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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E02B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E02B
管理番号 1340162
異議申立番号 異議2017-701179  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-13 
確定日 2018-05-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第6184709号発明「コンクリートブロックの布設方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6184709号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6184709号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成25年3月18日に特許出願され、平成29年8月4日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成29年12月13日に特許異議申立人増田広利(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、下記のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」などいい、まとめて「本件発明」という。)。

「【請求項1】
堤防法面におけるコンクリートブロックの布設方法であって、
法面基礎ブロックを設置する工程と、
前記法面基礎ブロックから法面にかけて均しコンクリートを布設する工程と、
上面、下面及び4つの側面よりなるほぼ長方形平板形状を有し、その底面に少なくとも3個の高さ調整具を螺合させた第1法面コンクリートブロックを準備する工程と、
前記第1法面コンクリートブロックを、該側面の内、下方側面が前記法面基礎ブロックに対向するように前記高さ調整具を前記均しコンクリートの上に当接させて載置する工程と、
前記載置された第1法面コンクリートブロックの前記高さ調整具を調整し、前記第1法面コンクリートブロックの下面と前記均しコンクリートの上面との間に第1の所定の空間を保持させる工程と、
前記第1の所定の空間に生コンクリートを流し込む工程とを備え、
前記第1法面コンクリートブロックを準備する工程において、前記第1法面コンクリートブロックの前記下方側面に法長方向の位置を調整する少なくとも2個の水平調整具が螺合され、
前記第1法面コンクリートブロックを載置する工程において、前記水平調整具が前記法面基礎ブロックに当接するように前記第1法面コンクリートブロックは載置され、
前記第1の所定の空間を保持する工程は、前記水平調整具を調整し、前記法面基礎ブロックと前記第1法面コンクリートブロックとの間に所定の水平空間を保持する工程を含み、
前記第1の所定の空間に生コンクリートを流し込む工程の前に、前記所定の水平空間に生コンクリートを流し込み、硬化させる工程を更に含む、コンクリートブロックの布設方法。
【請求項2】
上面、下面及び4つの側面よりなるほぼ長方形平板形状を有し、該側面の内、上方側面側の底面に少なくとも2個の高さ調整具を螺合させた第2法面コンクリートブロックを準備する工程と、
前記第2法面コンクリートブロックを、前記第2法面コンクリートブロックの前記上方側面に対向する下方側面の一部が前記第1法面コンクリートブロックの前記下方側面に対向する上方側面の一部に当接するように載置する工程と、
前記載置された第2法面コンクリートブロックの前記高さ調整具を調整し、前記第2法面コンクリートブロックの下面と前記均しコンクリートの上面との間に第2の所定の空間を保持させる工程と、
前記第2の所定の空間に生コンクリートを流し込む工程とを更に備えた、請求項1に記載のコンクリートブロックの布設方法。
【請求項3】
請求項2記載の工程が法面の上方に沿って更に繰返された、請求項2記載のコンクリートブロックの布設方法。
【請求項4】
前記第1法面コンクリートブロックの前記上方側面の下方には、法面上方に突出する平面視台形形状の下方突出部が間隔をあけて3箇所形成され、
前記第2法面コンクリートブロックの前記下方側面の上方には、法面下方に突出する平面視矩形形状の上方突出部が全幅に連続的に形成され、
前記第2法面コンクリートブロックを載置する工程において、前記下方突出部の上に前記上方突出部が設置される、請求項2又は請求項3記載のコンクリートブロックの布設方法。」

第3 申立理由の概要
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証により示される、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施された発明であって、特許法第29条第1項第1,2号に該当し、または、前記本件特許出願前に公然知られ、または公然実施された発明及び甲第2?8号証に示される発明(本件特許出願前に公然知られ、または公然実施された発明、刊行物記載の発明)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

