・をひとまとめにして同方向により合わせるより方で,・・・集合より線は主としてコードのような可とう性を必要とする絶縁電線の心線として使用される(一般には導体断面積14mm^(2)以下).
(c)複合より
ロープよりとも呼ばれ,集合よりまたは同心よりとした軟銅線もしくはスズメッキ軟銅線を素線とし,さらにそれを同心よりにより合わせるより方をいう(図2.16).複合より線は可とう性を必要とする絶縁電線のうち比較的導体サイズの大きい場合の導体として使用される(一般には導体断面積22mm^(2)以上).」(第32頁第26行-第33頁第20行)

ウ.甲第3号証
甲第3号証(特開2015-49998号公報)には、図とともに次の記載がある。
「【0013】
以下、本発明の基本的構成を、添付図面を参照しながら説明する。
図1及び図2の電源用ケーブル1において、複数本の金属素線を撚り合わせた導体部2、導体部2を滑り素材3で被覆した被覆付き導体部4、導体部2及び/又は(滑り素材3で被覆した)被覆付き導体部4を複数本撚り合わせた複合導体部5、複合導体部5の中央に緩衝材6、複合導体部5の上に抑えの滑り素材7、絶縁体8、シールド層9、外層10が同芯円上に施される。
【0014】
導体部2の構成は、集合撚り、同芯撚り等の撚り線である。材質は、錫めっき軟銅線、銀めっき軟銅線などが好ましい。耐屈曲性及び耐捻回性の観点より、撚り方向は複合導体部5等に統一されている方が好ましい。」

「【0018】
複合導体部5及び抑えの滑り素材7の上には、絶縁体8が施される。絶縁体8の材質としては、特に限定しないが、耐屈曲性及び耐捻回性の観点から、柔軟性に優れるポリエチレン、軟質フッ素樹脂等が好まれる。
・・・中略・・・
【0020】
外層10の材質は特に限定しないが、耐屈曲性及び耐捻回性の観点より、柔軟性に優れるポリエチレン樹脂、ポリエステルエラストマー等が好ましい。肉厚等の寸法についても特に限定せず、一般的なケーブルに適用されるものとする。」

エ.甲第4号証
甲第4号証(特開平3-25805号公報)には、図とともに次の記載がある。
「〔産業上の利用分野〕
本発明は、主として産業用ロボット等のメカトロニクス機器を始めとする各種移動機械等、極度の屈曲や激しい震動等の苛酷な条件下で使用される電線用導体に関する。
〔従来の技術〕
従来の電線用導体の構造は、1本の金属線からなる単線、あるいは、細い単線を束ねた集合撚線(撚線を構或する単線を特に素線という)、あるいは、第6図に示すように素線aを同軸状に撚り合わせた同心撚線、又は、第7図に示すように同心撚線bを更に撚り合わせた複合撚線、さらには、集合撚線を更に撚り合わせた複合撚線等がある。」(第1頁右欄第1行-第17行)

「そこで、本発明はこのような問題点を解決し、耐屈曲性及び耐震性に優れ、かつ可撓性に富み、ロボット等のメカトロニクス機器に使用しても充分に耐え得る電線のための導体を提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は上記課題を解決するために、強靭鐵維から成る補強ベースの周囲に、単線または集合撚線から成る複数本の導体線を同軸状に撚り合わせた。
また、上記補強ベース入り同心撚線の複数本を更に撚り合わせた。
また、複数本の上記補強ベース入り同心撚線を更に強靭繊維から成る別の中心補強ベースの周囲に同心撚りした。」(第2頁左上欄第17行-右上欄第11行)

「〔実施例〕
以下、図示の実施例に基づいて本発明を説明する。
第1図は本発明に係る電線用導体の一実施例を示し、1は、例えばアラミド繊維またはカーボン繊維等の強靭繊維から成る補強ベースであり、耐震性及び耐屈曲性に優れると共に可撓性に富む。該補強ベース1の周囲には、単線または集合撚線から成る複数本の導体線2・・・を同軸状に撚り合わせた同心撚線4をもって、導体を構成している。同図では複数本の同心撚りの導体線2・・・から形成された導体線層3を、2層備えた場合を示したが、これを1層あるいは3層以上にしてもよい。また、補強ベース1の強靭繊維は、ストレート状に束ねてもよいが、撚線にすれば更に耐震性及び耐屈曲性に優れ、可撓性が向上する。」(第2頁右上欄第19行-左下欄第11行)

オ.甲第5号証
甲第5号証(特開2006-96968号公報)には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、電線ジャケット用材料、電線ジャケット及びLANに用いるケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
LANに用いるケーブルは、一般に、フッ素樹脂等からなる絶縁材により被覆した銅線を複数本束ねたものを、主に難燃性付与を目的として、電線ジャケットと称する樹脂製チューブ内に擁してなる。」
「【0018】
本発明の電線ジャケット用材料は、フッ素樹脂(A)に、更に、軟質樹脂(B)を配合してなるものであってもよい。
本発明の電線ジャケット用材料は、フッ素樹脂(A)に加え更に上記軟質樹脂(B)をも含むものである場合、柔軟性ないし可撓性に特に優れた成形体を得ることができ、一般に高価格であるフッ素樹脂の使用量低減による低価格化をも可能にすることができる。
【0019】
本明細書において、「軟質樹脂(B)」は、電線ジャケット用材料に配合することにより、配合しないものに比べ、得られる成形体に柔軟性ないし可撓性を付与し得る高分子である。
本明細書において、軟質樹脂(B)は、便宜上「樹脂」なる用語を含むが、樹脂のみならず、ゴムであってもよい概念である。」

