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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G02B
管理番号 1340158
異議申立番号 異議2018-700126  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-16 
確定日 2018-05-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第6180113号発明「三次元画像表示対応液晶表示装置に適した偏光板及び液晶表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6180113号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許異議申立事件に係る特許第6180113号(請求項の数6。以下「本件特許」という。)は、平成24年5月16日(優先権主張平成23年5月18日。以下「優先日」という。)を国際出願日とする出願であって、平成29年7月28日にその特許権の設定登録がされ、平成29年8月16日に本件特許の特許掲載公報が発行されたところ、平成30年2月16日に特許異議申立人により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明6」といい、総称して「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有する液晶表示装置であって、
液晶セルの視認側の偏光板は、偏光子及びその視認側偏光子保護フィルムとして配向フィルムを有し、
前記偏光子の偏光軸に対する、前記配向フィルムの配向軸又は配向軸と直交する軸の傾きは1°以上10°以下であり、
前記配向フィルムのリタデーションが3000?30000nmであり、
バックライト光源は少なくとも450?650nmの波長領域において発光スペクトルの強度がゼロになることがない白色光源である、
液晶表示装置。
【請求項2】
前記配向フィルムがポリエステル樹脂もしくはポリカーボネート樹脂から形成される、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記配向フィルムのリタデーションと厚さ方向のリタデーションの比(Re/Rth)が0.2?1.2である、請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記配向フィルムが少なくとも3層からなり、
最外層以外の層に紫外線吸収剤を含有し、
380nmの光線透過率が20%以下である、請求項1?3のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記光源が白色発光ダイオードである請求項1?4のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項6】
偏光フィルタを介して三次元画像を視認するための請求項1?5のいずれかに記載の液晶表示装置。」

第3 申立理由の概要
1 申立理由1(進歩性欠如)
特許異議申立人は、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証を提出し、本件発明1ないし本件発明6は、甲第1号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである旨主張している。
(証拠方法)
甲第1号証:特開2011-59488号公報
甲第2号証:特開昭58-143305号公報
甲第3号証:特開2009-300611号公報
甲第4号証:特開2010-244059号公報
甲第5号証:特開平6-258634号公報
甲第6号証:特開2004-170875号公報
甲第7号証:“[第2回]偏光解析の基礎”、[online]、2009年7月13日、オリンパス株式会社ホームページ,[2017年3月1日検索]、インターネット<URL:http://microscopelabo.jp/learn/009/>
甲第8号証:鞠谷雄士他、“複屈折の測定法と解析事例”、繊維と工業、社団法人繊維学会、2010年、Vol.66、No.1、p39-p44、インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber/66/1/66_1_P_39/_pdf>
甲第9号証:特開2010-243630号公報
甲第10号証:小林大輔他、“高リタデーションポリマーフィルムの設計とその応用”、高分子学会予稿集、高分子学会、2009年、58巻2号、p4144

2 申立理由2(明確性要件違反)
特許異議申立人は、本件特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してなされたものであるから、本件発明1ないし6に係る特許は、取り消されるべきものである旨主張している。

第4 甲号証の記載
1 甲第1号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと、
前記偏光フィルムの片面に、第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、を備え、
前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、面内の遅相軸方向の屈折率をn_(x)、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をn_(y)、厚み方向の屈折率をn_(z)としたときに、(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))で表されるNz係数が2.0未満であることを特徴とする偏光板。
【請求項2】
前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、面内の位相差値が200?1200nmもしくは2000?7000nmの値である請求項1に記載の偏光板。
……」

(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板およびそれを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費電力が低く、低電圧で動作し、軽量でかつ薄型の液晶表示装置が、携帯電話、携帯情報端末、コンピュータ用のモニター、およびテレビ等の情報用表示デバイスとして急速に普及している。さらに、液晶技術の発展に伴い、様々なモードの液晶表示装置が提案され、従来、応答速度、コントラスト、および視野角等の液晶表示装置の問題とされていた点が解消されつつある。
【0003】
一方で、液晶表示装置のさらなる薄型軽量化を望む強い市場要求を受けて、液晶表示装置を構成する液晶パネル、拡散板、バックライトユニット、および駆動IC等の薄型化や小型化が進められている。このような状況下、液晶パネルを構成する部材である偏光板も10μmの単位で薄型化することが求められている。
【0004】
同時に、液晶表示装置の普及に伴って、市場からのコストダウン要求も日増しに強くなっており、偏光板においてもさらなるコストダウンや生産性の向上が必須となっている。
【0005】
これらの要求を満足すべく、これまでに様々な提案がなされてきた。たとえば、偏光板は通常、偏光フィルムの片面または両面に透明保護フィルムが設けられた構成を有し、その透明保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが一般的に使用されているが、特開平8-43812号公報(特許文献1)のように、その保護フィルムに位相差を持たせて光学補償機能を付与することにより、構成部材の削減と生産工程の簡便化を図る試みが広くなされている。このような構成とすることで、偏光板と位相差板との積層物である複合偏光板を薄型軽量化することができ、さらに液晶表示装置の構成部材点数が削減されることで、生産工程を簡素化し、歩留まりを向上させてコストダウンに繋げることが可能となる。
【0006】
さらには、保護フィルムをトリアセチルセルロース以外の他の樹脂で置き換える試みも積極的に進められている。たとえば、特開平7-77608号公報(特許文献2)には、トリアセチルセルロースに代えて、環状オレフィン系樹脂を使用する手段が開示されている。しかしながら、環状オレフィン系樹脂は一般的に高価であるため、現状は、より付加価値の高い位相差フィルムに用いられており、単なる保護フィルムとして使用するには、コスト削減の点から釣り合いがとれないという問題を有している。
【0007】
上記要求を満足できる技術として、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする手法が提案されている。ポリエチレンテレフタレートは機械的強度に優れることから、薄膜化に適しており、偏光板の薄型化を実現できる。さらに、トリアセチルセルロースや環状オレフィン系樹脂と比較して、一般的にコストの面からも優位性を有する。加えて、トリアセチルセルロースと比較して、低透湿性で低吸水性といった特徴を有することから、耐湿熱性や耐冷熱衝撃性にも優れ、環境変化に対して高い耐久性を持つことも期待できる。
【0008】
しかしながら、一方で、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとした偏光板を液晶表示装置に搭載した場合、トリアセチルセルロースフィルムを保護フィルムとする一般的な偏光板に比べて、その高いレタデーション値に由来する斜め方向からの色ムラ(干渉ムラ、虹ムラとも言う)が目立ち、視認性に劣るという問題を有している。この問題について、たとえば特開2009-109993号公報(特許文献3)では、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとした偏光板と、ヘイズ値を制御した防眩層を付与した偏光板とを組み合わせて液晶表示装置を構成することで、色ムラを低減する手法が開示されている。しかしながら、この手法を用いても色ムラの低減は不十分であり、より効果的な手法の確立が望まれていた。
……
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板であって、液晶表示装置に搭載した際の色ムラが少なく視認性に優れ、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することにある。また、本発明のもう一つの目的は、前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供することにある。」

