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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G01G 審判 全部申し立て 2項進歩性 G01G |
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管理番号 | 1340154 |
異議申立番号 | 異議2018-700033 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-01-16 |
確定日 | 2018-04-27 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6164385号発明「電子天秤及びそれに用いられる除電器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6164385号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6164385号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし請求項5に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」といい、本件発明1ないし本件発明5を併せて「本件発明」という。)は、平成25年3月13日にされた特許出願(特願2013-50670)の一部を平成28年6月27日に新たな特許出願(特願2016-126193)とし、さらに、その一部を平成29年3月23日に新たな特許出願(特願2017-57623)としたものに係る発明である。そして、平成29年6月30日にその特許権の設定登録がされ、同年7月19日にその特許掲載公報が発行された。 これに対して、平成30年1月16日に特許異議申立人小澤典子による特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件発明1ないし本件発明5は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 計量皿と秤量機構と制御部と入力部と表示部とを有する電子天秤本体と、 風防とを備え、 前記風防が上方から電子天秤本体に配置されることにより、前記風防の内部に計量皿が配置される電子天秤であって、 除電器を備え、 前記除電器が前記風防に脱着可能となっており、かつ、 前記風防に取り付けられた前記除電器が、前記制御部によって制御されることが可能となっていることを特徴とする電子天秤。 【請求項2】 前記除電器は、高電圧発生器を備えることを特徴とする請求項1に記載の電子天秤。 【請求項3】 前記除電器は、さらに、 前記電圧発生器により電圧が印加されることにより、イオンを生成するイオン生成用電極を備えることを特徴とする請求項2に記載の電子天秤。 【請求項4】 前記イオン生成用電極は、正イオンと負イオンとを生成することを特徴とする請求項3に記載の電子天秤。 【請求項5】 計量皿と秤量機構と制御部と入力部と表示部とを有する電子天秤本体と、 風防とを備え、 前記風防が上方から電子天秤本体に配置されることにより、前記風防の内部に計量皿が配置される電子天秤に用いられる除電器であって、 前記風防に脱着可能となっており、かつ、 前記風防に取り付けられた際には、前記制御部によって制御されることが可能となっていることを特徴とする除電器。」 なお、本件発明2ないし本件発明4は、本件発明1の構成を全て含む。また、本件発明5は、本件発明1に係る「電子天秤」に用いられる「除電器」の発明である。 第3 特許異議申立ての理由の概要 1 理由1(進歩性欠如) 本件発明1ないし本件発明5は、後記の甲1文献に記載された発明と後記の甲2文献ないし甲4文献に記載された事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 すなわち、本件発明1ないし本件発明5についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当する。 甲1文献:特許第5063122号公報 甲2文献:特許第4230687号公報 甲3文献:国際公開第2008/129917号 甲4文献:特開2005-261713号公報 2 理由2(サポート要件違反) 本件特許の請求項1及び請求項5に記載された「脱着可能」、「除電器」及び「制御される」は、発明の詳細な説明に記載された形態以外の形態を含むから、本件発明1及び本件発明5は、本件特許の発明の詳細な説明に記載された内容を越える発明を含んでいる。 すなわち、本件発明1及び本件発明5についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当する。 3 理由3(明確性要件違反) 本件特許の請求項1及び請求項5に記載された「除電器」は、どのような構成要素を含むものを意味するかが不明確であるから、本件発明1及び本件発明5は、明確でない。 すなわち、本件発明1及び本件発明5についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当する。 