カ.甲第6号証
甲第6号証(特開2015-160498号公報)には、図とともに次の記載がある。
「【0034】
図1?図6に示すサスペンション装置は、ダブルウィッシュボーン式サスペンション装置であり、インホイールモータ駆動装置11の上部と連結するアッパアーム22と、インホイールモータ駆動装置11の下部と連結するロアアーム23と、インホイールモータ駆動装置11のバウンド量およびリバウンド量を減衰させるダンパ31とを備える。アッパアーム22、ロアアーム23、およびダンパ31の各部品自体は公知のものでよい。
【0035】
アッパアーム22は図4に示すように略V字状であり、V字の両端になる車幅方向内側端部221,222を基端として図示しない車体側メンバ、例えば車体フレーム、に揺動可能に連結される。これに対しV字の中央部になる車幅方向外側端部223は遊端をなし、第2ボールジョイント24を介して、上下アーム部13の上端部の第2ボールジョイント座部14と回動可能に連結する。第2ボールジョイント24はロードホイールWよりも上方に位置し(図1参照)、アッパアーム22の上下方向位置はローマウント型ダブルウィッシュボーン式サスペンション装置のアッパアームよりも高いことから、このサスペンション装置はハイマウント型ダブルウィッシュボーン式サスペンション装置である。なお車体側メンバとは、説明される部材からみて車体側にある部材をいうと理解されたい。
【0036】
ロアアーム23は図5に示すように車幅方向に延びる前側アームと、この前側アームの途中から分岐して後方かつ車幅方向内側へ斜めに延びる後側アームからなり、前側の車幅方向内側端部231および後側の車幅方向内側端部232を基端として図示しない車体側メンバ、例えば車体フレーム、に揺動可能に連結される。これに対しロアアーム23の車幅方向外側端部233は遊端をなし、第3ボールジョイント25を介して、インホイールモータ駆動装置11の下部の第3ボールジョイント座部17と回動可能に連結する。
【0037】
このようにロアアーム23の車幅方向外側端部233と、第3ボールジョイント25と、インホイールモータ駆動装置11の下部に設けられた第3ボールジョイント座部17は、ロードホイールWの内空領域に配置される。なお図には示さなかったが、アッパアーム22およびロアアーム23は上述したV字形状あるいは分岐形状以外のアーム部材であってもよいこと勿論である。
【0038】
上側の第2ボールジョイント24および下側の第3ボールジョイント25は、インホイールモータ駆動装置11の転舵を可能にする。すなわち第2ボールジョイント24および第3ボールジョイント25を通る仮想直線はキングピンKを構成する。そして、インホイールモータ駆動装置11とロードホイールWを含む転舵輪は、キングピンKを中心として左右方向に転舵可能にされる。図6は、右方向および左方向に最大転舵角まで転舵する場合のロアアーム23およびインホイールモータ駆動装置11の位置関係を示す。本実施形態は、例えば車両の左右の前輪に使用される。」

6.判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 特許法第29条第2項について
(ア)本件発明1について
本件発明1と引用発明とを対比すると、次の相違点を有するといえる。
(相違点1)
「導体部」が、本件発明1では、「素線が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなり、かつ前記素線がスズメッキ軟銅線」であるのに対し、引用発明では、複数本の線導体を撚り合わせてなる撚線によって構成することができ、スズめっき軟銅からなる線導体を用いて形成することができ、また、軟銅線、銀めっき軟銅線、スズめっき銅合金線等の金属線を用いて形成することもできるものである点。
(相違点2)
「導体部の外周を覆う絶縁体」が、本件発明1では、「軟質フッ素樹脂」であるのに対し、引用発明では、架橋ポリエチレンによって形成することができ、また、ポリエチレン、発泡ポリエチレン、架橋発泡ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂等の樹脂材料によって形成することもできるものである点。

上記相違点1、2について検討する。
上記甲第2号証には、集合よりまたは同心よりとした軟銅線もしくはスズメッキ軟銅線を素線とし,さらにそれを同心よりにより合わせるより方をした複合より線は可とう性を必要とする絶縁電線のうち比較的導体サイズの大きい場合の導体として使用されることが記載されており、上記甲第3号証には、複合導体部5及び抑えの滑り素材7の上には、絶縁体8が施され、絶縁体8の材質としては、特に限定しないが、耐屈曲性及び耐捻回性の観点から、柔軟性に優れるポリエチレン、軟質フッ素樹脂等が好まれることが記載されている。
しかしながら、引用発明は、「相対的に移動する2つの電気機器を接続する電気ケーブルに何らかの原因で引張力が加わった場合に、その引張力によって導体にかかる負荷を軽減することができ、もって屈曲耐久性の向上が可能な電気ケーブルの取付構造を提供すること」(甲第1号証【0007】)を主な課題とし、課題を解決するための手段として、主に、電気ケーブルがシースに対して導体が電気ケーブル長さ方向に相対的に移動自在に構成するようにしたものであるから、引用発明において、上記甲第2、3号証記載の技術を適用し、スズメッキ軟銅線を素線とした複合より線を導体とし、かつ絶縁体を軟質フッ素樹脂とすることには動機付けがない。
したがって、本件発明1は、引用発明、甲第2?第6号証に記載された技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得るものではない。

(イ)本件発明2?6について
本件発明2?6は本件発明1を減縮したものであり、本件発明1と同様の理由で、本件発明2?6は、引用発明及び甲第2?第6号証に記載された技術事項から当業者が容易になし得るものではない。

