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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1340172
異議申立番号 異議2018-700216  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-03-12 
確定日 2018-05-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第6196491号発明「組み替え式天体望遠鏡の回転軸ユニットおよび組み替え式天体望遠鏡」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6196491号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯

特許第6196491号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成25年7月31日に特許出願され、平成29年8月25日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人林誠一により特許異議の申立てがされたものである。


第2.本件特許発明

本件特許の請求項1?5に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?5に記載された次のとおりのものである(以下それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明5」という。)。

「【請求項1】
軸受けハウジング(5)と、内蔵した動力機構により軸受けハウジング(5)に軸支されるとともに、上端面が軸受けハウジングの天面から露出する回転軸体(1)からなり、上記回転軸体(1)を中空部(14)を有する筒状とするとともに、軸受けハウジング(5)の底面および端面に中空部(14)と連通する貫通穴(16、10)を設け、軸受けハウジング(5)の天面から露出する回転軸体(1)の端面、軸受けハウジングの底面および端面を天体望遠鏡を構成する光学部材または支持部材の取り付け面とするとともに、そのための固定手段(t1、t2、t3)を設けたことを特徴とする組み替え式天体望遠鏡の回転軸ユニット。
【請求項2】
軸受けハウジング(5)と、内蔵した動力機構により軸受けハウジング(5)に軸支されるとともに、上端面が軸受けハウジングの天面から露出する回転軸体(1)からなり、上記回転軸体(1)を中空部(14)を有する筒状とするとともに、軸受けハウジング(5)の底面および端面に中空部(14)と連通する貫通穴(16、10)を設け、軸受けハウジング(5)の天面から露出する回転軸体(1)の端面、軸受けハウジングの底面および端面を天体望遠鏡を構成する光学部材または支持部材の取り付け面とするとともに、そのための固定手段(t1、t2、t3)を設けた2つの回転軸ユニット(X、Y)により各部材を観測目的に合わせた形式に連結可能としたことを特徴とする組み替え式天体望遠鏡。
【請求項3】
偏平状の本体の一面に一方の回転軸ユニット(X)の天面から露出する回転軸体(1)の端面を固定可能とするとともに、他面に他方の回転軸ユニット(Y)の端面を固定可能とすることにより、2つの回転軸ユニット(X、Y)同士を互いの回転軸体(1)が直交するよう連結するためのマルチプレート(17)を支持部材として用意した請求項2記載の組み替え式天体望遠鏡。
【請求項4】
回転軸体(1)の中空部(14)を通線路および導光管として利用した請求項2または3記載の組み替え式天体望遠鏡。
【請求項5】
回転軸ユニット(X、Y)を防水構造にした請求項4記載の組み替え式天体望遠鏡。」


第3.申立理由の概要

特許異議申立人林誠一は、証拠として、実開昭60-193573号(以下、実願昭59-81978号(実開昭60-193573号)のマイクロフィルムを、「甲第1号証」という。)、「月刊星ナビ2011年10月号」、2011年9月5日発行、第16?21頁(以下、「甲第2号証」という。)、特開平7-108485号公報(以下、「甲第3号証」という。)、実公昭54-43732号公報(以下、「甲第4号証」という。)、特開平10-164400号公報(以下、「甲第5号証」という。)及び特開平6-347677号公報(以下、「甲第6号証」という。)を提出して、以下のとおり、請求項1?5に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

甲第1号証ないし甲第3号証により、請求項1?2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲第1号証ないし甲第4号証により、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲第1号証ないし甲第5号証により、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲第1号証ないし甲第6号証により、請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。


第4.甲各号証の記載

1.甲第1号証
甲第1号証には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同じ。)

「(イ)産業上の利用分野
この考案は赤道儀架台に第三軸としての補助軸を組合せることにより赤道儀の利用分野を広範囲にする目的のために創作された赤道儀の補助軸に係るものである。
より詳細に述べれば、赤道儀架台の天体観測器具取付台に補助軸を取付けることにより、望遠鏡と写真鏡の併設を可能とし、更に赤緯軸の代用として極軸に取付け可能にし、バランスウエートを必要としない補助軸の構成に係るものである。」(明細書第1頁第14行?第2頁第3行)

