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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) E04C
管理番号 1340178
判定請求番号 判定2017-600053  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 判定 
判定請求日 2017-12-19 
確定日 2018-05-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第3661059号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「軸力部材」は、特許第3661059号の請求項1及び4に係る発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨と手続の経緯
本件判定請求の趣旨は、判定請求書の「6-4 イ号実施部材」の項に記載したイ号図面及びその説明書に示す「軸力部材」(以下「イ号実施部材」という。)は、特許第3661059号の請求項1及び4に係る発明の技術的範囲に属さない、との判定を求めるものである。

本件特許に係る手続の経緯は、平成14年6月28日に出願され、平成17年4月1日に特許権の設定登録がなされ、平成29年12月19日(請求書差出日)に本件判定請求がなされ、これに対して、平成30年3月7日に被請求人から判定請求答弁書が提出されたものである。


第2 本件特許発明
本件特許発明は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、当該明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりであるところ、そのうち請求項1及び4に係る発明(以下「本件特許発明1」及び「本件特許発明4」という。)は、次のとおりである。(なお、(A)?(F)の分説は、本判定で付した。)
「【請求項1】
(A)金属部材の座屈を防止する配置に木材がアンボンド状態に合成されて成り、
(B)前記木材の端部から突き出された金属部材の両端部が軸力の入力部として構成されていることを特徴とする、
(C)木材と金属部材のアンボンド合成軸力部材。」
「【請求項4】
(D)木材に、金属管の横断面形状とほぼ同形、同大で同金属管を通すことが可能な通孔が設けられ、前記通孔へ金属管が貫通されて成り、
(E)木材の両端から突き出された金属管の両端部が軸力の入力部として構成されていることを特徴とする、
(F)木材と金属部材のアンボンド合成軸力部材。」


第3 イ号実施部材
1 判定請求書によるイ号実施部材の説明
判定請求書の「6-4 イ号実施部材」の項(7?9頁)には、イ号実施部材について、以下の記載がある。

「以下に、イ号実施部材を示す図1と図2を参照して、イ号実施部材を説明する。
【図1】 【図2】


イ号実施部材は、拡大断面図(図2)に示すように、イ号実施部材中央部を軸方向に延びるロの字型断面を有する金属部材(1)の外側に、金属部材(1)を囲うように耐火被覆材(ケイ酸カルシウム板)(5)がアンボンド状態に設けられ、更に当該耐火被覆材(5)の外側に、溝を彫ってこの字型断面(本判定注:「この字型断面」は「コの字型断面」の誤記と認める。)に加工した木材が、耐火被覆材(5)を囲うように設けられている。木材(2)は、一対の断面コ字型の集成材(2a、2a)から構成されている。耐火被覆材(5)と金属部材(1)は、断面コ字型の集成材(2a、2a)を金属部材(1)、耐火被覆材(5)を中に挟んで対向配置し、そして突合わせ端面を接着することにより形成された開口部4内に収容されている。また、正面図(図1)に示すように、前記耐火被覆材(5)および木材(2)の上下の端部から突き出た金属部材(1)の両端部(1a、1b)が入力部を構成する。

上記各部の寸法は以下の通りである。
金属部材(1)の長さ: 5395mm
L1= 200mm
L2= 245mm
L3= 350mm
耐火被覆材(5)の厚さ t1= 22.5mm
集成材(2)の厚さ t2= 52.5mm」

2 当審によるイ号実施部材の特定
イ号実施部材は、その中央部に、軸方向に延びる金属部材(1)が設けられていることから、棒状の部材であって、また、金属部材(1)の外側を耐火被覆材(5)で囲み、更にその外側を木材(2)で囲んでいることから、これら金属部材(1)、耐火被覆材(5)、木材(2)により棒状の合成部材ということができる。
また、イ号実施部材は、耐火被覆材(5)および木材(2)の上下の端部から突き出た金属部材(1)の両端部(1a、1b)が入力部を構成しているから、該入力部は、軸力の入力部であることは明らかである。
よって、イ号実施部材は、「合成軸力部材」と呼ぶこととする。
したがって、上記1の記載を元に、本件請求項1及び4の記載に沿ってイ号実施部材の構成を書き表すと、以下のとおりである。
((a)?(c)の分説は、本判定で付した。)