(エ)本件発明7について
本件発明7は本件発明1を減縮したものであり、本件発明1と同様の理由で、本件発明7は、引用発明及び甲第2?第6号証に記載された技術事項から当業者が容易になし得るものではない。

(オ)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、「本件特許発明において採用されている素線・絶縁体・シールド線・シースの材質は公知ないし周知の材質です。さらに、ケーブル一般に内在する課題やインホイールモータに関して従来から認識されていた課題に接した当業者が、これを解決するために、各甲号証に記載されている公知ないし周知の材質や構造などから好適な材質や構造を選択し、それらを適宜組合せることは、特段の動機付けがなくとも当業者が当然に試みるものです。加えて、各種ケーブルには、その用途や使用環境に応じて様々な特性や耐性が求められることも周知の事実であり、求められる特性や耐性を満たすために、公知ないし周知の材質や構造などから好適な材質や構造を選択し、それらを適宜組合せることは、正に設計事項です。」と主張する。
しかしながら、甲第1号証に記載された発明(引用発明)は、「相対的に移動する2つの電気機器を接続する電気ケーブルに何らかの原因で引張力が加わった場合に、その引張力によって導体にかかる負荷を軽減することができ、もって屈曲耐久性の向上が可能な電気ケーブルの取付構造を提供すること」を主な課題とするものであり、本件発明の「ケーブル最大径が太くなり過ぎずに、大電流を流すため導体部の断面積を十分確保できて、屈曲が頻繁に加わっても、長期間の運用において断線などの不具合回避が可能となり、また製造過程において特殊な工程が不要で安価に得られる」(本件特許明細書【0006】)という課題とは異なるものであり、甲第1号証に記載された発明(引用発明)において、導体を「素線が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなり、かつ前記素線がスズメッキ軟銅線」とし、かつ、導体の外周を覆う絶縁体を「軟質フッ素樹脂」することは、単なる設計的事項であるとは認められないから、かかる主張は理由がない。

イ 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、特許異議申立書において、「本件特許の請求項1には「前記絶縁体が軟質フッ素樹脂であり」と記載され、請求項4には「前記シースが軟質フッ素樹脂またはポリエステルエラストマーである」と記載され、請求項7には、「前記絶縁体が軟質フッ素樹脂である要件」と記載されている。しかし、「軟質フッ素樹脂」がどのような樹脂であるのかについて本件特許明細書には具体的な説明がない。仮に、「軟質フッ素樹脂」が通常の「フッ素樹脂」よりも軟質なフッ素樹脂を意味するとしても、そもそも通常のフッ素樹脂の硬度(硬さや軟らかさ)は一義的ではないばかりか、本件特許明細書には「軟質フッ素樹脂」と「フッ素樹脂」との比較の基準や方法等について一切記載されていない。さらに、フッ素樹脂を軟質化させるためには何らかの物質を添加する必要があると思われるが、添加すべき物質の種類についても、添加の割合(添加量)についても本件特許明細書には一切の説明がない。よって、本件特許明細書の記載は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。」と主張(明細書の記載不備(特許法第36条第4項第1号))している。
また、「本件特許請求の範囲の請求項1,4,7には「軟質フッ素樹脂」なる記載がある。しかし、上記「6.明細書の記載不備(特許法第36条第4項第1号)」の欄で述べたとおり、本件特許発明における「軟質フッ素樹脂」がどのようなフッ素樹脂であるのかについては、本件特許明細書の記載を参酌しても明らかではない。よって、「軟質フッ素樹脂」なる記載を含む請求項1、4、7及びこれらの請求項を引用する請求項2,3,5,6に係る発明は不明確であり、本件特許請求の範囲に特許を受けようとする発明が明確に記載されているとはいえない。」とも主張(特許法第36条第項第2号)する。
しかしながら、「フッ素樹脂」の柔軟性を良好にした「軟質フッ素樹脂」は、当業者において知られており(甲第3号証(特開2015-49998号公報)段落【0018】の「絶縁体8の材質としては、特に限定しないが、耐屈曲性及び耐捻回性の観点から、柔軟性に優れるポリエチレン、軟質フッ素樹脂等が好まれる。」の記載、特開2010-272407号公報段落【0005】の「フッ素樹脂は、強靱で機械的強度にも優れているものの柔軟性に乏しいという問題がある。この点を改良したいわゆる軟質フッ素樹脂と称するものも開発されている」の記載参照。)、かかる主張は理由がない。