第4 理由2及び理由3について 事案に鑑み、まず、理由2及び理由3について検討する。 1 特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、理由2及び理由3について、以下のように主張する(特許異議申立書、第8ページ下から6行目ないし第10ページ第6行)。 (1)本件発明1及び本件発明5の「脱着可能」について 本件特許の明細書(以下、「本件明細書」という。)の「後側壁30bの前面中央部には、イオナイザ60が脱着可能な凹部となる除電器取付部31が形成されている。これにより、測定者は、イオナイザ60のハウジング70の上面を、後側壁30bの前面に向かって差し込むことにより、除電器取付部31にイオナイザ60を取り付けることができるようになっている。…(中略)…また、測定者は、イオナイザ60を除電器取付部31から引き抜くことにより、除電器取付部31からイオナイザ60を取り外すことができるようになっている。」(【0024】)という記載を参酌すると、本件特許の発明の詳細な説明には、特段の取付手段等なく除電器を脱着することが記載されている。 しかし、本件発明1及び本件発明5の「脱着可能」は、単に取り付け、取り外し可能という意味であり、取付手段を用いた脱着など、発明の詳細な説明に記載された形態以外の形態をも含んでいる。そして、本件特許の出願時の技術常識に照らして、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができないことは明らかであるから、本件発明1及び本件発明5は、発明の詳細な説明に記載された内容を越える発明を含んでいる。 (2)本件発明1及び本件発明5の「除電器」について ア 本件明細書には、「イオナイザ60は、直方体状のハウジング70を有し、ハウジング70には、高電圧発生器を制御するためのスイッチ73と吸気口71と放出口72とが形成されている。また、ハウジング70の内部には、図示は省略するが、高電圧発生器と、電圧が印加されることによりイオンを生成するイオン生成用電極と、空気を送風するファンとを備えている。」(【0019】)という記載がある。 しかし、本件発明1及び本件発明5の「除電器」は、ここに記載された形態以外の形態をも含んでいる。そして、本件特許の出願時の技術常識に照らして、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができないことは明らかであるから、本件発明1及び本件発明5は、発明の詳細な説明に記載された内容を越える発明を含んでいる。 イ 本件発明1及び本件発明5の「除電器」は、どのような構成要素を含むものを意味するのか、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても明らかでないから、発明特定事項が不足していることは明らかである。すなわち、どのような除電器が含まれ、どのような除電器が含まれないのかが不明であるから、本件発明1及び本件発明5は、明確でない。 (3)本件発明1及び本件発明5の「制御される」について 本件明細書には、「電子天秤本体110の制御部150はスイッチ73のON/OFFを制御できるようになっている。」(【0024】)、「除電器制御部151aは、入力部41で入力された入力信号に基づいてイオナイザ60のスイッチ73のON/OFFを制御する。」(【0028】)という記載があり、イオナイザ60に設けたON/OFFのスイッチが電子天秤本体の制御部によって制御されることのみが記載されている。 しかし、本件発明1及び本件発明5の「制御される」は、ここに記載された制御以外の全ての制御を含んでいる。そして、本件特許の出願時の技術常識に照らして、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができないから、本件発明1及び本件発明5は、発明の詳細な説明に記載された内容を越える発明を含んでいる。 2 判断 (1)本件発明について ア 本件明細書の記載 本件明細書には、以下の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、気流の影響を防止する風防を備える電子天秤及びそれに用いられる除電器に関し、その風防の内部の静電気を除電する電子天秤に関する。 【背景技術】 【0002】 実験室等では、粉体等の被測定物を計量するために電子天秤が使用されている。このとき、測定者は、電子天秤の上面に形成された計量皿の載置面に、スプーン等を用いて被測定物を載置していきながら、表示された測定結果を確認することで、目的重量の被測定物を得ている。しかし、室内に設置された空調機器から吹き出される気流の影響等を受け、測定結果が安定しないことがある。 【0003】 そこで、気流の影響を防止するための風防を備えた電子天秤が開示されている。…(後略)…」 「【0008】 しかし、被測定物が帯電していると、被測定物と風防220との間に静電誘導によるクーロン力が発生し、測定結果が被測定物本来の質量に対して誤差を含んだものとなる。例えば、冬場の太平洋側地域のような低湿度の環境、或いはウイルスや細菌等の繁殖を抑える環境を維持するため、湿度が20?30%以下に設定されているクリーンルーム等においては、被測定物の帯電により数十mgの計量誤差が発生することがある。 