「(a)中央部を軸方向に延びるロの字型断面を有する金属部材(1)の外側に、金属部材(1)を囲うように耐火被覆材(ケイ酸カルシウム板)(5)がアンボンド状態に設けられ、更に当該耐火被覆材(5)の外側に溝を彫ってコの字型断面に加工した木材(2)が、耐火被覆材(5)を囲うように設けられ、
木材は、一対の断面コ字型の集成材(2a、2a)から構成され、
耐火被覆材(5)と金属部材(1)は、対向配置した断面コ字型の集成材(2a、2a)の突き合わせ端面を接着することにより形成された開口部(4)内に収容されており、
(b)前記耐火被覆材(5)および木材(2)の上下の端部から突き出た金属部材(1)の両端部(1a、1b)が軸力の入力部を構成する、
(c)金属部材(1)と耐火被覆材(5)と木材(2)からなる合成軸力部材。」


第4 当事者の主張
1 請求人の主張(判定請求書)
(1)特許請求の範囲に記載された用語の意義
ア 「座屈を防止する」
「防止」について、辞書には「ふせぎとめること」、「望ましくないことが起こらないようにあらかじめ手を打つこと」と定義されており、つまり、「座屈を防止」するとは、(座屈耐力を向上させることではなく)座屈をふせぎとめること、あるいは、座屈が起こらないようにすることを意味する。
さらに、本件明細書の
「また、引張り力が作用した場合を考えると、やはり鋼板1が入力部5、5を通じて全軸力を負担する。木材2が鋼板1の弾性座屈を防止するのに必要十分な曲げ剛性を有する場合、このアンボンド合成軸力部材の圧縮耐力は引張り耐力と同等となる。」(【0020】)との記載を見ても、圧縮耐力が引張耐力と同等になることが(弾性)座屈の防止と等価であると認識されており、座屈を防止することの意味は前記の定義と同じである。
すなわち、「防止」の意味に加えて、当該出願人の明細書において一貫して用いられている通り、「座屈を防止し」は、単に座屈耐力を向上させることではなく、「座屈させないこと」の意味と理解するのが相当である。
(4頁1?7行、4頁21行?5頁7行)

イ 「アンボンド状態」
アンボンド状態について、明細書には以下の記載がある。
「要するに、鋼板1と二つの木材2、2及び木板3、3とは、一切接着や連結をされていない。釘4は、鋼板1の両側に重ねた二つの木材2、2と木板3とを結合することにのみ使用され、もってアンボンド状態を実現している。木材2と鋼板1は、単に重ね合わせにより接した面の摩擦力によってのみ、重力の作用や振動によって両材の相対位置が変化しない(ずれない)組み合わせ状態を保つアンボンドの構成であり、前記の摩擦力は通常問題にならない程に小さい。」(【0019】)
したがって、本件発明においてアンボンド状態とは、鋼板と木材が一切接着や連結をされずに単に重ね合わせられており、通常問題にならない程に小さい摩擦力が作用するように接している状態であり、木材と金属部材の間に他の部材が介在しているような状態は含まれないと解される。
この記載に加えて、【0024】、【0029】、【0030】の記載及び添付の図面を参照しても、本件特許には木材と金属部材が直接接する構成のみが開示されており、木材と金属部材との間に他の部材が介在する構成は、開示も示唆もされていないから、「アンボンド状態」とは、木材と金属部材が直接接する構成を指しており、木材と金属部材の間に耐火被覆材が介在するような構成を含まないと解するのが相当である。
(5頁9行?6頁2行)