「架台(1)上には極軸(A)の外筒(A1)の取付台(S1)がネジ止めにより取付けられ、外筒(A1)には取付台(S2)を設けた極軸(A)が回転自在に嵌挿される。」(明細書第3頁第2?4行)

「極軸(A)の取付台(S2)には赤緯軸(B)の外筒(B1)の中途に設けた取付台(S3)が夫々取付孔を一致してネジ止めされ、極軸に対し赤緯軸を直交する角度に取付けられる。
赤緯軸(B)は一端に取付台(S4)を取付けた筒軸よりなり、上記外筒(Bl)に回転自在に軸挿される。(図示しないがウオームとウオームホイールの組合せよりなる微動装置により回転させてもよい。)
赤緯軸(B)の取付台(S4)には望遠鏡または写真鏡(K)が取付けられ、反対側にはバランスウエート(W)が取付けられ、天体望遠鏡の赤道儀架台として構成される。」(明細書第3頁第8?20行)

「また補助軸(C)の中央部一側には極軸(A)の取付台(S2)と赤緯軸(B)の取付台(S4)に合致する取付台(S6)が設けられて補助軸(C)は構成される。」(明細書第4頁第12?14行)

「(ヘ)作用
上記赤道儀架台と補助軸を組合せ使用する方法は二通りあり、一つの方法は第3図に示す如く赤緯軸(B)の取付台(S4)上に補助軸(C)の取付台(S6)を重ね、夫々の取付孔を一致してネジ止めし、補助軸(C)の一方の取付台(S5)には、ガイド望遠鏡(P)を、他方の取付台(S5)には写真鏡(K)を取付けて使用する。
他の使用方法は第4図に示す如く、補助軸(C)を赤緯軸(B)の代用として使用するものであり、極軸(A)より赤緯軸(B)を外し、補助軸(C)の取付台(S6)を極軸(A)の取付台(S2)に合せ、夫々の取付孔を一致してネジ止めし、補助軸(C)の両端の取付台(S5)に夫々写真鏡(K)を併設する。」(明細書第4頁第15行?第5頁第6行)

上記の記載を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「架台(1)上には極軸(A)の外筒(A1)の取付台(S1)がネジ止めにより取付けられ、外筒(A1)には取付台(S2)を設けた極軸(A)が回転自在に嵌挿され、
極軸(A)の取付台(S2)には赤緯軸(B)の外筒(B1)の中途に設けた取付台(S3)が夫々取付孔を一致してネジ止めされ、極軸に対し赤緯軸を直交する角度に取付け、
赤緯軸(B)は一端に取付台(S4)を取付けた筒軸よりなり、上記外筒(Bl)に回転自在に軸挿され、ウオームとウオームホイールの組合せよりなる微動装置により回転させてもよく、
赤緯軸(B)の取付台(S4)には望遠鏡または写真鏡(K)が取付けられ、反対側にはバランスウエート(W)が取付けられ、
また補助軸(C)の中央部一側には極軸(A)の取付台(S2)と赤緯軸(B)の取付台(S4)に合致する取付台(S6)が設けられて補助軸(C)は構成され、
赤道儀架台と補助軸を組合せ使用する方法は二通りあり、一つの方法は、赤緯軸(B)の取付台(S4)上に補助軸(C)の取付台(S6)を重ね、夫々の取付孔を一致してネジ止めし、補助軸(C)の一方の取付台(S5)には、ガイド望遠鏡(P)を、他方の取付台(S5)には写真鏡(K)を取付けて使用するものであり、他の使用方法は、補助軸(C)を赤緯軸(B)の代用として使用するものであり、極軸(A)より赤緯軸(B)を外し、補助軸(C)の取付台(S6)を極軸(A)の取付台(S2)に合せ、夫々の取付孔を一致してネジ止めし、補助軸(C)の両端の取付台(S5)に夫々写真鏡(K)を併設する、
天体望遠鏡の赤道儀架台。」