5.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
インホイールモータ用動力ケーブルおよびその配線構造・選択方法
【技術分野】
【0001】
この発明は、インホイールモータに動力ケーブルとして用いるインホイールモータ用動力ケーブル、インホイールモータ用動力ケーブルの配線構造、およびインホイールモータ用動力ケーブルの選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の振動や屈曲が頻繁に加わる箇所に使用される電気ケーブルとして、次の提案がなされている。
例えば、図8に示すように、高強度の抗張力線の周囲に複数の導体線を撚り合わせ、その周囲に絶縁層を形成してなる電線11において、その電線11を複数撚り合わせ、シース12で覆う構成とすることで、機械的強度と可撓性を高めた電気ケーブル10が提案されている(特許文献1)。
また、図9に示すように、導体と絶縁層からなる複数の電線11と、おさえ部材12と、その外周を覆うシース13とを備えた電気ケーブルにおいて、絶縁層の表面に、電線の長手方向に沿った溝が形成されており、電気ケーブルに屈曲が加わったとき、複数の電線が互いに相対移動をする電気ケーブル10が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-305479号公報
【特許文献2】特許第4984626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2の提案は、共に、シース内部には絶縁層を有した電線を撚り合わせる構成となっており、シース内部に更に絶縁層を有することから、ケーブル最外径が太くなってしまう恐れがある。これら特許文献1,2には、インホイールモータ用の動力ケーブルとして使用することの記載はないが、インホイールモータ用の動力ケーブルとして使用する場合、次の課題がある。
インホールモータに使用する動力ケーブルは、大電流を流すため導体部の断面積を十分確保する必要が有り、特許文献1,2のような複数の導体部を絶縁層で覆う仕様の場合、上記のようにケーブル最外径が太くなることで、最小曲げRを十分に確保できなくなる恐れがある。
また、特許文献1の提案では、撚り合わせられる個々の線が高強度の抗張力線を有し、特許文献2の提案では絶縁層に溝を持たせる構造となっており、共に製造過程において特殊な工程を要するため、ケーブルが高価になる事が懸念される。
【0005】
そこで、インホイールモータ用の動力ケーブルとして好適な電気ケーブルを、他の用途向けに販売されているものから調べてみた。インホールモータ用動力ケーブルは振動や屈曲が頻繁に加わるため、ロボットケーブルを活用することになる。しかし、一概にロボットケーブルといっても多くの仕様が有り、そのため、インホイールモータに最適なケーブル仕様は、限られたものとなる。
【0006】
この発明の目的は、ケーブル最大径が太くなり過ぎずに、大電流を流すため導体部の断面積を十分確保できて、屈曲が頻繁に加わっても、長期間の運用において断線などの不具合回避が可能となり、また製造過程において特殊な工程が不要で安価に得られるインホイールモータ用動力ケーブル、インホイールモータ用動力ケーブルの配線構造、およびインホイールモータ用動力ケーブルの選択方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のインホイールモータ用動力ケーブルは、車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータ用動力ケーブルであって、
導体部と、この導体部の外周を覆う絶縁体と、この絶縁体の外周を覆う中空のシールド線と、このシールド線の外周を覆うシースとを含み、前記導体部は、素線が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなり、かつ前記素線がスズメッキ軟銅線であり、前記絶縁体が軟質フッ素樹脂であり、前記シールド線が銅箔糸編組ケーブルである。
【0008】
この構成によると、導体部に絶縁層を有しない集合撚線を用いているため、複合撚線でありながら、ケーブル最大径が太くなることが回避される。そのため、導体部が、素線を複数本撚り合わされた集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなることと相まって、インホイールモータに使用する動力ケーブルとして要求される大電流を流すために導体部の断面積を十分に確保しても、前記素線として絶縁層を有する電線を用いた場合に比べて屈曲し易くなり、最小曲げRを十分に確保できる。また、前記素線がスズメッキ軟銅線であり、前記絶縁体が軟質フッ素樹脂であり、前記シールド線が銅箔糸編組ケーブルであることからも、動力ケーブルが屈曲耐性に優れたものとなる。インホイールモータは要求される駆動トルクが大きい事から、動力ケーブルに流れる電流も大きく、動力ケーブルからの放射ノイズが懸念されるが、導体部の外側にシールド線を有するため、放射ノイズも防止される。
導体部の材質および構成と絶縁体の材質との組み合わせについては、屈曲試験により、前記の導体部の材質・構成、および絶縁体の材質であることが、屈曲耐性において優れることが確認できた。
【0009】
この発明のインホイールモータ用動力ケーブルにおいて、前記導体部の中心に、この動力ケーブルに作用する引っ張り力を負担する引張力負担部材を有するようにしても良い。前記引張力負担部材としては、ケブラーやその他、引っ張り強度の強い可撓性の材質が好ましい。
導体部に引張応力が加わるような使用環境が想定されるが、そのような使用環境であっても、前記引張力負担部材を有することで、引張応力による断線が防止される。
【0010】
この発明のインホイールモータ用動力ケーブルにおいて、前記導体部を成す前記複合撚線は、前記集合撚線が撚り合わされた内側複合撚線部と、この内側集合撚線部の外周に前記集合撚線が撚り合わされて並ぶ外側複合撚線部とでなる二重複合撚線であっても良い。
導体部が二重複合撚線であると、より屈曲耐性が優れたものとなる。
【0011】
この発明のインホイールモータ用動力ケーブルにおいて、前記シースが軟質フッ素樹脂またはポリエステルエラストマーであってもよい。