ウ 「合成軸力部材」
合成軸力部材に関して、本件明細書には以下の記載がある。
「本発明に係る木材と金属部材のアンボンド合成軸力部材の基本は、鋼材やステンレス鋼材、アルミニューム材のごとき構造用の金属部材の座屈を防止する配置に木材がアンボンド状態に合成されて成り、前記木材の端部から突き出された金属部材の両端部が軸力の入力部とした構成で好適に実施される(請求項1に記載した発明)。つまり、金属部材が全荷重を負担し、木材は純粋に座屈補剛材としてのみ働かせる考え方を実現する構成である。」(【0018】)
したがって、本件特許発明における、合成軸力部材は、金属部材が全荷重を負担し、木材が座屈補剛材として作用して座屈を防止する部材と理解される。
(6頁4?14行)

エ 「通孔」
明細書には以下の記載がある。
「図6に示したアンボンド合成軸力部材は、所謂丸太を使用した木材12の中心部の軸方向に、例えば鋼管、アルミニューム管などの金属管11の横断面形状とほぼ同形、同大で同金属管11を通すことが可能な通孔が設けられ、前記通孔へ金属管11が貫通されて成り、木材12の両端から突き出された金属管11の両端部が軸力の入力部15として構成されていることを特徴とする(請求項4に記載した発明)。
金属管11は、丸太の木材12に対して、全長にわたり軽く接触する程度に製作すれば足りる。本実施例の場合、丸太の木材12はもともと一体構造であるから、単に金属管11を貫通させるだけで良く、製作がきわめて容易である。そして、丸太の木材12には、金属管11の座屈補剛材としての働きを十分に期待できるのである。」(【0030】)
上記明細書を参照すれば、本件特許において、通孔は、もともと一体構造の所謂丸太の軸方向に設けられた貫通孔と理解される。
(6頁20行?7頁9行)

(2)本件特許発明と構成要件毎の対比
ア 請求項1との対比
(ア)イ号実施部材の木材(2)は「金属部材の座屈を防止する」ものではない
甲第2号証に示したイ号実施部材の実験結果は、イ号実施部材の座屈耐力は金属部材単独の場合に比較すれば若干(8%)向上しており、耐火被覆材と木材(集成材)によって幾分の補剛効果が有ったといえるものの、崩壊モードは座屈であり、崩壊荷重は降伏荷重の75%程度なので、耐火被覆材と木材によって金属部材の座屈を防止したということはできないことを示している。ましてや、木材(2)は、「金属部材の座屈を防止する」ものではない。
(11頁5行、18?末行)

(イ)イ号実施部材は「金属部材の座屈を防止する配置」ではない
請求項1に記載された発明は、木材の補剛効果によって金属部材の座屈を防止する技術思想であるのに対して、金属部材と木材の間に木材よりも柔らかい耐火被覆材を介在させることは、木材の補剛効果を弱めるものであり請求項1の技術思想に反する。上記のように、座屈が防止されていないことに加えて、請求項1の技術思想に反するという意味においても、イ号実施部材の木材(2)は、「金属部材の座屈を防止する配置」とは言えない。
(12頁7?13行)

(ウ)イ号実施部材の金属部材(1)と木材(2)とは、「アンボンド状態に合成され」ていない
前記のように、本件発明においてアンボンド状態とは、鋼板と木材が一切接着や連結がされずに単に重ね合わせられており、通常問題にならない程に小さい摩擦力が作用するように接している状態、つまり、接しているが滑り得る状態というものと理解される。
これに対してイ号実施部材の金属部材(1)と木材(2)の間には耐火被覆材(5)が存在しており、金属部材と木材とは直接接していないので、前記アンボンド状態ではない。
(12頁22行?13頁5行)