2.甲第2号証
甲第2号証には、次の事項が記載されている。

「PM1の基本的なスタイルは、ドイツ式赤道儀である。鏡筒を搭載すれば、ごく普通の赤道儀の外観を呈する。搭載質量は約5kgで、搭載可能な鏡筒としては同社のFS-60系やFSQ-85ED、SKY90など、比較的口径の小さい機種に限定される。
また、移動を前提とした赤道儀に必須の機構である極軸望遠鏡の内蔵はもちろんのこと、極軸にはステッピングモーターを採用したモータードライブを内蔵している。赤緯軸にはモータードライブは用意されていないが、ウォームホイルを用いた全周微動が可能になっている。
Pシリーズが、最終モデルのP-2Zに至るまで極軸のモータードライブを外付け式とし、さらに赤緯微動がスプリングスクリュー式の部分微動だったことを考えると、モータードライブ内蔵は大きな改善点であり、赤緯軸にウォームホイルの全周微動が採用されたことで、将来的に両軸モーター駆動も期待できる。
こうした現代風の機能を盛り込まれたPM-1だが、赤道儀の各部がユニット化されていて、かなり細かい部分まで分割が可能になっていることが大きな特徴である。」(第16頁右下欄第3行?第17頁中央欄第3行)

「ところで、タカハシのポータブル赤道儀としては、1980年代にスペースボーイという機種が販売されていた。スペースボーイは赤緯軸(赤緯微動ユニット)がはずせたり、極軸部分のみをカメラ三脚に搭載することなどが可能だった。PM-1では、さらに高度なシステム化が進められ、赤道儀発売開始と同時にオプションパーツが多数用意され、ユーザーの使用目的に合わせた架台へと「変化」させることが可能となっている。詳細は後述するが、一般的なドイツ式赤道儀のみならず、オプションパーツの組み合わせによってフォーク式赤道儀や経緯台として使用することができ、カメラ雲台をいくつも接続した多連カメラの写真儀としての活用も可能としているのである。」(第17頁中央欄第13行?右欄第14行)


「PM-1のコアである極軸ユニット。ウォームギアとステッピングモーターを収めた部分が四角く張り出した形状だ。ウォームホイルが三脚側に固定されて、その周囲をウォームギアが回る構造になっている。ベアリングは主軸に4個、ウォームギアに2個を使用している。」(第17頁左上写真の説明文)

「モーターはL字型のブラケットで固定され、平ギアを介して動力をウォームギアに伝えている(写真上)。モーターの駆動周波数は約40PPSだ。」(第20頁中央のモーターに関する写真の説明文第1?4行)

「赤緯体は、4本のM4ねじで極軸ユニットに固定される。取り付け穴は、45度間隔に8つあるので赤緯体を斜めに固定することも可能。」(第21頁中央写真の説明文第1?3行)

また、第17頁左上写真、同頁右写真、第20頁中央のモーターに関する写真、第21頁中央写真から、「極軸ユニット」は、赤緯体等のパーツを固定するための回転する軸の部分を有し、その回転する軸の部分は、ウォームギアとステッピングモーターを収めた部分を含むハウジングに軸支され、ハウジングの天面から露出している点が看取できる。また、その回転する軸の部分は、第17頁左上写真の説明文、第20頁中央のモーターに関する写真の説明文第1?4行から、ステッピングモータの動力ウォームギアに伝えることで回転することは自明である。
また、極軸望遠鏡を内蔵することから、回転する軸の部分は中空部を有する筒状であること、及び、ハウジングの底面には貫通穴が設けられており、その貫通穴は回転する軸の部分にある中空部と連通していることは自明である。

上記の記載を総合すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「極軸ユニットは、ハウジングを有し、赤緯体等のパーツを固定するための回転する軸の部分を有し、その回転する軸の部分はハウジングに軸支され、ハウジングの天面から露出しており、また、極軸望遠鏡を内蔵することから、回転する軸の部分は中空部を有する筒状であり、ハウジングの底面には貫通穴が設けられており、その貫通穴は回転する軸の部分にある中空部と連通しており、
極軸ユニットはステッピングモーターを採用したモータードライブを内蔵し、ウォームギアとステッピングモーターがハウジングに収められており、モーターは動力をウォームギアに伝えることで回転する軸の部分が回転し、
赤緯体は、4本のM4ねじで極軸ユニットに固定され、
一般的なドイツ式赤道儀のみならず、オプションパーツの組み合わせによってフォーク式赤道儀や経緯台として使用することができる、ユーザーの使用目的に合わせて変化させることが可能な架台を有したドイツ式赤道儀。」