よって、静電気の影響を避けるために、除電機能を用いて帯電した被測定物にイオンを吹き付けることで、静電気を中和して低減させることが実施されている(例えば、特許文献1参照)。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0010】 しかしながら、被測定物の静電気だけでなく、風防220自体の静電気が問題になることがある。また、電子天秤201では、温度の変化等により被測定物の荷重と平衡させる電磁力(磁束密度の温度変化による影響)の変化や秤量機構のわずかな伸縮等が起こり、その結果、測定結果に誤差を生じる。 【課題を解決するための手段】 【0011】 そこで、出願人は、電子天秤の風防内部の静電気を低減する方法について検討した。その結果、除電器(イオナイザ)を風防に脱着可能とすることを見出した。 【0012】 すなわち、本発明の電子天秤は、計量皿と秤量機構と制御部と入力部と表示部とを有する電子天秤本体と、風防とを備え、前記風防が上方から電子天秤本体に配置されることにより、前記風防の内部に計量皿が配置される電子天秤であって、除電器を備え、前記除電器が前記風防に脱着可能となっており、かつ、前記風防に取り付けられた前記除電器が、前記制御部によって制御されることが可能となっているようにしている。 【発明の効果】 【0013】 本発明の電子天秤によれば、除電器によって風防内部の静電気を低減することができる。」 イ 本件発明の内容 本件明細書の前記アの記載によれば、本件発明について、以下のことが認められる。 (ア)本件発明は、気流の影響を防止する風防を備える電子天秤及びそれに用いられる除電器に関し、その風防の内部の静電気を除電する電子天秤に関する(【0001】)。 (イ)粉体等の被測定物を計量するために使用される電子天秤は、室内に設置された空調機器から吹き出る気流等の影響を受け、測定結果が安定しないことがあるので、気流の影響を防止するための風防が設けられていた(【0002】、【0003】)。そして、被測定物が帯電していると、被測定物と風防との間に静電誘導によるクーロン力が発生し、測定結果に誤差が生じるので、被測定物にイオンを吹き付けて静電気を中和していた(【0008】)。 (ウ)しかし、被測定物の静電気だけでなく、風防の静電気が問題になることがある(【0010】)。 前記(イ)を踏まえると、ここでいう問題とは、具体的には、被測定物が帯電しているときだけでなく、風防が帯電しているときも、被測定物と風防との間に静電誘導によるクーロン力が発生し、測定結果に誤差が生じることであると認められる。 (エ)本件発明は、電子天秤の風防に除電器(イオナイザ)を脱着可能とすることにより、この問題を解決した(【0011】)。 (オ)本件発明は、除電器によって風防内部の静電気を低減することができるという効果を奏する(【0013】)。 (2)特許異議申立人の主張について ア 「脱着可能」について 前記(1)イのとおり、本件発明は、電子天秤では被測定物の帯電のみならず、風防の帯電によっても測定結果に誤差が生じるという課題を、風防に除電器を脱着可能とすることによって解決したものであり、除電器によって風防内部の静電気を低減することができるという効果を奏するものである。 ここで、本件発明が課題を解決できるのは、除電器が風防の静電気を中和するからであり、除電器が特段の取付手段等なしに脱着可能になっているからでないことは明らかである。すなわち、除電器がどのようにして風防に脱着可能とされているかは、本件発明が課題を解決できるか否かを何ら左右するものではない。 そうすると、本件明細書には、特段の取付手段等なしに除電器を脱着することが記載されている一方で、そのことが本件発明の発明特定事項とされていないとしても、本件発明は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているということはできない。 したがって、本件発明1及び本件発明5の「脱着可能」は発明の詳細な説明に記載された形態以外の形態をも含んでいるから、本件発明1及び本件発明5は発明の詳細な説明に記載された内容を越える発明を含んでいるとの特許異議申立人の主張(前記1(1))は、当を得ない。 イ 「除電器」について (ア)前記アで述べたことは、「除電器」の構成にも当てはまる。 すなわち、本件発明が課題を解決できるのは、除電器が風防の静電気を中和するからであり、除電器がどのような構成要素を含むかは、本件発明が課題を解決できるか否かを何ら左右するものではない。 そうすると、本件明細書には、除電器として、直方体状のハウジング70を有し、ハウジング70には高電圧発生器を制御するためのスイッチ73と吸気口71と放出口72とが形成され、ハウジング70の内部には高電圧発生器と電圧が印加されることによりイオンを生成するイオン生成用電極と空気を送風するファンとを備えるイオナイザ60が記載されている一方で、除電器がどのような構成要素を含むかが本件発明の発明特定事項とされていないとしても、本件発明は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているということはできない。 