[証拠方法]
甲第1号証:標題:神田護岸工事に伴う大型張ブロック施工(サンKクリ ア工法)第1回目
踏査日 平成10年1月13日(以下「報告書1」という。)
標題:神田護岸工事に伴う大型張ブロック施工(サンKクリ ア工法)第2回目
踏査日 平成10年2月5日 (以下「報告書2」という。)
標題:神田護岸工事に伴う大型張ブロック施工(サンKクリ ア工法)第3回目
踏査日 平成10年2月13日(以下「報告書3」という。)
標題:神田第2護岸工事に伴う大型張りブロック施工(サン Kクリア工法)
撮影年月 平成10年2月 (以下「報告書4」という。)

添付写真 合計37枚
報告書1?3の報告者、報告書4の撮影者:
株式会社荒谷建設コンサルタント益田事務所 木村毅

甲第2号証:特開2007-262773号公報
甲第3号証:サンKクリア工法施工写真
甲第4号証:特開平7-259048号公報
甲第5号証:山陰経済ウイークリー(平成10年3月3日)、山陰中央新 報社,p5
甲第6号証:セメント新聞(平成10年4月13日)
甲第7号証:河川維持管理計画<高津川>平成24年3月 中国地方整備 局浜田河川国道事務所
甲第8号証:増田広利の陳述書
甲第9号証:増田広利の人事異動通知書

第4 各甲号証の内容
1 甲第1号証について
(1)甲第1号証の内容・概要
甲第1号証は、神田護岸工事及び神田第2護岸工事に伴う大型張ブロック施工(サンKクリア工法)に関する4つの報告書(「報告書1」?「報告書4」)を含み、各報告書のあとに工事現場の写真が添付されている。
なお、37枚の写真にはア?ユの記号が付されているともに、写真中の部材に対して用語の説明も付されている。
(2)甲第1号証に開示されている発明の認定
甲第1号証だけでは、各報告書の標題に記載された神田護岸工事、神田第2護岸工事が、公然知られ、または公然実施された工事であったか否かが不明であり、また、各報告書の標題に記載された神田護岸工事、神田第2護岸工事と各報告書のあとに付けられた写真との関係は報告内容をみても不明であり、更には、写真が並べられた順序が大型張ブロックの施工順序と同じであるか否かも不明である。
ただし、甲第5号証、甲第6号証、並びに甲第8号証に添付された資料5及び6を合わせて検討すれば、本件特許出願前において、神田護岸工事及び神田第2護岸工事が実施されたことは、事実であるといえる。
そして、報告書のあとに付けられた写真が、仮に各報告書の標題に記載された神田護岸工事、神田第2護岸工事の状況を撮影したものであるとすると、実施された神田護岸工事、神田第2護岸工事には、以下の工程が含まれているといえる。

堤防法面におけるコンクリートブロックの布設方法であって、
・基礎ブロックを設置する工程と
・基礎ブロックから法面にかけてベースコンクリートを敷設する工程と、
・上面、下面及び4つの側面よりなるほぼ長方形平板形状を有し、その底面に高さ調整具を螺合させた大型張ブロックを準備する工程と、
・大型張ブロックを、側面の内、下方側面が基礎ブロックに対向するように高さ調整具をベースコンクリートの上に当接させて載置する工程と、
・載置された大型張ブロックの高さ調整具を調整し、大型張ブロックの下面とベースコンクリートの上面との間に所定の空間を保持させる工程と、
・所定の空間に生コンクリートを流し込む工程とを備え、
さらに、
・基礎ブロックと大型張ブロックとの間に所定の水平空間を保持する工程(写真メ、モ)(当該工程において、水平空間に棒状部材が存在している点が看てとれる)と、
・所定の空間に生コンクリートを流し込む工程の前に、所定の水平空間に生コンクリートを流し込む工程。

しかしながら、甲第1号証の写真において、上記のとおり、水平空間に棒状部材が存在しているものの、その使用目的が不明である。(棒状部材が、大型張ブロックに対してどのように取り付けられているのか、またどのように使用されるのかが不明である。)
したがって、以下の点が開示されているということができない。
・大型張ブロックを準備する工程において、大型張ブロックの下方側面に法長方向の位置を調整する少なくとも2個の水平調整具が螺合される点
・大型張ブロックを載置する工程において、上記水平調整具が基礎ブロックに当接するように大型張ブロックが載置される点
・所定の空間を保持する工程において、前記水平調整具を調整し、基礎ブロックと大型張ブロックとの間に所定の水平空間を保持する工程を含んでいる点