(エ)まとめ
a 以上述べたように、イ号実施部材は、木材によって座屈が防止されていない点、金属部材の座屈を防止する配置ではない点、および、木材と鋼管はアンボンド状態ではない点において請求項1に記載の発明とは異なっており、そのいずれの1つをとってもイ号実施部材が請求項1の技術的範囲に属さないと結論するには十分で有ることから、イ号実施部材は請求項1の技術範囲に属さないことは明らかである。
(13頁6?11行)

b イ号実施部材は、木材が金属部材の座屈を防止しない、金属部材の座屈を防止する配置ではない、および、木材と鋼管はアンボンド状態ではない点で請求項1と相違する。
(16頁13?15行)

イ 請求項4との対比
(ア)木材によって形成される空間は金属管の横断面形状とほぼ同形、同大ではない
金属管の周囲を耐火被覆材(5)が囲み、さらにその外側を木材(2)が囲む形状であるイ号実施部材においては、木材によって形成される空間は金属管の横断面形状とほぼ同形、同大ではないことは明らかである。
(13頁15?17行)

(イ)イ号実施部材は通孔を有さない
イ号実施部材において金属管(1)は耐火被覆材(5)に囲まれており、当該耐火被覆材(5)を配置する部分は、一対の断面コ字型の集成材(2a、2a)を耐火被覆材(5)を中に挟んで対向配置し、そして突合わせ端面を接着することにより形成された開口部4である。
通孔の言語的意味及び明細書の【0030】の記載に基づけば、本件特許において、通孔は、もともと一体構造の所謂丸太の軸方向に設けられた貫通孔と理解されるのに対して、イ号実施部材は、耐火被覆材(5)を一対の集成材(2a、2a)で挟む構成なので構成上異なっている。
甲第3号証には、イ号実施部材の開口部4が「通孔」ではなく、一対の集成材間に形成されることが示されている。
(13頁19行?14頁9行)

(ウ)イ号実施部材においては「通孔へ金属管が貫通され」ない
請求項4に記載の発明では、「木材に、金属管の横断面形状とほぼ同形、同大で同金属管を通すことが可能な通孔が設けられ」ていることから、「前記通孔へ金属管が貫通され」る概念を把握することができるが、イ号実施部材の場合には、金属管は木材に挟まれているだけでの構造なので、「通孔へ金属管が貫通され」るという概念は生起しえない。
(14頁11?15行)

(エ)まとめ
イ号実施部材は、木材によって形成される空間が金属管の横断面形状とほぼ同形、同大ではなく、金属管を配置する部分が通孔でなく、金属管が貫通される構成ではない、アンボンドでもない点で請求項4と相違する。
(16頁16?19行)

2 被請求人の主張(判定請求答弁書)
(1)請求人の主張に対する反論
ア 「特許請求の範囲に記載された用語の意義」に対して
(ア)「座屈を防止」に対して
特許請求の範囲の記載をみれば、「座屈を防止」を受けるのは、「木材」ではなく、「配置」であることが分かる。
そして、「金属部材の座屈を防止する配置」の解釈は、請求人主張に準じた“金属部材が決して座屈しない配置”では日本語として無理が有り、“金属部材が座屈しにくい配置”と理解する方が日本語として自然である。したがって、特許請求の範囲の記載から、「座屈を防止」の意義は“座屈しにくい”であることが読み取れる。
(2頁22行?3頁5行)

(イ)「アンボンド状態」に対して
アンボンド状態には、金属部材と木材とが接着されているか否かは直接の関係がなく、金属部材と木材とが接着してあってもその接着力が弱い、バラつく、経年変化等の理由により、金属部材が全荷重を負担し、木材を計算上考慮するべきでない構造設計を行うべき構成であれば足りる。
また、金属部材と木材との間に耐火被覆層等の層が介在する場合であっても、基本的に金属部材が全荷重を負担し木材は純粋に座屈補剛材としてのみ働かせる考え方を実現する金属部材と木材との接合状態である限り、アンボンド状態というべきである。
(8頁18?末行)

(ウ)「合成軸力部材」に対して
明細書段落【0018】の記載からならば、基本的に金属部材が全荷重を負担し木材は純粋に座屈補剛材としてのみ働かせる考え方を実現する構成を有する部材と定義されるべきである。
(9頁10?12行)