(3)「【0074】
本発明の偏光板においては、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸の軸ズレ角度は目的や生産上の制約等に応じて任意に選択することができる。たとえば、本発明の偏光板を、偏光性の強いバックライト光源を備える液晶表示装置のバックライト光源側(入射側)偏光板として適用する場合、延伸ポリエチレンテレフタレートの面内位相差に由来する正面方向からの干渉色の発現を防ぐため、偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの軸ズレ角度は小さい方が好ましい。好ましくは、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度は、0度以上15度以下の範囲とすることが好ましい。かかる場合においても、Nz係数を2.0未満とすることが、色ムラの低減に効果的である。
【0075】
偏光性の強いバックライト光源として、たとえば、バックライトユニット内に反射型偏光分離フィルムを備えるもの等が挙げられる。反射型偏光分離フィルムとは、バックライトの光を選択的に反射させ、再利用することで可視範囲の輝度を向上させる機能を有するフィルムである。反射型偏光分離フィルムに相当する市販品としては、米国の3M Company〔日本では住友スリーエム(株)〕から販売されている「DBEF」(商品名)などがある。
【0076】
一方で、上記以外の場合には、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度が大きいものも好ましく用いることができる。中でも、20度以上50度以下のズレ角度であるものがより好ましい。偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの軸ズレ角度を上記の範囲とすることで、より効果的に液晶表示装置の色ムラを低減することができる。
……
【0081】
(機能層)
本発明に用いられる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムには、そのフィルムが偏光板の視認側に用いられる場合、偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に、防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を設けることが好ましい。
【0082】
防眩層は、外光の映り込みやギラツキを防ぐために設けられる。ハードコート層は、表面の耐擦傷性などを改善するために設けられる。反射防止層は、外光の反射を防ぐために設けられる。また帯電防止層は、静電気の発生を防ぐために設けられる。これらの機能層を本発明の偏光板に形成する場合、塗工など公知の方法で直接延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に設けてもよいし、基材上にこれらの機能層が設けられたフィルムを延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに貼合してもよい。また、これらの機能層を予め延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成しておき、これをその機能層とは反対側の面で偏光フィルムに貼合する方法も採用できる。」

(4)「【0217】
<液晶表示装置>
以上のようにしてなる偏光板、すなわち、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/第一の接着剤層/偏光フィルム/第二の接着剤層/[保護フィルムまたは光学補償フィルム]/粘着剤層/剥離フィルムとの層構造を有する偏光板は、粘着剤層から剥離フィルムを剥離して、液晶セルの片面または両面に貼合し、液晶パネルとすることができる。この液晶パネルは、液晶表示装置に適用することができる。
【0218】
本発明の偏光板は、たとえば、液晶表示装置において、光出射側(視認側)に配置される偏光板として用いることができる。光出射側とは、液晶セルを基準に、液晶表示装置のバックライト側とは反対側を指す。光出射側の偏光板として本発明の偏光板が採用される場合、当該偏光板は、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に、防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を備えることが好ましい。また、液晶表示装置の光入射側(バックライト側)に配置される偏光板は、本発明の偏光板であってもよいし、従来公知の偏光板であってもよい。
【0219】
本発明の偏光板は、また、液晶表示装置において、光入射側に配置される偏光板として用いることもできる。この場合、液晶表示装置の光出射側に配置される偏光板は、本発明の偏光板であってもよいし、従来公知の偏光板であってもよい。
【0220】
液晶表示装置を構成する液晶セルは、透過光量をスイッチングするために、液晶が2枚の透明基板の間に封入され、電圧印加により液晶の配向状態を変化させる機能を有する部材であって、その中に封入された液晶層の配向状態と、電極間に電圧を印加したときの液晶層の配向状態によって、たとえば、ツイステッドネマティック(TN)モードや垂直配向(VA)モードなど、各種方式のものがある。本発明の偏光板は、一般的な液晶表示装置に広く使用されている各種モードの液晶セルに対して、有効に適用することができる。
【0221】
偏光フィルムに積層されている保護フィルムまたは光学補償フィルムの性能は、上記液晶セルの動作モードや特性に応じて適宜選択することができる。
【0222】
液晶表示装置を構成するバックライトも、一般の液晶表示装置に広く使用されているものでよい。たとえば、拡散板とその背後に配置された光源で構成され、光源からの光を拡散板で均一に拡散させたうえで前面側に出射するように構成されている直下型のバックライトや、導光板とその側方に配置された光源で構成され、光源からの光を一旦導光板の中に取り込んだうえで、その光を前面側に均一に出射するように構成されているサイドライト型のバックライトなどを挙げることができる。バックライトにおける光源としては、蛍光管を使って白色光を発光する冷陰極蛍光ランプや、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)などを採用することができる。」