2 甲第2号証について
甲第2号証には、申立人の主張を参酌すれば、以下の発明が記載されていると認められる。
「堤防法面におけるコンクリートブロックの布設方法であって、
基礎ブロック4を設置する工程と、
モルタル層5を形成する工程と、
高さ調整具9を設けたコンクリート板8を準備する工程と、
高さ調整具9をモルタル層5に当接させて載置する工程と、
高さ調整具9を調整しコンクリート板8の下面とモルタル層5の上面との間に形成した空間43を保持させる工程と、
空間43にコンクリート30-1を流し込む工程と
を備えている堤防法面におけるコンクリートブロックの布設方法」

3 甲第3号証について
(1)甲第3号証の内容・概要
1頁目には「サンKクリア工法 施工写真」との標題が記載されており、2頁目には「サンKクリア工法 大型張ブロック」との標題、及び「施主:鳥取県根雨土木事務所」、「工事名:日野川河川整備工事(護岸勾配1:2.0)」、「施工場所:鳥取県地内」、「サイズ:1000×1000×120」が記載されている。更に、3頁目には、「サンKクリア工法(24)大型張ブロック」との標題と3枚の工事現場の写真が記載されている。3枚の写真のうちの最上段の写真のみに「6 22 ’01」との記載がある。

(2)甲第3号証に開示されている発明の認定
2枚目の「サンKクリア工法 大型張ブロック」と、3枚目の「サンKクリア工法(24)大型張ブロック」との関係が不明であるため、「6 22 ’01」との記載がある写真が、日野川河川整備工事を撮影したものであるか否かが不明である。
仮に、甲第3号証の3枚目の資料に示される上段の写真を含めすべて3枚の写真が、日野川河川整備工事の現場を2001年6月22日に撮影されたものであるとすると、本件特許出願前の2001年6月22日において、日野川河川整備工事が実施されたは、事実であるといえる。
そして、実施された日野川河川整備工事には、以下の工程が含まれているといえる。

堤防法面におけるコンクリートブロックの布設方法であって、
・基礎ブロックを設置する工程と
・基礎ブロックから法面にかけてベースコンクリートを敷設する工程と、
・上面、下面及び4つの側面よりなるほぼ長方形平板形状を有する大型張ブロックを、側面の内、下方側面が基礎ブロックに対向するように棒状部材(「棒状部材1」という。)をベースコンクリートの上に当接させて載置する工程と、と、
・大型張ブロックの下面とベースコンクリートの上面との間に所定の空間を保持させる工程とを備え、
さらに、
・基礎ブロックと大型張ブロックとの間に所定の水平空間を保持する工程(写真ヨ?リ)(当該工程において、水平空間に棒状部材(「棒状部材2」という。)が存在している点が看てとれる)。

しかしながら、甲第3号証の写真においては、上記のとおり、水平空間に棒状部材2が存在しているものの、その使用目的が不明である。(棒状部材2が、ターンバックルのようなものではあるが、大型張ブロックに対してどのように取り付けられているのか、またどのように使用されるのかが不明である。)
したがって、以下の点が開示されているということができない。
・大型張ブロック準備する工程において、大型張ブロックの下方側面に法長方向の位置を調整する少なくとも2個の水平調整具が螺合される点
・大型張ブロックを載置する工程において、上記水平調整具が基礎ブロックに当接するように大型張ブロックが載置される点
・所定の空間を保持する工程において、前記水平調整具を調整し、基礎ブロックと大型張ブロックとの間に所定の水平空間を保持する工程を含んでいる点
また、上記のとおり、棒状部材1が存在しているものの、その使用目的が不明であること、さらに、生コンクリートが流し込まれた様子がうかがえないことから、以下の点も看てとることができない。
・上面、下面及び4つの側面よりなるほぼ長方形平板形状を有し、その底面に高さ調整具を螺合させた大型張ブロックを準備する工程
さらに、
・所定の空間に生コンクリートを流し込む工程の前に、所定の水平空間に生コンクリートを流し込み、硬化させる工程