軟質フッ素樹脂またはポリエステルエラストマーは、柔軟性に優れるため、これを前記シースに用いることで、屈曲耐性、捻回耐性がより優れた動力ケーブルとなる。
【0012】
この発明のインホイールモータ用動力ケーブルの配線構造は、車輪内部に配置されてこの車輪を駆動するインホイールモータ駆動装置と、このインホイールモータ駆動装置を車体に上下振動の吸収を可能に連結するサスペンション装置と、一端が前記インホイールモータ駆動装置に設けられる動力線接続部に接続され、他端が前記車体まで延び、前記車体上のモータ電力供給源から前記インホイールモータ駆動装置へ電力を供給する屈曲可能な動力ケーブルとを備え、この動力ケーブルが、この発明の上記いずれかの構成のインホイールモータ用動力ケーブルである。
この配線構造によると、前記動力ケーブルには車両の走行に伴って上下振動による屈曲が頻繁に生じるが、この発明のインホイールモータ用動力ケーブルにつき説明したように、前記動力ケーブルにつき、最大径が太くなり過ぎずに、大電流を流すため導体部の断面積を十分確保できて、屈曲が頻繁に加わっても、長期間の運用において断線などの不具合回避が可能となり、また製造過程において特殊な工程が不要で安価に得られる。
【0013】
この発明のインホイールモータ用動力ケーブルの配線構造において、前記サスペンション装置が、前記インホイールモータ駆動装置を、上下方向に延びる転舵軸線を中心として転舵可能に車体に連結する構成であっても良い。
転舵用のサスペンション装置を介して車体に連結されるインホイールモータ駆動装置では、前記動力ケーブルに作用する曲げが大きくなり、この曲げが上下振動に加わるが、この発明のインホイールモータ用動力ケーブルを用いるため、このような過酷な状況によっても、長期間の運用において断線などの不具合が回避される。
【0014】
この発明のインホイールモータ用動力ケーブルの選択方法は、車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータの動力ケーブルとして使用する電気ケーブルを、既存の、または新たに設計される電気ケーブルの中から選択する方法であって、選択基準として、次の各要件を全て充足する電気ケーブルを選択することを特徴とする。
導体部と、この導体部の外周を覆う絶縁体と、この絶縁体の外周を覆う中空のシールド線と、このシールド線の外周を覆うシースとを含む要件。
前記導体部は、素線が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなる要件。
前記素線がスズメッキ軟銅線である要件。
前記絶縁体が軟質フッ素樹脂である要件。
前記シールド線が銅箔糸編組ケーブルである要件。
【0015】
これらの要件を充足する電気ケーブルを選択することで、この発明のインホイールモータ用動力ケーブルについて前述したように、ケーブル最大径が太くなり過ぎずに、大電流を流すため導体部の断面積を十分確保できて、屈曲が頻繁に加わっても、長期間の運用において断線などの不具合回避が可能となり、また製造過程において特殊な工程が不要で安価に得られるインホイールモータ用動力ケーブルとなる。また、このように選択するように定めることで、インホイールモータに適する動力ケーブルの仕様が明確となる。
【発明の効果】
【0016】
この発明のインホイールモータ用動力ケーブルは、車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータ用動力ケーブルであって、導体部と、この導体部の外周を覆う絶縁体と、この絶縁体の外周を覆う中空のシールド線と、このシールド線の外周を覆うシースとを含み、前記導体部は、素線が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなり、かつ前記素線がスズメッキ軟銅線であり、前記絶縁体が軟質フッ素樹脂であり、前記シールド線が銅箔糸編組ケーブルであるため、ケーブル最大径が太くなり過ぎずに、大電流を流すため導体部の断面積を十分確保できて、屈曲が頻繁に加わっても、長期間の運用において断線などの不具合回避が可能となり、また製造過程において特殊な工程が不要で安価に得られる。
【0017】
この発明のインホイールモータ用動力ケーブルの配線構造は、車輪内部に配置されてこの車輪を駆動するインホイールモータ駆動装置と、このインホイールモータ駆動装置を車体に上下振動の吸収を可能に連結するサスペンション装置と、一端が前記インホイールモータ駆動装置に設けられる動力線接続部に接続され、他端が前記車体まで延び、前記車体上のモータ電力供給源から前記インホイールモータ駆動装置へ電力を供給する屈曲可能な動力ケーブルとを備え、この動力ケーブルが、この発明の上記いずれかの構成のインホイールモータ用動力ケーブルであるため、前記動力ケーブルにつき、最大径が太くなり過ぎずに、大電流を流すため導体部の断面積を十分確保できて、屈曲が頻繁に加わっても、長期間の運用において断線などの不具合回避が可能となり、また製造過程において特殊な工程が不要で安価に得られる。
【0018】
この発明のインホイールモータ用動力ケーブルの選択方法は、車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータの動力ケーブルとして使用する電気ケーブルを、既存の、または新たに設計される電気ケーブルの中から選択する方法であって、次の各要件、すなわち、導体部と、この導体部の外周を覆う絶縁体と、この絶縁体の外周を覆う中空のシールド線と、このシールド線の外周を覆うシースとを含む要件、前記導体部は、素線が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなる要件、前記素線がスズメッキ軟銅線である要件、前記絶縁体が軟質フッ素樹脂である要件、および、前記シールド線が銅箔糸編組ケーブルである要件、を全て充足する電気ケーブルを選択するため、ケーブル最大径が太くなり過ぎずに、大電流を流すため導体部の断面積を十分確保できて、屈曲が頻繁に加わっても、長期間の運用において断線などの不具合回避が可能となり、また製造過程において特殊な工程が不要で安価に得られ、かつ、インホイールモータに適するとして選択する動力ケーブルの仕様が明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施形態に係るインホイールモータ用動力ケーブルの概念構成の断面図である。