(5)「【実施例】
【0223】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0224】
以下の例において、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みは、メーカー呼称値で示した。面内位相差値R_(0)およびNz係数は、位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製)にて測定した。また、環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルムの厚み、面内位相差値R_(0)および厚み方向位相差値R_(th)はメーカー呼称値で示した。環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルムのR_(0)およびR_(th)は位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製)を用いて実測もしているが、ほぼ同様の値が得られている。
【0225】
<実施例1>
(a)偏光フィルムの作製
平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬した。引き続き8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得た。延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行ない、トータル延伸倍率は5.3倍であった。
【0226】
(b)粘着剤付き偏光板の作製
厚み38μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(Nz係数:1.0、R_(0):2160nm)の貼合面に、コロナ処理を施した後、脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を、チャンバードクターを備える塗工装置によって厚さ2μmで塗工した。また、厚み73μmの環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルム(面内位相差値R_(0):63nm、厚み方向位相差値R_(th):225nm)の貼合面に、コロナ処理を施した後、上記と同じ接着剤組成物を同様の装置にて厚さ2μmで塗工した。
【0227】
次いで、直ちに上記(a)にて得られた偏光フィルムの片面に上記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、もう一方の面に上記光学補償フィルムを、各々接着剤組成物の塗工面を介して貼合ロールによって貼合した。この際、偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレは0度とした。その後、この積層物の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム側から、メタルハライドランプを320?400nmの波長における積算光量が600mJ/cm^(2)となるように照射し、両面の接着剤を硬化させた。さらに、得られた偏光板の光学補償フィルムの外面に、厚み25μmのアクリル系粘着剤の層(セパレートフィルム付き)を設けた。
【0228】
(c)液晶表示装置の作製
ソニー(株)製の垂直配向モードの液晶表示装置“BRAVIA”(対角寸法40インチ=約102cm)の液晶パネルから光出射側偏光板を剥がし、その代わりに、市販の偏光板(スミカランSRW842E-GL5、住友化学(株)製)を、オリジナルの偏光板と同じ軸方向で、その粘着剤層側にて貼り付けた。また、光入射側偏光板も剥がし、その代わりに、上記(b)で作製した粘着剤層付き偏光板からセパレートフィルムを剥がしたものを、オリジナルの偏光板と同じ軸方向で、その粘着剤層を用いて貼り付けた。得られた液晶表示装置について、目視にて観察したところ、斜め方向の色ムラ(干渉ムラ)は小さく、視認性は良好であった。
【0229】
<実施例2>
Nz係数が1.4、面内位相差値R_(0)が3360nmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度が40度となるよう接着貼合したこと以外は実施例1の(b)と同様にして偏光板を作製し、さらに、実施例1の(c)と同様にして、液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について、目視にて観察したところ、斜め方向の色ムラ(干渉ムラ)は小さく、視認性は良好であった。
【0230】
<実施例3>
Nz係数が1.8、面内位相差値R_(0)が3950nmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度が40度となるよう接着貼合したこと以外は実施例1の(b)同様にして偏光板を作製し、さらに、実施例1の(c)と同様にして、液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について、目視にて観察したところ、斜め方向の色ムラ(干渉ムラ)は比較的小さく、視認性は比較的良好であった。
【0231】
<実施例4>
Nz係数が1.4、面内位相差値R_(0)が1600nmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度が40度となるよう接着貼合したこと以外は実施例1の(b)同様にして偏光板を作製し、さらに、実施例1の(c)と同様にして、液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について、目視にて観察したところ、斜め方向の色ムラ(干渉ムラ)は上記実施例2と比べるとやや強かったものの、比較的小さく、視認性は比較的良好であった。
【0232】
<実施例5>
Nz係数が1.4、面内位相差値R_(0)が800nmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度が40度となるよう接着貼合したこと以外は実施例1の(b)と同様にして偏光板を作製し、さらに、実施例1の(c)と同様にして、液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について、目視にて観察したところ、斜め方向の色ムラ(干渉ムラ)は小さく、視認性は良好であった。」