したがって、本件発明1及び本件発明5の「除電器」は発明の詳細な説明に記載された形態以外の形態をも含んでいるから、本件発明1及び本件発明5は発明の詳細な説明に記載された内容を越える発明を含んでいるとの特許異議申立人の主張(前記1(2)ア)は、当を得ない。 (イ)また、風防の静電気を中和できるものであれば、どのような構成要素を含むかに関係なく、任意の除電器を本件発明の「除電器」として使用可能であることは明らかである。 したがって、本件発明1及び本件発明5の「除電器」はどのような構成要素を含むものを意味するのか明らかでないから、本件発明1及び本件発明5は明確でないとの特許異議申立人の主張(前記1(2)イ)は、当を得ない。 ウ 「制御される」について 前記アで述べたことは、「制御される」の制御の内容にも当てはまる。 すなわち、本件発明が課題を解決できるのは、除電器が風防の静電気を中和するからであり、除電器がどのように制御されるかは、本件発明が課題を解決できるか否かを何ら左右するものではない。 そうすると、本件明細書には、イオナイザ60に設けたON/OFFのスイッチが電子天秤本体の制御部によって制御されることのみが記載されている一方で、そのことが本件発明の発明特定事項とされていないとしても、本件発明は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているということはできない。 したがって、本件発明1及び本件発明5の「制御される」は発明の詳細な説明に記載された形態以外の形態をも含んでいるから、本件発明1及び本件発明5は発明の詳細な説明に記載された内容を越える発明を含んでいるとの特許異議申立人の主張(前記1(3))は、当を得ない。 3 理由2及び理由3についてのまとめ 以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張は、いずれも採用することができない。すなわち、本件発明1及び本件発明5は、本件特許の発明の詳細な説明に記載されたものである。また、本件発明1及び本件発明5は、明確である。 したがって、本件発明1及び本件発明5についての特許は、理由2によって取り消すべきであるということはできないし、理由3によって取り消すべきであるということもできない。 第5 理由1について 1 甲1文献ないし甲4文献に記載された発明等 (1)甲2文献 ア 甲2文献の記載 甲2文献には、以下の記載がある。下線は、当審が付した。 「【請求項1】 被計量荷重受け部2が収容された計量区画3と、計量セル15が収容された秤のハウジング4とを備え、上記ハウジング4のほぼ垂直な壁の一つが計量区画3の後壁13を形成しており、上記ハウジング4のほぼ水平な壁の一つが計量区画3の床8を形成しており、上記被計量荷重受け部2が計量セル15のカンチレバーアーム30に取り付けられている秤1において、上記計量区画3の後壁13の内壁面に、少なくとも一つの棚37および/または少なくとも一つの装置ホルダー67を高さ調整可能に取り付けるための固定ホルダー装置21を取り付けたことを特徴とする秤1。」 「【請求項7】 上記ホルダー装置21が、実験室用器具24、液体か固体の供給装置44、イオナイザー、傾斜角調整可能なディスプレイパネル25のうち少なくとも一つを高さ調整可能に取り付けうるようになっている請求項1記載の秤。」 「【0020】 【好ましい実施例の詳細な説明】 図1は、秤のハウジング4と、計量区画3を囲むドラフトシールド29を備えた秤1の側面図である。秤のハウジング4の左手部分は計量セル15を含む(詳細は図示せず)。較正装置5を備えたL字形カンチレバー30は、計量セル15の荷重受け部分に接続され、荷重を計量セル15へ伝達するようにしている。L字形カンチレバー30の水平部分は、較正おもり7を受けるおもり受け要素6を有する。較正装置5は、計量区画3からの床8で遮閉された秤のハウジング4の部分に配置されている。L字形カンチレバー30の垂直部分は、計量区画3の方へ延び、計量区画3の後壁13に設けた開口部12から突き出ている突出部31を有する。突出部31は、接続ボルト22を有し、接続部11を形成する。被計量荷重受け部2は、接続ボルト22に掛かる鉤状部分10を有するので、被計量荷重受け部2を接続ボルト22から簡単に取り外すことができる。被計量荷重受け部2は、たとえばボウルや実験室用容器や試料を計量するための他の容器などいろいろな用途に用いる多様なクリップオン式装置用プラットフォームとして、あるいは計量される試料を載せるプラットフォームの役目をする。図1の実施例において、被計量荷重受け部2は、平坦な格子16の形状に構成される。格子状に構成することにより、エアドラフトによる計量エラーが起こる可能性が弱まる。なぜなら、格子状の面は、板状の面を有する計量プラットフォームよりも、エアの流れに影響を受ける部分が小さいからである。」 「【0024】 また、図1は、ホルダー装置21を示す。ホルダー装置21は後壁に配置され、その位置は、被計量荷重受け部2の鉤状部分10が突出部31のボルト22に掛かる位置より上方である。ホルダー装置21は、計量に関し、ユーザーに多くの便宜と使い方を提供する。特に、ホルダー装置21は、床8からさまざまな高さに計量区画用付属品を取り付ける役目を果たす。このことにより、計量区画3の内部で実験を行うことを可能にしている。図2?