なお、甲第3号証の写真は、甲第1号証で示される神田護岸工事、神田第2護岸工事とは別の工事を撮影したものであるから、当該写真によって、神田護岸工事、第2護岸工事の内容が公然実施されたことを示すことにならない。

4 甲第4号証について
甲第4号証には、明細書の段落【0042】、図1を参酌すれば、以下の事項が記載されていると認められる。
「第1番目のコンクリートブロック1Aを準備する工程において、前記第1番目のコンクリートブロック1Aの第2番目のコンクリートブロック1Bとの隣接側となる一側面の膨出部2の下方に設けられるナット部材に接続位置調節部材となるボルト部材3を螺合し」た点

5 甲第5号証について
甲第5号証には、本件特許出願前において、開盛建設による、高津川高田(本決定注:「神田」の誤記)護岸工事が行われたことが示されている。
また、当該工事において、「サンKクリア工法」が導入されたこと、そして、高さ調整ボルトが付けられた大型張ブロック擬石玉石タイプが採用されたことが示されている。

6 甲第6号証について
甲第6号証には、本件特許出願前において、工事業者により高津川神田護岸工事が行われたことが示されている。
また、当該工事において、「サンKクリア工法」が導入されたこと、そして、高さ調整ボルトが付けられた大型張りブロックが採用されたことが示されている。

7 甲第7号証について
甲第7号証は、河川維持管理計画<高津川>(平成24年3月)で、甲第7号証の4頁にサンKクリア工法の実績数量表があり、5,6頁にその工事リストが記載されている。(高津川神田護岸工事(1998 01?02)については、実績NO.460、461。)

8 甲第8号証について
甲第8号証は、申立人増田広利の陳述書であり、申立人の経歴、神田護岸工事及び神田第2護岸の経過及び特許第6184709号について陳述するとともに、資料1(「平成9年7月台風9号による高津川出水概要」についての論文)、資料2(高津川水系の概要)、資料3(「油圧ジャッキを用いた大型ブロックの施工」についての論文)、資料4(神田護岸工事に伴う大型張ブロック施工)、資料5(山陰経済ウイークリーの記事(護岸工事に「サンKクリア工法」))、資料6及び資料6-1(建設興業タイムス(平成10年3月3日)の記事(「高津川・江の川 護岸工 大型張ブロック採用」)),資料7(サンKクリア工法)が添付されている。

9 甲第9号証について
甲第9号証からは、申立人増田広利が、中国地方建設局浜田工事事務所に勤務していたことが認められる。

第5 判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
甲第1号証に開示された発明は、上記第4の1(2)に述べたように、
「堤防法面におけるコンクリートブロックの布設方法であって、
・基礎ブロックを設置する工程と
・基礎ブロックから法面にかけてベースコンクリートを敷設する工程と、
・上面、下面及び4つの側面よりなるほぼ長方形平板形状を有し、その底面に高さ調整具を螺合させた大型張ブロックを準備する工程と、
・大型張ブロックを、側面の内、下方側面が基礎ブロックに対向するように高さ調整具をベースコンクリートの上に当接させて載置する工程と、
・載置された大型張ブロックの高さ調整具を調整し、大型張ブロックの下面とベースコンクリートの上面との間に所定の空間を保持させる工程と、
・所定の空間に生コンクリートを流し込む工程とを備え、
さらに、
・基礎ブロックと大型張ブロックとの間に所定の水平空間を保持する工程と、
・所定の空間に生コンクリートを流し込む工程の前に、所定の水平空間に生コンクリートを流し込む工程」が含まれる。
すなわち、
本件発明1の
「堤防法面におけるコンクリートブロックの布設方法であって、
法面基礎ブロックを設置する工程と、
前記法面基礎ブロックから法面にかけて均しコンクリートを布設する工程と、
上面、下面及び4つの側面よりなるほぼ長方形平板形状を有し、その底面に、高さ調整具を螺合させた第1法面コンクリートブロックを準備する工程と、
前記第1法面コンクリートブロックを、該側面の内、下方側面が前記法面基礎ブロックに対向するように前記高さ調整具を前記均しコンクリートの上に当接させて載置する工程と、
前記載置された第1法面コンクリートブロックの前記高さ調整具を調整し、前記第1法面コンクリートブロックの下面と前記均しコンクリートの上面との間に第1の所定の空間を保持させる工程と、
前記第1の所定の空間に生コンクリートを流し込む工程とを備え、
前記第1の所定の空間を保持する工程は、前記法面基礎ブロックと前記第1法面コンクリートブロックとの間に所定の水平空間を保持する工程を含み、
前記第1の所定の空間に生コンクリートを流し込む工程の前に、前記所定の水平空間に生コンクリートを流し込む工程」を有している。