(6)上記(1)ないし(5)によると、引用例1には、実施例2として次の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明」という。)。
「ソニー(株)製の垂直配向モードの液晶表示装置“BRAVIA”(対角寸法40インチ=約102cm)において、
液晶パネルから光出射側偏光板を剥がし、その代わりに市販の偏光板(スミカランSRW842E-GL5、住友化学(株)製)をオリジナルの偏光板と同じ軸方向で貼り付け、
偏光フィルムの片面に、Nz係数が1.4、面内位相差値R_(0)が3360nmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り付け、偏光フィルムのもう一方の面に光学補償フィルムを貼合し、この際、偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度が40度となるよう貼合して粘着剤層付き偏光板を作製し、
前記液晶パネルの光入射側偏光板も剥がし、その代わりに、前記粘着剤層付き偏光板をオリジナルの偏光板と同じ軸方向で、その粘着剤層を用いて貼り付けた、
液晶表示装置。」

2 甲第2号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第2号証には、次の事項が記載されている。
(1)「1.それぞれの対向面に透明導電膜を有し、少なくとも一方が偏光子及び該偏光子に接する一軸延伸プラスチックフィルムからなる一対の基板を具備する表示パネルに於いて、上記一軸延伸プラスチックフィルムの光学的主軸方向のうち屈折率の最も大きい光学的主軸方向と、上記偏光子の偏光軸方向とのなす角度を略±3度以内にすることを特徴とする表示パネル。
2.特許請求の範囲第1項に於いて、上記一軸延伸プラスチックフィルムは、一軸延伸ポリエステルフィルムであることを特徴とする表示パネル。」(特許請求の範囲)

(2)「第1図、第2図は延伸プラスチックフィルムの一つである延伸ポリエステルフィルムを用いたTN型液晶表示パネルの構成の概略を示す図である。
3a、3bは第2図に示す様に偏光子(一般に厚み10?50μm)1を2枚の延伸ポリエステルフィルム2a、2bでサンドイッチ構造とした複合フィルム3である。4は延伸ポリエステルフィルム2bの表面に形成した透明導電膜(ネサ膜)である。5は液晶分子、6は液晶層、7は入射光、8は透過光、9は配向膜、10はスペーサ、11はシール剤である。」(2頁左下欄4ないし15行)

(3)「このような光学的異方体である延伸ポリエステルフィルムを用いて第2図に示すような複合フィルム3をつくる場合、第4図に示すように偏光子1の偏光軸方向Dと延伸ポリエステルフィルムの光学的主軸方向のうち屈折率が一番大きい光学的主軸方向aのなす角度θ_(1),θ_(2)が重要となる。なぜならば光学的異方体と偏光子1を組合せる場合、組合わせ方を考慮しないと複屈折現象に伴う干渉色が発生し、コントラスト比が低下し、表示品質を著しく低下させる。
本発明の目的は上記欠点を除去し、コントラスト比が大きく表示品質の優れた表示パネルを提供することにある。
上記目的を達成する本発明表示パネルの特徴とするところは、一軸延伸プラスチックフィルムの光学的主軸方向のうち屈折率の最も大きい光学的主軸方向と、偏光子の偏光軸方向とのなす角度を略±3度以内にすることにある。」(3頁左上欄2ないし19行)

(4)「θ_(1)、θ_(2)の値が0度のときは光透過率の波長特性はフラットな特性となるが、θ_(1)、θ_(2)の値が大きくなるにつれて複屈折現象によって光透過率は減少する。
第6図は第5図の波長特性の積分値、すなわち白色光に対する光透過率のθ_(1)、θ_(2)依存性を示したものである。(a)は一軸延伸ポリエステルフィルム、(b)は二軸延伸ポリエステルフィルムの場合を示す。
この図からわかるように一軸延伸ポリエステルフィルムの場合、θ_(1)、θ_(2)の値が±3度以上になると光透過率は大きく減少し、二軸延伸ポリエステルフィルムの場合には±5度以上になると光透過率は減少する。従って、一軸延伸ポリエステルフィルムを用いる場合には一軸延伸ポリエステルフィルム2a、2bと偏光子1の偏光軸とのなす角を±3度以内、二軸延伸ポリエステルフィルムを用いる場合には±5度以内にすれば光透過率は95%以上と大きく、ガラス板と同等の値となる。」(3頁右上欄10行ないし同頁左下欄9行)

(5)第2図は次のものである。


3 甲第3号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第3号証には、次の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】
偏光子と、該偏光子の一方主面に積層された第1の保護フィルムを有し、該第1の保護フィルムの平均屈折率が1.58以上である偏光板。
……
【請求項6】
前記第1の保護フィルムがポリエステルフィルムである、請求項1?5のいずれか記載の偏光板。
……
【請求項8】
液晶セルの少なくとも一方主面に、請求項1?7のいずれか記載の偏光板を備え、該光板の第1の保護フィルムが積層されたのと反対側の主面が液晶セルと対向するように積層された液晶パネル。」