図5には、ホルダー装置21の多くの使い方の例として、ホルダー部21に取り付けうる好ましい種類の付属品をいくつか示す。 【0025】 図2は、床8の高さが調整自在でホルダー装置21に取り付けられた棚37を有する計量区画3の斜視図である。図2の実施例が示すように、棚37は、計量の対象である物質を収容する容器41を保持するために使用することができ、たとえば被計量荷重受け部2の格子状プラットフォーム16に載置された実験室用容器の中へ開口部40からその物質を供給できる。もちろん、開口部がない棚を使用してもよい。棚37とホルダー装置21を接続する接続器具39としてどのようなものが可能であるかは、図6A?図6Cの説明の中で述べる。」 「【0028】 ホルダー装置21の別の使い方の例を、図5に示す。ホルダー67は、両方向矢印60で示した方向にホルダー装置21上で高さの調節が可能であり、いろいろな付属品器具(図示せず)を保持する締め具57を有する。付属品器具には、実験室用容器、粉体や液体の供給装置、その他の計量工程に関係がある器具が含まれる。ダブルアームのばね式締め具58は、刻み付きねじ62、63で両方向矢印59の方向に、長さと角度の調節が可能である。 【0029】 また、ホルダー装置21により、さまざまに異なる仕方で、計量区画3の内部に器具を取り付けることができる。たとえば、計量対象に静電気の電荷が蓄積されないようにする手段として、ホルダー装置21にイオナイザー(図示せず)を取り付けることも考えうる。」 【図1】 【図2】 【図5】 イ 甲2文献に記載された発明 甲2文献の前記アの記載によれば、以下のことが認められる。 (ア)甲2文献には、被計量荷重受け部2が収容された計量区画3と、計量セル15が収容されたハウジング4とを備え、ハウジング4のほぼ垂直な壁の一つが計量区画3の後壁13を形成し、ハウジング4のほぼ水平な壁の一つが計量区画3の床8を形成し、被計量荷重受け部2が計量セル15のカンチレバーアーム30に取り付けられ、計量区画3の後壁13の内壁面に、棚37又は装置ホルダー67を高さ調整可能に取り付けるための固定ホルダー装置21を取り付けた秤1が記載されている(請求項1、【0024】、【0025】、【0028】、図1、図2、図5)。 (イ)秤1は、計量区画3を囲むドラフトシールド29を備える(【0020】、図1)。 (ウ)被計量荷重受け部2は、計量される試料を載せるプラットフォームの役目をする(【0020】)。 (エ)固定ホルダー装置21には、計量対象に静電気の電荷が蓄積されないようにするためのイオナイザーを取り付けることができる(請求項7、【0029】)。 (オ)以上のことをまとめると、甲2文献には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。 「被計量荷重受け部2が収容された計量区画3と、計量セル15が収容されたハウジング4とを備え、ハウジング4のほぼ垂直な壁の一つが計量区画3の後壁13を形成し、ハウジング4のほぼ水平な壁の一つが計量区画3の床8を形成し、被計量荷重受け部2が計量セル15のカンチレバーアーム30に取り付けられ、計量区画3の後壁13の内壁面に、棚37又は装置ホルダー67を高さ調整可能に取り付けるための固定ホルダー装置21を取り付けた秤1であって、 計量区画3を囲むドラフトシールド29を備え、 被計量荷重受け部2は、計量される試料を載せるプラットフォームの役目をし、 固定ホルダー装置21には、計量対象に静電気の電荷が蓄積されないようにするためのイオナイザーを取り付けることができる 秤1。」 (2)甲1文献 ア 甲1文献の記載 甲1文献には、以下の記載がある。下線は、当審が付した。 「【0028】 以下、本発明による秤のみならず秤の秤量室内の静電気の存在を判定するための方法を、簡素化した図示的性質の図面によって図示し且つ説明する。 図1は、三次元で表された秤1を示している。秤1は、秤量パン4が配置されている秤量室3を包囲している通気防止装置2を備えている。秤量パン4は、一般的な方法で秤量セルに結合されている。秤量セルは、秤1のハウジング7内(従って隠れていて見えない)で、秤量室の床30を貫通しているロッド(同じく見えない)によって配置されている。秤量されるべき物体6が入っている容器5は秤量パン4上に載置している。容器5は、ポリマー材料例えばポリエチレン又はポリプロピレンによって作られており、物体6は、例えば研究室において使用される前に秤量する必要がある多量の粉末とすることができる。容器5のみならず秤量物体6は、その電気絶縁性により静電荷を集め、その結果、静電力をかけ、この静電力はそれらの質量が秤量パン4にかける力に付加される。これは、秤量結果に誤差をもたらす。」 「【0030】 秤1は、指示及び作動ユニット11を備えている。指示及び作動ユニット11は、図1の表現においては、ディスプレイスクリーン12、好ましくはタッチスクリーンディスプレイを含んでいる。静電気センサー10によって測定された電荷量は、スクリーン12に表示することができる。」 「【0032】 各々が符号13によって特定されている電離装置の2つのイオン発生源が、各々、秤の後壁9内の右側及び左側の凹部8内に配置されている。各イオン発生源13は、同様に、取り付けフレーム36内に保持されている。