3.甲第3号証
甲第3号証には、次の事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、産業用ロボットの旋回胴、腕関節や工作機械等の産業用機械における回転軸部等の回転関節、即ち、ロボット等の回転関節に関し、特に、駆動源の回転出力を減速する減速機として中心部に円筒状の貫通領域を有した中空減速機を用いた回転関節に関する。」

「【0010】
【実施例】以下、本発明を添付図面に示す実施例に基づいて更に詳細に説明する。図1は、本発明の1実施例に係る回転関節として産業用ロボットの基台と旋回胴との間に設けた回転関節の構成を示した断面図である。同図1において、産業用ロボット10の固定ベース12は、内部に所要の構造要素を配設したり、又、配線、配管のルートとして利用可能なユティリティ領域を形成する空間14を備えた筒体構造要素として形成され、上部には、皿板状の天井基板12aを有している。この固定ベース12の天井基板12aの上面には大径の軸受16、例えば、周知のクロスローラ型ベアリングベアが装着され、この軸受16の内輪に回転可能に支持された減速機20が搭載されている。図示には詳細に示されていないが、同減速機20は中心部側に入力要素を備え、この入力要素は複数のボルトねじ32を介して上記の固定ベース12に強固に固定されており、この入力要素の外周域に減速出力要素を備え、同減速出力要素が上記軸受16により外部から支持される共に、ボルトねじ34により、回転要素を成すロボット旋回胴30に結合されている。
【0011】上記の減速機20は、中心部に比較的径が大きな貫通孔22が形成され、本実施例では、この貫通孔22内には同貫通孔22をケーブル挿通路として区画、形成する筒体状の中空スリーブ要素36がその底部フランジ36aにより固定ベース12の天井基板12aにねじ止めにより止着されている。ロボット旋回胴30の中心部にもユティリティ領域38が形成され、上記の貫通路22は、固定ベース12のユティリティ領域14とロボット旋回胴30のユティリティ領域38とを連通するユティリティ領域に形成され、特に、本実施例では、ケーブル類40を下部のユティリティ領域14から上部のユティリティ領域38へ或いはその逆向きに配線、配管する配線、配管領域として配設されている。
【0012】ここで、上記ケーブル類40は固定ベース12の一部に形成された入力ポート12bから下部ユティリティ領域14に入り、中空形の減速機20の貫通孔22に挿通されたスリーブ要素36の内部を通過して上部ユティリティ領域38に達している。そして、回転要素であるロボット旋回胴30に止め金具42を用いて固定されている。つまり、ケーブル類40はケーブルガイドや種々の支持具等の保護手段を全く用いることなく、減速機20の中心領域を経由して固定ベース12側から旋回胴30側へ配線、配管されており、旋回胴30が、減速機20の減速出力要素の回転中心を中心にして旋回動作する場合にも、その旋回の中心線に沿ってケーブル類40が延設されていることから、ケーブル類40に生ずる捩じれや曲がり等に伴う心線の伸縮作用が軽減され、ケーブル類40の内部、外部の損傷を可及的に防止できる利点がある。しかも、上述のようにケーブル類40に対する保護手段を減速機20の周囲に必要としないことから、機構全体のコンパクト化が可能になっている。」

また、甲第3号証の図1を参照すると、「入力ポート12b」が「固定ベース」の端面に設けられている点、及び、「ユティリティ領域38」と「入力ポート12b」とが連通している点が看取できる。

上記の記載を総合すると、甲第3号証には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。

「固定ベース12はユティリティ領域を形成する空間14を備えた筒体構造要素として形成され、上部には、皿板状の天井基板12aを有し、
固定ベース12の端面に入力ポート12bが形成され、
回転要素を成すロボット旋回胴30を有し、
ロボット旋回胴30の中心部にユティリティ領域38が形成され、貫通路22が、固定ベース12のユティリティ領域14とロボット旋回胴30のユティリティ領域38とを連通するユティリティ領域に形成され、
ユティリティ領域38と入力ポート12bとが連通している、
回転軸部等の回転関節。」