(エ)「通孔」に対して
明細書段落【0030】の記載は、「本実施例の場合」であって具体例であることを無視している。請求項4において「通孔」が設けられる「木材」は、丸太に限られず、例えば集成材の場合もある。プロダクトバイプロセスクレームではないのだから「通孔」をどのような製造工程で設けようとも関係無い。
したがって、「通孔」とは、貫通孔と理解される。
(9頁22行?10頁1行)

イ 「請求項1との対比」に対して
(ア)「イ号実施部材の木材(2)は、『金属部材の座屈を防止する』ものではない」に対して
先に述べた通り、特許請求の範囲の「金属部材の座屈を防止する配置」における「座屈を防止」の意義は、座屈耐力を向上させることである。しかも、請求人ですら、木材(2)による8%の補剛効果を認めるのであるから、木材(2)が「金属部材の座屈を防止する配置」に配置されているということができる。
(11頁13?17行)

(イ)「イ号実施部材は『金属部材の座屈を防止する配置』ではない」に対して
本件特許発明の技術思想は、木材の補剛効果によって金属部材の座屈耐力を向上させる技術思想である。木材の補剛効果によって金属部材の座屈耐力を向上させる限りにおいて、木材と金属部材との間に耐火被覆材が存在しようと否と、関係がない。
厚みの薄いケイ酸カルシウム板(5)が金属部材と木材(2)との間に介在しても、いぜんとして木材(2)の補剛効果が認められることに変わりはない(実際に、甲第2号証において補剛効果が認められている)から、イ号実施部材の木材(2)は、「金属部材の座屈を防止する配置」にあるといえる。
(12頁15?19行、13頁6?11行)

(ウ)「イ号実施部材の金属部材(1)と木材(2)とは、アンボンドの状態に合成されていない」に対して
イ号実施部材の説明には、「イ号実施部材は、拡大断面図(図2)に示すように、イ号実施部材中央部を軸方向に延びるロの字型断面を有する金属部材(1)の外側に、金属部材(1)を囲うように耐火被覆材(ケイ酸カルシウム板)(5)がアンボンド状態に設けられ、更に当該耐火被覆材(5)の外側に、溝を彫ってコの字型断面に加工した木材が、耐火被覆材(5)を囲うように設けられている。」(判定請求書8頁)との記載がある。かかる記載から、金属部材(1)を囲うように耐火被覆材(ケイ酸カルシウム板)(5)がアンボンド状態に設けられ、更に木材(2)が設けられているのであるから、金属部材(1)と木材(2)との接合状態もアンボンド状態であると言える。
(13頁24行?14頁7行)

(2)イ号実施部材と本件特許発明1との対比
イ号実施部材の木材(2)は「金属部材の座屈を防止する配置」にある。かかる配置が、本件特許発明1の「金属部材の座屈を防止する配置」に該当する。
イ号実施部材の金属部材(1)と木材(2)とは、アンボンド状態に合成されている。かかるアンボンド状態が、本件特許発明1の「木材がアンボンド状態に合成されて成り」に該当する。
イ号実施部材では、金属部材(1)の両端部が軸力の入力部として構成されている。かかる構成が、本件特許発明1の「前記木材の端部から突き出された金属部材の両端部が軸力の入力部として構成されている」に該当する。
以上の通り、イ号実施部材は、本件特許発明1の構成要件に該当する。
(14頁18行?15頁2行)

(3)イ号実施部材と本件特許発明4との対比
イ号実施部材では、木材(2)を貫通する孔の大きさは、金属部材(1)の横断面形状と比較して、ケイ酸カルシウム板(5)の厚み分大きい。かかる構成は、本件特許発明4の「金属管の横断面形状とほぼ同形、同大で同金属管を通すことが可能な通孔が設けられ、前記通孔へ金属管が貫通されて成り」に該当しない。したがって、イ号実施部材は、本件特許発明4の構成に該当しない。
(15頁4?9行)