静電気が検知されると、電離装置は、秤量プロセス前に作動状態とされ、すなわち起動されて、秤量プロセスは、静電気力の寄生的作用によって誤差が無い状態でなされ得る。」 「【0040】 極めて簡素化された図示による図6は、例えば図5に示された種類の静電気センサー10と電離装置23とを備えた秤101のブロック図である。この場合には通気防止装置を備えていない秤101には、ここでは容器なしの任意の秤量物体25として示されている荷重を担持する秤量パン104が備えられている。秤101は更に、秤量セル26及び電子秤量モジュール27を有している。静電気センサー10は、センサー部材18としてのセンサー電極と、積分器段階19を含んでいる電子センサー回路24と、双極/単極コンバータ段階20と、図5に示されているが公知の原理に従って別の設計構造を有することもできるコンパレータ段階21とを備えている。電子センサーモジュール24ばかりでなく電離装置23が、秤101の電子秤量モジュール27に接続されている。従って、静電気の大きさに関するデータは、電子秤量モジュールの測定ユニット28に送ることができる。前記のデータは、測定ユニット28内の記憶ユニット29内に記憶される。測定ユニット28のプロセッサユニット37においては、閾値を超える場合に電離装置を起動させるプログラムが実行される。従って、電離装置23は、同様に、電子秤量モジュール27に接続されている。この閾値は、入力装置31例えば指示及び作動ユニット11によって改造することができる。静電気の蓄積量の大きさを特徴とする出力を、指示及び作動ユニット11のディスプレイスクリーン12上に又は光学的指示部材例えば所定の閾値を超えたときに異なるカラーで示す発光ダイオード32,33,34によって提供することができる。」 【図1】 【図6】 イ 甲1文献に記載された発明 甲1文献の前記アの記載によれば、甲1文献には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 「秤量セルに結合される秤量パン4と、ディスプレイスクリーン12を含む指示及び作動ユニット11と、秤量パン4が配置される秤量室3を包囲する通気防止装置2とを備える秤1であって、 秤1の後壁9内の右側及び左側の凹部8内に電離装置の2つのイオン発生源13が各々配置される 秤1。」 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、甲1文献の【0032】の記載を引用し、甲1文献にはイオン発生源13を備える電離装置が通気防止装置2に取り付け可能となっている秤1が記載されていると主張する(特許異議申立書、第5ページ第13行ないし第6ページ第3行)。 しかし、甲1文献には、秤1について、電離装置の2つのイオン発生源13が「各々、秤の後壁9内の右側及び左側の凹部8内に配置されている」(【0032】)と記載されているだけであり、イオン発生源13を備える電離装置が通気防止装置2に取り付け可能となっているとは記載されていない。 かえって、甲1文献には、「図6は…(中略)…静電気センサー10と電離装置23とを備えた秤101のブロック図である。この場合には通気防止装置を備えていない秤101には…(中略)…秤量パン104が備えられている。秤101は更に…(中略)…電子秤量モジュール27を有している。…(中略)…電離装置23が、秤101の電子秤量モジュール27に接続されている。」(【0040】)と記載されて、通気防止装置を備えていない秤101でも電離装置23は備えることが明記されているのであるから、「各々、秤の後壁9内の右側及び左側の凹部8内に配置されている」との記載を、秤1の電離装置の2つのイオン発生源13を通気防止装置2に取り付け可能とするという意味に解することはできない。 したがって、特許異議申立人の主張は、採用することができない。 (3)甲3文献 甲3文献には、以下の記載がある。 「[0018] まず、本発明に係る除電器6について説明する。図1は、本発明に係る除電器を示す平面図であり、図2は、本発明に係る除電器を示す前面図であり、図3は、本発明に係る除電器を示す下面図であり、図4は、本発明に係る除電器を示す後面図であり、図5は、本発明に係る除電器を示す側面図であり、図6は、図1に示す除電器のA#A線の断面図である。 除電器6は、電圧発生器1と、電圧が印加されることによりイオンを生成するイオン生成用電極2と、空気を送風するファン7と、吸気口6cと、イオン含有空気を放出するための放出口6dとを備える。なお、除電器6は、手で持ちやすい大きさの直方体形状であり、箱体上面13と、箱体前面10と、箱体下面11と、箱体後面12と、2つの箱体側面で覆われている。」 「[0022] イオン生成用電極2は、例えば、厚さ0.1mm程度の金属板を加工して、針端を形成し、これを放出口6dに向けた針状電極としてある。針状電極に高電圧出力線5で交流電圧が印加されることにより、負イオンと正イオンとが交互に生成される。 アース用電極3は、例えば、厚さ0.1mm程度の金属板を加工して、針端を形成し、これを放出口6dに向けた針状電極である。 なお、イオン生成用電極2及びアース用電極3とは、吸気口6cと放出口6dとの間に配置され、かつ、ファン7の下流に配置されているので、ファン7からの送風により、放出口6dからイオン含有空気が放出されていくことになる。」 (4)甲4文献 甲4文献には、正イオンと負イオンを発生するイオン発生素子と、これらのイオンを外部に放出するための送風装置と、外部機器である歩数計からの駆動信号を受信する通信装置とを備え、携帯中、常に使用者の顔面近傍に正イオンと負イオンを供給できるように、駆動信号に応じて正イオンと負イオンの放出が制御される携帯型空気浄化装置が記載されている(請求項1、【0050】、【0056】)。 2 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲2発明とを対比すると、以下のとおりである。 ア 甲2発明の「秤1」は、「被計量荷重受け部2が計量セル15のカンチレバーアーム30に取り付けられ」ているから、「計量セル15」で計量を行うことが明らかである。 そうすると、甲2発明の「秤1」は、電子天秤であると認められるから、本件発明1の「電子天秤」に相当する。 イ 甲2発明の「ドラフトシールド29」は、本件発明1の「風防」に相当する。 ウ 甲2発明の「秤1」は、「被計量荷重受け部2が収容された計量区画3と、計量セル15が収容されたハウジング4とを備え、ハウジング4のほぼ垂直な壁の一つが計量区画3の後壁13を形成し、ハウジング4のほぼ水平な壁の一つが計量区画3の床8を形成」する「秤1であって、」「計量区画3を囲むドラフトシールド29を備え」る「秤1」であるから、「被計量荷重受け部2が収容された計量区画3と、計量セル15が収容されたハウジング4と」からなる本体部分と、「計量区画3を囲むドラフトシールド29」とを備えると見ることができる。 したがって、前記ア及びイを踏まえると、甲2発明の「被計量荷重受け部2が収容された計量区画3と、計量セル15が収容されたハウジング4と」からなる本体部分は、本件発明1の「電子天秤本体」に相当する。 エ 甲2発明の「被計量荷重受け部2」は、「計量される試料を載せるプラットフォームの役目を」するから、本件発明1の「計量皿」に相当する。 オ 甲2発明の「計量セル15」は、前記アのとおり、計量を行うものであるから、本件発明1の「秤量機構」に相当する。 カ 甲2発明の「ドラフトシールド29」は「計量区画3を囲」み、「計量区画3」は「被計量荷重受け部2が収容され」るから、「被計量荷重受け部2」は「ドラフトシールド29」の内部にあることになる。 したがって、前記イ及びエを踏まえると、甲2発明の「ドラフトシールド29」が「計量区画3を囲む」ことは、本件発明1の「風防の内部に計量皿が配置される」ことに相当する。 キ 甲2発明の「計量対象に静電気の電荷が蓄積されないようにするためのイオナイザー」は、本件発明1の「除電器」に相当する。 ク 甲2発明の「イオナイザー」は、「取り付けることができる」ものであるから、取り外すこともできることは明らかである。 したがって、前記キを踏まえると、甲2発明の「イオナイザー」が「取り付けることができる」ものであることは、本件発明1の「除電器が」「脱着可能となって」いることに相当する。 (2)一致点及び相違点 前記(1)の対比の結果をまとめると、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 ア 一致点 「計量皿と秤量機構とを有する電子天秤本体と、 風防とを備え、 前記風防の内部に計量皿が配置される電子天秤であって、 除電器を備え、 前記除電器が脱着可能となっている 電子天秤。」 イ 相違点 (ア)相違点1 本件発明1の「電子天秤本体」は、「入力部と表示部とを有する」のに対し、 甲2発明の「被計量荷重受け部2が収容された計量区画3と、計量セル15が収容されたハウジング4と」からなる本体部分(本件発明1の「電子天秤本体」に相当する。)は、入力部も表示部も有しない点。 (イ)相違点2 本件発明1の「風防」は、「上方から電子天秤本体に配置される」のに対し、 甲2発明の「ドラフトシールド29」(本件発明1の「風防」に相当する。)は、「被計量荷重受け部2が収容された計量区画3と、計量セル15が収容されたハウジング4と」からなる本体部分(本件発明1の「電子天秤本体」に相当する。)にどのように配置されるか不明である点。 (ウ)相違点3 本件発明1の「電子天秤本体」は、「制御部」「を有する」とともに、「取り付けられた」「除電器」は、「制御部によって制御されることが可能となっている」のに対し、 甲2発明の「被計量荷重受け部2が収容された計量区画3と、計量セル15が収容されたハウジング4と」からなる本体部分(本件発明1の「電子天秤本体」に相当する。)は、制御部を有せず、したがって、「イオナイザー」(本件発明1の「除電器」に相当する。)が取り付けられたとしても、制御部によって制御されることが可能となっていない点。 (エ)相違点4 本件発明1の「除電器」は、「風防に脱着可能となって」いるのに対し、 甲2発明の「イオナイザー」(本件発明1の「除電器」に相当する。)は、「ハウジング4のほぼ垂直な壁の一つが」「形成」する「計量区画3の後壁13の内壁面に」「取り付けた」「棚37又は装置ホルダー67を高さ調整可能に取り付けるための固定ホルダー装置21」に「取り付けることができる」点。 (3)相違点4についての判断 事案に鑑み、まず、相違点4について検討する。 