【図2】同インホイールモータ用動力ケーブルの具体例の断面図である。
【図3】同インホイールモータ用動力ケーブルを用いたインホイールモータ用動力ケーブルの配線構造を車両前方から見た側面図である。
【図4】同インホイールモータ用動力ケーブルの配線構造を車幅方向内側から見た正面図である。
【図5】同インホイールモータ用動力ケーブルの配線構造の平面図である。
【図6】屈曲試験機の平面図である。
【図7】屈曲試験機の正面図である。
【図8】従来の動力ケーブルの一例の断面図である。
【図9】従来の動力ケーブルの他の例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。図1に断面図を示すように、このインホイールモータ用の動力ケーブル1は、中心部から順に、導体部2と、この導体部2の外周を覆う絶縁体3と、この絶縁体3の外周を覆う中空のシールド線4と、このシールド線4の外周を覆うシース5とを含む。
【0021】
図2に示すように、導体部2は、絶縁層を有しない素線6が複数本撚り合わされた集合撚線7が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなる。前記素線6はスズメッキ軟銅線である。前記絶縁体3は、柔軟性に優れる軟質フッ素樹脂である。前記シールド線4は、可撓性、柔軟性、軽量性に優れる銅箔糸線である。前記シース5は、軟質フッ素樹脂またはポリエステルエラストマーである。
【0022】
前記導体部2の中心には、この動力ケーブル1に作用する引っ張り力を負担する引張力負担部材8が設けられている。引張力負担部材8は、ケブラー、またはその他の引っ張り強度の強い可撓性の材質が好ましい。
前記導体部2を成す前記複合撚線は、より詳しくは、引張力負担部材8の外周で円環状に一列で並ぶように、前記集合撚線7が撚り合わされた内側複合撚線部2Aと、この内側集合撚線部2Aの外周で前記集合撚線6が撚り合わされて円環状に一列で並ぶ外側複合撚線部2Bとでなる二重複合撚線である。
【0023】
この構成の動力ケーブル1によると、導体部2に絶縁層を有しない集合撚線7を用いているため、複合撚線でありながら、ケーブル最大径が太くなることが回避される。そのため、導体部2が、素線6を複数本撚り合わされた集合撚線7が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなることと相まって、インホイールモータに使用する動力ケーブルとして要求される大電流を流すために導体部の断面積を十分に確保しても、前記集合撚線7として絶縁層を有する電線を用いた場合に比べて屈曲し易くなり、最小曲げRが確保できる。導体部2が図示の例のような二重複合撚線であると、より屈曲耐性が優れたものとなる。
【0024】
また、前記素線6がスズメッキ軟銅線であり、前記絶縁体3が軟質フッ素樹脂であり、前記シールド線4が銅箔糸編組ケーブルであることからも、動力ケーブルが屈曲耐性に優れたものとなる。シース5の材質は軟質フッ素樹脂またはポリエステルエラストマーであるが、これら軟質フッ素樹脂またはポリエステルエラストマーは、柔軟性に優れるため、これをシース5に用いることで、屈曲耐性、捻回耐性が優れた動力ケーブル1となる。
【0025】
インホイールモータは要求される駆動トルクが大きい事から、動力ケーブル1に流れる電流も大きく、動力ケーブル1からの放射ノイズが懸念されるが、導体部2の外側にシールド線4を有するため、放射ノイズも防止される。
このインホイールモータ用動力ケーブル1は、導体部2に引張応力が加わるような使用環境が想定されるが、そのような使用環境であっても、ケブラー等の引張力負担部材8を有することで、引張応力による断線が防止される。
これらの効果は、次の試験によっても確認された。
【0026】
次に、インホイールモータへの適用可能性を評価するために行った試験につき説明する。
試験機および試験の概要を図6および図7と共に説明する。図6はケーブル屈曲試験機の平面図、図7は側面図である。試験機フレーム41における図の右側に設けられた水平桟42に、固定側のケーブル取付治具43が取付けられている。試験機フレーム41の左側には、上下方向に動作可能にスライド45が設置されており、このスライド45に可動側のケーブル取付治具44が固定されている。スライド45は、上下駆動装置46により上下に往復移動させられ、可動側のケーブル取付治具44は、位置Bを中心として位置mA、C間を上下移動する。上下駆動装置46は、電気モータと直動機構、または流体圧シリンダ装置等により構成される。
【0027】
試験対象の動力ケーブル1は、前記両ケーブル取付治具43,44に両端がそれぞれ固定される。固定側のケーブル取付治具43によるケーブル固定位置と、可動側のケーブル固定位置との左右の水平方向距離xは350mm、前後のオフセット量である水平方向距離yは100mmとされている。
【0028】
固定側のケーブル取付治具43に動力ケーブル1を固定した位置と、可動側のケーブル取付44に動力ケーブル1を固定した位置が同じ高さになった時のスライド座標をゼロとした場合、このスライド45は±80mm程度のストロークを動作させる。スライド45の動作周波数は2Hzとし、100万回の屈曲回数で評価する。尚、当該試験では、モータ駆動用の3相ケーブルである各相の動力ケーブル1(3本)を同時に試験し、全ての動力ケーブル1の損傷を確認した上で良否を判定する。
【0029】
判定基準は、以下の通りである。
・中心導体及びシールド線ともに全ての素線が破断無しであれば○(合格)、
・中心導体およびシールド線素線の両方に破断が見られたとしても、それぞれの破断率が10%以下なら△(適用可能性有)、
・中心導体の素線またはシールド線素線のどちらか一方でも10%以上の破断が生じた場合には×(不合格)として評価を行う。
【0030】
当該試験を実施した実施例1?2および比較例1?5に係る動力ケーブル1について、各動力ケーブル1の仕様と試験結果を下表1にまとめる。
この表に示すように、結果は、○:実施例1、実施例2, △:比較例1,比較例3,比較例4, ×:比較例2,比較例5 となった。
【0031】
【表1】