(2)「【0024】
(複屈折特性)
本発明の偏光板を後述する液晶パネルに用いるに際しては、集光偏光板として作用させる観点において、偏光板の第1の保護フィルムが積層されたのと反対側の主面が液晶セルと対向するように配置される。すなわち、第1の保護フィルム31は、偏光子30の液晶セルと対向しない側の面に配置されることとなる。そのため、第1の保護フィルム11が複屈折を有していても、その複屈折は液晶パネルの表示特性に直接的には影響を与えないことから、光学的等方性、あるいは複屈折の均一性は必ずしも必要ではない。このような観点からは、例えば、市販の二軸延伸ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)フィルムフィルム等のように、必ずしも複屈折の均一性が高いとはいえないフィルムであっても、使用することができる。
【0025】
一方で、複屈折と厚みの積で表されるレターデーション値が大きいフィルムを第1の保護フィルムとして用いた場合、液晶表示装置が干渉による虹模様の着色を生じる場合がある。このような着色を抑制する観点からは、第1の保護フィルムの遅相軸方向(フィルム面内の屈折率が最大となる方向)と、偏光子の吸収軸方向が略平行または略直交となるように配置することが好ましい。なお、略平行、略直交とは、両者のなす角度が丁度0°、あるいは90°である場合のみならず、±10°、好ましくは±5°の範囲であることを意味する。
【0026】
なお、第1の保護フィルムの遅相軸方向と偏光板の吸収軸方向が平行または直交から外れている場合は、虹模様の着色が生じる場合があるが、かかる着色は、前述したように、第1の保護フィルムのヘイズ値を所定の範囲としたり、後述するように、光拡散層を配置することによって解消することができる。また、市販の二軸延伸ポリエステルフィルム等においては、延伸時のボーイング現象(遅相軸方向が幅方向で不均一となること)が生じるために、フィルム面内での遅相軸方向のばらつきや、フィルムの製品間(ロット間)での遅相軸方向のバラツキが生じるため、遅相軸方向と偏光子の吸収軸方向の配置方向を常に均一とはできない場合がある。かかる観点からも、第1の保護フィルムにヘイズを持たせることや、光拡散層を配置することは、虹模様の着色を防止する上で有用である。」

4 甲第4号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第4号証には、次の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】
偏光子の一方主面に第1の保護フィルムを備える偏光板であって、
前記第1の保護フィルムが、下記(i)?(iii)の条件を満たすことを特徴とする偏光板。
(i) 0nm≦Re_(1)≦3000nm
(ii) Nz_(1)≧5
(iii)Rth_(1)>2500nm
ただし、Re_(1)、Rth_(1)、Nz_(1)は、第1の保護フィルムの厚みをd_(1)、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx_(1)、面内の進相軸方向の屈折率をny_(1)、厚み方向の屈折率をnz_(1)とした場合に、それぞれ下記式で定義される値である。
Re_(1)=(nx_(1)-ny_(1))×d_(1)
Rth_(1)=(nx_(1)-nz_(1))×d_(1)
Nz_(1)=Rth_(1)/Re_(1)」

(2)「【0008】
本発明は、ポリエステルフィルムのように機械特性や耐薬品性、水分遮断性に優れたフィルムを偏光子保護フィルムとして用いた場合においても、虹ムラの発生が抑制された液晶表示装置を提供することを目的とする。」

(3)「【0056】
(配置角度)
第1の保護フィルムと偏光子の角度関係は特に制限されないが、虹ムラの発生を抑制する観点からは、第1の保護フィルム12の遅相軸方向と偏光子11の吸収軸方向は略平行または略直交であることが好ましい。両者を平行または直交に配置することによって、第1の保護フィルムが300nm以上の正面レターデーションRe_(1)を有している場合であっても、虹ムラの発生を抑制することができる。なお、略平行、略直交とは、両者のなす角度が丁度0°、あるいは90°である場合のみならず、±15°、好ましくは±10°の範囲であることを意味する。また、第1の保護フィルムが、正面レターデーションRe_(1)が例えば100nm以下、好ましくは50nm以下と小さい「略Cプレート」である場合は、上記配置角度は虹ムラの発生にほとんど影響を与えない。」

5 甲第5号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第5号証には、次の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】 2枚の透明基板で液晶層が挾持され、該2枚の透明基板の外側にそれぞれ偏光板が配置され、前記液晶層の一方の面で表示されてなる液晶表示デバイスであって、前記液晶層の表示面側に配置されたフロント側偏光板の前面に位相差板が配置され、該位相差板はその光学軸が前記フロント側偏光板の吸収軸とほぼ35°?55°の角度をなすように配置されると共に、前記位相差板のリターデイションがほぼ4000nm以上の範囲に設定されてなる液晶表示デバイス。

(2)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の液晶表示デバイスのばあい、フロント側偏光板2から出射する光が直線偏光になっているため、図3に示すように観測者7が偏光めがね6をかけているばあい、見る方向によっては液晶表示面が見えなくなる。すなわちフロント側偏光板2の吸収軸の方向Cと偏光めがね6の吸収軸の方向Fとのなす角度が90°のばあい、光源5から液晶表示デバイスに入射し、フロント側偏光板2から出射する光が、自動車の運転や釣などのときに使用される偏光めがね6を透過できなくなるという欠点がある。とくに液晶表示デバイスが自動車のインジケータなど、表示計器に使用されたばあい、運転者が偏光板を使用したサングラスをかけていることがよくあるため、問題となる。
【0006】本発明の目的は、偏光めがねをかけた観測者がどの方向から眺めても、表示面が偏った着色にならないで、確実に視認できる液晶表示デバイスを提供することにある。」