ア 甲2発明の「イオナイザー」を「固定ホルダー装置21」ではなく、「ドラフトシールド29」に取り付けられるようにすることは、甲2文献に記載されていないし、示唆されてもいない。 イ 甲1発明の「秤1」、「通気防止装置2」及び「電離装置の2つのイオン発生源13」は、それぞれ、甲2発明の「秤1」、「ドラフトシールド29」及び「イオナイザー」に相当する。そして、甲1発明では、「電離装置の2つのイオン発生源13」が「秤1の後壁9内の右側及び左側の凹部8内に」「各々配置される」。 そうすると、甲1発明は、甲2発明の「イオナイザー」を、甲2発明において、甲1発明の「秤1の後壁9内の右側及び左側の凹部8内」に相当する位置に取り付けられるようにすることを示唆するものである。 しかし、甲2文献の図1及び図2と甲1文献の図1とを照らせ合わせると、甲2発明において、甲1発明の「秤1の後壁9」に対応するのは、「ドラフトシールド29」ではなく、「計量区画3の後壁13の内壁面」であるというべきである。すなわち、甲1発明は、甲2発明の「計量区画3の後壁13の内壁面」の左右両側に凹部を設け、その内部に「イオナイザー」を配置することを示唆するものであって、「ドラフトシールド29」に取り付けることを示唆するものではない。 ウ 甲3文献及び甲4文献に記載された事項(前記1(3)及び(4))も、甲2発明の「イオナイザー」を「ドラフトシールド29」に取り付けられるようにすることを示唆するものではない。 エ したがって、相違点4に係る本件発明1の構成は、甲2発明と甲1文献、甲3文献及び甲4文献に記載された事項とに基づいて当業者が容易に思い付くものであるということはできない。 (4)本件発明1についてのまとめ 前記(3)のとおり、相違点4に係る本件発明1の構成は、甲2発明と甲1文献、甲3文献及び甲4文献に記載された事項とに基づいて当業者が容易に思い付くものであるということはできないから、相違点1ないし相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1文献ないし甲4文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 したがって、本件発明1についての特許は、理由1によって取り消すべきであるということはできない。 3 本件発明2ないし本件発明4について 本件発明2ないし本件発明4は、本件発明1の構成を全て含むから、少なくとも本件発明1と甲2発明との相違点1ないし相違点4(前記2(2)イ(ア)ないし(ウ))において甲2発明と相違する。そして、前記2(3)のとおり、相違点4に係る本件発明1の構成は、甲2発明と甲1文献、甲3文献及び甲4文献に記載された事項とに基づいて当業者が容易に思い付くものであるということはできないから、相違点4に係る本件発明2ないし本件発明4の構成も同様である。 そうすると、本件発明2ないし本件発明4は、甲1文献ないし甲4文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 したがって、本件発明2ないし本件発明4についての特許は、理由1によって取り消すべきであるということはできない。 4 本件発明5について 本件発明5は、本件発明1に係る「電子天秤」に用いられる「除電器」の発明であり、「風防に脱着可能となって」いるという構成を備えるものである。そして、相違点4に係る本件発明1の構成、すなわち、「除電器」が「風防に脱着可能となって」いる構成は、甲2発明と甲1文献、甲3文献及び甲4文献に記載された事項とに基づいて当業者が容易に思い付くものであるということはできないのであるから、これに対応する本件発明5の構成、すなわち、「風防に脱着可能となって」いるという構成も、当業者が容易に思い付くものであるということはできない。 そうすると、本件発明5は、甲1文献ないし甲4文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 したがって、本件発明5についての特許は、理由1によって取り消すべきであるということはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては、本件発明1ないし本件発明5についての特許を取り消すべきであるということはできない。 また、他に、本件発明1ないし本件発明5についての特許を取り消すべきであるとする理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-04-17 |
出願番号 | 特願2017-57623(P2017-57623) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(G01G)
P 1 651・ 537- Y (G01G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 森 雅之 |
特許庁審判長 |
清水 稔 |
特許庁審判官 |
▲うし▼田 真悟 小林 紀史 |
登録日 | 2017-06-30 |
登録番号 | 特許第6164385号(P6164385) |
権利者 | 株式会社島津製作所 |
発明の名称 | 電子天秤及びそれに用いられる除電器 |
代理人 | 喜多 俊文 |
代理人 | 江口 裕之 |
代理人 | 阿久津 好二 |