【0032】
以上の結果より、インホイールモータ用動力ケーブルに求められる要求として、次の組み合わせ(1)で構成された動力ケーブルが適している事が分かる。また、次の事項(2)?(4)が分かる。
(1):
・導体部素線の材質は、スズメッキ軟銅線であることが好ましい。
・導体部の構成は、素線を複数本撚り合わせた集合撚線を、更に複数本撚り合わせた複合撚線であることが好ましい。
・導体部を覆う絶縁体は、柔軟性に優れる軟質フッ素樹脂であることが好ましい。
・シールド線は、可撓性、柔軟性、軽量性に優れる銅箔糸(芯糸に銅箔を巻きつけた)編組ケーブルであることが好ましい。
【0033】
(2):(1)に示す電気ケーブルにおいて、導体部に引張応力が加わる様な使用環境が想定される場合には、ケブラーなどの引張強度の強い材料(表1では「中心部材」と称している)を導体部中心に配置することがより好ましい。
(3):(1)または(2)に示すケーブルにおいて、導体部の構成は、図2に示す様に、素線6を複数本撚り合わせた集合撚線撚線7を撚り合わせた内側複合撚線部2Aを構成し、更にその外側にもう一段の集合撚線7を撚り合わせた外側複合撚線部2Bを有する二重複合撚線とすることがより一層好ましい。
(4)シースとしては、屈曲耐性、捻回耐性等を考慮し、柔軟性に優れる軟質フッ素樹脂、ポリエステルエラストマー等であることがより好ましい。
【0034】
以上の試験結果を踏まえ、インホイールモータ用動力ケーブルの選択方法、すなわち、インホイールモータの動力ケーブルとして使用する電気ケーブルを、既存の、または新たに設計される電気ケーブルの中から選択する方法は、この実施形態における、次の各要件を全て充足するケーブルを選択する方法とする。
・導体部2と、この導体部2の外周を覆う絶縁体3と、この絶縁体3の外周を覆う中空のシールド線4と、このシールド線4の外周を覆うシース5とを含む要件。
前記導体部2は、素線6が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線7が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなる要件。
前記素線6がスズメッキ軟銅線である要件。
前記絶縁体3が軟質フッ素樹脂である要件、および、前記シールド線4が銅箔糸編組ケーブルである要件。
【0035】
このインホイールモータ用動力ケーブルの選択方法で選択することで、ケーブル最大径が太くなり過ぎずに、大電流を流すため導体部の断面積を十分確保できて、屈曲が頻繁に加わっても、長期間の運用において断線などの不具合回避が可能となり、また製造過程において特殊な工程が不要で安価に得られる動力ケーブルを選択することができる。また、この選択方法によると、インホイールモータに適する動力ケーブルの仕様が明確となる。
【0036】
次に、図3?図5と共に、図1または図2の実施形態に係る動力ケーブル1を使用したインホイール用動力ケーブルの配線構造の一例を説明する。このインホイール用動力ケーブルの配線構造は、車輪21の内部に配置されてこの車輪21を駆動するインホイールモータ駆動装置22と、このインホイールモータ駆動装置22を車体23に対して、上下方向に延びる転舵軸線Kを中心として転舵可能に、かつ上下振動の吸収を可能に連結するサスペンション装置24と、一端が前記インホイールモータ駆動装置22に設けられる動力線接続部25に接続され、他端が前記車体23まで延び、前記車体23から前記インホイールモータ駆動装置22へ電力を供給する屈曲可能な3本の動力ケーブル1とを備え、これら動力ケーブル1が、前記図1または図2と共に前述した前記実施形態に係るインホイールモータ用動力ケーブル1である。前記転舵軸線Kは、基本的には垂直方向であるが、車幅方向および車両前後方向のいずれにも、多少傾斜していても良い。
【0037】
インホイールモータ駆動装置22は、車軸26に車輪21を回転自在に支持する車輪用軸受27と、電動モータ28と、この電動モータ28の回転を減速して前記車輪用軸受27の回転輪(図示せず)に伝達する減速機29とを互いに一体に組付けて成る。この例では、車軸26は固定軸であり、車輪用軸受27の回転輪は外輪となり、この外輪に車輪21のホイールWが取付けられている。車輪21は、前記ホイールWとタイヤTとで構成される。電動モータ28は、同期モータまたは誘導モータ等の3相交流のモータである。
【0038】
サスペンション装置24は、ストラット式サスペンション装置であり、車幅方向に延びるロアアーム31と、これよりも上方に配置されて上下方向に延びるストラット32とを含む。ストラット32は、車輪21およびインホイールモータ駆動装置22よりも車幅方向内側に配置され、ストラット32の下端がインホイールモータ駆動装置22と結合され、ストラット32の上端が車輪21よりも上方で、車体23に連結される。車輪21の上部とインホイールモータ駆動装置22の上部は、車体23の車幅方向外側に形成されたホイールハウス23a内に収容される。
【0039】
ストラット32は、上端領域にショックアブソーバ33を内蔵して上下方向に伸縮可能なサスペンション部材である。ショックアブソーバ33の外周に、図中に1点鎖線で示すコイルスプリング34が設けられ、これらショックアブソーバ33とコイルスプリング34とで、インホイールモータ駆動装置22を、上下方向の振動吸収を可能に支持する。
【0040】
ロアアーム31は、インホイールモータ駆動装置22の軸線Oよりも下方に配置されるサスペンションであって、車幅方向外側端31a(図4)で、ボールジョイント(図示せず)を介してインホイールモータ駆動装置22に連結され、また2箇所の車幅方向内側端31b,31cで車体23に車体側メンバ(図示せず)を介して連結される。ロアアーム31は、前記車幅方向内側端31b,31cを基端とし、車幅方向外側端31aを遊端として、上下方向に揺動可能である。
【0041】
ロアアーム31よりも上方にタイロッド35が配置される。タイロッド35は車幅方向に延び、車幅方向外側端がインホイールモータ駆動装置22に回動可能に連結される。タイロッド35の車幅方向内側端は、図示しない操舵装置と連結される。この操舵装置は、タイロッド35を車幅方向に進退移動させて、インホイールモータ駆動装置22と共に車輪21を転舵軸線K回りに転舵させる。
【0042】
動力ケーブル1は、次のように接続される。インホイールモータ駆動装置22の上部に動力ケーブル端子箱36が設けられ、この動力ケーブル端子箱36に、電動モータ28の各相の内部配線(図示せず)に接続された3個の動力線接続部25が設けられている。これら動力線接続部25に、各動力ケーブル1のモータ側端が接続される。