(3)「【0010】
【実施例】つぎに、図面を参照しながら本発明を説明する。図1は本発明のTN型液晶表示デバイスを偏光めがねをかけて眺めたばあいの偏光めがねの吸収軸の方向などを示す分解説明図、図2は液晶セルに電界を印加したばあいに、位相差板から出た種々の波長の光の偏光めがねの透過率を表わすグラフである。
【0011】図1において、液晶層が2枚の透明基板に挾持された液晶セル1の両側にフロント側偏光板2およびリア側偏光板3が配設され、表示面側であるフロント側偏光板2の表面側にさらに位相差板4が配設されている。また裏面側には光源5が配設されている。液晶材料としては、たとえばTN液晶が用いられ、両透明基板間で90°のねじれが生じるため、両側の透明基板に設けられるラビング方向は、たとえば図1にA、Bで示されるように90°の方向をなしている。また両偏光板2、3の吸収軸の方向C、Dは図1に示すように、フロント側とリア側とで同じ方向にして、ネガ型TN液晶表示デバイスを構成している。6は偏光めがねを示し、位相差板4の光学軸の方向をE、偏光めがね6の吸収軸の方向をFで示している。……
【0012】前述のように表示面側に偏光板が配設された液晶表示デバイスでは、フロント側偏光板2から出射した光は、フロント側偏光板の吸収軸の方向と一致する直線偏光となっているが、本発明では位相差板4を配設しているため、位相差板4を透過する際に常光線と異常光線との間に位相のずれが生じ、楕円偏光に変わる。したがって位相差板4を配設することにより、偏光めがね6をかけて液晶表示デバイスを観賞したばあいでも、一般的にはどの方向からでも観賞できる筈である。しかし、光の波長と位相差板の厚さによっては殆ど直線偏光となったり、短軸が短い楕円偏光となったり、また可視光の波長領域は広く、波長によっては見づらい部分が生じ、見る方向によって見づらいばあいが生じる。そこで本発明者らは位相差板の光学軸の方向や厚さを種々変えて鋭意検討を重ねた結果、位相差板4をフロント側偏光板2の表面側に配置すると共に、位相差板4の光学軸方向Eとフロント側偏光板2の吸収軸方向Cとのなす角度(鋭角)αをほぼ35°?55°にし、同時に位相差板のリターデイションΔn・dをほぼ4000nm以上にすることにより、偏光めがねをかけてどの方向から観賞しても良好に視認できることを見出した。
【0013】前述の構成の液晶表示デバイスを製造し、位相差板4をフロント側偏光板2の表面に密着させ、位相差板4の光学軸の方向Eとフロント側偏光板2の吸収軸の方向Cとのなす角度αを、0?90°のあいだで5°または10°ずつ変えると共に、それぞれの角度αに対し、位相差板のリターデイションΔn・dを500 ?10000nmの範囲で変化させた。それぞれのリターデイションΔn・dの値と角度αのときに、偏光めがね6の吸収軸Fを360 °回転させながら、観測者7が目視により液晶表示面の視認特性を測定した。表1にその結果を示す。」

6 甲第6号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第6号証には、次の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】
第1および第2電極基板と、前記第1および第2電極基板間に挟持され、前記第1および第2電極基板間でねじれて配向される正の誘電率異方性を有するネマチック液晶材料を含み、液晶分子配列が前記第1および第2電極基板から各々制御される複数の表示画素に区分される液晶層と、前記第1および第2電極基板うちの少なくとも一方上に配置される偏光板と、前記複数の表示画素からなる表示画面に対応して前記偏光板上に配置される光学部材層を備え、前記光学部材層はリタデーション値が2400nm以上でかつ光学軸が水平方向に対して30度?60度の角度に設定される光学特性を持つことを特徴とする液晶表示装置。」

(2)「【0002】
【従来の技術】
近年では、液晶表示装置が、薄型、軽量、低消費電力という優れた特徴から、PDA(Personal Digital Assistance)やPDAと一体化した携帯電話のようなモバイル機器において一般的に用いられている。
【0003】
このようなモバイル機器では、例えばタッチパネル、フロントライト用導光板、あるいはカバーガラスのような光学部材層が液晶表示装置の表示画面上に配置されることがある(例えば、特許文献1参照)。従来のタッチパネルは、一般にリタデーション値が1500nm未満で、光学軸が水平方向に対して大きくばらついて-50度?+50度の角度となる光学特性を有する。また、モバイル機器は、表示画面が横長となる向きに設定されるランドスケープモードおよび表示画面が縦長となる向きに設定されるポートレートモードのいずれでも画像を表示できるように構成されている。ランドスケープモードはゲーム画像等の表示で使用され、ポートレートモードはコンテンツ画像、スケジュール管理画像、電話用ダイアルボタン画像等の表示で使用される。
……
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述の光学特性は、モバイル機器が例えば海や山に携行される場合に問題となる。このような場所では、ユーザが不要光を取り除いて眩しさを低減する偏光サングラスを着用していることがある。この偏光サングラスを着用した状態では、表示画面がランドスケープモードおよびポートレートモードのどちらかで著しく暗くなってしまうことがある。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、表示画面の明るさが偏光サングラスの着用によって低下することを防止できる液晶表示装置を提供することを目的とする。」

(3)「【0020】
図4は図1に示す表示画面DSをランドスケープモードで使用する場合の光学系を示し、図5は図1に示す表示画面DSをポートレートモードで使用する場合の光学系を示す。ランドスケープモードは表示画面DSが横長になる向きであり、ポートレートモードは表示画面DSが縦長になる向きである。これらモードでは、画像表示時に着用状態にある偏光サングラス33の吸収軸が光学部材層32の光学軸および偏光板31の吸収軸に対して図4および図5に示すような関係になる。
……
【0024】
本実施形態では、光学部材層32の光学特性として、リタデーション値が2400nm以上で、かつ光学軸が水平方向に対して30度?60度の角度に設定される。この場合、偏光サングラス33を着用した状態でランドスケープモードおよびポートレートモードのいずれの向きに対しても表示画面の明るさを同等にすることができる。」