第5 属否の判断
1 本件特許発明1とイ号物件の対比・判断
(1)構成要件(A)について
ア 構成要件(A)の「木材」が「座屈を防止する配置」にある意義について
a 「座屈を防止する」ことについて、請求人は、「単に座屈耐力を向上させることではなく、『座屈させないこと』の意味と理解するのが相当」と主張(上記「第4 1(1)ア」)し、被請求人は、「『完全に防止』を受けるのは、『木材』ではなく、『配置』であることが分かる。・・・『金属部材の座屈を防止する配置』の解釈は、・・・“金属部材が座屈しにくい配置”と理解する方が日本語として自然である」と主張(上記「第4 2(1)ア(ア)」)している。

b そこで、本件特許明細書をみると、以下の記載がある。(下線は、本判定で付与した。)
(a)「【0020】
このアンボンド合成軸力部材に圧縮力が作用して座屈による曲げ変形を起こした状態を考える。両側の木材2、2は、鋼板1の曲げ変形に追従しつつも、軸力に関しては鋼板1とはほぼ完全に縁が切れているため、鋼板1が入力部5、5を通じて全軸力を負担し、木材2は純粋に座屈補剛材としてのみ働く。・・・」
(b)「【0026】
次に、図3A、Bに示した実施形態は、図1のアンボンド合成軸力部材について、木板3の剪断破壊防止の措置を講じた実施例を示している。即ち、図1のアンボンド合成軸力部材に圧縮力が作用し、座屈による曲げ変形が発生すると、木板3は曲げに伴う剪断力を負担することになる。木板3の剪断強度は本来非常に低いため、この木板3が先行して破壊し(試験の結果、最大耐力に達して、木板3の両端中央から軸方向に割裂が入った。)アンボンド合成軸力部材の耐力低下を引き起こすことが懸念された。
【0027】
その対案として、図3の実施形態では、木板は、鋼板1の長手方向(木板の材軸直交方向)に複数個に分断(分割)した複数の木板ピース3’の集合で構成されている(請求項6に記載した発明)。
その意図するところは、図3Bに示したように、鋼板1に圧縮力が作用して曲げ座屈が発生した場合に、各木板ピース3’に大きな剪断応力を負担させることなく、鋼板の曲がりに追従させ、隣り合う木板ピース3’の接合縁の間に相応のズレを生じさせ、少なくとも木板ピース3’の剪断破壊を防止するにある。このように木板を小さく分割する構成の場合には、木板ピース3’自体が小さな寸法のもので良いことになり、小径木や半端材などの安価な木質材料を有効利用することができ、割裂による耐力低下を防止することと同時に、コストダウンを図れる利点もある。各木板ピース3’を複数の釘4にて木材2と連結することは図1の場合と同じである。
図3の実施形態の場合には、各木板ピース3’は、木材繊維の筋を鋼板1の軸方向と直交する向きに使用して、木板の強度をより有効活用することもできる。あるいは部材両端に位置する木板ピース3a’、3a’に、合板等のせん断強度が高い材料で製作したものを使用すると一層強度及び信頼性の高い合成材となる(請求項8に記載した発明)。」
(c)「【図面の簡単な説明】
【図1】A、B、Cは本発明に係るアンボンド合成軸力部材の一実施形態を示した正面図と平面図および拡大した縦断面図である。
【図2】・・・
【図3】A、Bは本発明に係るアンボンド合成軸力部材の異なる実施形態を示した正面図と、その曲げ座屈状態を概念的に示した説明図である。」