【0043】
動力ケーブル1の車体側端は、車体23にブラケット37を介して設置されたクランプ部材38で3本束ねてクランプされ、そのクランプ部分よりも先端側の部分が、車体23上のモータ電力供給源(図示せず)に接続される。クランプ部材38の位置は、例えば、インホイールモータ駆動装置22の軸線Oよりも上方で、ホイールハウス23aの下端の車幅方向内側に続く位置である。
【0044】
動力ケーブル1のモータ側端の位置、すなわちインホイールモータ駆動装置22の動力線接続部25の位置は、インホイールモータ駆動装置22が転舵により転舵軸線K回りに回動することにより、変化する。また、動力ケーブル1のモータ側端の位置は、サスペンション装置24によるインホイールモータ駆動装置22の上下運動の吸収動作によって変化する。
【0045】
このようなインホイールモータ駆動装置22の上下運動や転舵による動作によって、各動力ケーブル1のモータ側端の位置が繰り返して変化する。しかし、上記実施形態の動力ケーブル1を用いることで、また上記実施形態のインホイールモータ用動力ケーブルの選択方法で選択した動力ケーブルを用いることで、長期間の運用における断線などの不具合回避が可能となる。
【0046】
以上、実施例に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、ここで開示した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0047】
1…動力ケーブル
2…導体部
2A…内側複合撚線部
2B…外側複合撚線部
3…絶縁体
4…シールド線
5…シース
6…素線
7…集合撚線
8…引張力負担部材
21…車輪
22…インホイールモータ駆動装置
23…車体
24…サスペンション装置
25…動力線接続部
26…車軸
27…車輪用軸受
28…電動モータ
29…減速機
31…ロアアーム
32…ストラット
35…タイロッド
36…動力ケーブル端子箱
38…クランプ部材
K…転舵軸線
T…タイヤ
W…ホイール
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータ用動力ケーブルであって、
導体部と、この導体部の外周を覆う絶縁体と、この絶縁体の外周を覆う中空のシールド線と、このシールド線の外周を覆うシースとを含み、前記導体部は、素線が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなり、かつ前記素線がスズメッキ軟銅線であり、前記絶縁体が軟質フッ素樹脂であり、前記シールド線が銅箔糸編組ケーブルであるインホイールモータ用動力ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載のインホイールモータ用動力ケーブルにおいて、前記導体部の中心に、この動力ケーブルに作用する引っ張り力を負担する引張力負担部材を有するインホイールモータ用動力ケーブル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のインホイールモータ用動力ケーブルにおいて、前記導体部を成す前記複合撚線は、前記集合撚線が撚り合わされた内側複合撚線部と、この内側集合撚線部の外周に前記集合撚線が撚り合わされて並ぶ外側複合撚線部とでなる二重複合撚線であるインホイールモータ用動力ケーブル。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のインホイールモータ用動力ケーブルにおいて、前記シースが軟質フッ素樹脂またはポリエステルエラストマーであるインホイールモータ用動力ケーブル。
【請求項5】
車輪内部に配置されてこの車輪を駆動するインホイールモータ駆動装置と、このインホイールモータ駆動装置を車体に上下振動の吸収を可能に連結するサスペンション装置と、一端が前記インホイールモータ駆動装置に設けられる動力線接続部に接続され、他端が前記車体まで延び、前記車体上のモータ電力供給源から前記インホイールモータ駆動装置へ電力を供給する屈曲可能な動力ケーブルとを備え、この動力ケーブルが、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のインホイールモータ用動力ケーブルであるインホイールモータ用動力ケーブルの配線構造。
【請求項6】
請求項5に記載のインホイールモータ用動力ケーブルの配線構造であって、前記サスペンション装置が、前記インホイールモータ駆動装置を、上下方向に延びる転舵軸線を中心として転舵可能に車体に連結するインホイールモータ用動力ケーブルの配線構造。
【請求項7】
車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータの動力ケーブルとして使用する電気ケーブルを、既存の、または新たに設計される電気ケーブルの中から選択する方法であって、次の各要件、
導体部と、この導体部の外周を覆う絶縁体と、この絶縁体の外周を覆う中空のシールド線と、このシールド線の外周を覆うシースとを含む要件、
前記導体部は、素線が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなる要件、
前記素線がスズメッキ軟銅線である要件、
前記絶縁体が軟質フッ素樹脂である要件、および、
前記シールド線が銅箔糸編組ケーブルである要件、
を全て充足する電気ケーブルを選択することを特徴とするインホイールモータ用動力ケーブルの選択方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-29 
出願番号 特願2016-204298(P2016-204298)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (H01B)
P 1 651・ 536- YAA (H01B)
P 1 651・ 121- YAA (H01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 山澤 宏
和田 志郎
登録日 2017-03-24 
登録番号 特許第6113348号(P6113348)
権利者 NTN株式会社
発明の名称 インホイールモータ用動力ケーブルおよびその配線構造・選択方法  
代理人 野田 雅士  
代理人 野田 雅士  
代理人 杉本 修司  
代理人 杉本 修司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