7 甲第7号証
本件特許の優先日前に電気通信回線を通じて利用可能となった甲第7号証には、次の事項が記載されている。
「1.直交ニコル間の異方体
直交ニコルの状態では光は透過しないが、ポラライザ、アナライザの間に異方体を入れると、偏光状態が変化し光が透過するようになる。図2-1において、直交ニコル間に位相差δを持つ結晶を、その光学軸がポラライザの振動方向に対して角度θで置かれた時、射出光の強度Iは式2-1のようになる。
……
1-1.異方体を回転させた時の明るさの変化
式2-1より異方体の光学軸がポラライザの振動方向と一致した時または直交した時に、異方体が暗黒になる位置があることが判る。これを消光位extinction positionという。その45°方向に最も明るくなる位置があり、これを対角位diagonal positionという。図2-2は異方体を回転させながら観察した時の様子で、明るさが変化することがわかる。」(1頁1ないし13行)

8 甲第8号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第8号証には、次の事項が記載されている。
「2.2.複屈折の直接計測法
2枚の偏光板を、偏光面を互いに直交させて配置すると光は透過しない。このとき入射側および出射側の偏光板をそれぞれ、偏光子(polarizer)、検光子(analyzer)とよぶ。しかし、図2に模式的に示すように、これらの偏光板の間に光学的異方性を有する試料を挿入すると光が透過するようになる。この光の透過の様相を観測することによって複屈折を定量的に解析することができる。
……
単色光を用いて観測する場合は、光学遅延が半波長の偶数倍のときは透過光強度がゼロになり、半波長の奇数倍のときに透過光強度が最大になる。また、試料の配向軸と偏光面との角度を45°にすると明暗のコントラストが最も強くなり、0°あるいは90°にすると、光学的異方性があっても光は透過しない。
一方、白色光のように広い波長範囲の光を用いて観察する場合は、光学遅延が同じでも透過光強度は波長(色)に依存するため干渉色が生じる。このとき、干渉色あるいは透過光強度の波長依存性を観測すれば光学遅延の値を推定することができる。」(40頁左欄9行ないし同頁右欄5行)

9 甲第9号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第9号証には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
少なくとも3層からなる積層ポリエステルフィルムであって、内層に紫外線吸収剤を含有し、波長380nmにおける光線透過率が10.0%以下、波長550nmにおける光線透過率が80.0%以上であり、配向角が70?90度の範囲であることを特徴とする偏光板保護用ポリエステルフィルム。」

10 甲第10号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第10号証には、次の事項が記載されている。
「【実験】 キャスト方により得られたポリカーボネート(PC)のフィルムを一軸熱延伸することで、HRPFとして高リタデーションPCフィルムを作製し、その干渉色を観察した。また、PCの複屈折の波長分散性を考慮して干渉色を計算するプログラムを作成し、リタデーションと干渉色の関係を表す干渉色チャートを作成した。さらに作製したフィルムをLCD上に置き、サングラスを通して画面を観察することにより、HRPFのLCD用デバイスとしての実用性を検討した。
【結果・考察】 光源に白色LEDを用いたときに実測された、PCフィルムのリタデーションと干渉色の関係をFig.1に示す。同様に光源を白色LEDとして作成した干渉色チャートをFig.2に示す。Fig.1、Fig.2より実測とシミュレーションで色はほぼ一致し、複屈折の波長分散性を考慮することで計算により干渉色を再現することに成功した。またFig.2より、干渉色はRe≧800nm程度でほぼ一定となることが示された。この干渉色を示す透過光は、実効的に光源の強度を約1/4にした発光スペクトルからなることが計算により確認されている。Fig.3は、作製したHRPFを、白色LEDを光源とするLCD上に置き、サングラスを通して画面を見た時の様子である。LCDとサングラスの偏光板がなす角度によらず、LCDの色が変化なく視認できることから、作製したHRPFはLCD用のデバイスとして利用できることが確認された。」(4144頁14ないし26行)

第5 判断
1 申立理由1(進歩性欠如)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「液晶表示装置」は、ソニー(株)製の垂直配向モードの液晶表示装置“BRAVIA”(対角寸法40インチ=約102cm)の液晶パネルから光出射側及び光入射側の偏光板をそれぞれ別の偏光板に貼り替えただけのものであり、液晶表示装置として、バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有することは技術常識からみて明らかである。
してみると、本件発明1と引用発明とは、
「バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有する液晶表示装置」である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1では、「液晶セルの視認側の偏光板は、偏光子及びその視認側偏光子保護フィルムとして配向フィルムを有し、前記偏光子の偏光軸に対する、前記配向フィルムの配向軸又は配向軸と直交する軸の傾きは1°以上10°以下であり、前記配向フィルムのリタデーションが3000?30000nmであ」るのに対し、
引用発明では、液晶パネルの光入射側偏光板は、偏光フィルムの片面に面内位相差値R_(0)が3360nmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り付け、この際、偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度が40度となるよう貼合しているものであるが、液晶パネルの光出射側偏光板は、市販の偏光板(スミカランSRW842E-GL5、住友化学(株)製)であり、該市販の偏光板は、「偏光子及びその視認側偏光子保護フィルムとして配向フィルムを有し」ているかどうか不明であり、「前記偏光子の偏光軸に対する、前記配向フィルムの配向軸又は配向軸と直交する軸の傾きは1°以上10°以下であるか、又、前記配向フィルムのリタデーションが3000?30000nmであ」るかも不明である点。