4.甲第4号証
甲第4号証には、次の事項が記載されている。

「この考案は赤道儀架台の改良創作に係り、その改良点は、三脚と極軸の個所、極軸と赤緯軸の取付個所及び赤緯軸と天体観測器具の取付個所を自由に分割して使用できるようにし、更に極軸外筒底面には既製の写真機三脚を付けうるネジ孔を設けた点に存するものである。」(第1頁右欄第6?11行)

「極軸5と外筒5′は廻転自在に軸止されてあり、極軸5の外筒5′にはウォーム8が、極軸5にはウォームホイール8′が夫々取付けられ、この微動装置により駆動される。
極軸5には台座Bが固定されてあり、この台座Bには所定間隔位置の貫通孔に夫々ネジ杆bが貫挿されてあり、このネジ杆bはカメラ雲台Kのネジ孔に合致できる4Wネジが使用されるものである。
上記台座Bには赤緯軸9の外筒9′の周側に設けたネジ孔10にネジ杆bを螺挿して台座Bに赤緯軸外筒9′を締付けるようにしてあり、又、赤緯軸9は外筒9′に廻転自在に軸止され、外筒にはウォーム11を、赤緯軸にはウォームホイール11′を夫々取付けた微動装置により駆動するようにしてある。
赤緯軸9と極軸5は直交する角度に取付けられる。赤緯軸9には台座Cが固定されてあり、この台座の所定間隔位置に穿設した貫通孔にネジ杆cが夫々貫挿されてあり、このネジ杆cに合致した天体観測器具12にはネジ孔13が設けられ、両者を螺合螺脱して赤緯軸に天体観測器具12が自由に装脱し又、交換されるものである。」(第1頁右欄第27行?第2頁第12行)

上記の記載を総合すると、甲第4号証には、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる。

「極軸5と外筒5′は廻転自在に軸止されてあり、極軸5の外筒5′にはウォーム8が、極軸5にはウォームホイール8′が夫々取付けられ、
極軸5には台座Bが固定されてあり、この台座Bには所定間隔位置の貫通孔に夫々ネジ杆bが貫挿されてあり、
上記台座Bには赤緯軸9の外筒9′の周側に設けたネジ孔10にネジ杆bを螺挿して台座Bに赤緯軸外筒9′を締付けるようにした、
赤道儀架台。」


5.甲第5号証
甲第5号証には、次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビデオカメラ等の撮像装置を支持し、この撮像装置をパン方向或いはチルト方向に回動させるようにした雲台装置に関するものである。」

「【0013】ビデオカメラ100と外部との通信は、通信ケーブル5で行なわれる。通信ケーブル5のプラグ5aをカメラ100に挿入することで、該カメラ100は雲台装置1内を通ってソケット5b(図5)に接続され、このソケット5bにて外部との通信を行なうことができる。雲台装置1とビデオカメラ100との通信は、通信ケーブル6で行なわれる。通信ケーブル6のプラグ6aをカメラ100に挿入することで、該カメラ100は雲台装置1のコネクタ(図示せず)と結合される。雲台装置1の電源はDC入力プラグ7(図5)より供給されると共に、電源スイッチ8によりON/OFF制御される。また図5において、9はIDセレクト用スイッチである。」

「【0031】図18?図22は、通信ケーブル5及び通信ケーブル6のケーブル引き回し構造を示している。ところで、この種のケーブルにおいては電波障害に対する安全を考慮するとシールドケーブル及びその対策を施したプラグを使用する必要がある。また、耐久性を考慮するとケーブルの屈折率を大きくしておく必要がある。本発明ではこれらの課題を有効に実現する構成となっている。
【0032】図21等に示されるように、特に電波障害については雲台ユニット内部を通って通信ケーブル5,6をビデオカメラ100に接続することで、装置の作動時プラグ等の接続部に対する通信ケーブル5,6の影響をなくしている。また、耐久性についてはウォームホイール20を雲台ユニットの可動中心部に配設し、そのために可動中心部に大きなR状(湾曲)の内部空間2cを確保する。
【0033】図示のようにこの内部空間2cに沿って通信ケーブル5,6を無理に曲げることなく、R状に配置することでチルト部の耐久性を向上することができる。またこれに伴い、雲台2の外壁部2dもR状に成形することができる結果、チルティング作動時アッパカバー12との隙間を均一化し、優れた外観見栄えを保証することができる。」