しかしながら、本件発明1と、甲第1号証に開示されている発明とは、法面基礎ブロックと第1法面コンクリートブロックとの関係について、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件発明1では、第1法面コンクリートブロックを準備する工程において、第1法面コンクリートブロックの下方側面に法長方向の位置を調整する少なくとも2個の水平調整具が螺合されているのに対して、
甲第1号証に開示されている発明では、法面基礎ブロックと第1法面コンクリートブロック(大型張りブロック)との間の所定の空間に棒状部材が存在するものの、第1法面コンクリートブロックを準備する工程において、第1法面コンクリートブロックの下方側面に法長方向の位置を調整する少なくとも2個の水平調整具が螺合されているか否か不明である点。

(相違点2)
本件発明1では、第1法面コンクリートブロックの下方側面に螺合された少なくとも2個の水平調整具を調整し、前記法面基礎ブロックと前記第1法面コンクリートブロックとの間に所定の水平空間を保持しているのに対して、甲第1号証に開示されている発明では、前者のような水平調整具を調整することで所定の水平空間を保持しているか否か不明である点。

また、申立人が申立書20頁9-18行で主張するように、本件発明1と甲第1号証に開示されている発明とは、更に少なくとも、以下の点でも相違する。
(相違点3)
第1掘面コンクリートブロックの底面に螺合させる高さ調整具が、本件発明1では、少なくとも3個であるのに対して、甲第1号証に開示されている発明では、2個である点。

(相違点4)
本件発明1は、前記第1の所定の空間に生コンクリートを流し込む工程の前に、前記所定の水平空間に生コンクリートを流し込み、硬化させる工程を有しているのに対して、甲第1号証に開示されている発明では、前者のような硬化させる工程を有しているか否か不明である点。

(イ)判断
a 相違点1及び2について
甲第2号証?甲第8号証のいずれにも、相違点1及び2に係る本件発明1の構成、すなわち、
「第1法面コンクリートブロックを準備する工程において、前記第1法面コンクリートブロックの前記下方側面に法長方向の位置を調整する少なくとも2個の水平調整具が螺合され」る構成
及び
「第1法面コンクリートブロックの下方側面に螺合された少なくとも2個の水平調整具を調整し、前記法面基礎ブロックと前記第1法面コンクリートブロックとの間に所定の水平空間を保持」する構成
は記載も示唆もされていない。
補足すると、甲第3号証には、上記第4の3(2)で述べたように、基礎ブロックと大型張ブロックとの間に所定の水平空間を保持する工程において、水平空間に棒状部材2が存在するとしても、「前記第1法面コンクリートブロックの前記下方側面に法長方向の位置を調整する少なくとも2個の水平調整具が螺合され」ているとはいえず、また、甲第4号証には、上記第4の4で述べたように、第1番目のコンクリートブロック1Aを準備する工程において、前記第1番目のコンクリートブロック1Aの第2番目のコンクリートブロック1Bとの隣接側となる一側面の膨出部2の下方に設けられるナット部材に接続位置調節部材となるボルト部材3が螺合されているとしても、当該ボルト部材3は、「前記第1法面コンクリートブロックの前記下方側面に」「螺合され」ているとはいえず、また、「法面基礎ブロックと前記第1法面コンクリートブロックとの間に所定の水平空間を保持する」ためのものではない。
そして、本件発明1は、上記構成を備えることにより、明細書記載の作用効果を奏する。
よって、本件発明1の相違点1及び2に係る構成は、甲第1?8号証に開示されておらず、当業者にとって容易に想到できたものでもない。