<相違点2>
本件発明1では、「バックライト光源は少なくとも450?650nmの波長領域において発光スペクトルの強度がゼロになることがない白色光源である」のに対し、
引用発明では、「バックライト光源は少なくとも450?650nmの波長領域において発光スペクトルの強度がゼロになることがない白色光源である」かどうか明らかでない点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
(ア)甲第1号証には「【0081】……本発明に用いられる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムには、そのフィルムが偏光板の視認側に用いられる場合、偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に、防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を設けることが好ましい。」(上記第4、1(3)を参照。)と記載されており、当該記載からみて、引用発明において、光入射側に用いられている延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り付けた粘着剤層付き偏光板を光出射側の偏光板に採用することは容易になし得るといえる。
(イ)また、甲第2号証には、表示パネルに於いて、複屈折現象に伴う干渉色の発生を除去するために、一軸延伸プラスチックフィルムの光学的主軸方向のうち屈折率の最も大きい光学的主軸方向と、偏光子の偏光軸方向とのなす角度を略±3度以内にすることが記載されている(上記第4、2を参照。)。甲第3号証には、液晶表示装置において、干渉による虹模様の着色を抑制する観点から、第1の保護フィルムの遅相軸方向と、偏光子の吸収軸方向を略平行または略直交となるように配置することが好ましく、略平行、略直交とは、両者のなす角度が±10°、好ましくは±5°の範囲であることを意味することが記載されている(上記第4、3を参照。)。甲第4号証にも甲第3号証と同様の事項が記載されている(上記第4、4を参照。)。
(ウ)しかしながら、甲第1号証の【0074】及び【0076】(上記第4、1(3)を参照。)の記載からみて、引用発明の前記粘着剤層付き偏光板を、光入射側偏光板として適用する場合、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度は、0度以上15度以下の範囲とすることが好ましいが、光出射側偏光板として適用する場合、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度が大きいものも好ましく用いることができ、具体的には20度以上50度以下のズレ角度であるものがより好ましいといえる。
(エ)してみると、上記甲第2号証ないし甲第4号証に記載された事項を踏まえても、引用発明において、上記(ア)のように前記粘着剤層付き偏光板を光出射側の偏光板に採用した際に、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度、すなわち、偏光子の偏光軸に対する配向フィルムの配向軸又は配向軸と直交する軸の傾きを1°以上10°以下となすことは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(オ)そして、甲第5号証ないし甲第10号証に記載された事項も、引用発明において上記相違点1に係る本件発明1の構成を採用することを教示するものではない。
(カ)したがって、上記相違点2については検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明、及び、甲第2号証ないし甲第10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

(2)本件発明2ないし6について
本件発明1が、引用発明、及び、甲第2号証ないし甲第10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を付加した本件発明2ないし6も同様に、引用発明、及び、甲第2号証ないし甲第10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 申立理由2(明確性要件違反)について
(1)特許異議申立人は、リタデーションの値が波長によって変動することは技術常識であるところ、本件発明は、その構成要件である配向フィルムをリタデーションの値で規定しているにも関わらず、これらのリタデーションを如何なる波長で測定したかについては何ら記載されていないから、本件発明の範囲は不明確である旨主張している(特許異議申立書48頁6行ないし49頁2行)。
(2)上記特許異議申立人の主張について検討する。本件特許の特許請求の範囲には、特許異議申立人が主張するように、配向フィルムのリタデーションが如何なる波長の光源を用いて測定されたものであるかは記載されていない。
そこで、本件特許の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、明細書の【0074】ないし【0085】には、本件発明の実施例において実施した物性の評価方法について記載されているところ、【0075】には、配向フィルムのリタデーションの測定方法について以下の記載がある。
「(1)リタデーション(Re)
リタデーション(Re)とは、フィルム上の直交する二軸の屈折率の異方性(△Nxy=|Nx-Ny|)とフィルム厚みd(nm)との積(△Nxy×d)で定義されるパラメーターであり、光学的等方性、異方性を示す尺度である。二軸の屈折率の異方性(△Nxy)は、以下の方法により求めた。二枚の偏光板を用いて、配向フィルムの配向軸方向を求め、配向軸方向が直交するように4cm×2cmの長方形を切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルについて、直交する二軸の屈折率(Nx,Ny)、及び厚さ方向の屈折率(Nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T)によって求め、前記二軸の屈折率差の絶対値(|Nx-Ny|)を屈折率の異方性(△Nxy)とした。フィルムの厚みd(nm)は電気マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定し、単位をnmに換算した。屈折率の異方性(△Nxy)とフィルムの厚みd(nm)の積(△Nxy×d)より、リタデーション(Re)を求めた。」
そして、「アッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T)」に用いられる光源がD線波長近似のものであることは、当業者にとって明らかである。
してみると、本件特許の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、本件特許発明の構成要件である配向フィルムのリタデーションの値は、D線を用いて測定されたものと理解することができるから、本件発明は明確である。

第6 むすび
以上のとおりであって、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-04-25 
出願番号 特願2012-524431(P2012-524431)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (G02B)
P 1 651・ 121- Y (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渡▲辺▼ 純也後藤 亮治  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 清水 康司
中田 誠
登録日 2017-07-28 
登録番号 特許第6180113号(P6180113)
権利者 東洋紡株式会社
発明の名称 三次元画像表示対応液晶表示装置に適した偏光板及び液晶表示装置  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
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