上記の記載を総合すると、甲第5号証には、次の発明(以下、「引用発明5」という。)が記載されているものと認められる。

「ビデオカメラ100と外部との通信を行う通信ケーブル5、及び、雲台装置1とビデオカメラ100との通信を行う通信ケーブル6とが、雲台ユニット内部を通ってビデオカメラ100に接続するようにした、
ビデオカメラ等の撮像装置を支持する雲台装置。」


6.甲第6号証
甲第6号証には、次の事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、望遠鏡、特に測量機等のように屋外で使用される機器に適した望遠鏡の合焦機構における密封構造に関するものである。」

「【0011】次に動作について説明する。合焦環12を回転すると、ヘリコイド環7がギャー部材19を介して回転する。回転は内歯ギャー12aと螺合しているギャー19b及びギャー19aと螺合しているギャー7aを介して伝達される。ヘリコイド環7が回転すると、螺旋溝8に嵌合しているピン5が直進案内溝6に従って光軸方向に直進し、合焦レンズ支持筒4は合焦位置まで光軸方向に移動し、望遠鏡は合焦する。
【0012】次に、固定円筒2の合焦機構部分の円筒外側に付着する水の本体内への侵入が阻止されることについて説明する。固定円筒2とカバー15の当接部では、固定円筒2の壁部9とカバー15の前端部15aとの間にOリング17が取り付けてあるので水は侵入できない。カバー15とポロプリズム支持枠10の当接部では、カバー15の後端部15bとポロプリズム支持枠10との間にパッキング18が取り付けてあるので水は侵入できない。合焦環12とポロプリズム支持枠10の当接部からは、ギヤー19bが収納された空間まで水の侵入を許すことになるが、ギャー部材19と、ポロプリズム支持枠10に穿設された貫通孔とのあいだの油溜り20によってそれより先の本体内への水の侵入は阻止される。
【0013】このようにして、固定円筒2の合焦機構部分の円筒回り外側に付着する水が侵入して、ヘリコイド環7を濡らすことはなく、まして螺旋溝8、案内溝6、ピン5を介して合焦レンズ支持筒4周辺に到達することはない。」

上記の記載を総合すると、甲第6号証には、次の発明(以下、「引用発明6」という。)が記載されているものと認められる。

「固定円筒2とカバー15の当接部では、固定円筒2の壁部9とカバー15の前端部15aとの間にOリング17を取り付けて水が侵入しないようにし、
カバー15とポロプリズム支持枠10の当接部では、カバー15の後端部15bとポロプリズム支持枠10との間にパッキング18を取り付けて水が侵入しないようにし、
合焦環12とポロプリズム支持枠10の当接部からは、ギヤー19bが収納された空間まで水の侵入を許すことになるが、ギャー部材19と、ポロプリズム支持枠10に穿設された貫通孔とのあいだの油溜り20によってそれより先の本体内への水の侵入を阻止し、
固定円筒2の合焦機構部分の円筒回り外側に付着する水が侵入して、ヘリコイド環7を濡らすことはなく、螺旋溝8、案内溝6、ピン5を介して合焦レンズ支持筒4周辺に到達することもない、
望遠鏡の合焦機構における密封構造。」


第5.判断

1. 本件特許発明1について

(1)対比
本件特許発明1と引用発明1とを対比する。

後者において、「赤緯軸(B)」は「外筒(Bl)に回転自在に軸挿され」るから、当該「外筒」における「赤緯軸」が軸挿される部分は、軸受けとなっているといえ、後者の「外筒」と、前者の「軸受けハウジング(5)」とは、「軸受けを有する部材」との概念で共通する。

また、後者において、「赤緯軸(B)は一端に取付台(S4)を取付けた筒軸よりなり、上記外筒(Bl)に回転自在に軸挿され」るものであり、「筒」とは、「円く細長くて中空になっているもの。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)という意味であるから、「赤緯軸(B)」は、中空部を有する筒状であり、軸受けを有する部材(「外筒」)に軸支された「回転軸体」であるといえる。また、後者は、「赤緯軸(B)の取付台(S4)には望遠鏡または写真鏡(K)が取付けられ」、または、「赤緯軸(B)の取付台(S4)上に補助軸(C)の取付台(S6)を重ね、夫々の取付孔を一致してネジ止め」することから、後者の「取付台(S4)」は、前者の「支持部材」に相当するといえる。
また、後者において、赤緯軸の端面は、取付台(S4)の取付け面になっているといえ、また、その固定手段を有していることは自明である。