b 申立人の主張について
申立人は、
申立書において、甲第1号証には、
「・・・
前記大型張ブロックを準備する工程において、前記大型張ブロックの前記下方側面に法長方向の位置を調整する少なくとも2個の水平調整用ボルトネジが螺合され、(写真ム)
前記大型張ブロックを載置する工程において、前記水平調整用ボルトネジが前記基礎ブロックに当接するように前記大型張ブロックは載置され、(写真ム)
前記第1の所定の高さ空間を保持する工程は、前記水平調整用ボルトネジを調整し、前記基礎ブロックと前記大型張ブロックとの間に所定の水平空間を保持する工程を含み、
・・・」の点が看取できると主張する(申立書12頁7-8,25-33行)。
しかしながら、上述のとおり、甲第1号証に添付された写真をみても、大型張ブロックの下方側面に法長方向の位置を調整する少なくとも2個の水平調整用ボルトネジが螺合されいるとはいえず、また、そのような水平調整用ボルトネジによって、基礎ブロックと大型張ブロックとの間に所定の水平空間が保持されているということはできない。
なお、写真メのように大型張ブロックが載置された状態では、当該ブロックを水平方向に移動させる(法長方向の位置を調整する)のは困難であると解される。
よって、申立人の主張を採用することはできない。

また、陳述書(甲第8号証)において、
「基礎コンクリートの法長によっては、下段部に基礎ブロックと大型張ブロックとの間に水平調整部を設け、上段の肩に大型張りブロックが収まるよう、下段部で法長の水平調整を行うのが常識であり、特別なことではありません。(ほとんどの工事では法長の調整が必要です。)
このとき法長の調整のため、基礎ブロックと大型張ブロックとの間に水平空間ができます、そのままの状態で均しコンクリートと大型張ブロックの空間に裏込めコンクリートを打設した場合、基礎ブロックと法長(水平)調整用治具を付けた大型張ブロックの間から生コンクリートが流出するため、その水平空間を先にコンクリートで塞ぐことは平成5年以降各地で行われたサンKクリア工法を含め、上述の神田護岸工事及び神田第2護岸工事や各種の大型張りブロックの工事では普通に行われている方法です。」
と主張する(甲第8号証 3枚目11-21行)。
しかしながら、「下段部に基礎ブロックと大型張ブロックとの間に水平調整部を設け、上段の肩に大型張りブロックが収まるよう、下段部で法長の水平調整を行うのが常識」であることを示す証拠は示されていないし、甲第8号証に添付されたサンKクリア工法に関する資料をみても同様である。
よって、申立人の主張を採用することができない。

(ウ)小括
したがって、本件発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲第1号証?甲第8号証のいずれかに開示された発明とは同一ではなく、また、本件発明1は、甲第1号証?甲第8号証に開示された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み更に減縮した発明であるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2ないし4は、甲第1号証?甲第8号証のいずれかに開示された発明とは同一ではなく、また、本件発明2ないし4は、甲第1号証?甲第8号証に開示された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-04-26 
出願番号 特願2013-54753(P2013-54753)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E02B)
P 1 651・ 113- Y (E02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 石川 信也  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 住田 秀弘
西田 秀彦
登録日 2017-08-04 
登録番号 特許第6184709号(P6184709)
権利者 奥田 智一
発明の名称 コンクリートブロックの布設方法  
代理人 葛西 泰二  
代理人 葛西 さやか  
代理人 小林 義美  

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