c 上記b(a)の「木材2は純粋に座屈補剛材としてのみ働く」との記載の「座屈補剛材」は、乙第1号証によれば、「座屈防止のために設ける補強材」の意味であるが、上記b(b)には、図1の実施形態において「座屈による曲げ変形が発生する」場合と、図3の実施形態において「曲げ座屈が発生した場合」について記載されているところ、「図3A、Bに示した実施形態は、図1のアンボンド合成軸力部材について、木板3の剪断破壊防止の措置を講じた実施例を示して」おり、「木板3が先行して破壊し・・・アンボンド合成軸力部材の耐力低下を引き起こすことが懸念され」るので、「鋼板の曲がりに追従させ、隣り合う木板ピース3’の接合縁の間に相応のズレを生じさせ、少なくとも木板ピース3’の剪断破壊を防止するにある」ことを意図しており、さらに、「部材両端に位置する木板ピース3a’、3a’に、合板等の剪断強度が高い材料で製作したものを使用すると一層強度及び信頼性の高い合成材となる」と記載されていることからみて、本件特許公報に記載された各実施例において、座屈を完全に防ぐことができるものを想定しているのではなく、材料等を適宜選択することによって、座屈に対する耐力を適宜向上させていることが理解できる。

d 以上のことから、本件発明における「座屈を防止する」の意義は、本件特許明細書の記載からみて、請求人が主張するような「座屈させない」ことではなく、「座屈耐力を向上させる」ことと解することが自然である。


イ 構成要件(A)の「木材」が「アンボンド状態に合成されて成」る意義について
a 「アンボンド状態」について、請求人は、明細書及び図面の記載によれば、「木材と金属部材が直接接する構成を指しており、木材と金属部材の間に耐火被覆材が介在するような構成を含まないと解するのが相当である」と主張(上記「第4 1(1)イ」)し、被請求人は、「金属部材と木材との間に耐火被覆材等の層が介在する場合であっても、基本的に金属部材が全荷重を負担し木材は純粋に座屈補剛材としてのみ働かせる考え方を実現する金属部材と木材との接合状態である限り、アンボンド状態というべきである」と主張(上記「第4 2(1)ア(イ)」)している。

b 「アンボンド状態」とは、接触する2つの部材間の非付着状態を意味するのであるから、2つの部材が「アンボンド状態」であると特定されるためには、その前提として、それらの部材が接触していることが必要である。
したがって、2つの部材が接触していない場合は、もはやそれらの部材が「アンボンド状態」であると特定することはできない。

ウ 充足性の判断
a 上記アで検討したとおり、「座屈を防止する」は、「座屈させない」ことではなく、「座屈耐力を向上させる」意義であるところ、イ号実施部材の構成(a)は、金属部材(1)を囲うように耐火被覆材(5)が設けられ、当該耐火被覆材(5)を囲うように木材(2)が設けられており、この木材(2)の当該配置からみて、多少なりとも、金属部材(1)の座屈が起こることを軽減することは明らかである。
甲第2号証の試験においても、鉄骨のみの断面よりは耐力が上がっていることを示しており、また、請求人も、「イ号実施部材の座屈耐力は金属部材単独の場合に比較すれば若干(8%)向上しており、耐火被覆材と木材(集成材)によって幾分の補剛効果が有ったといえる」(上記「第4 1(2)ア(ア)」)と説明していることから、構成(a)の金属部材(1)と木材(2)の配置、つまり、「金属部材(1)を囲うように耐火被覆材(ケイ酸カルシウム板)(5)がアンボンド状態に設けられ、」「木材(2)が、耐火被覆材(5)を囲うように設けられ」た配置は、構成要件Aのうち、「金属部材の座屈を防止する配置に木材が」「合成されて成」ることに該当する。

b 上記イで検討したとおり、2つの部材が接触していない場合は、「アンボンド状態」であると特定することはできないところ、構成(a)において、「金属部材(1)を囲うように耐火被覆材(ケイ酸カルシウム板)(5)がアンボンド状態に設けられ、」「木材(2)が、耐火被覆材(5)を囲うように設けられ」た配置によれば、金属部材(1)と木材(2)とは、その間に耐火被覆材(5)が介在し、接触していないから、「アンボンド状態」であると特定することはできない。
よって、構成(a)の上記配置は、構成要件Aのうち「金属部材」と「木材がアンボンド状態に合成されて成」ることに該当しない。

c 以上のことから、イ号実施部材の構成(a)は、本件特許発明1の構成要件(A)を充足しない。

(2)構成要件(B)について
イ号実施部材の構成(b)の「前記耐火被覆材(5)および木材(2)の上下の端部から突き出た金属部材(1)の両端部(1a、1b)が軸力の入力部を構成する」ことは、本件特許発明1の構成要件(B)の「前記木材の端部から突き出された金属部材の両端部が軸力の入力部として構成されていること」に該当する。
よって、イ号実施部材の構成(b)は、本件特許発明1の構成要件(B)を充足する。