また、後者は、「赤道儀架台と補助軸を組合せ使用する方法は二通りあり、一つの方法は、赤緯軸(B)の取付台(S4)上に補助軸(C)の取付台(S6)を重ね、夫々の取付孔を一致してネジ止めし、補助軸(C)の一方の取付台(S5)には、ガイド望遠鏡(P)を、他方の取付台(S5)には写真鏡(K)を取付けて使用するものであり、他の方法は、補助軸(C)を赤緯軸(B)の代用として使用するものであり、極軸(A)より赤緯軸(B)を外し、補助軸(C)の取付台(S6)を極軸(A)の取付台(S2)に合せ、夫々の取付孔を一致してネジ止めし、補助軸(C)の両端の取付台(S5)に夫々写真鏡(K)を併設するものである、天体望遠鏡の赤道儀架台」であることから、後者の「天体望遠鏡」は、前者と同様、「組み替え式」であるといえる。

また、後者において、「赤緯軸(B)」が「上記外筒(Bl)に回転自在に軸挿され」、「反対側にはバランスウエート(W)が取付けられ」たものは、赤緯軸(B)が外筒(Bl)に対して回転自在であることから、前者と同様、「回転軸ユニット」であるといえる。

したがって、両者の間には、次の一致点、相違点がある。

(一致点)
「軸受けを有する部材と、軸受けを有する部材に軸支される回転軸体からなり、上記回転軸体を中空部を有する筒状とするとともに、回転軸体の端面の端面を支持部材の取り付け面とするとともに、そのための固定手段を設けた、組み替え式天体望遠鏡の回転軸ユニット。」

(相違点)
(相違点1)
「軸受けを有する部材」が、本件特許発明1では「軸受けハウジング(5)」であるのに対し、引用発明1では「外筒」であり、「軸受けハウジング」とはいえない点。

(相違点2)
本件特許発明1では、「回転軸体(1)」が、「内蔵した動力機構により軸受けハウジング(5)に軸支される」ものであるのに対し、引用発明1では、「赤緯軸(B)」が「外筒(Bl)に回転自在に軸挿され、ウオームとウオームホイールの組合せよりなる微動装置により回転」されるものであり、当該「ウオームとウオームホイールの組合せよりなる微動装置」が、内蔵した動力機構といえるのか不明であり、また、「軸受けハウジング」を有しておらず、赤緯軸(B)が、内蔵した動力機構により軸受けハウジングに軸支されているとはいえない点。

(相違点3)
本件特許発明1では、「上端面が軸受けハウジングの天面から露出する回転軸体」及び「軸受けハウジング(5)の天面から露出する回転軸体(1)」とあるのに対し、引用発明1では、「外筒」は天面を有しておらず、赤緯軸(B)あるいはその上端面は、軸受けハウジングの天面から露出しているとはいえない点。

(相違点4)
本件特許発明1は、「軸受けハウジング(5)の底面および端面に中空部(14)と連通する貫通穴(16、10)を設け」ているのに対し、引用発明1は、そのような貫通穴を設けていない点。

(相違点5)
本件特許発明1は、「軸受けハウジングの底面および端面を天体望遠鏡を構成する光学部材または支持部材の取り付け面とするとともに、そのための固定手段(t1、t2、t3)を設け」ているのに対し、引用発明1は、そのような構成を有しない点。


(2)相違点についての判断
(相違点1、2、3について)
相違点1、2、3について検討する。
引用発明2は、上記「第4.2.」のとおりであって、引用発明2における「ハウジング」は、その構造、機能からみて、本件特許発明1の「軸受けハウジング(5)」に相当する。
また、引用発明2では、「極軸ユニットはステッピングモーターを採用したモータードライブを内蔵し、ウォームギアとステッピングモーターがハウジングに収められており、モーターは動力をウォームギアに伝えることで回転する軸の部分が回転」し、「回転する軸の部分はハウジングに軸支され」ていることから、本件特許発明1と同様に、「動力機構」が内蔵されており、「回転する軸の部分」は「内蔵した動力機構により軸受けハウジング(5)に軸支され」ているといえる。
更に、引用発明2において、「回転する軸の部分はハウジングの天面から露出して」いるから、当該「回転する軸の部分」は、本件特許発明1と同様に、「上端面が軸受けハウジングの天面から露出する回転軸体(1)」あるいは「軸受けハウジング(5)の天面から露出する回転軸体(1)」であるといえる。

してみると、引用発明2には、上記相違点1に係る本件特許発明1の「軸受けハウジング(5)」という発明特定事項、上記相違点2に係る本件特許発明1の、「回転軸体(1)」が「内蔵した動力機構により軸受けハウジング(5)に軸支される」という発明特定事項、上記相違点3に係る本件特許発明1の「上端面が軸受けハウジングの天面から露出する回転軸体(1)」及び「軸受けハウジング(5)の天面から露出する回転軸体(1)」という発明特定事項が示されている。

また、引用発明1と引用発明2とは、天体望遠鏡の架台という共通の技術分野に属し、共に、軸体を回転させるという共通の機能を有するものであるから、引用発明1に引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

したがって、 引用発明1に引用発明2を適用することで、相違点1、2、3に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点4について)
相違点4について検討する。
上記相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項は、「軸受けハウジング(5)の底面および端面に中空部(14)と連通する貫通穴(16、10)を設け」た点であるから、まず、「軸受けハウジング(5)の端面に中空部(14)と連通する貫通穴(16、10)を設け」た点について検討する。

引用発明3は上記「第4.3.」のとおりであって、固定ベース12の端面に入力ポート12bが形成され、ロボット旋回胴30の中心部のユティリティ領域38と入力ポート12bとが連通しており、そうすると、ロボット旋回胴30は中空部を有しており、「入力ポート12b」は、固定ベースの端面に設けられた、中空部に連通する貫通穴であるといえる。

しかしながら、引用発明1は天体望遠鏡の赤道儀架台という技術分野に属し、引用発明3は回転軸部等の回転関節の技術分野に属するものであり、両発明は発明の属する技術分野が異なる。
加えて、上記「軸受けハウジング(5)の端面に中空部(14)と連通する貫通穴(16、10)を設け」た点を得るには、まず、引用発明1に引用発明2を適用して「軸受けハウジング」の構成を得た上で、引用発明3を適用しなければならず、所謂後付けの論理とならざるを得ない。

また、引用発明2、4?6をみても「軸受けハウジング(5)の端面に中空部(14)と連通する貫通穴(16、10)を設け」た点は開示されておらず、この点が、当業者にとって設計的事項とする根拠もない。

したがって、「軸受けハウジング(5)の端面に中空部(14)と連通する貫通穴(16、10)を設け」た点は、当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、引用発明1において、上記相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとすることについて、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

したがって、上記相違点5を検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明1?6に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


2.本件特許発明2?5について
本件特許発明2は、「第2.」のとおりであり、「2つの回転軸ユニット(X、Y)」それぞれの構成は、本件特許発明1における「組み替え式天体望遠鏡の回転軸ユニット」と同様であるから、上記「第5.1.」と同様の理由により、引用発明1?6に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
本件特許発明3は、本件特許発明2の発明特定事項に加えて、さらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本件特許発明2と同様に、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
本件特許発明4は、本件特許発明2または3の発明特定事項に加えて、さらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本件特許発明2または3と同様に、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
本件特許発明5は、本件特許発明4の発明特定事項に加えて、さらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本件特許発明4と同様に、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。


第6.むすび

以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由、及び証拠によっては、請求項1?5に係る特許は、取り消すことができない。

また、他に請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。



よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-05-17 
出願番号 特願2013-159283(P2013-159283)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 殿岡 雅仁  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 吉村 尚
荒井 隆一
登録日 2017-08-25 
登録番号 特許第6196491号(P6196491)
権利者 株式会社五藤光学研究所
発明の名称 組み替え式天体望遠鏡の回転軸ユニットおよび組み替え式天体望遠鏡  
代理人 神保 欣正  
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