(3)構成要件(C)について
イ号実施部材の構成(c)の「金属部材(1)」、「木材(2)」、「合成軸力部材」は、それぞれ本件特許発明1の構成要件(C)の「金属部材」、「木材」、「合成軸力部材」に相当する。
しかし、構成(c)の金属部材(1)と木材(2)は、上記(1)イ及びウで説示したとおり、耐火被覆材(5)が介在して接触していないから、「アンボンド状態」と特定することはできず、イ号実施部材の構成(c)の「金属部材(1)と耐火被覆材(5)と木材(2)からなる合成軸力部材」は、本件特許発明1の構成要件(C)の「木材と金属部材のアンボンド合成軸力部材」に該当しない。
よって、イ号実施部材の構成(c)は、本件特許発明1の構成要件(C)を充足しない。

(4)小括
したがって、イ号実施部材は、本件特許発明1の構成要件(A)、(C)を充足しない。

2 本件特許発明4とイ号物件の対比・判断
(1)構成要件(D)について
イ号実施部材の構成(a)の「開口部(4)」は、「木材(2)は、一対の断面コ字型の集成材(2a、2a)から構成され、」「対向配置した断面コ字型の集成材の突き合わせ端面を接着することにより形成され」るので、構成要件(D)の「通孔」に相当する。
また、構成(a)の「開口部(4)内に」「耐火被覆材(5)と金属部材(1)」が収容されていることは、構成要件(D)の「通孔へ金属管が貫通されて成」ることに相当する。
しかしながら、構成(a)の「開口部(4)内」には、「耐火被覆材(5)と金属部材(1)」が収容され、その「金属部材(1)を囲うように」「耐火被覆材(5)」が設けられていることから、金属部材(1)と開口部(4)とは、その横断面形状が、同形であるとしても、耐火被覆材(5)の厚みの分、同大ではない。してみると、構成(a)の「開口部(4)」の横断面形状は、構成要件(D)の「金属管の横断面形状とほぼ同形、同大で同金属管を通すことが可能な通孔」に該当しない。
よって、イ号実施部材の構成(a)は、本件特許発明4の構成要件(D)を充足しない。

(2)構成要件(E)について
イ号実施部材の構成(b)の「前記耐火被覆材(5)および木材(2)の上下の端部から突き出た金属部材(1)の両端部(1a、1b)が軸力の入力部を構成する」ことは、本件特許発明4の構成(E)の「木材の両端から突き出された金属管の両端部が軸力の入力部として構成されていること」に該当する。
よって、イ号実施部材の構成(b)は、本件特許発明4の構成要件(E)を充足する。

(3)構成要件(F)について
構成要件(F)は、構成要件(C)と同じであるから、上記1(3)で説示した理由と同じ理由により、イ号実施部材の構成(c)は、本件特許発明4の構成要件(F)を充足しない。

(4)小括
したがって、イ号実施部材は、本件特許発明4の構成要件(D)、(F)を充足しない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、イ号実施部材は、本件特許発明1及び4の技術的範囲に属しない。

よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2018-05-09 
出願番号 特願2002-189906(P2002-189906)
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (E04C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 深田 高義  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 住田 秀弘
西田 秀彦
登録日 2005-04-01 
登録番号 特許第3661059号(P3661059)
発明の名称 木材と金属部材のアンボンド合成軸力部材  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  
代理人 園田・小林特許業務法人  
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